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明細書 :触覚センサユニット、当該触覚センサユニットを備えたロボット、及び荷重算出方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第5544352号 (P5544352)
登録日 平成26年5月16日(2014.5.16)
発行日 平成26年7月9日(2014.7.9)
発明の名称または考案の名称 触覚センサユニット、当該触覚センサユニットを備えたロボット、及び荷重算出方法
国際特許分類 G01L   1/10        (2006.01)
G01L   5/16        (2006.01)
B25J  19/02        (2006.01)
FI G01L 1/10 A
G01L 5/16
B25J 19/02
請求項の数または発明の数 5
全頁数 21
出願番号 特願2011-500587 (P2011-500587)
出願日 平成22年2月12日(2010.2.12)
国際出願番号 PCT/JP2010/052100
国際公開番号 WO2010/095573
国際公開日 平成22年8月26日(2010.8.26)
優先権出願番号 2009035903
優先日 平成21年2月18日(2009.2.18)
優先権主張国 日本国(JP)
審査請求日 平成25年1月29日(2013.1.29)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】504255685
【氏名又は名称】国立大学法人京都工芸繊維大学
発明者または考案者 【氏名】山下 馨
個別代理人の代理人 【識別番号】100141586、【弁理士】、【氏名又は名称】沖中 仁
審査官 【審査官】田邉 英治
参考文献・文献 特開2006-078429(JP,A)
特開2006-201061(JP,A)
欧州特許出願公開第01365221(EP,A1)
G. Murali Krishna et. al.,Tactile Sensor Based on Piezoelectric Resonance,IEEE Sensors Journal,米国,IEEE,2004年10月,Volume:4, Issue:5,pp.691-697
調査した分野 G01L 1/00- 1/26
G01L 5/00- 5/28
特許請求の範囲 【請求項1】
基板と、
前記基板の上に形成された被膜と、
一端が前記基板に固定され、当該一端から他端に向かって前記基板から離れる方向に反り上がった片持ち梁構造体とを備え、
前記被膜に加えられた荷重を検出する触覚センサユニットであって、
前記片持ち梁構造体は、第1の共振モードにおける周波数である第1の共振周波数及び前記第1の共振モードとは異なる第2の共振モードにおける周波数であって、前記第1の共振周波数とは異なる第2の共振周波数で共振可能であり、
前記第1の共振周波数の荷重変化に対応した変化率と前記第2の共振周波数の前記荷重変化に対応した変化率とに基づいて、前記荷重の方向成分を算出する演算部を備え
前記演算部は、
前記片持ち梁構造体に含まれる圧電体層に異なる周波数の交流電圧を印加して、前記第1の共振モードおよび前記第2の共振モードで前記片持ち梁構造体を共振させる電圧印加手段と、
前記第1の共振周波数と前記第2の共振周波数とを検出する共振周波数検出手段と、
前記被膜に荷重が加えられていない時を無荷重時として、前記第1の共振周波数の前記荷重変化に対応した変化率である無荷重時に対する第1の変化率と、前記第2の共振周波数の前記荷重変化に対応した変化率である無荷重時に対する第2の変化率とに基づいて、前記荷重の方向成分である前記被膜に対する垂直方向の成分と剪断方向の成分とを算出する荷重算出手段とを備えることを特徴とする、触覚センサユニット。
【請求項2】
前記電圧印加手段は、前記圧電体層に異なる周波数の交流電圧を印加して、第3の共振モードで前記片持ち梁構造体をさらに共振させ、
前記共振周波数検出手段は、前記第3の共振モードにおける前記片持ち梁構造体の第3の共振周波数をさらに検出し、
前記荷重算出手段は、前記第3の共振周波数の前記荷重変化に対応した変化率である無荷重時に対する第3の変化率に基づいて、前記荷重の前記被膜に対する垂直方向の成分と2つの剪断方向の成分とを算出し、当該2つの剪断方向の成分は互いに直交する、請求項に記載の触覚センサユニット。
【請求項3】
前記片持ち梁構造体は前記荷重の方向に対し非対称であり、
前記片持ち梁構造体には、互いに絶縁された複数の電極が設けられている、請求項1又は2に記載の触覚センサユニット。
【請求項4】
請求項1~請求項の何れか一項に記載の触覚センサユニットを備えたロボットであって、
前記基板、前記被膜および前記片持ち梁構造体が、前記ロボットの接触対象物との接触部分に設けられていることを特徴とするロボット。
【請求項5】
基板と、前記基板の上に形成された被膜と、片持ち梁構造体とを備えた触覚センサユニットにおいて、前記被膜に加えられた荷重を算出する荷重算出方法であって、
前記片持ち梁構造体は、その一端が前記基板に固定され、当該一端から他端に向かって前記基板から離れる方向に反り上がっており、第1の共振周波数及び前記第1の共振周波数とは異なる第2の共振周波数で共振可能であり、
前記第1の共振周波数の荷重変化に対応した変化率と前記第2の共振周波数の前記荷重変化に対応した変化率とを算出する変化率算出ステップと、
前記第1の共振周波数の前記荷重変化に対応した変化率と前記第2の共振周波数の前記荷重変化に対応した変化率とに基づいて、前記荷重の方向成分を算出する方向成分算出ステップと
前記被膜に加えられた荷重のうち、垂直荷重と剪断荷重との正負により算出領域を複数象現に分けるステップと、
前記複数象現の各々の象現内の点のうち、前記垂直荷重と前記剪断荷重との双方の絶対値が最大となる点における荷重誤差を補正する補正ステップと
を包含する荷重算出方法。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、印加荷重を検出する触覚センサユニット、当該触覚センサユニットを備えたロボット、及び荷重算出方法に関する。
【背景技術】
【0002】
高齢化社会の進展に伴い、人間に代わって介護を行う介護ロボットのニーズが高まっている。このような介護ロボットには、人間に危害を及ぼさないよう人間の皮膚に劣らない触覚が要求され、介護ロボットの手に設けられるセンサは圧感と同時にすべり感覚を検知する必要がある。
【0003】
従来より、荷重を検知する触覚センサとして、ピエゾ抵抗型の素子が用いられている。例えば、特許文献1には、基板に固定された片持ち梁構造体を柔軟なエラストマーで覆い、片持ち梁構造体の変形具合からエラストマーにかかる荷重を検知する技術が開示されている。この技術では、片持ち梁構造体の根元部に備えたピエゾ抵抗素子により、当該根元部の歪みを計測することによって、エラストマーに印加された荷重を検知している。
【0004】
しかしながら、この技術では、ピエゾ抵抗型素子が単純に片持ち梁構造体にかかる応力を静的に検知するだけなので、一本の片持ち梁構造体だけでは、荷重の大きさは検知できるが、荷重の印加方向を正確に検知することはできない。そこで、特許文献1および非特許文献1では、片持ち梁構造体を複数本組み合わせることにより、異なる方向の荷重を検知可能な技術が提案されている。
【0005】
図7(a)は、非特許文献1に開示のカンチレバー型触覚センサユニット101の構成を示す斜視図であり、図7(b)は、カンチレバー型触覚センサユニット101の構成を示す断面図である。図7(a)に示すように、カンチレバー型触覚センサユニット101は、基板104上に4本の片持ち梁構造体102を形成し、エラストマー103で覆う構成である。4本の片持ち梁構造体102のうち、向かい合わせに位置する2つの片持ち梁構造体102は、互いに向かい合っている。図7(b)に示すように、片持ち梁構造体102は、Si層102aとポリマー層102bとをポリマー層102b側に湾曲させることによって形成されている。
【0006】
図8(a)は、エラストマー103に垂直荷重を印加した状態を示す断面図であり、図8(b)は、エラストマー103に剪断荷重を印加した状態を示す断面図である。図8(a)に示すように、エラストマー103に垂直荷重を加えた場合、2つの片持ち梁構造体102は、どちらもSi層102aが基板104側に近づく方向に変形する。一方、図8(b)に示すように、エラストマー103に右方向への剪断荷重を加えた場合は、左側の片持ち梁構造体102は、Si層102aが基板104側に近づく方向に変形するのに対し、右側の片持ち梁構造体102は、Si層102aが基板104から離れる方向に変形する。片持ち梁構造体102は、変形に応じてその抵抗が変化するので、変形時の片持ち梁構造体102の各々の抵抗変化に基づいて、エラストマー103にかかる垂直方向の荷重成分と剪断方向の荷重成分とを分離して検知することができる。
【先行技術文献】
【0007】

