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明細書 :成分富化玄米およびその製造方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 公開特許公報(A)
公開番号 特開2015-084658 (P2015-084658A)
公開日 平成27年5月7日(2015.5.7)
発明の名称または考案の名称 成分富化玄米およびその製造方法
国際特許分類 A23L   1/10        (2006.01)
FI A23L 1/10 A
請求項の数または発明の数 13
出願形態 OL
全頁数 15
出願番号 特願2013-223054 (P2013-223054)
出願日 平成25年10月28日(2013.10.28)
発明者または考案者 【氏名】藤田 智之
出願人 【識別番号】504180239
【氏名又は名称】国立大学法人信州大学
審査請求 未請求
テーマコード 4B023
Fターム 4B023LC09
4B023LE01
4B023LE02
4B023LE07
4B023LK09
4B023LK11
4B023LP05
4B023LP20
要約 【課題】 ポリフェノール等の機能性成分が富化されていながら、従来の成分富化米が有していた課題である精米歩合の低下や、食味、食感の低下を防止する。精米、炊飯に耐えうる十分な強度を有し、かつ、良好な食感を有する成分富化玄米を提供する。
【解決手段】 玄米を、該玄米の量に対して少なくとも50重量%の水に浸漬した状態で、加圧することにより、糠成分を糠から胚乳に浸透移行させ、胚乳に該糠成分を富化することを特徴とする成分富化玄米の製造方法。
【選択図】 図4
特許請求の範囲 【請求項1】
玄米を、該玄米の量に対して少なくとも50重量%の水に浸漬した状態で、加圧することにより、糠成分を糠から胚乳に浸透移行させ、胚乳に該糠成分を富化することを特徴とする成分富化玄米の製造方法。
【請求項2】
前記水が、所望の成分が添加された成分添加水であって、前記加圧することにより、糠成分を糠から胚乳に浸透移行させ、胚乳に該糠成分を富化すると共に、所望の成分を、前記成分添加水から前記胚乳に浸透移行させ、該胚乳の前記所望の成分を富化することを特徴とする請求項1記載の成分富化玄米の製造方法。
【請求項3】
前記所望の成分が、ビタミンB1、ビタミンB3、γ-オリザノール、γ-アミノ酪酸から選択される少なくとも1種以上の組み合わせであることを特徴とする請求項2記載の成分富化玄米の製造方法。
【請求項4】
前記玄米が、前記水と共に密閉容器に封入された状態で前記浸漬させることを特徴とする請求項1から3のいずれか1項記載の成分富化玄米の製造方法。
【請求項5】
前記加圧が、少なくとも0.2MPaの圧力であることを特徴とする請求項1から4のいずれか1項記載の成分富化玄米の製造方法。
【請求項6】
前記加圧が、少なくとも100MPaの圧力であることを特徴とする請求項1から4のいずれか1項記載の成分富化玄米の製造方法。
【請求項7】
前記水に浸漬された前記玄米に、加温する工程を更に含むことを特徴とする請求項1から6のいずれか1項記載の成分富化玄米の製造方法。
【請求項8】
前記加温時の温度が、20℃~60℃の温度であることを特徴とする請求項7に記載の成分富化玄米の製造方法。
【請求項9】
請求項1から8のいずれか1項記載の製造方法により製造された、糠成分および前記所望の成分が富化した成分富化玄米。
【請求項10】
胚乳部分のでんぷんが、角の取れた角丸状であり、かつ、胚乳部分のでんぷん損傷率が15.0%以下であることを特徴とする請求項9記載の成分富化玄米。
【請求項11】
請求項9または10のいずれか1項記載の成分富化玄米を、精米した成分富化精白米。
【請求項12】
請求項11記載の成分富化精白米を、製粉した成分富化米粉。
【請求項13】
請求項12記載の成分富化米粉を食品組成物として含む、加工食品。


発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、精米歩合、食感が向上した成分富化玄米に関する。
【背景技術】
【0002】
米は、我が国の主食として、長年にわたり農業の中心を担ってきた。しかし、食糧の国際流通の活発化、国民の嗜好の多様化等により、我が国における米の需要は著しく低下し、自給率の低下が懸念されている。
【0003】
近年、米の有効成分を富化させる等の、米への機能性付加に関する研究が注目されている。例えば、外皮付き穀類を加圧、加温下において、水に浸漬させることにより、機能性成分を富化させる技術が報告されている(特許文献1)。また、胚芽を含むマメ科植物若しくはイネ科植物の種子または胚芽を水に浸漬させて、機能性成分を富化させる技術が報告されている(特許文献2)。
【先行技術文献】
【0004】

