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明細書 :ピリミジンヌクレオシド誘導体の新規製造方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 公開特許公報(A)
公開番号 特開2015-086203 (P2015-086203A)
公開日 平成27年5月7日(2015.5.7)
発明の名称または考案の名称 ピリミジンヌクレオシド誘導体の新規製造方法
国際特許分類 C07H  19/073       (2006.01)
FI C07H 19/073
請求項の数または発明の数 4
出願形態 OL
全頁数 14
出願番号 特願2013-228375 (P2013-228375)
出願日 平成25年11月1日(2013.11.1)
発明者または考案者 【氏名】白水 宏
【氏名】森田 裕紀
【氏名】塚本 眞幸
出願人 【識別番号】504139662
【氏名又は名称】国立大学法人名古屋大学
個別代理人の代理人 【識別番号】100081776、【弁理士】、【氏名又は名称】大川 宏
審査請求 未請求
テーマコード 4C057
Fターム 4C057AA17
4C057AA19
4C057BB02
4C057DD03
4C057LL12
4C057LL19
要約 【課題】取扱性に優れたピリミジンヌクレオシド誘導体の製造方法の提供。
【解決手段】1位及び2位のOH基がアシル化され且つ他のOH基には保護基が導入されているグリコシル供与体と、シリル化されたピリミジン誘導体とを、下記一般式(1)又は(2)で表される酸アゾール/ピリジン複合体及び溶媒の存在下で反応させる。酸アゾール/ピリジン複合体は吸湿性が無いか又は低いため取扱性に優れている。
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〔一般式(1)におけるAは-O-又は-S-であり、一般式(1)及び(2)におけるR~Rは水素及び置換されてもよい炭化水素基。R~Rは他のR~Rに対して結合して環を形成しても良い。また一般式(1)及び/又は一般式(2)を部分構造とし複数有するものでもよい。更にはR~Rにて担体に結合されていても良い。]
【選択図】なし
特許請求の範囲 【請求項1】
1位及び2位のOH基がアシル化され且つ他のOH基には保護基が導入されているグリコシル供与体と、シリル化されたピリミジン誘導体とを、下記一般式(1)で表される酸アゾール/ピリジン複合体及び溶媒の存在下で反応させるピリミジンヌクレオシド誘導体の製造方法。
【化1】
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〔上記一般式(1)におけるAは-O-又は-S-であり、上記一般式(1)及び(2)におけるR~Rは水素及び炭化水素基(水素又は炭素原子のうちの一部やメチレン基の一部が酸素、窒素、硫黄原子、イミノ基にて置換されていても良い)から独立して選択される。R~Rは他のR~Rに対して結合して環を形成しても良い。また一般式(1)及び/又は一般式(2)を部分構造とし複数有するものでもよい。更にはR~Rにて担体に結合されていても良い。上記一般式(1)、(2)におけるXは対アニオンであり、共役酸HXのpKaが、そのXを対イオンとして含む酸アゾール/ピリジン複合体のpKaよりも低い。一般式(2)におけるXは、R及びRがtCであり、Rがメチル基である場合にはCFSOを除く。〕
【請求項2】
前記酸アゾール/ピリジン複合体は、Aが-O-、Rがメチル基、R10がフェニル基、R9、11、12が水素である下記一般式(1a)の化合物であるか、Aが-S-、R1、9~12が水素である下記一般式(1a)の化合物である請求項1に記載のピリミジンヌクレオシド誘導体の製造方法。
【化2】
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【請求項3】
前記グリコシル供与体は図1~図3に記載の化合物(図中のBzは他のOH基の保護基で置換しても良い)のうちの何れか1つである請求項1又は2に記載のピリミジンヌクレオシド誘導体の製造方法。
【請求項4】