【特許文献1】特開2006-201061号公報(2006年8月3日公開)
【0008】

【非特許文献1】Yu Ming Huang et. al.,"Fabrication and Normal/Shear Stress Responses of TactileSensors of Polymer/Si Cantilevers Embedded in PDMS and Urethane GelElastomers",電学論E,128巻5号,2008年,193-197頁
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
介護ロボット等に設けられる触覚センサの感度を高めるためには、触覚センサの片持ち梁構造体を高密度に設ける必要がある。しかしながら、上述のような従来技術では、垂直方向の荷重成分と剪断方向の荷重成分とを検知するために、複数の片持ち梁構造体を必要とする。このため、触覚センサを高密度に設けても、触覚センサの高性能化が困難であるという問題を生じる。
【0010】
本発明は、上記の問題点を解決するためになされたもので、その目的は、高性能化が容易な触覚センサユニットを実現することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記の課題を解決するために、本発明に係る触覚センサユニットは、基板と、前記基板の上に形成された被膜と、一端が前記基板に固定され、当該一端から他端に向かって前記基板から離れる方向に反り上がった片持ち梁構造体とを備え、前記被膜に加えられた荷重を検出する触覚センサユニットであって、前記片持ち梁構造体は、第1の共振モードにおける周波数である第1の共振周波数及び前記第1の共振モードとは異なる第2の共振モードにおける周波数であって、前記第1の共振周波数とは異なる第2の共振周波数で共振可能であり、前記第1の共振周波数の荷重変化に対応した変化率と前記第2の共振周波数の前記荷重変化に対応した変化率とに基づいて、前記荷重の方向成分を算出する演算部を備え、前記演算部は、前記片持ち梁構造体に含まれる圧電体層に異なる周波数の交流電圧を印加して、前記第1の共振モードおよび前記第2の共振モードで前記片持ち梁構造体を共振させる電圧印加手段と、前記第1の共振周波数と前記第2の共振周波数とを検出する共振周波数検出手段と、前記被膜に荷重が加えられていない時を無荷重時として、前記第1の共振周波数の前記荷重変化に対応した変化率である無荷重時に対する第1の変化率と、前記第2の共振周波数の前記荷重変化に対応した変化率である無荷重時に対する第2の変化率とに基づいて、前記荷重の方向成分である前記被膜に対する垂直方向の成分と剪断方向の成分とを算出する荷重算出手段とを備える。
【0012】
上記構成の触覚センサユニットによれば、従来技術と異なり、単一の片持ち梁構造体で複数方向の荷重成分を分離して検知することができる。従って、圧感と同時にすべり感覚の検知が容易な触覚センサユニットを実現できるという効果を奏する。
更に上記構成の触覚センサユニットによれば、電圧印加手段が、圧電体層に異なる周波数の交流電圧を印加して、共振周波数検出手段が、片持ち梁構造体の第1の共振モードにおける第1の共振周波数と、第2の共振モードにおける第2の共振周波数とを検出する。被膜に加えられた垂直荷重と剪断荷重とは、後述の式(7)に示すように、第1の共振周波数の変化率である無荷重時に対する第1の変化率と第2の共振周波数の変化率である無荷重時に対する第2の変化率とに基づいて算出することができる。これにより、荷重算出手段は、1つの片持ち梁構造体の共振周波数に基づいて、垂直荷重と剪断荷重とを算出することができる。このように、1つの片持ち梁構造体によって複数の荷重方向成分を検知することができるので、片持ち梁構造体を同密度に設けた場合の触覚センサユニットの感度を、従来よりも向上させることができる。したがって、片持ち梁構造体を高密度に配置しやすいので、高性能化が容易な触覚センサユニットを実現できるという効果を奏する。また、同程度の感度の触覚センサユニットを実現するために必要な片持ち梁構造体の数を、従来に比べ減らすことができるので、製造コストを削減できる。
【0015】
本発明の触覚センサユニットにおいて、前記電圧印加手段は、前記圧電体層に異なる周波数の交流電圧を印加して、第3の共振モードで前記片持ち梁構造体をさらに共振させ、前記共振周波数検出手段は、前記第3の共振モードにおける前記片持ち梁構造体の第3の共振周波数をさらに検出し、
前記荷重算出手段は、前記第3の共振周波数の前記荷重変化に対応した変化率である無荷重時に対する第3の変化率に基づいて、前記荷重の前記被膜に対する垂直方向の成分と2つの剪断方向の成分とを算出し、当該2つの剪断方向の成分は互いに直交することが好ましい。
【0016】
上記構成の触覚センサユニットによれば、第3の共振モードで前記片持ち梁構造体をさらに共振させ、荷重算出手段は、第3の共振周波数の荷重変化に対応した変化率である無荷重時に対する第3の変化率に基づいて、荷重の被膜に対する垂直方向の成分と2つの剪断方向の成分とを算出する。その結果、第三軸方向に対する荷重を判別でき、第三軸方向に対する荷重検知が可能となる。
