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明細書 :3次元メタマテリアル

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第5581526号 (P5581526)
登録日 平成26年7月25日(2014.7.25)
発行日 平成26年9月3日(2014.9.3)
発明の名称または考案の名称 3次元メタマテリアル
国際特許分類 H01P   3/00        (2006.01)
FI H01P 3/00
請求項の数または発明の数 6
全頁数 25
出願番号 特願2011-518490 (P2011-518490)
出願日 平成22年6月3日(2010.6.3)
権利譲渡・実施許諾 特許権者において、権利譲渡・実施許諾の用意がある。
国際出願番号 PCT/JP2010/059437
国際公開番号 WO2010/140655
国際公開日 平成22年12月9日(2010.12.9)
優先権出願番号 2009136417
優先日 平成21年6月5日(2009.6.5)
優先権主張国 日本国(JP)
審査請求日 平成25年5月9日(2013.5.9)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】504255685
【氏名又は名称】国立大学法人京都工芸繊維大学
発明者または考案者 【氏名】上田 哲也
個別代理人の代理人 【識別番号】100101454、【弁理士】、【氏名又は名称】山田 卓二
【識別番号】100081422、【弁理士】、【氏名又は名称】田中 光雄
【識別番号】100125874、【弁理士】、【氏名又は名称】川端 純市
審査官 【審査官】岡 裕之
参考文献・文献 国際公開第2003/087904(WO,A1)
特開2006-114489(JP,A)
上田 哲也 他,誘電体共振器を用いた3次元積層型CRLHメタマテリアル,2011年電子情報通信学会エレクトロニクスソサイエティ大会講演論文集1,2011年 8月30日,pp.S-19,S-20,CS-2-2
上田 哲也 他,誘電体共振器からなる複合右手/左手系メタマテリアル構造の設計,2009年電子情報通信学会総合大会講演論文集 エレクトロニクス1,2009年 3月 4日,pp.S-23,S-24,CS-2-8
Tetsuya Ueda et al.,2.5-D stacked composite right/left-handed metamaterial structures using dielectric resonators and parallel mesh plates,Microwave Symposium Digest, 2008 IEEE MTT-S International,2008年 6月20日,pp.335-338
Tetsuya Ueda et al.,Composite Right/Left Handed Metamaterial Structures Composed of Dielectric Resonators and Parallel Mesh Plates ,Microwave Symposium, 2007. IEEE/MTT-S International,2007年 6月 8日,pp.1823-1826
調査した分野 H01P 3/00
IEEE Xplore
CiNii
特許請求の範囲 【請求項1】
所定の間隔で並置された複数個の誘電体共振器及びホスト媒質を含む誘電体層を、それぞれ複数の孔を有する1対の導電メッシュ板により挟設することにより、上記複数個の誘電体共振器を含む機能層を形成し、当該機能層を複数個積層して構成してなるメタマテリアルにおいて、
上記複数の孔の軸と上記複数個の誘電体共振器の軸とがそれぞれ互いに実質的に同軸となるように配置され、
上記複数の誘電体共振器に対して上記複数の孔を介して電磁波を上記積層面に対して実質的に垂直な方向で入射したときに、上記誘電体共振器が上記積層面に対して少なくとも平行な磁気双極子モーメントを有する共振状態となるという条件のもとでかつ所定の動作周波数において、上記複数の孔が負の実効誘電率及び正の実効透磁率を有するように、上記複数の孔のサイズが設定され、
上記条件のもとでかつ上記動作周波数において上記各誘電体層が正の実効誘電率及び負の実効透磁率を有するように、上記各誘電体共振器の形状、サイズ、比誘電率及び間隔と、上記ホスト媒質の比誘電率と、上記誘電体層の厚さとが設定され、
上記条件のもとでかつ上記動作周波数において当該メタマテリアルの実効誘電率及び実効透磁率がともに負となるように、上記各誘電体共振器の形状、サイズ、比誘電率及び間隔と、上記ホスト媒質の比誘電率と、上記誘電体層の厚さと、上記各導電メッシュ板の厚さとが設定され、
電磁波を上記各機能層において上記積層面に対して垂直な伝搬方向に伝搬させて、上記積層面に対して垂直な伝搬方向に対して左手系メタマテリアルとして動作させることを特徴とする3次元メタマテリアル。
【請求項2】
電体を、それぞれ孔を有する1対の導電メッシュ板により挟設することにより誘電体共振器を形成してなる単位セルを形成し、当該単位セルを複数個上記導電メッシュ板に平行な2次元方向に所定の間隔で並置しかつ上記各導電メッシュ板に垂直な方向で積層化して構成されたことを特徴とする請求項記載の3次元メタマテリアル。
【請求項3】
第1の誘電体基板に複数の孔を形成し、
上記第1の誘電体基板と同じ構成を有する複数の孔を有する第2の誘電体基板の複数の孔に上記誘電体を突出するように挿入充填し、
上記第1の誘電体基板の複数の孔にそれぞれ上記突出した誘電体を挿入充填するように、上記第1の誘電体基板と上記第2の誘電体基板とを嵌合させて上記1つの誘電体層を形成し、
当該形成した誘電体層を上記1対の導電メッシュ板で挟設して1つの機能層を形成し、
上記機能層を複数層積層することにより構成したことを特徴とする請求項記載の3次元メタマテリアル。
【請求項4】
上記各導電メッシュ板に垂直な方向での電磁波の伝搬方向に対して、当該3次元メタマテリアルの実効誘電率及び実効透磁率が零となる周波数を一致させるように設定することにより、平衡型右手/左手系メタマテリアルとして動作させることを特徴とする請求項1乃至のうちのいずれか1つに記載の3次元メタマテリアル。
【請求項5】
上記各導電メッシュ板に平行な方向に電磁波の偏波方向及び伝搬方向を有するように電磁波を入射させることにより、右手/左手系複合メタマテリアルを構成したことを特徴とする請求項1乃至のうちのいずれか1つに記載の3次元メタマテリアル。
【請求項6】
上記各誘電体層内の互いに隣接する複数の誘電体共振器が磁気的に結合するように、上記複数の誘電体共振器を近接して並置させることにより、上記各導電メッシュ板に平行な方向に電磁波の伝搬方向を有し、かつ上記各導電メッシュ板に対して垂直な方向に偏波を有するように電磁波を入射させる場合においても左手系メタマテリアルとして動作させたことを特徴とする請求項1乃至のうちのいずれか1つに記載の3次元メタマテリアル。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、電磁波の伝搬を許したり、阻止させたりする機能を有するメタマテリアル(人工構造体)装置(以下、メタマテリアルという。)に関し、特に、構造体の実効誘電率が正、負、零のいずれかであり、一方で、実効透磁率が正、負、零のいずれかの値を取る3次元右手系及び左手系複合メタマテリアルに関する。以下、右手系及び左手系を「右手/左手系」という。
【背景技術】
【0002】
メタマテリアルの構造は、マイクロ波回路、そのコンポーネント及びアンテナ、並びに平板スーパーレンズ、波長以下の分解能を有する近傍界イメージング、クローキング技術等のような光学的デバイス及びそのコンポーネントへのアプリケーション用に研究されてきている。左手系メタマテリアルは、負の実効誘電率及び負の実効透磁率を同時に有し、かつバックワード波の伝搬を可能にする。マイクロ波回路又はアンテナのアプリケーションの大部分は、1次元又は2次元の左手系メタマテリアル構造に基づいている。最近では、スプリットリング共振器と細線との組合せ、伝送線路ネットワーク及び誘電体球を用いる異方性/等方性の左手系構造も提案されている。
【0003】
メタマテリアルの構造において、右手系というのは、電磁波の電界ベクトル、磁界ベクトル、波数ベクトルが右手系をなす方向関係を有する電磁波の伝搬状態を指し、電磁波の伝送電力の方向(群速度の向き)と、位相面の流れの向き(位相速度の向き)が同方向となるフォワード波(前進波)の伝搬状態を指す。この状態は、実効誘電率及び実効透磁率がともに正の値を持つ媒質及び構造体において可能となる。
【0004】
また、メタマテリアルの構造において、左手系というのは、電界ベクトル、磁界ベクトル、波数ベクトルが左手系をなす関係を有する電磁波の伝搬状態を指し、電磁波の伝送電力の方向と、位相面の流れの向きが反対となるバックワード波(後進波)の伝搬状態を指す。この状態は、実効誘電率及び実効透磁率がともに負の値を持つ媒質及び構造体において可能となる。
【0005】
メタマテリアルの構成方法はいくつか提案されているが、代表例として、共振型メタマテリアルと伝送線路(非共振)型メタマテリアルの2つが挙げられる。
【0006】
前者の共振型メタマテリアルは、金属ストリップからなるスプリットリング共振器と細線の組合せに代表されるように、外部電磁界の磁界及び電界成分によって応答する磁気的及び電気的共振器の組合せからなる。この構造は、実効誘電率あるいは実効透磁率が反共振特性を示すので、共振周波数付近において損失の影響が非常に大きくなる。
【0007】
一方、後者の伝送線路型メタマテリアルは、一般的な電磁波の伝搬形態が伝送線路モデルで記述できることを用いて構造体が構成されており、フォワード波伝搬を許す従来の一次元右手系メタマテリアル構造は、直列枝に誘導性素子が、並列枝(シャント枝)に容量性素子が挿入された梯子型構造を取るのに対して、一次元左手系メタマテリアル構造は、実効誘電率及び実効透磁率の値を負にするために、直列枝に容量性素子が、並列枝に誘導性素子が挿入された構造となる。この伝送線路型メタマテリアルの多くは、実効誘電率及び透磁率において反共振特性を示さないため、上記の共振型に比べて低損失となる特長がある。伝送線路型メタマテリアルにおいては、動作周波数帯域により、右手系メタマテリアル、左手系メタマテリアル、誘電率あるいは透磁率のどちらか一方が負で他方が正となるシングルネガティブメタマテリアル、実効誘電率あるいは透磁率が零のメタマテリアルとして動作することから、右手/左手系複合メタマテリアルと呼ばれる。
【0008】
右手/左手系複合メタマテリアルの実効誘電率及び実効透磁率が零の値を取る周波数は、一般に異なる。その場合、隣接する実効誘電率が零の周波数と実効透磁率が零となる周波数の間の帯域は、実効誘電率あるいは実効透磁率のどちらか一方のみが負で、他方が正の値を取る。このとき電磁波の伝搬条件を満たさず、禁止帯が形成される。この禁止帯の下側の帯域では、実効誘電率及び実効透磁率がともに負であるので左手系メタマテリアルとして、上側の帯域ではともに正の値となり右手系メタマテリアルとして動作する。実効誘電率と実効透磁率が零となる周波数が一致する場合、禁止帯が形成されず、左手系伝送帯域と右手系伝送帯域が連続的に接続される。このようなメタマテリアルを平衡型右手/左手系複合メタマテリアルといい、そうでないものを非平衡型右手/左手系複合メタマテリアルと呼ぶ。平衡型右手/左手系複合メタマテリアルは、禁止帯を生じないばかりでなく、位相定数が零となる周波数においても、群速度が零とならず、効率良い電力伝送が可能という特長を持つ。
【先行技術文献】
【0009】