前記溶媒はアセトニトリル又はアセトンである請求項1~3のうちの何れか1項に記載のピリミジンヌクレオシド誘導体の製造方法。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、ピリミジンヌクレオシド誘導体の新規な製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ピリミジンヌクレオシドは、抗ウイルス剤、抗がん剤などとして重要な化合物である。これらの化合物の合成法としては、アシル化されたリボースおよびシリル化されたピリミジンを原料に用いたHilbert-Johnsonら (Vorbruggenによる改良法) によるN-グリコシル化反応が例示される (下記反応式(1)参照:非特許文献1及び2)。
【0003】
【化1】
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【0004】
その促進剤として現在、汎用されるのがトリメチルシリルトリフラート (TMSOTf) であるが、本化合物の促進剤としての反応性は必ずしも高くないため、一般に化学量論量を必要とする。加えて、TMSOTfは、吸湿性の高い液体であり、取り扱いには細心の注意が必要である。この解決策として、酸ピリジン複合体5a(XがCFSOである下記一般式(2)で表される化合物)が促進剤として開発されたが反応性が低いため、高温 (100-150℃) かつマイクロ波の照射条件でないと反応が進行しない(非特許文献3参照)。
【0005】
また、従来のピリミジンヌクレオシド誘導体の製造方法としては特許文献1~5が開示されている。
【先行技術文献】
【0006】

【特許文献1】特開2005-239552号公報
【特許文献2】特開2001-294596号公報
【特許文献3】特開平7-082293号公報
【特許文献4】特開2003-306495号公報
【特許文献5】特開平5-059088号公報
【0007】

【非特許文献1】Vorbruggen,H.; Ruh-Pohlenz, C. Handbook of Nucleoside Synthesis, Wiley: New York, 2001.
【非特許文献2】Vorbruggen,H. Acc. Chem. Res. 1995, 28, 509-520.
【非特許文献3】Sniady, A.; Bedore, M. W.; Jamison, T. F. Angew. Chem. Int. Ed.2011, 50, 2155-2158.
【非特許文献4】Uraguchi, D.; Yamamoto, K.;Ohtsuka, Y.; Tokuhisa, K.; Yamakawa, T. Appl. Catal., A. 2008, 342, 137-143.
【非特許文献5】Kantsadi, A. L.; Hayes, J. M.; Manta, S.; Skamnaki, V. T.; Kiritsis,C.; Psarra, A.-M. G.; Koutsogiannis, Z.; Dimopoulou, A.; Theofanous, S.;Nikoleousakos, N.; Zoumpoulakis, P.; Kontou, M.; Papadopoulos, G.; Zographos,S. E.; Komiotis, D.; Leonidas, D. D. ChemMedChem 2012, 7, 722-732.
【非特許文献6】Haeckel, R.;Weber, K.; Germann, C.;Haberkorn, U.; Zeisler, S.; Eisenbarth, J.; Wiessler, M.; Oberdorfer, F. J. Label. Compds.Radiopharm. 1996, 38, 1061-1070.
【非特許文献7】Bach, G.;Domaschka, G. J. Signal AM 1980, 8, 137-144.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は上記実情に鑑み為されたものであり、取扱性に優れた新規なピリミジンヌクレオシド誘導体の製造方法を提供することを解決すべき課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決する目的で本発明者らは鋭意検討を行った。本発明者らは、上記反応において促進剤の酸性度が反応性の鍵を握ると考え、酸ピリジン複合体5aよりも酸性度が高い酸アゾール複合体を、上述の反応式(1)における反応に用いることを検討した。詳しくは後述する実施例にて記載するが、対アニオンとして、トリフラートおよび過塩素酸イオンを用いた、種々の酸アゾール複合体について検討を行い本発明を完成した。
【0010】
