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明細書 :デジタルホログラフィ装置、及びデジタルホログラフィによる3次元像再生方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第5891567号 (P5891567)
登録日 平成28年3月4日(2016.3.4)
発行日 平成28年3月23日(2016.3.23)
発明の名称または考案の名称 デジタルホログラフィ装置、及びデジタルホログラフィによる3次元像再生方法
国際特許分類 G03H   1/22        (2006.01)
G01B  11/24        (2006.01)
G03H   1/04        (2006.01)
FI G03H 1/22
G01B 11/24
G03H 1/04
請求項の数または発明の数 14
全頁数 38
出願番号 特願2013-501027 (P2013-501027)
出願日 平成24年2月20日(2012.2.20)
権利譲渡・実施許諾 特許権者において、権利譲渡・実施許諾の用意がある。
国際出願番号 PCT/JP2012/053985
国際公開番号 WO2012/115042
国際公開日 平成24年8月30日(2012.8.30)
優先権出願番号 2011040812
優先日 平成23年2月25日(2011.2.25)
優先権主張国 日本国(JP)
審査請求日 平成26年12月18日(2014.12.18)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】504255685
【氏名又は名称】国立大学法人京都工芸繊維大学
発明者または考案者 【氏名】粟辻 安浩
【氏名】田原 樹
【氏名】下里 祐輝
【氏名】夏 鵬
個別代理人の代理人 【識別番号】110000338、【氏名又は名称】特許業務法人HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
審査官 【審査官】榎本 吉孝
参考文献・文献 特開2005-283683(JP,A)
国際公開第2009/066771(WO,A1)
調査した分野 G03H 1/22
G01B 11/24
G03H 1/04
特許請求の範囲 【請求項1】
撮像素子の画素に記録されて、参照光の位相量シフトが異なるN種類(Nは2以上の整数)のホログラム情報を含むホログラムを生成するホログラム生成部と、
前記ホログラムから抽出した第1及び第2ホログラムに主補間を施して複数の主補間領域を有する主補間複素振幅を生成し、前記第1及び第2ホログラムに副補間を施して複数の副補間領域を有する副補間複素振幅を生成する複素振幅生成部と、
前記主補間複素振幅の前記主補間領域と前記副補間複素振幅の前記副補間領域とを抽出して空間周波数分布を生成し、前記空間周波数分布に基づいて被写体の3次元像を再生する空間周波数分布生成部とを備えたことを特徴とするデジタルホログラフィ装置。
【請求項2】
前記主補間は、縦方向に隣接する画素及び横方向に隣接する画素に基づく4方向補間であり、
前記副補間は、横方向に隣接する画素に基づく横補間と、縦方向に隣接する画素に基づく縦補間とを含む請求項1記載のデジタルホログラフィ装置。
【請求項3】
前記副補間複素振幅は、前記第1及び第2ホログラムに横補間を施して生成されて3行×3列の横補間領域を有する横補間複素振幅と、前記第1及び第2ホログラムに縦補間を施して生成されて3行×3列の縦補間領域を有する縦補間複素振幅とを含み、
前記空間周波数分布は、3行×3列の空間周波数領域を有し、
1行2列目及び3行2列目の空間周波数領域には、対応する横補間領域における横補間複素振幅が配置されており、
2行1列目及び2行3列目の空間周波数領域には、対応する縦補間領域における縦補間複素振幅が配置されている請求項2記載のデジタルホログラフィ装置。
【請求項4】
前記副補間複素振幅は、前記第1及び第2ホログラムに横補間を施して生成されて3行×3列の横補間領域を有する横補間複素振幅と、前記第1及び第2ホログラムに縦補間を施して生成されて3行×3列の縦補間領域を有する縦補間複素振幅とを含み、
前記空間周波数分布は、3行×3列の空間周波数領域を有し、
前記被写体の形状は、横方向に長く、
1列目及び3列目の空間周波数領域には、対応する縦補間領域における縦補間複素振幅が配置されている請求項2記載のデジタルホログラフィ装置。
【請求項5】
前記副補間複素振幅は、前記第1及び第2ホログラムに横補間を施して生成されて3行×3列の横補間領域を有する横補間複素振幅と、前記第1及び第2ホログラムに縦補間を施して生成されて3行×3列の縦補間領域を有する縦補間複素振幅とを含み、
前記空間周波数分布は、3行×3列の空間周波数領域を有し、
前記被写体の形状は、縦方向に長く、
1行目及び3行目の空間周波数領域には、対応する横補間領域における横補間複素振幅が配置されている請求項2記載のデジタルホログラフィ装置。
【請求項6】
前記主補間は、+45度方向に隣接する画素及び-45度方向に隣接する画素に基づく±45度方向補間であり、
前記副補間は、+45度方向に隣接する画素に基づく+45度方向補間と、-45度方向に隣接する画素に基づく-45度方向補間とを含む請求項1記載のデジタルホログラフィ装置。
【請求項7】
前記副補間複素振幅は、前記第1及び第2ホログラムに+45度方向補間を施して生成されて3行×3列の+45度方向補間領域を有する+45度方向補間複素振幅と、前記第1及び第2ホログラムに-45度方向補間を施して生成されて3行×3列の-45度方向補間領域を有する-45度方向補間複素振幅とを含み、
前記空間周波数分布は、3行×3列の空間周波数領域を有し、
1行1列目及び3行3列目の空間周波数領域には、対応する+45度方向補間領域における+45度方向補間複素振幅が配置されており、
1行3列目及び3行1列目の空間周波数領域には、対応する-45度方向補間領域における-45度方向補間複素振幅が配置されている請求項6記載のデジタルホログラフィ装置。
【請求項8】
撮像素子面に入射する物体光に対して参照光を傾けて入射させて、ある方向から入射する物体光に対する参照光の位相差が隣り合う画素間において所定の値となる空間キャリア位相シフトホログラムを生成する空間キャリア位相シフトホログラム生成部と、
第1位相シフト量による位相シフト法の計算に基づいて前記空間キャリア位相シフトホログラムから第1空間スペクトルを生成し、第2位相シフト量による位相シフト法の計算に基づいて前記空間キャリア位相シフトホログラムから第2空間スペクトルを生成する空間スペクトル分布生成部と、
前記第1位相シフト量に応じて前記第1空間スペクトルから切り出した第1空間スペクトル成分と、前記第2位相シフト量に応じて前記第2空間スペクトルから切り出した第2空間スペクトル成分とを再配置して位相シフト誤差を低減した誤差低減空間スペクトル分布を生成する切り出し部とを備えたことを特徴とするデジタルホログラフィ装置。
【請求項9】
前記ある方向から入射する物体光に対する参照光の位相差は、隣り合う画素間においてπ/2あるいは3π/2である請求項8記載のデジタルホログラフィ装置。
【請求項10】
前記空間スペクトル分布生成部は、第1位相シフト量による位相シフト法の計算に基づいて前記空間キャリア位相シフトホログラムから第1複素振幅を抽出し、前記第1複素振幅をフーリエ変換して前記第1空間スペクトルを生成し、第2位相シフト量による位相シフト法の計算に基づいて前記空間キャリア位相シフトホログラムから第2複素振幅を抽出し、前記第2複素振幅をフーリエ変換して前記第2空間スペクトルを生成する請求項8記載のデジタルホログラフィ装置。
【請求項11】
前記誤差低減空間スペクトル分布を逆フーリエ変換し、回折積分の計算を施して被写体の3次元像を再生する再生部をさらに備える請求項8記載のデジタルホログラフィ装置。
【請求項12】
前記空間スペクトル分布生成部における位相シフト量の数と複素振幅の数は、空間スペクトル面における行数または列数の半分である請求項8記載のデジタルホログラフィ装置。
【請求項13】
撮像素子の画素に記録されて、参照光の位相量シフトが異なるN種類(Nは2以上の整数)のホログラム情報を含むホログラムを生成するホログラム生成工程と、
前記ホログラムから抽出した第1及び第2ホログラムに主補間を施して複数の主補間領域を有する主補間複素振幅を生成し、前記第1及び第2ホログラムに副補間を施して複数の副補間領域を有する副補間複素振幅を生成する複素振幅生成工程と、
前記主補間複素振幅の前記主補間領域と前記副補間複素振幅の前記副補間領域とを抽出して空間周波数分布を生成し、前記空間周波数分布に基づいて被写体の3次元像を再生する空間周波数分布生成工程とを備えたことを特徴とするデジタルホログラフィによる3次元像再生方法。
