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明細書 :非可逆伝送線路装置

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第5877193号 (P5877193)
登録日 平成28年1月29日(2016.1.29)
発行日 平成28年3月2日(2016.3.2)
発明の名称または考案の名称 非可逆伝送線路装置
国際特許分類 H01P   3/08        (2006.01)
H01Q   3/26        (2006.01)
H01P   1/203       (2006.01)
FI H01P 3/08 101
H01Q 3/26 Z
H01P 1/203
請求項の数または発明の数 37
全頁数 94
出願番号 特願2013-501149 (P2013-501149)
出願日 平成24年2月24日(2012.2.24)
国際出願番号 PCT/JP2012/054632
国際公開番号 WO2012/115245
国際公開日 平成24年8月30日(2012.8.30)
優先権出願番号 2011040383
優先日 平成23年2月25日(2011.2.25)
優先権主張国 日本国(JP)
審査請求日 平成26年12月22日(2014.12.22)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】503360115
【氏名又は名称】国立研究開発法人科学技術振興機構
発明者または考案者 【氏名】上田 哲也
【氏名】岸本 紘幸
個別代理人の代理人 【識別番号】100101454、【弁理士】、【氏名又は名称】山田 卓二
【識別番号】100081422、【弁理士】、【氏名又は名称】田中 光雄
【識別番号】100125874、【弁理士】、【氏名又は名称】川端 純市
審査官 【審査官】岸田 伸太郎
参考文献・文献 国際公開第2008/111460(WO,A1)
堤誠(外1名),「厚いフェライト基板を用いた左手系マイクロストリップ線路とその可変フィルタへの応用」,電子情報通信学会技術研究報告,2008年12月 5日,Vol.108,No.350,pp.13-18
調査した分野 H01P 1/00-11/00
H01Q 1/00-25/04JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
IEEE Xplore
CiNii
特許請求の範囲 【請求項1】
順方向の伝搬定数と逆方向の伝搬定数とが互いに異なる非可逆伝送線路装置であって、
上記非可逆伝送線路装置は、マイクロ波信号の伝送線路部分と、上記伝送線路部分からそれぞれ分岐して設けられかつ誘導性素子を等価的に含む第1及び第2の並列枝の回路とを有する少なくとも1つの単位セルを、第1及び第2のポート間で縦続接続して構成され、
上記少なくとも1つの単位セルのそれぞれは、上記伝送線路部分の伝搬方向とは異なる磁化方向に磁化されてジャイロ異方性を有するように自発磁化を有するか又は外部磁界により磁化され、
上記少なくとも1つの単位セルのそれぞれにおいて、上記第1の並列枝の回路は、上記伝搬方向と上記磁化方向とにより形成される面に対して一方の側に形成され、上記第2の並列枝の回路は、上記面に対して他方の側に形成され、上記伝送線路部分から見た上記第1の並列枝の回路のインピーダンスは、上記伝送線路部分から見た上記第2の並列枝の回路のインピーダンスとは異なることを特徴とする非可逆伝送線路装置。
【請求項2】
上記少なくとも1つの単位セルのそれぞれは、上記伝送線路部分に直列に挿入されかつ容量性素子を等価的に含む直列枝の回路をさらに備えることを特徴とする請求項1記載の非可逆伝送線路装置。
【請求項3】
上記少なくとも1つの単位セルのそれぞれは、
接地導体と、
上記伝送線路部分と上記接地導体との間に設けられた棒状の磁性体とを含むことを特徴とする請求項1又は2記載の非可逆伝送線路装置。
【請求項4】
上記少なくとも1つの単位セルのそれぞれは、
第1及び第2の面を有する磁性体基板と、
上記磁性体基板の第1の面に設けられた接地導体とを含み、
上記伝送線路部分、及び上記第1及び第2の並列枝の回路は、上記磁性体基板の第2の面に設けられたことを特徴とする請求項1又は2記載の非可逆伝送線路装置。
【請求項5】
上記第1及び第2の並列枝の回路はそれぞれ、互いに異なる電気長を有するスタブ導体であることを特徴とする請求項1~4のうちのいずれか1つに記載の非可逆伝送線路装置。
【請求項6】
上記第1及び第2の並列枝の回路のそれぞれは、移相器を含むスタブ導体であり、上記移相器に印加する電圧を制御することにより上記第1及び第2の並列枝の回路のインピーダンスを変化させることを特徴とする請求項1~4のうちのいずれか1つに記載の非可逆伝送線路装置。
【請求項7】
上記少なくとも1つの単位セルのそれぞれは、
上記第1の並列枝の回路と上記接地導体との間に設けられた第1の誘電体基板と、
上記第1の誘電体基板の上記接地導体と対向する面に設けられた第1の電極と、
上記第2の並列枝の回路と上記接地導体との間に設けられた第2の誘電体基板と、
上記第2の誘電体基板の上記接地導体と対向する面に設けられた第2の電極とをさらに含み、
上記第1の電極と上記接地導体との間に印加する第1の電圧と、上記第2の電極と上記接地導体との間に印加する第2の電圧とを制御することにより、上記第1及び第2の並列枝の回路のインピーダンスを変化させることを特徴とする請求項3記載の非可逆伝送線路装置。
【請求項8】
上記第1及び第2の並列枝の回路は短絡スタブであることを特徴とする請求項1~7のうちのいずれか1つに記載の非可逆伝送線路装置。
【請求項9】
上記第1及び第2の並列枝の回路は開放スタブであることを特徴とする請求項1~7のうちのいずれか1つに記載の非可逆伝送線路装置。
【請求項10】
上記各単位セルの上記伝送線路部分はマイクロストリップ線路であることを特徴とする請求項1~9のうちのいずれか1つに記載の非可逆伝送線路装置。
【請求項11】
所定の動作周波数において、上記順方向では右手系伝送で電力伝送されかつ上記逆方向では左手系伝送で電力伝送されるように、伝搬定数と動作周波数との関係を示す分散曲線において所定の伝搬定数及び動作周波数を設定したことを特徴とする請求項1~10のうちのいずれか1つに記載の非可逆伝送線路装置。
【請求項12】
所定の動作周波数において、上記順方向では左手系伝送もしくは右手系伝送で電力伝送されかつ上記逆方向では伝搬定数がゼロで管内波長が無限大となるように電力伝送されるように、伝搬定数と動作周波数との関係を示す分散曲線において所定の伝搬定数及び動作周波数を設定したことを特徴とする請求項1~10のうちのいずれか1つに記載の非可逆伝送線路装置。
【請求項13】
上記非可逆伝送線路装置は、伝搬定数と動作周波数との関係を示す分散曲線において所定の伝搬定数及び動作周波数を設定することにより構成され、所定の移相量だけ移相するマイクロ波移相器であることを特徴とする請求項1~12のうちのいずれか1つに記載の非可逆伝送線路装置。
【請求項14】
上記非可逆伝送線路装置は、上記順方向で伝搬する第1のモードの伝搬定数をβとし、上記逆方向で伝搬する第2のモードの伝搬定数をβとしたとき、β=-β≠0を満たすように構成されたマイクロ波共振器であることを特徴とする請求項11記載の非可逆伝送線路装置。
【請求項15】
上記非可逆伝送線路装置と結合するように設けられた結合用伝送線路を備え、マイクロ波フィルタを構成したことを特徴とする請求項14記載の非可逆伝送線路装置。
【請求項16】
上記非可逆伝送線路装置と結合するように設けられた負性抵抗素子を備え、マイクロ波発振器を構成したことを特徴とする請求項14記載の非可逆伝送線路装置。
【請求項17】
上記非可逆伝送線路装置と結合するように設けられた給電用伝送線路を備え、マイクロ波アンテナ装置を構成したことを特徴とする請求項14記載の非可逆伝送線路装置。
【請求項18】
上記非可逆伝送線路装置と結合するように設けられた給電用伝送線路と、上記非可逆伝送線路装置と結合するように設けられた複数の分岐用伝送線路とを備え、マイクロ波電力分配器を構成したことを特徴とする請求項14記載の非可逆伝送線路装置。
【請求項19】
上記非可逆伝送線路装置において、上記容量性素子は当該伝送線路を伝搬する電磁波モードの実効透磁率が負であるマイクロ波素子であり、上記誘導性素子は当該伝送線路を伝搬する電磁波モードの実効誘電率が負であるマイクロ波素子であることを特徴とする請求項1~18のうちのいずれか1つに記載の非可逆伝送線路装置。
【請求項20】
請求項10記載の非可逆伝送線路装置を用いて構成されたアンテナ装置であって、
上記非可逆伝送線路装置は、所定の動作周波数において高周波信号が上記非可逆伝送線路装置を所定の伝搬方向で伝搬するとき、上記伝搬方向と実質的に同じ方向で漏れ波の主ビームを有する放射パターンの電磁波を放射するとともに、上記伝搬方向と実質的に逆の方向又は上記伝搬方向と実質的に垂直な方向で漏れ波の主ビームを有する放射パターンの電磁波を放射し、
上記アンテナ装置はさらに、
上記非可逆伝送線路装置の第1のポート及び第2のポートのうちの少なくとも一方に高周波信号を入力し、所定の動作周波数において、上記非可逆伝送線路装置を前進波伝送線路又は後退波伝送線路として動作させ、上記非可逆伝送線路装置の非可逆性を利用して、上記入力する高周波信号の振幅と位相の少なくとも一方を制御することにより、上記非可逆伝送線路装置から漏洩する漏洩波を放射波とする主ビームを形成するように制御する制御手段を備えたことを特徴とするアンテナ装置。
【請求項21】
上記制御手段は、上記非可逆伝送線路装置の第1のポート及び第2のポートにそれぞれ上記高周波信号を入力し、上記入力する各高周波信号の振幅と位相の少なくとも一方を制御することにより、放射波の主ビームを形成することを特徴とする請求項20記載のアンテナ装置。
【請求項22】
上記制御手段は、上記第1のポートに上記高周波信号を入力し、上記入力する高周波信号の振幅と位相の少なくとも一方を制御することにより、上記第2のポートにおいて前進波を反射して、放射波の主ビームを形成することを特徴とする請求項20記載のアンテナ装置。
【請求項23】
上記制御手段は、上記第2のポートに上記高周波信号を入力し、上記入力する高周波信号の振幅と位相の少なくとも一方を制御することにより、上記第1のポートにおいて後退波を反射して、放射波の主ビームを形成することを特徴とする請求項20記載のアンテナ装置。
【請求項24】
上記制御手段は、上記非可逆伝送線路装置の第1のポート及び第2のポートにそれぞれ上記高周波信号を選択的に入力し、上記入力する高周波信号の振幅と位相の少なくとも一方を制御することにより、放射波の主ビームを形成することを特徴とする請求項20記載のアンテナ装置。
【請求項25】
上記非可逆伝送線路装置はマイクロ波共振器として動作し、
上記非可逆伝送線路装置の各単位セルは、上記非可逆伝送線路装置に入力されるマイクロ波信号の動作周波数と上記非可逆伝送線路装置の位相定数との関係を示す分散曲線において上記非可逆伝送線路装置が所定の位相定数を有するように回路構成され、
上記非可逆伝送線路装置は、
上記第1のポートに接続され、所定の動作周波数において上記第1のポートから見たインピーダンスが第1のインピーダンスとなるように動作する第1の反射用インピーダンス回路と、
上記第2のポートに接続され、上記動作周波数において上記第2のポートから見たインピーダンスが第2のインピーダンスとなるように動作する第2の反射用インピーダンス回路とを備え、
上記第1のインピーダンスは実質的に実部を持たない所定の複素数であり、
上記第2のインピーダンスは、上記第1のインピーダンスと実質的に共役である実質的に実部を持たない複素数であることを特徴とする請求項1~10のうちのいずれか1つに記載の非可逆伝送線路装置。
【請求項26】
上記非可逆伝送線路装置の各単位セルは、上記動作周波数において、上記順方向では右手系伝送で電力伝送されかつ上記逆方向では左手系伝送で電力伝送されるように、上記分散曲線において上記非可逆伝送線路装置が所定の伝搬定数を有するように回路構成されたことを特徴とする請求項25記載の非可逆伝送線路装置。
【請求項27】
上記非可逆伝送線路装置の各単位セルは、上記動作周波数において、上記順方向では左手系伝送で電力伝送されかつ上記逆方向では右手系伝送で電力伝送されるように、上記分散曲線において上記非可逆伝送線路装置が所定の伝搬定数を有するように回路構成されたことを特徴とする請求項25記載の非可逆伝送線路装置。
【請求項28】
上記非可逆伝送線路装置の各単位セルは、上記動作周波数において、上記順方向及び上記逆方向の両方で上記マイクロ波信号がその位相定数がゼロの状態で電力伝送されるように、上記分散曲線において上記非可逆伝送線路装置が所定の伝搬定数を有するように回路構成されたことを特徴とする請求項25記載の非可逆伝送線路装置。
【請求項29】
上記非可逆伝送線路装置において、上記容量性素子は当該伝送線路を伝搬する電磁波モードの実効透磁率が負であるマイクロ波素子であり、上記誘導性素子は当該伝送線路を伝搬する電磁波モードの実効誘電率が負であるマイクロ波素子であることを特徴とする請求項25~28のうちのいずれか1つに記載の非可逆伝送線路装置。
【請求項30】
請求項25~29のうちのいずれか1つに記載の非可逆伝送線路装置を用いて構成されたアンテナ装置であって、
上記第1の反射用インピーダンス回路又は上記第2の反射用インピーダンス回路に接続され、マイクロ波信号を上記非可逆伝送線路装置に給電する給電回路をさらに備えたことを特徴とするアンテナ装置。
【請求項31】
請求項25~29のうちのいずれか1つに記載の非可逆伝送線路装置を用いて構成されたアンテナ装置であって、
上記第1の反射用インピーダンス回路又は上記第2の反射用インピーダンス回路に接続され、上記非可逆伝送線路装置によって受信されたマイクロ波信号を出力する給電回路をさらに備えたことを特徴とするアンテナ装置。
【請求項32】
上記第1の反射用インピーダンス回路は、上記第1のインピーダンスを変化させる第1のインピーダンス変化手段を備え、
上記第2の反射用インピーダンス回路は、上記第2のインピーダンスを変化させる第2のインピーダンス変化手段を備え、
上記アンテナ装置は、
上記出力されたマイクロ波信号の受信電力を検出する受信電力検出手段と、
上記検出された受信電力に基づいて、上記受信電力が最大になるように上記第1及び第2のインピーダンス変化手段をそれぞれ制御する制御手段とをさらに備え、
上記第1及び第2のインピーダンスが変化することにより、上記アンテナ装置の偏波面が変化することを特徴とする請求項31記載のアンテナ装置。
【請求項33】
上記第1及び第2のインピーダンスは離散的に変化することを特徴とする請求項32記載のアンテナ装置。
【請求項34】
上記第1及び第2のインピーダンスは連続的に変化することを特徴とする請求項32記載のアンテナ装置。
【請求項35】
上記第1及び第2の反射用インピーダンス回路のそれぞれは、可変容量ダイオード及びインダクタを含むことを特徴とする請求項34記載のアンテナ装置。
【請求項36】
上記第1及び第2の反射用インピーダンス回路のそれぞれは、移相器及び伝送線路を含むことを特徴とする請求項34記載のアンテナ装置。
【請求項37】
上記第1及び第2の並列枝の回路はそれぞれ移相器を含み、上記移相器に印加する電圧を制御することにより上記第1及び第2の並列枝の回路のインピーダンスを変化させ、
上記第1及び第2の並列枝の回路のインピーダンスが変化することにより、上記アンテナ装置の放射方向が変化することを特徴とする請求項31~36のうちのいずれか1つに記載のアンテナ装置。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、順方向の伝搬定数と逆方向の伝搬定数とが互いに異なる非可逆伝送線路装置に関し、また、そのような非可逆伝送線路装置を備えたアンテナ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
最近、右手/左手系複合伝送線路装置(composite right/left-handed transmission line:CRLH伝送線路装置)に関する研究が行われている。従来の右手/左手系複合伝送線路装置においては、電磁波の伝送電力の向きと位相流れの向きが同じである前進波(右手系モード)伝搬と、伝送電力と位相流れの向きが互いに反対方向を向く後退波(左手系モード)伝搬を兼ね備えているが、これら伝搬特性の切り換えは、動作帯域の違いにより実現されていた。これに対して、本願発明者のうちの1人は、特許文献1及び非特許文献1~3などにおいて、単一の動作帯域で、順方向に右手系モードが伝搬し、それと同時に逆方向には左手系モードが伝搬可能な、非可逆伝送線路装置を提案した。
【0003】
図117は、特許文献1に記載の、従来技術に係る非可逆伝送線路装置の構成を示す斜視図である。図117の非可逆伝送線路装置は、
(a)基板表面に対して垂直な方向の自発磁化もしくは外部磁界により生じた磁化Mを有するフェライト基板10Fと、例えばガラスエポキシ樹脂などの誘電体基板10とをそれらの側面同士で境界部分にて合体してなり、裏面に接地導体11を有する基板と、
(b)上記基板の境界部分上に形成されたマイクロストリップ線路12Aと、
(c)マイクロストリップ線路12Aを形成する複数のストリップ導体12のうちの互いに隣接する各ストリップ導体12をそれぞれ接続する複数のキャパシタCと、
(d)上記各ストリップ導体12を接地導体11にそれぞれ接続する複数の短絡スタブ導体13と
を備えて構成される。このように、図117の非可逆伝送線路装置は、伝送線路の単位セルをポートP1,P2間で縦続接続して構成され、これらの単位セルは、容量性素子を等価的に含む直列枝の回路と、誘導性素子を等価的に含む並列枝の回路とを備え、マイクロ波の伝搬方向に対して異なる磁化方向に磁化されてジャイロ異方性を有し、伝搬方向と磁化方向とにより形成される面に対して非対称な構造を有し、かつ、順方向の伝搬定数と逆方向の伝搬定数とが互いに異なる非可逆位相特性を有するように、伝搬定数と動作周波数との関係を示す分散曲線において所定の伝搬定数及び動作周波数を設定してなる。
【先行技術文献】
【0004】