上記課題を解決する本発明のピリミジンヌクレオシド誘導体の製造方法は、1位及び2位のOH基がアシル化され且つ他のOH基には保護基が導入されているグリコシル供与体と、シリル化されたピリミジン誘導体とを、下記一般式(1)又は(2)で表される酸アゾール/ピリジン複合体及び溶媒の存在下で反応させるものである。本発明で用いられる酸アゾール/ピリジン複合体は吸湿性が無いか又は低いため取扱性に優れている。本明細書において「酸アゾール/ピリジン複合体」とは「酸アゾール複合体」と「酸ピリジン複合体」とのうちの少なくとも一方であることを意味する。含まれる環構造が「アゾール」のみであれば「酸アゾール複合体」、「ピリジン」のみであれば「酸ピリジン複合体」と称することもある。
【0011】
【化2】
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〔上記一般式(1)におけるAは-O-又は-S-であり、上記一般式(1)及び(2)におけるR~Rは水素及び炭化水素基(水素又は炭素原子のうちの一部やメチレン基の一部が酸素、窒素、硫黄原子、イミノ基にて置換されていても良い)から独立して選択される。R~Rは他のR~Rに対して結合して環を形成しても良い。また一般式(1)及び/又は一般式(2)を部分構造とし複数有するものでもよい。更にはR~Rにて担体に結合されていても良い。上記一般式(1)、(2)におけるXは対アニオンであり、共役酸HXのpKaが、そのXを対イオンとして含む酸アゾール/ピリジン複合体のpKaよりも低い。一般式(2)におけるXは、R及びRがtCであり、Rがメチル基である場合にはCFSOを除く。〕
【0012】
そして、前記酸アゾール複合体は、下記一般式(1a)の化合物であることが好ましい。
【0013】
【化3】
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〔上記一般式(1a)中、Xは対アニオンであり、CFSO又はClOである。Aは-O-又は-S-である。R1、9~12は水素及び炭化水素基(水素又は炭素原子のうちの一部やメチレン基の一部が酸素、窒素、硫黄原子、イミノ基にて置換されていても良い)から独立して選択される。R1、9~12は他のR1、9~12に対して結合して環を形成しても良い。環を形成した場合には、アゾール環及び/又はピリジン環を複数有することになってもよい。また一般式(1a)、(1)及び/又は一般式(2)を部分構造とし複数有するものでもよい。更にはR1、9~12にて担体に結合されていても良い。〕
【0014】
そして、一般式(1a)で表される前記酸アゾール複合体は、Aが-O-、Rがメチル基、R10がフェニル基、R9、11、12が水素であるか、Aが-S-、R1、9~12が水素であることが好ましい。
【0015】
また、前記グリコシル供与体として有用なものを挙げると図1~図3に記載の化合物(図中のBzは他のOH基の保護基で置換しても良い)を挙げることができる。
【0016】
そしてまた、前記溶媒はアセトニトリル又はアセトンであることが反応性の観点から好ましい。
【発明の効果】
【0017】
本発明のピリミジンヌクレオシド誘導体の製造方法によると、用いられる酸アゾール/ピリジン複合体の吸湿性が無いか低いために取扱性に優れている上、充分な反応性も示している。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】グリコシル供与体の一例を示す図である。
【図2】グリコシル供与体の一例を示す図である。
【図3】グリコシル供与体の一例を示す図である。
【図4】実施例における反応の収率を示す図である。
【図5】実施例における反応の収率を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明のピリミジンヌクレオシド誘導体の製造方法について以下、実施形態に基づき詳細に説明を行う。本実施形態のピリミジンヌクレオシド誘導体の製造方法はOH基が保護されたグリコシル供与体とシリル化されたピリミジン誘導体とを特定の酸アゾール/ピリジン複合体及び溶媒の存在下で反応させるものである。

【0020】
反応条件は特に限定しないが加熱しながら反応させることが望ましい。加熱条件としては特に限定されないが、加熱環流などの緩やかな条件も採用できる。なお、100℃や、80℃での加熱、更にはそれらの加熱に加え電磁波照射などを併用するなどの従来の反応条件を採用することを排除しないことは言う迄も無い。反応時間としてはグリコシル供与体の種類、ピリミジン誘導体の種類、反応温度、反応時の濃度、溶媒の種類、酸アゾール/ピリジン複合体の種類など反応速度に影響を与える条件により適正値が変化するため種々の条件(コスト、収率、副反応が起きにくいなどによる精製の容易さ)に応じて適正に設定できる。生成したピリミジンヌクレオシド誘導体は再結晶、カラムクロマトグラフィーなどの適正な方法により分離精製することができる。