【特許文献1】特許第3928055号。
【特許文献2】特開2008-252293号公報。
【特許文献3】特開2008-244683号公報。
【特許文献4】特開2006-114489号公報。
【特許文献5】特表2008-507733号公報。
【特許文献6】特表2008-503776号公報。
【0010】

【非特許文献1】T. Koschny et al., "Isotropic three-dimensional left-handed metamaterials", Physical Review B, Vol. 71, pp. 121103-1-121103-4, March 2005.
【非特許文献2】A. Grbic et al., "An isotropic three-dimensional negative-refractive-index transmission line metamaterial", Journal of Applied Physics,Vol. 98, pp. 043106-1-043106-5, August 2005.
【非特許文献3】P. Alitalo et al., "Three-dimensional isotropic perfect lens based on LC-loaded transmission lines", Journal of Applied Physics, Vol. 99, pp. 064912-1-064912-8, March. 2006.
【非特許文献4】M. Zedler et al., "A 3-D isotropic left-handed metamaterial based on the rotated transmission-line matrix (TLM) scheme", IEEE Transactions on Microwave Theory and Techniques, Vol. 55, No. 12, pp. 2930-2941, December 2007.
【非特許文献5】C. L. Holloway et al., "A double negative (DNG) composite medium composed of magneto-dielectric spherical particles embedded in a matrix", IEEE Transactions on Antennas and Propagation, Vol. 51, No. 10, pp. 2596-2601, October 2003.
【非特許文献6】O. G. Vendik et al., "Artificial double negative (DNG) media composed by two different dielectric sphere lattices embedded in a dielectric matrix", in Proceedings of Europe Microwave Conference, pp. 1209-1212, October 2004.
【非特許文献7】L. Jylha et al., "Modeling of isotropic backward-wave materials composed of resonant spheres", Journal of Applied Physics, Vol. 99, 043102, February 2006.
【非特許文献8】E. A. Semouchkina et al., "FDTD study of resonance processes in metamaterials", IEEE Transactions on Microwave Theory Technology, Vol. 53, No. 4, pp. 1477-1486, April 2005.
【非特許文献9】T. Ueda et al., "Three-dimensional negative-refractive-indexmetamaterials composed of spherical dielectric resonators", URSI National Radio Science 2006 Meeting, p. 51, January 2006.
【非特許文献10】T. Ueda et al., "Dielectric-resonator-based composite right/left handed transmission lines and their application to leaky wave antenna", IEEE Transactions on Microwave Theory and Techniques, Vol. 56, No. 10, pp. 2259-2269, October 2008.
【非特許文献11】T. Ueda et al., "2.5-D stacked composite right/left handed metamaterial structures using dielectric resonators and parallel mesh plates", in IEEE MTT-S International Microwave Symposium Digest, pp. 335-338, June 2008.
【非特許文献12】L. Lewin, "The electrical constants of a material loaded with spherical particles", Proceedings of Institute Electrical Engineering, Vol. 94, Part III, pp. 65-68, 1947.
【非特許文献13】R. Marques et al., "Left handed media simulation and transmission of EM waves in sub-wavelength SRR-loaded metallic waveguides", Physical Review. Letters, The American Physical Society, Vol. 89, No. 18, 183901-1-4, October 2002.
【非特許文献14】J. B. Pendry, "Negative Refraction makes a perfect lens", Physical Review. Letters, The American Physical Society, Vol. 85, No. 18, pp. 3966-3969, October 2000.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
左手系メタマテリアルの3次元構造として、動作可能な構成方法が既に以下のいくつか提案されている。
(1)スプリットリング共振器と金属細線からなる3次元構造体、あるいは同じアイデアに基く類似構造(例えば、非特許文献1参照。)。
(2)伝送線路を3次元的に配置接続した網目状構造例えば、非特許文献2,3参照。)。
(3)上記(2)の構造と類似していて、3次元等価回路網法(3-DTLM(Three-Dimensional Transmission Line Method))に基いて提案されているが、マッシュルーム構造(通常は2次元構造を有する。)の3次元化構造(例えば、非特許文献4参照。)。
(4)2種類の誘電体球を組み合わせたアモルファス構造(例えば、非特許文献5,6,7参照。)。
【0012】
上記(1)のメタマテリアル構造は、共振型であり、上述したように伝搬損失が大きい。また、上記(2)及び(3)のメタマテリアル構造は伝送線路型で、共振型に比べて低損失であるが、いずれも集中定数あるいは分布定数型の誘導性素子及び容量性素子を、複雑な網目構造の所定の枝に配置する必要があり、製作上大きな困難を伴う。さらに、(4)のメタマテリアル構造では、電気的及び磁気的に応答する2種類の共振器をほぼ同じ動作周波数となるよう設定して、ある密度でアモルファス状に球を分布させた場合に、実効誘電率及び実効透磁率が同じ周波数帯で負となるよう構造パラメータを調整する必要があるという問題点があった。
【0013】
より高い周波数における導体損失を低減する目的で、誘電体共振器を用いる左手系メタマテリアルは2種類の誘電体共振器(例えば、非特許文献5,6,7参照)及び1種類の誘電体共振器とその相互結合を用いた構成(例えば、非特許文献8,9参照)等の様々な構成で提案されている。しかしながら、これらの構成方法は構成パラメータの変動に対して極めて敏感である。代案として、本発明者は、負の誘電率を持つ背景媒質(あるいは背景構造)に1種類の誘電体共振器を配置する構成を提案した。これは、マイクロ波領域においては,TEカットオフ平行板導波路内に挿入された基本TE共振モードの誘電体共振器の1次元又は2次元アレイから構成される。
【0014】
さらに、本発明者らは、上述の1種類の誘電体共振器並びにメッシュ板からなる1次元、2次元及び積層型2.5次元平衡型複合右手/左手系メタマテリアルの構造を提案し、アンテナなどの放射系及び電力分配器などの結合系に関して新規アプリケーションの機会を提供した(例えば、非特許文献10,11参照。)。しかしながら、2.5次元積層構造をもってしても、サポートされる複合右手/左手系伝送は層に平行する平面内の伝送方向に限定され、垂直方向に関してはサポートされないという問題点があった。
【0015】
本発明の目的は以上の問題点を解決し、従来技術に比較して小さい伝搬損失を有しかつ製作が極めて容易であって、電磁波を各機能層において積層面に対して垂直な伝搬方向に伝搬させて、上記積層面に対して垂直な伝搬方向に対して左手系メタマテリアルとして動作させることできる3次元メタマテリアルを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明に係る3次元メタマテリアルは、所定の間隔で並置された複数個の誘電体及びホスト媒質を含む誘電体層を、それぞれ複数の孔を有する1対の導電メッシュ板により挟設することにより、上記複数の誘電体に対応する複数個の誘電体共振器を含む機能層を形成し、当該機能層を複数個積層して構成してなるメタマテリアルにおいて、
上記複数の孔の軸と上記複数個の誘電体共振器の軸とがそれぞれ互いに同軸となるように配置され、
電磁波を上記各機能層において上記積層面に対して垂直な伝搬方向に伝搬させて、上記積層面に対して垂直な伝搬方向に対して左手系メタマテリアルとして動作させることを特徴とする。
【0017】
上記3次元メタマテリアルにおいて、上記複数の誘電体共振器に対して上記複数の孔を介して電磁波を上記積層面に対して実質的に垂直な方向で入射したときに、上記誘電体が上記積層面に対して少なくとも平行な磁気双極子モーメントを有する共振状態となるという条件のもとでかつ所定の動作周波数において、上記複数の孔が負の実効誘電率及び正の実効透磁率を有するように、上記複数の孔のサイズが設定され、
上記条件のもとでかつ上記動作周波数において上記各誘電体層が正の実効誘電率及び負の実効透磁率を有するように、上記各誘電体共振器の形状、サイズ、比誘電率及び間隔と、上記ホスト媒質の比誘電率と、上記誘電体層の厚さとが設定され、