【特許文献1】特開2010-63454号公報
【特許文献2】特開2004-65249号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、上記技術においては、広く穀類を対象としているため、米が有する特有の課題については検討されていない。具体的には、米は、麦等の穀類と異なり、通常、製粉せずに使用するため、処理時の粒割れは製品の価値に大きな影響を与えるという課題があった。また、これらの技術の対象は、食品であるため、処理後製品の食味、風味、食感が、製品の価値に大きな影響を与えるという課題があった。これらの課題については、例えば、上記の特許文献1における技術では、加工された穀類に僅かながら臭いが発生することが確認され、アルコールを添加するといった対策を施したことが報告されている。
【0006】
本発明は上記の課題を解決するためになされたもので、ポリフェノール等の糠成分が富化されていながら、精米、炊飯に耐えうる十分な強度を有し、かつ、良好な食感を有する成分富化玄米を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記課題の解決のため鋭意研究を行い、その結果、成分富化処理を行う際の添加する水の量もしくは圧力、温度をコントロールすることにより、精米時の粒割れを防止し、精米歩合が向上することを見出した。更に本発明者らは、成分富化処理を行う際の添加する水に、所望の成分を添加した水を使用することにより、この成分を米の内部まで浸透させ、成分富化、腐敗防止等の機能を付加できることを見出した。本発明は上記の知見に基づいて完成されたものであり、従来の成分富化玄米が有する課題を解決する、新規な成分富化玄米を提供するものである。
【0008】
即ち本発明は、(1)玄米を、該玄米の量に対して少なくとも50重量%の水に浸漬した状態で、加圧することにより、糠成分を糠から胚乳に浸透移行させ、胚乳に該糠成分を富化することを特徴とする成分富化玄米の製造方法である。
【0009】
また別の本発明は、(2)前記水が、所望の成分が添加された成分添加水であって、前記加圧することにより、糠成分を糠から胚乳に浸透移行させ、胚乳に該糠成分を富化すると共に、所望の成分を、前記成分添加水から前記胚乳に浸透移行させ、該胚乳の前記所望の成分を富化することを特徴とする(1)記載の成分富化玄米の製造方法である。
【0010】
また別の本発明は、(3)前記所望の成分が、ビタミンB1、ビタミンB3、γ-オリザノール、γ-アミノ酪酸から選択される少なくとも1種以上の組み合わせであることを特徴とする(2)記載の成分富化玄米の製造方法である。
【0011】
また別の本発明は、(4)前記玄米が、前記水と共に密閉容器に封入された状態で前記浸漬させることを特徴とする(1)から(3)のいずれか1記載の成分富化玄米の製造方法である。
【0012】
また別の本発明は、(5)前記加圧が、少なくとも0.2MPaの圧力であることを特徴とする(1)から(4)のいずれか1記載の成分富化玄米の製造方法である。
【0013】
また別の本発明は、(6)前記加圧が、少なくとも100MPaの圧力であることを特徴とする(1)から(4)のいずれか1記載の成分富化玄米の製造方法である。
【0014】
また別の本発明は、(7)前記水に浸漬された前記玄米に、加温する工程を更に含むことを特徴とする(1)から(6)のいずれか1記載の成分富化玄米の製造方法である。
【0015】
また別の本発明は、(8)前記加温時の温度が、20℃~60℃の温度であることを特徴とする(7)記載の成分富化玄米の製造方法である。
【0016】
また別の本発明は、(9) (1)から(8)のいずれか1記載の製造方法により製造された成分富化玄米である。
【0017】
また別の本発明は、(10)胚乳部分のでんぷんが、角の取れた角丸状であり、かつ、胚乳部分のでんぷん損傷率が15.0%以下であることを特徴とする(9)記載の成分富化玄米である。
【0018】
また別の本発明は、(11) (9)または(10)のいずれか1記載の成分富化玄米を、精米した成分富化精白米である。
【0019】
また別の本発明は、(12) (11)記載の成分富化精白米を、製粉した成分富化米粉である。
【0020】
また別の本発明は、(13) (12)記載の成分富化米粉を食品組成物として含む、加工食品である。
【0021】
本発明に係る成分富化玄米によれば、高い精米歩合と良好な食感を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】米の断面のひびの様子を示す実体顕微鏡像である。
【図2】本発明に係る成分富化玄米の、水の量ごとの精米歩合を示すグラフである。
【図3】本発明に係る成分添加玄米の断面写真である。
【図4】本発明に係る成分富化玄米の表面のSEM像である(5000倍)。
【図5】未処理の米の表面のSEM像である(5000倍)。
【図6】本発明に係る成分富化玄米の断面のSEM像である(1000倍)。
【図7】未処理の米の断面のSEM像である(1000倍)。
【図8】本発明に係る成分富化玄米の切片のSEM像である(5000倍)。
【図9】未処理の玄米の切片のSEM像である(5000倍)。
【図10】本発明に係る成分富化精白米およびコントロール精白米のチアミンの含有量を示すグラフである。
【図11】本発明に係る成分富化精白米およびコントロール精白米のナイアシンの含有量を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下に、本発明に係る成分富化玄米を実施するための形態について説明する。