【特許文献1】国際出願の国際公開WO2008/111460。
【0005】

【非特許文献1】T. Ueda, K. Horikawa, M. Akiyama, M. Tsutsumi, “Nonreciprocal phase-shift composite right/left handed transmission lines and their application to leaky wave antennas,” IEEE Transactions on Antennas and Propagation, Vol. 57, No. 7, pp. 1995-2005, July 2009。
【非特許文献2】T. Ueda, M. Akiyama, “Nonreciprocal phase-shift composite right/left handed microstrip lines using ferrite-rod-embedded substrate,” IEEE Transactions on Magnetics, Vol. 45, No. 10, pp. 4203-4206, October 2009。
【非特許文献3】K. Horikawa, T. Ueda, M. Akiyama, “Influence of reflected waves at a terminal of nonreciprocal phase-shift CRLH transmission lines on the leaky wave radiation,” Procedings of the 2009 Asia-Pacific Microwave Conference, TU3C-5, pp. 1-4, Singapore, December 7-10, 2009。
【非特許文献4】A. Sanada et al., “Novel zeroth-order resonance in composite right/left-handed transmission line resonators”, in Proceedings of Asia-Pacific Microwave Conference 2003, pp.1588-1591, November 2003.
【非特許文献5】上田哲也,「非可逆右手/左手系伝送線路を用いた伝送線路型共振器」,電子情報通信学会総合大会講演論文集,エレクトロニクス,C-2-79,2008年3月。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
非可逆伝送線路装置を実現するためには、ジャイロ回転異方性を示す材料及び構造物と、線路構造の非対称性とを組み合わせて用いる。これまで提案した非可逆伝送線路装置においては、線路構造の非対称性を実現するために、主として基板の材料の相違に依存し(マイクロストリップ線路12Aよりも+X側ではフェライト基板10Fを用い、-X側では誘電体基板10を用いている。)、非可逆伝送線路装置の各構成要素に係る他のパラメータを考慮したものではなかった。従って、線路構造の非対称性を実現するための新規な原理を提供することが望ましい。
【0007】
また、これまで提案した非可逆伝送線路装置においては、ジャイロ回転異方性を有す材料として、軟磁性体であるフェライトを用いることを想定し、非可逆性の大きさを制御するために、フェライトに印加する外部直流磁界の強さを変えていた。外部直流磁界の強さ及び向きを制御するためには、永久磁石を機械的に移動させるか、電磁石に流れる電流の大きさを制御する方法が取られていた。しかしながら、機械的な移動手段は、動作速度が遅く、デバイスサイズが大きくなるという問題があり、その一方、電磁石は、電流で制御されるので消費電力が大きくなるという問題があった。従って、消費電力が比較的小さい電圧制御による非可逆性の制御方法を提供することが望ましい。
【0008】
本発明の目的は、以上の問題点を解決し、新規な原理により線路構造の非対称性を実現し、小さな消費電力で非可逆性を制御できる非可逆伝送線路装置を提供し、また、そのような非可逆伝送線路装置を備えたアンテナ装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の第1の態様に係る非可逆伝送線路装置によれば、
順方向の伝搬定数と逆方向の伝搬定数とが互いに異なる非可逆伝送線路装置であって、
上記非可逆伝送線路装置は、マイクロ波信号の伝送線路部分と、上記伝送線路部分からそれぞれ分岐して設けられかつ誘導性素子を等価的に含む第1及び第2の並列枝の回路とを有する少なくとも1つの単位セルを、第1及び第2のポート間で縦続接続して構成され、
上記少なくとも1つの単位セルのそれぞれは、上記伝送線路部分の伝搬方向とは異なる磁化方向に磁化されてジャイロ異方性を有するように自発磁化を有するか又は外部磁界により磁化され、
上記少なくとも1つの単位セルのそれぞれにおいて、上記第1の並列枝の回路は、上記伝搬方向と上記磁化方向とにより形成される面に対して一方の側に形成され、上記第2の並列枝の回路は、上記面に対して他方の側に形成され、上記伝送線路部分から見た上記第1の並列枝の回路のインピーダンスは、上記伝送線路部分から見た上記第2の並列枝の回路のインピーダンスとは異なることを特徴とする。
【0010】
上記非可逆伝送線路装置において、上記少なくとも1つの単位セルのそれぞれは、上記伝送線路部分に直列に挿入されかつ容量性素子を等価的に含む直列枝の回路をさらに備えることを特徴とする。
【0011】
上記非可逆伝送線路装置において、
上記少なくとも1つの単位セルのそれぞれは、
接地導体と、
上記伝送線路部分と上記接地導体との間に設けられた棒状の磁性体とを含むことを特徴とする。
【0012】
上記非可逆伝送線路装置において、
上記少なくとも1つの単位セルのそれぞれは、
第1及び第2の面を有する磁性体基板と、
上記磁性体基板の第1の面に設けられた接地導体とを含み、
上記伝送線路部分、及び上記第1及び第2の並列枝の回路は、上記磁性体基板の第2の面に設けられたことを特徴とする。
【0013】
上記非可逆伝送線路装置において、上記第1及び第2の並列枝の回路はそれぞれ、互いに異なる電気長を有するスタブ導体であることを特徴とする。
【0014】
上記非可逆伝送線路装置において、上記第1及び第2の並列枝の回路のそれぞれは、移相器を含むスタブ導体であり、上記移相器に印加する電圧を制御することにより上記第1及び第2の並列枝の回路のインピーダンスを変化させることを特徴とする。
【0015】
上記非可逆伝送線路装置において、上記少なくとも1つの単位セルのそれぞれは、
上記第1の並列枝の回路と上記接地導体との間に設けられた第1の誘電体基板と、
上記第1の誘電体基板の上記接地導体と対向する面に設けられた第1の電極と、
上記第2の並列枝の回路と上記接地導体との間に設けられた第2の誘電体基板と、
上記第2の誘電体基板の上記接地導体と対向する面に設けられた第2の電極とをさらに含み、
上記第1の電極と上記接地導体との間に印加する第1の電圧と、上記第2の電極と上記接地導体との間に印加する第2の電圧とを制御することにより、上記第1及び第2の並列枝の回路のインピーダンスを変化させることを特徴とする。
【0016】
上記非可逆伝送線路装置において、上記第1及び第2の並列枝の回路は短絡スタブであることを特徴とする。
【0017】
上記非可逆伝送線路装置において、上記第1及び第2の並列枝の回路は開放スタブであることを特徴とする。
【0018】
上記非可逆伝送線路装置において、上記各単位セルの上記伝送線路部分はマイクロストリップ線路であることを特徴とする。
【0019】
上記非可逆伝送線路装置において、所定の動作周波数において、上記順方向では右手系伝送で電力伝送されかつ上記逆方向では左手系伝送で電力伝送されるように、伝搬定数と動作周波数との関係を示す分散曲線において所定の伝搬定数及び動作周波数を設定したことを特徴とする。
【0020】
上記非可逆伝送線路装置において、所定の動作周波数において、上記順方向では左手系伝送もしくは右手系伝送で電力伝送されかつ上記逆方向では伝搬定数がゼロで管内波長が無限大となるように電力伝送されるように、伝搬定数と動作周波数との関係を示す分散曲線において所定の伝搬定数及び動作周波数を設定したことを特徴とする。
【0021】
上記非可逆伝送線路装置において、上記非可逆伝送線路装置は、伝搬定数と動作周波数との関係を示す分散曲線において所定の伝搬定数及び動作周波数を設定することにより構成され、所定の移相量だけ移相するマイクロ波移相器であることを特徴とする。
【0022】
上記非可逆伝送線路装置において、上記非可逆伝送線路装置は、上記順方向で伝搬する第1のモードの伝搬定数をβとし、上記逆方向で伝搬する第2のモードの伝搬定数をβとしたとき、β=-β≠0を満たすように構成されたマイクロ波共振器であることを特徴とする。
【0023】
上記非可逆伝送線路装置において、上記非可逆伝送線路装置と結合するように設けられた結合用伝送線路を備え、マイクロ波フィルタを構成したことを特徴とする。
【0024】
上記非可逆伝送線路装置において、上記非可逆伝送線路装置と結合するように設けられた負性抵抗素子を備え、マイクロ波発振器を構成したことを特徴とする。
【0025】
上記非可逆伝送線路装置において、上記非可逆伝送線路装置と結合するように設けられた給電用伝送線路を備え、マイクロ波アンテナ装置を構成したことを特徴とする。
【0026】
上記非可逆伝送線路装置において、上記非可逆伝送線路装置と結合するように設けられた給電用伝送線路と、上記非可逆伝送線路装置と結合するように設けられた複数の分岐用伝送線路とを備え、マイクロ波電力分配器を構成したことを特徴とする。
【0027】
上記非可逆伝送線路装置において、上記非可逆伝送線路装置において、上記容量性素子は当該伝送線路を伝搬する電磁波モードの実効透磁率が負であるマイクロ波素子であり、上記誘導性素子は当該伝送線路を伝搬する電磁波モードの実効誘電率が負であるマイクロ波素子であることを特徴とする。
【0028】
本発明の第2の態様に係るアンテナ装置によれば、
上記非可逆伝送線路装置を用いて構成されたアンテナ装置であって、
上記非可逆伝送線路装置は、所定の動作周波数において高周波信号が上記非可逆伝送線路装置を所定の伝搬方向で伝搬するとき、上記伝搬方向と実質的に同じ方向で漏れ波の主ビームを有する放射パターンの電磁波を放射するとともに、上記伝搬方向と実質的に逆の方向又は上記伝搬方向と実質的に垂直な方向で漏れ波の主ビームを有する放射パターンの電磁波を放射し、
上記アンテナ装置はさらに、
上記非可逆伝送線路装置の第1のポート及び第2のポートのうちの少なくとも一方に高周波信号を入力し、所定の動作周波数において、上記非可逆伝送線路装置を前進波伝送線路又は後退波伝送線路として動作させ、上記非可逆伝送線路装置の非可逆性を利用して、上記入力する高周波信号の振幅と位相の少なくとも一方を制御することにより、上記非可逆伝送線路装置から漏洩する漏洩波を放射波とする主ビームを形成するように制御する制御手段を備えたことを特徴とする。
【0029】
上記アンテナ装置において、上記制御手段は、上記非可逆伝送線路装置の第1のポート及び第2のポートにそれぞれ上記高周波信号を入力し、上記入力する各高周波信号の振幅と位相の少なくとも一方を制御することにより、放射波の主ビームを形成することを特徴とする。
【0030】
上記アンテナ装置において、上記制御手段は、上記第1のポートに上記高周波信号を入力し、上記入力する高周波信号の振幅と位相の少なくとも一方を制御することにより、上記第2のポートにおいて前進波を反射して、放射波の主ビームを形成することを特徴とする。
【0031】
上記アンテナ装置において、上記制御手段は、上記第2のポートに上記高周波信号を入力し、上記入力する高周波信号の振幅と位相の少なくとも一方を制御することにより、上記第1のポートにおいて後退波を反射して、放射波の主ビームを形成することを特徴とする。
【0032】
上記アンテナ装置において、上記制御手段は、上記非可逆伝送線路装置の第1のポート及び第2のポートにそれぞれ上記高周波信号を選択的に入力し、上記入力する高周波信号の振幅と位相の少なくとも一方を制御することにより、放射波の主ビームを形成することを特徴とする。
【0033】
本発明の第3の態様に係る非可逆伝送線路装置によれば、
上記非可逆伝送線路装置はマイクロ波共振器として動作し、
上記非可逆伝送線路装置の各単位セルは、上記非可逆伝送線路装置に入力されるマイクロ波信号の動作周波数と上記非可逆伝送線路装置の位相定数との関係を示す分散曲線において上記非可逆伝送線路装置が所定の位相定数を有するように回路構成され、
上記非可逆伝送線路装置は、
上記第1のポートに接続され、所定の動作周波数において上記第1のポートから見たインピーダンスが第1のインピーダンスとなるように動作する第1の反射用インピーダンス回路と、
上記第2のポートに接続され、上記動作周波数において上記第1のポートから見たインピーダンスが第2のインピーダンスとなるように動作する第2の反射用インピーダンス回路とを備え、
上記第1のインピーダンスは実質的に実部を持たない所定の複素数であり、
上記第2のインピーダンスは、上記第1のインピーダンスと実質的に共役である実質的に実部を持たない複素数であることを特徴とする。
【0034】
上記非可逆伝送線路装置の各単位セルは、上記動作周波数において、上記順方向では右手系伝送で電力伝送されかつ上記逆方向では左手系伝送で電力伝送されるように、上記分散曲線において上記非可逆伝送線路装置が所定の伝搬定数を有するように回路構成されたことを特徴とする。
【0035】
上記非可逆伝送線路装置の各単位セルは、上記動作周波数において、上記順方向では左手系伝送で電力伝送されかつ上記逆方向では右手系伝送で電力伝送されるように、上記分散曲線において上記非可逆伝送線路装置が所定の伝搬定数を有するように回路構成されたことを特徴とする請求項23記載の非可逆伝送線路装置。
【0036】
上記非可逆伝送線路装置の各単位セルは、上記動作周波数において、上記順方向及び上記逆方向の両方で上記マイクロ波信号がその位相定数がゼロの状態で電力伝送されるように、上記分散曲線において上記非可逆伝送線路装置が所定の伝搬定数を有するように回路構成されたことを特徴とする。
【0037】
上記非可逆伝送線路装置において、上記容量性素子は当該伝送線路を伝搬する電磁波モードの実効透磁率が負であるマイクロ波素子であり、上記誘導性素子は当該伝送線路を伝搬する電磁波モードの実効誘電率が負であるマイクロ波素子であることを特徴とする。
【0038】
本発明の第4の態様に係るアンテナ装置によれば、本発明の第3の態様に係る非可逆伝送線路装置を用いて構成されたアンテナ装置であって、
上記第1の反射用インピーダンス回路又は上記第2の反射用インピーダンス回路に接続され、マイクロ波信号を上記非可逆伝送線路装置に給電する給電回路をさらに備えたことを特徴とする。
【0039】
本発明の第5の態様に係るアンテナ装置によれば、本発明の第3の態様に係る非可逆伝送線路装置を用いて構成されたアンテナ装置であって、
上記第1の反射用インピーダンス回路又は上記第2の反射用インピーダンス回路に接続され、上記非可逆伝送線路装置によって受信されたマイクロ波信号を出力する給電回路をさらに備えたことを特徴とする。
【0040】
上記アンテナ装置において、
上記第1の反射用インピーダンス回路は、上記第1のインピーダンスを変化させる第1のインピーダンス変化手段を備え、
上記第2の反射用インピーダンス回路は、上記第2のインピーダンスを変化させる第2のインピーダンス変化手段を備え、
上記アンテナ装置は、
上記出力されたマイクロ波信号の受信電力を検出する受信電力検出手段と、
上記検出された受信電力に基づいて、上記受信電力が最大になるように上記第1及び第2のインピーダンス変化手段をそれぞれ制御する制御手段とをさらに備え、
上記第1及び第2のインピーダンスが変化することにより、上記アンテナ装置の偏波面が変化することを特徴とする。
【0041】
上記アンテナ装置において、上記第1及び第2のインピーダンスは離散的に変化することを特徴とする。
【0042】
上記アンテナ装置において、上記第1及び第2のインピーダンスは連続的に変化することを特徴とする。
【0043】
上記アンテナ装置において、上記第1及び第2の反射用インピーダンス回路のそれぞれは、可変容量ダイオード及びインダクタを含むことを特徴とする。
【0044】
上記アンテナ装置において、上記第1及び第2の反射用インピーダンス回路のそれぞれは、移相器及び伝送線路を含むことを特徴とする。
【0045】
上記アンテナ装置において、
上記第1及び第2の並列枝の回路はそれぞれ移相器を含み、上記移相器に印加する電圧を制御することにより上記第1及び第2の並列枝の回路のインピーダンスを変化させ、
上記第1及び第2の並列枝の回路のインピーダンスが変化することにより、上記アンテナ装置の放射方向が変化することを特徴とする。
【発明の効果】
【0046】
本発明の非可逆伝送線路装置によれば、新規な原理により線路構造の非対称性を実現し、小さな消費電力で非可逆性を制御することができる。また、本発明によれば、そのような非可逆伝送線路装置を備えたアンテナ装置を提供することができる。
【0047】
また、本発明によれば、非可逆伝送線路装置の移相器に印加する印加電圧を変化させることにより、非可逆伝送線路装置の非可逆性を変化させることができ、これにより、放射角を変化させて走査することができるアンテナ装置を提供することができる。
【0048】
また、本発明によれば、直列共振状態及び並列共振状態に加えて、両者が混在する状態を実現できる新規な零次の進行波共振器として動作する伝送線路型共振器を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る非可逆伝送線路装置における第1の例の伝送線路の単位セル60Aの等価回路図である。
【図2】本発明の第1の実施形態に係る非可逆伝送線路装置における第2の例の伝送線路の単位セル60Bの等価回路図である。
【図3】本発明の第1の実施形態に係る非可逆伝送線路装置における第3の例の伝送線路の単位セル60Cの等価回路図である。
【図4】本発明の第1の実施形態に係る非可逆伝送線路装置における第4の例の伝送線路の単位セル60Dの等価回路図である。
【図5】従来技術に係る可逆伝送線路装置における非平衡状態の場合の分散曲線を示すグラフである。
【図6】従来技術に係る可逆伝送線路装置における平衡状態の場合の分散曲線を示すグラフである。
【図7】第1の実施形態に係る非可逆伝送線路装置における非平衡状態の場合の分散曲線を示すグラフである。
【図8】第1の実施形態に係る非可逆伝送線路装置における平衡状態の場合の分散曲線を示すグラフである。
【図9】図1の単位セル60Aを縦続接続して構成された非可逆伝送線路装置70Aの構成を示すブロック図である。
【図10】図2の単位セル60Bを縦続接続して構成された非可逆伝送線路装置70Bの構成を示すブロック図である。
【図11】図3の単位セル60Cを縦続接続して構成された非可逆伝送線路装置70Cの構成を示すブロック図である。
【図12】図4の単位セル60Dを縦続接続して構成された非可逆伝送線路装置70Dの構成を示すブロック図である。
【図13】本発明の第1の実施形態に係る非可逆伝送線路装置70Aの構成を示す斜視図である。
【図14】図13の非可逆伝送線路装置70Aにおける伝送線路の単位セル60Aの詳細構成を示す斜視図である。
【図15】図14のA-A’線における断面図である。
【図16】比較例の伝送線路装置における平衡状態の場合の分散曲線を示すグラフである。
【図17】図13の非可逆伝送線路装置70Aにおける平衡状態の場合の分散曲線を示すグラフである。
【図18】図13の非可逆伝送線路装置70Aにおける平衡状態の場合の分散曲線を示すもう1つのグラフである。
【図19】本発明の第1の実施形態の第1の変形例に係る非可逆伝送線路装置70Aaの構成を示す斜視図である。
【図20】本発明の第1の実施形態の第2の変形例に係る非可逆伝送線路装置70Abの構成を示す斜視図である。
【図21】図20の非可逆伝送線路装置70Abにおける伝送線路の単位セル60Abの詳細構成を示す斜視図である。
【図22】図21のA1-A1’線における断面図である。
【図23】本発明の第1の実施形態の第3の変形例に係る非可逆伝送線路装置における伝送線路の単位セル60Acの詳細構成を示す斜視図である。
【図24】本発明の第1の実施形態の第4の変形例に係る非可逆伝送線路装置における伝送線路の単位セル60Adの詳細構成を示す斜視図である。
【図25】本発明の第1の実施形態の第5の変形例に係る非可逆伝送線路装置70Aeの構成を示す斜視図である。
【図26】図25の非可逆伝送線路装置70Aeにおける伝送線路の単位セル60Aeの詳細構成を示す斜視図である。
【図27】図26のA2-A2’線における断面図である。
【図28】本発明の第1の実施形態の第6の変形例に係る非可逆伝送線路装置70Afの構成を示す斜視図である。
【図29】図28の非可逆伝送線路装置70Afにおける伝送線路の単位セル60Afの詳細構成を示す斜視図である。
【図30】図29のA3-A3’線における断面図である。
【図31】本発明の第1の実施形態の第7の変形例に係る非可逆伝送線路装置における伝送線路の単位セル60Agの詳細構成を示す斜視図である。
【図32】本発明の第1の実施形態の第8の変形例に係る非可逆伝送線路装置における伝送線路の単位セル60Ahの詳細構成を示す斜視図である。
【図33】本発明の第1の実施形態の第9の変形例に係る非可逆伝送線路装置70Aiの分解構成を示す斜視図である。
【図34】図33の非可逆伝送線路装置70Aiの断面図である。
【図35】本発明の第2の実施形態に係る伝送線路型共振器の構成を示すブロック図である。
【図36】図35の伝送線路型共振器の第1の動作状態を示すブロック図である。
【図37】図35の伝送線路型共振器の第2の動作状態を示すブロック図である。
【図38】図35の伝送線路型共振器の第3の動作状態を示すブロック図である。
【図39】図35の伝送線路型共振器の第4の動作状態を示すブロック図である。
【図40】本発明の第3の実施形態に係る帯域阻止フィルタ90の構成を示す斜視図である。
【図41】本発明の第3の実施形態の第1の変形例に係る帯域阻止フィルタ90の構成を示す斜視図である。
【図42】図41の帯域阻止フィルタ90の断面図である。
【図43】本発明の第3の実施形態の第2の変形例に係る帯域通過フィルタの構成を示すブロック図である。
【図44】本発明の第4の実施形態に係る等電力分配器の構成を示すブロック図である。
【図45】本発明の第5の実施形態に係る直列帰還型発振器の構成を示すブロック図である。
【図46】本発明の第5の実施形態の第1の変形例に係る直列帰還型発振器の構成を示すブロック図である。
【図47】本発明の第5の実施形態の第2の変形例に係る並列帰還型発振器の構成を示すブロック図である。
【図48】本発明の第6の実施形態に係るアンテナ装置の構成を示すブロック図である。
【図49】本発明の第6の実施形態の第1の変形例に係るアンテナ装置の構成を示すブロック図である。
【図50】本発明の第6の実施形態の第2の変形例に係るアンテナ装置の構成を示すブロック図である。
【図51】本発明の第7の実施形態に係るアンテナ装置の構成を示すブロック図である。
【図52】本発明の第7の実施形態の第1の変形例に係るアンテナ装置の構成を示すブロック図である。
【図53】本発明の第7の実施形態の第2の変形例に係るアンテナ装置の構成を示すブロック図である。
【図54】本発明の第7の実施形態の第3の変形例に係るアンテナ装置の構成を示すブロック図である。
【図55】図51~図54のアンテナ装置のポートP1に高周波信号を入力したときの右手系伝送線路における前進波の位相の流れと電力の流れを示す模式図である。
【図56】図51~図54のアンテナ装置のポートP2に高周波信号を入力したときの左手系伝送線路における後退波の位相の流れと電力の流れを示す模式図である。
【図57】本発明の第8の実施形態に係る伝送線路型共振器の構成を示すブロック図である。
【図58】本発明の第8の実施形態の第1の変形例に係る伝送線路型共振器の構成を示すブロック図である。
【図59】本発明の第8の実施形態の第2の変形例に係る伝送線路型共振器の構成を示すブロック図である。
【図60】本発明の第8の実施形態の第3の変形例に係る伝送線路型共振器の構成を示すブロック図である。
【図61】本発明の第8の実施形態に係る伝送線路型共振器を備えたアンテナ装置の構成を示すブロック図である。
【図62】本発明の第8の実施形態に係る伝送線路型共振器を備えたアンテナ装置の第1の変形例の構成を示すブロック図である。
【図63】本発明の第8の実施形態に係る伝送線路型共振器を備えたアンテナ装置の第2の変形例の構成を示すブロック図である。
【図64】本発明の第8の実施形態に係る伝送線路型共振器を備えたアンテナ装置の第3の変形例の構成を示すブロック図である。
【図65】本発明の第8の実施形態の第1の実施例に係る伝送線路型共振器の構成を示す斜視図である。
【図66】本発明の第8の実施形態の第2の実施例に係る伝送線路型共振器の構成を示す斜視図である。
【図67】本発明の第8の実施形態の第3の実施例に係るアンテナ装置の構成を示す斜視図である。
【図68】本発明の第8の実施形態の第4の実施例に係るアンテナ装置の構成を示す斜視図である。
【図69】本発明の第8の実施形態の第5の実施例に係るアンテナ装置の構成を示す斜視図である。
【図70】本発明の第8の実施形態の第6の実施例に係る伝送線路型共振器の構成を示す斜視図である。
【図71】基本的な右手/左手系複合伝送線路100を用いた従来技術に係る伝送線路型共振器の等価回路モデルを示す回路図である。
【図72】図71の単位セルUC(n=1,2,…,N)を簡略化して表した、従来技術に係る伝送線路型共振器の等価回路モデルを示す回路図である。
【図73】対称T型構造を有する図71の単位セルUCの一例を示す回路図である。
【図74】対称π構造を有する図71の単位セルUCの一例を示す回路図である。
【図75】本発明の第9の実施形態に係る伝送線路型共振器の構成を示すブロック図である。
【図76】図75の非可逆伝送線路装置70AのポートP1を、インピーダンスjBを有する反射素子151Rで終端したときの、単位セルUCのポートP12から見た入力インピーダンスZin,1を示すブロック図である。
【図77】図75の非可逆伝送線路装置70AのポートP1を、インピーダンスjBを有する反射素子151Rで終端したときの、単位セルUCのポートP12から見た入力インピーダンスZin,1を示すブロック図である。
【図78】図75の反射素子151R及び152Rを備えた集中定数回路の閉ループ回路を示すブロック図である。
【図79】本発明の第9の実施形態の第1の実施例に係る伝送線路型共振器の構成を示す上面図である。
【図80】図79のA11-A11’線における断面図である。
【図81】図79のA12-A12’線における断面図である。
【図82】図79の伝送線路型共振器を示す斜視図である。
【図83】本発明の第9の実施形態の第2の実施例に係る伝送線路型共振器の構成を示す上面図である。
【図84】本発明の第9の実施形態の第3の実施例に係るアンテナ装置の構成を示すブロック図である。
【図85】本発明の第9の実施形態の第4の実施例に係るアンテナ装置の構成を示すブロック図である。
【図86】本発明の第9の実施形態の第5の実施例に係るアンテナ装置の構成を示すブロック図である。
【図87】図86のアンテナ装置の構成を示す上面図である。
【図88】本発明の第9の実施形態の第5の実施例に係るアンテナ装置の構成を示す上面図である。
【図89】本発明の第10の実施形態に係る非可逆伝送線路装置70Eの構成を示す斜視図である。
【図90】図89の非可逆伝送線路装置70Eにおける伝送線路の単位セル60Eの詳細構成を示す斜視図である。
【図91】図90のA6-A6’線における断面図である。
【図92】本発明の第1の実施形態の第10の変形例に係る非可逆伝送線路装置70Alの構成を示す斜視図である。
【図93】図92の非可逆伝送線路装置70Alにおける伝送線路の単位セル60Alの詳細構成を示す斜視図である。
【図94】図93のA7-A7’線における断面図である。
【図95】図89の非可逆伝送線路装置70E(キャパシタなし)及び図92の非可逆伝送線路装置70Al(キャパシタあり)における分散曲線を示すグラフである。
【図96】図89の非可逆伝送線路装置70EにおけるSパラメータの周波数特性を示すグラフである。
【図97】図89の非可逆伝送線路装置70Eにおける分散曲線を示すグラフである。
【図98】図89の非可逆伝送線路装置70Eにおける分散曲線について、シミュレーション及び測定により得た正規化位相定数の平均値を示すグラフである。
【図99】図89の非可逆伝送線路装置70Eにおけるスタブ導体13A,13Bの長さに対するインダクタンスのシミュレーション結果を示すグラフである。
【図100】図89の非可逆伝送線路装置70Eにおけるスタブ導体13A,13Bの長さに対するインダクタンスの測定結果を示すグラフである。
【図101】図91の非可逆伝送線路装置70Eにおけるフェライト角棒15の境界条件を説明するための図である。
【図102】図101の非可逆伝送線路装置に係る定式化されたモデルにより得た分散曲線、及び位相定数の平均値を示すグラフである。
【図103】図101の非可逆伝送線路装置におけるインピーダンスZに対する周波数の特性を示すグラフである。
【図104】本発明の第10の実施形態の第1の変形例に係る非可逆伝送線路装置70Fの構成を示す斜視図である。
【図105】図104の非可逆伝送線路装置70Fにおける伝送線路の単位セル60Fの詳細構成を示す斜視図である。
【図106】図104の非可逆伝送線路装置70Fにおける伝送線路の単位セル60Fの等価回路を示す図である。
【図107】図104の非可逆伝送線路装置70Fにおける分散曲線を示すグラフである。
【図108】図104の非可逆伝送線路装置70FにおけるSパラメータの周波数特性を示すグラフである。
【図109】本発明の第10の実施形態の第2の変形例に係る非可逆伝送線路装置の構成を示す断面図である。
【図110】図109の非可逆伝送線路装置における減衰定数を示すグラフである。
【図111】図109の非可逆伝送線路装置における位相定数を示すグラフである。
【図112】図109の非可逆伝送線路装置におけるブロッホインピーダンスの周波数特性を示すグラフである。
【図113】図109の非可逆伝送線路装置におけるSパラメータの周波数特性を示すグラフである。
【図114】本発明の第11の実施形態に係る非可逆伝送線路装置70Amの構成を示す斜視図である。
【図115】図114の非可逆伝送線路装置70Amにおける伝送線路の単位セル60Amの詳細構成を示す斜視図である。
【図116】図115のA8-A8’線における断面図である。
【図117】従来技術に係る非可逆伝送線路装置の構成を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0050】
以下、本発明に係る実施形態について図面を参照して説明する。なお、以下の各実施形態において、同様の構成要素については同一の符号を付している。

【0051】
第1の実施形態.
まず、本発明に係る非可逆伝送線路装置の基本構成及び動作原理について、図1~図12を参照して説明する。本明細書中で用いた数式については、各式の後に示した丸括弧でくくられた番号を参照する。

【0052】
本発明の実施形態に係る、非可逆伝送線路装置は、伝送線路の単位セルを縦続接続して構成される。図1~図4は、本発明の第1の実施形態に係る非可逆伝送線路装置における例示的な伝送線路の単位セル60A~60Dの等価回路図である。ここで、各単位セルは、順方向と逆方向の伝搬定数が異なる非可逆位相推移特性を有する伝送線路部分を含み、直列枝の回路に容量性素子、並列枝の回路に誘導性素子が等価的に挿入された構成を有する(図1~図4を参照。)。このような本願発明に係る非可逆伝送線路装置の構成を適用可能な回路又は装置は、ストリップ線路、マイクロストリップ線路、スロット線路、コプレーナ線路などマイクロ波、ミリ波、準ミリ波、テラヘルツ波において用いられるプリント基板回路、導波管、誘電体線路を含み、これらだけでなく、プラズモン、ポラリトン、マグノン等を含む導波モードあるいは減衰モードを支える構成全般、あるいはそれらの組み合わせ、さらに等価回路として記述可能な自由空間などの全てを含む。非可逆伝送線路装置による伝送する電磁波は、例えばUHF(Ultra High Frequency)バンドの周波数帯以上のマイクロ波、ミリ波,準ミリ波、テラヘルツ波を含み、本明細書では、これらを総称して「マイクロ波」という。

【0053】
非可逆位相推移特性を有する伝送線路装置は、上述した伝送線路のうち、特にジャイロ異方性を有する材料を部分的もしくは全体的に含み、かつ電磁波の伝搬方向に対して異なる磁化方向(より好ましくは、伝搬方向に対して直交する方向)で磁化されて、上記伝搬方向と上記磁化方向とにより形成される面に対して非対称性を有する構造の伝送線路を用いて構成される。非可逆位相推移特性を有する伝送線路としては、上述した伝送線路以外に、同等の非可逆位相推移機能を有する、波長に比べて充分小さな集中定数素子も使用可能である。ジャイロ異方性を有する材料としては、自発磁化もしくは外部より印加した直流もしくは低周波の磁界により誘起された磁化あるいは自由電荷の周回運動により、材料の特性を表す誘電率テンソルもしくは透磁率テンソルあるいはその両方が、ジャイロ異方性を持つ状態として表される場合全てを含む。ジャイロ異方性を有する材料の具体例としては、マイクロ波、ミリ波などで用いられるフェライトなどのフェリ磁性体、強磁性体材料、固体プラズマ(半導体材料など)及び液体、気体プラズマ媒質、さらに微細加工などにより構成された磁性人工媒質などが挙げられる。

【0054】
直列枝の回路に挿入される容量性素子としては、電気回路でよく用いられるコンデンサ、マイクロ波、ミリ波などで用いられる分布定数型容量素子だけでなく、等価的には、伝送線路中を伝搬する電磁波モードの実効透磁率が負の値を持つような回路又は回路素子であってもよい。負の実効透磁率を示すためには、直列枝の回路が容量性素子として支配的に動作する線路として等価的に記述される必要があり、負の実効透磁率を示す素子の具体例としては、金属からなるスプリットリング共振器、スパイラル構成などの磁気的共振器を少なくとも1つ含む空間的配置、あるいは磁気的共振状態にある誘電体共振器の空間的配置、あるいはフェライト基板マイクロストリップ線路に沿って伝搬するエッジモードのように、負の実効透磁率を持つ導波モードもしくは減衰モードで動作するマイクロ波回路などが使用可能である。さらに、直列枝の回路に挿入される容量性素子としては、上述したもの以外に、容量性素子と誘導性素子の直列接続、並列接続あるいはそれらの組み合わせであってもよい。挿入されるべき部分の素子又は回路が全体として容量性を示すものであってもよい。

【0055】
並列枝の回路に挿入される誘導性素子として、電気回路で用いられるコイルなどの集中定数型素子や、マイクロ波、ミリ波などで用いられる短絡スタブ導体などの分布定数型誘導性素子だけでなく、伝送線路中を伝搬する電磁波モードの実効誘電率が負の値を持つ回路又は素子を用いることができる。負の実効誘電率を示すためには、並列枝が誘導性素子として支配的に動作する伝送線路として等価的に記述される必要があり、負の実効誘電率を示す素子の具体例としては、金属細線、金属球などの電気的共振器を少なくとも1つ含む空間的配置、あるいは金属だけでなく電気的共振状態にある誘電体共振器の空間的配置、あるいはTEモードが遮断領域にある導波管、平行平板線路など、負の実効誘電率を持つ導波モードもしくは減衰モードで動作するマイクロ波回路などが使用可能である。また、並列枝の回路に挿入される誘導性素子としては、上述したもの以外に、容量性素子と誘導性素子の直列接続、並列接続あるいはそれらの組み合わせであってもよい。挿入されるべき部分が全体として誘導性を示す回路又は素子であってもよい。

【0056】
非可逆位相推移特性を有する伝送線路装置において、伝送線路中を伝搬する電磁波モードの実効透磁率が負の場合、減衰モードとなりうるが、負の実効透磁率は、直列枝の回路に容量性素子が挿入された場合に相当することから、同線路の等価回路は、非可逆位相推移部分と直列容量素子部分の両方を含む。

【0057】
非可逆位相推移特性を有する伝送線路装置において、伝送線路中を伝搬する電磁波モードの実効誘電率が負の場合、減衰モードとなりうるが、負の実効誘電率は、並列枝の回路に誘導性素子が挿入された場合に相当することから、同線路の等価回路は、非可逆位相推移部分と並列誘導素子部分の両方を含む。

【0058】
図1及び図2は、単位セル60A,60Bが非対称T型構造及び非対称π型構造をそれぞれ有する場合を示している。また、図3及び図4は、より単純な場合として、単位セル60C,60Dが対称T型構造及び対称π型構造をそれぞれ有する場合を示している。以下では原則として、単位セル60A~60Dの線路長(つまり周期長さd=d1+d2)が波長に比べて十分小さい場合を仮定しているので、従来技術に係る右手/左手系複合伝送線路装置における伝送線路の単位セルの取り扱いと同様に、T型構造、π型構造あるいはL型構造の場合であっても、本質的に同様の結果が得られる。実際、L型構造は、パラメータ操作により図1又は図2の場合に含められる。なお、波長に対する単位セル60A~60Dの線路長がここで述べる基本的動作を制約しないことを強調しておく。

【0059】
図1~図4に示す線路構造は単純で、所定の線路長(図1及び図2では線路長d1,d2であり、図3及び図4では線路長d/2である。)をそれぞれ有する2本の伝送線路部分61,62を含む伝送線路の直列枝の回路に容量性素子又は容量性を示す回路網が挿入され、並列枝の回路には誘導性素子又は誘導性回路網が挿入されている。これらの素子をまとめて単純に実効的な大きさ(線路長)を示すために、図1においては、キャパシタC1,C2及びインダクタLをそれぞれ挿入するように図示する。同様に、図2においては、キャパシタC及びインダクタL1,L2をそれぞれ挿入するように図示する。伝送線路部分61,62はそれぞれ、その順方向と逆方向の伝搬定数が異なる非可逆位相推移特性を有するように構成されるが、本明細書では、伝搬定数を考察する際に、伝搬定数の虚部、すなわち位相定数を用いる。伝送線路部分61の非可逆性を表すパラメータとして、順方向(ポートP11からポートP12に向う方向をいう。)の位相定数及び特性インピーダンスをそれぞれβp1及びZp1と表し、逆方向(ポートP12からポートP11に向う方向をいう。)のそれらをそれぞれ、βm1及びZm1と表す。同様に、伝送線路部分62の非可逆性を表すパラメータとして、順方向の位相定数及び特性インピーダンスをそれぞれβp2及びZp2と表し、逆方向のそれらをそれぞれ、βm2及びZm2と表す。図1及び図2の伝送線路は2つの伝送線路部分61,62が非対称であるが、図3及び図4の伝送線路は2つの伝送線路部分61,62が対称であり、d1=d2=d/2,βp1=βp2=βp,βm1=βm2=β,Zp1=Zp2=Z,Zm1=Zm2=Zを満たし、さらに、T型構造の場合はC1=C2=2Cであり、π型構造の場合はL1=L2=2Lである。具体例として、図3及び図4の伝送線路において、単位セル60A~60Dの両端に周期的境界条件を課すと、次式を得る。

【0060】
【数1】
JP0005877193B2_000002t.gif
(1)

【0061】
ここで、Δβ及び
【数2】
JP0005877193B2_000003t.gif
は次式で表される。

【0062】
【数3】
JP0005877193B2_000004t.gif
【数4】
JP0005877193B2_000005t.gif

【0063】
ω及びβはそれぞれ、動作角周波数と、周期構造に沿って伝搬する電磁波の位相定数とを表す。式(1)は動作角周波数ωと位相定数βの関係を表していることから、分散関係式(ω-βダイアグラム)となる。

【0064】
式(1)において、可逆性(β=βかつZ=Z)を仮定すると、従来技術に係る可逆伝送線路装置と同じになり、式(1)は次式に簡単化される。

【0065】
【数5】
JP0005877193B2_000006t.gif
(2)

【0066】
但し、式(2)中のアドミタンスY及びインピーダンスZはそれぞれ、Y=1/jωL、Z=1/jωCと仮定している。

【0067】
図5は、従来技術に係る可逆伝送線路装置における非平衡状態の場合の分散曲線を示すグラフであり、図6は、従来技術に係る可逆伝送線路装置における平衡状態の場合の分散曲線を示すグラフである。図5及び図6のグラフは、正規化位相定数β・d/πに対する角周波数ωの特性を示す。式(2)で表されるような従来技術に係る可逆伝送線路装置の場合、典型的な分散曲線は図5のように表され、一般に右手系(RH)伝送特性及び左手系(LH)伝送特性を示す帯域の間に禁止帯が現れる。左手系伝送帯域の上限及び右手伝送帯域の下限の周波数は、位相定数β=0の条件を式(2)に課すことにより、角周波数ωに関する2次方程式の解として得られる。結果として次の2つの解を得る。

【0068】
【数6】
JP0005877193B2_000007t.gif
(3)
【数7】
JP0005877193B2_000008t.gif
(4)

【0069】
ここで、ε及びμは、単位セル60A~60Dの伝送線路部分61,62の実効誘電率及び透磁率を表す。従って、禁止帯がゼロとなるように、カットオフ周波数がω=ωを満たすためには、式(2)が位相定数β=0の条件に対して重解を持てばよく、結果として次式を得る。

【0070】
【数8】
JP0005877193B2_000009t.gif
(5)

【0071】
式(5)の結果は、直列枝の回路に挿入される容量性素子であるキャパシタCと、並列枝の回路に挿入される誘導性素子であるインダクタLとがなすインピーダンス√(L/C)が、挿入先の伝送線路部分61,62の特性インピーダンスZと同じであれば、ギャップが生じないというものであり、一種のインピーダンス整合条件となっている。その場合の分散曲線を図6に示す。

【0072】
式(1)により与えられる非可逆伝送線路装置の場合の分散曲線について説明する。可逆伝送線路装置の場合、式(2)によれば、分散曲線は位相定数β=0の直線(ω軸)に対して対称であるが、非可逆伝送線路装置の場合、分散曲線の対称軸がβ=0の直線よりもβに関して
【数9】
JP0005877193B2_000010t.gif
(6)
だけ正の方向にシフトしていることが、式(1)の左辺から容易にわかる。従って、図5に対応して、図7を得る。

【0073】
図7は、第1の実施形態に係る非可逆伝送線路装置における非平衡状態の場合の分散曲線を示すグラフであり、図8は、第1の実施形態に係る非可逆伝送線路装置における平衡状態の場合の分散曲線を示すグラフである。

【0074】
このように、非可逆伝送線路装置が、可逆伝送線路装置と大きく異なるのは、分散曲線の対称軸がω軸から右側又は左側にシフトすることであり、これは、順方向と逆方向の位相定数がβ≠β(従って、順方向と逆方向の伝搬定数が互いに異なる)、つまり非可逆位相推移の効果による。結果として、次の5種類の伝送帯域(A)~(E)に分類することができる。

【0075】
(A)順方向及び逆方向伝搬共に左手系伝送。但し、伝搬定数の大きさは互いに異なる。
(B)順方向が左手系伝送、逆方向は伝搬定数がゼロで管内波長が無限大となる。
(C)順方向が右手系伝送、逆方向が左手系伝送。
(D)順方向が右手系伝送、逆方向は伝搬定数がゼロで管内波長が無限大となる。
(E)順方向及び逆方向伝搬共に右手系伝送。但し、伝搬定数の大きさは互いに異なる。