上記条件のもとでかつ上記動作周波数において当該メタマテリアルの実効誘電率及び実効透磁率がともに負となるように、上記各誘電体共振器の形状、サイズ、比誘電率及び間隔と、上記ホスト媒質の比誘電率と、上記誘電体層の厚さと、上記各導電メッシュ板の厚さとが設定されたことを特徴とする。
【0018】
また、上記3次元メタマテリアルにおいて、上記誘電体を、それぞれ孔を有する1対の導電メッシュ板により挟設することにより誘電体共振器を形成してなる単位セルを形成し、当該単位セルを複数個上記導電メッシュ板に平行な2次元方向に所定の間隔で並置しかつ上記各導電メッシュ板に垂直な方向で積層化して構成されたことを特徴とする。
【0019】
さらに、上記3次元メタマテリアルにおいて、第1の誘電体基板に複数の孔を形成し、
上記第1の誘電体基板と同じ構成を有する複数の孔を有する第2の誘電体基板の複数の孔に上記誘電体を突出するように挿入充填し、
上記第1の誘電体基板の複数の孔にそれぞれ上記突出した誘電体を挿入充填するように、上記第1の誘電体基板と上記第2の誘電体基板とを嵌合させて上記1つの誘電体層を形成し、
当該形成した誘電体層を上記1対の導電メッシュ板で挟設して1つの機能層を形成し、
上記機能層を複数層積層することにより構成したことを特徴とする。
【0020】
またさらに、上記3次元メタマテリアルにおいて、上記各導電メッシュ板に垂直な方向での電磁波の伝搬方向に対して、当該3次元メタマテリアルの実効誘電率及び実効透磁率が零となる周波数を一致させるように設定することにより、平衡型右手/左手系メタマテリアルとして動作させることを特徴とする。
【0021】
また、上記3次元メタマテリアルにおいて、上記各導電メッシュ板に平行な方向に電磁波の偏波方向及び伝搬方向を有するように電磁波を入射させることにより、右手/左手系複合メタマテリアルを構成したことを特徴とする。
【0022】
さらに、上記3次元メタマテリアルにおいて、上記各誘電体層内の互いに隣接する複数の誘電体が磁気的に結合するように、上記複数の誘電体を近接して並置させることにより、上記各導電メッシュ板に平行な方向に電磁波の伝搬方向を有し、かつ上記各導電メッシュ板に対して垂直な方向に偏波を有するように電磁波を入射させる場合においても左手系メタマテリアルとして動作させたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0023】
本発明に係る3次元メタマテリアルによれば、従来技術に比較して小さい伝搬損失を有しかつ製作が極めて容易であって、電磁波を各機能層において積層面に対して垂直な伝搬方向に伝搬させて、上記積層面に対して垂直な伝搬方向に対して左手系メタマテリアルとして動作させることができる3次元メタマテリアルを構成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明の一実施形態に係る3次元右手/左手系複合メタマテリアルの構造を示す斜視図である。
【図2】図1の3次元右手/左手系複合メタマテリアルの単位セルの構造を示す斜視図である。
【図3A】異なった伝搬ケースにおいて提案する図2の右手/左手系複合メタマテリアルの単位セルの等価回路モデルを示す回路図であり、誘電体共振器20RのHE11δ共振モードを用いた積層された複数の層に対して垂直なz方向の伝搬の第1のケースにおいて提案する右手/左手系複合メタマテリアルの単位セルの等価回路モデルを示す回路図である。
【図3B】異なった伝搬ケースにおいて提案する図2の右手/左手系複合メタマテリアルの単位セルの等価回路モデルを示す回路図であり、誘電体共振器20RのTE01δ共振モードを用いたy偏波のx方向伝搬の第2のケースにおいて提案する右手/左手系複合メタマテリアルの単位セルの等価回路モデルを示す回路図である。
【図3C】異なった伝搬ケースにおいて提案する図2の右手/左手系複合メタマテリアルの単位セルの等価回路モデルを示す回路図であり、誘電体共振器20RのHE11δ共振モードを用いたz偏波の面内伝搬の第3のケースにおいて提案する右手/左手系複合メタマテリアルの単位セルの等価回路モデルを示す回路図である。
【図4】図3Aの第1のケースにおける、入力電界ベクトルEと、共振器内の励起磁界ベクトルHを含む磁界分布とを示す単位セル10の模式縦断面図である。
【図5】図3Bの第2のケースにおける、入力電界ベクトルEと、共振器内の励起磁界ベクトルHを含む磁界分布とを示す単位セル10の模式縦断面図である。
【図6】図3Cの第3のケースにおける、入力電界ベクトルEと、共振器内の励起磁界ベクトルHを含む磁界分布とを示す単位セル10の模式縦断面図である。
【図7A】図2の3次元平衡型右手/左手系複合メタマテリアルの単位セル10において誘電体層13の高さd=6mm、導電メッシュ板11の厚さt=0.5mm、1辺の長さp=8mm、導電メッシュ穴12の半径r=2.1mmの場合の分散周波数特性を示すグラフである。
【図7B】図2の3次元平衡型右手/左手系複合メタマテリアルの単位セル10において誘電体層13の高さd=6mm、導電メッシュ板11の厚さt=0.5mm、1辺の長さp=9mm、導電メッシュ穴12の半径r=2.6mmの場合の分散周波数特性を示すグラフである。
【図7C】図2の3次元平衡型右手/左手系複合メタマテリアルの単位セル10において誘電体層13の高さd=6mm、導電メッシュ板11の厚さt=0.5mm、1辺の長さp=11mm、導電メッシュ穴12の半径r=3.15mmの場合の分散周波数特性を示すグラフである。
【図8】図2の3次元平衡型右手/左手系複合メタマテリアルの単位セル10の直列枝素子及び並列枝素子とを示す対称π型等価回路の回路図である。
【図9A】図2の単位セル10の対称π型等価回路において1辺の長さp=9mm、誘電体層13の高さd=6mm、導電メッシュ板11の厚さt=0.5mm、導電メッシュ穴12の半径r=2.6mmの場合であって積層化された複数の層に対して垂直なz方向での伝搬における直列枝素子(実効インダクタンスLeff)及び並列枝素子(実効キャパシタンスCeff/2)の規格化値を示すグラフである。
【図9B】図2の単位セル10の対称π型等価回路において1辺の長さp=9mm、誘電体層13の高さd=6mm、導電メッシュ板11の厚さt=0.5mm、導電メッシュ穴12の半径r=2.6mmの場合であってy偏波のx方向伝搬における直列枝素子(実効インダクタンスLeff)及び並列枝素子(実効キャパシタンスCeff/2)の規格化値を示すグラフである。
【図9C】図2の単位セル10の対称π型等価回路において1辺の長さp=9mm、誘電体層13の高さd=6mm、導電メッシュ板11の厚さt=0.5mm、導電メッシュ穴12の半径r=2.6mmの場合であってz偏波の面内伝搬における直列枝素子(実効インダクタンスLeff)及び並列枝素子(実効キャパシタンスCeff/2)の規格化値を示すグラフである。
【図10A】図2の単位セル10において1辺の長さp=9mm、誘電体層13の高さd=6mm、導電メッシュ板11の厚さt=0.5mm、導電メッシュ穴12の半径r=2.6mmの場合に対してシミュレーションされたSパラメータによって抽出された分散周波数特性を示すグラフである。
【図10B】図2の単位セル10において1辺の長さp=9mm、誘電体層13の高さd=6mm、導電メッシュ板11の厚さt=0.5mm、導電メッシュ穴12の半径r=2.6mmの場合に対してシミュレーションされたSパラメータによって抽出されたブロッホインピーダンスの周波数特性を示すグラフである。
【図11】図2の単位セル10において1辺の長さp=9mm、誘電体層13の高さd=6mm、導電メッシュ板11の厚さt=1.0mm、導電メッシュ穴12の半径r=2.95mmの場合に対してシミュレーションされたSパラメータによって抽出されたブロッホインピーダンスの周波数特性を示すグラフである。
【図12】本発明の実施例2(変形例)に係る、球誘電体21を用いた3次元右手/左手系複合メタマテリアルの単位セル10aの構造を示す斜視図である。
【図13】図12の単位セル10aにおいて球誘電体21の比誘電率εDR=38、誘電体媒質22の比誘電率εBG=2.2、球誘電体21の直径a=4.8mm、1辺の長さp=7mm、誘電体層13の高さd=6mm、導電メッシュ板11の厚さt=9.0μm、正方形孔12の1辺の長さw=2.6mmの場合に対してシミュレーションされたSパラメータによって抽出された面内伝搬の分散周波数特性を示すグラフである。
【図14】図12の単位セル10aにおいて球誘電体21の比誘電率εDR=38、誘電体媒質22の比誘電率εBG=2.2、球誘電体21の直径a=4.8mm、1辺の長さp=7mm、誘電体層13の高さd=6mm、導電メッシュ板11の厚さt=9.0μm、正方形孔12の1辺の長さw=2.6mmの場合に対してシミュレーションされたSパラメータによって抽出された導電メッシュ板11に対して垂直な方向の伝搬の分散周波数特性を示すグラフである。
【図15】図14のときの単位セル10aにおける磁界ベクトルH及び波数ベクトルWnvを示す模式斜視図である。
【図16】図2の単位セル10において1辺の長さp=9mm、円柱誘電体20の比誘電率εDR=37.5、誘電体層13の高さd=6mm、導電メッシュ板11の厚さt=1.0mm、導電メッシュ穴12の半径r=2.75mmの場合に対してシミュレーションされたSパラメータによって抽出された分散周波数特性を示すグラフである。
【図17A】図1の3次元右手/左手系複合メタマテリアルを用いてレンズを試作したとき部品のうちの導体メッシュ板11の平面図である。
【図17B】図1の3次元右手/左手系複合メタマテリアルを用いてレンズを試作したとき部品のうちの第1の誘電体層13aの平面図である。
【図17C】図1の3次元右手/左手系複合メタマテリアルを用いてレンズを試作したとき部品のうちの第2の誘電体層13bの平面図である。
【図18】図1の3次元右手/左手系複合メタマテリアルを用いたレンズを介して電磁界パターンを測定するための計測システムの構成を示す模式平面図である。
【図19】図18の計測システムの構成を示す模式側面図である。
【図20】図18及び図19に図示された計測システムにおいて、x-z平面において3次元フラット負屈折率を有するレンズから出力された周波数10.46GHzの電磁波の磁界分布の大きさのプロファイルを示す分布図である。
【図21A】図18及び図19に図示された計測システムにおいて、y-z平面においてレンズから出力された周波数10.46GHzの電磁波の磁界分布の大きさを示す分布図である。
【図21B】図18及び図19に図示された計測システムにおいて、y-z平面においてレンズから出力された周波数10.46GHzの電磁波の磁界分布の位相を示す分布図である。
【図22A】本実施形態の3次元右手/左手系複合メタマテリアルにおいて、波数ベクトルのx成分とy成分との関係を示す図である。
【図22B】本実施形態の3次元右手/左手系複合メタマテリアルにおいて波数ベクトルのx成分とz成分との関係を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明に係る実施形態について図面を参照して説明する。なお、以下の各実施形態において、同様の構成要素については同一の符号を付している。