【請求項14】
撮像素子面に入射する物体光に対して参照光を傾けて入射させて、ある方向から入射する物体光に対する参照光の位相差が隣り合う画素間において所定値となる空間キャリア位相シフトホログラムを生成する空間キャリア位相シフトホログラム生成工程と、
第1位相シフト量による位相シフト法の計算に基づいて前記空間キャリア位相シフトホログラムから第1空間スペクトルを生成し、第2位相シフト量による位相シフト法の計算に基づいて前記空間キャリア位相シフトホログラムから第2空間スペクトルを生成する空間スペクトル分布生成工程と、
前記第1位相シフト量に応じて前記第1空間スペクトルから切り出した第1空間スペクトル成分と、前記第2位相シフト量に応じて前記第2空間スペクトルから切り出した第2空間スペクトル成分とを再配置して位相シフト誤差を低減した誤差低減空間スペクトル分布を生成する切り出し工程とを備えたことを特徴とするデジタルホログラフィによる3次元像再生方法。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、3次元物体への光照射によって得られる干渉パターン(干渉縞)から、コンピュータを用いて3次元物体の像を再生するデジタルホログラフィ装置、及びデジタルホログラフィによる3次元像再生方法に関する。
【背景技術】
【0002】
以後の文章中で位相、角度の単位はラジアンで表す。加工技術の精密化や多様化に伴い、物体の3次元形状等の高度な計測や解析が求められ、様々な測定法が開発されている。該測定法のうち、光の干渉を利用した干渉計測技術、特にデジタルホログラフィは、非接触かつ非破壊で、物体の3次元情報を得ることができるため、近年、注目を集めている測定法の一つとなっている。
【0003】
デジタルホログラフィは、3次元物体への光照射によって得られる干渉パターン(干渉縞)から、コンピュータを用いて3次元物体の像を再生する技術である。具体的には例えば、3次元物体への光照射によって得られる物体光と、該物体光に対して可干渉である参照光とが作る干渉パターンを、CCD(charge coupled device)等の撮像素子を用いて記録する。記録された干渉パターンに基づいて、コンピュータで回折を計算し、3次元物体の像を再生する。
【0004】
本発明者らは、光源から出射された光をその進行方向に垂直な平面上において互いに位相が異なる4種類の参照光に分割する、位相シフトアレイ素子の位相分布を、CCDカメラなどの撮像面に結像させる等の構成を備え、1回の撮影により、被写体の再生画像の画質を向上させたデジタルホログラフィ装置を提案している(特許文献1)。
【0005】
また、本発明者らは、光源から出射された光を、その進行方向に垂直な平面上において互いに位相が異なる2種類の参照光に分割する偏光子アレイを、CCDカメラの撮像面に貼り付ける等して装備する構成を備え、1回の撮影により、被写体の再生画像の画質を向上させたデジタルホログラフィ装置を提案している(特許文献2)。
【0006】
また本発明者らは、物体光を互いに偏光方向が異なる2種類の物体光に分割し、それぞれの伝播方向に角度差を生じさせる偏光分割部と、第1偏光子領域および第2偏光子領域が複数配置され、参照光と、被写体を介して到達する物体光とを透過させる偏光子アレイ部とを設けることにより、1回の撮像でその瞬間の深い奥行き範囲の高精度3次元情報を得ることができるデジタルホログラフィ装置を提案している(特許文献3)。
【0007】
デジタルホログラフィ(非特許文献1)は瞬時3次元計測が可能な技術であるが、0次回折光や共役像が不要な像として所望の像に重畳する問題を抱えている。この問題を解決するために,位相シフトデジタルホログラフィ(非特許文献2)が提案されている。しかしながら,この技術は複数枚のホログラムの逐次記録が必要であるため,瞬時計測が不可能である。
【0008】
この従来のデジタルホログラフィの問題を解決するために、並列位相シフトデジタルホログラフィ(非特許文献3~6)が提案されている。この技術では,位相シフト法に必要な複数のホログラムの情報を一回の撮像で記録するため,高精度瞬時3次元計測が可能である。
【0009】
図23は、従来のデジタルホログラフィ装置による像再生アルゴリズムを説明するための図である。並列位相シフトデジタルホログラフィの原理は、位相シフト法に必要な複数枚のホログラムの情報を単一の撮像素子を用いて1回の撮影で記録する構成にある。記録したホログラムに対してコンピュータを用いて像再生アルゴリズムに基づき処理を行い、被写体の3次元像を再生する。図23では、2枚のホログラムの情報を単一の撮像素子を用いて1回の撮影で記録する並列2段階位相シフトデジタルホログラフィを並列位相シフトデジタルホログラフィの一例として挙げている。
【0010】
図23を参照すると、従来の像再生アルゴリズムの手順では、記録された2枚のホログラムに対応する並列位相シフトホログラム97から参照光の位相シフト量が同じホログラム98A・98Bをそれぞれ抽出する。ここで本明細書において、並列位相シフトホログラムとは、並列位相シフトデジタルホログラフィ(特許文献1,非特許文献3)で得られる参照光の位相シフト量が異なる複数のホログラム情報を含むホログラムを指し、以後同様の意味で用いる。
【0011】
そして、値の欠落した画素に対して、近傍(4-neighboring)画素を用いて補間した2枚のホログラム98A・98Bを得る。次に、得られたホログラム98A・98Bと参照光25とを用いて2段階位相シフト法で計算処理する。その後、計算によって得られた被写体の複素振幅分布(振幅と位相の分布の情報であり、物体波面情報を意味する)に回折計算を行うことにより、再生像を得る。
【0012】
一方,並列位相シフトデジタルホログラフィの他に、1回の撮像で位相シフト法に必要な複数枚分のホログラム情報を取得可能な空間キャリア位相シフトデジタルホログラフィが提案されている(非特許文献7~9)。これら2つの方式は、シングルショット位相シフトデジタルホログラフィと呼ばれる。空間キャリア位相シフトデジタルホログラフィでは、一般的に、補間を用いない方がより広範囲を計測可能である(非特許文献8)。また、並列位相シフトデジタルホログラフィにおいても、補間を用いずに位相シフト法の計算を行う方式が提案されている(非特許文献4)。
【0013】
図24は、従来の他のデジタルホログラフィ装置による空間キャリア位相シフト法を説明するための図である。補間を用いないシングルショット位相シフトデジタルホログラフィの一例として、空間キャリア位相シフトデジタルホログラフィを説明する。図24は、空間キャリア位相シフトデジタルホログラフィの概略を示している。本方式では、撮像素子96に形成された撮像素子面と垂直な方向から入射する物体光(物体からの回折光または散乱光を意味する)に対して、参照光を角度θ傾けて入射させ、参照光を傾けた方向に沿った撮像素子96の各画素において、参照光の位相をシフトさせる。この参照光と物体光が干渉することで、図24に示すように、撮像素子面上に空間的に位相シフトしたホログラムが形成される。このようにして得られたホログラムを、以後空間キャリア位相シフトホログラムと呼ぶ。この空間的に位相シフトしたホログラムを記録することで、シングルショットにより空間キャリア位相シフトホログラムを取得することができる。
【0014】
空間キャリア位相シフトデジタルホログラフィでは、補間処理を用いない方が広範囲な計測が可能である。そこで、シングルショット位相シフトデジタルホログラフィの分野において、補間を用いずに、隣り合う画素を直接用いて位相シフト法の計算を行う方式が提案され、盛んに研究されている(非特許文献4及び9)。ここでは当該方式を説明する。
【0015】
図25は、従来の他のデジタルホログラフィ装置により補間を用いずに位相シフト法の計算を行う方法を説明するための図である。
【0016】
被写体の複素振幅分布を求めるために、記録したホログラムのうち、位相シフト量が異なる隣り合う画素を用いて位相シフト法の計算を行う。例を挙げると、図25に示される領域R5に配置された画素における被写体の複素振幅を求めるためには、図25に示される領域R2に配置された-π/2、0、-3π/2の位相シフト量のホログラムを用いて位相シフト法の計算を行えば良い。領域R4に配置された画素における被写体の複素振幅を求めるためには、領域R1に配置された0、-3π/2、-πの位相シフト量のホログラムを用いて位相シフト法の計算を行う。領域R6に配置された画素における被写体の複素振幅は、領域R3に配置された-π、-π/2、0の位相シフト量のホログラムを用いて位相シフト法の計算を行う。この様な位相シフト法の計算により被写体の複素振幅分布を求めることができ,この複素振幅分布に回折積分の計算を施すことにより被写体の3次元像を再生することができる。
【先行技術文献】
【0017】