【0076】
但し、一般に、伝送帯域(C)では、図7からわかるように中央に阻止帯域(禁止バンド)が現れる。また、特に、図7及び図8においてRH/LHで示している伝送帯域を利用する際には、各ポートに双方向(順方向及び逆方向)でマイクロ波信号を入力しても、位相の流れが所定の同一方向を向く(左手系伝送及び右手系伝送)という特長を有する。

【0077】
比較のため、従来技術の可逆伝送線路装置の場合を考えると、電力伝送の方向が正及び負となる2つの同一モードは、式(5)の整合条件が成立している場合に、つまり、図6に示すように、位相定数β=0の点で2つのモードが結合することなく交差することになる。同様に、式(1)により与えられる分散曲線の対称軸線上β=Δβ/2において、式(1)は角周波数ωに関する2次方程式となり、バンドギャップを生じさせないために重解の条件を課すと、次式を得る。

【0078】
【数10】
JP0005877193B2_000011t.gif
もしくは
【数11】
JP0005877193B2_000012t.gif
(7)

【0079】
但し、ε及びμは、単位セル60A~60Dの非可逆伝送線路部分61,62における順方向の実効誘電率及び透磁率を表し、ε及びμは逆方向の場合のそれらを表す。式(7)より、2つのモードが交差する付近でギャップを生じさせないための条件は、可逆伝送線路装置の式(5)の場合と類似して、インピーダンス整合条件となっている。しかも、順方向もしくは逆方向のどちらかで整合が取れるように、インダクタL及びキャパシタCを挿入すればよく、インピーダンス整合条件が、可逆伝送線路装置の場合に比べて、より緩やかであることが特長として挙げられる。

【0080】
図1及び図2に示されているような、2つの伝送線路部分61,62が非対称である、より一般的な場合について、若干説明する。このような非対称の場合であっても、基本的には図7及び図8と同様の分散曲線に従って動作する。分散曲線の対称軸の位置は、図7及び図8の横軸の正規化位相定数β・d/π上で次式の位置に修正される。

【0081】
【数12】
JP0005877193B2_000013t.gif

【0082】
また、2つの非可逆伝送線路部分61,62が同一の伝搬特性を有している場合、バンドギャップを生じない整合条件は式(7)と同じになる。但し、図1の場合は
【数13】
JP0005877193B2_000014t.gif
であり、図2の場合、
【数14】
JP0005877193B2_000015t.gif
である。

【0083】
本発明の実施形態に係る非可逆伝送線路装置の全体は、図9~図12に示すように、図1~図4の単位セル60A~60Dを少なくとも1つ以上含みかつ縦続接続されて構成される。図9は、図1の単位セル60Aを縦続接続して構成された非可逆伝送線路装置70Aの構成を示すブロック図である。図9において、ポートP1とポートP2との間に、複数個の単位セル60Aが縦続接続されることにより、非可逆伝送線路装置70Aを構成している。図10は、図2の単位セル60Bを縦続接続して構成された非可逆伝送線路装置70Bの構成を示すブロック図である。図10において、ポートP1とポートP2との間に、複数個の単位セル60Bが縦続接続されることにより、非可逆伝送線路装置70Bを構成している。図11は、図3の単位セル60Cを縦続接続して構成された非可逆伝送線路装置70Cの構成を示すブロック図である。図11において、ポートP1とポートP2との間に、複数個の単位セル60Cが縦続接続されることにより、非可逆伝送線路装置70Cを構成している。図12は、図4の単位セル60Dを縦続接続して構成された非可逆伝送線路装置70Dの構成を示すブロック図である。図12において、ポートP1とポートP2との間に、複数個の単位セル60Dが縦続接続されることにより、非可逆伝送線路装置70Dを構成している。なお、複数個の単位セル60A~60Dが縦続接続される場合においても、必ずしも単位セル60A~60Dのうちの単一タイプのものを用いて構成される必要はなく、異なるタイプの単位セルを組み合わせて縦続接続してもよい。

【0084】
以下、本発明の新規な特徴を備えた、非可逆伝送線路装置について説明する。

【0085】
図13は、本発明の第1の実施形態に係る非可逆伝送線路装置70Aの構成を示す斜視図である。図14は、図13の非可逆伝送線路装置70Aにおける伝送線路の単位セル60Aの詳細構成を示す斜視図である。図15は、図14のA-A’線における断面図である。説明のために、図面中に示すXYZ座標を参照する。図13を参照すると、非可逆伝送線路装置70Aは、XY面に平行に設けられた接地導体11と、接地導体11上においてX軸に沿って延在するフェライト角棒15と、接地導体11上においてフェライト角棒15の+Y側及び-Y側の両方に設けられた誘電体基板10とを備える。非可逆伝送線路装置70Aのフェライト角棒15は、電磁波の伝搬方向とは異なる磁化方向に磁化されてジャイロ異方性を有するように自発磁化を有する。磁化方向は、好ましくは電磁波の伝搬方向(X軸に沿った方向)と直交する方向(+Z方向)である。自発磁化を有するフェライト角棒15に代えて、後述するように、自発磁化を持たないフェライト角棒を用い、外部の磁界発生器によって磁界が印加されてもよい。非可逆伝送線路装置70Aは、図9と同様に、伝送線路の単位セル60Aを縦続接続して構成される。ポートP1,P2のいずれかから、マイクロ波信号が供給される。

【0086】
図14及び図15を参照して、図13の単位セル60Aのうちの1つについて説明する。フェライト角棒15上において、X軸に沿って延在するストリップ導体12が形成される。ストリップ導体12の-X側の端部にキャパシタC1が接続され、キャパシタC1はさらに、図14に示した単位セル60Aの-X側に隣接した単位セル60Aに接続される。同様に、ストリップ導体12の+X側の端部にキャパシタC2が接続され、キャパシタC2はさらに、図14に示した単位セル60Aの+X側に隣接した単位セル60Aに接続される。図14のキャパシタC1,C2は、図1のキャパシタC1,C2に対応する。各単位セル60Aのストリップ導体12及びキャパシタC1,C2は、接地導体11及びフェライト角棒15とともに、X軸に沿ってポートP1,P2間にわたって延在するマイクロストリップ線路12Aを形成する。図14のキャパシタC1,C2は、マイクロストリップ線路12Aに直列に挿入されている。

【0087】
単位セル60Aはさらに、ストリップ導体12の+Y側に延在するスタブ導体13Aと、ストリップ導体12の-Y側に延在するスタブ導体13Bとを備える。スタブ導体13A,13Bは、マイクロストリップ線路12Aからそれぞれ分岐し、図1のインダクタL(並列枝の回路)に対応する2つの並列枝の回路として設けられる。詳しくは、スタブ導体13Aは誘電体基板10上をY軸に沿って+Y方向に延在し、その一端はストリップ導体12に接続され、その他端は誘電体基板10の+Y側の端部において接地導体11に短絡される(短絡スタブ)。同様に、スタブ導体13Bは誘電体基板10上をY軸に沿って-Y方向に延在し、その一端はストリップ導体12に接続され、その他端は誘電体基板10の-Y側の端部において接地導体11に短絡される。このように、スタブ導体13A,13Bは、マイクロストリップ線路12Aの伝搬方向(例えば+X方向又は-X方向:図14ではストリップ導体12上の矢印により示す)と磁化方向(例えば+Z方向:図14ではフェライト角棒15の飽和磁化M及び内部磁界Hの矢印により示す)とにより形成される面(XZ面)に対して、互いに異なる側に形成される。スタブ導体13A,13Bは、誘導性素子としてそれぞれ機能する。スタブ導体13A,13Bは、マイクロストリップ線路12Aから見たスタブ導体13Aのインピーダンスが、マイクロストリップ線路12Aから見たスタブ導体13Bのインピーダンスとは異なるように構成される。スタブ導体13Aは長さd12+d17を有し、スタブ導体13Bは長さd13+d17を有し、従って、スタブ導体13A,13Bは互いに異なる電気長を有し、これにより、互いに異なるインピーダンスを有する。各スタブ導体13A,13Bのインピーダンスは、好ましくは実質的に実部を持たない所定の複素数であり、さらに好ましくは純虚数である。なお、図14では、スタブ導体13A,13Bが同じ幅d14を有しているように図示しているが、これらの幅が互いに異なっていてもよい。

【0088】
このように、マイクロストリップ線路12Aには、単位セル60Aの線路長d=d15+d14+d16を周期としてキャパシタが周期的に挿入され、また、線路長dを周期としてスタブ導体が周期的に設けられる。

【0089】
この構成によれば、各スタブ導体13A,13Bのインピーダンス(すなわち電気長)を互いに相違させたとき、非可逆伝送線路装置70Aの構造が、マイクロストリップ線路12Aの伝搬方向と磁化方向とにより形成される面(XZ面)に対して、非対称になる。順方向(ポートP1からP2への向き)の伝搬定数と逆方向(ポートP2からP1への向き)の伝搬定数とが互いに相違し、この結果、順方向に右手系モードが伝搬し、逆方向に左手系モードが伝搬する状態を実現することができる。この構成によれば、各スタブ導体13A,13Bの長さd12+d17、d13+d17を調節することにより、非可逆性の大きさを変化させることができる。

【0090】
なお、図13の非可逆伝送線路装置70Aは、5個の単位セル60Aを含むように図示しているが、この個数に限定するものではない。さらに、キャパシタC1,C2は、伝搬する電磁波の周波数に依存して、互いに隣接するストリップ導体12間に実体のあるキャパシタを接続してもよいし、隣接するストリップ導体12間の浮遊容量のみで構成してもよく、もしくは、この浮遊容量と並列接続されたキャパシタとからなる直列容量をキャパシタCとしてもよい。また、分布定数素子であるスタブ導体13A,13Bに代えて、互いに異なる所定のインピーダンスを有する集中定数素子をストリップ導体12の+Y側と-Y側にそれぞれ設けてもよい。

【0091】
次に、図16~図18のシミュレーション結果を参照して、図13の非可逆伝送線路装置70Aの効果について説明する。ここでは、図14及び図15中の寸法について、d11=0.8mm、d14=d15=d16=1mm、d17=0.794mmを用いた。また、C1=C2=0.5pFを用いた。

【0092】
図16は、比較例の伝送線路装置における平衡状態の場合の分散曲線を示すグラフであり、図17は、図13の非可逆伝送線路装置70Aにおける平衡状態の場合の分散曲線を示すグラフである。図16の伝送線路装置では、図14のスタブ導体13Aを除去し、スタブ導体13Bのみを誘導性素子として設けた。図16において、点線は、印加磁界が0であり、フェライト角棒15を誘電体棒と見なすことができる場合(可逆な場合)を示し、実線は、図13の+Z方向の飽和磁化μ=175mT及び+Z方向の内部磁界μ=50mTを有する場合(非可逆な場合)を示す。また、図17においては、図13の非可逆伝送線路装置70Aについて+Z方向の飽和磁化μ=175mT及び+Z方向の内部磁界μ=50mTの条件のもとでシミュレーションを行い、点線は、スタブ導体13A,13Bの長さが互いに等しい場合(d12=d13=4.5mm)を示し、実線は、スタブ導体13A,13Bの長さが互いに異なる場合(d12=7.5mm、d13=2.6mm)を示す。これらの場合のそれぞれについて、ポートP1からポートP2への順方向の透過係数S21と、ポートP2からポートP1への逆方向の透過係数S12とを示す。図16の場合、印加磁界が0である場合、順方向伝搬と逆方向伝搬との間において可逆な伝搬特性を示すのに対して、+Z方向の飽和磁化μ=175mT及び+Z方向の内部磁界μ=50mTを有する場合、分散曲線の縦軸に平行な対称軸が右側に移動し、非可逆な伝搬特性を示していることがわかる。図17においては、スタブ導体13A,13Bの長さd12+d17、d13+d17が互いに等しい場合、非可逆伝送線路装置70Aの構造がマイクロストリップ線路12Aの伝搬方向と磁化方向とにより形成される面に対して対称性を有することから可逆な伝搬特性を示しているのに対して、両者の長さが互いに異なる場合、非可逆性を示していることがわかる。このように、飽和磁化及び印加磁界を変えることなく、線路構造の非対称性を変えることにより、非可逆性の大きさを同程度に変更可能であることを数値計算により確認した。

【0093】
図18は、図13の非可逆伝送線路装置70Aにおける平衡状態の場合の分散曲線を示すもう1つのグラフである。図18においては、図13の非可逆伝送線路装置70Aについて+Z方向の飽和磁化μ=175mT及び+Z方向の内部磁界μ=50mTの条件のもとでシミュレーションを行い、点線は、スタブ導体13A,13Bの長さが互いに等しい場合(d12=d13=4.5mm)を示し、鎖線は、スタブ導体13A,13Bの長さが異なる場合(d12=6.0mm、d13=3.5mm)を示し、実線は、スタブ導体13A,13Bの長さがさらに異なる場合(d12=7.0mm、d13=3.0mm)を示す。図18を参照すると、スタブ導体13A,13Bの長さd12+d17、d13+d17の相違が大きくなるほど、非可逆伝送線路装置70Aの構造の非対称性が大きくなり、これに応じて非可逆性も大きくなることがわかる。

【0094】
非可逆性の大きさを変化させるために、本実施形態のように「非可逆伝送線路装置70Aの構造の非対称性を変える」ことは、従来技術(例えば特許文献1の発明)の「印加磁界を変える」ことに比べて、以下の優位点を持つ。従来技術では、図16に示すように、順方向伝搬モード及び逆方向伝搬モードを表す2本の分散曲線の交点は印加磁界を変えることで移動するが、印加磁界を変えると、交点に対応する動作周波数が大きく変化してしまうという問題があった。一方で、本実施形態の非可逆伝送線路装置70Aによれば、図17及び図18に示すように、2本の分散曲線の交点は非可逆伝送線路装置70Aの構造の非対称性を変えることにより移動するが、その交点に対応する動作周波数はほとんど移動していない。従って、本実施形態の非可逆伝送線路装置70Aでは、従来技術における非可逆性の大きさを変える際に動作周波数も変化してしまう問題は解決されている。

【0095】
ジャイロ異方性を有する材料内の磁化の大きさと向きを変化させることにより、非可逆位相特性を表すΔβがほぼゼロとなる場合、従来技術である可逆な右手/左手系複合伝送線路と同一の特性を示す。このように、本発明の実施形態に係る右手/左手系複合型の非可逆伝送線路装置は、従来技術である可逆な右手/左手系複合伝送線路の諸特性を包含する、より一般的な伝送線路の動作を提供する。

【0096】
図19は、本発明の第1の実施形態の第1の変形例に係る非可逆伝送線路装置70Aaの構成を示す斜視図である。図13の非可逆伝送線路装置70Aにおける自発磁化を有するフェライト角棒15に代えて、自発磁化を持たないフェライト角棒15Aを用いてもよい。この場合、電磁波の伝搬方向とは異なる磁化方向に磁化するために、+Z方向の磁界を発生する磁界発生器30を用いる。

【0097】
図20は、本発明の第1の実施形態の第2の変形例に係る非可逆伝送線路装置70Abの構成を示す斜視図である。図21は、図20の非可逆伝送線路装置70Abにおける伝送線路の単位セル60Abの詳細構成を示す斜視図である。図22は、図21のA1-A1’線における断面図である。図13~図15の構成では、各スタブ導体13A,13Bの端部が接地導体11に短絡されていたのに対して、本変形例の構成では、短絡されずに開放端になっている(開放スタブ)。スタブ導体13A,13Bが開放端を有していても、各スタブ導体13A,13Bの長さd12、d13を調節することにより、非可逆伝送線路装置70Abの非可逆性の大きさを変化させることができる。

【0098】
図23は、本発明の第1の実施形態の第3の変形例に係る非可逆伝送線路装置における伝送線路の単位セル60Acの詳細構成を示す斜視図である。本変形例の非可逆伝送線路装置は、スタブ導体13A,13Bのインピーダンスを互いに相違させるために、その長さd12+d17、d13+d17を相違させることに代えて、スタブ導体13A,13Bのそれぞれに移相器21A,21Bを設け、その移相量を変化させる。コントローラ20が移相器21A,21Bに印加する電圧を制御することで、移相器21A,21Bの移相量を変化させ、これによりスタブ導体13A,13Bのインピーダンスを互いに異なる所定値にそれぞれ設定することができる。他の単位セル60Acの短絡スタブ導体も同様に移相器を備えて構成され、それらの移相量はコントローラ20により制御される。本変形例の非可逆伝送線路装置によれば、要求される非可逆性の大きさに応じて、スタブ導体13A,13Bのインピーダンスを互いに異なる所定値にそれぞれ設定し、このインピーダンスの相違によって、線路構造の非対称性を実現することができる。本変形例の非可逆伝送線路装置では、線路構造の非対称性自体を制御している。この構成によれば、ジャイロ回転異方性の性質を制御するために機械的な移動手段又は電磁石を用いて磁界の強さを制御する場合に比べて、移相器21A,21Bに印加する電圧を制御するだけですむので、動作速度の高速化、デバイスサイズの削減、消費電力の削減などの効果を有する。なお、図23では、スタブ導体13A,13Bの長さd12+d17、d12+d17を互いに同じであるように図示しているが、異なっていてもよい。

【0099】
図24は、本発明の第1の実施形態の第4の変形例に係る非可逆伝送線路装置における伝送線路の単位セル60Adの詳細構成を示す斜視図である。図23の構成では、各スタブ導体13A,13Bの端部が接地導体11に短絡されていたのに対して、本変形例の構成では、短絡されずに開放端になっている。スタブ導体13A,13Bが開放端を有していても、コントローラ20が移相器21A,21Bに印加する電圧を制御することで、移相器21A,21Bの移相量を変化させ、これによりスタブ導体13A,13Bのインピーダンスを互いに異なる所定値にそれぞれ設定することができる。

【0100】
図25は、本発明の第1の実施形態の第5の変形例に係る非可逆伝送線路装置70Aeの構成を示す斜視図であり、図26は、図25の非可逆伝送線路装置70Aeにおける伝送線路の単位セル60Aeの詳細構成を示す斜視図であり、図27は、図26のA2-A2’線における断面図である。本変形例の非可逆伝送線路装置70Aeは、図13のフェライト角棒15及び誘電体基板10に代えて、短絡スタブ導体の下まで広がった単一のフェライト基板16を備えている。

【0101】
図28は、本発明の第1の実施形態の第6の変形例に係る非可逆伝送線路装置70Afの構成を示す斜視図である。図29は、図28の非可逆伝送線路装置70Afにおける伝送線路の単位セル60Afの詳細構成を示す斜視図である。図30は、図29のA3-A3’線における断面図である。図25~図27の構成では、各スタブ導体13A,13Bの端部が接地導体11に短絡されていたのに対して、本変形例の構成では、短絡されずに開放端になっている。スタブ導体13A,13Bが開放端を有していても、各スタブ導体13A,13Bの長さを調節することにより、非可逆伝送線路装置70Afの非可逆性の大きさを変化させることができる。

【0102】
図31は、本発明の第1の実施形態の第7の変形例に係る非可逆伝送線路装置における伝送線路の単位セル60Agの詳細構成を示す斜視図である。本変形例の非可逆伝送線路装置では、図25の非可逆伝送線路装置において、図23の非可逆伝送線路装置と同様にスタブ導体13A,13Bのそれぞれに移相器21A,21Bを設け、その移相量を変化させる。従来技術のようにジャイロ回転異方性の性質を制御するために機械的な移動手段又は電磁石を用いて磁界の強さを制御する場合、磁界の強さに応じてフェライトの実効透磁率が変化するので、フェライト基板16上にスタブ導体13A,13Bを形成していると、スタブ導体13A,13Bの入力インピーダンスが磁界によって大きく変化してしまうという問題があった。一方、本変形例の非可逆伝送線路装置は、移相器21A,21Bの印加電圧を制御する構造であるので、印加磁界を変化させる必要がない。このため、図31のように、フェライト基板16上にスタブ導体13A,13Bを形成することができ、非可逆伝送線路装置の構造を簡単化することができる。

【0103】
図32は、本発明の第1の実施形態の第8の変形例に係る非可逆伝送線路装置における伝送線路の単位セル60Ahの詳細構成を示す斜視図である。図31の構成では、各スタブ導体13A,13Bの端部が接地導体11に短絡されていたのに対して、本変形例の構成では、短絡されずに開放端になっている。スタブ導体13A,13Bが開放端を有していても、コントローラ20が移相器21A,21Bに印加する電圧を制御することで、移相器21A,21Bの移相量を変化させ、これによりスタブ導体13A,13Bのインピーダンスを互いに異なる所定値にそれぞれ設定することができる。

【0104】
図33は、本発明の第1の実施形態の第9の変形例に係る非可逆伝送線路装置70Aiの分解構成を示す斜視図であり、図34は、図33の非可逆伝送線路装置70Aiの断面図である。本発明の実施形態の非可逆伝送線路装置は、マイクロストリップ線路に限定されるものではなく、ストリップ線路として構成されてもよい。図33は、本変形例の非可逆伝送線路装置70Aiを2つに分離して示し、図34は、本変形例の非可逆伝送線路装置70Aiの使用時の状態(図33の上側部分と下側部分とを組み立てた状態)であって、図15の断面図と同じ位置(すなわち図33のA4-A4’線を通る位置)における断面図を示す。図33の下側部分において、誘電体基板10、接地導体11、フェライト角棒15、及び短絡スタブ導体は、図13の場合と同様に構成される。図33の上側部分において、誘電体基板17の上面(+Z側の面)に接地導体18が形成され、誘電体基板17の下面(-Z側の面)にストリップ線路12Bが形成される。ストリップ線路12Bは、図13のマイクロストリップ線路12Aと同様に、伝送線路の単位セル毎にストリップ導体とキャパシタとを含む。図34に示すように、ストリップ線路12Bはスタブ導体13A,13Bに接続される。

【0105】
本実施形態の非可逆伝送線路装置によれば、新規な原理により線路構造の非対称性を実現し、小さな消費電力で非可逆性を制御することができる。

【0106】
本発明の各実施形態において、図19等に示す各変形例の非可逆伝送線路装置は図9の非可逆伝送線路装置70Aと同様に構成され、図19等に示す各変形例の単位セルは図1の単位セル60Aと同様に構成される。また、本発明の各実施形態では、図9の非可逆伝送線路装置70Aと同様に、図10~図12の非可逆伝送線路装置70B~70Dのいずれかを使用してもよい。特に言及しない限り、本発明の各実施形態では、図9~図12の非可逆伝送線路装置70A~70Dのうちの任意のものが使用可能である。

【0107】
第2の実施形態.
図35は、本発明の第2の実施形態に係る伝送線路型共振器の構成を示すブロック図である。本実施形態の伝送線路型共振器は、第1の実施形態の非可逆伝送線路装置(参照番号70Aにより示す)を用いて構成されたことを特徴とする。

【0108】
図35は、線路長lの非可逆伝送線路装置70Aを用いたマイクロ波共振器のモデルを概略的に示す。単位セルの長さをdとし、非可逆伝送線路装置70Aを構成する単位セルの個数をNとするとき、線路長l=N×dである。線路端のポートP1からポートP2に向かって伝搬する主モードの線路長による位相変化をΔφとし、逆向きのそれをΔφとし、線路端のポートP1及びP2の終端条件による位相の変化をそれぞれΔφ及びΔφとすると、図35の伝送線路型共振器の共振条件は次式のようになる。

【0109】
Δφ=Δφ+Δφ+Δφ+Δφ=2nπ (8)

【0110】
但し、nは整数を表す。

【0111】
特に、両線路端のポートP1,P2が共に開放もしくは短絡である場合を考えると、Δφ+Δφ=2π又は0であるので、上の条件式は簡単化されて次式で表される。

【0112】
Δφ=Δφ+Δφ=2nπ (9)

【0113】
さらに、線路端のポートP1からP2に向かって伝搬する主モードの位相定数をβとし、逆方向の位相定数をβとする。このとき、式(9)は次式で表される。

【0114】
Δφ=Δφ+Δφ=-(β+β)l=2nπ (10)

【0115】
共振条件の式(10)において、
β+β=0 (11)
の条件が満たされれば、線路長lに関係なく共振条件を満足し、共振周波数が線路の長さによらないマイクロ波共振器の構成が可能となる。

【0116】
図36~図39は、図35の伝送線路型共振器の異なる動作状態を示すブロック図である。図36は伝搬方向に関係なく波数ベクトルが等しい場合の図35の伝送線路型共振器において両端開放のときの動作を示すブロック図であり、図37は伝搬方向に関係なく波数ベクトルが等しい場合の図35の伝送線路型共振器において両端短絡のときの動作を示すブロック図である。

【0117】
本実施形態では、次式
β=-β≠0 (12)
を満たす、非可逆伝送線路装置によるマイクロ波共振器を提案する。式(12)の条件は、伝送線路装置の伝搬特性として、一方の伝搬方向は右手系伝送(前進波)、逆方向の伝搬においては左手系伝送(後退波)となる場合で、かつ伝搬定数の大きさが等しい場合に成立する。これは、第1の実施形態に係る非可逆伝送線路装置70Aにおいて、前述の伝送帯域(C)の場合の動作帯域で、特に順方向及び逆方向の伝搬定数の大きさが等しい場合に実現可能である(図7及び図8参照。)。

【0118】
当該条件を満たす伝送線路型共振器の特長として、以下が挙げられる。
(I)共振周波数が線路長(セル数)に依存しないだけでなく、
(II)順方向の波と逆方向の波の波数ベクトルが同じ方向を向いているため、両者の重ね合わせによって従来のような節、腹を持つ定在波が立たず、線路長さ方向に対して電磁界分布の大きさが一定となる。
(III)位相分布について注目すると、波数ベクトルにより定まる位相変化が線路上に現れる。

【0119】
このように、従来技術に係る可逆伝送線路装置による零次共振器と同様に、伝送線路に沿って電磁界分布の大きさは一定となるが、一方で、線路に沿って位相の変化を持たせることが可能という特長を有する。

【0120】
図38は一方向伝搬方向で管内波長が無限大となる場合の図35の伝送線路型共振器において両端開放のときの動作を示すブロック図であり、図39は一方向伝搬方向で管内波長が無限大となる場合の図35の伝送線路型共振器において両端短絡のときの動作を示すブロック図である。

【0121】
前述の伝送帯域(B)及び(D)に示す非可逆伝送線路装置の場合、順方向、逆方向のうち一方の伝搬定数の大きさが零となる。この場合、共振条件の式(8)及び式(10)のいずれの場合も、従来技術に係る伝送線路型共振器と同様に、共振周波数が線路長に依存することがわかる。しかしながら、このような場合でも、上述した本実施形態に係る伝送線路型共振器と同様に、以下の特長を持つ伝送線路型共振器の構成が可能である(図38及び図39参照。)。
(I)一方向伝搬に対して、波の位相変化がないことから、順方向、逆方向伝搬の波の重ね合わせによって従来のような節、腹を持つ定在波が立たず、線路長さ方向に対して電磁界分布の大きさが一定となる。
(II)位相分布について注目すると、ゼロでない波数ベクトルにより定まる位相変化が線路上に現れる。

【0122】
以上説明したように、伝送線路型共振器を構成する非可逆伝送線路装置70A内において、順方向及び逆方向に伝搬する2つのモードの伝搬定数が異なることから、終端以外で電磁界分布のヌル点を消失させることが可能である。例えば、電流波がゼロとなるヌル点あるいは逆に電圧波がヌル点となるような位置が、共振器上に存在することが望ましくない場合、ヌル点を消失させるように構成可能となる。また、特別な場合として以下のような特長を持つ共振器を構成することも可能である。

【0123】
(a)同一周波数において、順方向が右手系伝送で、逆方向は実効波長が無限大で入出力間に位相変化のない非可逆伝送線路装置を用いた伝送線路型共振器。共振周波数は線路長に依存するが、線路上で振幅が一定となり、一方で位相分布には勾配を与えることができる。
(b)同一周波数において、順方向が左手系伝送で、逆方向は実効波長が無限大で入出力間に位相変化のない非可逆伝送線路装置を用いた伝送線路型共振器。共振周波数は線路長に依存するが、線路上で振幅が一定となり、一方で位相分布には勾配を与えることができる。
(c)同一周波数において、順方向及び逆方向に伝搬する2つのモードの波数ベクトルが互いに等しい右手/左手系複合型の非可逆伝送線路装置を用いた伝送線路型共振器。共振周波数は線路長に依存せず、さらに線路上で振幅が一定となり、位相分布には勾配を与えることができる。
(d)上記(a)~(c)のいずれの場合も、構成パラメータを機械的、電気的、磁気的、あるいは光学的に変化させることにより、共振器を構成する線路上の位相勾配を変えることが可能である。
(e)一般に、構成パラメータを機械的、電気的、磁気的、あるいは光学的に変えることにより、共振周波数を変えることが可能である。

【0124】
図38及び図39は特に、上記(a)及び(b)の場合でかつ両側の終端を共に開放もしくは短絡とした場合の構成及び共振条件を示したものである。図38及び図39から明らかなように、共振器を構成する線路上で振幅一定、位相勾配を有するが、共振条件が線路長に依存していることがわかる。一方、図36及び図37は上記(c)の場合で、かつ両側の終端を共に開放もしくは短絡とした場合の共振器の構成を表したものである。この模式図より、伝送方向に関係なく順方向及び逆方向に伝搬するモードの波数ベクトルが等しくなり、線路長に関係なく共振条件を自動的に満たすことがわかる。

【0125】
本実施形態の伝送線路型共振器によれば、共振周波数は非可逆伝送線路装置70Aの線路長lに依存せず、単位セルの構造に依存する。さらに、伝送線路型共振器上の電磁界分布は進行波共振器のそれに類似し、すなわち、伝送線路型共振器に沿って電磁界の振幅分布は一様であり、かつ位相分布は空間的に線形的に変化する。位相分布の空間勾配は、非可逆伝送線路装置70Aの非可逆位相定数によって決定される。

【0126】
第2の実施形態に係る伝送線路型共振器では、図13~図34に示す第1の実施形態の非可逆伝送線路装置70Aのうちのいずれを用いてもよい。

【0127】
第3の実施形態.
図40は、本発明の第3の実施形態に係る帯域阻止フィルタ90の構成を示す斜視図である。本実施形態の帯域阻止フィルタ90は、第1の実施形態の非可逆伝送線路装置70Aを用いて構成されたことを特徴とする。