【0024】
本発明に係る成分富化玄米は、ポリフェノール、ビタミン類等任意の糠成分を通常の米と比較して高濃度に含有していることに加えて、浸漬等によって成分が富化された穀物と比較して、粒割れの割合が低く、精米歩合が向上している。また、炊飯した際の食感が従来の成分富化玄米と比較して改良されており、これによって、製粉して米粉とした際の食感が改良されている。

【0025】
本発明において、その加工過程において、所定量の水に浸漬することによって、製造された成分富化玄米の精米歩合を向上させることが可能になる。水の量は、一般的な玄米の吸水量である30重量%以上が望ましく、50重量%以上であると更に望ましい。

【0026】
本発明において、浸漬に使用する水には、所望の成分を添加することが可能である。これにより、前記所望の成分が製造された成分富化玄米に移行し、富化させることが可能になる。ここで、「所望の成分」の用語は、本来種皮に含まれる成分(例えば、ビタミンB1、ビタミンB3、γ—オリザノール等)と、本来種皮には含まれず、加工時に添加することにより富化される成分、例えば、コチニールやアントシアニン等の色素とのいずれも含む意味で使用する。従って、本発明の製造方法においては、種皮に含有されている成分のみでなく、加工処理の段階で適宜添加された成分も富化された成分富化玄米を製造することが可能である。

【0027】
本発明において、その加工過程において、浸漬は、密閉容器に封入した状態で行われることが望ましい。これにより、浸漬に使用する水の量を正確に制御することが可能となり、かつ、加工時に玄米全体に均一に静水圧を加えることが可能になる。

【0028】
本発明において、その加工過程において、所定の圧力で加圧することによって、成分富化玄米のでんぷん損傷率を0~15%に抑えることが可能となる。これにより、炊飯した際のでんぷんの糊化、流出が抑えられ、食感を向上させることが可能となる。また同時に、精米時の精米歩合を向上させることが可能となる。この際の圧力は、0.2MPa以上が望ましく、100MPa以上であるとさらに望ましい。

【0029】
本発明において、その加工過程において、所定の時間加圧することが望ましい。これにより、精米歩合を向上させ、同時により多くの成分を富化させることが可能になる。この時間の長さは、3時間以上であることが望ましく、作業効率等を勘案すると、24時間程度が望ましい。

【0030】
本発明において、その加工過程において、所定の温度で加温することが望ましい。これにより、製造された成分富化玄米に富化する成分の量を増加させることが可能になる。加温時の温度は、所望の効果を得るために20℃以上が望ましく、40℃以上であると更に望ましい。温度の上限は、一般的に玄米のでんぷんが糊化する65℃以下である必要があり、60℃以下であると更に望ましい。加温は、浸漬と同時にあるいは順次行われ、浸漬時に加温する場合、加工される玄米に上記温度が加温される程度となるよう、水温を調整する必要がある。