【0021】
グリコシル供与体としては、1位及び2位のOH基がアシル化されていること、及びその他のOH基に対して保護基が導入されていること(本明細書中においては両者併せて「OH基の保護基が導入されている」と称することがある)、以外については特に限定しない。グリコシル供与体の骨格となる糖としてはリボース、デオキシリボース、グルコースなどが挙げられる。

【0022】
以下にOH基の保護基が導入されているグリコシル供与体として採用できる化合物を図1~3に例示する。図1~3中、「-OAc」と記載したのはアセチル化されたOH基を表す。また、「-OBz」はベンゾイル基(OH基の保護基の1つ)で保護されたOH基を表す。ここで、「-OBz」と記載しているがベンゾイル基以外の保護基に変更してもよい。

【0023】
またグリコシル供与体について1位の立体構造が維持できるならば(1位に置換基を導入して不斉炭素にするなど)製造されるピリミジンヌクレオシド誘導体における立体構造も採用したグリコシル供与体の1位の立体構造が維持される。特にハース投影式にて記載した時に2位の炭素に結合した「-O-アシル基」が下向きにすることでピリミジンヌクレオシド誘導体はβアノマーが主生成物になっている。反対に上向きにすることによりαアノマーを主生成物にすることができる。

【0024】
シリル化されたピリミジン誘導体としてはウラシルを基本骨格とする化合物である。シリル化は2,4位に結合された酸素原子に対して行われる。5位の炭素には水素に代えて電子求引性基を導入することができる。電子求引性基としては特に限定されないが、ハロゲン、CF、NOなどが挙げられる。

【0025】
グリコシル供与体とピリミジン誘導体との混合比は特に限定しないが等モルにすることができる。

【0026】
酸アゾール/ピリジン複合体はグリコシル供与体とピリミジン誘導体との反応に対して触媒として作用するものと考えられる。従って酸アゾール/ピリジン複合体の添加量はグリコシル供与体やピリミジン誘導体よりも少ない量で充分であり、例えばグリコシル供与体やピリミジン誘導体を基準として、5モル%~10モル%程度にすることができる。

【0027】
酸アゾール/ピリジン複合体としては上述の一般式(1)、(2)で表される化合物である。一般式(1)の化合物としては上記一般式(1a)の化合物などR、Rの間が連結され環状構造を形成していても良い。

【0028】
一般式(1)、(2)におけるXは対アニオンである。Xは、共役酸HXのpKaが、そのXを対イオンとして含む酸アゾール/ピリジン複合体のpKaよりも低いことにより酸アゾール/ピリジン複合体が形成できる。例えば共役酸HXのpKaが、そのXを対イオンとして含む酸アゾール/ピリジン複合体のpKaよりも3以上低いことが望ましく、5以上低いことが更に望ましい。Xとしては、CFSO、ClO、Cl、Br、I、PFが例示できる。なお、一般式(2)におけるXは、R及びRがtCであり、Rがメチル基である場合にはCFSOを除く。

【0029】
一般式(1a)においては、特にAが-O-、Rがメチル基、R10がフェニル基、R9、11、12が水素である(以下「化合物7」と称する。XがCFSOの場合は「化合物7a」、ClOの場合は「化合物7b」とも称することがある)であるか、Aが-S-、R1、9~12が水素である化合物(以下「化合物6」と称する。XがCFSOの場合は「化合物6a」、ClOの場合は「化合物6b」とも称することがある)であることが望ましい。

【0030】
一般式(1)、(1a)の化合物において特にR~R及びR~R12に対してアルキレン基(メチレン基、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基など)を介してスチレンをエーテル結合させ、そのスチレンを他の適正なモノマー(スチレンやスチレンの誘導体など)と共に共重合させたりして高分子に担持させることができる。高分子に担持させることにより酸アゾール複合体の回収を簡単に行うことができる。また、一般式(2)の化合物においてR4~8のうちの1以上に対して担体(高分子化合物など)を結合させることもできる。一般式(2)の化合物を担体に結合する場合にはR4、5、7、8としては水素にすることが望ましい。対イオンとしては一般式(2)の化合物においてはClOを採用することが望ましい。一般式(2)の化合物は対応するピリジン誘導体(又はピリジン単体)に対して過塩素酸を反応させることで製造することもできる。例えばピリジンポリマーに過塩素酸を反応させることで一般式(2)の化合物としての固相触媒を得ることも出来る。