【特許文献1】日本国特許明細書特許第4294526号明細書
【特許文献2】国際公開第2009/066771号パンフレット(2009年5月28日公開)
【特許文献3】国際公開第2010/092739号パンフレット(2010年8月19日公開)
【0018】

【非特許文献1】J. W. Goodman and R. W. Lawrence, Appl. Phys. Lett. 11, p.77 (1967).
【非特許文献2】I. Yamaguchi and T. Zhang, Opt. Lett. 22, p.1268 (1997).
【非特許文献3】Y. Awatsuji, M. Sasada, and T. Kubota, “Parallel quasi-phase-shifting digital holography,” Appl. Phys. Lett. 85, 1069-1071 (2004).
【非特許文献4】Y. Awatsuji, M. Sasada, A. Fujii, and T. Kubota, “Scheme to improve the reconstructed image in parallel quasi-phase-shifting digital holography,” Appl. Opt. 45, 968-974 (2006).
【非特許文献5】Y. Awatsuji, A. Fujii, T. Kubota, and O. Matoba, “Parallel three-step phase-shifting digital holography,” Appl. Opt. 45, 2995-3002 (2006).
【非特許文献6】Y. Awatsuji, T. Tahara, A. Kaneko, T. Koyama, K. Nishio, S. Ura, T. Kubota, and O. Matoba, “Parallel two-step phase-shifting digital holography,” Appl. Opt. 47, D183-D189 (2008).
【非特許文献7】L. Mertz, “Real-time fringe-pattern analysis,” Appl. Opt. 22, 1535-1539 (1983).
【非特許文献8】B. T. Kimbrough, “Pixelated mask spatial carrier phase shifting interferometry algorithms and associated errors,” Appl. Opt. 45, 4554-4562 (2006).
【非特許文献9】高濱裕史, 松島恭治, “任意位相シフト公式を用いたシングルショットデジタルホログラフィ”, Optics Photonics Japan 2009 講演予稿集, 278-279 (2009).
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0019】
図26は、従来の他のデジタルホログラフィ装置に入射する物体光の一端からの成分を説明するための図であり、図27は、物体光の他端からの成分を説明するための図である。
【0020】
図24及び図25を参照して説明した方式では、参照光に対して角度θをなす物体光(図24に示される撮像素子面と垂直な方向から入射する光、主に被写体の中心部から来る光を意味する)の情報は高い精度で像再生される。しかしながら、図26及び図27に示すように、被写体67の寸法が大きくなると、撮像素子面と垂直な方向以外からも物体光が撮像素子96へ入射する。このとき、被写体67の端から来る物体光と、参照光とがなす角度はθではなくなる。そして,なす角度がθと異なるということは,位相シフト量が本来の量から変わることを意味し、図24及び図25を参照して前述した方法で位相シフト法の計算を行うと位相シフト誤差を生む。図26及び図27では、被写体67の端から来る物体光は撮像素子96の隣り合う画素で-A及びAだけ位相シフトし、その結果所望の位相シフト量と比べて±Aだけ位相シフト誤差が発生することが示されている。
【0021】
以上より、大きな被写体67の端から来る物体光を記録すると位相シフト誤差が現れる。シングルショット位相シフトデジタルホログラフィにおいて、位相シフト誤差による影響には、(1)像が見えなくなる、(2)不要な像が被写体の像に重畳することなどが挙げられる。よって,被写体の端の部分の像が再生されなくなり、画質が劣化する。以上のように、図24及び図25に示す本方式では、被写体の端の部分が位相シフト誤差によって再生されず、視野の狭窄が起こるという問題が生じる。
【0022】
図28は、従来のデジタルホログラフィ装置による補間方法の問題点を説明するための図である。
【0023】
図23に示す従来の像再生アルゴリズムでは、ホログラムの高空間周波数成分(細かい干渉縞の成分に相当)において補間誤差が多くなる。大きな物体の端からの光はホログラムの高空間周波数成分に相当するため,大きな物体を正確に像再生できない問題がある。
【0024】
即ち、大きな物体を計測するとき,物体の端の部分からの光は大きな角度で撮像素子に入射する。すると,図28に示すように、2つの平面波の角度が大きくなり、撮像素子に記録される干渉縞の間隔は細かくなる。
【0025】
しかし,図23に示す従来のアルゴリズムでは、細かい干渉縞を近傍4画素の補間によって正確に復元することができない。縞情報が復元できなかったということは被写体の端の情報が欠落することを意味し、その結果、再生像の画質が劣化するという問題が生じる。
【0026】
本発明の目的は、被写体の端の像を正確に再現することにより視野範囲を広くして計測範囲を広げることができるデジタルホログラフィ装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0027】
上記の課題を解決するために、本発明に係るデジタルホログラフィ装置は、撮像素子の画素に記録されて、参照光の位相量シフトが異なるN種類(Nは2以上の整数)のホログラム情報を含む並列位相シフトホログラムを生成するホログラム生成部と、前記並列位相シフトホログラムから抽出した第1及び第2ホログラムに主補間を施して複数の主補間領域を有する主補間複素振幅を生成し、前記第1及び第2ホログラムに副補間を施して複数の副補間領域を有する副補間複素振幅を生成する複素振幅生成部と、前記主補間複素振幅の前記主補間領域と前記副補間複素振幅の前記副補間領域とを抽出して空間周波数分布を生成し、前記空間周波数分布に基づいて被写体の3次元像を再生する空間周波数分布生成部とを備えたことを特徴とする。
【0028】
この特徴により、主補間複素振幅の主補間領域と副補間複素振幅の副補間領域とを抽出して空間周波数分布を生成するので、被写体の3次元像の位置に応じて補間の方式を変更して、大きな被写体の縁の部分に対応する干渉縞が細かい箇所の誤差を低減し、デジタルホログラフィ装置の視野範囲を広くして計測範囲を広げることができる。
【0029】
本発明に係る他のデジタルホログラフィ装置は、撮像素子面に入射する物体光に対して参照光を傾けて入射させて、ある方向から入射する物体光に対する参照光の位相差が隣り合う画素間において所定の値となる空間キャリア位相シフトホログラムを生成する空間キャリア位相シフトホログラム生成部と、第1位相シフト量による位相シフト法の計算に基づいて前記空間キャリア位相シフトホログラムから第1空間スペを生成し、第2位相シフト量による位相シフト法の計算に基づいて前記空間キャリア位相シフトホログラムから第2空間スペクトルを生成する空間スペクトル分布生成部と、前記第1位相シフト量に応じて前記第1空間スペクトルから切り出した第1空間スペクトル成分と、前記第2位相シフト量に応じて前記第2空間スペクトルから切り出した第2空間スペクトル成分とを再配置して位相シフト誤差を低減した誤差低減空間スペクトル分布を生成する切り出し部とを備えたことを特徴とする。
【0030】
この特徴により、第1位相シフト量による位相シフト法の計算に基づいて空間キャリア位相シフトホログラムから第1空間スペクトルを生成し、第2位相シフト量による位相シフト法の計算に基づいて空間キャリア位相シフトホログラムから第2空間スペクトルを生成し、第1位相シフト量に応じて第1空間スペクトルから切り出した第1空間スペクトル成分と、第2位相シフト量に応じて第2空間スペクトルから切り出した第2空間スペクトル成分とを再配置して位相シフト誤差を低減した誤差低減空間スペクトル分布を生成するので、補間処理を用いずに、被写体の縁部に対応する箇所の位相シフト誤差を低減し、デジタルホログラフィ装置の視野を、補間処理を用いずに拡大することができる。
【0031】
本発明に係るデジタルホログラフィによる3次元像再生方法は、撮像素子の画素に記録されて、参照光の位相量シフトが異なるN種類(Nは2以上の整数)のホログラム情報を含む並列位相シフトホログラムを生成するホログラム生成工程と、前記並列位相シフトホログラムから抽出した第1及び第2ホログラムに主補間を施して複数の主補間領域を有する主補間複素振幅を生成し、前記第1及び第2ホログラムに副補間を施して複数の副補間領域を有する副補間複素振幅を生成する複素振幅生成工程と、前記主補間複素振幅の前記主補間領域と前記副補間複素振幅の前記副補間領域とを抽出して空間周波数分布を生成し、前記空間周波数分布に基づいて被写体の3次元像を再生する空間周波数分布生成工程とを備えたことを特徴とする。
【0032】
本発明に係る他のデジタルホログラフィによる3次元像再生方法は、撮像素子面に垂直な方向から入射する物体光に対して参照光を傾けて入射させて、隣り合う画素間の位相差がπ/2となる空間キャリア位相シフトホログラムを生成する空間キャリア位相シフトホログラム生成工程と、第1位相シフト量による位相シフト法の計算に基づいて前記空間キャリア位相シフトホログラムから第1空間スペクトルを生成し、第2位相シフト量による位相シフト法の計算に基づいて前記空間キャリア位相シフトホログラムから第2空間スペクトルを生成する空間スペクトル分布生成工程と、前記第1位相シフト量に応じて前記第1空間スペクトルから切り出した第1空間スペクトル成分と、前記第2位相シフト量に応じて前記第2空間スペクトルから切り出した第2空間スペクトル成分とを再配置して位相シフト誤差を低減した誤差低減空間スペクトル分布を生成する切り出し工程とを備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0033】
本発明に係るデジタルホログラフィ装置は、主補間複素振幅の主補間領域と副補間複素振幅の副補間領域とを抽出して空間周波数分布を生成するので、被写体の3次元像の位置に応じて補間の方式を変更して、大きな被写体の縁の部分に対応する干渉縞が細かい箇所の誤差を低減し、デジタルホログラフィ装置の視野範囲を広くして計測範囲を広げることができる。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】実施の形態1に係るデジタルホログラフィ装置の構成を模式的に示す図である。
【図2】上記デジタルホログラフィ装置による像再生アルゴリズムを説明するための図である。
【図3】(a)及び(b)は、上記デジタルホログラフィ装置により大きな物体を記録したときの干渉縞を説明するための図である。
【図4】上記デジタルホログラフィ装置によるホログラムの補間方法を説明するための図である。
【図5】上記デジタルホログラフィ装置による他の像再生アルゴリズムを説明するための図である。
【図6】上記デジタルホログラフィ装置の空間周波数分布の他の構成例を示す図である。
【図7】上記空間周波数分布のさらに他の構成例を示す図である。
【図8】上記デジタルホログラフィ装置による横方向に大きな被写体に対する像再生アルゴリズムを説明するための図である。
【図9】上記デジタルホログラフィ装置による横方向に大きな被写体に対する他の像再生アルゴリズムを説明するための図である。
【図10】上記デジタルホログラフィ装置による縦方向に大きな被写体に対する像再生アルゴリズムを説明するための図である。
【図11】上記デジタルホログラフィ装置による縦方向に大きな被写体に対する他の像再生アルゴリズムを説明するための図である。
【図12】被写体と撮像素子との距離300mmでの上記デジタルホログラフィ装置による像再生結果を示す写真である。
【図13】被写体と撮像素子との距離300mmでの上記デジタルホログラフィ装置による像再生結果を示す図である。
【図14】被写体と撮像素子との距離350mmでの上記デジタルホログラフィ装置による像再生結果を示す写真である。
【図15】被写体と撮像素子との距離350mmでの上記デジタルホログラフィ装置による像再生結果を示す図である。
【図16】被写体と撮像素子との距離380mmでの上記デジタルホログラフィ装置による像再生結果を示す写真である。
【図17】被写体と撮像素子との距離380mmでの上記デジタルホログラフィ装置による像再生結果を示す図である。
【図18】図2に示すアルゴリズムと図8に示すアルゴリズムと従来のアルゴリズムとによる像再生結果を示す写真である。
【図19】図2に示すアルゴリズムと図8に示すアルゴリズムと従来のアルゴリズムとによる像再生による振幅分布を示す図である。
【図20】図2に示すアルゴリズムと図8に示すアルゴリズムと従来のアルゴリズムとによる像再生による振幅分布を示す図である。
【図21】実施の形態2に係るデジタルホログラフィ装置の構成を模式的に示す図である。
【図22】上記デジタルホログラフィ装置による像再生アルゴリズムを説明するための図である。
【図23】従来のデジタルホログラフィ装置による像再生アルゴリズムを説明するための図である。
【図24】従来の他のデジタルホログラフィ装置による空間キャリア位相シフト法を説明するための図である。
【図25】従来の他のデジタルホログラフィ装置により補間を用いずに位相シフト法の計算を行う方法を説明するための図である。
【図26】従来の他のデジタルホログラフィ装置に入射する物体光の一端からの成分を説明するための図である。
【図27】従来の他のデジタルホログラフィ装置に入射する物体光の他端からの成分を説明するための図である。
【図28】従来のデジタルホログラフィ装置による補間方法の問題点を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0035】
以下、本発明の実施の形態について、詳細に説明する。