【0031】
本発明において、濃度が向上している糠成分としては、ポリフェノール類が挙げられる。向上する程度は、処理の際の圧力、温度等の条件によって異なり、通常は、総ポリフェノール量として2倍から4倍程度であるが、成分や条件によっては、10倍程度まで向上する。例えば、フェルラ酸は未処理時の5倍から6倍まで向上し、p-クマル酸では、未処理時の10倍まで向上する。また、γ-アミノ酪酸については、未処理の精白米からは検出されない成分であって、本発明に係る成分富化玄米を製造する過程において、はじめて定量される成分である。また、本発明に係る成分富化玄米では、上記に示す成分以外のビタミン類等の成分が富化されていても良く、これらの成分には、種皮に含有されている成分のみでなく、加工処理の段階で適宜添加された成分も含まれる。つまり、本発明に係る成分富化玄米では、加工時に浸漬する水に所望の成分を添加することで、種皮由来ではない成分を胚乳部分に浸透移行することが可能である。

【0032】
本発明において、成分富化玄米の表面や内部のでんぷんは、電子顕微鏡で観察すると、その外形から角がとれており、角丸の状態、あるいは形状が略球状または略偏球状となっている。このため、本発明に係る成分富化玄米は、口に入れた際の食感が良く、また、製粉して米粉として使用した際にも、手触りや食感が良好である。