【0128】
給電用伝送線路と、第1の実施形態に係る非可逆伝送線路装置70Aを用いて構成された少なくとも1つ以上の伝送線路型共振器とを、従来技術に係る可逆伝送線路装置を用いたフィルタと同様にエッジ結合あるいはサイド結合させることにより、以下のフィルタを構成することができる。
(i)同一周波数において、順方向が右手系伝送で、逆方向は実効波長が無限大で入出力間に位相変化のない非可逆伝送線路装置を用いた伝送線路型共振器を備えたフィルタ。
(ii)同一周波数において、順方向が左手系伝送で、逆方向は実効波長が無限大で入出力間に位相変化のない非可逆伝送線路装置を用いた伝送線路型共振器を備えたフィルタ。
(iii)同一周波数において、順方向及び逆方向に伝搬する2つのモードの波数ベクトルが相等しい右手/左手系複合型の非可逆伝送線路装置を用いた伝送線路型共振器を備えたフィルタ。

【0129】
これらのフィルタの場合、フィルタを構成する非可逆伝送線路装置上で振幅が一定となる特長を持つことから、従来技術に係る共振器のように電圧、電流分布に節点と腹を持つ定在波型に比べて、共振器の終端条件によるが、電流のヌル点あるいは電圧のヌル点が存在しないので、より自由度の高い配置が可能となるという特長を有する。

【0130】
図40は、図13と同様の非可逆伝送線路装置と、給電用伝送線路からなる帯域阻止フィルタ90の一例を示す。ここで、給電用伝送線路は、誘電体基板10と、誘電体基板10の下面に形成された接地導体と、誘電体基板10の上面に形成されたストリップ導体12Cとからなり、2つのポートP3,P4を有するマイクロストリップ線路である。ポートP3,P4のいずれかに、マイクロ波信号が供給される。給電用伝送線路は、非可逆伝送線路装置と電磁的にサイド結合するように、非可逆伝送線路装置のスタブ導体13Bの側に所定の間隔だけ離隔して配置される。なお、各スタブ導体13Bは誘電体基板10を厚さ方向に貫通するスルーホール導体13Cを介して接地導体11に接続される。スタブ導体13A,13Bを開放端にする場合には、スルーホール導体13Cは不要である。以上のように構成することにより、2つのポートP3,P4を有する帯域阻止フィルタ90を構成することができる。

【0131】
図41は、本発明の第3の実施形態の第1の変形例に係る帯域阻止フィルタ90の構成を示す斜視図であり、図42は、図41の帯域阻止フィルタ90の断面図である。図42は、本変形例の帯域阻止フィルタ90の使用時の状態(図41の各部分を組み立てた状態)であって、図34の断面図と同じ位置(すなわち図41のA5-A5’線を通る位置)における断面図を示す。図40のフィルタでは、給電用伝送線路と非可逆伝送線路装置とが電磁的にサイド結合していたが、本変形例では、これらがブロードサイド結合するように構成される。図41及び図42を参照すると、下側の誘電体基板10には、図13と同様の非可逆伝送線路装置が形成され、上側の誘電体基板17には、誘電体基板10の上面に形成された接地導体と、誘電体基板10の下面に形成されたストリップ導体12Dとからなり、2つのポートP3,P4を有するマイクロストリップ線路が形成される。下側の非可逆伝送線路装置と上側のマイクロストリップ線路との間には誘電体層19が設けられ、非可逆伝送線路装置とマイクロストリップ線路とは電磁的に結合する。以上のように構成することにより、2つのポートP3,P4を有する帯域阻止フィルタ90を構成することができる。

【0132】
図43は、本発明の第3の実施形態の第2の変形例に係る帯域通過フィルタの構成を示すブロック図である。本変形例の帯域通過フィルタは、第1の実施形態に従って構成された非可逆伝送線路装置70Ajをエッジ結合して構成される。図43において、非可逆伝送線路装置70Ajは、伝送線路の単位セル60A-1~60A-MをカップリングキャパシタCc2~CcMを介して縦続接続して構成され、ポートP5は、伝送線路71と、カップリングキャパシタCc1と、非可逆伝送線路装置70Ajと、カップリングキャパシタCcM+1と、伝送線路72とを介してポートP6に接続され、これにより、帯域通過フィルタを構成する。

【0133】
以上の図40及び図43の実施形態において、直列容量であるカップリングキャパシタを介した結合を用いているが、伝送線路の単位セルがπ型で終端に並列誘導性素子が位置する場合には、磁気的な結合を介したフィルタを構成してもよい。

【0134】
フィルタを構成する非可逆伝送線路装置が上記(iii)のタイプの非可逆伝送線路装置で構成される場合、各非可逆伝送線路装置の線路長(大きさ)を変えても動作周波数はあまり変化しない。一方で、単位セル数すなわち線路長を変えることによりQ値を変えることが可能である。例えば、図43の帯域通過フィルタの場合、直列に挿入されたカップリングキャパシタの容量を電気的に変えることにより、フィルタを構成する非可逆伝送線路装置の終端位置が電気的に変えられることから、フィルタを構成する非可逆伝送線路装置の総数を変えたり、個々の非可逆伝送線路装置を構成する単位セル数を変えたりすることが可能である。それにより、通過帯域や帯域幅を時間的に切り換えることが可能となる。図40に示す帯域阻止フィルタの場合も同様である。動作帯域、帯域幅を時間的に切り換える方法としては、直列容量素子だけでなく、その他の構成パラメータを、上記の電気的な方法以外に、機械的、電気的、磁気的あるいは光学的に、変えることによっても可能である。

【0135】
第3の実施形態に係るフィルタでは、図13~図34に示す第1の実施形態の非可逆伝送線路装置70Aのうちのいずれを用いてもよい。

【0136】
第4の実施形態.
図44は、本発明の第4の実施形態に係る等電力分配器の構成を示すブロック図である。本実施形態の等電力分配器は、第1の実施形態の非可逆伝送線路装置70Aによる伝送線路型共振器を用いた結合器の一種であり、位相勾配を有する。

【0137】
図44において、高周波信号発生器81により発生されたマイクロ波信号は伝送線路71及びカップリングキャパシタCc1を介して線路長lの非可逆伝送線路装置70Aに入力される。非可逆伝送線路装置70Aには、伝搬方向に沿って所定の間隔d21,d22,d23,…で、カップリングキャパシタCc-1~Cc-Nを介して、各出力ポートP7-1~P7-Nを有する信号分岐のための伝送線路73-1~73-Nが接続される。以上のように構成された非可逆伝送線路装置70Aを用いた等電力分配器においては、各出力ポートP7-1~P7-Nに、所定の位相勾配を有しかつ等しい電力で電力分配することができる。すなわち、本実施形態では、各出力ポートP7-1~P7-N間に位相変化を持たせた電力分配器を構成できる。

【0138】
具体的には、第1の実施形態に係る非可逆伝送線路装置を用いた伝送線路型共振器であって、
(i)同一周波数において、順方向が右手系伝送で、逆方向は実効波長が無限大で入出力間に位相変化のない非可逆伝送線路装置を用いた伝送線路型共振器と、
(ii)同一周波数において、順方向が左手系伝送で、逆方向は実効波長が無限大で入出力間に位相変化のない非可逆伝送線路装置を用いた伝送線路型共振器と、
(iii)同一周波数において、順方向及び逆方向に伝搬する2つのモードの波数ベクトルが相等しい右手/左手系複合型の非可逆伝送線路装置を用いた伝送線路型共振器と
のいずれかを用いると、伝送線路上で振幅が一定となることから、非可逆伝送線路装置70Aにおいて信号分岐を設ける場所に関係なく、電磁的結合の大きさが同程度となり、設計が容易となる。

【0139】
また、非可逆伝送線路装置70A上に位相分布が存在することから、非可逆伝送線路装置70Aにおいて信号分岐を設ける場所を変えることにより、出力ポートP7-1~P7-N間に位相変化を与えることが可能となる。また、構成パラメータを、機械的、電気的、磁気的あるいは光学的に変えることにより、出力ポートP7-1~P7-N間の位相差を連続的に変えることも可能となる。

【0140】
以上説明した位相傾斜型の等電力分配器の応用の一例としては、以下のようなものが挙げられる。従来技術に係るフェイズドアレイアンテナ装置では、アレイアンテナを構成する各アンテナ素子への供給線路部分において、それぞれ移相器を設置し、個々の移相器の位相を独立に変化させることにより放射ビームを走査する必要があった。本実施形態の等電力分配器の場合、非可逆伝送線路装置による伝送線路型共振器部分の構成パラメータを、機械的、電気的、磁気的あるいは光学的な方法で一元的に変えることにより、出力ポート間の位相差を連続的に変えることができるので、アレイアンテナのビーム走査が可能であり、また、構造が従来技術に係る複数の移相器を用いた場合に比べて非常に簡単になるという特有の効果を奏する。

【0141】
第4の実施形態に係る等電力分配器では、図13~図34に示す第1の実施形態の非可逆伝送線路装置70Aのうちのいずれを用いてもよい。

【0142】
第5の実施形態.
図45は、本発明の第5の実施形態に係る直列帰還型発振器の構成を示すブロック図である。本実施形態の直列帰還型発振器は、第1の実施形態の非可逆伝送線路装置を用いて構成されたことを特徴とする。

【0143】
マイクロ波やミリ波帯域で用いられる発振器の多くは、ノイズ抑制などの理由から、高いQ値の共振器が挿入されている場合が多い。第1の実施形態の非可逆伝送線路装置は、伝送線路型共振器としての機能だけでなく、伝送線路にわたって位相変化を与えることから、正帰還ループ内での位相調整の役割も兼ねて用いることが可能である。また、非可逆伝送線路装置の構成パラメータを、機械的、電気的、磁気的あるいは光学的な方法で変えることにより、Q値の微調整、位相シフト量の微調整も可能となる。

【0144】
図45において、能動素子である電界効果トランジスタ(以下、FETという。)Q1のゲートは、伝送線路74及び50Ωの負荷抵抗R1を介して接地され、当該伝送線路74にはカップリングキャパシタC13を介して非可逆伝送線路装置70Aの共振器が接続される。FETQ1のソースはカップリングキャパシタC11を介して接地され、そのドレインは伝送線路75と、カップリングキャパシタC12と、抵抗値Rの負荷抵抗R2を介して接地される。なお、伝送線路75の一端には、開放端を有する伝送線路76が接続される。以上のように構成することにより、直列帰還型発振器を構成する。

【0145】
図46は、本発明の第5の実施形態の第1の変形例に係る直列帰還型発振器の構成を示すブロック図である。本変形例の直列帰還型発振器では、図45のFET1のゲートに接続された回路に代えて、非可逆伝送線路装置70Aからなる伝送線路型共振器のみが接続される。以上のように構成することにより、直列帰還型発振器を構成する。図45及び図46においては、非可逆伝送線路装置70A、あるいは非可逆伝送線路装置70Aと他の伝送線路との組み合わせは、帯域阻止フィルタの役割を果たし、同阻止帯域において反射型共振器の動作をする。これにより、直列帰還型発振器を構成する。

【0146】
図47は、本発明の第5の実施形態の第2の変形例に係る並列帰還型発振器の構成を示すブロック図である。本変形例の並列帰還型発振器では、図45の構成に加えて、以下の帰還ループ回路が付加されたことを特長としている。伝送線路75の他端は伝送線路77及びカップリングキャパシタC14を介して非可逆伝送線路装置70Aの共振器の他端に接続される。これにより、FETQ1のドレインから伝送線路77と、カップリングキャパシタC14と、非可逆伝送線路装置70Aの共振器と、カップリングキャパシタC13と、伝送線路74とを介してFETQ1のゲートに接続された並列帰還回路が構成され、当該並列帰還回路により、並列帰還型発振器を構成する。図47においては、非可逆伝送線路装置及び伝送線路の組み合わせは帯域通過フィルタの役割を果たし、同帯域において正帰還ループ回路を構成して発振動作が行われる。

【0147】
第5の実施形態に係る直列帰還型発振器では、図13~図34に示す第1の実施形態の非可逆伝送線路装置70Aのうちのいずれを用いてもよい。

【0148】
第6の実施形態.
図48は、本発明の第6の実施形態に係るアンテナ装置の構成を示すブロック図である。また、図49は、本発明の第6の実施形態の第1の変形例に係るアンテナ装置の構成を示すブロック図である。図48及び図49のアンテナ装置は、第1の実施形態の非可逆伝送線路装置70A又は70B(ただし、マイクロストリップ線路として構成されたもの)を用いて構成されたことを特徴とする。図48のアンテナ装置は、単位セルがT型であり、共振器両端が直列枝容量の場合の一例を示し、図49のアンテナ装置は、単位セルがπ型であり、並列誘導性素子が位置している場合の一例を示している。図48及び図49において、71Aはマイクロ波信号の給電方向を示す。

【0149】
従来技術に係るアンテナ装置の多くは、アンテナ共振器部分とそれへの給電線路部分、その間の整合回路部分とから構成されている。パッチアンテナ装置、誘電体アンテナ装置などもその例として挙げられる。このような共振器からなるアンテナ装置の場合、共振器構成内では、定在波が立ち、電磁界分布において節点、腹が存在し、ほぼ同相状態となる。またその結果として、無指向性となるか、メインローブがアンテナ放射面に対してブロードサイドを向く場合が多い。それに対して、本実施形態に係る非可逆伝送線路装置70Aを用いたアンテナ装置は、以下の特長を有する。
(a)振幅分布一定、位相分布に勾配を持たせることが可能であることから、単一の共振器型アンテナ装置であるにもかかわらず、放射ビーム方向を所望の方向に設定することが可能となる。
(b)上記(a)と関連するが、振幅分布一定であることから、共振器線路長を大きくすることにより利得及び指向性の改善が図られる。
(c)構成パラメータを、機械的、電気的、磁気的あるいは光学的に変えることにより、単一の共振器型アンテナ装置であるにもかかわらず、放射ビーム走査が可能となる。

【0150】
図48において、ポートP5は、伝送線路71及びカップリングキャパシタCc1を介して非可逆伝送線路装置70Aからなる伝送線路型共振器のアンテナ装置に接続される。ここで、ポートP5にマイクロ波信号を給電することにより、非可逆伝送線路装置70Aからなる伝送線路型共振器のアンテナ装置が共振し、当該マイクロ波信号の電磁波が自由空間に放射される。

【0151】
また、図49において、ポートP5は、伝送線路71と、互いに電磁的に結合(符号Mで表す。)された一次コイル82a及び二次コイル82bからなる変成器82とを介して、非可逆伝送線路装置70Bからなる伝送線路型共振器のアンテナ装置に接続される。ここで、ポートP5にマイクロ波信号を給電することにより、非可逆伝送線路装置70Bからなる伝送線路型共振器のアンテナ装置が共振し、当該マイクロ波信号の電磁波が自由空間に放射される。さらに、図50は、本発明の第6の実施形態の第2の変形例に係るアンテナ装置の構成を示すブロック図である。図50のアンテナ装置は、磁気結合のための変成器82に代えて並列インダクタ82cを挿入したことを特徴としている。

【0152】
従来技術に係る漏れ波アンテナ装置を構成する線路は可逆伝送線路であり、順方向の信号伝送に対して漏れ波が前方放射ビームを形成する場合、逆方向の信号伝送に対しても相等しい前方放射を行う。また、順方向の信号伝送に対して漏れ波が後方放射ビームを形成する場合、逆方向の信号伝送に対しても相等しい後方放射を行う。漏れ波アンテナ装置を構成する線路部分に、本発明に係る非可逆伝送線路装置70Aを用いることにより、以下の構成を行うことができる。
(i)同一周波数において、線路内を順方向に伝搬する信号に対して、漏れ波が前方に放射ビームを形成し、信号の逆方向伝搬に対して、後方に放射ビームを形成する非可逆漏れ波アンテナ装置。
(ii)同一周波数において、線路内を順方向に伝搬する信号に対して、漏れ波が前方に放射ビームを形成し、信号の逆方向伝搬に対して、ブロードサイド(伝搬方向とは直交する方向をいう。以下、同様である。)に放射ビームを形成する非可逆漏れ波アンテナ装置。
(iii)同一周波数において、線路内を順方向に伝搬する信号に対して、漏れ波が後方に放射ビームを形成し、信号の逆方向伝搬に対して、ブロードサイドに放射ビームを形成する非可逆漏れ波アンテナ装置。
(iv)上記(i)の非可逆漏れ波アンテナ装置の特別な場合として、同一周波数において、信号の伝搬方向に関係なく、線路からの漏れ波による放射ビームが同一方向を向く非可逆漏れ波アンテナ装置。
(v)同一周波数において、線路内の信号伝搬方向に関係なく漏れ波が前方に放射ビームを形成するが、放射角の異なる非可逆漏れ波アンテナ装置。
(vi)同一周波数において、線路内の信号伝搬方向に関係なく漏れ波が後方に放射ビームを形成するが、放射角の異なる非可逆漏れ波アンテナ装置。
(vii)上記(i)~(vi)の少なくとも2つ以上を組み合わせて構成された非可逆漏れ波アンテナ装置。

【0153】
これらの非可逆漏れ波アンテナ装置は以下の特有の作用効果を有する。
(A)線路の構成パラメータを変えることなく、信号の伝送方向の選択により、放射ビームの走査、偏波特性変化を可能とする。
また、従来技術に係る漏れ波アンテナ装置においては、アンテナ装置を構成する線路終端での不整合による線路内の反射波の伝搬が、順方向伝搬の場合とは逆方向に不要な放射ビームとしてサイドローブを形成してしまう問題があった。そのため、伝送線路内では、マイクロ波信号は一方向伝搬が前提であり、線路終端での整合も回路設計を行う上で重要となる。それに対して、第1の実施形態の非可逆伝送線路装置70Aを用いた非可逆漏れ波アンテナ装置は、伝送線路における入力端子の選択、マイクロ波信号の伝搬方向に関係なく、放射ビーム方向を同じ方向に指定できる。その結果として、構成設計を最適に行うことにより、以下の特有の作用効果を有する。
(B)アンテナ装置を構成する非可逆伝送線路装置70Aの両端から信号を入力、双方向同時伝搬による漏れ波放射ビームの制御、アンテナ利得、指向性の改善、サイズの小型化を可能とする。
(C)一端子入力、終端反射の積極的利用による放射メインローブの制御、それによるアンテナ利得、指向性の改善、あるいはアンテナサイズの小型化を可能とする。
(D)構造パラメータを、機械的、電気的、磁気的あるいは光学的に変えることにより、放射ビームの走査を可能とする。

【0154】
第6の実施形態に係るアンテナ装置では、図13~図32に示す第1の実施形態の非可逆伝送線路装置70Aのうちのいずれを用いてもよい。

【0155】
第7の実施形態.
図51は、本発明の第7の実施形態に係るアンテナ装置の構成を示すブロック図である。本実施形態のアンテナ装置は、第1の実施形態の非可逆伝送線路装置70A(ただし、マイクロストリップ線路として構成されたもの)を用いて構成されたことを特徴とする。

【0156】
図51において、1個の高周波信号発生器40からの高周波信号(マイクロ波信号など)を電力分配器41により2分配して、1つの非可逆伝送線路装置70Aに対して互いに逆方向である双方向で両端ポートP1,P2を介して入射し、漏洩波を放射する。すなわち、電力分配器41からの1つの高周波信号は可変減衰器42及び移相器43を介してポートP1を介して非可逆伝送線路装置70Aに入射する一方、電力分配器41からのもう1つの高周波信号は可変減衰器44及び移相器45を介してポートP2を介して非可逆伝送線路装置70Aに入射する。図55は、図51~図54のアンテナ装置のポートP1に高周波信号を入力したときの右手系伝送線路における前進波の位相の流れと電力の流れを示す模式図であり、図56は、図51~図54のアンテナ装置のポートP2に高周波信号を入力したときの左手系伝送線路における後退波の位相の流れと電力の流れを示す模式図である。ここで、可変減衰器42,44の減衰量や移相器43,45の移相量を変化することにより、非可逆伝送線路装置70Aから放射される漏洩波の放射パターン(主ビームの方向や各方向での放射電力を含む。)を変化することができ、入力ポートP1,P2に入射する入力電力比及び初期位相関係を最適に選択して設定することにより、非可逆伝送線路装置70A上の電磁界分布を最適化することにより、漏洩波アンテナの放射特性を改善できる。すなわち、非可逆伝送線路装置70Aからの漏洩波の主ビーム方向やビーム幅などを所望値に変化させることができる。

【0157】
図52は、本発明の第7の実施形態の第1の変形例に係るアンテナ装置の構成を示すブロック図である。図52は、入力ポートとして一方のポートP1のみを選択した一方向入力アンテナ装置を示す。この場合、当該非可逆伝送線路装置70Aの終端(ポートP2)において特別な整合回路を必ずしも挿入する必要がない。すなわち、終端(ポートP2)が整合されておらず、反射波が発生しても、その反射波の伝搬による漏洩波もまた同一方向を向くため、従来の伝送線路装置からの漏洩波放射に見られるような反射波によるサイドローブは発生しない。むしろ、反射特性を積極的に利用する観点から、終端(ポートP2)のインピーダンスを最適に選んで(例えば、非可逆伝送線路装置70Aの電気長を所定値に選択する。)、非可逆伝送線路装置70A上の電磁界分布を最適化することにより、漏洩波放射特性を改善できる。すなわち、非可逆伝送線路装置70Aからの漏洩波の主ビーム方向やビーム幅などを所望値に変化させることができる。

【0158】
図53は、本発明の第7の実施形態の第2の変形例に係るアンテナ装置の構成を示すブロック図である。図53は入力ポートとして一方のポートP2のみを選択した一方向入力アンテナ装置を示す。この場合、当該非可逆伝送線路装置70Aの終端(ポートP1)において特別な整合回路を必ずしも挿入する必要がない。すなわち、終端(ポートP1)が整合されておらず、反射波が発生しても、その反射波の伝搬による漏洩波もまた同一方向を向くため、従来の伝送線路装置からの漏洩波放射に見られるような反射波によるサイドローブは発生しない。むしろ、反射特性を積極的に利用する観点から、終端(ポートP1)のインピーダンスを最適に選んで(例えば、非可逆伝送線路装置70Aの電気長を所定値に選択する。)、非可逆伝送線路装置70A上の電磁界分布を最適化することにより、漏洩波放射特性を改善できる。すなわち、非可逆伝送線路装置70Aからの漏洩波の主ビーム方向やビーム幅などを所望値に変化させることができる。

【0159】
図54は、本発明の第7の実施形態の第3の変形例に係るアンテナ装置の構成を示すブロック図である。図54はスイッチ46により入力方向の切り換えが可能なアンテナ装置を示す。図54のアンテナ装置は、図51のアンテナ装置に比較して、電力分配器41の代わりに、スイッチ46を挿入したことを特徴としている。図54のアンテナ装置においては、順方向の伝搬係数と逆方向の伝搬定数が同じ場合、伝搬方向の選択に関係なく、放射方向が伝搬方向を向くため、スイッチ46の切り換えによる放射波の変化は偏波特性のみとなる。以上のことから、ビーム角を維持しながら、スイッチング操作により偏波特性の切り換えが可能となる。図54のアンテナ装置の別の利用方法としては、順方向及び逆方向の伝搬定数の大きさが異なるような周波数を動作周波数に選んだ場合、伝搬方向の選択により、放射ビーム方向を変えることが可能である。また、可変減衰器42,44の減衰量や移相器43,45の移相量を変化することにより、非可逆伝送線路装置70Aから放射される漏洩波の放射パターン(主ビームの方向や各方向での放射電力を含む。)を変化させることができる。

【0160】
従来技術に係る漏れ波アンテナにおいては、アンテナ装置を構成する伝送線路の一端子からマイクロ波信号が入力され、終端では整合が取られていることから、共振器型アンテナ装置の基本動作とは大きく異なり、これまで両者は同一には論じられてこなかった。ここでは、このような漏れ波アンテナ装置と共振器型アンテナ装置を別々に論じる観点で、第1の実施形態の非可逆伝送線路装置70Aの応用例としてのアンテナ装置について述べた。しかしながら、上述の漏れ波アンテナ装置においては、終端での反射波を積極的に利用することにより、アンテナ放射特性の改善が図られることを主張している。このように漏れ波アンテナ装置において、伝送線路の終端条件により線路内で反射波が存在する場合、共振器型アンテナ装置と類似した動作を行う結果となる。特に、終端で全反射条件が成立する場合、共振器として動作していると見なすこともできる。以上のことから、本実施形態に係るアンテナ装置は、非可逆伝送線路装置70Aの終端での反射条件の程度によるが、共振器型と漏れ波型の諸動作を併せ持つ構造となる。

【0161】
非可逆伝送線路装置70Aでは、伝送方向により非可逆性が現れる。本実施形態で取り扱う構成に見られる伝送特性の非可逆性としては、大きく分けて次の2つに分けられる。まず1つ目は、ポートP1からポートP2への順方向伝送は透過、ポートP2からポートP1への逆方向伝送は減衰となる場合である。この場合、非可逆伝送線路装置70Aはアイソレータとして用いることができる。もう1つの非可逆性としては、振幅特性においては差が見られないが位相特性に非可逆性を有する場合が挙げられる。順方向が右手形モード(前進波)伝送線路(図55)として、逆方向は左手系モード(後退波)伝送線路(図56)として動作する。このように、伝送方向の取り方によって、位相特性が大きく異なることから、この線路は伝送方向選択性位相制御として応用できる。

【0162】
非可逆伝送線路装置70Aの伝送特性の非可逆性に対応して、当該非可逆伝送線路装置70Aからの漏洩波放射に見られる非可逆性には大きく分けて次の2つの場合が考えられる。1つ目の非可逆性としては、順方向の伝送特性が通過、逆方向が減衰の場合に対応して、一方向の伝送に対してのみ漏洩波放射を行い、逆方向に対しては放射しない状態となる。もう1つの非可逆性としては、順方向が前進波伝搬、逆方向が後退波伝搬となる場合に対応し、伝送方向に関係なく、漏洩波は同じ方向に放射し得る。このように非可逆性を利用することにより、漏洩波放射ビームの放射方向に選択性を持たせることができる。

【0163】
変形例.
また、第1の実施形態の非可逆伝送線路装置70Aを以下のごとく非可逆移相器に応用することができる。2つの端子間に非可逆伝送線路装置70Aを挿入することにより、一方の端子からもう一方の端子に対して、信号の伝搬方向に関係なく、所望の位相差を与えることができる。また、電気的に構成パラメータを変えることにより、同位相差を電気的に変えることも可能である。

【0164】
従来の移相器は、可逆伝送線路が主であり、双方向伝送に対して、位相進みもしくは位相遅れが同じであった。非可逆伝送線路を用いた場合であっても、相異なる値を持つ位相遅れもしくは位相進みを与える構成となっていた。第1の実施形態の非可逆伝送線路装置70Aを用いることにより、以下のように構成することができる。
(i)順方向が右手系伝送線路として位相遅れ、逆方向が左手系伝送線路として位相進みを与える非可逆移相器。
(ii)順方向が右手系伝送線路として位相遅れ、逆方向が入出力間で位相変化のない非可逆移相器。
(iii)順方向が左手系伝送線路として位相進み、逆方向が入出力間で位相変化のない非可逆移相器。
(iv)同一周波数において、順方向及び逆方向共に右手系伝送であるが、位相変化の異なる非可逆移相器。
(v)同一周波数において、順方向及び逆方向共に左手系伝送であるが、位相変化の異なる非可逆移相器。
(vi)上記(i)~(v)のうち少なくとも2つ以上を組み合せて構成される非可逆移相器。

【0165】
図7を用いて、上記非可逆移相器の各動作を説明する。一般に、分散曲線の勾配は、群速度すなわち、伝送電力の向きを表すことから、以下では、勾配∂ω/∂βが正の場合を順方向電力伝送とし、負の場合を逆方向伝送とすることができる。
(a)動作周波数がωLHL<ω<ωβ0Lの領域にある非可逆伝送線路装置70Aの場合、順方向電力伝送の場合の位相定数βが負の値を有し、逆方向電力伝送の場合の位相定数βが正の値となることから、いずれの伝送方向の場合も左手系伝送線路として動作している。以上のことから、同線路は上記(v)の移相器として動作する。
(b)動作周波数がω=ωβ0Lの非可逆伝送線路装置70Aの場合、順方向電力伝送の場合の位相定数が0で管内波長が無限大となっている。一方で、逆方向伝送の場合の位相定数が正であり、左手系伝送線路として動作している。以上のことから、同線路は上記(iii)の移相器として動作する。
(c)動作周波数がωβ0L<ω<ωcLあるいはωcU<ω<ωβ0Uの領域にある非可逆伝送線路装置70Aの場合、順方向電力伝送の場合の位相定数βが正の値を有し、逆方向電力伝送の場合の位相定数βが正の値となることから、順方向は右手系伝送線路として、逆方向は左手系伝送線路として動作している。以上のことから、同線路は上記(i)の移相器として動作する。
(d)動作周波数がω=ωβ0Uの非可逆伝送線路装置70Aの場合、逆方向電力伝送の場合の位相定数が0で管内波長が無限大となっている。一方で、順方向伝送の場合の位相定数が正であり、右手系伝送線路として動作している。以上のことから、同線路は上記(ii)の移相器として動作する。
(e)動作周波数がωβ0U<ω<ωRHUの領域にある非可逆伝送線路装置70Aの場合、順方向電力伝送の場合の位相定数βが正の値を有し、逆方向電力伝送の場合の位相定数βが負の値となることから、いずれの伝送方向の場合も右手系伝送線路として動作している。以上のことから、同線路は上記(iv)の移相器として動作する。

【0166】
本発明に係る非可逆伝送線路装置70Aの構成パラメータを機械的、電気的、磁気的もしくは光学的に変えることにより、同一周波数において、上記(i)~(v)のいずれかの特性を有す移相器の位相特性を連続的に変えることが可能である。さらに、同一周波数動作として、上記(i)~(v)のうち少なくとも2つ以上を組み合わせて移相器を構成することも可能である。