【0036】
(実施の形態1)
並列位相シフトデジタルホログラフィでは,位相シフトの段数が4段、3段、2段 である方法が提案されているが(非特許文献3~6)実施の形態1に係る提案技術はいずれの方法にも適用できる。まず、一例として、位相シフトの段数が2段の並列2段階位相シフトデジタルホログラフィの場合について述べる(並列4段階の場合については図5を参照して後述する)。

【0037】
(基本構成)
図1は、実施の形態1に係るデジタルホログラフィ装置1Aの構成を模式的に示す図である。デジタルホログラフィ装置1Aは、並列2段階位相シフトデジタルホログラフィを実現するためのシステムである。図1は、撮像素子6の撮像面に偏光子アレイ5を貼り付ける場合の光学系の一例を示している。図1に示すデジタルホログラフィ装置1Aを説明する。まず、光源32から出射されるレーザは垂直偏光成分のみを有するものとする。光源32から出射された光は、ビーム分割素子BS1によって物体光と参照光とに分けられる。

【0038】
ビーム分割素子BS1を透過した物体光は、対物レンズ33及びレンズ35を透過し、ミラーM1により反射され、被写体37に照射される。被写体37からの散乱光は、偏光子39を通り、垂直偏光となる。そして、散乱光は、ビーム結合素子BS2を通り、偏光子アレイ5を通過して撮像素子6の撮像面に到達する。

【0039】
一方、ビーム分割素子BS1により反射された参照光は、ミラーM2により反射され、対物レンズ34及びレンズ36を通り、1/4波長板38を通過するときに垂直偏光と水平偏光との成分を持った円偏光になる。このとき、参照光は位相シフトのない成分と-π/2位相シフトした成分とを持つ。そして、参照光は、ミラーM3により反射され、ビーム結合素子BS2により反射されて、偏光子アレイ5と一体に構成された撮像素子6へ到達する。

【0040】
偏光子アレイ5を通過した物体光と参照光とは、撮像素子6の撮像面上で干渉する。偏光子アレイ5を通過した参照光の位相は、空間的に2種類の情報を持ち、市松模様に分布する。この参照光と物体光とが干渉することにより、2種類のホログラムの情報を含む並列位相シフトホログラム7(図2)を1回で撮像することができる。

【0041】
図2は、デジタルホログラフィ装置1Aによる像再生アルゴリズムを説明するための図である。図1及び図2を参照すると、デジタルホログラフィ装置1Aは、再生像生成器31を備えている。再生像生成器31は、複素振幅生成部3と空間周波数分布生成部4とを有している。

【0042】
複素振幅生成部3は、並列位相シフトホログラム7から抽出したホログラム8A・8Bに、縦方向に隣接する画素及び横方向に隣接する画素に基づく4方向補間を施す。そして、複素振幅生成部3は、ホログラム8A・8Bに、横方向に隣接する画素に基づく横補間を施し、次に、ホログラム8A・8Bに、縦方向に隣接する画素に基づく縦補間を施す。

【0043】
その後、複素振幅生成部3は、4方向補間したホログラム8A・8Bと参照光29とに基づいて2段階シフト法による計算を行い、4方向補間複素振幅27Aを得る。そして、複素振幅生成部3は、横補間したホログラム8A・8Bと参照光29とに基づいて2段階シフト法による計算を行い、横補間複素振幅28Aを得、縦補間したホログラム8A・8Bと参照光29とに基づいて2段階シフト法による計算を行い、縦補間複素振幅28Bを得る。

【0044】
このようにして3種類の複素振幅27A・28A・28Bを、複素振幅生成部3は、それぞれフーリエ変換して、フーリエ面を3行×3列の4方向補間領域9Aに分割した4方向補間複素振幅10Aと、3行×3列の横補間領域11Aにフーリエ面を分割した横補間複素振幅12Aと、3行×3列の縦補間領域11Bにフーリエ面を分割した縦補間複素振幅12Bとを生成する。

【0045】
空間周波数分布生成部4は、4方向補間複素振幅10Aの4方向補間領域9Aと、横補間複素振幅12Aの横補間領域11Aと、縦補間複素振幅12Bの縦補間領域11Bとを抽出して空間周波数分布13Aを生成する。即ち、空間周波数分布生成部4は、4方向補間複素振幅10Aの1行1列目の「1」と表記した4方向補間領域9Aと、1行3列目の「3」と表記した4方向補間領域9Aと、2行2列目の「5」と表記した4方向補間領域9Aと、3行1列目の「7」と表記した4方向補間領域9Aと、及び3行3列目の「9」と表記した4方向補間領域9Aとを抽出して、空間周波数分布13Aのそれぞれ対応する行列目に配置する。

【0046】
そして、空間周波数分布生成部4は、横補間複素振幅12Aの1行2列目の「b」と表記した横補間領域11Aと、3行2列目の「h」と表記した横補間領域11Aとを抽出して、空間周波数分布13Aのそれぞれ対応する行列目に配置する。次に、空間周波数分布生成部4は、縦補間複素振幅12Bの2行1列目の「D」と表記した縦補間領域11Bと、2行3列目の「F」と表記した縦補間領域11Bとを抽出して、空間周波数分布13Aのそれぞれ対応する行列目に配置する。

【0047】
その後、空間周波数分布生成部4は、上記のようにして生成した空間周波数分布13Aに対して逆フーリエ変換を行い、回折積分して被写体37の3次元像を再生する。

【0048】
図3(a)及び(b)は、デジタルホログラフィ装置1Aにより大きな物体を記録したときの干渉縞を説明するための図であり、図4はデジタルホログラフィ装置1Aによるホログラムの補間方法を説明するための図である。図3(a)(b)に示すように、撮像素子6によって撮像される被写体37の寸法が大きいと、干渉縞の縦成分における被写体37の左右端に対応する縦成分は細かくなり、干渉縞の横成分における被写体37の上下端に対応する縦成分は細かくなる。