【0033】
本発明の成分富化玄米の原料として使用する米は、特に限定はされず、日本および外国で食用として用いられる米であれば、いずれも適用可能である。本発明により製造された成分富化米は、食用米として好適に使用することが可能である。また、本発明により製造された成分富化精白米を製粉することにより、成分富化米粉として、好適に使用することが可能である。さらに、本発明により製造された成分富化米粉は、その用途として、成分が富化された加工食品として、好適に使用することが可能である。
【実施例】
【0034】
(実験例1 成分富化玄米の製造)
原料となる米は、信州大学農学部の圃場で収穫された、2010年度または2011年度産コシヒカリ玄米を用いた。玄米は実験に使用するまで、ポリエチレン袋に入れて密封し、冷蔵庫に貯蔵した。加圧装置は、株式会社東洋高圧製の高圧処理装置「まるごとエキス(登録商標)」を使用した。加圧処理時の圧力保持と、温度調整は、前記高圧処理装置の制御装置を未補正で使用した。処理玄米の乾燥は、送風定温乾燥器(WFO-501W 232090 東京理化器械株式会社製)を用いて実施した。
【実施例】
【0035】
玄米200gと、所定量の純水をポリエチレン袋に入れ、袋の中の空気が残らないよう減圧に保ちながら密閉し、シーラーを用いて封入した。その後、直ちに55℃に設定しておいた高圧処理装置に入れ、温度を保ちながら、100MPa下で24時間処理を行った。処理後の玄米を成分富化玄米試料とし、この玄米を乾燥後精米したものを、本実施例における成分富化精白米の試料とした。
【実施例】
【0036】
玄米50gと、1%コチニール水溶液30ml(色素水溶液が玄米重量の60%量)をポリエチレン袋に入れ、袋の中の空気が残らないよう減圧に保ちながら密閉し、シーラーを用いて封入した。その後、直ちに55℃に設定しておいた高圧処理装置に入れ、温度を保ちながら、100MPa下で24時間処理を行った。処理後の玄米を成分添加玄米の試料とした。
【実施例】
【0037】
(実験例2 成分富化米粉の製造)
上記実験例1で製造した成分富化精白米を、ロータースピードミル(p-14 フリッチュ・ジャパン株式会社製)を用いて製粉し、成分富化米粉の試料とした。
【実施例】
【0038】
(実験例3 コントロール米の製造)
実験例1と同様のコシヒカリ玄米をコントロール玄米とした。また、これを精米して、未処理の精白米を製造し、これをコントロール精白米の試料とした。また、コントロール精白米を実験例2と同様の家庭用ミルで製粉し、これをコントロール米粉の試料とした。
【実施例】
【0039】
(実体顕微鏡による観察)
実験例1、2および3で製造した成分富化精白米およびコントロール精白米断面について、実体顕微鏡を用いて観察を行った。図1は、成分富化精白米およびコントロール精白米断面の実体顕微鏡像である。図中左上の未処理と記載された図は、コントロール精白米の断面を示し、図中右下の100MPa、55℃、24hと記載された図は、成分富化精白米の断面を示す。この結果から、成分富化精白米において、ひび割れが少なく、コントロール精白米と同程度の砕粒率であることが認められた。これは、本実施例において、成分富化の加工を施しても、粒割れ等による精米歩合の低下が防止されていることを示している。また、ひび割れが少ないことにより、精白米、および米粉の食味を向上させるのに寄与している。
【実施例】
【0040】
(精米歩合の測定)
実験例1で製造した成分富化玄米について、加工時に浸漬する水量による精米歩合の変化を測定した。加工した玄米を乾燥後、家庭用精米機(RSKM5B 株式会社サタケ製)により精米した。図2は、添加水量と、玄米の吸水率、精米歩合の関係を示すグラフを示す。この結果から、添加水量が増加するに従って精米歩合も向上し、添加水量が50重量%以上となると、精米歩合が80%を超えることが認められた。
【実施例】
【0041】
(色素含浸の観察)
実験例1で製造した成分添加玄米について、断面を肉眼観察し、種皮由来でない成分の含浸を確認した。図3は、成分添加玄米および低圧、常温で加工した玄米の断面写真を示す。図中、左の2例が低圧、常温の玄米を示し、右の2例が高圧、高温の成分添加玄米である。また、上記高圧、高温の例のうち、左側は加工時間3時間の例であり、右側は加工時間24時間の例である。図から、成分添加玄米において、色素が内部まで含浸している様子が認められた。また、加工時間が長くなるに従って、含浸の程度が向上している様子が認められた。
【実施例】
【0042】
(電子顕微鏡による観察)
実験例1、2および3で製造した成分富化玄米、成分富化精白米およびコントロール精白米の表面、および断面について、走査型電子顕微鏡を用いて観察を行った。図4は、成分富化精白米表面のSEM像(5000倍)である。また、図5は、コントロール精白米表面のSEM像(5000倍)である。また、図6は、成分富化精白米断面のSEM像(1000倍)である。また、図7は、コントロール精白米断面のSEM像(1000倍)である。また、図8は、成分富化玄米切片のSEM像(5000倍)である。また、図9は、コントロール玄米切片のSEM像(5000倍)である。この結果から、成分富化玄米の切片、成分富化精白米の表面および断面において、でんぷんの形状が崩れており、角が取れた角丸状になっていることが認められた。このでんぷんの形状は、米、および米粉の食感、触感を向上させるのに寄与している。
【実施例】
【0043】
(総ポリフェノール量の測定)
本発明に係る成分富化精白米の可溶性総ポリフェノール量およびフェノール酸量を定量した。米試料中の総ポリフェノール量はChandrikaらの方法を参考に、一部改変したFolin-Ciocalteu法で測定した。米に含まれるポリフェノール類の主要な成分はフェルラ酸であることから、総ポリフェノール量をフェルラ酸当量で表わした。
【実施例】
【0044】