【0017】
本発明の触覚センサユニットにおいて、前記片持ち梁構造体は前記荷重の方向に対し非対称であり、前記片持ち梁構造体には、互いに絶縁された複数の電極が設けられていることが好ましい。
【0018】
上記構成の触覚センサユニットによれば、片持ち梁構造体は荷重の方向に対し非対称であるため、荷重の向きによる応答の差異を生じせしめる。従って、荷重方向における荷重の正負を区別し得、荷重方向に対する荷重検知が可能となる。さらに、片持ち梁構造体には、互いに絶縁された複数の電極が設けられているため、各方向の振動を効率良く誘起し得る。
【0019】
本発明に係るロボットは、上記触覚センサユニットを備えたロボットであって、前記基板、被膜および片持ち梁構造体が、前記ロボットの接触対象物との接触部分に設けられていることを特徴としている。
【0020】
上記構成のロボットによれば、圧覚およびすべり感覚の高いロボットを実現できる。
【0021】
上記の課題を解決するために、本発明に係る荷重算出方法は、基板と、前記基板の上に形成された被膜と、片持ち梁構造体とを備えた触覚センサユニットにおいて、前記被膜に加えられた荷重を算出する荷重算出方法であって、前記片持ち梁構造体は、その一端が前記基板に固定され、当該一端から他端に向かって前記基板から離れる方向に反り上がっており、第1の共振周波数及び前記第1の共振周波数とは異なる第2の共振周波数で共振可能であり、前記第1の共振周波数の前記荷重変化に対応した変化率と前記第2の共振周波数の前記荷重変化に対応した変化率とを算出する変化率算出ステップと、前記第1の共振周波数の前記荷重変化に対応した変化率と前記第2の共振周波数の前記荷重変化に対応した変化率とに基づいて、前記荷重の方向成分を算出する方向成分算出ステップと、前記被膜に加えられた荷重のうち、垂直荷重と剪断荷重との正負により算出領域を複数象現に分けるステップと、前記複数象現の各々の象現内の点のうち、前記垂直荷重と前記剪断荷重との双方の絶対値が最大となる点における荷重誤差を補正する補正ステップとを包含する。
【0022】
上記構成の荷重算出方法によれば、上述した本発明の触覚センサユニットと同様の作用効果が得られる。すなわち、従来技術と異なり、単一の片持ち梁構造体で複数方向の荷重成分を分離して検知することができる。従って、圧感と同時にすべり感覚の検知が容易な荷重算出方法を実現できるという効果を奏する。
更に上記構成の荷重算出方法によれば、1つの片持ち梁構造体によって複数の荷重方向成分を検知することができるので、片持ち梁構造体を同密度に設けた場合の触覚センサユニットの感度を、従来よりも向上させることができる。
また、上記構成の荷重算出方法によれば、被膜に加えられた荷重のうち、垂直荷重と剪断荷重との正負により算出領域を複数象現に分け、複数象現の各々の象現内の点のうち、垂直荷重と剪断荷重との双方の絶対値が最大となる点における荷重誤差を補正する。その結果、垂直荷重と剪断荷重とによっては変化しない行列Aに基づいて算出した誤差をコーナー点の荷重データを用いて補正することができ、さらに、算出の参照とする参照荷重のデータを少なくでき、荷重算出方法による結果の信頼性を向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明の実施形態に係る触覚センサユニットの概略構成を示すブロック図である。
【図2】図1に示す触覚センサユニットの部分拡大断面図である。
【図3】(a)は、1次モードの共振状態を示す図であり、(b)は、2次モードの共振状態を示す図である。
【図4】(a)は、xy平面に対して非対称である片持ち梁構造体を示す図であり、(b)は、第1電極構造を有する片持ち梁構造体を示す図であり、(c)は、第2電極構造を有する片持ち梁構造体を示す図であり、(d)は、第3電極構造を有する片持ち梁構造体を示す図である。
【図5】(a)は、片持ち梁構造体が1次モードで共振している場合における、垂直荷重と共振周波数との関係、および剪断荷重と共振周波数との関係を示すグラフであり、(b)は、片持ち梁構造体が2次モードで共振している場合における、垂直荷重と共振周波数との関係、および剪断荷重と共振周波数との関係を示すグラフである。
【図6】(a)は、補正処理前の実際の印加荷重と算出結果との関係を示すグラフであり、(b)は、補正処理後の実際の印加荷重と算出結果との関係を示すグラフである。
【図7】(a)は、従来のカンチレバー型触覚センサユニットの構成を示す斜視図であり、(b)は、当該カンチレバー型触覚センサユニットの構成を示す断面図である。
【図8】(a)は、図7に示すカンチレバー型触覚センサユニットのエラストマーに垂直荷重を印加した状態を示す断面図であり、(b)は、当該エラストマーに剪断荷重を印加した状態を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
本発明の実施の一形態について図1~図4に基づいて説明すれば以下のとおりである。