【0049】
図25及び図30に示す従来技術では、干渉縞が細かいときの補間処理時に誤差が多いことから、実施の形態1では、干渉縞が細かいときに最も誤差の少ない補間方法を採用して誤差を減らす。図4に示すように、縦方向に隣り合う2画素を用いる縦補間による方法は、横方向に細かい縦成分を有する干渉縞を記録するとき誤差が少なくて有効性が高い。横方向に隣り合う2画素を用いる横補間による方法は、縦方向に細かい横成分を有する干渉縞を記録するときに誤差が少ない。

【0050】
横方向,縦方向に細かい干渉縞は、フーリエ空間(空間周波数空間: 空間周波数とは(明暗の模様等)空間的な周期の逆数であり、干渉縞が細かければ細かいほど(即ち、空間周期が短いほど)空間周波数は高くなる)において、それぞれ横方向、縦方向の高周波数成分に対応する。

【0051】
実施の形態1に係る提案アルゴリズムでは、各空間周波数成分において、最も誤差の少ない補間方法を用いて得られた物体の複素振幅のフーリエ空間の情報を利用し、補間誤差の少ない物の複素振幅分布を得る。実施の形態1に係るアルゴリズムによれば、高空間周波数成分において補間誤差が従来アルゴリズムよりも少なくなるため、大きな物体を端の部分まで画質劣化せず像再生することができる。

【0052】
(他の構成例)
図5は、デジタルホログラフィ装置1Aによる他の像再生アルゴリズムを説明するための図である。従来の並列4段階位相シフトデジタルホログラフィにおいては、並列2段階位相シフトデジタルホログラフィと同様に、同じ位相シフト量の情報をそれぞれ抽出し、補間処理、位相シフト法の計算、回折積分の手順を踏んで像を再生する。この補間処理においては、右斜め+45度方向に隣接する2画素と、左斜め-45度方向に隣接する2画素との4つの隣接画素に基づいて補間する。しかしながら、この補間方法では、斜め+45°方向と斜め-45°方向の細かい干渉縞の情報が欠落するという問題がある。

【0053】
複素振幅生成部3は、並列位相シフトホログラム7から抽出したホログラム8A・8B・8C・8Dに、+45度方向に隣接する画素及び-45°方向に隣接する画素に基づく±45度方向補間を施す。そして、複素振幅生成部3は、ホログラム8A・8B・8C・8Dに、+45度方向に隣接する画素に基づく+45度方向補間を施し、次に、ホログラム8A・8B・8C・8Dに、-45°方向に隣接する画素に基づく-45°方向補間を施す。

【0054】
その後、複素振幅生成部3は、±45度方向補間したホログラム8A・8B・8C・8Dと参照光とに基づいて4段階シフト法による計算を行い、±45度方向補間複素振幅27Bを得る。そして、複素振幅生成部3は、+45度方向補間したホログラム8A・8B・8C・8Dと参照光とに基づいて4段階シフト法による計算を行い、+45度方向補間複素振幅28Cを得、-45°方向補間したホログラム8A・8B・8C・8Dと参照光とに基づいて4段階シフト法による計算を行い、-45°方向補間複素振幅28Dを得る。

【0055】
各補間処理を用いて得られた複素振幅分布をそれぞれU(x、y)、U+45゜(x、 y)、U-45゜(x、y)とする。U+45゜(x、 y)は、-45°方向の細かい干渉縞の情報欠落が最も少ない。U-45゜(x、y)は、+45°方向の細かい干渉縞の情報欠落が最も少ない。U(x、y)は、その他の方向の干渉縞の情報欠落が最も少ない。

【0056】
このようにして3種類の複素振幅27B・28C・28Dを、複素振幅生成部3は、それぞれフーリエ変換して、フーリエ面を3行×3列の±45度方向補間領域9Bに分割した±45度方向補間複素振幅10Bと、3行×3列の+45度方向補間領域11Cにフーリエ面を分割した+45度方向補間複素振幅12Cと、3行×3列の-45度方向補間領域11Dにフーリエ面を分割した-45度方向補間複素振幅12Dとを生成する。

【0057】
即ち、U(x、y)、U+45゜(x、 y)、U-45゜(x、y)にそれぞれフーリエ変換を施す。フーリエ変換を施すことによって、空間周波数fx、fyの分布(それぞれ、水平方向、垂直方向における被写体の細かさ情報の分布)を知ることができる。

【0058】
空間周波数分布生成部4は、±45度方向補間複素振幅10Bの±45度方向補間領域9Bと、+45度方向補間複素振幅12Cの+45度方向補間領域11Cと、-45度方向補間複素振幅12Dの-45度方向補間領域11Dとを抽出して空間周波数分布13Bを生成する。即ち、空間周波数分布生成部4は、±45度方向補間複素振幅10Bの1行2列目の「2」と表記した±45度方向補間領域9Bと、2行1列目の「4」と表記した±45度方向補間領域9Bと、2行2列目の「5」と表記した±45度方向補間領域9Bと、2行3列目の「6」と表記した±45度方向補間領域9Bと、及び3行2列目の「8」と表記した±45度方向補間領域9Bとを抽出して、空間周波数分布13Bのそれぞれ対応する行列目に配置する。

【0059】
そして、空間周波数分布生成部4は、+45度方向補間複素振幅12Cの1行1列目の「a」と表記した+45度方向補間領域11Cと、3行3列目の「i」と表記した+45度方向補間領域11Cとを抽出して、空間周波数分布13Bのそれぞれ対応する行列目に配置する。次に、空間周波数分布生成部4は、-45度方向補間複素振幅12Dの1行3列目の「C」と表記した-45度方向補間領域11Dと、3行1列目の「G」と表記した-45度方向補間領域11Dとを抽出して、空間周波数分布13Bのそれぞれ対応する行列目に配置する。

【0060】
その後、空間周波数分布生成部4は、上記のようにして生成した空間周波数分布13Bに対して逆フーリエ変換を行い、回折積分して被写体37の3次元像を再生する。

【0061】
大きい物体の端の部分は、高い空間周波数を持つ。よって、高空間周波数成分において誤差が少なければ物体の端を鮮明に像再生できる。このため、+45°方向、及び-45°方向の高空間周波数成分を物体の像再生に用いる。手続きとしては、図5に示すように、空間周波数分布において範囲を分割し(一例として、図5では9分割)、分割した各範囲で最も補間誤差の少ない物体の情報を抽出し、新たな2次元空間周波数分布を作成する。この分布は,補間誤差が少なく情報量の欠落が少なくなった被写体の空間周波数分布である。この分布に逆フーリエ変換を行い,回折積分により像再生する。

【0062】
図6は、デジタルホログラフィ装置1Aの空間周波数分布の他の構成例を示す図である。図2を参照して前述した視野拡大アルゴリズムにおいて、3行3列の空間周波数分布13Aの左上、左下、右上、及び右下に配置された空間周波数領域26Aは、斜め方向の干渉縞に対応し、斜め方向、即ち、縦と横との両方の高空間スペクトルを含んでいる。図2に示す視野拡大アルゴリズムは、これらの左上、左下、右上、及び右下に配置された空間周波数領域26Aに、平均的に誤差を抑えられる4方向補間を採用した例である。この図2に示す視野拡大アルゴリズムは、汎用性のある抽出方法であり、どのような大きさの被写体に対しても視野拡大が可能である。

【0063】
しかしながら、図6に示すように、他にも抽出方法は考えられる。図6に示す空間周波数分布13Cにおいて、空間周波数分布13Cの左上、左下、右上、及び右下に配置された空間周波数領域は、斜め方向の干渉縞に対応し、それぞれ斜め方向に2分割されて、斜め方向、即ち、縦と横との両方の高空間スペクトルを含んでいる。空間周波数分布13Cは、これらの左上、左下、右上、及び右下に配置された空間周波数領域をそれぞれ斜め方向に2分割し、2分割したそれぞれの領域に、縦の高空間スペクトルに対して有効な横補間複素振幅12Aの要素と、横の高空間スペクトルに対して有効な縦補間複素振幅12Bの要素を配置した例である。

【0064】
図7は、空間周波数分布のさらに他の構成例を示す図である。空間周波数分布13Dは、縦補間及び横補間のみにより構成した例である。空間周波数分布13Dは、図6で前述した空間周波数分布13Cにおいて、中央の領域を斜め方向に沿って4分割し、4分割したそれぞれの領域に横補間複素振幅12Aまたは縦補間複素振幅12Bの要素を配置した例である。この図7に示す構成によれば、他の汎用性のある視野拡大アルゴリズムよりも、ホログラムの生成枚数が減少し、フーリエ変換回数が減少して高速演算が可能になる。

【0065】
次に、被写体の形状が既知の際に適したスペクトル抽出例を説明する。横方向に大きな被写体には、縦補間による情報を多く使用することが有効である。縦方向に大きな被写体には、横補間による情報を多く使用することが有効である。そして、縦横の大きさが同程度の被写体には、図2を参照して前述したように、縦補間と横補間とを併用した汎用的な抽出が有効である。

