TOP > 国内特許検索 > スルホニルアジド誘導体およびアシルスルホンアミド誘導体の製造方法並びにそれらの利用。 > 明細書

明細書 :スルホニルアジド誘導体およびアシルスルホンアミド誘導体の製造方法並びにそれらの利用。

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第6112659号 (P6112659)
公開番号 特開2014-210754 (P2014-210754A)
登録日 平成29年3月24日(2017.3.24)
発行日 平成29年4月12日(2017.4.12)
公開日 平成26年11月13日(2014.11.13)
発明の名称または考案の名称 スルホニルアジド誘導体およびアシルスルホンアミド誘導体の製造方法並びにそれらの利用。
国際特許分類 C07C 303/36        (2006.01)
C07C 311/51        (2006.01)
C07D 211/56        (2006.01)
C07D 223/12        (2006.01)
C07C 303/40        (2006.01)
FI C07C 303/36
C07C 311/51
C07D 211/56
C07D 223/12 A
C07C 303/40
請求項の数または発明の数 4
全頁数 14
出願番号 特願2013-089114 (P2013-089114)
出願日 平成25年4月22日(2013.4.22)
審査請求日 平成28年4月15日(2016.4.15)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】305060567
【氏名又は名称】国立大学法人富山大学
発明者または考案者 【氏名】畑中 保丸
【氏名】千葉 順哉
【氏名】友廣 岳則
個別代理人の代理人 【識別番号】100114074、【弁理士】、【氏名又は名称】大谷 嘉一
審査官 【審査官】黒川 美陶
参考文献・文献 Zelenskaya, O. V., et al.,Zhurnal Prikladnoi Khimii,1984年,57(5),1155-1156
Ostrowska, K., et al.,Science of Synthesis,2005年,22,489-563
調査した分野 C07C
C07D
CAplus/REGISTRY/CASREACT(STN)
特許請求の範囲 【請求項1】
一般式(1)
【化1】
JP0006112659B2_000015t.gif
「式中、Rは、アルキル基またはアリール基を;Rは、水素原子、アルキル基、アリール基または修飾されていてもよい生体分子を、それぞれ意味し;又はRとRが一緒になって5~7員の環を形成していてもよい;Rは、水素原子、アルキル基またはアリール基を意味する。
で表されるチオアミド誘導体と
一般式(2)
【化2】
JP0006112659B2_000016t.gif
「式中、Rは、アルキル基、無置換のフェニル基または機能性分子を意味する。」
で表されるスルホニルアジド誘導体を反応させることを特徴とする
一般式(3a)または一般式(3b)
【化3】
JP0006112659B2_000017t.gif
【化4】
JP0006112659B2_000018t.gif
「式中、Rは、アルキル基またはアリール基を;Rは、水素原子、アルキル基、アリール基または修飾されていてもよい生体分子を;R2aは、水素原子またはRと一緒になって5~7員の環を形成していてもよい;Rは、水素原子、アルキル基またはアリール基を;Rは、アルキル基、無置換のフェニル基、または機能性分子を、それぞれ、意味する。」
で表されるスルホニルアミジン誘導体の製造方法。
【請求項2】
反応を水または含水溶媒中で行う請求項1に記載のスルホニルアミジン誘導体の製造方法。
【請求項3】
請求項1に記載のスルホニルアミジン誘導体を加水分解反応に付すことを特徴とする
一般式(4)
【化5】
JP0006112659B2_000019t.gif
「式中、は、アルキル基又はアリール基を;Rは、アルキル基、無置換のフェニル基、または機能性分子を、それぞれ、意味する。
で表されるアシルスルホンアミド誘導体の製造方法。
【請求項4】
脱着可能な生体ラベル化の方法であって、以下の工程を含む方法。
(1)修飾されていてもよい生体分子のアミノ基に、[(チオアシル)チオ]酢酸またはジチオ酢酸エステルを反応させて、一般式(1a)
【化6】
JP0006112659B2_000020t.gif
「式中、R1aは、アルキル基を;R2bは、修飾されていてもよい生体分子を;3aは、水素原子を、それぞれ、意味する。」
で表されるチオアミド誘導体とする工程、
(2)一般式(1a)のチオアミド誘導体に、一般式(2a)
【化7】
JP0006112659B2_000021t.gif
「式中、R4aは、機能性分子を意味する。」
で表されるスルホニルアジドを反応させ、一般式(3b’)
【化8】
JP0006112659B2_000022t.gif
「式中、R1aは、アルキル基を;R2bは、修飾されていてもよい生体分子を;R4aは、機能性分子を、それぞれ、意味する。」
で表されるスルホニルアミジン誘導体とする工程、
(3)スルホニルアミジン誘導体を測定する工程、
(4)測定が終了したスルホニルアミジン誘導体を加水分解する工程
(5)修飾されていてもよい生体分子を回収する工程
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、チオアミドとスルホニルアジドを使用するスルホニルアミジン誘導体およびアシルスルホンアミド誘導体の製造法、該製造法で得られたチオアミド誘導体とスルホニルアジド誘導体を利用に関する。
【背景技術】
【0002】
自然は、少数の有用反応を利用して多様な機能分子を構築している。この自然の合理性に学び、高い反応性・選択性を持った反応で比較的単純な小分子パーツを多様に組み合わせ、新たな機能性分子を創出する鍵反応をクリック反応と総称し、バリー・シャープレスによって提案された。この反応の代表的なものに、アルキンとアジドによる [3+2] 型の付加環化反応(Huisgen 反応)がある(非特許文献1)。
【0003】
クリック反応は、生体直交性(通常は生体分子の構造中にない官能基の組み合わせで、これらが互いに選択的に反応しかつ、そのことが他の内因性分子には影響を与えない化学的性質)を持つ代表的な反応であり、生体に緩和な条件で新たな化学結合を導入することができるため、細胞表面の生体分子を特異的に蛍光可視化する等の高度な技術に応用されている(非特許文献2)。
アミド結合形成反応としての Staudinger 反応(非特許文献3)や、アシルスルホンアミド結合形成反応としての Sulfo Click 反応(非特許文献4)なども、生体直交性を有するクリック反応の例として挙げられる。
一方、特定のチオアミドとトリルスルホニルアジドからアミジン誘導体が製造できることが知られている(非特許文献5)
【先行技術文献】
【0004】