【0027】
[触覚センサユニット]
図1は、本実施形態に係る触覚センサユニット1の概略構成を示すブロック図である。図2は、触覚センサユニット1の部分拡大断面図である。触覚センサユニット1は、片持ち梁構造体2、エラストマー3、基板4、およびマイコン部5を有している。基板4は、シリコンで形成されており、エラストマー3によって被覆されている。基板4上には、片持ち梁構造体2が複数設けられており、片持ち梁構造体2は、一端が基板4に固定され、当該一端から他端に向かって基板4から離れる方向に反り上がるように形成されている。マイコン部5は、各片持ち梁構造体2に接続されており、電圧印加部51、共振周波数検出部52および荷重算出部53を備えている。マイコン部5は、本発明の演算部を構成する。

【0028】
片持ち梁構造体2は、PZT層2a、SiO層2b、Au層2cおよびPt/Ti層2dから構成されている。PZT層2aは圧電素子であり、Au層2cとPt/Ti層2dとの間に形成される。Au層2cおよびPt/Ti層2dは、PZT層2aに交流電圧を印加する電極として機能する。SiO層2bは、Pt/Ti層2dと基板4との間に形成されており、基板4をPt/Ti層2dから絶縁している。

【0029】
本実施形態では、PZT層2a、SiO層2bおよびAu層2cの厚さは、それぞれ1μm、3μm、50nmである。また、Pt/Ti層2dのうち、Pt層の厚さは200nmであり、Ti層の厚さは20nmである。

【0030】
Au層2cおよびPt/Ti層2dから、PZT層2aに所定の周波数の交流電圧を印加することにより、片持ち梁構造体2は共振する。PZT層2aに印加される交流電圧の周波数は、図1に示す電圧印加部51によって制御される。

【0031】
片持ち梁構造体2の共振モードは、印加される交流電圧の周波数によって決定される。例えば、PZT層2aに5V、60kHzの交流電圧を印加すると、PZT層2aは、1次モードで共振する。1次モードの共振では、図3(a)に示すように、共振構造体の全体の振動方向が同一である。

【0032】
また、PZT層2aに5V、300kHzの交流電圧を印加すると、PZT層2aは、2次モードで共振する。2次モードの共振では、図3(b)に示すように、共振構造体の一部の振動方向が他の部分の振動方向と異なっている。

【0033】
図4(a)は、xy平面に対して非対称である片持ち梁構造体を示す図であり、図4(b)は、第1電極構造を有する片持ち梁構造体を示す図であり、図4(c)は、第2電極構造を有する片持ち梁構造体を示す図であり、図4(d)は、第3電極構造を有する片持ち梁構造体を示す図である。

【0034】
図4(a)において、片持ち梁構造体2はxy平面に対して非対称構造であり、片持ち梁構造体2の第三軸方向(y軸方向)への突出部分は上向き(z軸方向)に反り上がっている。その結果、第三軸方向(y軸方向)の荷重に基づく3次モードの共振状態に差異が生じる。従って、第三軸方向の荷重を判別でき、第三軸方向の荷重検知が可能となり、第三軸方向(y軸方向)の荷重を効率良く検出し得る。さらに、片持ち梁構造体2はx軸方向に進むにつれz軸方向にも反り上がっている。その結果、x軸方向とy軸方向との荷重を判別でき、x軸方向とy軸方向との荷重検知が可能となる。このように、図4(a)に示す片持ち梁構造体2は、荷重方向(x軸、y軸、z軸の各々の方向)に対し非対称であり、3方向の荷重を検知し得る。