【0031】
溶媒としては特に限定しないが有機溶媒で有り、アセトニトリル、アセトン、テトラヒドロフラン、1,2-ジクロロエタンが例示でき、特にアセトニトリル又はアセトンを採用することが望ましい。また、一般式(1)、(1a)及び(2)におけるR1~12として直接高分子化合物を結合させても良い。
【実施例】
【0032】
以下に本発明のピリミジンヌクレオシド誘導体の製造方法について実施例に基づき詳細に説明を行う。
【実施例】
【0033】
〔酸アゾール/ピリジン複合体の種類による影響〕
上記反応式(1)においてピリミジンヌクレオシド誘導体として3aの化合物を製造する反応において、下記の酸アゾール/ピリジン複合体4a~7a及び4b~7bを触媒として用いたときの収率を比較した。酸アゾール複合体7a及び7bは後述する他の試験(A)に記載の方法にて合成した(非特許文献7等参照)。その他についても同様に合成した。
【実施例】
【0034】
【化4】
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【実施例】
【0035】
シリル化されたピリミジン塩基として2aを、溶媒としてアセトニトリルを用いた。酸アゾール/ピリジン複合体それぞれについてその量(触媒量)を5 mol%として0.1 mmolスケールで実験を行い、加熱環流を2時間行った後の3aの収率を1H NMRによって測定した。結果を図4に示す。
【実施例】
【0036】
図4から明らかなように、7bが最も反応性が高く、収率は80%であった。これは、TMSOTfよりも活性がやや高い。対アニオンが過塩素酸イオンであれば、活性化剤の酸性度が低くなると反応性も低下することが分かった。すなわち、酸性度は7b > 6b > 5b > 4bの順であるが、反応性もこの順序で低下し、4bでは反応がほとんど進行しなかった。また、反応性は、対アニオンの影響も受け、過塩素酸塩の方がトリフラートよりも高い反応性を示す傾向にあることが分かった。例えば7aは、7bよりも活性が低下する。また、酸ピリジン複合体5aでは、ほとんど反応が進行しなかった。
【実施例】
【0037】
アセトニトリル中で7bの反応性が最も高いことがわかったが、いずれの触媒でもリボースがピリミジン塩基と2分子反応した下記化合物8aが副生(<5%) した。【0038】
【化5】
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【実施例】
【0039】
そこで溶媒を検討したところ、アセトンを用いることにより化合物8aの副生が減少することがわかった。溶媒としてアセトンを用いた場合の収率を検討した。過塩素酸塩7bを用いると加熱環流2時間後、81%の収率で3aが得られ、副生成物8aは、検出されなかった (図5)。加熱環流を継続すると、反応は6時間で完結した。過塩素酸塩4b、5b、6bおよび7bのアセトン中における反応性も、これらの酸性度を反映し、7bが最も反応性が高かった。そこで酸アゾール複合体として7bを用い、種々のピリミジン誘導体2a~2fについて最終的な収率を検討した。結果を表1に示す。反応条件は0.3 mmol スケールで次の条件で行った。化合物1が100 mM、化合物2a~2fが130 mM (ただし2eは、120 mM)、溶媒はアセトン、加熱還流は6時間行った。
【実施例】
【0040】
【表1】
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【実施例】
【0041】
表1から明らかなように、ピリミジンヌクレオシド誘導体3a-3fの収率は、84-94%と良好な結果が得られた。また、目的化合物以外の不純物は、副生しなかった。3a-3dは、再結晶により精製した。3eおよび3fは、カラムクロマトグラフィーにより精製した。
【実施例】
【0042】
グリコシル供与体としてのテトラアセチル体9とピリミジン誘導体(2d又は2e)とを用いて、ピリミジンヌクレオシド誘導体(ピリミジンリボヌクレオシド10d又は10e)を合成した (下記反応式(2))。酸アゾール複合体として5 mol%の7bを用いると、これらのピリミジンヌクレオシド誘導体が96-98%の収率で得られた。