【0167】
次いで、伝送電力が逆向きで、動作周波数、波数ベクトルの等しい異種モード間のデカップリングについて以下に説明する。

【0168】
カップリング周波数及び伝搬定数のほぼ等しい同種あるいは異種のモードを支える2つの独立した線路構成を隣接して再配置すると通常、それぞれの固有モード間に結合が生じ、結果として、同周波数付近においては、全体の系で見た直交モードは
(A)対称モード及び反対称モードに相当する2つの異なる波数ベクトルを持つ、もしくは、
(B)導波モードが存在せず阻止帯域が形成される(例えば周期構成におけるブラッグ(Bragg)反射など)
のいずれかとなる場合が多い。特に、(B)の場合、結合により信号伝送が阻害されることが問題となりうる。これに対して、第1の実施形態の非可逆伝送線路装置70Aを用いることにより、電力伝送方向は逆向きとなるが、図8中のω=ωでの動作のように、動作周波数、波数ベクトルの等しい異種モードを結合なくサポートする単一線路の構成を可能とする。非可逆伝送線路装置70Aの構成パラメータを変えることにより、2つのモード間に結合を与え、阻止帯域形成することも可能である。従って、本発明の右手/左手系複合型の非可逆伝送線路装置の構成パラメータを機械的、電気的、磁気的もしくは光学的に変えることにより、電力伝送方向は異なるが、周波数及び波数ベクトルの等しい2つの異種モードに対して、結合、非結合の切り換えが可能となる。

【0169】
また、第7の実施形態に係るアンテナ装置では、図13~図32に示す第1の実施形態の非可逆伝送線路装置70Aのうちのいずれを用いてもよい。

【0170】
本発明の実施形態に係る非可逆伝送線路装置を用いることにより以下の種々のアプリケーション装置を構成できる。

【0171】
(A)非可逆伝送線路.
(1)同一周波数において、順方向が右手系伝送(前進波伝搬)で逆方向が左手系伝送(後退波伝搬)となる非可逆右手/左手系伝送線路の構成。順方向及び逆方向の伝送特性が逆の場合も含む。
(2)同一周波数において、順方向が右手系伝送で、逆方向は実効波長が無限大で入出力間に位相変化のない非可逆伝送線路の構成。順方向及び逆方向の伝送特性が逆の場合も含む。
(3)同一周波数において、順方向が左手系伝送で、逆方向は実効波長が無限大で入出力間に位相変化のない非可逆伝送線路の構成。順方向及び逆方向の伝送特性が逆の場合も含む。
(4)同一周波数において、順方向及び逆方向共に右手系伝送であるが、位相変化の異なる非可逆伝送線路の構成。
(5)同一周波数において、順方向及び逆方向共に左手系伝送であるが、位相変化の異なる非可逆伝送線路の構成。
(6)上記(1)~(5)のうち少なくとも2つ以上の組み合わせを可能とする非可逆伝送線路。
(7)上記(1)の特別な場合として、同一周波数において、順方向及び逆方向に伝搬する2つのモードの波数ベクトルが相等しい右手/左手系複合型の非可逆伝送線路の構成。伝送電力の向きは逆であるが、動作周波数、波数ベクトルが共に等しい2つのモードを縮退させて(結合させることなく)伝搬させることが可能な線路の構成。
(8)伝送電力の向きが異なるが、動作周波数、波数ベクトルの等しい異種モード間の縮退化、デカップリング、直交化への応用が可能である。
(B)非可逆移相器.
(9)上記(1)~(6)のいずれかの非可逆伝送線路を用いた非可逆移相器への応用。
(C)非可逆漏れ波アンテナ.
(10)同一周波数において、線路内を順方向に伝搬する信号に対して、漏れ波が前方に放射ビームを形成し、信号の逆方向伝搬に対して、後方に放射ビームを形成する非可逆漏れ波アンテナ装置。
(11)同一周波数において、線路内を順方向に伝搬する信号に対して、漏れ波が前方に放射ビームを形成し、信号の逆方向伝搬に対して、ブロードサイドに放射ビームを形成する非可逆漏れ波アンテナ装置。
(12)同一周波数において、線路内を順方向に伝搬する信号に対して、漏れ波が後方に放射ビームを形成し、信号の逆方向伝搬に対して、ブロードサイドに放射ビームを形成する非可逆漏れ波アンテナ装置。
(13)上記(10)の特別な場合として、同一周波数において、信号の伝搬方向に関係なく、線路からの漏れ波による放射ビームが同一方向を向く非可逆漏れ波アンテナ装置。
(14)同一周波数において、線路内の信号伝搬方向に関係なく漏れ波が前方に放射ビームを形成するが、放射角の異なる非可逆漏れ波アンテナ装置。
(15)同一周波数において、線路内の信号伝搬方向に関係なく漏れ波が後方に放射ビームを形成するが、放射角の異なる非可逆漏れ波アンテナ装置。
(16)上記(10)~(15)の少なくとも2つ以上の組み合わせを可能とする非可逆漏れ波アンテナ。
(17)漏れ波アンテナを構成する線路として、右手/左手系複合型の非可逆伝送線路を用いることによる、アンテナの利得、指向性の改善、サイズの小型化が可能である。
(D)非可逆伝送線路型共振器.
(18)上記(1)~(6)の非可逆伝送線路を用いた非可逆伝送線路型共振器の構成。
(19)上記(2)及び(3)の非可逆伝送線路を用いた場合、共振周波数が線路長さに依存するものの、伝送線路上の信号振幅がほぼ一定で位相勾配を持たせたまま動作可能な伝送線路型共振器の構成が可能である。
(20)上記(1)の特別な場合である(7)の右手/左手系複合型の非可逆伝送線路を用いた場合、共振周波数が線路長さに依存せず、伝送線路上の信号振幅がほぼ一定で位相勾配を持たせたまま動作可能な伝送線路型共振器の構成が可能である。共振周波数が線路長に依存しないため、同一の共振周波数を得る場合でも自由なサイズ選択が可能である。また、線路長により、共振器の無負荷Qが変わるため、Q値の選択にも自由度を与える。
(E)非可逆伝送線路型共振器を用いたフィルタ.
(21)上記(1)~(6)の非可逆伝送線路を用いた共振器と給電用線路及び結合素子からなる帯域阻止フィルタ構成。
(22)上記(1)~(6)の非可逆伝送線路を用いた共振器と給電用線路及び結合素子よりなる帯域通過フィルタ構成。
(23)上記(19)あるいは(20)もしくは両方の共振器からなる帯域阻止フィルタ及び帯域通過フィルタ。各共振器を構成する線路上で、振幅が一定のため、共振器間の配置に自由度がある。
(24)上記(20)の非可逆伝送線路型共振器からなる帯域阻止フィルタ及び帯域通過フィルタ。フィルタを構成する各共振器は共振周波数が線路長に依存しないため、自由なサイズ設計が可能である。また、線路長により、共振器の無負荷Qが変えられるため、フィルタ設計に自由度を与える。
(F)非可逆伝送線路型共振器を用いたアンテナ.
(25)上記(19)の伝送線路型共振器と給電用線路、結合部分とからなる指向性を有するアンテナ。アンテナの動作周波数がアンテナサイズに依存する。
(26)上記(20)の伝送線路型共振器と給電用線路、結合部分とからなる指向性を有するアンテナ。アンテナの動作周波数がアンテナサイズに依存しない。
(G)非可逆伝送線路型共振器を用いた結合器.
(27)上記(19)もしくは(20)の非可逆伝送線路型共振器からなる位相勾配を与える電力分配器。
(H)非可逆伝送線路型共振器を用いた発振器.
(28)非可逆伝送線路型共振器を用いた並列帰還形発振器の構成
(29)非可逆伝送線路型共振器を用いた直列帰還形発振器の構成。

【0172】
第8の実施形態.
以下、図57~図70を参照して、本発明の第8の実施形態に係る伝送線路型共振器、及びそれを用いて構成されたアンテナ装置について説明する。本実施形態では、第2の実施形態に係る伝送線路型共振器のさらなる変形例を提供する。

【0173】
まず、本実施形態の伝送線路型共振器の基本概念について説明する。図35のマイクロ波共振器のモデルを再び参照する。伝送線路型共振器の共振条件として、第2の実施形態で説明した式(10)~式(11)の関係が成り立っているものとする。

【0174】
可逆伝送線路の条件では、パラメータβ及びβは全く同一である。よって、整数nと線路長lとに対して、線路の位相定数に関する共振条件は共振器の長さによって決定され、次式で表される。

【0175】
β=β=β=nπ/l (13)

【0176】
式(13)において、n=1である場合、線路長lは、管内波長λgに対してl=λg/2になる。この条件は、半波長共振器の動作を規定する。式(13)において、n=0であれば、共振条件は線路長とは独立し、β=0である。ゼロの位相定数は無限波長を意味し、共振周波数が共振器のサイズに依存しない零次共振器の動作となる(例えば、非特許文献4参照。)。

【0177】
一方で、伝送線路が非可逆性であって次式の関係式を満たす場合について考える(例えば、非特許文献5参照。)。

【0178】
β+β=0 (14)

【0179】
この場合において、共振条件の式(10)は、n=0である共振器の長さに何ら要件を課すことなく自動的に成り立つ。非可逆性の共振条件の式(6)は、非可逆性の共振を達成するために、伝送線路は伝送電力の一つの方向に対して右手系の主モードをサポートし、かつ反対方向に対して左手系の主モードをサポートしなければならないことを意味している。さらに、これらの異なる2モードの位相定数の両方が同じ絶対値を持たなければならない。このような非可逆性の伝送特性は、非可逆伝送線路装置70Aを用いて達成することができる(例えば、非特許文献1参照。)。

【0180】
本実施形態の伝送線路型共振器に沿った(例えば図65のX軸に沿った)電圧波V及び電流波Iは、非可逆性の固有インピーダンスZ及びZで記述することができ、次式が得られる。

【0181】
V=V・exp(-j・β・x)+V・exp(j・β・x)
=Z・I・exp(-j・β・x)+Z・I・exp(j・β・x)
(15)
I=I・exp(-j・β・x)-I・exp(j・β・x)
(16)

【0182】
但し、式(15)及び式(16)におけるパラメータI及びIはそれぞれ、ポートP1からポートP2へ、かつその逆に伝搬する電流波の振幅を表す。β+β=0が成り立つとき、式(15)及び式(16)は次式で表される。

【0183】
V=(V+V)・exp(-j・β・x)
=(Z・I+Z・I)・exp(-j・β・x) (17)
I=(I-I)・exp(-j・β・x) (18)

【0184】
この場合、X軸上の位置の関数としての比V/Iは、次式のように一定値をとる。

【0185】
【数15】
JP0005877193B2_000016t.gif
(19)

【0186】
図35の伝送線路型共振器の両ポートP1,P2が短絡されて、Z1=Z2=0であれば、電流波Iが支配的となり、式(19)ではV+V=0及びZ0N=0となって式(17)及び式(18)において電圧波Vの振幅は最小値をとる。両ポートP1,P2が開放端であって、Z1=Z2=+∞であれば、電圧波Vが支配的となり、式(19)ではI=I及びZ0N=+∞となって電流波Iの振幅は最小値をとる。式(17)及び式(18)から、提案する伝送線路型共振器は、電流波I及び電圧波Vの何れが支配的であれ、伝送線路型共振器上において大きさが一様でありかつ位相が係数exp(-j・β・x)により空間的に線形変化する電磁界分布を提供することが分かる。

【0187】
本実施形態の伝送線路型共振器において、共振条件として両端の反射素子の負荷インピーダンスZ1及びZ2(図35を参照)に課せられる条件として、両端開放の場合として、
1/Z1=1/Z2=0 (20)
を使用し、両端短絡の場合として
Z1=Z2=0 (21)
を使用する。なお、後述の第9の実施形態で、Z1=jB及びZ2=-jBの条件を課す場合についても説明する。これら両端開放あるいは両端短絡条件を実現する具体的な方法として、以下では有限長の伝送線路を用いて構成することを考える。

【0188】
図57は、本発明の第8の実施形態に係る伝送線路型共振器の構成を示すブロック図である。本実施形態の伝送線路型共振器もまた、第1の実施形態の非可逆伝送線路装置(参照番号70Aにより示す)を用いて構成されたマイクロ波共振器であることを特徴とする。図57の伝送線路型共振器は、両端短絡共振器の共振条件を満たすために、非可逆伝送線路装置70AのポートP1(B1-B1’)において、4分の1波長と実質的に同じ長さの線路長(電気長θr1=90度)を有する終端開放の伝送線路101を接続し、一方、ポートP2(B2-B2’)において、4分の1波長と実質的に同じ長さの線路長(電気長θr2=90度)を有する終端開放の伝送線路102を接続したことを特徴としている。この場合、ポートP1から左側の伝送線路101を見たときの負荷インピーダンス及びポートP2から右側の伝送線路102を見た場合の負荷インピーダンスはともに0となることから、図57において、非可逆伝送線路装置70Aの両端において短絡条件を満足している。

【0189】
図58は、本発明の第8の実施形態の第1の変形例に係る伝送線路型共振器の構成を示すブロック図である。図58の伝送線路型共振器は、両端開放共振器の共振条件を満たすために、非可逆伝送線路装置70AのポートP1(B1-B1’)において、4分の1波長と実質的に同じ長さの線路長(電気長θr1=90度)を有する終端短絡の伝送線路101を接続し、一方、ポートP2(B2-B2’)において、4分の1波長と実質的に同じ長さの線路長(電気長θr2=90度)を有する終端短絡の伝送線路102を接続したことを特徴としている。この場合、ポートP1から左側の伝送線路101を見たときの負荷インピーダンス及びポートP2から右側の伝送線路102を見た場合の負荷インピーダンスはともに無限大となることから、図58において、非可逆伝送線路装置70Aの両ポートP1,P2に対して開放条件が満足している。

【0190】
図59は、本発明の第8の実施形態の第2の変形例に係る伝送線路型共振器の構成を示すブロック図である。図59の伝送線路型共振器は、両端短絡共振器もしくは両端開放共振器としての共振条件を満たすために、非可逆伝送線路装置70AのポートP1(B1-B1’)において、4分の1波長の|m|倍(ここで、mは整数である。)と実質的に同じ長さの線路長(電気長θr1≒m×90度)を有する終端開放の伝送線路101Aを接続し、一方、ポートP2(B2-B2’)において、4分の1波長の|m|倍(ここで、mは整数である。)と実質的に同じ長さの線路長(電気長θr2≒m×90度)を有する終端開放の伝送線路102Aを接続したことを特徴としている。この場合、両端短絡もしくは両端開放のどちらかの条件に設定する必要があるが、それぞれ整数mと整数mがともに奇数か、ともに偶数であるかに対応する。なお、整数m(i=1,2)が0の値を取る場合は、偶数として扱われる。また、整数mの符号は、伝送線路内の位相の遅れ/進みの観点で、負の値も取り得るものとする。ここで、整数mが負の値をとるのは、反射素子を構成する伝送線路101A又は102Aが左手系線路として動作している場合を示すものとする。

【0191】
図60は、本発明の第8の実施形態の第3の変形例に係る伝送線路型共振器の構成を示すブロック図である。図60の伝送線路型共振器は、両端短絡共振器もしくは両端開放共振器としての共振条件を満たすために、非可逆伝送線路装置70AのポートP1(B1-B1’)において、4分の1波長の|m|倍(ここで、mは0を除く整数である。)と実質的に同じ長さの線路長(電気長θr1≒m×90度)を有する終端短絡の伝送線路101Aを接続し、一方、ポートP2(B2-B2’)において、4分の1波長の|m|倍(ここで、mは整数である。)と実質的に同じ長さの線路長(電気長θr2≒m×90度)を有する終端短絡の伝送線路102Aを接続したことを特徴としている。この場合、両端短絡もしくは両端開放のどちらかの条件に設定する必要があるが、それぞれ整数mと整数mがともに偶数か、ともに奇数であるかに対応する。なお、整数m(i=1,2)が0の値を取る場合は、偶数として扱われる。また、整数mの符号としては、伝送線路内の位相の遅れ/進みの観点で、負の値も取り得るものとする。ここで、整数mが負の値をとるのは、反射素子を構成する伝送線路101A又は102Aが左手系線路として動作している場合を示すものとする。

【0192】
図57~図60に示した短絡終端及び開放終端を実現する有限長の伝送線路101,102,101A,102Aは、終端反射素子としての役割だけでなく、同時に当該伝送線路に沿って電圧と電流の比が0から無限大まで変化することから、信号を給電するためのインピーダンス整合回路としての役割も果たす。

【0193】
図57~図60の伝送線路型共振器は、アンテナ装置としても動作可能である。

【0194】
伝送線路からの漏れ波放射は、伝送線路内の位相定数βと自由空間中の波長の逆数β=ω/cとに対して、β<βの場合に生じる。但しcは真空中の光速である。この場合、漏れ波により形成される放射ビーム方向は、アンテナ装置を構成する伝送線路の線路長が波長と同程度かそれ以上である場合、ほぼ
【数16】
JP0005877193B2_000017t.gif
(22)
の方向を向く。但し、放射角θは伝送線路に対してブロードサイド方向(伝搬方向に対して垂直方向)を基準としてゼロとおき、位相定数βが正となる向きの方向に傾いた大きさを表す。なお、線路長が波長に比べて充分小さい場合、つまり線路長が小さくなると、漏洩波の放射方向は上記式(22)の方向からの逸脱が大きくなる。

【0195】
図8に示すように、伝送線路内の伝送電力の向きに関係なく、非可逆伝送線路装置70Aに沿って伝搬する電磁波の位相定数βが等しくなるのは、動作角周波数がω=ωの場合であり、このとき位相定数はβ=Δβ/2となる。この動作点が、上述の放射条件をも満たす場合、漏れ波による放射ビーム方向θは、伝送線路内の伝送電力の方向に関係なく、ほぼ
【数17】
JP0005877193B2_000018t.gif
(23)
の方向を向く。上述の放射条件を満足する下で、非可逆位相特性を表すΔβの値を変化させることにより、線路内の伝送電力の向きに関係なく、非可逆伝送線路装置70Aからの漏れ波放射の放射方向を同一にし、かつその放射ビーム方向を変化させることが可能であることを式(23)は示している。

【0196】
ここで、非可逆伝送線路装置70Aの単位セル60Aに基づいて、本実施形態のアンテナ装置の動作を説明する。非可逆伝送線路装置70Aの各単位セル60Aは、図1~図4を参照して説明したように、直列枝にキャパシタを挿入し、並列枝にインダクタを挿入した構成を有する。非可逆伝送線路装置70AのポートP1,P2に接続される伝送線路101,102のインピーダンスが0である場合(短絡条件)には、非可逆伝送線路装置70Aから伝送線路101,102へ大電流が流れ込むので、各単位セルの直列枝のインピーダンスが0となる直列共振動作が支配的となる。反対に、伝送線路101,102のインピーダンスが無限大である場合(開放条件)には、非可逆伝送線路装置70Aと伝送線路101,102線路との接続点で電流はゼロになり、電圧が最大になるので、並列枝のインピーダンスがほぼ無限大となる並列共振動作が支配的となる。以上のように、伝送線路101,102のインピーダンスの変化により、非可逆伝送線路装置70Aの特性を支配する共振状態が大きく変わる。その結果として、伝送線路101,102のインピーダンスの変化により、非可逆伝送線路装置70Aから放射される漏洩波の主偏波方向が変化する。伝送線路101,102のインピーダンスが0である場合には、各単位セル内で直列共振動作が支配的となり、非可逆伝送線路装置70Aの中央のマイクロストリップ線路12A上に大電流が流れ、漏れ波放射の主偏波方向は、マイクロストリップ線路12Aを含むZX面内の方向となる。一方で、伝送線路101,102のインピーダンスが無限大である場合、各単位セル内で並列共振動作が支配的となり、その結果、スタブ導体13A,13B上に大電流が流れ、漏れ波放射の主偏波方向は、スタブ導体13A,13Bが延在する方向、すなわちY軸方向となる。

【0197】
図61は、本発明の第8の実施形態に係る伝送線路型共振器を備えたアンテナ装置の構成を示すブロック図である。図61のアンテナ装置は、図59の伝送線路型共振器に、さらに給電回路を備えたことを特徴とする。給電回路を接続する位置としては、非可逆伝送線路装置70AのポートP1側に接続された伝送線路(図59の伝送線路101)と、非可逆伝送線路装置70AのポートP2側に接続された伝送線路(図59の伝送線路102)のどちらかを選ぶことができる。図61のアンテナ装置においては、一例としてポートP1側の伝送線路に接続しており、ポートP1は伝送線路112及び111を介してポートP21に接続され、伝送線路111,112により、電気長θr1=m×90度を有する伝送線路101(図59)を構成している。給電回路は、内部抵抗Rを有し、マイクロ波信号を発生する高周波信号発生器120と、給電線路125とを備えて構成される。但し、給電回路内の給電線路125の特性インピーダンスZ02とインピーダンス整合の取れる位置を補償するためには、整数mは非零でなければならない。この場合、伝送線路101(111,112)上では、伝送線路101に沿って電圧と電流の比が0から無限大まで変化することから、給電線路125とインピーダンス整合の取れる位置が必ず存在する。その位置を図61ではポートP23(B3-B3’)として表している。

【0198】
図62は、本発明の第8の実施形態に係る伝送線路型共振器を備えたアンテナ装置の第1の変形例の構成を示すブロック図である。図62のアンテナ装置は、図60の伝送線路型共振器に、さらに給電回路を備えたことを特徴とする。図62のアンテナ装置は、両端短絡であることのほかは、図61のアンテナ装置と同様に構成される。

【0199】
非可逆伝送線路装置70Aの終端条件を等価的に両端短絡から両端開放へ切り換えることにより、直列共振動作が支配的な状態から、並列共振動作が支配的な状態に切り換えることが可能であり、また逆に、両端開放から両端短絡へ切り換えることにより、並列共振動作が支配的な状態から、直列共振動作が支配的な状態に切り換えることが可能となる。本実施形態のアンテナ装置では、非可逆伝送線路装置70Aの終端条件を機械的、あるいは電気的、あるいはその両方を兼ね備えた方法で切り換えることにより、放射波の偏波特性の切り換えを行う。

【0200】
非可逆伝送線路装置70Aの終端条件を等価的に両端短絡から両端開放へ、あるいは両端開放から両端短絡へ切り換えるために、反射素子を構成する伝送線路の線路長を切り換える。またそのために、線路長を切り換えるスイッチを挿入する。

【0201】
図63は、本発明の第8の実施形態に係る伝送線路型共振器を備えたアンテナ装置の第2の変形例の構成を示すブロック図である。図63のアンテナ装置は、実質的には、図61のアンテナ装置にさらに、スイッチSW11,SW12でそれぞれ接続された追加の伝送線路123,132を備えたことを特徴とする。非可逆伝送線路装置70AのポートP1は伝送線路121,122、スイッチSW11及び伝送線路123を介してポートP21に接続され、非可逆伝送線路装置70AのポートP2は伝送線路131、スイッチSW12及び伝送線路132を介してポートP22に接続される。ここで、伝送線路121,122の合計の電気長θr1は90度であり、伝送線路123の電気長θr1Sは90度であり、伝送線路123の電気長θr2は90度であり、伝送線路132の電気長θr2Sは90度である。さらに一般的には、各電気長θr1,θr2,θr1S,θr2Sはそれぞれ、電気長θr1≒m×90度(mは整数である。)、電気長θr2≒m×90度(mは整数である。)、電気長θr1S≒m×90度(mは奇数である。)、電気長θr2S≒m×90度(mは奇数である。)であってもよい。但し、m,mはともに奇数又はともに偶数である。m,mがともに奇数の場合、図63の場合と同様の働きをするが、m,mはともに偶数の場合、図63の場合と比べるとスイッチSW11及びSW12のオンの状態とオフの状態とが入れかわる。また、m(i=1,2,3,4)が負の整数の場合、その伝送線路が左手系線路であることを示す。

【0202】
以上のように構成された図63のアンテナ装置において、SW11及びSW12をオフしたとき、当該非可逆伝送線路装置70Aの両終端は実質的に短絡状態となり、直列共振動作が支配的となる。この場合、放射波は直列枝である中央のマイクロストリップ線路12Aに平行なEθ成分(XZ面内の成分)が主偏波となる。一方、スイッチSW11及びSW12をオンしたとき、当該非可逆伝送線路装置70Aの両終端は実質的に開放状態となり、並列共振動作が支配的となる。この場合、放射波は並列枝であるスタブ導体13A,13Bに平行なEφ成分(YZ面内の成分)が主偏波となる。以上のことから、反射素子内のスイッチSW11,SW12を切り換えることにより、アンテナ装置からの放射において、主偏波の方向を切り換えることができる。

【0203】
図64は、本発明の第8の実施形態に係る伝送線路型共振器を備えたアンテナ装置の第3の変形例の構成を示すブロック図である。図64のアンテナ装置は、実質的には、図62のアンテナ装置にさらに、スイッチSW21,SW22でそれぞれ接続された追加の伝送線路123,132を備えたことを特徴とする。非可逆伝送線路装置70AのポートP1は伝送線路121,122、スイッチSW21の共通端子及び接点a及び伝送線路123を介してポートP21に接続され、非可逆伝送線路装置70AのポートP2は伝送線路131、スイッチSW22の共通端子及び接点a及び伝送線路132を介してポートP22に接続される。スイッチSW21,SW22の各接点bはそれぞれ接地されている。ここで、伝送線路121,122の合計の電気長θr1は90度であり、伝送線路123の電気長θr1sは90度であり、伝送線路131の電気長θr2は90度であり、伝送線路132の電気長θr2sは90度である。さらに一般的には、各電気長θr1,θr2,θr1S,θr2Sはそれぞれ、電気長θr1≒m×90度(mは整数である。)、電気長θr2≒m×90度(mは整数である。)、電気長θr1S≒m×90度(mは奇数である。)、電気長θr2S≒m×90度(mは奇数である。)であってもよい。但し、m,mはともに奇数又はともに偶数である。m,mがともに奇数の場合、図64の場合と同様の働きをするが、m,mはともに偶数の場合、図64の場合と比べるとスイッチSW21及びSW22の接点aの状態と接点bの状態とが入れかわる。またm(i=1,2,3,4)が負の整数の場合、その伝送線路が左手系線路であることを示す。

【0204】
以上のように構成された図64のアンテナ装置において、スイッチSW21及びSW22をそれぞれ接点a側に切り換えたとき、当該非可逆伝送線路装置70Aの両終端は実質的に短絡状態となり、直列共振動作が支配的となる。この場合、放射波は直列枝である中央のマイクロストリップ線路12Aに平行なEθ成分が主偏波となる。一方、スイッチSW21及びSW22をそれぞれ接点b側に切り換えたとき、当該非可逆伝送線路装置70Aの両終端は実質的に開放状態となり、並列共振動作が支配的となる。この場合、放射波は並列枝であるスタブ導体13A,13Bに平行なEφ成分が主偏波となる。以上のことから、反射素子内のスイッチSW21,SW22を切り換えることにより、アンテナ装置からの放射において、主偏波の方向を切り換えることができる。

【0205】
図65は、本発明の第8の実施形態の第1の実施例に係る伝送線路型共振器の構成を示す斜視図である。図65は図57の伝送線路型共振器の実装例を示す。図65の伝送線路型共振器は、図13と同様に構成された非可逆伝送線路装置70Aの両端に、終端開放で有限長のマイクロストリップ線路(それぞれ、誘電体基板10を挟設するストリップ導体12P1,12P2及び接地導体11により構成される。)を接続したことを特徴としている。ここで、反射素子の線路長として、動作周波数における管内波長λgの4分の1に設定している。その結果、非可逆伝送線路装置70Aの両端で短絡終端の条件を満たし、共振時においては、非可逆伝送線路装置70A内で、直列枝の直列共振つまり、電流波が支配的となり、進行波型共振器と類似した電磁界分布を示す。

【0206】
図66は、本発明の第8の実施形態の第2の実施例に係る伝送線路型共振器の構成を示す斜視図である。図66は図58の伝送線路型共振器の実装例を示す。図66の伝送線路型共振器は、図13と同様に構成された非可逆伝送線路装置70Aの両端に、終端短絡で有限長のマイクロストリップ線路(それぞれ、誘電体基板10を挟設するストリップ導体12P1,12P2及び接地導体11により構成される。)を接続したことを特徴としている。ここで、反射素子の線路長として、動作周波数における管内波長λgの4分の1に設定している。その結果、非可逆伝送線路装置70Aの両端で開放終端の条件を満たし、共振時においては、非可逆伝送線路装置70A内で、並列枝の並列共振つまり、電圧波が支配的となり、進行波型共振器と類似した電磁界分布を示す。

【0207】
図67は、本発明の第8の実施形態の第3の実施例に係るアンテナ装置の構成を示す斜視図である。図67は、図65の伝送線路型共振器のポートP2側に信号入力ポートをさらに備えたアンテナ装置の実装例を示す。すなわち、図67のアンテナ装置は、図61のアンテナ装置においてm=m=1とした場合の両端短絡共振器を具体的に実現したものである。但し、図61では、ポートP1側の反射素子の伝送線路111,112に給電線路125が挿入されているのに対して、図67では、ポートP2側の反射素子の伝送線路に給電線路(誘電体基板10を挟設するストリップ導体12P2A及び接地導体11とによりマイクロストリップ線路を構成してなる給電線路である。)が挿入されている。

【0208】
図68は、本発明の第8の実施形態の第4の実施例に係るアンテナ装置の構成を示す斜視図である。図68は、図66の伝送線路型共振器のポートP2側に信号入力ポートをさらに備えたアンテナ装置の実装例を示す。すなわち、図68のアンテナ装置は、図62のアンテナ装置においてm=m=1とした場合の両端開放共振器を具体的に実現したものである。但し、図62では、ポートP1側の反射素子の伝送線路111,112に給電線路125が挿入されているのに対して、図68では、ポートP2側の反射素子の伝送線路に給電線路(誘電体基板10を挟設するストリップ導体12P2A及び接地導体11とによりマイクロストリップ線路を構成してなる給電線路である。)が挿入されている。

【0209】
図69は、本発明の第8の実施形態の第5の実施例に係るアンテナ装置の構成を示す斜視図である。図69は、図67のアンテナ装置において終端開放の伝送線路の線路長を半波長にしたときのアンテナ装置の実装例を示す。図69のアンテナ装置は、図61のアンテナ装置においてm=m=2とした場合の両端開放共振器を具体的に実現したものである。