【0035】
図4(b)において、片持ち梁構造体2は第1電極構造を有する。第1電極構造は、Au層2cそのものが電気的に分離されていない電極構造である。図4(c)において、片持ち梁構造体2は第2電極構造を有する。第2電極構造は、Au層2cそのものが第1電極領域2cと第2電極領域2cとに電気的に分離されている。第1電極領域2cはx軸方向に伸びている。第2電極領域2cはy軸方向に伸びた主領域とx軸方向に伸びた副領域とを含む。第1電極領域2cと第2電極領域2cとの各々に個別に電界印加することにより、x軸方向とy軸方向との各々の方向の振動を独立に取り出し得る。図4(d)において、片持ち梁構造体2は第3電極構造を有する。第3電極構造は、Au層2cそのものが第3電極領域2cと第4電極領域2cとに電気的に分離されている。第3電極領域2cはx軸方向に伸びており、第4電極領域2cはx軸方向に伸びる部分とy軸方向に伸びる部分(y軸方向への突出部分)とを有する。第3電極構造を有する片持ち梁構造体2によれば、第3電極領域2cと第4電極領域2cとに同相の電界を印加することによってxz面内で振動を誘起し得、さらに第3電極領域2cと第4電極領域2cとに逆相の電界を印加することによりx軸方向を軸としたねじれ振動を誘起し、y軸方向への突出部分をyz面内で振動し得る。従って、各方向の振動を効率良く誘起し得る。

【0036】
本実施形態では、片持ち梁構造体2を形成する圧電体層としてPZT層(ゾル・ゲル製膜)を用いたが、他の圧電素子を用いてもよい。また、片持ち梁構造体2を形成する電極層としてAu層およびPt/Ti層を用いたが、圧電体層に電圧を印加できる材料であれば、これに限定されない。

【0037】
以上より、本発明の触覚センサユニットを説明した。本発明に係る触覚センサユニットは、基板と、前記基板の上に形成された被膜と、一端が前記基板に固定され、当該一端から他端に向かって前記基板から離れる方向に反り上がった片持ち梁構造体とを備え、前記被膜に加えられた荷重を検出する触覚センサユニットであって、前記片持ち梁構造体は、第1の共振周波数及び前記第1の共振周波数とは異なる第2の共振周波数で共振可能であり、前記第1の共振周波数の荷重変化に対応した変化率と前記第2の共振周波数の前記荷重変化に対応した変化率とに基づいて、前記荷重の方向成分を算出する演算部を備える。
従来技術では、垂直荷重と剪断荷重とを検知するために、2つの片持ち梁構造体を必要としていたが、本発明の実施形態によれば、従来技術と異なり、単一の片持ち梁構造体で複数方向の荷重成分を分離して検知することができる。従って、圧感と同時にすべり感覚の検知が容易な触覚センサユニットを実現できるという効果を奏する。また、本実施形態では、1つの片持ち梁構造体によって、複数の荷重方向成分(垂直荷重方向成分と剪断荷重方向成分)を検知できる。これにより、片持ち梁構造体を同密度に設けた場合の触覚センサユニットの感度を、従来よりも向上させることができる。したがって、片持ち梁構造体を高密度に配置しやすいので、触覚センサユニットの高性能化が容易である。また、同程度の感度の触覚センサユニットを実現するために必要な片持ち梁構造体の数を、従来に比べ減らすことができるので、製造コストを削減できる。
なお、本発明に係る触覚センサユニットは、圧電体層に印加する電圧の周波数を片持ち梁構造体の共振周波数に合わせることにより片持ち梁構造体の共振振動を誘起している。従って、片持ち梁構造体の共振振動が誘起されさえすれば、圧電体層が含まれることに限定されない。例えば、外部から基板やエラストマーに加振することにより片持ち梁構造体の共振を誘起しえる。また、圧電体層に換えて片持ち梁構造体にヒータ部を設けることで熱膨張による振動を誘起し得る。

【0038】
[荷重算出方法]
PZT層2aの共振周波数は、エラストマー3に加わる荷重に応じて変化する。本実施形態では、図1に示す共振周波数検出部52が、片持ち梁構造体2の共振周波数を検出し、荷重算出部53が、検出された共振周波数の変化率に基づいて、エラストマー3に加わる荷重の垂直方向の成分と剪断方向の成分とを算出する。このように、本発明の荷重算出方法は、基板と、前記基板の上に形成された被膜と、圧電体層を含む片持ち梁構造体とを備えた触覚センサユニットにおいて、前記被膜に加えられた荷重を算出する荷重算出方法であって、前記片持ち梁構造体は、その一端が前記基板に固定され、当該一端から他端に向かって前記基板から離れる方向に反り上がっており、第1の共振周波数及び前記第1の共振周波数とは異なる第2の共振周波数で共振可能であり、前記第1の共振周波数の前記荷重変化に対応した変化率と前記第2の共振周波数の前記荷重変化に対応した変化率とを算出する変化率算出ステップと、前記第1の共振周波数の前記荷重変化に対応した変化率と前記第2の共振周波数の前記荷重変化に対応した変化率とに基づいて、前記荷重の方向成分を算出する方向成分算出ステップとを包含する。以下では、その算出方法について詳細に説明する。

【0039】
エラストマーに荷重を加えていない無荷重時の共振周波数fを基準周波数とし、荷重印加時の共振周波数をf’とする。このときの共振周波数の変化分Δf=f’-fとした場合の比Δf/fを共振周波数変化率frと定義する。後述のシミュレーションの結果、同じ荷重を印加した場合の共振周波数変化率frは、1次モードと2次モードとで異なることが分かった。また、同じ荷重を印加した場合において、エラストマー3に垂直荷重を加えた場合と、エラストマー3に剪断荷重を加えた場合とでも、共振周波数変化率frは異なることが分かった。さらに、シミュレーションの結果、共振周波数変化率frは、エラストマー3に印加される荷重に略比例することが明らかとなった。

【0040】
これにより、1次モードにおける共振周波数変化率をfr、2次モードにおける共振周波数変化率をfr、垂直荷重をP、剪断荷重をPとすると、
fr=a・P …式(1)
fr=b・P …式(2)
fr=c・P …式(3)
fr=d・P …式(4)
が成り立つ。ここで、係数a~dは、単位荷重に対する共振周波数変化率を示している。なお、係数a~dの具体的な数値は、後述の実施例において例示する。