フェルラ酸100mgに50%アセトン水を加えて100mlに定容し、1mg/mlのフェルラ酸標準溶液を調製した。この標準溶液に純水を加えて適宜希釈し、複数の濃度のフェルラ酸標準溶液を調製した。各フェルラ酸標準溶液0.5mlに純水を加えた後、フォリン・シオカルト-フェノール試薬1.0ml、20%炭酸ナトリウム水溶液(w/v)1.0ml、純水4.5mlを加えて反応させた。その後、遠心分離(5,000×g, 5分間)し、得られた上清の725nmにおける吸光度を分光光度計(UV-1800 UV/VIS Spectrophotometer 島津株式会社製)を用いて測定し、吸光度の値とフェルラ酸濃度から検量線を作成した。
【実施例】
【0045】
成分富化精白米、およびコントロール精白米について、総ポリフェノール量を上記と同様の方法で吸光度から定量した。測定は各処理試料溶液につき2回ずつ行い、各試料溶液の測定値はフェルラ酸を標準物質として作成した検量線に代入して、可溶性の総ポリフェノール量を算出した。実験では、総ポリフェノール量は、精白米、玄米および米糠100g当たりのフェルラ酸当量(FAE mg/精白米100g)で表わした。
【実施例】
【0046】
表1は、加工時に加温する温度ごとの成分富化玄米およびコントロール玄米それぞれの精米歩合、成分富化玄米およびコントロール玄米をそれぞれ精米した、成分富化精白米およびコントロール精白米100g中に含まれるフェルラ酸当量を表した表である。表中、成分富化玄米と書かれた項目では、付加する圧力と温度を変更してそれぞれの数値を示している。表から、加温する温度が向上するに従って、精米歩合と総ポリフェノール量が向上していることが認められた。特に、55℃、100MPaで処理した成分富化精白米においては、総ポリフェノール量が86.0mg/100gと、コントロール米の31.0mg/100gと比較して、約3倍の量のポリフェノールを含有することが認められた。また、本発明に係る成分富化玄米を製造する際には、付加する圧力、および温度が高いほど、ポリフェノール量が増加し、同時に、精米歩合が向上することが認められた。
【実施例】
【0047】
【表1】
JP2015084658A_000003t.gif
【実施例】
【0048】
(チアミンの測定)
本発明に係る成分富化精白米に富化された成分として、チアミンの定量を行った。測定は、HPLC法を用いて行い、チアミン塩酸塩として定量した。図10は、成分富化精白米およびコントロール精白米それぞれ100g中に含まれるチアミンの量を表したグラフである。グラフ中、未処理とされるデータがコントロール米を示し、水/温/圧をされるデータが成分富化精白米を示している。この結果から、成分富化精白米において、0.22mg/100gと、コントロール米の0.09mg/100gと比較して、約2.4倍の量のチアミンを含有することが認められた。
【実施例】
【0049】
(ナイアシンの測定)
成分富化玄米に富化された成分として、ナイアシンの定量を行った。測定は、Lactobacillus plantarum ATCC8014菌株を使用した微生物定量法を用いて行った。なお、この際、ニコチン酸相当量、トリプトファンは考慮していない。図11は、成分富化精白米およびコントロール精白米それぞれ100g中に含まれるナイアシンの量を表したグラフである。グラフ中、未処理とされるデータがコントロール精白米を示し、水/温/圧をされるデータが成分富化精白米を示している。この結果から、成分富化精白米において、4.32mg/100gと、コントロール米の1.78mg/100gと比較して、約2.4倍の量のナイアシンを含有することが認められた。
【実施例】
【0050】
(遊離γ-アミノ酪酸の測定)
成分富化玄米に富化された成分として、γ-アミノ酪酸の定量を行った。測定は、アミノ酸自動分析法を用いて行った。その結果、コントロール精白米では、含有量が検出限界以下であったため、定量できなかったのに対し、成分富化精白米では、16mg/100g検出され、成分富化精白米では、コントロール精白米よりも多くのγ-アミノ酪酸を含有することが認められた。
【実施例】
【0051】
(フィチン酸の測定)
成分富化玄米に富化された成分として、フィチン酸の定量を行った。測定は、バナドモリブデン酸吸光光度法を用いて行い、メソイノシットヘキサリン酸として定量した。その結果、コントロール精白米では、155mg/100gであったのに対し、成分富化精白米では、183mg/100g検出され、成分富化精白米では、コントロール精白米よりも多くのフィチン酸を含有することが認められた。
【実施例】
【0052】
(米粉試料の物性の分析)
成分富化玄米および成分富化米粉の物性を評価するため、米粉の平均粒径と、でんぷん損傷率を測定した。粒度の測定には、レーザー回折・散乱式粒度分析計(MT3000LOW-DRY 日機装株式会社製)を使用し、乾式法による粒度分布計測値から、平均粒径を求めた。粒度分布の測定は、各試料3回ずつ行い、平均値(μm)を算出した。また、でんぷん損傷率の測定には、STARCH DAMAGE KIT(K-SDAM Megazyme社製)を使用した。結果を表2に示す。
【実施例】
【0053】
【表2】
JP2015084658A_000004t.gif
【実施例】
【0054】
表2は、成分富化米粉およびコントロール米粉の平均粒径およびでんぷん損傷率を測定した結果を示す。表から、成分富化米粉の平均粒径とでんぷん損傷率が、いずれもコントロール米粉の値よりも低いことが認められた。これは、成分富化玄米の製造を行う加工時に、加圧をする工程があるため、これにより米の密度が高まったことによる。米の密度が高いこと、およびでんぷん損傷率が低いことは、炊飯時のでんぷんの糊化、溶出を抑制し、食味を向上させるのに寄与している。
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
5
【図7】
6
【図8】
7
【図9】
8
【図10】
9
【図11】
10