【0210】
図70は、本発明の第8の実施形態の第6の実施例に係る伝送線路型共振器の構成を示す斜視図である。図70の伝送線路型共振器は、図23と同様に構成された単位セル60Acからなる非可逆伝送線路装置70Akの両端に、終端開放で有限長のマイクロストリップ線路(それぞれ、誘電体基板10を挟設するストリップ導体12P1,12P2及び接地導体11により構成される。)を接続したことを特徴としている。ここで、反射素子の線路長として、動作周波数における管内波長λgの4分の1に設定している。その結果、非可逆伝送線路装置70Akの両端で短絡終端の条件を満たし、共振時においては、非可逆伝送線路装置70Ak内で、直列枝の直列共振つまり、電流波が支配的となり、進行波型共振器と類似した電磁界分布を示す。図70の伝送線路型共振器の非可逆伝送線路装置70Akでは、図23の非可逆伝送線路装置と同様にコントローラ(図示せず)が移相器21A,21Bに印加する電圧を制御することで、移相器21A,21Bの移相量を変化させ、これによりスタブ導体13A,13Bのインピーダンスを互いに異なる所定値にそれぞれ設定することができる。本実施例の伝送線路型共振器によれば、要求される非可逆性の大きさに応じて、スタブ導体13A,13Bのインピーダンスを互いに異なる所定値にそれぞれ設定し、このインピーダンスの相違によって、線路構造の非対称性を実現することができる。本実施例の伝送線路型共振器は、線路構造の非対称性自体を制御している。式(23)によれば、非可逆位相特性を表すΔβの値を変化させることにより、放射角θを変化させて走査することができる。その結果、非可逆伝送線路装置70Akが進行波型マイクロ波共振器として動作する場合の位相分布の空間的勾配を、時間関数として連続的あるいは離散的に変化させることが可能となる。従って、この非可逆伝送線路装置70Akをアンテナ装置に応用する場合、非可逆伝送線路装置70Akから放射するビーム方向を変えることができる。すなわち、当該アンテナ装置はビーム走査アンテナとして動作する。

【0211】
以上の説明では、伝送線路型共振器の両端に接続される反射素子として、伝送線路を採用したが、集中定数回路により等価的に終端短絡又は終端開放を実現することも可能である。また、スイッチを挿入して、それらの状態を切り換える構造も可能である。

【0212】
非可逆伝送線路装置のフェライト角棒15が軟磁性体である場合、外部磁界を印加しないと、フェライト角棒15は誘電体と同じ役割を果たす。この場合、非可逆伝送線路装置は、零次共振器として動作し、非可逆伝送線路装置上で位相分布は一様となる。このとき、非可逆伝送線路装置をアンテナ装置として応用する場合、放射方向は、ブロードサイド方向を向く。

【0213】
なお、第8の実施形態に係るアンテナ装置においては、伝送線路型共振器の共振状態において電磁波を放射しているが、設定条件を変更することにより、部分的に電磁波を漏洩して漏れ波アンテナ装置として構成してもよい。

【0214】
第8の実施形態に係る伝送線路型共振器では、図13~図34に示す第1の実施形態の非可逆伝送線路装置のうちのいずれを用いてもよい。また、第8の実施形態に係るアンテナ装置では、図13~図32に示す第1の実施形態の非可逆伝送線路装置のうちのいずれを用いてもよい。

【0215】
以上説明したように、第8の実施形態に係る伝送線路型共振器によれば、当該伝送線路型共振器上の電磁界分布は、従来技術に係る進行波共振器のそれに類似したものであり、すなわち、当該伝送線路型共振器の長手方向に沿って電界の振幅分布は一様であり、かつ位相分布は空間的に線形に変化する。また、この伝送線路型共振器を備えたアンテナ装置によれば、図63及び図64に示すように、非可逆伝送線路装置70Aの両端に反射素子である伝送線路を接続し、伝送線路の電気長(反射素子のインピーダンス)を切り換えることにより、アンテナ装置の指向性及び利得の改善に加えて、偏波方向を切り換えることができる。一方で、図70の移相器21A,21Bに印加する電圧を制御することで、非可逆位相特性を表すΔβの値を変化させることができ、これにより放射角θを変化させて走査することができる。位相分布の勾配が、伝送線路型共振器の非可逆性を変えることによって、すなわち、図70の移相器21A,21Bに印加する電圧を制御することによって連続的に制御可能である点は強調されるべきである。また、本実施形態に係る伝送線路型共振器によれば、動作波長に依存せずに装置サイズを自由に変化させることができ、例えば装置サイズを小型化できるマイクロ波共振器を提供できる。従って、提案した伝送線路型共振器は、マイクロ波チューナブルフィルタ、電力分割器並びにビームステアリングアンテナに対する新しいアプリケーションを開拓すると考えられる。

【0216】
ここで、分散曲線上に示される動作周波数について補足する。一般に、非可逆伝送線路装置70Aの分散曲線は、図7のように表される。図7において、関心のある帯域はωβ0L<ω<ωβ0Uであり、分散曲線の接線の傾きである∂ω/∂βが、各伝搬モードの伝送電力の方向を表すことに注意すると、動作点の接線が右肩上がりの正の勾配をもち、かつ位相定数βが正の値を持つ曲線部分は、伝送電力と波数ベクトルの向き(等位相面の流れる向き)が同じ方向を向く右手系モード伝搬であり、動作点の接線が左肩上がりの負の勾配をもち、かつ位相定数βが正の値を持つ曲線部分は、伝送電力と波数ベクトルの向きとが逆方向を向く左手系モード伝搬を示している。従って、両端にポートP1及びP2をもつ有限長さの線路でポートP1からポートP2に向かって正の方向と設定すると、ωβ0L<ω<ωβ0Uの帯域内で、ポートP1から信号を入力した場合、右手系モードとして伝搬し、逆にポートP2から信号を入力した場合、左手系モードとして伝搬する。

【0217】
特に、ω=ωcL及びω=ωcUの動作周波数においては、右手系モードと左手系モードの位相定数が一致している。従って、伝送電力の向きに関係なく等位相面は正の方向に流れる。

【0218】
非可逆伝送線路装置70Aの両端に境界条件を課すことにより、進行波型マイクロ波共振器を構成することができることは既に述べたが、両端短絡と両端開放の2つの場合が考えられる。両端短絡の場合、非可逆伝送線路装置70Aのうち直列枝部分のインピーダンスがほぼゼロの直列共振状態にあり、電流波が支配的となる。この場合の動作周波数をωseとおく。一方、両端開放の場合、非可逆伝送線路装置70Aのうち並列枝部分のアドミタンスがほぼゼロの並列共振状態にあり、電圧波が支配的となる。この場合の動作周波数をωshとおく。一般に、両端開放の場合と両端短絡の場合の共振周波数は異なっており、これは、図7において阻止帯域の下側カットオフ周波数ωcLと上側カットオフ周波数ωcUの違いに現れる。実際、2つの共振周波数ωseとωshのうち、大きい側の値がωcUで小さい側の値がωcLとなる。

【0219】
図8では、特に、図7のうちωcL=ωcU=ωとなる場合であり、図7において見られた阻止帯域が消失している。つまり、線路の両端の境界条件により動作可能な両端開放進行波型共振と両端短絡型共振の2つの動作周波数が縮退する条件を伴なっている。

【0220】
これまでに説明した実施例のほとんどが図8の特殊な場合に対応しているが、図7のような2種類の共振状態が縮退していない場合においても、進行波型マイクロ波共振器としての動作は可能である。この場合、もちろん、両端開放共振と両端短絡共振の動作周波数はそれぞれ異なる。

【0221】
第9の実施形態.
本実施形態では、非可逆伝送線路装置70Aを備えた伝送線路型共振器を、零次の進行波共振器として動作させることを特徴とする。本実施形態の伝送線路型共振器は、共振周波数が共振器のサイズに依存しない「零次共振」の共振状態で動作する零次の進行波共振器であって(例えば、非特許文献4参照。)、直列共振及び並列共振が混在した状態にある零次の進行波共振器を実現する。

【0222】
1.非可逆伝送線路装置の基本構成.
始めに、本実施形態の非可逆伝送線路装置の説明のために、図71~図74を参照して、従来技術の非可逆伝送線路装置のモデルを概略的に示す。図71は、基本的な右手/左手系複合伝送線路100を用いた従来技術に係る伝送線路型共振器の等価回路モデルを示す回路図であり、図72は、図71の単位セルUC(n=1,2,…,N)を簡略化して表した、従来技術に係る伝送線路型共振器の等価回路モデルを示す回路図である。図71の伝送線路型マイクロ波共振器は、有限の長さを有する右手/左手系複合伝送線路100と、右手/左手系複合伝送線路100の両端に伝送信号を反射するようにそれぞれ接続された終端負荷151及び152とを備えて構成される。さらに、右手/左手系複合伝送線路100の構成は、伝送信号の波長に比べて充分小さなサイズを有する複数N個の単位セルUC,UC,…,UCを縦続接続した梯子型伝送線路構成である。ここで、図71及び図72に示すように、単位セルUCは2端子対網の微小構成要素である。

【0223】
さらに、図71に示すように、単位セルUCは、右手/左手系複合伝送線路100を構成する伝送線路部分63の直列枝にキャパシタンスCを有する容量性素子及びインダクタンスLを有する誘導性素子を備えた直接共振回路が等価的に挿入され、並列枝にキャパシタンスCを有する容量性素子及びインダクタンスLを有する誘導性素子を備えた並列共振回路が等価的に挿入された構成を有する。ここで、インダクタンスLを有する誘導性素子及びキャパシタンスCを有する容量性素子は、右手系伝送線路が本来備えているもしくは挿入される直列枝の誘導性素子及び並列枝の容量性素子に対応する。一方、キャパシタンスCを有する容量性素子は、右手/左手系複合伝送線路100を伝搬する電磁波モードの実効透磁率が負となるよう直列枝に挿入された容量性素子に対応し、インダクタンスLを有する誘導性素子は、右手/左手系複合伝送線路100を伝搬する電磁波モードの実効誘電率が負となるよう並列枝に挿入された誘導性素子に対応する。

【0224】
図73は、対称T型構造を有する図71の単位セルUCの一例を示す回路図であり、図74は、対称π構造を有する図71の単位セルUCの一例を示す回路図である。図73及び図74において、パラメータZseは、伝送線路部分63の直列枝のインピーダンスを表し、パラメータYshは並列枝のアドミタンスを表し、それぞれ、次式で表される。

【0225】
【数18】
JP0005877193B2_000019t.gif

【0226】
【数19】
JP0005877193B2_000020t.gif

【0227】
ここで、ωseは直列枝の直列共振角周波数であり、次式で表される。

【0228】
【数20】
JP0005877193B2_000021t.gif

【0229】
また、ωshは並列枝の並列共振角周波数であり、次式で表される。

【0230】
【数21】
JP0005877193B2_000022t.gif

【0231】
以下では原則として、単位セルUCの線路長(つまり、周期長さ)dが波長に比べて十分小さい場合を仮定する。従って、単位セルがT型、π型あるいはL型の場合であっても、本質的に同様の結果が得られる一方で、波長に対する単位セルUCの線路長dがここで述べる基本的動作を制約しないことを強調しておく。

【0232】
また、以下、順方向の伝搬定数と逆方向の伝搬定数とが同一の値である可逆位相特性を有する右手/左手系複合伝送線路100を可逆右手/左手系複合伝送線路又は相反右手/左手系複合伝送線路(又は単に、可逆伝送線路)といい、順方向の伝搬定数と逆方向の伝搬定数と(特に、順方向の位相定数βと逆方向の位相定数βと)が互いに異なる非可逆位相特性を有する右手/左手系複合伝送線路100を非可逆右手/左手系複合伝送線路又は非相反右手/左手系複合伝送線路(又は単に、非可逆伝送線路)という。

【0233】
図71及び図72に示すような、複数の単位セルUCを縦続接続した周期構造を有する右手/左手系複合伝送線路100の伝搬特性は、動作周波数と伝搬電磁波の位相定数との間を関係づける分散曲線として求められる。従来技術に係る可逆右手/左手系複合伝送線路の非平衡状態の場合における分散曲線と、平衡状態の場合における分散曲線はそれぞれ、図5及び図6に示される。

【0234】
一般に、分散曲線の接線の勾配∂ω/∂βは、速度の次元を持ち、電磁波の伝送電力(ポインティングベクトル)の方向を表すのに対して、ω/βは位相速度(位相面の流れる向き)を表す。

【0235】
図5に示すように、非平衡状態の場合には直列共振角周波数ωseと並列共振角周波数ωshとは互いに異なり、電磁波の伝送電力の方向(群速度の向き)と位相速度の向きが反対となるバックワード波(左手系モード)の伝搬が可能な状態の下側の周波数帯と、群速度の向きと位相速度の向きとが同方向となるフォワード波(右手系モード)の伝搬が可能状態の上側の周波数帯とに分かれていることがわかる。また、右手系(RH)モード及び左手系(LH)モードを示す帯域の間には分散曲線が存在せず、波の伝搬が許されない禁止帯(バンド・ギャップ)となっている。

【0236】
一方、図6に示すように、平衡状態の場合には、直列共振角周波数ωseと並列共振角周波数ωshとは互いに一致し、右手系(RH)伝送特性及び左手系(LH)伝送特性が連続的に連結され、禁止帯が消失している。

【0237】
以上説明したように、右手/左手系複合伝送線路100は、少なくとも1つの単位セルUC,UC,…,UCを縦続接続した構成を有するマイクロ波伝送線路である。ここで、各単位セルUCは、右手/左手系複合伝送線路100を伝搬する電磁波モードの実効透磁率が負となるよう直列枝に挿入され、キャパシタンスCを有する容量性素子と、右手/左手系複合伝送線路100を伝搬する電磁波モードの実効誘電率が負となるよう直列枝に挿入され、インダクタンスLを有する誘導性素子と、非可逆伝送線路部分又は可逆伝送線路部分である伝送線路部分63とを備えて構成される。また、各単位セルUCは、右手/左手系複合伝送線路100に入力されるマイクロ波信号の動作周波数と、右手/左手系複合伝送線路100の位相定数との関係を示す分散曲線において右手/左手系複合伝送線路100が所定の位相定数を有するように回路構成されている。

【0238】
ここで、直列枝の直列共振角周波数ωseは式(4)ω2に対応し、並列枝の並列共振角周波数ωshは式(3)のω1に対応している(図5参照)。従って、この直列共振角周波数ωse及び並列共振角周波数ωshは、位相定数β=0であるときの角周波数、つまり分散曲線と対称軸であるω軸との交点上にあることがわかる。一方で、可逆伝送線路の分散曲線を表す図5及び図6と、非可逆伝送線路の分散曲線を表す図7及び図8との対応関係を考えると、非可逆線路の分散関係式(1)と可逆線路の分散関係式(2)との比較から容易に類推できるように、非可逆伝送線路の場合の分散曲線である図7において、直列枝の直列共振角周波数ωseと並列枝の並列共振角周波数ωshは、分散曲線とその対称軸であるβ=Δβ/2との交点上にある。つまり、直列共振角周波数ωse及び並列共振角周波数ωshのうち、値の小さい方がωcLであり、値の大きい方がωcUあるということになる。さらに、図7においてωcL=ωcUである場合、その間の禁止帯が消滅して図8のようになる。このとき、直列枝の直列共振角周波数ωseと並列枝の並列共振角周波数ωshは同じとなり、ωse=ωsh=ω0となる。

【0239】
2.実施形態に係る伝送線路型共振器の共振条件.
次に、図75~図78を参照して、本実施形態の伝送線路型共振器の共振条件を説明する。図75は、本発明の第9の実施形態に係る伝送線路型共振器の構成を示すブロック図である。前述のように、本実施形態の伝送線路型共振器は零次の進行波共振器として動作し、図75は零次の進行波共振器の等価回路モデルを示す。図75において、本実施形態の伝送線路型共振器は、第1の実施形態の非可逆伝送線路装置70Aと、非可逆伝送線路装置70AのポートP1に接続された反射素子151Rと、非可逆伝送線路装置70AのポートP2に接続された反射素子152Rとを備えて構成される。非可逆伝送線路装置70Aは、長さdをそれぞれ有する複数N個の基本セルUC,UC,…,UCからなり、全体で有限長さl=N×dを有する。ここで、反射素子151Rは、動作周波数において、ポートP1から見たインピーダンスがZL1となるように動作し、反射素子152Rは、動作周波数において、ポートP2から見たインピーダンスがZL2となるように動作する。図75におけるパラメータβ及びΔφはそれぞれポートP1からポートP2までの電力伝送に関する線路の位相定数及び位相遅延を示し、パラメータβ及びΔφはそれぞれポートP2からポートP1までの電力伝送に関する線路の位相定数及び位相遅延を示し、xは、非可逆伝送線路装置70Aの長手方向の位置(例えば図79のX軸に沿った位置)を示す。さらに、ポートP1及びP2における反射に起因する移相は、それぞれΔφ及びΔφである。この事例では、共振条件は、次式の位相関係式が成り立つときに満たされる。

【0240】
【数22】
JP0005877193B2_000023t.gif
(24)

【0241】
ここで、Δφ=β・l、及びΔφ=β・lであり、mは整数である。簡単化のために、最初は可逆の場合としてβ=β=βであると仮定し、非可逆伝送線路装置70Aを可逆伝送線路装置であるとみなす。このとき、両方のポートP1,P2が開放端であるか短絡されていれば、Δφ+Δφの値は、電圧波又は電流波のいずれの場合も2π又は0であり、よって式(24)は次式で表される。

【0242】
【数23】
JP0005877193B2_000024t.gif
(25)

【0243】
従って、線路の位相定数βに関する共振条件は可逆伝送線路装置の長さlによって決定され、かつ次式で表される。

【0244】
【数24】
JP0005877193B2_000025t.gif
(26)

【0245】
位相定数βは周波数の関数であるので、式(26)は共振周波数が線路長に依存することを表しているとも言える。式(26)においてm=1である場合、線路長l=λg/2である。ここで、パラメータλgは管内波長である。この条件は、典型的な半波長共振器の動作を規定する。式(26)において、m=0であれば、共振条件は線路長lとは独立し、β=0である。位相定数βがゼロであることは無限波長を意味し、管内波長λgが+∞の大きさを持ち、可逆伝送線路装置上で信号振幅及び位相が一様になる。このように、共振周波数が共振器のサイズに依存しない零次の進行波共振器を実現することができる。

【0246】
一方で、非可逆伝送線路装置の場合、式(25)は次のように書き換えられる。

【0247】
【数25】
JP0005877193B2_000026t.gif
(27)

【0248】
非可逆伝送線路装置の場合も、従来の可逆伝送線路装置の場合と同様に、位相定数β+及びβ-は周波数の関数であるので、式(27)はm≠0の場合、共振周波数が線路長lに依存することを表している。m=1である場合、可逆の場合と同様に、半波長共振器の動作を規定する。式(27)において、m=0であれば、共振条件は線路長lとは独立し、
【数26】
JP0005877193B2_000027t.gif
(28)
となる。式(28)は、既に述べたように、順方向伝搬は右手系モードが伝搬し、逆方向伝搬は左手系モードが伝搬する場合で、しかも伝搬方向の異なる2つのモードの位相定数の絶対値が同じ場合を表す。この条件は、図7においては、動作周波数がω=ωcLまたはω=ωcUの場合に相当し、図8においては、ω=ω0の場合に相当する。この共振状態の電磁界分布は、非可逆伝送線路装置70A上で一様な信号振幅と、一定の勾配の位相分布とをもつ。従って、この共振条件を満たす非可逆伝送線路装置70Aを備えた伝送線路共振器は、進行波共振器の電磁界分布と同じ性質を持つ。このように、共振周波数が共振器のサイズに依存しない進行波共振器を実現することができる。

【0249】
図75において、ポートP1及びP2が短絡されて、ZL1=ZL2=0であれば、非可逆伝送線路装置70Aから反射素子151R及び152Rに大電流が流れ込むため、各単位セルUCの直列枝のインピーダンスZseが0となる直列共振動作が支配的となる。このとき、放射波は直線偏波であって、その主偏波方向は、非可逆伝送線路装置70Aの長手方向に平行な方向となる。反対に、ポートP1及びP2が開放端であって、ZL1=ZL2=+∞であれば、非可逆伝送線路装置70Aと反射素子151R及び152Rの接続点で電流はゼロになり、電圧が最大になるため、並列枝のアドミタンスYshが0となる並列共振動作が支配的となる。このとき、放射波の主偏波方向は、並列枝に平行な方向となる。このため、例えば、図79に示すように、並列枝を構成するスタブ導体13A,13Bを、非可逆伝送線路装置70Aの長手方向に直交するように形成すると、放射波の主偏波方向は非可逆伝送線路装置70Aの長手方向に直交する方向となる。

【0250】
従来は、上述したように、両ポートP1及びP2を短絡端又は開放端とすることにより、零次共振器を実現していた。しかしながら、式(24)を得るためには、終端反射における位相条件としては、単に次式を満たせば十分である。

【0251】
【数27】
JP0005877193B2_000028t.gif
(29)

【0252】
ここで、mは整数である。さらに、終端反射に対する共振条件は、この位相条件だけでなく、実質的に全反射である(すなわち、反射係数の絶対値が1である)必要がある。従って、式(29)及びそれに続く説明により、ポートP1における反射係数Γ及びポートP2における反射係数Γは、次式で表される。

【0253】
【数28】
JP0005877193B2_000029t.gif
(30)

【0254】
【数29】
JP0005877193B2_000030t.gif
(31)

【0255】
非可逆伝送線路装置70Aのもつ非可逆性が主に位相推移量として現れ、特性インピーダンスの非可逆性が小さい場合、つまり式(1)においてΔZ=Z-Zがほぼゼロの場合、周期構造である非可逆伝送線路装置70Aのもつブロッホインピーダンスは、伝搬方向に依存せず、ほぼ可逆となる。以下では、この場合を考える。

【0256】
式(29)の位相関係は、ポートP1に、動作周波数において純虚数のインピーダンスjBを有する反射素子151Rを接続し、ポートP2に、動作周波数においてインピーダンスjBと共役なインピーダンス-jBを有する反射素子152Rを接続することにより実現できる。このとき、ポートP1における反射係数Γ1B及びポートP2における反射係数Γ2Bは、進行波共振器を構成する非可逆伝送線路装置70AのブロッホインピーダンスZCRLHTLを用いて、次式で表される。

【0257】
【数30】
JP0005877193B2_000031t.gif
(32)

【0258】
【数31】
JP0005877193B2_000032t.gif
(33)

【0259】
特に、右手/左手系複合伝送線路100が平衡状態を保ったまま共振状態にあるときには、ブロッホインピーダンスZCRLHTLは、単位セルの構造に関係なく、次式のように簡単に表される。

【0260】
【数32】
JP0005877193B2_000033t.gif
(34)

【0261】
式(32)及び式(33)の各反射係数Γ1B及びΓ2Bの関係は、式(30)及び式(31)の各反射係数Γ及びΓの関係を満たしている。従って、図75において、反射素子151RのリアクタンスBに応じて、様々な進行波共振器を実現できる。

【0262】
2-1.平衡型の非可逆伝送線路装置70Aを用いたときの動作.
次に、図76~図78を参照して、平衡型の非可逆伝送線路装置70Aを用いたときの伝送線路型共振器の動作を説明する。

【0263】
零次共振周波数付近で、直列枝のインピーダンスZse及び並列枝のアドミタンスYshは、実質的にゼロになる。このとき、対称T型構造を有する単位セルUC(図73参照。)のABCD行列FΤ、及び対称π構造を有する単位セルUC(図74参照。)のABCD行列FΠは、まとめて次式で近似できる。

【0264】
【数33】
JP0005877193B2_000034t.gif
(35)

【0265】
ただし、
【数34】
JP0005877193B2_000035t.gif
【数35】
JP0005877193B2_000036t.gif
は、図3あるいは図4において、非可逆伝送線路部分61及び62の部分の位相定数βp及びβmが可逆であり、
【数36】
JP0005877193B2_000037t.gif
と置き換えた場合の直列枝インピーダンス及び並列枝アドミタンスを表す。

【0266】
各単位セルUCが対称T型構造を有するとき、図75の非可逆伝送線路装置70AのポートP1(単位セルUCの一方のポートP11である。)を、インピーダンスjBを有する反射素子151Rで終端したときの、単位セルUCの他方のポートP12から見た入力インピーダンスZin,1は、近似的に次式で表される。

【0267】
【数37】
JP0005877193B2_000038t.gif
(36)

【0268】
単位セルUCが対称π型構造を有するときも、単位セルUCの他方のポートP12から見た入力インピーダンスZin,1は、式(36)で同様に表される。図76は、図75の非可逆伝送線路装置70AのポートP1を、インピーダンスjBを有する反射素子151Rで終端したときの、単位セルUCのポートP12から見た入力インピーダンスZin,1を示すブロック図である。これにより、単位セルUCの数Nが複数の場合に拡張しても、各単位セルUCのポートP12から見た入力インピーダンスZin,nが常にjBになることがわかる。つまり、零次共振状態にある有限長さの平衡型の非可逆伝送線路装置70Aの一方のポートP1に、インピーダンスjBを有する反射素子151Rを接続すると、他方のポートP2から見た入力インピーダンスは、線路長lに関係なく、常にポートP1の終端素子(すなわち、反射素子151R)のインピーダンスjBと同じになることが容易に理解できる。図77は、図75の非可逆伝送線路装置70AのポートP1を、インピーダンスjBを有する反射素子151Rで終端したときの、単位セルUCのポートP12から見た入力インピーダンスZin,1を示すブロック図である。

【0269】
非可逆伝送線路装置70Aの一方のポートP1に、動作周波数において実質的に実部を持たない所定の複素数であるインピーダンス、好ましくは純虚数のインピーダンスjBを有する反射素子151Rが反射素子として接続された場合、非可逆伝送線路装置70Aを零次共振させるためには、他方のポートP2に、動作周波数において、反射素子151Rのインピーダンスと実質的に共役であるインピーダンス、好ましくは純虚数のインピーダンスjBと共役な純虚数のインピーダンス-jBを有する反射素子152Rを接続することが必要となる。

【0270】
図78は、図75の反射素子151R及び152Rを備えた集中定数回路の閉ループ回路を示すブロック図である。以上説明したように、インピーダンスjBを有する反射素子151R及びインピーダンス-jBを有する反射素子152Rで終端された両端を有する有限長の平衡型の非可逆伝送線路装置70Aは、集中定数jB及び-jBを有する2つの素子の閉ループ(図78参照。)がそうであるのと同様に、自動的に共振条件を満たすことがわかる。

【0271】
なお、零次共振状態にある非可逆伝送線路装置70Aに沿って伝搬する電圧波と電流波の比(インピーダンス)は、上記の入力インピーダンスjBに相当することに注意すべきである。

【0272】
従来技術に係る零次共振器では、右手/左手系複合伝送線路100のポートP1及びP2を短絡端又は開放端としていた。ここで、右手/左手系複合伝送線路100のポートP1及びP2が短絡端である場合には、右手/左手系複合伝送線路100において直列共振が支配的になり、右手/左手系複合伝送線路100のポートP1及びP2が開放端である場合には、右手/左手系複合伝送線路100において並列共振が支配的になる。従って、従来技術に係る零次共振器をアンテナ装置の放射器として用いる場合、放射波の主偏波の方向として実現できる方向は、右手/左手系複合伝送線路100の長手方向に平行な方向(直列共振が支配的な場合。)又は、直交する方向(並列共振が支配的な場合。)のみであった。これは、非可逆伝送線路を用いた進行波共振器においても同様であった。これに対して、本発明によれば、反射素子151RのリアクタンスBは任意の値を取りうるので、直列共振が支配的な状態(リアクタンスBは0である。)と、並列共振が支配的な状態(リアクタンスBは無限大である)の中間の状態の零次の進行波共振器を実現できる。すなわち、本実施形態に係る零次の進行波共振器である非可逆伝送線路装置70Aをアンテナ装置の放射器として用いる場合、リアクタンスBを0から+∞まで変化させることにより、放射波の主偏波の方向を、非可逆伝送線路装置70Aに平行な方向から直交する方向まで変化させることができる。このとき、非可逆伝送線路装置70A上のエネルギー分布は直列枝に集中した状態から並列枝に集中した状態まで変化する。さらに、非可逆伝送線路装置70Aにおける共振エネルギーにおいて、直列共振エネルギーのみの状態から並列共振エネルギーのみの状態まで変化する。

【0273】
2-2.非平衡型の非可逆伝送線路装置70Aを用いたときの動作.
次に、非平衡型の非可逆伝送線路装置70Aを用いたときの伝送線路型共振器の動作を説明する。位相定数βがΔβ/2になるときの直列共振角周波数ωse及び並列共振角周波数ωshにおいて、一方は実効透磁率μeffがゼロとなる角周波数であり、他方は実効誘電率εeffがゼロとなる角周波数である。さらに、この2つの角周波数に挟まれた領域は、図7に示すように、非可逆伝送線路装置70Aに沿って電磁波の伝搬が許されない禁止帯であるが、実効誘電率εeff及び実効透磁率μeffのうち一方のみが負となるので、非可逆伝送線路装置70Aの特性インピーダンス(厳密には周期構造のブロッホインピーダンスZCRLHTL)Z=(μeff/εeff1/2は純虚数となる。以上のことから、非可逆伝送線路装置70AのポートP1に接続されたリアクタンスjBを有する反射素子151Rが、インピーダンス整合の取れる負荷として動作する周波数が存在する。つまり、非可逆伝送線路装置70Aの特性インピーダンスZがインピーダンスjBと等しくなる角周波数が、直列共振角周波数ωseと、並列共振角周波数ωshとの間の禁止帯に必ず存在する。このとき、非可逆伝送線路装置70Aの他方のポートP2からこの反射素子151R(負荷インピーダンスである。)を見たときの入力インピーダンスZinは線路長lに関係なく、常にjBとなる。従って、ポートP2にインピーダンス-jBを有する反射素子152Rを接続することにより、共振条件は自動的に満たされる。