【0041】
また、エラストマー3に垂直荷重と剪断荷重とを重畳して印加した場合の共振周波数変化率は、垂直荷重を印加した場合の共振周波数変化率と剪断荷重を印加した場合の共振周波数変化率との和にほぼ等しいことが、シミュレーションによって示された。したがって、1次モードにおける垂直荷重Pと剪断荷重Pとを重畳して印加した場合の共振周波数変化率をfr(P,P)、2次モードにおける垂直荷重Pと剪断荷重Pとを重畳して印加した場合の共振周波数変化率をfr(P,P)とすると、
fr(P,P)=fr(P,0)+fr(0,P) …式(5)
fr(P,P)=fr(P,0)+fr(0,P) …式(6)
が近似的に成り立つ。これにより、

【0042】
【数1】
JP0005544352B2_000002t.gif
と近似できる。ここで、
【数2】
JP0005544352B2_000003t.gif
とすると、
【数3】
JP0005544352B2_000004t.gif
が成り立つ。したがって、式(7)に基づいて、1次モードの共振周波数変化率frおよび2次モードの共振周波数変化率frから、垂直荷重Pおよび剪断荷重Pを精度よく算出することができる。

【0043】
以上より、本発明の荷重算出方法を説明した。従来技術では、垂直荷重と剪断荷重とを検知するために、2つの片持ち梁構造体を必要としていたが、本実施形態では、単一の片持ち梁構造体で複数方向の荷重成分を分離して検知することができる。従って、圧感と同時にすべり感覚の検知が容易な荷重算出方法を実現できるという効果を奏する。さらに、本実施形態では、1つの片持ち梁構造体によって、複数の荷重方向成分(垂直荷重方向成分と剪断荷重方向成分)を検知できる。これにより、片持ち梁構造体を同密度に設けた場合の触覚センサユニットの感度を、従来よりも向上させることができる。したがって、片持ち梁構造体を高密度に配置しやすいので、触覚センサユニットの高性能化が容易である。また、同程度の感度の触覚センサユニットを実現するために必要な片持ち梁構造体の数を、従来に比べ減らすことができるので、製造コストを削減できる。

【0044】
なお、本発明の荷重算出方法において、被膜(エラストマー)への荷重変化に対応する第1の共振周波数の変化率と第2の共振周波数の変化率とを算出し得れば、被膜(エラストマー)に荷重を加えていない無荷重時の共振周波数(共振周波数f)を基準周波数とすることに限定されない。所定の荷重時(垂直方向への基準荷重PNb≠0の時、剪断方向への基準荷重PTb≠0の時)の共振周波数fNb、共振周波数fTbが基準周波数であり得る。即ち、所定の荷重(基準荷重時)には垂直方向への基準荷重PNbと剪断方向への基準荷重PTbとが含まれる。さらに、基準周波数が周波数fNb、周波数fTbの場合、(数1)及び(数3)において、PはP-PNbであり、PはP-PTbである。即ち、「実共振周波数の基準周波数からの変化」が「実荷重の基準荷重からの変化」に比例する。

【0045】
また、共振周波数の検出について、共振周波数の変化は、圧電体層のインピーダンスの変化として検知することができる。したがって、本実施形態に係る共振周波数検出部52は、PZT層2aのインピーダンスから共振周波数を検出してもよい。

【0046】
[補正処理]
本発明の荷重算出方法によって算出された荷重値を補正する方法を説明する。補正処理では、予め求められた補正値に基づいて荷重の方向成分を補正する。行列A(数2)では軸上4点でのデータを用いて荷重を算出したが、実際には行列Aの値は一定でなく垂直荷重Pと剪断荷重Pとによって変化すべきである。ただ、算出に用いるデータをもっと細かく取って間を補間すれば算出精度が向上することは間違いないが、算出の参照とする参照荷重のデータは実用上は少ないほど良い。そこで測定荷重範囲フルスケールの8点を算出のために用いる。さらに、垂直荷重Pの正負、剪断荷重Pの正負により算出領域を4象現に分け、一つの象現内で軸上端点データを用いて線形逆算出を行なう。さらに線形逆算出した結果に対して、象現内で垂直荷重P、剪断荷重Pの絶対値が最大となる点(コーナー点)での誤差を軸からの離れ具合に応じて補正する。以下にフルスケールの8点、即ち軸上4点とコーナー4点のうち、軸上4点を(-t、0)、(0、t)、(t、0)、(0、-t)とし、コーナー4点を(-t、-t)、(-t、t)、(t、t)、(t、-t)とした場合において、補正処理の詳細を説明する。