【0066】
(横方向に長い被写体)
図8は、デジタルホログラフィ装置1Aによる横方向に大きな被写体37Aに対する像再生アルゴリズムを説明するための図である。横方向に大きな被写体37Aに対して有効なスペクトル抽出例を説明する。横方向に大きな被写体37Aに対しては、横方向の高空間スペクトルで縦補間の情報を多く使用することが有効である。空間周波数分布13Eは、1行1列目、2行1列目、3行1列目、1行3列目、2行3列目、3行3列目の領域において、縦補間複素振幅12Bの要素(それぞれ「A」、「D」、「G」、「C」、「F」、及び「I」と表記された縦補間領域の複素振幅)を採用している。1行2列目、2行2列目、及び3行2列目の領域では、4方向補間複素振幅10Aの要素(それぞれ「2」、「5」、及び「8」と表記された4方向補間の複素領域)を採用している。

【0067】
図9は、デジタルホログラフィ装置1Aによる横方向に大きな被写体37Aに対する他の像再生アルゴリズムを説明するための図である。空間周波数分布13Fは、図8に示す空間周波数分布13Eに比べて、1行2列目の領域において、4方向補間複素振幅10Aの要素(「2」と表記された4方向補間複素振幅10Aの領域)の代わりに、横補間複素振幅12Aの要素(「b」と表記された横補間複素振幅12Aの領域)を採用する。そして、空間周波数分布13Fは、3行2列目の領域において、4方向補間複素振幅10Aの要素(「8」と表記された4方向補間複素振幅10Aの領域)の代わりに、横補間複素振幅12Aの要素(「h」と表記された横補間複素振幅12Aの領域)を採用する。

【0068】
(縦方向に長い被写体)
図10は、デジタルホログラフィ装置1Aによる縦方向に大きな被写体37Bに対する像再生アルゴリズムを説明するための図である。縦方向に大きな被写体37Bに対して有効なスペクトル抽出例を説明する。縦方向に大きな被写体37Bに対しては、縦方向の高空間スペクトルで横補間の情報を多く使用することが有効である。空間周波数分布13Gは、1行1列目、1行2列目、1行3列目、3行1列目、3行2列目、3行3列目の領域において、横補間複素振幅12Aの要素(それぞれ「a」、「b」、「c」、「g」、「h」、及び「i」と表記された横補間領域の複素振幅)を採用している。2行1列目、2行2列目、及び2行3列目の領域では、4方向補間複素振幅10Aの要素(それぞれ「4」、「5」、及び「6」と表記された4方向補間の複素領域)を採用している。

【0069】
図11は、デジタルホログラフィ装置1Aによる縦方向に大きな被写体37Bに対する他の像再生アルゴリズムを説明するための図である。空間周波数分布13Hは、図10に示す空間周波数分布13Gに比べて、2行1列目の領域において、4方向補間複素振幅10Aの要素(「4」と表記された4方向補間複素振幅10Aの領域)の代わりに、縦補間複素振幅12Bの要素(「D」と表記された縦補間複素振幅12Bの領域)を採用する。そして、空間周波数分布13Hは、2行3列目の領域において、4方向補間複素振幅10Aの要素(「6」と表記された4方向補間複素振幅10Aの領域)の代わりに、縦補間複素振幅12Aの要素(「F」と表記された縦補間複素振幅12Bの領域)を採用する。

【0070】
その他、真円、球、正方形、立方体等の大きさに方向性を持たない被写体に対しては、図2に示す汎用性のある抽出方法が有効である。縦と横との高い空間スペクトル値を同程度含む場合、どちらの方向においても、ある程度の精度を有する抽出方法により、全体的に誤差を低減し、且つ、視野を拡大することができるためである。

【0071】
斜め方向に大きな被写体に対しては、被写体または撮像素子を45度傾けて縦方向または横方向に大きな被写体と考えて実施の形態1に係るアルゴリズムを適用する。

【0072】
(実験結果)
アヒル、ヒヨコ、及び柵の模型を横に並べて横方向に大きな被写体を設定し、実施の形態1に係るデジタルホログラフィ装置1Aにより被写体撮像実験を行って像再生し、評価した。被写体とその周囲に対して誤差量(RMSE)を計算し、比較した。

【0073】
図12は被写体と撮像素子との距離300mmでのデジタルホログラフィ装置1Aによる像再生結果を示す写真であり、図13はそれによる像再生結果を示す図である。逐次位相シフトとは、非特許文献2に示される位相シフトデジタルホログラフィを指す。被写体と撮像素子との距離は300mmであり、アヒルの模型に焦点を合わせている。従来補間による振幅の誤差量(RMSE)、位相の誤差量(RMSE)を1とすると、実施の形態1に係る図2に示す提案補間による振幅の誤差量(RMSE)は0.796であり、位相の誤差量(RMSE)は0.992であった。RMSEの値は、小さい方が、像を忠実に再現できていることを示す。従って、実施の形態1に係る図2に示す提案補間によれば、従来補間よりも、像を忠実に再現できていることが示された。

【0074】
図14は被写体と撮像素子との距離350mmでの上記デジタルホログラフィ装置による像再生結果を示す写真であり、図15はその像再生結果を示す図である。被写体と撮像素子との距離は350mmであり、ヒヨコの模型に焦点を合わせている。従来補間による振幅の誤差量(RMSE)、位相の誤差量(RMSE)を1とすると、実施の形態1に係る図2に示す提案補間による振幅の誤差量(RMSE)は0.795であり、位相の誤差量(RMSE)は0.991であった。従って、実施の形態1に係る図2に示す提案補間によれば、距離300mmの場合と同様に、従来補間よりも像を忠実に再現できていることが示された。

【0075】
図16は被写体と撮像素子との距離380mmでの上記デジタルホログラフィ装置による像再生結果を示す写真であり、図17はその像再生結果を示す図である。被写体と撮像素子との距離は380mmであり、柵の模型に焦点を合わせている。従来補間による振幅の誤差量(RMSE)、位相の誤差量(RMSE)を1とすると、実施の形態1に係る図2に示す提案補間による振幅の誤差量(RMSE)は0.795であり、位相の誤差量(RMSE)は0.991であった。従って、実施の形態1に係る図2に示す提案補間によれば、距離350mmの場合と同様に、従来補間よりも像を忠実に再現できていることが示された。

【0076】
以上より、どの像再生位置においても、被写体とその周囲の範囲において振幅の誤差量(RMSE)が0.8未満であり、振幅の誤差量(RMSE)を20%以上低減することができることが判明した。

【0077】
次に、横方向に大きな被写体に対して、図8に示す横方向に大きな被写体に有効な抽出方法により像を再生し、評価する。図18は図2に示すアルゴリズムと図8に示すアルゴリズムと従来のアルゴリズムとによる像再生結果を示す写真であり、図19はその像再生による振幅分布を示す図であり、図20はその像再生による位相分布を示す図である。

【0078】
図19を参照すると、被写体と撮像素子との距離が300mmであるときに、従来補間による誤差量(RMSE)を1とすると、図2に示す提案法による振幅の誤差量(RMSE)は0.796であり、図8に示す提案法による振幅の誤差量(RMSE)はさらに低い0.771である。被写体と撮像素子との距離が350mmであるときに、従来補間による誤差量(RMSE)を1とすると、図2に示す提案法による振幅の誤差量(RMSE)は0.795であり、図8に示す提案法による振幅の誤差量(RMSE)はさらに低い0.769である。被写体と撮像素子との距離が380mmであるときに、従来補間による誤差量(RMSE)を1とすると、図2に示す提案法による振幅の誤差量(RMSE)は0.795であり、図8に示す提案法による振幅の誤差量(RMSE)はさらに低い0.768である。このように、図8に示す提案法によれば、図2に示す提案法よりも振幅誤差を低減することができた。

【0079】
図20を参照すると、被写体と撮像素子との距離が300mmであるときに、従来補間による誤差量(RMSE)を1とすると、図2に示す提案法による位相の誤差量(RMSE)は0.992であり、図8に示す提案法による位相の誤差量(RMSE)はさらに低い0.985である。被写体と撮像素子との距離が350mmであるときに、従来補間による誤差量(RMSE)を1とすると、図2に示す提案法による位相の誤差量(RMSE)は0.991であり、図8に示す提案法による位相の誤差量(RMSE)はさらに低い0.984である。被写体と撮像素子との距離が380mmであるときに、従来補間による誤差量(RMSE)を1とすると、図2に示す提案法による位相の誤差量(RMSE)は0.991であり、図8に示す提案法による振幅の誤差量(RMSE)はさらに低い0.985である。このように、図8に示す提案法によれば、図2に示す提案法よりも位相誤差を低減することができた。

【0080】
このように、被写体の形状の特徴(縦長、横長等)が事前に分かっている場合、縦長の被写体に対しては図10または図11に示す抽出方法、横長の被写体に対しては図8または図9に示す抽出方法というように、被写体の特徴に合わせた抽出方法を採用することにより、更なる高画質イメージングを実現することが可能である。

【0081】
なお、実施の形態1では、偏光子アレイを用いる例を説明したが、本発明はこれに限定されない。例えば、日本国特許明細書特許4294526号(特許文献1)に示される厚みが異なるガラスアレイや空間光変調器に本発明を適用することもできるし、国際公開第2009/066771号(特許文献2)に示される位相板アレイなど様々な構成に本発明を適用することができる。