【0274】
非平衡型の非可逆伝送線路装置70Aにおいて、直列共振角周波数ωse及び並列共振角周波数ωshの間の周波数帯では、伝送線路に沿って伝搬するモードが存在しない。従来は、直列共振角周波数ωse及び並列共振角周波数ωshに挟まれた禁止帯において動作可能で、共振角周波数が線路長lに依存しない伝送線路型共振器が提案された報告はなかった。これに対して、本実施形態に係る非平衡型の非可逆伝送線路装置70Aを用いた伝送線路型共振器によれば、リアクタンスBを0から+∞まで変化させることにより、共振周波数が線路の長さlに依存しない零次共振状態を維持したまま、共振角周波数を直列共振角周波数ωseから並列共振角周波数ωshまで変化させることができる。なお、このとき、平衡型の非可逆伝送線路装置70Aを用いた場合と同様に、放射波の主偏波の方向は、非可逆伝送線路装置70Aの長手方向に平行な方向から直交する方向まで変化し、非可逆伝送線路装置70A上のエネルギー分布は直列枝に集中した状態から並列枝に集中した状態まで変化する。従って、本実施形態に係る非平衡型の非可逆伝送線路装置70Aを用いた伝送線路型共振器により、動作周波数を直列共振角周波数から並列共振角周波数まで連続的に変化させることができるチューナブル共振器を実現できる。

【0275】
3.実施形態の伝送線路型共振器の具体的構成例.
次に、図75の伝送線路型共振器の具体的構成例について、図79~図82を参照して以下に説明する。図79は、本発明の第9の実施形態の第1の実施例に係る伝送線路型共振器の構成を示す上面図である。図79は、10個の単位セルを含む非可逆伝送線路装置70Aにより零次の進行波共振器として構成される伝送線路型共振器を示す。また、図80は、図79のA11-A11’線における断面図であり、図81は、図79のA12-A12’線における断面図である。図82は、図79の伝送線路型共振器を示す斜視図である。図82では、放射角θ及びφの定義も示す。

【0276】
図79~図82において、本実施形態に係る伝送線路型共振器は、
(a)第1の実施形態と同様に構成された非可逆伝送線路装置70Aと、
(b)非可逆伝送線路装置70Aの一端に接続され、長さlr1を有する開放終端のマイクロストリップ線路にてなる反射素子151Rと、
(c)非可逆伝送線路装置70Aの他端に接続され、長さlr2を有する開放終端のマイクロストリップ線路にてなる反射素子152Rとを備えて構成される。

【0277】
ここで、非可逆伝送線路装置70Aは、
(a)XY面に平行に設けられた接地導体11と、接地導体11上においてX軸に沿って延在するフェライト角棒15(Z軸に沿う自発磁化を持つか、外部直流磁界が印加されている)と、接地導体11上においてフェライト角棒15の+Y側及び-Y側の両方に設けられた誘電体基板10と、
(b)フェライト角棒15の表面に形成された複数のストリップ導体12と、接地導体11と、フェライト角棒15とからなるマイクロストリップ線路12Aと、
(c)複数のストリップ導体12のうちの互いに隣接する各ストリップ導体12を接続する複数のキャパシタC1,C2(図14を参照)と、
(d)マイクロストリップ線路12Aの各ストリップ導体から+Y方向にそれぞれ延在し、+Y側の端部においてスルーホール導体13Cを介して接地導体11にそれぞれ接続される、複数のスタブ導体13Aと、
(e)マイクロストリップ線路12Aの各ストリップ導体から-Y方向にそれぞれ延在し、-Y側の端部においてスルーホール導体13Dを介して接地導体11にそれぞれ接続される、複数のスタブ導体13Bと
を備えて構成される。なお、スタブ導体13A,13Bを開放端にする場合には、スルーホール導体13C,13Dは不要である。

【0278】
また、反射素子151Rを構成する長さlr1を有する開放終端のマイクロストリップ線路は、裏面に接地導体11を有する誘電体基板10と、長さlr1を有するストリップ導体12P1とを備えて構成される。さらに、反射素子152Rを構成する長さlr2を有する開放終端のマイクロストリップ線路は、裏面に接地導体11を有する誘電体基板10と、長さlr2を有するストリップ導体12P2とを備えて構成される。

【0279】
さらに、図79において、ストリップ導体12P1は、非可逆伝送線路装置70Aの側のストリップ導体12P1bと、残りのストリップ導体12P1aとから構成されており、両ストリップ導体12P1a及び12P1bの接続点に、伝送線路型共振器に給電するための給電線路を構成する給電線路導体12Fが挿入接続されている。ここで、給電線路は、給電線路導体12Fと裏面に接地導体11を有する誘電体基板10とを備えて構成される。また、ストリップ導体12P1aの長さlf1は、反射素子151Rのマイクロストリップ線路上に形成される定在波により空間変化する電圧対電流比(インピーダンス)と、給電線路の特性インピーダンス(50[Ω]である。)とを整合させるように設定される。

【0280】
なお、図79~図82の非可逆伝送線路装置70Aは、10個の単位セルを含む分布定数回路型伝送線路を形成している。なお、非可逆伝送線路装置70Aの両端と各反射素子151R,152Rとの間に設けられるキャパシタの容量は、他の単位セル間のキャパシタの容量の2倍である。これらのキャパシタは、入力される高周波信号(例えばマイクロ波信号)の周波数に依存して、互いに隣接するストリップ導体12間に実体のあるキャパシタを接続してもよいし、互いに隣接するストリップ導体12間の浮遊容量のみで構成してもよいし、もしくは上記各浮遊容量と並列接続されたキャパシタとからなる直列容量をキャパシタ14としてもよい。また、X軸に沿ったスタブ導体13A,13Bの形成間隔は、単位セルの線路長(すなわち、周期長さ)d[mm]と同じである。

【0281】
図79において、開放終端のマイクロストリップ線路導体12P1及び12P2の特性インピーダンス及び位相定数が、非可逆伝送線路装置70Aの特性インピーダンスZ及び位相定数βとそれぞれ等しいとき、反射素子151RのインピーダンスZL1及び反射素子152RのインピーダンスZL2は、次式で表される。

【0282】
【数38】
JP0005877193B2_000039t.gif

【0283】
【数39】
JP0005877193B2_000040t.gif

【0284】
ここで、lr1+lr2=λg/2を満足するように、非可逆伝送線路装置70Aの両端に接続されるマイクロストリップ線路の長さlr1及びlr2を変化させる場合に、式(30)及び式(31)を満足する反射素子151R及び152Rの構成を説明する。

【0285】
非可逆伝送線路装置70Aの両端に接続されるマイクロストリップ線路の長さlr1及びlr2がそれぞれλg/4であるとき(lr1=lr2=λg/4)、反射素子151RのインピーダンスZL1及び反射素子152RのインピーダンスZL2は、次式で表される。

【0286】
【数40】
JP0005877193B2_000041t.gif

【0287】
【数41】
JP0005877193B2_000042t.gif

【0288】
従って、非可逆伝送線路装置70Aの両端を短絡した両端短絡条件となるので、図79の零次の進行波共振器において、直列枝部分の直列共振が支配的となる。

【0289】
また、非可逆伝送線路装置70Aの両端に接続されるマイクロストリップ線路の長さlr1及びlr2がそれぞれλg/2及び0であるとき(lr1=λg/2かつlr2=0)、反射素子151RのインピーダンスZL1及び反射素子152RのインピーダンスZL2は、次式で表される。

【0290】
【数42】
JP0005877193B2_000043t.gif

【0291】
【数43】
JP0005877193B2_000044t.gif

【0292】
従って、非可逆伝送線路装置70Aの両端を開放した両端開放条件となるので、図79の零次の進行波共振器において、並列枝部分の並列共振が支配的となる。

【0293】
さらに、非可逆伝送線路装置70Aの両端に接続されるマイクロストリップ線路の長さlr1及びlr2を、lr1+lr2=λg/2を満足するように、両端短絡から両端開放へ連続的に変化させるとき、反射素子151RのインピーダンスZL1及び反射素子152RのインピーダンスZL2は、次式で表される。

【0294】
【数44】
JP0005877193B2_000045t.gif

【0295】
【数45】
JP0005877193B2_000046t.gif

【0296】
従って、インピーダンスZL1及ZL2は、式(32)及び式(33)の関係を自動的に満たす。

【0297】
図83は、本発明の第9の実施形態の第2の実施例に係る伝送線路型共振器の構成を示す上面図である。図83の伝送線路型共振器は、図79の伝送線路装置の非可逆伝送線路装置70Aに代えて、図23と同様に構成された単位セル60Acからなる非可逆伝送線路装置70Akを備えたことを特徴とする。図83の伝送線路型共振器の非可逆伝送線路装置70Akでは、図23の非可逆伝送線路装置と同様にコントローラ(図示せず)が移相器21A,21Bに印加する電圧を制御することで、移相器21A,21Bの移相量を変化させ、これによりスタブ導体13A,13Bのインピーダンスを互いに異なる所定値にそれぞれ設定することができる。本実施例の伝送線路型共振器によれば、要求される非可逆性の大きさに応じて、スタブ導体13A,13Bのインピーダンスを互いに異なる所定値にそれぞれ設定し、このインピーダンスの相違によって、線路構造の非対称性を実現することができる。本実施例の伝送線路型共振器は、線路構造の非対称性自体を制御している。

【0298】
4.実施形態に係る伝送線路型共振器を用いたアンテナ装置の構成.
以上説明したように、本実施形態に係る伝送線路型共振器(図75参照。)の終端条件を等価的に両端短絡から両端開放に変化させることにより、直列枝部分が支配的な共振形態から、並列枝部分が支配的な共振形態に変化させることが可能である。また逆に、両端開放から両端短絡へ変化させることにより、並列枝部分が支配的な共振形態から、直列枝部分が支配的な共振形態に変化させることが可能となる。この伝送線路型共振器をアンテナ装置として利用し、共振器の終端条件を機械的、あるいは電気的、あるいはその両方を兼ね備えた方法で変化させることにより、放射波あるいは受信電波の偏波特性を変化させる。

【0299】
図84は、本発明の第9の実施形態の第3の実施例に係るアンテナ装置の構成を示すブロック図である。図84のアンテナ装置は、図75の伝送線路型共振器(零次の進行波共振器)を用いて構成される。図84のアンテナ装置は、
(a)ポートP1及びP2を有する非可逆伝送線路装置70Aと、ポートP1に接続された反射回路151RAと、ポートP2に接続された反射回路152RAとを備えた零次の進行波共振器と、
(b)マイクロストリップ線路141a及び141cを備え、零次の進行波共振器によって受信されたマイクロ波信号を出力する給電線141(給電回路である。)と、
(c)マイクロストリップ線路141aと141cとの間に接続されたマイクロストリップ線路141baと、マイクロストリップ線路141baと電磁的に結合するように近接して配置されたマイクロストリップ線路141bbとを備えて構成された方向性結合器141bと、
(d)マイクロストリップ線路141baに流れる受信マイクロ波信号の電力の一部を、方向性結合器141bを用いて検出する受信電力検出器200と、
(e)マイクロストリップ線路141cから出力される受信マイクロ波信号を入力する無線受信機400と、
(f)コントローラ300とを備えて構成される。

【0300】
ここで、反射回路151RAは、スイッチSW1及びSW2と、マイクロストリップ線路151a,151b-1,151b-2,151b-3,151b-4とを備えて構成される。また、反射回路152RAは、スイッチSW3と、マイクロストリップ線路152-2,152-3,152-4とを備えて構成される。マイクロストリップ線路151b-1の長さは、マイクロストリップ線路151aの長さとマイクロストリップ線路151b-1の長さの総和がλg/2になるように設定され、マイクロストリップ線路151b-2の長さは、マイクロストリップ線路151aの長さとマイクロストリップ線路151b-2の長さの総和が3λg/8になるように設定され、マイクロストリップ線路151b-3の長さは、マイクロストリップ線路151aの長さとマイクロストリップ線路151b-3の長さの総和がλg/4になるように設定されている。さらに、マイクロストリップ線路152-2の長さはλg/8に設定されマイクロストリップ線路152-3の長さはλg/4に設定されている。マイクロストリップ線路151b-4の長さは、マイクロストリップ線路151aの長さとマイクロストリップ線路151b-4の長さの総和が5λg/8になるように設定され、マイクロストリップ線路152-4の長さは3λg/8に設定されている。またさらに、マイクロストリップ線路151aの長さは、のマイクロストリップ線路である反射回路151RAに形成される定在波により空間変化する電圧対電流比(インピーダンス)と給電線141の特性インピーダンスとを整合させるように設定される。スイッチSW1及びSW2ならびにスイッチSW3は、反射回路151RA及び152RAのインピーダンス変化手段である。

【0301】
図84において、スイッチSW1、SW2、SW3はコントローラ300によって、連動して切り換えられる。スイッチSW1、SW2、SW3がそれぞれ接点aに切り換えられると、マイクロストリップ線路151aとポートP1との間にマイクロストリップ線路151b-1が接続され、ポートP2は開放端となる。これにより、反射回路151RA及び152RAのインピーダンスは+∞になり、受信される電波の偏波の方向は、非可逆伝送線路装置70Aの長手方向に直交する方向になる。また、スイッチSW1、SW2、SW3がそれぞれ接点bに切り換えられると、マイクロストリップ線路151b-1とポートP1との間にマイクロストリップ線路151b-2が接続され、ポートP2にマイクロストリップ線路152-2が接続される。これにより、反射回路151RAのインピーダンスは50j[Ω]になり、反射回路152RAのインピーダンスは-50j[Ω]になり、受信される電波の偏波の方向は、非可逆伝送線路装置70Aの長手方向に平行な方向と非可逆伝送線路装置70Aの長手方向に直交する方向の間の角度(45度)になる。さらに、スイッチSW1、SW2、SW3がそれぞれ接点cに切り換えられると、マイクロストリップ線路151b-1とポートP1との間にマイクロストリップ線路151b-3が接続され、ポートP2にマイクロストリップ線路152-3が接続される。これにより、反射回路151RA及び152RAのインピーダンスは0になり、受信される電波の偏波の方向は、非可逆伝送線路装置70Aの長手方向に平行な方向になる。また、スイッチSW1、SW2、SW3がそれぞれ接点dに切り換えられると、マイクロストリップ線路151aとポートP1との間にマイクロストリップ線路151b-4が接続され、ポートP2にマイクロストリップ線路152-4が接続される。これにより、反射回路151RAのインピーダンスは-50j[Ω]になり、反射回路152RAのインピーダンスは50j[Ω]になり、受信される電波の偏波の方向は、非可逆伝送線路装置70Aの長手方向に平行な方向と非可逆伝送線路装置70Aの長手方向に直交する方向の間の角度(45度)で、しかもスイッチSW1、SW2、SW3がそれぞれ接点bに切り換えられた場合に対して直交する方向を取る。

【0302】
コントローラ300は、受信電力検出器200によって検出される受信電力が最大になるように、スイッチSW1、SW2、SW3を切り換える。従って、図84のアンテナ装置によれば、偏波の方向を、受信電力が最大となるような最適な偏波の方向に切り換えることができる。

【0303】
図85は、本発明の第9の実施形態の第4の実施例に係るアンテナ装置の構成を示すブロック図である。図85のアンテナ装置は、図75の伝送線路型共振器(零次の進行波共振器)を用いて構成される。図85のアンテナ装置は、
(a)ポートP1及びP2を有する非可逆伝送線路装置70Aと、ポートP1に接続された反射回路151RBと、ポートP2に接続された反射回路152RBとを備えた零次の進行波共振器と、
(b)マイクロストリップ線路141a及び141cを備え、零次の進行波共振器によって受信されたマイクロ波信号を出力する給電線141(給電回路である。)と、
(c)マイクロストリップ線路141aと141cとの間に接続されたマイクロストリップ線路141baと、マイクロストリップ線路141baと電磁的に結合するように近接して配置されたマイクロストリップ線路141bbとを備えて構成された方向性結合器141bと、
(d)マイクロストリップ線路141baに流れる受信マイクロ波信号の電力の一部を、方向性結合器141bを用いて検出する受信電力検出器200と、
(e)マイクロストリップ線路141cから出力される受信マイクロ波信号を入力する無線受信機400と、
(f)コントローラ300Aとを備えて構成される。

【0304】
ここで、反射回路151RBは、ポートP1と接地電位との間に直列接続された可変容量ダイオード151cと、インダクタ151d,151eとを備えて構成される。ここで、給電線路を構成するストリップ導体12Faの一端は、インダクタ151d,151e間の接続点に接続される。また、反射回路152RBは、ポートP2と接地電位との間に直列接続された可変容量ダイオード152a及びインダクタ152bを備えて構成される。また、インダクタ151d,151eの各素子値は、零次の進行波共振器のインピーダンスが給電線141の特性インピーダンスに整合するように設定される。可変容量ダイオード151c,152aはそれぞれ、反射回路151RB及び152RBのインピーダンス変化手段である。

【0305】
コントローラ300Aは、反射回路151RBのインピーダンスが実質的に実部を持たない所定の複素数、好ましくは純虚数になり、反射回路152RBのインピーダンスが反射回路151RBのインピーダンスと実質的に共役な複素数、好ましくは共役な純虚数になり、かつ、受信電力検出器200によって検出される受信電力が最大になるように、可変容量ダイオード151c,152aに印加する各逆バイアス電圧を変化させる。従って、図85のアンテナ装置によれば、偏波の方向を、受信電力が最大となるような最適な偏波の方向に切り換えることができる。また、図84のアンテナ装置は、偏波の方向は3つの方向から選択されたが、本実施例によれば、偏波の方向を、非可逆伝送線路装置70Aの長手方向に平行な方向から非可逆伝送線路装置70Aの長手方向に直交する方向までの間の任意の方向に連続的に変化させることができる。

【0306】
なお、図85において、可変容量ダイオード151c,152aに代えて、可変リアクタンス素子を用いてもよい。

【0307】
図86は、本発明の第9の実施形態の第5の実施例に係るアンテナ装置の構成を示すブロック図である。図86のアンテナ装置は、図75の伝送線路型共振器(零次の進行波共振器)を用いて構成される。図86のアンテナ装置は、
(a)ポートP1及びP2を有する非可逆伝送線路装置70Aと、ポートP1に接続された移相器153及び反射素子151Rと、ポートP2に接続された移相器154及び反射素子152Rとを備えた零次の進行波共振器と、
(b)マイクロストリップ線路141a及び141cを備え、零次の進行波共振器によって受信されたマイクロ波信号を出力する給電線141(給電回路である。)と、
(c)マイクロストリップ線路141aと141cとの間に接続されたマイクロストリップ線路141baと、マイクロストリップ線路141baと電磁的に結合するように近接して配置されたマイクロストリップ線路141bbとを備えて構成された方向性結合器141bと、
(d)マイクロストリップ線路141baに流れる受信マイクロ波信号の電力の一部を、方向性結合器141bを用いて検出する受信電力検出器200と、
(e)マイクロストリップ線路141cから出力される受信マイクロ波信号を入力する無線受信機400と、
(f)コントローラ300Bとを備えて構成される。

【0308】
本実施例のアンテナ装置は、ポートP1から見た反射素子151Rのインピーダンスを変化させるために、ポートP1と反射素子151Rとの間に移相器153を備え、ポートP2から見た反射素子152Rのインピーダンスを変化させるために、ポートP2と反射素子152Rとの間に移相器154を備える。

【0309】
コントローラ300Bは、反射素子151Rのインピーダンスが実質的に実部を持たない所定の複素数、好ましくは純虚数になり、反射素子152Rのインピーダンスが反射素子151Rのインピーダンスと実質的に共役な複素数、好ましくは共役な純虚数になり、かつ、受信電力検出器200によって検出される受信電力が最大になるように、移相器153,154に対する印加電圧を連動して変化させることにより、それらの移相量を変化させる。従って、図86のアンテナ装置によれば、偏波の方向を、受信電力が最大となるような最適な偏波の方向に切り換えることができる。また、図84のアンテナ装置では、偏波の方向は3つの方向から選択されたが、本実施例によれば、偏波の方向を、非可逆伝送線路装置70Aの長手方向に平行な方向から非可逆伝送線路装置70Aの長手方向に直交する方向までの間の任意の方向に連続的に変化させることができる。

【0310】
図87は、図86のアンテナ装置の構成を示す上面図である。図79のアンテナ装置に、さらに移相器153,154を備えている。

【0311】
図88は、本発明の第9の実施形態の第5の実施例に係るアンテナ装置の構成を示す上面図である。図83のアンテナ装置に、さらに移相器153,154を備えている。コントローラ300B(図示せず:図86を参照)は、移相器153,154の移相量を変化させ、これとは独立に、非可逆伝送線路装置70Akの非可逆性を制御するために移相器21A,21Bの移相量を制御する。

【0312】
また、図84~図86において、給電線路を反射回路151RA及び151RB側に設けたが、本発明はこれに限らず、反射回路152RA及び152RB側に設けてもよい。

【0313】
また、図84~図86を参照して、本発明に係る図75の零次の進行波共振器を受信用のアンテナ装置に適用した例を説明した。しかしながら、本発明はこれに限らず、図75の零次の進行波共振器と、反射素子151R又は152Rに接続され、マイクロ波信号を上記零次の進行波共振器に給電する給電回路とにより、送信用のアンテナ装置を提供できる。

【0314】
図83の伝送線路型共振器をアンテナ装置として用いる場合、式(23)によれば、非可逆位相特性を表すΔβの値を変化させることにより、放射角θを変化させて走査することができる。その結果、図83の伝送線路型共振器をアンテナ装置として用いるとき、非可逆伝送線路装置70Akが進行波型マイクロ波共振器として動作する場合の位相分布の空間的勾配を、時間関数として連続的あるいは離散的に変化させることが可能となる。従って、図83の伝送線路型共振器をアンテナ装置に応用する場合、伝送線路型共振器から放射するビーム方向を変えることができる。すなわち、当該アンテナ装置はビーム走査アンテナとして動作する。

【0315】
なお、本願発明者らが行ったシミュレーションによれば、本実施形態の伝送線路型共振器は以下のように動作すると期待される。反射素子151R及び152Rの各線路長lr1及びlr2を変化させることによりリアクタンスBを変化させても、共振周波数はほぼ一定値である。反射素子151R及び152Rの各線路長lr1及びlr2を連続的に変えることにより、直列枝に分布する磁界の大きさと、スタブに分布する磁界の大きさの割合を連続的に変えることができる。非可逆伝送線路装置上で電磁界の振幅分布が一様となるため、放射ビーム方向は、リアクタンスBの値に依存せずに、伝送線路の持つ非可逆位相推移量Δβに依存して
【数46】
JP0005877193B2_000047t.gif
を向く。但し、β0は自由空間の位相定数である。放射波のθ方向成分及びφ方向成分は、ほぼ同相関係にあるため、直線偏波の状態を維持したまま、偏波方向を回転させることができる。また、反射素子151R及び152Rの線路長lr1及びlr2を、リアクタンスBを0から+∞まで連続的に変えるように変化させることにより、放射波の主偏波方向を非可逆伝送線路装置の長手方向に平行な方向から、スタブ導体13A,13Bの長手方向に平行な方向(つまり、非可逆伝送線路装置の長手方向に直交する方向する方向)まで、連続的に変えられることが確認されている。なお、非可逆伝送線路装置が厳密には平衡型ではなく、左手系モード伝送帯域と、右手系モード伝送帯域との間に小さな禁止帯が存在する非平衡型線路の場合であっても、共振器は直列共振及び並列共振が混在した状態で動作可能であるため、放射波の主偏波を連続的に変えることができる。

【0316】
5.まとめ
以上説明したように、本実施形態の伝送線路型共振器によれば、非可逆伝送線路装置のポートP1に接続された反射素子151Rと、ポートP2に接続された反射素子152Rとを備え、ポートP1から反射素子151Rを見たインピーダンスが実質的に実部を持たない所定の複素数(好ましくは純虚数jB)であり、ポートP2から反射素子152Rを見たインピーダンスが実質的に共役な複素数(好ましくは純虚数-jB)であるので、直列共振状態及び並列共振状態に加えて、両者が混在する状態を実現できる新規な零次の進行波共振器を提供できる。

【0317】
特に、平衡型の非可逆伝送線路装置を用いた場合、反射素子151RのリアクタンスBを連続的に変化することにより、共振周波数を変化させることなく、直列枝の直列共振のみが支配的な状態から、並列枝の並列共振のみが支配的な状態まで、直列共振エネルギーと並列共振エネルギーの割合を連続的に変えることができる。

【0318】
また、直列枝の直列共振角周波数と並列枝の並列共振角周波数が異なる非平衡型の非可逆伝送線路装置を用いた場合、この2つの異なる周波数に挟まれる帯域においては、同線路に沿って伝搬するモードが存在しない禁止帯となる。この場合、同線路上での電磁界分布は線路に沿って指数関数的な形を示すものの、引き続き、共振周波数が線路長に依存しない零次の進行波共振器を実現できる。このとき、反射素子151RのリアクタンスBを連続的に変化することにより、共振周波数を、直列共振角周波数と並列共振角周波数の間で連続的に変えることができる。

【0319】
さらに、本実施形態の伝送線路型共振器を用いたアンテナ装置によれば、反射素子151RのリアクタンスBを変化することにより、上記アンテナ装置から放射されるマイクロ波信号又は受信されるマイクロ波信号の偏波方向を変化させることができる。

【0320】
なお、以上の説明では、簡単化のために順方向の位相定数βと逆方向の位相定数βとが同一の値βであると仮定したが、以上の説明をβ≠βである場合に拡張することも、第1の実施形態の説明などから容易に理解されるであろう。

【0321】
第9の実施形態に係る伝送線路型共振器では、図13~図34に示す第1の実施形態の非可逆伝送線路装置のうちのいずれを用いてもよい。また、第9の実施形態に係るアンテナ装置では、図13~図32に示す第1の実施形態の非可逆伝送線路装置のうちのいずれを用いてもよい。

【0322】
第10の実施形態.
図89は、本発明の第10の実施形態に係る非可逆伝送線路装置70Eの構成を示す斜視図である。図90は、図89の非可逆伝送線路装置70Eにおける伝送線路の単位セル60Eの詳細構成を示す斜視図である。図91は、図90のA6-A6’線における断面図である。第1の実施形態の非可逆伝送線路装置では、マイクロストリップ線路12AにキャパシタC1,C2が直列に挿入され、マイクロストリップ線路12Aからスタブ導体13A,13Bが分岐していたが、非可逆伝送線路装置の非可逆性は主にスタブ導体13A,13Bの長さに依存し、キャパシタC1,C2自体は非可逆性には寄与しない。従って、第1の実施形態の非可逆伝送線路装置からキャパシタC1,C2を除去しても、第1の実施形態と同様の効果を実現可能である。

【0323】
図89~図91を参照すると、非可逆伝送線路装置70Eは、伝送線路の単位セル60Eを縦続接続して構成される。マイクロストリップ線路12Eは、フェライト角棒15上において、キャパシタが挿入されていない単一のストリップ導体として形成される。接地導体11は、誘電体基板10の+Y側の側面まで延長され(接地導体11Aとして示す)、スタブ導体13Aに接続される(短絡スタブ)。同様に、接地導体11は、誘電体基板10の-Y側の側面まで延長され(接地導体11Bとして示す)、スタブ導体13Bに接続される(短絡スタブ)。他の部分は、図13の非可逆伝送線路装置70Aと同様に構成される。図89の非可逆伝送線路装置70Eにおいて、接地導体11A,11Bを設けることなく、図13と同様にスタブ導体13A,13Bを接地導体11に接続してもよい。また、接地導体11A,11Bを設けることなく、図20と同様にスタブ導体13A,13Bを開放スタブとして構成してもよい。

【0324】
比較のために、図92~図94に、本発明の第1の実施形態の第10の変形例に係る非可逆伝送線路装置70Alを示す。図92は、本発明の第1の実施形態の第10の変形例に係る非可逆伝送線路装置70Alの構成を示す斜視図である。図93は、図92の非可逆伝送線路装置70Alにおける伝送線路の単位セル60Alの詳細構成を示す斜視図である。図94は、図93のA7-A7’線における断面図である。図92の非可逆伝送線路装置70Alは、誘電体基板10の+Y側及び-Y側の側面に接地導体11A,11Bをそれぞれ備えたことのほかは、図13の非可逆伝送線路装置70Aと同様に構成される。

【0325】
図95は、図89の非可逆伝送線路装置70E(キャパシタなし)及び図92の非可逆伝送線路装置70Al(キャパシタあり)における分散曲線を示すグラフである。このグラフを参照し、キャパシタC1,C2の有無にかかわらず非可逆性を実現できることを示す。

【0326】
図95のシミュレーションでは、図90及び図93に共通の寸法として、d11=0.8mm、d12=8.1mm、d13=2.8mm、d14=d15=d16=1mm(従って、単位セル60E,60Alの線路長d=3mm)、及びd17=0.8mmを用いた。フェライト角棒15に、比誘電率15、+Z方向の飽和磁化μ=175mT、及び+Z方向の内部磁界μ=50mTを設定した。誘電体基板10に比誘電率2.62を設定した。単位セル60E,60Alをそれぞれ10個ずつ縦続接続した。

【0327】
図95の分散曲線は、図89の非可逆伝送線路装置70E及び図92の非可逆伝送線路装置70Alに係るSパラメータの位相特性を換算することによって得られた。図95の太破線は、図89の非可逆伝送線路装置70E(キャパシタなし)の分散曲線を示し、図95の太実線は、図92の非可逆伝送線路装置70Al(キャパシタあり)の分散曲線を示す。図95を参照すると、キャパシタありの場合は、周波数が6.4GHzのときに分散曲線が交差しているのに対して、キャパシタなしの場合、同じ周波数付近でカットオフが生じている。キャパシタなしの場合には、6.4GHz以下で減衰モードとなり、出力側で位相特性の観測が困難になるので、その分散曲線の概形を、太破線への漸近線(一点鎖線)により表す。

【0328】
図95の細破線は、キャパシタなしの場合の分散曲線(太破線)について、所定の周波数における正規化位相定数β・d/πを表す2つの曲線の値の平均値を示し、図95の細実線は、キャパシタありの場合の分散曲線(太実線)について、所定の周波数における正規化位相定数β・d/πを表す2つの曲線の値の平均値を示す。正規化位相定数β・d/π=0の垂直線から正規化位相定数β・d/πの平均値を表す曲線(細破線及び細実線)までの距離は、非可逆性の大きさを示す。図95を参照すると、シミュレーションを行った周波数帯にわたって、キャパシタなしの場合及びキャパシタありの場合の両方で所定の非可逆性が達成され、かつ、非可逆性の大きさがほぼ一致していることがわかる。つまり、マイクロストリップ線路に直列に挿入されたキャパシタの有無は、図89の非可逆伝送線路装置70E及び図92の非可逆伝送線路装置70Alに係る非可逆性にほとんど影響を与えない。