【0026】
実施形態.
図1は本発明の一実施形態に係る3次元右手/左手系複合メタマテリアルの構造を示す斜視図である。また、図2は図1の3次元右手/左手系複合メタマテリアルの単位セルの構造を示す斜視図である。

【0027】
上述の従来技術における問題点を解決するために、本発明に係る実施形態では、左手系のみならず右手系メタマテリアルも含めた、右手/左手系複合メタマテリアルの3次元構造を実現するために、製造方法として比較的容易な積層構造を採用する。具体的には、図1に示すように、例えば円柱誘電体20にてなる複数の誘電体共振器20Rを含む誘電体層13と、金属にてなる導電メッシュ板11の層が交互に重なった積層構造を有する。すなわち、当該複合メタマテリアルは、複数個の円柱誘電体20を含む誘電体層13を、それぞれ複数の円形孔12を有する1対の導電メッシュ板11により挟設することにより複数個の誘電体共振器20Rを含む機能層として形成し、当該機能層を複数個積層して構成してなる。ここで、特に、誘電体20を、それぞれ円形孔12を有する1対の導電メッシュ板11により挟設することにより誘電体共振器20Rを形成してなる図2の単位セル10を形成し、当該単位セル10を上記導電メッシュ板11に平行な2次元方向に所定の間隔で並置しかつ上記各導電メッシュ板11に垂直な方向で積層化して構成されたことを特徴としている。ここで、円形孔12,12の中心軸を円柱誘電体20の軸とを一致又は実質的に一致させているが、本発明はこれに限らず、一致させなくてもよい。

【0028】
既提案の構造との比較.
複数の誘電体共振器20Rを含む誘電体層13と導電メッシュ板11の層からなる積層型メタマテリアル構造に関する報告は、既に本発明者によりなされている(例えば、非特許文献11参照。)。当該既提案の構造と、本発明に係る実施形態との比較のため、既提案の構造の説明を以下に行う。

【0029】
既提案の構造は共振型メタマテリアルの1つであり、実効透磁率の操作として、誘電体共振器の2次元配置を採用している。つまり磁気共振器として、金属からなるスプリットリング共振器の代わりに誘電体共振器を用いて、実効透磁率が所望の正、零又は負の値を取るように構成される。但し、誘電体共振器の共振形態は限定されており、積層構造に平行な面内に電気力線の渦を形成し、それに対して垂直な方向に対称軸を持つ磁気双極子と類似した電磁界分布を持つ。また、実効誘電率を操作するため、隣り合う2枚の金属メッシュ板を平行平板線路として用いている。つまり、平行平板に沿って伝搬するTEモード(電界ベクトルが平行平板に平行な伝搬モード)がカットオフ周波数より低い周波数領域において、実効誘電率が負となることを利用し、当該カットオフ周波数よりも高い帯域での動作も含めて、実効誘電率が所望の正、零又は負の値を取るように構成する。メッシュ孔は、積層構造に平行な伝搬の場合の実効誘電率調整の際の設計の自由度を増やすために設けられていた。誘電体共振器を用いたこの積層型メタマテリアルは、メッシュ部分に金属材料を用いてはいるものの、反共振を引き起こす共振器部分に金属を用いていないために、伝搬損を比較的低く抑えることが可能となる。しかも、実効誘電率及び実効透磁率が零となる周波数を一致させた平衡型右手/左手系複合メタマテリアルの構成も可能である。しかしながら、上記の右手/左手系複合メタマテリアルとしての動作は、偏波(電界ベクトル)方向及び伝搬方向がともに積層面に平行となる場合に対してのみ動作可能で、伝搬方向の自由度が2次元であることから、2次元構造である。一方で、積層構造に対して垂直方向の伝搬特性を含めた3次元構造化は実現されていなかった。

【0030】
これに対して、本発明に係る実施形態では、電磁波が積層構造に対して平行方向のみならず、垂直方向に伝搬する場合においても、右手/左手系複合メタマテリアルとして動作させるためには、上記の積層構造に対して、以下の2つの条件をさらに課す必要がある。1つは誘電体共振器20Rの動作に関して、もう1つは導電メッシュ板11に関するものである。

【0031】
3次元メタマテリアルとして動作する場合の誘電体共振器20Rの条件としては、積層された導電メッシュ板11の垂直方向に対称軸のある磁気双極子モーメントと類似した電磁界分布をもつ第1の共振形態と、積層面に対してほぼ平行な方向(自由度2)に対称軸をもつ磁気双極子モーメントと類似した電磁界成分を持つ第2及び第3の共振形態がいずれも、ほぼ同じ共振周波数を取る(異なる3つの共振モード1、2、及び3をほぼ縮退させる)ことである。その結果、上記で設定された共振周波数付近の動作周波数を持つ外部電磁波が誘電体共振器20Rに入射されると、入射波磁界ベクトルの向きに関係なく、誘電体共振器20Rは共振状態もしくはそれに近い電磁界分布を取る状態となる。またその共振時における誘電体共振器20R内外の電磁界分布は、入射波磁界ベクトル成分の方向に応じて、ほぼ縮退した3つの共振モードのいずれかあるいはそれらの組合せ(線形和)として表される。以上の条件を以下、構成条件という。