【実施例】
【0043】
【化6】
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【実施例】
【0044】
さらに、グリコシル供与体としてアセチル化されたグルコース11を用いて、同様に0.3 mmolスケールでN-グリコシル化を行った。アセトニトリルを溶媒に用い、7bの触媒量を10 mol%とすると24時間以内に反応が終了することがわかった(下記反応式(3))。この条件下、目的とするヌクレオシド12a~12eが、カラムクロマトグラフィーによる精製後、91-99%と高い収率で得られた。なお、アセトン中では、複雑な混合物を与えた。
【実施例】
【0045】
【化7】
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【実施例】
【0046】
ここで、従来方法として、アセチル化されたグルコース11に対してTMSOTfを1.4 当量使用し、かつ、マイクロ波照射下、反応を行うことによって、12aを収率72%で得られることを確認した。つまり、本願発明方法では従来技術より穏やかな反応条件で従来よりも高い収率を実現できることが分かった。
【実施例】
【0047】
・以上の反応条件を参考にして、グリコシル供与体1、9、または11を1 g用いてピリミジンヌクレオシド3a、10d、10e、12aおよび12bを合成したところ(下記(B)の試験)、目的物が、0.3 mmolとほぼ同様に、高い収率で得られた。
【実施例】
【0048】
以上、酸アゾール複合体の酸性度に注目することにより、酸オキサゾール複合体が、N-グリコシル化反応によるピリミジンヌクレオシド誘導体の合成における有用な触媒であることが明らかとなった。これらの酸アゾール複合体は、既存のTMSOTfと活性が同等かやや高い上に、吸湿性のない固体であるため、取扱性も良い。更にはヌクレオシド由来の副生成物はほとんど生じないため、特にベンゾイル保護されたピリミジンリボシドの合成においては、再結晶によって目的物が容易に得られることが分かった。また、反応の規模を大きくしても(例えば1 gスケール)同様に反応を進行させることが可能であることが分かった。
【実施例】
【0049】
・グリコシル供与体としてデオキシリボースを用いる反応の検討
デオキシ体として、脱離基としてのOCH3を有する化合物13a(下記反応式(4))と、脱離基としてのClを有する化合物13b(下記反応式(5))とをピリミジン誘導体としての化合物2aと反応させた。反応条件はそれぞれ溶媒としてのアセトン中で5mol%になるように調製し、6時間環流することで行った。
【実施例】
【0050】
反応式(4)では、収率23%でαアノマーとβアノマーの混合物14が得られた。反応式(5)では、原料の約70%が消失し、αアノマーとβアノマーの混合物14の他、副生成物が観測された。
【実施例】
【0051】
従ってグリコシル供与体としてデオキシリボースを採用した場合であっても反応が進行することが分かった。
【実施例】
【0052】
【化8】
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【実施例】
【0053】
・酸ピリジン複合体の固相担持についての検討
固相触媒の製造:Poly(4-vinylpyridine),cross-linked (下式化合物15:200.9mg)、CH3CN(1 mL)、70%過塩素酸水溶液 (0.4 mL, 5 mmol)をライブラチューブ中で2時間振とうさせた。その後、得られた固相をジエチルエーテル(20 mL)で洗浄し、乾燥させた。その結果、目的の固相触媒(下式化合物16:一般式(2)におけるR、R、R及びRが水素、Rが高分子の主鎖である化合物)が367.5 mg (4.52 mmol/g)得られた。
【実施例】
【0054】
【化9】
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【実施例】
【0055】