【0047】
手順1:第一推定荷重(P=A-1F)を算出する。ここで、Fは計測された周波数の変化率を示す。第一推定荷重Pは、荷重の属する象現((垂直荷重P、剪断荷重P)の正負)を決めるためだけに用いる。これにより属する象現が判明すれば、以降はその象現内だけで算出と補正を行なう。
手順2:垂直荷重の第一推定荷重P1Nと剪断荷重の第一推定荷重P1Tの符号をそれぞれS(=-1(P1N<0)、1(P1N≧0))、S(=-1(P1T<0)、1(P1T≧0))とする。S、Sは、4象現いずれの場合をも含めて一般化した記述にするために導入した記号に過ぎない。
手順3:行列Aを定義する。
【数4】
JP0005544352B2_000005t.gif
行列Aは、その象現内の軸上端点でのデータを基に構成した線形推定用の行列である。
手順4:コーナー点での算出値p(=A-1(fr1(tS,tS))及びp(=A-1(fr2(tS,tS))と算出誤差e(=p-tS)及びe(=p-tS))を求めておく。行列Aを用いた線形逆推定(手順5)では軸から離れた点で誤差が出ることが分かっているので、手順4でその誤差を予め求めておく。すなわち、「算出値p、pには算出誤差e、eが含まれている」ということである。
手順5:行列Aに基づき測定値から線形逆推定を行ない、第二推定荷重(P=A-1F)を算出する。
手順6:コーナー点での算出誤差に基づいて第二推定荷重を求める。ここで、係数cはPを補正するための係数であり、係数cとしては「軸上で0軸から離れるほど大きくなり、軸上最大絶対値点における算出値p及びpで1」という条件を満たす必要がある。
【数5】
JP0005544352B2_000006t.gif
なお、P2Nは垂直荷重の第二推定荷重を、P2Tは剪断荷重の第二推定荷重を示す。
手順7:補正係数を用いて第二推定荷重の算出誤差を補正し、第三推定荷重Pを算出する。
【数6】
JP0005544352B2_000007t.gif

【0048】
第三算出荷重を最終的な荷重算出結果とする。結果的に、フルスケールの8点のデータ、即ち軸上4点((-t、0)、(0、t)、(t、0)、(0、-t))のデータと、垂直荷重と剪断荷重との双方の絶対値が最大となる点であるコーナー4点((-t、-t)、(-t、t)、(t、t)、(t、-t))のデータを参照荷重データとして推定することができる。

【0049】
本発明の補正処理によれば、被膜に加えられた荷重のうち、垂直荷重と剪断荷重との正負により算出領域を複数象現に分け、複数象現の各々の象現内の点のうち、垂直荷重と剪断荷重との双方の絶対値が最大となる点における荷重誤差を補正する。その結果、垂直荷重と剪断荷重とによっては変化しない行列Aに基づいて算出した誤差をコーナー点の荷重データを用いて補正することができ、さらに、算出の参照とする参照荷重のデータを少なくでき、荷重算出方法による結果の信頼性を向上することができる。

【0050】
[ロボット]
また、本実施形態に係る触覚センサユニット1を、例えば介護ロボットに設けることにより、圧覚およびすべり感覚を高い精度で検知できる介護ロボットを実現できる。この場合、触覚センサユニット1の片持ち梁構造体2、エラストマー3および基板4は、介護ロボットの被介護者と接触する部分に設けられる。