【0032】
ここで、磁気双極子モーメントと類似した電磁界分布とは、誘電体共振器20R内でかつ、ある軸に対して垂直な面内において、電気力線が閉じた同心状の渦を形成し、一方、磁力線は誘電体共振器20Rの中心付近では、ほぼその軸に沿った方向を向き、かつ磁力線は誘電体共振器20R外部にも広がって閉曲線を形成している状態のことを指す。一般に磁力線はソレノイダルである(必ず閉じている)ので、この場合、磁力線は誘電体共振器20R外部に大きく広がった分布をなす。誘電体共振器20R内部では磁気エネルギーに比べて電気的エネルギーの方がより多く蓄えられるが、一方で、誘電体共振器20R外部では、電界により蓄えられるエネルギーよりも磁界により蓄えられるエネルギーの方が大きくなり、誘電体共振器20Rと外部の電磁界との結合は磁気結合が支配的となる。円柱型誘電体共振器20Rの場合、(1)TE01δ共振モード及びその動作周波数近傍おいて、円柱の対称軸に平行な磁気双極子モーメントと類似した電磁界分布をなす。(2)HE11δ共振モード及びその動作周波数近傍において、円柱の側面に垂直な方向に磁気双極子モーメントと類似した電磁界分布をなす。この場合、円柱の側面に垂直な方向の取り方は自由度が2であるので、ここでは2つの共振状態が縮退していると見なす。上記(1)及び(2)の共振周波数が同じ場合、空間的に独立して異なる3方向に平行な方向関係にある磁気双極子モーメントと類似した電磁界分布を同じ動作周波数で動作させることが可能となる。

【0033】
なお、変形例に係る球形の誘電体共振器21Rの場合(図12乃至図16を参照して後述する。)、誘電体共振器21R内の誘電率が外部のそれに比べて充分大きい仮定のもとで、境界で磁気壁(磁界の接線成分が零)を仮定して共振モードが近似的に計算される。このように簡単化されたモデルにおいてTE011共振モードの電磁界分布が上記の場合に該当する。

【0034】
積層構造に垂直な伝搬方向に対して、右手/左手系複合メタマテリアルとして動作させるために、導電メッシュ板11における円形孔12を、金属カットオフ導波管として用いる。導電メッシュ板11に対して垂直方向に伝搬する電磁波は、円形孔12の内側の領域において、カットオフ周波数以下では負の誘電率をもち、当該カットオフ周波数よりも高い領域では正の実効誘電率を持つ。一方で、実効透磁率は正のままである。

【0035】
ここで、各誘電体共振器20Rは上記の構成条件を満たすように構成すれば良いので、具体的形状は特に定まっていないが、誘電体20の形状としては、単純なものとして球、円柱、立方体、四角柱が挙げられる。また、それ以外に回転楕円体、三角柱、五角柱、多角柱その他、多少の変形を施したものも対象とする。誘電体共振器20Rは、それを囲むホスト媒質(もしくは空気)に比べて非常に高い誘電率をもち、単一材料の場合だけでなく、複数の材料を組み合わせた場合においても対象とする。一方で、誘電体20の周りの誘電体媒質22は中空でもよいし、誘電体共振器20Rの誘電体20の誘電率よりも十分に小さい誘電率を有する誘電体で充填してもよい。

【0036】
積層構造に垂直な伝搬方向に対して、右手/左手系複合メタマテリアルとして動作させるためには、誘電体層13に含まれる誘電体共振器20Rに対して入射波の磁界ベクトルが、積層面に平行な磁気双極子モーメントと類似した電磁界成分を持つ共振状態を励起させる必要がある。その結果、誘電体層13領域内において、実効透磁率は、動作周波数により、正、零又は負の値を取りうる。一方、実効誘電率は、誘電体共振器の挿入により増加するものの、正の値を取る。

【0037】
そして、積層構造に垂直な伝搬方向に対して、特に左手系メタマテリアルとして動作させるためには、ある所定の動作周波数において、上述のように円形孔12領域部分が負誘電率及び正透磁率を有するように構成し、かつ上述のように誘電体層13領域部分が正誘電率及び負透磁率となるように構成する必要がある。しかもそれらが積層された全体構造の実効誘電率及び透磁率がともに負となるように各領域のサイズを設定する必要がある。

【0038】
さらに、積層構造に垂直な伝搬方向に対して、全体構造の実効誘電率及び透磁率が零となる周波数は、一般に異なるが、一致させることにより、平衡型右手/左手系メタマテリアルとして動作させることも可能である。

【0039】
またさらに、電磁波が積層構造に平行な方向に偏波方向及び伝搬方向をもつ場合、既に提案された構造体と同じ原理に基き、右手/左手系複合メタマテリアルが構成できる。

【0040】
電磁波が積層構造に平行な面内に伝搬方向をもつものの、偏波方向が層に垂直な方向を向く場合、導電メッシュ板11によるTEモードカットオフの動作を用いることができないため、左手系メタマテリアルとして動作させるためには、負の実効誘電率を別の方法で実現する必要がある。1つの方法としては、誘電体共振器20R間の磁気結合を利用することが考えられる。誘電体共振器20R間の磁気相互結合は、伝送線路モデルで表すと、並列枝部分に誘導性素子のみが挿入された形を取るので、常に負の値となり、右手系メタマテリアルとして動作しない。これについては、図3A、図3B及び図3Cを参照して詳述する。

【0041】
次いで、本実施形態に係る、導電メッシュ板11と誘電体共振器20Rの2次元アレイを有する誘電体層13を厚さ方向に積層して構成される異方性3次元右手/左手系複合メタマテリアルの構造について以下に説明する。

【0042】
本実施形態において、積層面に対して垂直な偏波を持つ電磁波の面内伝搬の場合を含む。各事例の回路パラメータを、その散乱パラメータから抽出し、固有モード解との比較を行うと共に、物理的観点から等価回路モデルと比較する。さらに、負屈折率レンズを通過した電磁波のビーム収束についても、入力波源として時間的に変化する磁気ダイポールを得るためにループアンテナを用い,その軸に平行な面内だけでなく、垂直な方向を含む平面内においても実験により検証した。

【0043】
まず、3次元右手/左手系複合メタマテリアルの幾何学的構造について以下に説明する。提案する3次元右手/左手系複合メタマテリアルの構造の幾何学的構造、及びシステムの座標を図1及び図2に示す。本構造は、基本的には既に提案されている積層型メタマテリアル(例えば、非特許文献11参照。)と類似していて、図1に示すように、導電メッシュ板11と、円柱誘電体20にてなる誘電体共振器20Rの2次元アレイを含む誘電体層とで構成される多層構造体である。図2に示す単位セル10は、厚さtを有する1対の互いに平行な導電メッシュ板11と、厚さd及び比誘電率εBGを有する誘電体媒質22(円柱誘電体20の周りの誘電体媒質をいう。)からなる誘電体層13と、比誘電率εDR、直径a及び高さhを有する円柱誘電体20の誘電体共振器20Rとから構成される。円柱誘電体20は単位セル10の中心に置かれ、その軸は導電メッシュ板11に対して垂直である。導電メッシュ板11における半径rを有する開放された円形孔12の中心は、円柱誘電体20の中心軸に一致し又は実質的に一致する。導電メッシュ板11における単位セル10の断面は本実施形態において正方形であり、1辺の長さはpである。導電メッシュ板11の円形孔12は中空であって空気で充填される。

【0044】
次いで、基本動作と等価回路モデルについて以下に説明する。本回路設計の基本的概念は、右手/左手系複合伝送線路を基礎とする。本発明の焦点は、関心の対象である構造の実効誘電率及び透磁率の設計にあり、これにより、伝搬波が所望の位相特性を持つように適切な構成がもたらされる。本実施形態では、3次元構造を扱うことから、伝搬特性に対する入射波の偏波及び伝搬方向の依存性について考慮する必要がある。図1及び図2に示す提案している幾何学的構造から容易に予測されるように、本構造内の波動は本質的に異方性である特性を有する。先の研究(例えば、非特許文献11参照。)では、偏波及び伝搬方向が導電メッシュ板11に平行な2次元領域内での伝搬に制限される場合に、所定の周波数領域においてほぼ等方性である特性を達成できることを示した。従って、3次元右手/左手系複合メタマテリアルの構造に関して、異方性の少ない特性を達成するためには、次のような解決されるべき2つの問題が存在する。
(1)面内伝搬の場合において、偏波方向の取り方、すなわち導電メッシュ板11に対して平行方向及び垂直方向の違いにより、屈折率差が現れること。
(2)伝搬方向の取り方、すなわち導電メッシュ板11に対して伝搬方向が平行及び垂直方向の違いにより、異方性が存在すること。

【0045】
本実施形態において、本発明者は主として後者を扱う、すなわち、メッシュ板に対して平行及び垂直である両伝搬方向の異方性を可能な限り小さくするように試行するが、電磁波(電界)の偏波はメッシュ板内に限定する。但し、面内伝搬の偏波方向の違いに関する前者の問題についても論じる。これらの問題を考察するために、下記の典型的な3つの事例、すなわち、図4,図5及び図6に示すような事例I(積層に対して垂直な伝搬)、事例II(偏波及び伝搬方向の両方が面内にある伝搬)、及び事例III(積層に対して垂直な偏波を有する面内伝搬)について検討する。図3A、図3B及び図3Cには、3つの事例の各等価回路モデルを示す。