【0329】
キャパシタなしの場合の漸近線(一点鎖線)において、正規化位相定数β・d/π=0の垂直線と正規化位相定数β・d/πの平均値を表す曲線(細破線)との間の範囲では、図89の非可逆伝送線路装置70Eは左手系モード伝送線路として動作する。

【0330】
次に、図96~図100を参照して、図89の非可逆伝送線路装置70Eのスタブ導体13A,13Bの長さの組み合わせが非可逆性に与える影響について示す。スタブ導体13A,13Bの長さの組み合わせを決める方法としては、一方のスタブ導体の長さをまず決定し、次いで、非可逆伝送線路装置70Eの並列枝の回路が並列共振する場合に相当するカットオフ周波数(つまり実効誘電率が0の場合に相当する周波数)が変動せず常にほぼ一定となるように、もう一方のスタブ導体の長さを選ぶ。シミュレーションでは、スタブ導体13Bの長さd13を変えながら、カットオフ周波数が一定値6.4GHzになるようにスタブ導体13Aの長さd12を数値計算により求めた。

【0331】
図96は、図89の非可逆伝送線路装置70EにおけるSパラメータの周波数特性を示すグラフである。図97は、図89の非可逆伝送線路装置70Eにおける分散曲線を示すグラフである。図96及び図97のシミュレーションで用いたパラメータは、各スタブ導体13A,13Bの長さd12,d13以外は、図95のシミュレーションで用いたものと同じである。各スタブ導体13A,13Bの長さd12,d13の組み合わせとして、以下のケース1~4の値を用いた。

【0332】
[表1]
————————————————————————————
ケース1: d12=4.7mm,d13=4.7mm
ケース2: d12=5.8mm,d13=3.8mm
ケース3: d12=8.1mm,d13=2.8mm
ケース4: d12=11.2mm,d13=1.9mm
————————————————————————————

【0333】
図96に示すように、非可逆伝送線路装置70Eは高域通過特性を有する。図97では、ケース1~4のそれぞれについて、図95と同様に、分散曲線に加えて、所定の周波数における正規化位相定数β・d/πを表す2つの曲線の値の平均値も示す。

【0334】
ケース1では、非可逆伝送線路装置70Eはマイクロストリップ線路12Eの伝搬方向と磁化方向とにより形成される面(XZ面)に対して対称な構造を有するので、非可逆性が現れない。このとき、分散曲線も、正規化位相定数β・d/π=0の垂直線に関して対称となる。

【0335】
また、高域通過特性を有す非可逆伝送線路装置70Eにおいてカットオフ周波数を固定するためには、同周波数において、スタブ導体13AのインダクタンスLaとスタブ導体13BのインダクタンスLbとの和のインダクタンスLtotalが一定となる必要がある。スタブ導体13A,13Bは並列接続されているので、その長さの変化によってエッジガイドモードの境界条件、電磁界分布及び伝搬特性がそれほど大きく変化しなければ、スタブ導体13A,13Bの全体のインダクタンスLtotalは、ほぼ次式の関係を満たすはずである。

【0336】
1/Ltotal=1/La+1/Lb (37)

【0337】
一方で、各スタブ導体13A,13Bの長さd12,d13の相違が大きくなると、一般にインダクタンスLa,Lb間の差異が顕著になり、線路構造の対称性が崩れて、伝送特性の非可逆性がより大きくなる。図96によれば、各スタブ導体13A,13Bの長さd12,d13の組み合わせを変えても、カットオフ周波数がほぼ一定に維持されている一方で、図97によれば、非可逆性が大きく変化していることが分かる。

【0338】
図98は、図89の非可逆伝送線路装置70Eにおける分散曲線について、シミュレーション及び測定により得た正規化位相定数の平均値を示すグラフである。数値計算により得た図96及び図97のシミュレーション結果を実験的に確認するために、各スタブ導体13A,13Bの長さd12,d13からなる3つの組み合わせで非可逆伝送線路装置70Eを試作し、伝送特性の非可逆性を測定した。図98のシミュレーション及び測定では、非可逆伝送線路装置70Eの寸法として、d11=0.8mm、d14=d15=d16=1mm、及びd17=0.8mmを用い、10個の単位セル60Eを縦続接続した。フェライト角棒15として、0.8mm×0.8mm×30mmの寸法を有する軟磁性体の多結晶イットリウム・鉄・ガーネット(YIG)を用い、フェライト角棒15は+Z方向の飽和磁化μM=175mTを有し、+Z方向の外部磁界Bex=135mTを印加した。各スタブ導体13A,13Bの長さd12,d13の組み合わせとして、シミュレーションでは以下のケース5~7の値を用い、試作の測定では以下のケース8~10の値を用いた。

【0339】
[表2]
————————————————————————————
ケース5: d12=5.1mm,d13=5.1mm
ケース6: d12=5.6mm,d13=4.0mm
ケース7: d12=8.1mm,d13=2.9mm
————————————————————————————
[表3]
————————————————————————————
ケース8: d12=5.16mm,d13=5.16mm
ケース9: d12=5.57mm,d13=4.03mm
ケース10: d12=8.44mm,d13=3.01mm
————————————————————————————

【0340】
図98によれば、線路構造の非対称性が大きくなるにつれて、伝送特性の位相に現れる非可逆性も大きくなることが実験的に確認できる。また、シミュレーション結果も測定結果とよく一致している。

【0341】
図99は、図89の非可逆伝送線路装置70Eにおけるスタブ導体13A,13Bの長さに対するインダクタンスのシミュレーション結果を示すグラフである。図100は、図89の非可逆伝送線路装置70Eにおけるスタブ導体13A,13Bの長さに対するインダクタンスの測定結果を示すグラフである。図99及び図100のグラフは、カットオフ周波数におけるスタブ導体13AのインダクタンスLa、スタブ導体13BのインダクタンスLb、及びスタブ導体13A,13Bの全体のインダクタンスLtotalを、スタブ導体13Bの長さd13の関数として表す。図100の測定では、上述のケース8~10の値を用い、図99のシミュレーションでは以下の値を用いた。

【0342】
[表4]
——————————————————————
d12=4.7mm,d13=4.7mm
d12=5.1mm,d13=4.3mm
d12=5.8mm,d13=3.8mm
d12=6.8mm,d13=3.3mm
d12=8.1mm,d13=2.8mm
d12=9.3mm,d13=2.3mm
d12=11.2mm,d13=1.9mm
——————————————————————

【0343】
図99のシミュレーション結果によれば、式(37)の関係がほぼ満たされていることがわかる。また、図100の測定結果でも、シミュレ-ション結果とほぼ同じ傾向で、式(37)を満足していることがわかる。図99によれば、スタブ導体13BのインダクタンスLbは常に正であり、スタブ導体13Bは誘導性素子として動作している。一方、スタブ導体13AのインダクタンスLaは、スタブ導体13Aの長さd12が増大するにつれて(図99では、スタブ導体13Bの長さd13が減少するにつれて)、正の値から0まで減少し、さらにd12>8.1mmの場合(図99では、d13<2.8mmの場合)、長さd12が管内波長の1/2を超え、インダクタンスLaは負の値へと変化し、スタブ導体13Aは容量性素子として動作している。

【0344】
ここで再び図97を参照すると、インダクタンスLa,Lbの両方が正の値になる長さd12,d13を有するスタブ導体13A,13Bを用いる場合よりも、一方のインダクタンスLaが負になる(すなわち容量性素子として動作する)長さd12,d13を有するスタブ導体13A,13Bを用いる場合のほうが、非可逆性が大きくなっている。このことは、非可逆性を大きくするための線路構造の構成方法を示唆し、誘導性スタブと容量性スタブとの組み合わせが候補の一つとなりうる。このことは、後に示す解析的手法による結果からも説明できる。

【0345】
次に、図101~図103を参照して、図89の非可逆伝送線路装置70Eのもつ非可逆性の大きさを定量的に表す。図95~図100では、図89の非可逆伝送線路装置70Eのもつ非可逆性の大きさをシミュレーション及び測定により求めていたが、この非可逆性の大きさを、電磁界解析及び等価回路モデルの助けを借りて近似的に定式化することも可能である。

【0346】
図101は、図91の非可逆伝送線路装置70Eにおけるフェライト角棒15の境界条件を説明するための図である。図101~図103では、説明のために、図89等で用いた座標系とは異なる座標系を参照する。図101において、符号10A,10Bにより、フェライト角棒15に対して-X方向及び+X方向の誘電体基板をそれぞれ表す。非可逆性を引き起こすのは、マイクロストリップ線路に対してスタブ導体13A,13Bが非対称に挿入されるからであり、これは、図101のマイクロストリップ線路を構成するフェライト角棒15の+X側及び-X側の側面の境界条件(すなわち、導波路の境界条件)が非対称になることにより、固有モードが非可逆性を示すからである。異なる長さd12,d13を有するスタブ導体13A,13Bを挿入すること、又は、スタブ導体13A,13Bの一方を除去することは、図101のフェライト角棒15の+X側及び-X側の側面の境界条件として異なるインピーダンスZ及びZを与えることに相当する。以下に、図91の非可逆伝送線路装置70Eの解析方法を要約して示す。

【0347】
+Z方向の飽和磁化M及び+Z方向の直流磁界Hを有するフェライト角棒15の透磁率テンソルは、下記のように表される。

【0348】
【数47】
JP0005877193B2_000048t.gif
(38)

【0349】
ここで、μは真空の透磁率である。

【0350】
図101のフェライト角棒15のX方向の幅がWであり、フェライト角棒15から誘電体基板10A,10Bを見たときのフェライト角棒15の+X側及び-X側の側面におけるインピーダンスがそれぞれZ,Zであると仮定する。フェライト角棒15の+X側の側面に原点をおき、マイクロストリップ線路を次式により表す。

【0351】
【数48】
JP0005877193B2_000049t.gif
(39)

【0352】
このマイクロストリップ線路に沿って伝搬する固有モードの分散曲線は、次式により表される。

【0353】
【数49】
JP0005877193B2_000050t.gif

(40)

【0354】
ここで、γ=α+jβは固有モードの伝搬定数であり、γの実部αは減衰定数であり、虚部βは位相定数である。さらに、式(40)では、次の表記を用いている。

【0355】
【数50】
JP0005877193B2_000051t.gif
【数51】
JP0005877193B2_000052t.gif

【0356】
ここで、εはフェライト角棒15の比誘電率であり、cは光速である。

【0357】
特に、マイクロストリップ線路にスタブ導体が接続されていない場合を考えると、フェライト角棒15の+X側及び-X側の側面に磁気壁が設けられているとみなして式(40)においてZ=Z=+∞を仮定することにより、マイクロストリップ線路の電磁波伝搬を記述することができる。このとき、良く知られた従来のエッジガイドモードとして次式が得られる。

【0358】
【数52】
JP0005877193B2_000053t.gif
(41)

【0359】
図102は、図101の非可逆伝送線路装置に係る定式化されたモデルにより得た分散曲線、及び位相定数の平均値を示すグラフである。図103は、図101の非可逆伝送線路装置におけるインピーダンスZに対する周波数の特性を示すグラフである。図102の点線及び破線は、式(40)を用いて数値計算により得た固有モードの分散曲線のシミュレーション結果を示す。図102のシミュレーションでは、フェライト角棒15の-X側の側面に磁気壁が設けられ、かつ、マイクロストリップ線路の+X側に誘導性素子としてスタブ導体13B(その先端は接地導体11Bに短絡されている)が接続されている場合を想定し、式(40)においてZ=+∞とした。フェライト角棒15の+X側及び-X側の側面の境界条件が非対称なので、導波モード領域と減衰モード領域とのいずれにおいても非可逆性が大きく現れていることが確認できる。

【0360】
一般に、非可逆性の大きさ(すなわち、前述のように、所定の周波数における位相定数を表す2つの曲線の値の平均値)を定量的に表すよう定式化しておくことは、非可逆伝送線路装置を設計する上で重要である。ここでは導出過程を省くが、非可逆性の大きさΔγの近似式が次式のように得られた。

【0361】
【数53】
JP0005877193B2_000054t.gif
(42)

【0362】
ここで、kは自由空間の位相定数を示す。特に、フェライト角棒15の-X側の側面に磁気壁が設けられ、Z=+∞である場合、式(42)は、次式のように簡単化される。

【0363】
【数54】
JP0005877193B2_000055t.gif
(43)

【0364】
式(43)を用いて求めた非可逆性の大きさΔγを、図102の実線により表す。図102によれば、周波数が約2GHzから約13GHzの範囲において、実線は点線及び破線の表す2つの位相定数の平均値と重なっている。従って、図102によれば、非可逆性の大きさを表す式(43)は、超越方程式である式(40)から数値計算により直接求められる厳密解に良く一致していることがわかる。

【0365】
次に、図104~図108を参照して、非可逆伝送線路装置の周期構造を考慮して、非可逆伝送線路装置の非可逆性を定量的に表す。上述の図101~図103を参照した説明では、電磁波の進行方向に対して一様な構造を仮定した固有モード解析とその結果について述べたが、本発明の実施形態は複数の単位セルを縦続接続して構成された非可逆伝送線路装置であり、周期性を有している場合が多い。そこで、非可逆伝送線路装置が周期構造を有する場合の伝搬特性及び非可逆性を定量的に取り扱うための定式化を下記に要約する。

【0366】
図104は、本発明の第10の実施形態の第1の変形例に係る非可逆伝送線路装置70Fの構成を示す斜視図である。図105は、図104の非可逆伝送線路装置70Fにおける伝送線路の単位セル60Fの詳細構成を示す斜視図である。図104を参照すると、非可逆伝送線路装置70Fは、伝送線路の単位セル60Fを縦続接続して構成される。マイクロストリップ線路12Fは、図89のマイクロストリップ線路12Eと同様に、フェライト角棒15上において、キャパシタが挿入されていない単一のストリップ導体として形成される。マイクロストリップ線路12Fに対して-X方向にはスタブ導体が設けられない一方、マイクロストリップ線路12Fに対して+X方向にのみスタブ導体13Bが設けられる。スタブ導体13Bは、誘電体基板10を貫通するスルーホール導体13Eにより接地導体11に短絡されている。図105に示すように、各単位セル60Fは、電磁波の伝搬方向(Y軸に沿った方向)に沿って、非可逆線路部分(nonreciprocal section:NRS)と、可逆線路部分(reciprocal section:RS)とを含む。非可逆線路部分では、マイクロストリップ線路12Fに対して+X方向にのみスタブ導体13Bが設けられているので、伝送特性に非可逆性が現れる。一方、可逆線路部分では、マイクロストリップ線路12Fに対して-X方向及び+X方向のいずれにもスタブ導体が設けられていないので、伝送特性は可逆である。従って、非可逆伝送線路装置70Fは、非可逆線路部分及び可逆線路部分からなる周期構造を有する。

【0367】
図106は、図104の非可逆伝送線路装置70Fにおける伝送線路の単位セル60Fの等価回路を示す図である。γは伝搬定数を示し(γ=α+jβ)、上付き添字+及び-はそれぞれ順方向及び逆方向を示し、下付き添字N及びRはそれぞれ非可逆線路部分及び可逆線路部分を示す。非可逆線路部分では、順方向の伝搬定数γと逆方向の伝搬定数γとは異なる値を有する。可逆線路部分では、順方向の伝搬定数γと逆方向の伝搬定数γとは互いに等しい。また、Zは可逆線路部分の特性インピーダンスを示し、Zは非可逆線路部分の特性インピーダンスを示す。

【0368】
非可逆線路部分のABCD行列は、次式で表される。

【0369】
【数55】
JP0005877193B2_000056t.gif
(44)

【0370】
は非可逆線路部分のY方向の長さを示す。さらに、式(44)では、前述の下付き添字N及びRとともに、次の表記を用いている。

【0371】
【数56】
JP0005877193B2_000057t.gif
【数57】
JP0005877193B2_000058t.gif
【数58】
JP0005877193B2_000059t.gif
【数59】
JP0005877193B2_000060t.gif
【数60】
JP0005877193B2_000061t.gif
【数61】
JP0005877193B2_000062t.gif

【0372】
一方、可逆線路部分のABCD行列は、次式で表される。
【数62】
JP0005877193B2_000063t.gif
(45)

【0373】
は可逆線路部分のY方向の長さを示す。

【0374】
従って、単位セル60F全体のABCD行列は、次式で表される。

【0375】
【数63】
JP0005877193B2_000064t.gif
(46)

【0376】
以上より、非可逆伝送線路装置70Fの全体に係る分散曲線は、次式で表される。

【0377】
【数64】
JP0005877193B2_000065t.gif
(47)

【0378】
γは周期構造に沿って伝搬するモードの伝搬定数を示し、dは、単位セル60Fの周期長さを示す。さらに、式(47)では、次の表記を用いている。

【0379】
【数65】
JP0005877193B2_000066t.gif
【数66】
JP0005877193B2_000067t.gif
【数67】
JP0005877193B2_000068t.gif

【0380】
式(47)からすぐわかるように、分散曲線の対称軸とω軸のずれを表すγd-Δγ/2が位相特性の非可逆性を意味しており、その大きさは、周期構造のうち非可逆線路部分の占める割合とその大きさの積を表している。

【0381】
図107は、図104の非可逆伝送線路装置70Fにおける分散曲線を示すグラフである。図108は、図104の非可逆伝送線路装置70FにおけるSパラメータの周波数特性を示すグラフである。図107の点線及び実線は、式(47)を用いて数値計算により得た分散曲線のシミュレーション結果を示す。図107において、点線は順方向の減衰定数α及び逆方向の減衰定数αを示し、実線は順方向の位相定数β及び逆方向の位相定数βを示す。図107ではさらに、以上説明した解析解と伝送線路モデルの組み合わせにより回路モデルを表す手法の有効性を示すために、有限要素法による電磁界シミュレーションを行った結果も示す。有限要素法による電磁界シミュレーションを単位セルが6個の場合と30個の場合とについて行い、図107において、白い正方形は順方向の位相定数を示し、黒い正方形は逆方向の位相定数を示す。また、図108の点線及び実線は数値計算により得たSパラメータを示し、点線は反射係数のパラメータS11,S22を示し、実線は通過係数のパラメータS21,S12を示す。図108においても、有限要素法による電磁界シミュレーションを行った結果を示す。図108において、白い正方形は順方向の通過係数のパラメータS21を示し、黒い正方形は逆方向の通過係数のパラメータS12を示す。図107及び図108によれば、解析解と伝送線路モデルを組み合わせた回路モデルは、有限要素法による電磁界シミュレーションの結果と良く一致していることがわかる。

【0382】
図109は、本発明の第10の実施形態の第2の変形例に係る非可逆伝送線路装置の構成を示す断面図である。前述のように、両方のインダクタンスが正の値になる長さd12,d13を有するスタブ導体13A,13Bを用いる場合よりも、一方のインダクタンスが負になる(すなわち容量性素子として動作する)長さd12,d13を有するスタブ導体13A,13Bを用いる場合のほうが、非可逆性が大きくなる。従って、図109に示すように、一方のスタブ導体13Aを開放スタブとして構成し、他方のスタブ導体13Bを短絡スタブとして構成し、開放スタブであるスタブ導体13Aの長さd12を例えば管内波長の1/2より長くする一方、短絡スタブであるスタブ導体13Bの長さd13+d17を短くすることにより、一方のスタブ導体13Aを容量性素子として動作させる。スタブ導体13A,13Bを図109のように構成することにより、非可逆伝送線路装置の非可逆性を大きくすることができる。図109の構成は、第1の実施形態(図13)のようにキャパシタが直列に挿入された非可逆伝送線路装置にも、第10の実施形態(図89)のように直列に挿入されたキャパシタを含まない非可逆伝送線路装置にも適用可能である。

【0383】
図110は、図109の非可逆伝送線路装置における減衰定数を示すグラフである。図111は、図109の非可逆伝送線路装置における位相定数を示すグラフである。図112は、図109の非可逆伝送線路装置におけるブロッホインピーダンスの周波数特性を示すグラフである。図113は、図109の非可逆伝送線路装置におけるSパラメータの周波数特性を示すグラフである。図110~図113は、スタブ導体13A,13Bのうちの一方のインダクタンスが負になる(すなわち容量性素子として動作する)ように構成した例のシミュレーション結果を示す。図110~図113によれば、図109の非可逆伝送線路装置において非可逆性が大きくなることが分かる。

【0384】
第1の実施形態のように非可逆伝送線路装置においてキャパシタを直列に挿入する場合、例えばストリップ導体間にチップキャパシタを実装すると、実装に起因するばらつきが生じる可能性がある。従って、第10の実施形態のように直列に挿入されたキャパシタを含まない非可逆伝送線路装置であれば、実装に起因するばらつきを解消することができ、さらに、その製造を簡単化することができる。

【0385】
第2~第9の実施形態は、第1の実施形態の非可逆伝送線路装置(すなわち、直列枝の容量素子を備えた非可逆伝送線路装置)を参照して説明したが、第10の実施形態の非可逆伝送線路装置を第2~第9の実施形態と組み合わせてもよい。

【0386】
第11の実施形態.
図114は、本発明の第11の実施形態に係る非可逆伝送線路装置70Amの構成を示す斜視図である。図115は、図114の非可逆伝送線路装置70Amにおける伝送線路の単位セル60Amの詳細構成を示す斜視図である。図116は、図115のA8-A8’線における断面図である。非可逆伝送線路装置70Amの線路構造の非対称性を実現するための方法は、スタブ導体13A,13Bの長さを変化させたり(図14等)、スタブ導体13A,13Bに挿入された移相器を用いたりする(図23等)ことに限定されない。第11の実施形態では、誘電体基板に電圧を印加することにより、線路構造の非対称性を実現する。

【0387】
図114~図116を参照すると、接地導体11上においてフェライト角棒15の+Y側及び-Y側の両方にそれぞれ設けられた誘電体基板10A,10Bは、強誘電体材料からなる。誘電体基板10A,10B上に電極13AA,13BAをそれぞれ形成し、電極13AAと接地導体11との間に可変電圧源により直流電圧V1を印加し、電極13BAと接地導体11との間に可変電圧源により直流電圧V2を印加することにより、誘電体基板10A,10Bの誘電率εd1(V1),εd2(V2)をそれぞれ変化させる。図114~図116の例では、電極13AAはスタブ導体13Aに接続され、電極13BAはスタブ導体13Bに接続されている。従って、マイクロストリップ線路12Aを通るマイクロ波信号がスタブ導体13A,13Bに流れることを阻止するために、かつ、可変電圧源V1,V2からの直流電流がマイクロストリップ線路12Aに流れることを阻止するために、ストリップ導体12とスタブ導体13Aとの間にキャパシタC21を挿入し、ストリップ導体12とスタブ導体13Bとの間にキャパシタC22を挿入し、さらに、電極13AAと接地導体11との間にキャパシタC23を接続し、電極13BAと接地導体11との間にキャパシタC24を接続する。

【0388】
電極13AAと接地導体11との間に可変な直流電圧V1を印加することにより、誘電体基板10Aの誘電率εd1(V1)の値が変化し、これにより、フェライト角棒15から誘電体基板10Aを見たときのフェライト角棒15の+Y側の側面におけるインピーダンスZ(V1)の値も変化する。同様に、電極13BAと接地導体11との間に可変な直流電圧V2を印加することにより、誘電体基板10Bの誘電率εd2(V2)の値が変化し、これにより、フェライト角棒15から誘電体基板10Bを見たときのフェライト角棒15の-Y側の側面におけるインピーダンスZ(V2)の値も変化する。図114の非可逆伝送線路装置70Amによれば、要求される非可逆性の大きさに応じて誘電体基板10A,10Bに印加する直流電圧V1,V2を変化させることにより、インピーダンスZ(V1),Z(V2)を互いに異なる所定値にそれぞれ設定し、このインピーダンスの相違によって、線路構造の非対称性を実現することができる。

【0389】
誘電体基板10A,10Bに印加する直流電圧V1,V2を変化させることにより誘電率εd1(V1),εd2(V2)が変化し、その結果として、スタブ導体13A,13B(短絡スタブ、開放スタブ、又は負荷インピーダンス素子が接続されたスタブ)の入力インピーダンスも変化する。入力インピーダンスの変化に応じて、スタブ導体13A,13Bは、短絡スタブ又は開放スタブとして選択的に動作できるだけでなく、誘導性素子としても容量性素子としても動作することができる。このように、誘電体基板10A,10Bに印加する直流電圧V1,V2を変化させることによりスタブ導体13A,13Bの入力インピーダンスが変化し、その結果として、マイクロストリップ線路12Aの順方向及び逆方向の特性インピーダンス及び位相定数も変化する。

【0390】
なお、誘電体基板10A,10Bを構成する材料としては、直流電圧V1,V2を印加することによりスタブ導体13A,13Bの入力インピーダンスが変化すれば良いので、強誘電体、圧電体などを使用可能である。

【0391】
図114~図116の例では、電極13AA,13BAはスタブ導体13A,13Bにそれぞれ接続されているが、接続されていなくてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0392】
本発明によれば、新規な原理により線路構造の非対称性を実現し、小さな消費電力で非可逆性を制御可能な非可逆伝送線路装置を提供することができる。また、本発明によれば、そのような非可逆伝送線路装置を備えたアンテナ装置を提供することができる。
【0393】
本発明によれば、非可逆伝送線路装置の移相器に印加する印加電圧を変化させることにより、非可逆伝送線路装置の非可逆性を変化させることができ、これにより、放射角を変化させて走査することができるアンテナ装置を提供することができる。
【0394】
本発明によれば、直列共振状態及び並列共振状態に加えて、両者が混在する状態を実現できる新規な零次の進行波共振器として動作する伝送線路型共振器を提供できる。
【0395】
本発明の実施形態に係るアンテナ装置は、マイクロ波領域における情報通信用送受信アンテナに限定されるものではなく、例えば、無線電力伝送用アンテナとしても用いることができる。
【符号の説明】
【0396】
10,10A,10B,17…誘電体基板、
11,11A,11B,18…接地導体、
12,12C,12D…ストリップ導体、
12A,12E,12F…マイクロストリップ線路、
12B,12P1,12P1a,12P1b,12P2,12P2A…ストリップ線路、
12F…給電線路導体、
12S1,12S2…スルーホール導体、
13A,13B…スタブ導体、
13AA,13BA…電極、
13C~13E…スルーホール導体、
15,15A…フェライト角棒、
16…フェライト基板、
19…誘電体層、
20…コントローラ、
21A,21B…移相器、
30…磁界発生器、
40…高周波信号発生器、
41…電力分配器、
42,44…可変減衰器、
43,45…移相器、
46…スイッチ、
50…コントローラ、
60A~60F,60A-1~60A-M…伝送線路の単位セル、
61,62,63…伝送線路部分、
70A~70F…非可逆伝送線路装置、
71,72,73-1~73-N,74,75,76,77…伝送線路、
81…高周波信号発生器、
82…変成器、
82a…一次コイル、
82b…二次コイル、
82c…並列インダクタ、
100…右手/左手系複合伝送線路(CRLHTL)、
101,101A,102,102A,111,112,121,122,123,131~132…伝送線路、
120…高周波信号発生器、
125…給電線路、
141b…方向性結合器、
141ba,141bb…マイクロストリップ線路、
151c,152a…可変容量ダイオード、
151d,151e,152b…インダクタ、
141…給電線、
141a,141c,151a,151b-1,151b-3,151b-4,152-2,152-3,152-4…マイクロストリップ線路、
151,152…終端負荷、
151R,152R…反射素子、
151RA,151RB,152RA,152RB…反射回路、
153,154…移相器、
200…受信電力検出器、
300,300A,300B…コントローラ、
400…無線受信機、
C,C1,C2,C21,C22,C23,C24…キャパシタ、
Cc1~CcM+1,Cc-1~Cc-N,C11~C14…カップリングキャパシタ、
L,L1,L2…インダクタ、
P1,P2,P3,P4,P5,P6,P7-1~P7-N,P11,P12,P21,P22,P23…ポート、
Q1…電界効果トランジスタ(FET)、
R1,R2…負荷抵抗、
SW1,SW2,SW3,SW11,SW12,SW21,SW22…スイッチ、
UC,UC,…,UC…単位セル、
V1,V2…可変電圧源。
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
5
【図7】
6
【図8】
7
【図9】
8
【図10】
9
【図11】
10
【図12】
11
【図13】
12
【図14】
13
【図15】
14
【図16】
15
【図17】
16
【図18】
17
【図19】
18
【図20】
19
【図21】
20
【図22】
21
【図23】
22
【図24】
23
【図25】
24
【図26】
25
【図27】
26
【図28】
27
【図29】
28
【図30】
29
【図31】
30
【図32】
31
【図33】
32
【図34】
33
【図35】
34
【図36】
35
【図37】
36
【図38】
37
【図39】
38
【図40】
39
【図41】
40
【図42】
41
【図43】
42
【図44】
43
【図45】
44
【図46】
45
【図47】
46
【図48】
47
【図49】
48
【図50】
49
【図51】
50
【図52】
51
【図53】
52
【図54】
53
【図55】
54
【図56】
55
【図57】
56
【図58】
57
【図59】
58
【図60】
59
【図61】
60
【図62】
61
【図63】
62
【図64】
63
【図65】
64
【図66】
65
【図67】
66
【図68】
67
【図69】
68
【図70】
69
【図71】
70
【図72】
71
【図73】
72
【図74】
73
【図75】
74
【図76】
75
【図77】
76
【図78】
77
【図79】
78
【図80】
79
【図81】
80
【図82】
81
【図83】
82
【図84】
83
【図85】
84
【図86】
85
【図87】
86
【図88】
87
【図89】
88
【図90】
89
【図91】
90
【図92】
91
【図93】
92
【図94】
93
【図95】
94
【図96】
95
【図97】
96
【図98】
97
【図99】
98
【図100】
99
【図101】
100
【図102】
101
【図103】
102
【図104】
103
【図105】
104
【図106】
105
【図107】
106
【図108】
107
【図109】
108
【図110】
109
【図111】
110
【図112】
111
【図113】
112
【図114】
113
【図115】
114
【図116】
115
【図117】
116