【0082】
(実施の形態2)
(基本構成)
図21は、実施の形態2に係るデジタルホログラフィ装置1Bの構成を模式的に示す図である。図1を参照して前述した構成要素と同一の構成要素には同一の参照符号を付している。これらの構成要素についての説明は繰り返さない。

【0083】
図21に示すデジタルホログラフィ装置1Bを説明する。光源32から出射された光は、ビーム分割素子BS1によって物体光と参照光とに分けられる。

【0084】
ビーム分割素子BS1を透過した物体光は、対物レンズ33及びレンズ35を透過し、ミラーM1により反射され、被写体37に照射される。被写体37からの散乱光は、ビーム結合素子BS2を通り、撮像素子6の撮像面に到達する。

【0085】
一方、ビーム分割素子BS1により反射された参照光は、ミラーM2により反射され、対物レンズ34及びレンズ36を通る。そして、参照光は、ミラーM3により反射され、ビーム結合素子BS2により反射されて、撮像素子6の撮像面に垂直な方向に対して角度θ傾いた方向から撮像素子6へ到達する。この角度θは、撮像素子6の撮像面に入射する物体光に対する参照光の位相差が、隣り合う画素間においてπ/2あるいは3π/2となるように設定する。

【0086】
ビーム結合素子BS2を通過した参照光と物体光が干渉することで、図26を参照して前述したように、撮像素子面上に空間的に位相シフトした空間キャリア位相シフトホログラム21(図22)が形成される。この空間的に位相シフトした空間キャリア位相シフトホログラム21を記録することで、シングルショットにより空間キャリア位相シフトホログラムを取得することができる。

【0087】
(像再生アルゴリズム)
図22は、デジタルホログラフィ装置1Bによる像再生アルゴリズムを説明するための図である。発明が解決しようとする課題の欄において前述したように、視野狭窄の原因は位相シフト誤差であることが判明した。また、被写体の回折光の入射方向と位相シフト量とに関係があることが判明した。これらのことを読みかえると、第1に位相シフト誤差を低減することができれば、視野狭窄の問題を解決することができ、第2に位相シフト法で位相シフト量を変えて計算すれば、特定方向の被写体の情報を抽出することができる。実施の形態2に係るデジタルホログラフィ装置1Bは、これら2つの点に着目したものである。

【0088】
図22を参照すると、まず、前提条件として、撮像素子面と垂直な方向から入射する物体光に対して撮像素子面の水平方向へ向けて参照光を角度θだけ傾けて入射させ、空間キャリア位相シフトホログラム21を記録したとする。

【0089】
(各位相シフト量での位相シフト法の計算、被写体の複素振幅抽出)
得られた空間キャリア位相シフトホログラム21に対して、位相シフト量を変えてN回(N:整数)位相シフト法の計算を行い、N種類の被写体の複素振幅分布を抽出する。図22は、N=3としたときの例を示している。即ち、空間キャリア位相シフトホログラム21に対して、位相シフト量α1により位相シフト法の計算を行って複素振幅41Aを生成する。そして、空間キャリア位相シフトホログラム21に対して、位相シフト量α2により位相シフト法の計算を行って複素振幅41Bを生成し、位相シフト量α3により位相シフト法の計算を行って複素振幅41Cを生成する。

【0090】
実施の形態2に係るアルゴリズムは、位相シフトの段数が2段以上であればどの様な位相シフト法の計算にでも適用可能である。一例として位相シフトの段数が3である3段階位相シフト法の計算を用いて,ホログラムの画素番地(x、y)における被写体の複素振幅U(x、y)を求めるとき,ホログラムの強度をI、参照光の振幅をAr、虚数単位をjとおくと、

【0091】
【数1】
JP0005891567B2_000002t.gif

【0092】
により計算できる。ただしこの場合、xは撮像素子面の水平方向、yは撮像素子面の垂直方向の座標に相当する。この計算をホログラムの全画素に対して行なうことにより被写体の複素振幅分布41A・41B・41Cを抽出する。このとき,位相シフト量α1・α2・α3の値に応じて,被写体の中心の情報、被写体の端の情報が高精度に抽出された被写体の複素振幅分布41A・41B・41Cを得ることができる。

【0093】
(フーリエ変換)
各位相シフト量α1・α2・α3で得られた被写体の各複素振幅分布41A・41B・41Cをフーリエ変換し、空間スペクトル22A・22B・22Cを得る。また、必要に応じて空間キャリア成分を補正する(参照光の傾き角に関係する位相の歪みを補正することを指す)。

【0094】
(高精度に被写体の情報を抽出できた成分の切り出し)
各空間スペクトル22A・22B・22Cは、位相シフト量α1・α2・α3の値に応じて、特定の空間スペクトルにおいて被写体の情報を多く含んでいる。その特定の空間スペクトルは、被写体の中心の情報、端の情報に相当する。そこで、被写体の情報を多く含んでいる空間スペクトル成分23A・23B・23Cをそれぞれ空間スペクトル22A・22B・22Cから切り出し、切り出した空間スペクトル成分23A・23B・23Cを他の2次元配列である誤差低減空間スペクトル分布24に再配置する。再配置されて完成した2次元配列である誤差低減空間スペクトル分布24は、位相シフト誤差が少なく、被写体の端の情報の欠落が少ない被写体の空間スペクトル分布に相当する。

【0095】
位相シフト量、複素振幅の数を増やすことで、空間スペクトル面で切り出した後の被写体の情報は、より位相シフト誤差が低減されたものになる。また、位相シフト量の数を空間スペクトル面における行数または列数の半分としたときに最も高精度かつ広範囲な計測が可能なアルゴリズムである。例えば、誤差低減空間スペクトル分布24が4行×4列である場合、位相シフト量は、α1・α2の2種類としたときに最も高精度かつ広範囲な計測が可能になる。

【0096】
(逆フーリエ変換)
再配置されて完成した誤差低減空間スペクトル分布24を逆フーリエ変換する。逆フーリエ変換して得られた2次元分布は、位相シフト誤差が低減された被写体の複素振幅25に相当する。

【0097】
(回折積分)
逆フーリエ変換後の2次元分布である複素振幅25に回折積分の計算を施し、被写体の3次元像を再生する。得られた再生像は,従来技術の構成よりも広い範囲の被写体の像が 再生される。

【0098】
(再生像生成器)
デジタルホログラフィ装置1Bには、再生像生成器31Bが設けられている。再生像生成器31Bには、空間スペクトル分布生成部15が設けられている。空間スペクトル分布生成部15は、位相シフト量α1による位相シフト法の計算に基づいて空間キャリア位相シフトホログラム21から空間スペクトル22Aを生成し、位相シフト量α2による位相シフト法の計算に基づいて空間キャリア位相シフトホログラム21から空間スペクトル22Bを生成し、位相シフト量α3による位相シフト法の計算に基づいて空間キャリア位相シフトホログラム21から空間スペクトル22Cを生成する。

【0099】
再生像生成器31Bは、切り出し部16を有している。切り出し部16は、位相シフト量α1に応じて空間スペクトル22Aから切り出した空間スペクトル成分23Aと、位相シフト量α2に応じて空間スペクトル22Bから切り出した空間スペクトル成分23Bと、位相シフト量α3に応じて空間スペクトル22Cから切り出した空間スペクトル成分23Cとを再配置して位相シフト誤差を低減した誤差低減空間スペクトル分布24を生成する。

【0100】
再生像生成器31Bは、再生部17を有している。再生部17は、誤差低減空間スペクトル分布24を逆フーリエ変換し、回折積分の計算を施して被写体の3次元像を再生する。

【0101】
以上のように、実施の形態2において、シングルショット位相シフトデジタルホログラフィにおいて補間を用いずに視野拡大可能なアルゴリズムを提案した。実施の形態2に係るアルゴリズムを用いた計測方法によって、 並列位相シフトデジタルホログラフィだけでなく、他のシングルショット位相シフトデジタルホログラフィでも大きな物体の高画質イメージング並びに高精度瞬時計測を達成することができる。

【0102】
なお、隣り合う画素間の位相差がπ/2の例を説明したが、本発明はこれに限定されない。隣り合う画素間の位相差がπ/2以外でも本発明を適用することができる。

【0103】
基本的な考え方として、前記隣り合う画素間の位相差がθのとき、位相シフト法の計算における位相シフト量がθであるときの空間スペクトル分布が,撮像素子面と垂直な方向から入射する物体光の情報を多く含み,そうでないときには被写体からの斜入射成分の情報を多く含む。そのため,各空間スペクトル分布において被写体の情報を多く含む空間スペクトル成分をそれぞれ切り出し、切り出した各空間スペクトル成分を他の2次元配列である誤差低減空間スペクトル分布に再配置するという手順で適用可能である。