【0046】
まず、偏波及び伝搬方向の両方が積層面内にある場合(事例II)について以下に説明する。図3A、図3B及び図3Cは3つの異なった伝搬ケースにおいて提案する図1の右手/左手系複合メタマテリアルの単位セルの等価回路モデルを示す回路図であり、図3Aは誘電体共振器20RのHE11δ共振モードを用いた積層された複数の層に対して垂直な方向の伝搬の第1のケース(図4参照)において提案する右手/左手系複合メタマテリアルの単位セルの等価回路モデルを示す回路図であり、図3Bは誘電体共振器20RのTE01δ共振モードを用いたy偏波のx方向伝搬の第2のケース(図5参照)において提案する右手/左手系複合メタマテリアルの単位セルの等価回路モデル(TEカットオフ平行板導波路を構成する)を示す回路図であり、図3Cは誘電体共振器20RのHE11δ共振モードを用いたz偏波の面内伝搬の第3のケース(図6参照)において提案する左手系メタマテリアルの単位セルの等価回路モデルを示す回路図である。なお、図3A、図3B及び図3Cにおいて、T1,T2は端子である。ここで、図3Bでは,誘電体共振器20RのTE01δ共振モードを用いたx偏波のy方向伝搬の場合も、構造の対称性から同等の動作をするので含まれる。図3Bは、より一般的に言うと、誘電体共振器20RのTE01δ共振モードを用いた、伝搬方向及び偏波方向を面内(xy面)にもつ第2のケースにおいて提案する右手/左手系複合メタマテリアルの単位セルの等価回路モデルを示す回路図である。また、図4は図3Aの第1のケースにおける、入力電界ベクトルEと、共振器内の励起磁界ベクトルHを含む磁界分布と示す単位セル10の模式縦断面図であり、図5は図3Bの第2のケースにおける、入力電界ベクトルEと、共振器内の励起磁界ベクトルHを含む磁界分布とを示す単位セル10の模式縦断面図であり、図6は図3Cの第3のケースにおける、入力電界ベクトルEと、共振器内の励起磁界ベクトルHを含む磁界分布とを示す単位セル10の模式縦断面図である。

【0047】
まず最初に、基本メカニズムが先の研究(例えば、非特許文献11参照。)の場合と同じであるという理由から、偏波及び伝搬方向の両方が導電メッシュ板11に対して平行である事例IIの検討から始める。等価回路モデルを図3Bに示す。本構造の実効透磁率は、円柱誘電体20の誘電体共振器20RのTE01δ共振によって制御される。共振に近い周波数における典型的な磁界分布を図5に示す。負及び正の実効透磁率を有する周波数領域は、誘電体共振器の密度によって制御することができる(例えば、非特許文献12参照。)。これに対して、実効誘電率は、メッシュ板間の距離及び導電メッシュ板11の穴サイズの設計等でTEカットオフ平行板導波路の構成パラメータを適切に調整することによって変化させることができる(例えば、非特許文献10参照。)その結果として,平衡型右手/左手系複合メタマテリアル構造の設計が可能となる。

【0048】
次いで、積層に対して垂直な伝搬(事例I)について以下に説明する。積層に対して垂直である波動の場合、図3Aに示すように、正及び負の実効透磁率は、円柱誘電体20の誘電体共振器20RのHE11δ共振モードを使用して設計される。誘電体共振器20Rの上述したTE01δ及びHE11δモードは同じ動作周波数で縮退されるように、誘電体共振器20Rの高さ及び直径はほぼ同じに設定される。これに対して、本構造の実効誘電率を設計する場合は、単位セル10を2つのセクション、すなわち誘電体共振器20Rを含む誘電体層13のセクションと、導電メッシュ板11の円形孔12のセクションとに分離することができる。前者のセクションの実効誘電率は常に正であるが、間隙孔を介する伝搬はカットオフ領域下である。従って、単位セル10の場合の等価回路モデルにおける正味の並列枝アドミタンスは、本構造に対して正及び負の誘電率をもたらす。構成パラメータを調整して零誘電率及び零透磁率における周波数の両方を互いに一致させれば、積層面に対して垂直方向の伝搬に関して、平衡型右手/左手系複合メタマテリアルの構造を設計することができる。