ピリミジンヌクレオシド誘導体の製造:グリコシル供与体としての下記化合物1を50.6mg(0.10mmol)とシリル化されたピリミジン誘導体としての下記化合物2aを17.2mg(0.13mmol)とをアセトニトリル1mL中に溶解させた中に、製造した固相触媒16(2.2mg、約10mol%)を投入して反応を進行させた。反応は、反応管中で震とうしながら加熱環流することにより行った。反応開始後、2時間と6時間に、反応液 (50 mL) を取り出し、メタノール (0.3 mL) で処理した後、1H NMR (500 MHz, DMSO-d6)により、変換率を算出した。結果、収率は2時間で77%、6時間で100%であり高いものであった。また、使用した固相触媒16は、16あるいは15としてそのまま、又は16あるいは15の基本構造を保ったまま回収できた。なお、いずれの場合も、目的物以外の不純物は観測されなかった。
【実施例】
【0056】
化合物2aの調製は、5-フルオロウラシル (17.2 mg, 0.13 mmol)と, Pyridine/HMDSの混合物(= 0.4/0.4 mL)とを25分間加熱環流して行った。
【実施例】
【0057】
【化10】
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【実施例】
【0058】
〔他の試験〕
(A)酸オキサゾール複合体7の調製
(1)2-メチル-5-フェニルベンズオキサゾリウムトリフラート (7a)
2-メチル-5-フェニルベンゾオキサゾール (3.06 g, 14.6 mmol) をジクロロメタン (10 mL) に溶解させ、反応容器を氷浴中で冷却した。これにトリフルオロメタンスルホン酸 (1.30 mL, 14.6 mmol) を注意深く加えた後に室温に昇温し、ジクロロメタン (5 mL) を加えて3時間撹拌した。その後、ジエチルエーテル (20 mL) を加えて減圧濾過を行った。得られた結晶をジエチルエーテル (ca.200 mL) で洗浄後、乾燥させ、7a (4.60 g, 87%) をクリーム色の結晶として得た。mp 161-163 ℃; [Found: C, 50.36; H, 3.28; N,3.71. C15H12NO4F3S requiresC, 50.14; H, 3.37; N, 3.90.]; IR (KBr) 2547, 1634, 1613, 1459, 1302, 1240, 1218cm-1; 1H NMR (500 MHz, DMSO-d6) δ 2.63(s, 3H), 7.37 (tt, J = 7.3 and 1.4 Hz, 1H), 7.47 (m, 2H), 7.62 (dd, J= 8.5 and 2.0 Hz, 1H), 7.68-7.74 (m, 3H), 7.91 (d, J = 1.5 Hz, 1H); 13CNMR (125 MHz, DMSO-d6) δ 14.2, 110.6, 116.9, 117.1, 120.7 (CF3, q, J = 321 Hz), 123.7,127.1, 127.3, 129.0, 137.0, 140.2, 142.0, 150.4, 164.7.
【実施例】
【0059】
(2)過塩素酸2-メチル-5-フェニルベンズオキサゾリウム (7b)
2-メチル-5-フェニルベンゾオキサゾール (5.00 g, 24 mmol) をジクロロメタン (10 mL) に溶解させ、反応容器を氷浴中で冷却した。これに70%過塩素酸水溶液 (1.03 mL, 13 mmol) を注意深く加えた。これに、ジクロロメタン (10 mL)、70%過塩素酸水溶液(1.03 mL, 13 mmol) 、およびジクロロメタン (20 mL) を加え、室温で30 分攪拌した。その後、ジエチルエーテル (300 mL) を加えて目的物を析出させ、減圧濾過を行った。7b (5.77 g, 78%) が白色結晶として得られた。mp 208-211 ℃; [Found: C, 54.19; H, 3.87; N, 4.24. C14H12ClNO5requires C, 54.29; H, 3.91; N, 4.52.]; IR (KBr) 3037, 1634, 1614, 1457, 1430,1403, 1307 cm-1; 1H NMR (500 MHz, DMSO-d6)δ 2.63 (s, 3H), 7.37 (t, J = 7.5 Hz, 1H), 7.47 (dd, J = 8.0 and7.5 Hz, 2H), 7.62 (dd, J = 8.5 and 2.0 Hz, 1H), 7.69-7.73 (m, 3H), 7.90(d, J = 1.5 Hz, 1H); 13C NMR (125 MHz, DMSO-d6)δ 14.2, 110.6, 117.1, 123.7, 127.1, 127.3, 129.0, 137.0, 140.1, 142.0, 150.0,164.6.