【0104】
例えば,隣り合う画素間の位相差θ=2π/3で位相シフト量がα1、α2、α3の3つのとき、前述した数式(1)に位相シフト量α1=2π/3、α2<2π/3、α3>2π/3を代入して計算し、各位相シフト量α1・α2・α3で得られた被写体の複素振幅分布からそれぞれの空間スペクトル分布を得る。このとき、位相シフト量α1によって得られた被写体の空間スペクトル分布では撮像素子面と垂直な方向から入射する物体光の情報を多く含み、位相シフト量α2・α3では位相シフト量α1よりも被写体からの斜入射成分の情報を多く含む。そのため、各空間スペクトル分布において被写体の情報を多く含む空間スペクトル成分をそれぞれ切り出し、切り出した各空間スペクトル成分を他の2次元配列である誤差低減空間スペクトル分布に再配置することで、被写体の高精度且つ広範囲計測が可能である。以上より、位相差θ=π/2以外でも本発明を適用することができる。

【0105】
(実施の形態1のまとめ)
本実施の形態に係るデジタルホログラフィ装置では、前記主補間は、縦方向に隣接する画素及び横方向に隣接する画素に基づく4方向補間であり、前記副補間は、横方向に隣接する画素に基づく横補間と、縦方向に隣接する画素に基づく縦補間とを含むことが好ましい。

【0106】
上記構成によれば、簡単な構成により、主補間と副補間とを構成することができる。

【0107】
本実施の形態に係るデジタルホログラフィ装置では、前記副補間複素振幅は、前記第1及び第2ホログラムに横補間を施して生成されて3行×3列の横補間領域を有する横補間複素振幅と、前記第1及び第2ホログラムに縦補間を施して生成されて3行×3列の縦補間領域を有する縦補間複素振幅とを含み、前記空間周波数分布は、3行×3列の空間周波数領域を有し、1行2列目及び3行2列目の空間周波数領域には、対応する横補間領域における横補間複素振幅が配置されており、2行1列目及び2行3列目の空間周波数領域には、対応する縦補間領域における縦補間複素振幅が配置されていることが好ましい。

【0108】
上記構成により、干渉縞の横成分が細かい箇所には、細かい横成分に有効性が高い横補間を対応させることができ、干渉縞の縦成分が細かい箇所には、細かい縦成分に有効性が高い縦補間を対応させることができる。

【0109】
本実施の形態に係るデジタルホログラフィ装置では、前記副補間複素振幅は、前記第1及び第2ホログラムに横補間を施して生成されて3行×3列の横補間領域を有する横補間複素振幅と、前記第1及び第2ホログラムに縦補間を施して生成されて3行×3列の縦補間領域を有する縦補間複素振幅とを含み、前記空間周波数分布は、3行×3列の空間周波数領域を有し、前記被写体の形状は、横方向に長く、1列目及び3列目の空間周波数領域には、対応する縦補間領域における縦補間複素振幅が配置されていることが好ましい。

【0110】
上記構成により、横方向に長い被写体の干渉縞の縦成分が細かい箇所には、細かい縦成分に有効性が高い縦補間を対応させることができる。

【0111】
本実施の形態に係るデジタルホログラフィ装置では、前記副補間複素振幅は、前記第1及び第2ホログラムに横補間を施して生成されて3行×3列の横補間領域を有する横補間複素振幅と、前記第1及び第2ホログラムに縦補間を施して生成されて3行×3列の縦補間領域を有する縦補間複素振幅とを含み、前記空間周波数分布は、3行×3列の空間周波数領域を有し、前記被写体の形状は、縦方向に長く、1行目及び3行目の空間周波数領域には、対応する横補間領域における横補間複素振幅が配置されていることが好ましい。

【0112】
上記構成により、縦方向に長い被写体の干渉縞の横成分が細かい箇所には、細かい横成分に有効性が高い横補間を対応させることができる。

【0113】
本実施の形態に係るデジタルホログラフィ装置では、前記主補間は、+45度方向に隣接する画素及び-45度方向に隣接する画素に基づく±45度方向補間であり、前記副補間は、+45度方向に隣接する画素に基づく+45度方向補間と、-45度方向に隣接する画素に基づく-45度方向補間とを含むことが好ましい。

【0114】
上記構成によれば、簡単な構成により、主補間と副補間とを構成することができる。

【0115】
本実施の形態に係るデジタルホログラフィ装置では、前記副補間複素振幅は、前記第1及び第2ホログラムに+45度方向補間を施して生成されて3行×3列の+45度方向補間領域を有する+45度方向補間複素振幅と、前記第1及び第2ホログラムに-45度方向補間を施して生成されて3行×3列の-45度方向補間領域を有する-45度方向補間複素振幅とを含み、前記空間周波数分布は、3行×3列の空間周波数領域を有し、1行1列目及び3行3列目の空間周波数領域には、対応する+45度方向補間領域における+45度方向補間複素振幅が配置されており、1行3列目及び3行1列目の空間周波数領域には、対応する-45度方向補間領域における-45度方向補間複素振幅が配置されていることが好ましい。

【0116】
上記構成により、干渉縞の+45度方向成分が細かい箇所には、細かい+45度方向成分に有効性が高い-45度方向補間を対応させることができ、干渉縞の-45度方向成分が細かい箇所には、細かい-45度方向成分に有効性が高い+45度方向補間を対応させることができる。

【0117】
(実施の形態2のまとめ)
本実施の形態に係る他のデジタルホログラフィ装置では、前記ある方向から入射する物体光に対する参照光の位相差は、隣り合う画素間においてπ/2あるいは3π/2であることが好ましい。

【0118】
上記構成により、被写体の縁部に対応する箇所の位相シフト誤差を最適に低減することができる。

【0119】
本実施の形態に係る他のデジタルホログラフィ装置では、前記空間スペクトル分布生成部は、第1位相シフト量による位相シフト法の計算に基づいて前記空間キャリア位相シフトホログラムから第1複素振幅を抽出し、前記第1複素振幅をフーリエ変換して前記第1空間スペクトルを生成し、第2位相シフト量による位相シフト法の計算に基づいて前記空間キャリア位相シフトホログラムから第2複素振幅を抽出し、前記第2複素振幅をフーリエ変換して前記第2空間スペクトルを生成することが好ましい。

【0120】
上記構成により、簡単な構成で空間スペクトルを生成することができる。

【0121】
本実施の形態に係る他のデジタルホログラフィ装置では、前記誤差低減空間スペクトル分布を逆フーリエ変換し、回折積分の計算を施して被写体の3次元像を再生する再生部をさらに備えることが好ましい。

【0122】
上記構成により、誤差低減空間スペクトル分布から、簡単な構成で被写体の3次元像を再生することができる。

【0123】
本実施の形態に係る他のデジタルホログラフィ装置では、前記空間スペクトル分布生成部における位相シフト量の数と複素振幅の数は、空間スペクトル面における行数または列数の半分であることが好ましい。

【0124】
上記構成により、より位相シフト誤差を低減し、高精度かつ広範囲の被写体の3次元像を再生することができる。

【0125】
本発明は上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
【産業上の利用可能性】
【0126】
本発明は、3次元物体への光照射によって得られる干渉パターン(干渉縞)から、コンピュータを用いて3次元物体の像を再生するデジタルホログラフィ装置に適用することができる。また、本発明は、生体顕微鏡、工業顕微鏡、製品検査、粒子・流体計測等のバイオ、製造技術、計測・分析分野に適用することができる。
【符号の説明】
【0127】
1A、1B デジタルホログラフィ装置
3 複素振幅生成部
4 空間周波数分布生成部
5 偏光子アレイ
6 撮像素子
7 並列位相シフトホログラム
8A、8B ホログラム
9A 4方向補間領域
9B ±45度方向補間領域
10A 4方向補間複素振幅
10B ±45度方向補間複素振幅
11A 横補間領域
11B 縦補間領域
11C +45度方向補間領域
11D -45度方向補間領域
12A 横補間複素振幅
12B 縦補間複素振幅
12C +45度方向補間複素振幅
12D -45度方向補間複素振幅
13A 空間周波数分布
15 空間スペクトル分布生成部
16 切り出し部
17 再生部
21 空間キャリア位相シフトホログラム
22A、22B、22C 空間スペクトル
23A、23B、23C 空間スペクトル成分
24 誤差低減空間スペクトル分布24
25 複素振幅
26A、26B 空間周波数領域
27A、27B 4方向補間複素振幅
28A 横補間複素振幅
28B 縦補間複素振幅
28C +45度方向補間複素振幅
28D -45度方向補間複素振幅
29 参照光
41A、41B、41C 複素振幅
図面
【図1】
0
【図6】
1
【図7】
2
【図8】
3
【図9】
4
【図10】
5
【図11】
6
【図13】
7
【図15】
8
【図17】
9
【図19】
10
【図20】
11
【図21】
12
【図2】
13
【図3】
14
【図4】
15
【図5】
16
【図12】
17
【図14】
18
【図16】
19
【図18】
20
【図22】
21
【図23】
22
【図24】
23
【図25】
24
【図26】
25
【図27】
26
【図28】
27