【0049】
さらに、層に対して垂直な偏波を有する面内伝搬(事例III)について以下に説明する。この項目では、図3Cに示すように、積層に対して垂直である偏波を有する電磁波の面内伝搬について考察する。このような入射波の場合、誘電体共振器20Rは、関心のある周波数領域付近でHE11δ共振モードのように振舞う。これに対して、この伝搬の場合、TEカットオフ導波路に関するメカニズムは存在しない。最終的に、HE11δのような共振状態の誘電体共振器間の相互結合が左手系伝送線路の構成に寄与する(例えば、非特許文献8,9参照)。単位セル10の等価回路モデルを、図3Cに示す。相互結合は左手系モードをサポートするが、右手系モードはサポートしないことが分かる。これは、並列枝における唯一の誘導素子の存在によって説明することができるが、このことについては、後に数値シミュレーション結果から確認する。
【実施例1】
【0050】
実施例1において、分散特性図と抽出された回路パラメータについて以下に説明する。本項目では、提案している3次元右手/左手系複合メタマテリアルの構造に関して数値的に得られる分散特性図の幾つかの例を示す。数値シミュレーションに使用する構成パラメータは下記の通りである。誘電体共振器20Rの円形誘電体20の直径、高さ及び誘電定数はそれぞれ、a=4.24mm、h=4.3mm及び比誘電率εDR=38である。誘電体層13内の誘電体媒質22の比誘電率は、2.2である。
【実施例1】
【0051】
図22Aは本実施形態の3次元右手/左手系複合メタマテリアルにおいて、波数ベクトルのx成分とy成分との関係を示す図であり、図22Bは本実施形態の3次元右手/左手系複合メタマテリアルにおいて波数ベクトルのx成分とz成分との関係を示す図である。図22A及び図22Bにおいて、βx、βy、βzはそれぞれ波数(位相定数)ベクトルのx、y、z方向成分で、x方向伝搬場合、成分βxのみが非零、y方向伝搬及びz方向伝搬の場合、それぞれ成分βy及び成分βzのみが非零となる。図7A、図7B及び図7Cに示すように、Γは3次元波数(位相定数)領域における原点を表し、Xは第1ブリルアン領域の境界上の点で、(βx,βy,βz)=(π/p,0,0)を表し、Zは同様に(βx,βy,βz)=(0,0,π/(d+2t))の点を表す。その位相定数の大きさを、まとめて表したのがβである。図22Aから明らかなように、波数領域の点Γと点Xを結ぶ線上における伝搬特性と、点Γと点Yを結ぶ線上における伝搬特性は幾何学的構造の対称性から同一と見なすことができるので、以下では、x方向伝搬のみの場合として、Γ-Xを示すこととする。
【実施例1】
【0052】
図7Aは図2の3次元平衡型右手/左手系複合メタマテリアルの単位セル10において誘電体層13の高さd=6mm、導電メッシュ板11の厚さt=0.5mm、1辺の長さp=8mm、導電メッシュ穴12の半径r=2.1mmの場合の分散周波数特性(正規化位相定数βp/πの周波数特性)を示すグラフであり、図7Bは図の3次元平衡型右手/左手系複合メタマテリアルの単位セル10において誘電体層13の高さd=6mm、導電メッシュ板11の厚さt=0.5mm、1辺の長さp=9mm、導電メッシュ穴12の半径r=2.6mmの場合の分散周波数特性(正規化位相定数βp/πの周波数特性)を示すグラフであり、図7Cは図の3次元平衡型右手/左手系複合メタマテリアルの単位セル10において誘電体層13の高さd=6mm、導電メッシュ板11の厚さt=0.5mm、1辺の長さp=11mm、導電メッシュ穴12の半径r=3.15mmの場合の分散周波数特性(正規化位相定数βp/πの周波数特性)を示すグラフである。
【実施例1】
【0053】
図7A、図7B及び図7Cから明らかなように、偏波及び伝搬方向の両方が面内にある事例(y偏波のΓ-X方向の伝搬)だけでなく、垂直伝搬の事例(Γ-Z方向の伝搬)の場合も、平衡型右手/左手系複合メタマテリアル構造を構築できることが分かる。さらに、z軸に沿った伝搬の複合右手/左手系帯域は、周期サイズが小さいほど狭くなる。これに対して、伝搬方向がx軸に沿った方向でy偏波の右手/左手系帯域は、周期が小さいほど大きくなる。本構成パラメータの場合、伝搬方向が積層に対して垂直方向及び平行方向の両方の場合の伝搬特性を比較すると、図7Bに示すように、1辺の長さp=9mmの場合,小さい位相定数領域ではほぼ位相定数が同じとなることがわかる。この場合、ほぼ等方性の特性が達成される。これらの分散特性図に限って注目すれば、図7Bの結果はΓ点付近で等方性であるように見える。しかしながら、後述するようにインピーダンスの観点からは著しく異方性であることが分かる。
【実施例1】
【0054】
次いで、異方性特性のインピーダンスを示す前に、シミュレーションにより散乱パラメータから抽出される回路パラメータを,3つの異なる伝搬事例別に図8、図9A、図9B及び図9Cに示す。図8は図2の3次元平衡型右手/左手系複合メタマテリアルの単位セル10の直列枝素子及び並列枝素子とを示す対称π型等価回路の回路図である。また、図9Aは図8の単位セル10の対称π型等価回路において1辺の長さp=9mm、誘電体層13の高さd=6mm、導電メッシュ板11の厚さt=0.5mm、導電メッシュ穴12の半径r=2.6mmの場合であって積層化された複数の層に対して垂直な方向での伝搬における直列枝素子(実効直列インダクタンスLeff)及び並列枝素子(実効並列キャパシタンスCeff/2)の規格化値を示すグラフであり、図9Bは図8の単位セル10の対称π型等価回路において1辺の長さp=9mm、誘電体層13の高さd=6mm、導電メッシュ板11の厚さt=0.5mm、導電メッシュ穴12の半径r=2.6mmの場合であってy偏波の面内(x方向)伝搬における直列枝素子(実効インダクタンスLeff)及びシャント枝素子(実効キャパシタンスCeff/2)の規格化値を示すグラフであり、図9Cは図8の単位セル10の対称π型等価回路において1辺の長さp=9mm、誘電体層13の高さd=6mm、導電メッシュ板11の厚さt=0.5mm、導電メッシュ穴12の半径r=2.6mmの場合であってz偏波の面内伝搬における直列枝素子(実効インダクタンスLeff)及びシャント枝素子(実効キャパシタンスCeff/2)の規格化値を示すグラフである。
【実施例1】
【0055】
ここで、Leff及びCeffは、図8に示すように、単位セル10のπ型等価回路の直列分岐における実効インダクタンス及び並列分岐におけるキャパシタンスである。これらのパラメータはそれぞれ、実効透磁率と実効誘電率に対応する。パラメータの抽出方法は、例えば、非特許文献10に記述したものと同じである。図9A及び図9Bでは、図3A及び図3Bにおける等価回路モデルにより予測されるように、実効直列インダクタンスLeffにおいて周波数10.3GHzで反共振が認められる。事例IIIに関しては、図9Cから明らかなように、本構造は、実効並列キャパシタンスCeffが常に負であるという理由により、関心の対象である周波数領域において右手系モードを有し得ないことが分かる。さらに、図9Cからは、実効直列インダクタンスLeffにおいて周波数10.5GHz未満では反共振は見られないが、誘電体共振器20Rの磁気共振は実効透磁率に寄与するという興味深い事実が得られる。この結果は、図3Cにおける誘電体共振器20R間の相互結合の等価回路モデルによって説明することができる。
【実施例1】
【0056】
次いで、図10A及び図10Bにおいて、1個の単位セル10の右手/左手系複合メタマテリアル構造の散乱パラメータにより抽出された伝搬特性を示す。すなわち、図10Aは図2の単位セル10において1辺の長さp=9mm、誘電体層13の高さd=6mm、導電メッシュ板11の厚さt=0.5mm、導電メッシュ穴12の半径r=2.6mmの場合に対してシミュレーションされたSパラメータによって抽出された回路パラメータに対して周期的境界条件を課すことにより求められる分散周波数特性を示すグラフであり、図10Bは図2の単位セル10において1辺の長さp=9mm、誘電体層13の高さd=6mm、導電メッシュ板11の厚さt=0.5mm、導電メッシュ穴12の半径r=2.6mmの場合に対してシミュレーションされたSパラメータによって抽出された回路パラメータに対して周期的境界条件を課すことにより求められるブロッホインピーダンスの周波数特性を示すグラフである。
【実施例1】
【0057】
図10Aでは、パラメータ抽出により得られた分散特性図を固有モード解と比較している。図10Bは、ブロッホインピーダンスを示す。図10Bからは、Γ-Z方向伝搬のインピーダンスは,Γ-X方向伝搬でy偏波の場合のインピーダンスと比べると3分の1未満であることが分かる。さらに、z偏波のΓ-X方向の伝搬のインピーダンスは、他の2つのインピーダンスより遙かに小さい。さらに数値シミュレーションを行った結果から、導電メッシュ板11の厚さtの誘電体層13の厚さdに対する割合は、インピーダンスの異方性を減じるためにより高くなるべきであることが分かる。
【実施例1】
【0058】
図11は、図2の単位セル10において1辺の長さp=9mm、誘電体層13の高さd=6mm、導電メッシュ板11の厚さt=1.0mm、導電メッシュ穴12の半径r=2.95mmの場合に対してSパラメータの計算結果から抽出されたブロッホインピーダンスの周波数特性を示すグラフである。図11から明らかなように、導電メッシュ板11の厚さt=1mm、導電メッシュ穴12の半径r=2.95mmを除いて図10A及び図10Bと同じ構成パラメータであるが、2つの事例I及びIIのインピーダンス間でより小さな異方性を得た。この場合、Γ-Z方向伝搬のインピーダンスはy偏波Γ-X方向伝搬のインピーダンスの約半分である。
【実施例2】
【0059】
図12は本発明の実施例2(変形例)に係る、球誘電体21を用いた3次元右手/左手系複合メタマテリアルの単位セル10aの構造を示す斜視図である。また、図13は図12の単位セル10aにおいて球誘電体21の比誘電率εDR=38、誘電体媒質22の比誘電率εBG=2.2、球誘電体21の直径a=4.8mm、1辺の長さp=7mm、誘電体層13の高さd=6mm、導電メッシュ板11の厚さt=9.0μm、正方形孔12の1辺の長さw=2.6mmの場合に対してSパラメータの数値計算結果から抽出された回路パラメータに対して周期的境界条件を課すことにより求められる面内伝搬の分散周波数特性を示すグラフである。図13は、球誘電体21と導電メッシュ板11を組み合わせた場合の実施例2に係る分散特性のうち、積層構造に対して面内(x方向に)伝搬している場合の分散曲線を表している。偏波方向をy方向、z方向のどちらに取るかによって、伝搬特性が大きく異なるが、周波数10.7GHzよりも低い周波数帯においては、いずれの場合も左手系モードが伝搬可能である。一方で、周波数10.7GHzよりも高い周波数帯では、導電メッシュ板11に平行な偏波の場合(y方向)場合のみ、右手系モードが伝搬可能であることを示している。
【実施例2】
【0060】