【実施例】
【0060】
(B)ピリミジンヌクレオシド誘導体の製造:上記反応式(1)に相当:触媒(catalystとして酸アゾール複合体7bを使用
(1)ピリミジンヌクレオシド誘導体(上記反応式(1)中に記載の3a)の合成
アルゴン雰囲気下、5-フルオロウラシル (339.1 mg, 2.6 mmol) をピリジン (2.0 mL) およびヘキサメチルジシラザン (HMDS) (4.0 mL) に懸濁させ、還流条件で30分撹拌した。反応溶液を室温に戻し、減圧下 (ca. 1 mmHg)、ピリジンおよびHMDSを除去した。得られた透明なシロップ状の化合物2aに、アセトン (20 mL)、1-O-アセチル-2,3,5-トリ-O-ベンゾイル-β-D-リボフラノース (1.02g, 2.0 mmol) および触媒7b (30.5 mg, 0.10 mmol, 5 mol%) を加え、還流条件で6時間撹拌した。反応溶液を0 ℃に冷却した。これに酢酸エチル(15 mL)、メタノール (2 mL) を加え、0 ℃で15分撹拌した。反応溶液をロータリーエバポレーターで1/5程度の体積まで濃縮し、500 mL分液漏斗に移し、酢酸エチル (300 mL) および飽和炭酸水素ナトリウム水溶液 (100 mL) を加え、有機層を分離した。その後、有機層を飽和炭酸水素ナトリウム水溶液(2 x 100 mL)、飽和食塩水(1 x 100 mL)で洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥させた。溶媒をロータリーエバポレータで濃縮したところ、白色の粗生成 (1.25 g) が得られた 。これを、酢酸エチル (ca. 31 mL) およびヘキサン (ca. 30 mL) 混合溶媒から再結晶させ、目的化合物3a (1.05 g,91%) を白色結晶として得た 。スペクトルデータは、報告されているものと矛盾しなかった [非特許文献3参照]。
【実施例】
【0061】
(2)ピリミジンヌクレオシド誘導体(上記反応式(2)中に記載の10e)の合成
3aと同様に、次の条件で合成した。(1)シリル化:5-トリフルオロメチルウラシル (539 mg,3.0 mmol), HMDS (5.0 mL), ピリジン (10 mL)、加熱還流、40 分。(2) N-グリコシル化:CH3CN(25 mL), 9 (796 mg, 2.5 mmol), 7b (38.1 mg, 0.13 mmol), 加熱還流、30 分。(3) 後処理と精製:反応溶液を室温に戻し、0 ℃に冷却した。これにメタノール (2 mL) を加え、0 ℃で15分撹拌した。反応溶液を1/5程度の体積まで濃縮した後に300 mL分液漏斗に移し、酢酸エチル (150 mL) および飽和炭酸水素ナトリウム水溶液 (75 mL) を加え、有機層を飽和炭酸水素ナトリウム水溶液(2 x 75 mL)、飽和食塩水(1 x 75 mL)で洗浄し、集めた有機層を硫酸ナトリウムで乾燥させた。
粗生成物を、中圧シリカゲルカラムクロマトグラフィー (Moritex SI 60,size 60, CH3OH/CH2Cl2 0%→3%) により精製したところ、目的化合物12a (1.07 g, 97%) を、白色のアモルファスとして得た。スペクトルデータは、報告されているものと矛盾しなかった [非特許文献4参照]。
【実施例】
【0062】
(3)ピリミジンヌクレオシド誘導体(下記反応式(3)中に記載の12a)の合成
アルゴン雰囲気下、80 mLヤング型シュレンク反応管に5-フルオロウラシル (433.2 mg, 3.33 mmol) をピリジン (1.7 mL) およびHMDS (3.5 mL) に懸濁させ、還流条件で30分撹拌した。反応溶液を室温に戻し、減圧下 (ca. 1 mmHg)、ピリジンおよびHMDSを除去した。得られた透明なシロップ状の化合物2aに、アセトニトリル (25 mL)、ペンタ-O-アセチル-β-D-グルコピラノース (1.00g, 2.56 mmol) および触媒7b (80.4 mg, 0.26 mmol, 10 mol%) を加え、還流条件で24時間撹拌した。反応溶液を0 ℃に冷却し、メタノール (5 mL) を加えて反応を停止し、濃縮した。そこに酢酸エチル (100 mL) で希釈し、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液 (30 mL x 3) および飽和食塩水 (30 mL) で洗浄した。有機層を硫酸ナトリウム水溶液で乾燥させた。溶媒をロータリーエバポレータで濃縮したところ、粗生成物 (1.25 g) が得られた。粗生成物を、中圧シリカゲルカラムクロマトグラフィー(Moritex SI 60, size 120, EtOAc/Hexane 0:100 → 40:60) により精製したところ、目的化合物12a (1.07 g, 2.32 mmol, 91%) を、白色のアモルファスとして得た。スペクトルデータは、報告されているものと矛盾しなかった [非特許文献5、6参照]。
図面
【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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