【0051】
本発明は上述した実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能である。すなわち、請求項に示した範囲で適宜変更した技術的手段を組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
【実施例】
【0052】
上記の触覚センサユニット1によって、エラストマー3に加えられた垂直荷重と剪断荷重とを個別に算出できることを確認するために、図2に示す触覚センサユニット1を用いてシミュレーションを行った。
【実施例】
【0053】
図2に示すように、触覚センサユニット1では、片持ち梁構造体2の固定端がエラストマー3の表面から2000μmに位置している。片持ち梁構造体2の長さは200μmであり、外周が内角90°の円弧となるように形成されている。ここで、片持ち梁構造体2が1次モード・2次モードの各モードで共振しているときに、エラストマー3に垂直荷重(-9kPa、-6kPa、-3kPa、0kPa、3kPa、6kPa、9kPa)および剪断荷重(-9kPa、-6kPa、-3kPa、0kPa、3kPa、6kPa、9kPa)をそれぞれ印加した。このときの共振周波数を表1に示す。
【実施例】
【0054】
【表1】
JP0005544352B2_000008t.gif
【実施例】
【0055】
また、表1に示す荷重と共振周波数との関係を図5においてグラフで示す。図5(a)は、片持ち梁構造体2が1次モードで共振している場合における、垂直荷重と共振周波数との関係、および剪断荷重と共振周波数との関係を示すグラフであり、図5(b)は、片持ち梁構造体2が2次モードで共振している場合における、垂直荷重と共振周波数との関係、および剪断荷重と共振周波数との関係を示すグラフである。いずれの場合も、荷重と共振周波数とは略比例していることが分かる。
【実施例】
【0056】
続いて、エラストマー3に垂直荷重と剪断荷重とを重畳して印加した場合の共振周波数変化率が、垂直荷重を印加した場合の共振周波数変化率と剪断荷重を印加した場合の共振周波数変化率との和にほぼ等しいことを確認するため、垂直荷重および剪断荷重を重畳して印加し、そのときの共振周波数を計測した。この結果を表2に示す。
【実施例】
【0057】
【表2】
JP0005544352B2_000009t.gif
【実施例】
【0058】
表2(a)は、片持ち梁構造体2が1次モードで共振している場合における、垂直荷重、剪断荷重と共振周波数との関係を示しており、表2(b)は、片持ち梁構造体2が2次モードで共振している場合における、垂直荷重、剪断荷重と共振周波数との関係を示している。例えば、表2(a)において、6kPaの垂直荷重Pと9kPaの剪断荷重Pとを重畳してエラストマー3に印加した場合、共振周波数は55.558kHzとなる。
【実施例】
【0059】
また、無荷重時の共振周波数に対する変化分Δfを表3に示す。
【実施例】
【0060】
【表3】
JP0005544352B2_000010t.gif
【実施例】
【0061】
表3(a)は、片持ち梁構造体2が1次モードで共振している場合における、垂直荷重・剪断荷重と共振周波数の無荷重時に対する変化分との関係を示しており、表3(b)は、片持ち梁構造体2が2次モードで共振している場合における、垂直荷重・剪断荷重と共振周波数の無荷重時に対する変化分との関係を示している。また、表3(a)および(b)において、垂直荷重P、剪断荷重Pのいずれもが、-9kPa、-6kPa、-3kPa、3kPa、6kPa及び9kPaである場合に対応する欄では、上段が、実際の計測値(表2)に基づく変化分を示しており、下段が、垂直荷重を印加した場合における変化分と剪断荷重を印加した場合における変化分との和を示している。
【実施例】
【0062】
表3から明らかなように、垂直荷重と剪断荷重とを重畳して印加したいずれの場合も、上段の数値と下段の数値との差は、0.000kHz~0.014kHzとごく僅かである。したがって、垂直荷重を印加した場合における変化分と剪断荷重を印加した場合における変化分との和は、垂直荷重と剪断荷重とを重畳して印加した場合における変化分にほぼ等しいことが分かる。したがって、上述した式(5)および式(6)が成り立つ。
【実施例】
【0063】
続いて、測定された共振周波数に基づき、式(7)から、印加された垂直荷重および剪断荷重の算出を行った。まず、数2の行列Aを求めるため、(垂直荷重P、剪断荷重P)が(9,0)、(-9,0)、(0,-9)および(0,9)の4パターンにおける共振周波数を、1次モード・2次モードの各モードについて計測した。この結果を表4に示す。
【実施例】
【0064】
【表4】
JP0005544352B2_000011t.gif
【実施例】
【0065】
これにより、1次モードにおける単位垂直荷重に対する共振周波数変化率a、1次モードにおける単位剪断荷重に対する共振周波数変化率b、2次モードにおける単位垂直荷重に対する共振周波数変化率c、2次モードにおける単位剪断荷重に対する共振周波数変化率dは、それぞれ式(1)~(4)を計算することにより、
【実施例】
【0066】
【表5】
JP0005544352B2_000012t.gif
となる。これにより、数2における行列Aは、
【数7】
JP0005544352B2_000013t.gif
【実施例】
【0067】
となる。したがって、行列Aの逆行列A-1を求めることにより、式(7)に基づいて、
垂直荷重Pと剪断荷重Pとを算出することができる。その算出結果を表6に示す。
【実施例】
【0068】
【表6】
JP0005544352B2_000014t.gif
【実施例】
【0069】
表6において、最上段の行は、実際に印加された剪断荷重Pを示しており、左端の列は、実際に印加された垂直荷重Pを示している。また、2つの数値が示されている欄では、上段が垂直荷重の算出値を示しており、下段が剪断荷重の算出値を示している。例えば、6kPaの垂直荷重と3kPaの剪断荷重とを重畳して印加した場合、垂直荷重の算出値は6.013kPaであり、剪断荷重の算出値は3.069kPaである。
【実施例】
【0070】
図6(a)は、実際の印加荷重と補正処理前の算出結果との関係を示すグラフである。図6(a)では、実際の印加荷重は・印でプロットされ、算出された推定荷重が+印でプロットされている。なお、算出式を求めるために参照した参照荷重は、○印でプロットされている。
【実施例】
【0071】
図6(a)から、補正処理前であっても、実際の印加荷重とそれに対応する推定荷重とは、ほぼ一致していることが分かる。これにより、本実施例では、触覚センサユニット1によって、エラストマー3に加えられた垂直荷重と剪断荷重とを個別に算出できることが確認できた。
【実施例】
【0072】
表7は、補正処理を行った結果を示す。参照荷重データはt=9、すなわち(垂直荷重P、剪断荷重P)=(-9、-9)、(-9、0)、(-9、9)、(0、9)、(9、9)、(9、0)、(9、-9)、(0、-9)の8点のデータである。
【実施例】
【0073】
【表7】
JP0005544352B2_000015t.gif
【実施例】
【0074】
表7において、最上段の行は、実際に印加された剪断荷重Pを示しており、左端の列は、実際に印加された垂直荷重Pを示している。また、2つの数値が示されている欄では、上段が補正処理後の垂直荷重の算出値を示しており、下段が補正処理後の剪断荷重の算出値を示している。例えば、6kPaの垂直荷重と3kPaの剪断荷重とを重畳して印加した場合、垂直荷重の算出値は5.970kPaであり、剪断荷重の算出値は3.112kPaである。表6と表7とを比較すると、軸上から離れた点での推定誤差が大きく改善されていることがわかる。補正処理前の算出方法では荷重ベクトルで最大15%以上の誤差が生じていたが、補正処理を適用することで、荷重ベクトルの最大誤差を2.6%程度まで低下させることができた。
【実施例】
【0075】
図6(b)は、実際の印加荷重と補正処理後の算出結果との関係を示すグラフである。図6(b)では、実際の印加荷重は・印でプロットされ、算出された推定荷重が+印でプロットされている。なお、算出式を求めるために参照した参照荷重は、○印でプロットされている。
【実施例】
【0076】
図6(b)から、補正処理によって、実際の印加荷重とそれに対応する算出荷重とは、補正処理前より、さらに精度が向上していることが理解し得る。
【産業上の利用可能性】
【0077】
本発明は、介護ロボットや産業用ロボットの他、スリップ検知機能付インテリジェントタイヤにも利用することができる。
【符号の説明】
【0078】
1 触覚センサユニット
2 片持ち梁構造体
2a PZT層(圧電体層)
2c Au層(電圧印加手段)
2d Pt/Ti層(電圧印加手段)
3 エラストマー(樹脂)
4 基板
5 演算部
51 電圧印加部(電圧印加手段)
52 共振周波数検出部(共振周波数検出手段)
53 荷重算出部(荷重算出手段)
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
5
【図7】
6
【図8】
7