図14は図12の単位セル10aにおいて球誘電体21の比誘電率εDR=38、誘電体媒質22の比誘電率εBG=2.2、球誘電体21の直径a=4.8mm、1辺の長さp=7mm、誘電体層13の高さd=6mm、導電メッシュ板11の厚さt=9.0μm、正方形孔12の1辺の長さw=2.6mmの場合に対してSパラメータの数値計算結果から抽出された導電メッシュ板11に対して垂直方向伝搬の分散周波数特性を示すグラフである。また、図15は図12のときの単位セル10aにおける磁界ベクトルH及び波数ベクトルWnvを示す模式斜視図である。図14は、図13と同じ構造パラメータで、積層構造に対して垂直方向伝搬の場合に、平衡型右手左手系複合線路が構成されていることを表している。すなわち図14は、周波数10.7GHzより低い周波数帯で左手系モードが励振可能であって、周波数10.7GHzよりも高い周波数帯で右手系モードが励振可能であることを示している。
【実施例3】
【0061】
実施例3においては、負屈折率レンズの実証について以下に説明する。面内伝搬だけでなく積層に対して垂直方向伝搬に対する左手系伝送の動作を実験的に検証するために、負屈折率のフラットレンズ(例えば、非特許文献14参照。)を設計し、製造した。右手/左手系複合メタマテリアル構造において製造する単位セル10の構成パラメータは、下記の通りである。誘電体共振器20Rの円柱誘電体20の直径、高さ及び比誘電率はそれぞれ、a=4.24mm、h=4.3mm及びεDR=37.5である。誘電体層13内の誘電体媒質22の比誘電率は2.2である。単位セル10の1辺の長さp=9.0mm、隣接する導電メッシュ板11間の距離d=6.0mm及び導電メッシュ板11の厚さt=1mm、導電メッシュ穴12の半径r=2.75mmである。修正した分散特性図を図16に示す。
【実施例3】
【0062】
図16は図2の単位セル10において1辺の長さp=9mm、円柱誘電体20の比誘電率εDR=37.5、誘電体層13の高さd=6mm、導電メッシュ板11の厚さt=1.0mm、導電メッシュ穴12の半径r=2.75mmの場合に対してSパラメータの数値計算結果から抽出された回路パラメータに対して周期的境界条件を課すことにより求められる分散周波数特性を示すグラフである。
【実施例3】
【0063】
図17A、図17B及び図17Cは、図1の3次元右手/左手系複合メタマテリアルを用いたレンズを試作したときの各部品を示す平面図であって、図17Aは導体メッシュ板11の平面図であり、図17Bは第1の誘電体層13aの平面図であり、図17Cは第2の誘電体層13bの平面図である。製造したレンズは、図17A、図17B及び図17Cに示すように、45mm×180mm×6mmの寸法を有する部品11,13a,13bで構成した。ここで、第1の誘電体基板13aに複数の誘電体挿入孔14を形成し、第1の誘電体基板13aと同じ構成を有する複数の誘電体挿入孔14を有する第2の誘電体基板13bの複数の誘電体挿入孔14に誘電体20を突出するように挿入充填し、第1の誘電体基板13aの複数の誘電体挿入孔14にそれぞれ突出した誘電体20を挿入充填するように、第1の誘電体基板13aと第2の誘電体基板13bとを嵌合させて1つの誘電体層13を形成する。次いで、当該形成した誘電体層13を1対の導電メッシュ板11で挟設して1つの機能層を形成し、当該機能層を複数層積層することにより3次元右手/左手系複合メタマテリアルを構成することができる。なお、各部品の四隅は支持棒挿入孔15であり、これらの部品11,13a,13bを支持棒挿入孔15で支持する。なお、円柱誘電体20の誘電体共振器20Rを保持する誘電体媒体13のための誘電体基板13a,13bとして、比誘電率2.2及び損失正接0.0009を有するロジャーズ・アールティー/デュロイド5880(Rogers RT/Duroid5880)基板を使用した。誘電体媒体13の厚さは、2つの誘電体基板13a,13bを用いることによって合計厚さが6.0mmになりかつ誘電体共振器20Rの中心が誘電体媒質13の高さの中心に置かれるように調整した。
【実施例3】
【0064】
図18は図1の3次元右手/左手系複合メタマテリアルを用いたレンズを介して電磁界パターンを測定するための計測システムの構成を示す模式平面図であり、図19は図18の計測システムの構成を示す模式側面図である。なお、50は送信用ループアンテナであり、51は観測領域である。
【実施例3】
【0065】
レンズ周辺における電磁界分布の測定値の実験セットアップ、及びシステムの座標を図18に示す。レンズに対する法線は、z軸に沿って設定している。レンズの高さ及び幅はそれぞれ、5セル(45mm)及び20セル(180mm)であり、長さは4層分(32mm)である。設計した構造と空気とは整合が取れていないことから、すなわち、レンズのインピーダンスは空気のインピーダンスより遙かに小さいことから、レンズの入力側及び出力側両方で空気とレンズとの間に整合回路としてマッチング用誘電体フィルム41を挿入した。y方向に沿ったレンズによる厚さの影響を回避するために、本構造と空気領域との境界にXバンドで動作するフィルム状の吸収体を挿入した。測定用の送信アンテナ及び受信プローブはともに、小型ループアンテナ50で構成される。これらのループアンテナ50の軸の方向は、同一に設定した。測定したのは2つの事例であり、これらのループアンテナ50の軸の方向性はx軸又はy軸に沿っている。製造したレンズと送信アンテナ50との距離は、16mmに設定した。これは、レンズの長さの半分に相当する。
【実施例3】
【0066】
図20は図18及び図19に図示された計測システムにおいて、x-z平面において3次元フラット負屈折率を有するレンズから出力された10.46GHzの電磁波の磁界分布の大きさを示す分布図である。当該計測システムにおいては、例えば周波数10.46GHzにおいて、製造したフラットレンズを通過した電磁波の出力領域内の大きさ及び位相分布を測定した。測定された電磁界分布から、当該周波数において、ビーム集束が明らかに観察された。
【実施例3】
【0067】
また、図21Aは図18及び図19に図示された計測システムにおいて、y-z平面においてレンズから出力された10.46GHzの電磁波の磁界分布の大きさを示す分布図であり、図21Bはその位相を示す分布図である。すなわち、y-z平面における10.46GHzでの磁界分布の大きさ及び位相分布を図21A及び図21Bに示す。ここで、座標系の原点は、送信用ループアンテナ50の中心に置いた。磁界の最大値は、10.44GHzにおいてz=64mmで観察された。これは、レンズからの距離16mmに相当する。製造したレンズの動作周波数は、図21A及び図21Bから予測される動作周波数と良く合致している。
【実施例3】
【0068】
図21A及び図21Bから明らかなように、レンズの高さに沿って少数のセルを有する大きさ及び位相分布の両方において、ビーム集束が明らかに確認された。図20、図21A及び図21Bにおいて、動作周波数を上げるとともに、ビームスポットがレンズより離れていく動作は製造したレンズの左手系、すなわち、その周波数による有効屈折率の大きさの低減を検証している。x軸に沿ってアンテナ軸を有する測定の場合も、同様の電磁界分布が得られた。
【実施例3】
【0069】
実施形態の作用効果.
以上説明したように、本実施形態において、3次元異方性右手/左手系複合メタマテリアルの構造の新しい構成を提案した。これは、導電メッシュ板層と、誘電体共振器の2次元アレイを含む誘電体層とで構成される。層に対して平行な伝搬だけでなく、垂直方向の伝搬に対して平衡型複合右手/左手系伝送構造を設計した。本構造は本質的に異方性であり、波動に対して偏波依存性を有した。メッシュ板に平行な偏波を有する入射波の場合、構成パラメータを適切に設計すると、所定の周波数領域において比較的小さい異方性伝搬特性が達成された。設計した右手/左手系複合メタマテリアル構造に基づいて、フラットレンズを製造した。提案している異方性3次元構造の右手/左手系複合メタマテリアルでの伝搬を面内伝搬だけでなく垂直方向伝搬に対しても検証するために、負屈折率レンズを実証した。
【実施例3】
【0070】
別の変形例.
以上の実施形態又は変形例において、導電メッシュ板11の孔12,12aの形状は円形又は正方形であるが、本発明はこれに限らず、楕円、三角形、四角形、もしくはそれ以上の多角形、並びにこれらの組合せの形状であってもよい。
【実施例3】
【0071】
以上の実施形態又は変形例において、孔12,12aによるメッシュ窓を配置する方法として、二次元正方格子を用いているが、本発明はこれに限らず、三角格子、四角格子、六角格子、かごめ格子、もしくはその他の正規格子であってもよい。
【実施例3】
【0072】
以上の実施形態又は変形例において、導電メッシュ板11の孔12,12a中は中空であるが、本発明はこれに限らず、誘電体20,21よりも十分に小さい誘電率を有する絶縁性材料(誘電体材料)により充填してもよい。
【実施例3】
【0073】
以上の実施形態又は変形例において、誘電体共振器20R,21Rに用いる誘電体の形状は円柱又は球であるが、本発明はこれに限らず、回転楕円体、立方体、円柱、三角柱、四角柱、もしくはそれ以上の多角柱のうち一種類もしくは二種類以上の組合せで構成してなる形状であってもよい。
【実施例3】
【0074】
以上の実施形態又は変形例において、誘電体共振器20R,21Rを配置する方法は二次元正方格子であるが、本発明はこれに限らず、三角格子、四角格子、六角格子、かごめ格子、あるいはその他の正規格子であってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0075】
以上詳述したように、本発明に係る3次元メタマテリアルによれば、従来技術に比較して小さい伝搬損失を有しかつ製作が極めて容易であって、電磁波を各機能層において積層面に対して垂直な伝搬方向に伝搬させて、上記積層面に対して垂直な伝搬方向に対して左手系メタマテリアルとして動作させることができる3次元メタマテリアルを構成することができる。ここで、当該3次元メタマテリアルを用いて負の屈折率を有するフラットレンズなどを製造することができる。また、マイクロ波回路、そのコンポーネント及びアンテナ、並びに平板スーパーレンズ、波長以下の分解能を有する近傍界イメージング、クローキング技術等のような光学的デバイス及びそのコンポーネントへのアプリケーションを行うことができる。
【符号の説明】
【0076】
10,10a…単位セル、
11…導電メッシュ板、
12…円形孔、
12a…正方形孔、
13…誘電体層、
13a,13b…誘電体基板、
14…誘電体挿入孔、
15…支持棒挿入孔、
20…円柱誘電体、
21…球誘電体、
20R,21R…誘電体共振器、
22…誘電体媒質、
41…マッチング用誘電体フィルム、
50…ループアンテナ、
51…観測領域、
E…電界ベクトル、
H…磁界ベクトル、
Lmn,Lmi…磁気結合、
Wnw…波数ベクトル、
T1,T2…端子。
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3A】
2
【図3B】
3
【図3C】
4
【図4】
5
【図5】
6
【図6】
7
【図7A】
8
【図7B】
9
【図7C】
10
【図8】
11
【図9A】
12
【図9B】
13
【図9C】
14
【図10A】
15
【図10B】
16
【図11】
17
【図12】
18
【図13】
19
【図14】
20
【図15】
21
【図16】
22
【図17A】
23
【図17B】
24
【図17C】
25
【図18】
26
【図19】
27
【図20】
28
【図21A】
29
【図21B】
30
【図22A】
31
【図22B】
32