【非特許文献1】H. C. Kolb, M. G. Finnand K. B. Sharpless, Click Chemistry: Diverse Chemical Function From a Few GoodReactions, Angew. Chem. Int. Ed., 40, 2004-2021 (2001)
【非特許文献2】E. M. Sletten and C. R.Bertozzi, From Mechanism to Mouse: A Tale of Two Bioorthogonal Reactions, Acc.Chem. Res., 44, 666-676 (2011))。
【非特許文献3】E. Saxon, S. J. Luchansky, H. C. Hang, C. Yu, S. C. Lee and C. R.Bertozzi, Investigating Cellular Metabolism of Synthetic Azidosugars with theStaudinger Ligation, J. Am. Chem. Soc. 124, 14893-14902 (2002)
【非特許文献4】N. Shangguan, S. Katukojvala, R. Greenberg and L. J. Williams, J.Am. Chem. Soc., 125, 7754-7755 (2003)
【非特許文献5】Zelenskaya, O. V. et al. Zhurnal Prikladnoi Khimii, 57, 1155-1156(1984)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
Huisgen反応はクリック反応の代表例であり利用例も多いが、加熱もしくは毒性の強い銅触媒を必要とするため、タンパク質などの生体分子や細胞に対して直接利用しにくいといった問題点を持つ。Staudinger反応には有機リン試薬が、Sulfo Click 反応にはルチジンなどの有機塩基がそれぞれ必要であり、生体系への直接利用には添加剤不要の系が望ましい。これらの問題点を克服すべく、銅触媒を用いないHuisgen 反応が開発されてきた。この反応では細胞系への応用が報告されているが、特殊で高価なアルキンを必要とするため、より安価で汎用性の高いクリック反応の開発が望まれている。
また、上記非特許文献5の反応においても、溶媒としてピリジンを用い反応温度も100℃であり、生体系への直接利用は想定されていない。
【課題を解決するための手段】
【0006】
チオアミドとスルホニルアジドを使用して、スルホニルアミジン類およびアシルスルホンアミド類を製造する。該反応は、添加剤不要、温和な条件下、水溶液でも進行する汎用性の高い生体直交型の新規クリック反応である。
以下に本発明を詳細に説明する。
【0007】
本発明において、アルキル基とは、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、tert-ブチル、ペンチルおよびヘキシル基などの直鎖状または分岐鎖状のC1-6アルキル基;アリール基とは、フェニル、インデニル、ナフチルなどを;RとRが一緒になって形成される5~7員の環とは、ピロリジン環、ピペリジン環、ホモピペリジン環を意味する。
本発明において、生体分子とは、糖類、脂質、核酸塩基、核酸、アミノ酸、ペプチドまたはタンパク質を意味し、修飾された生体分子とは、アミノ基を有していない生体分子にアミノ基が導入された生体分子を意味する。
本発明において、機能性分子とは、蛍光分子、ビオチン、抗体またはそれら担持する磁気ビーズ、プレートなどを意味する。
【0008】
本発明の第1の発明は、以下の、スルホニルアミジン誘導体の製造方法である。
【化1】
JP0006112659B2_000002t.gif

【0009】
「式中、Rは、アルキル基またはアリール基を;Rは、水素原子、アルキル基、アリール基または修飾されていてもよい生体分子を2aは、水素原子またはRと一緒になって5~7員の環を形成していてもよい;Rは、水素原子、アルキル基またはアリール基を;Rは、アルキル基、無置換のフェニル基、または機能性分子を、それぞれ、意味する。」
【0010】
本発明の第2の発明は、以下の、アシルスルホンアミド誘導体の製造方法である。
【化2】
JP0006112659B2_000003t.gif

【0011】
「式中、Rは、アルキル基またはアリール基を;Rは、水素原子、アルキル基、アリール基または修飾されていてもよい生体分子を2aは、水素原子またはRと一緒になって5~7員の環を形成していてもよい;Rは、水素原子、アルキル基またはアリール基を;Rは、アルキル基、無置換のフェニル基、または機能性分子を、それぞれ、意味する。」
【0012】
本発明の第3の発明は、以下の脱着可能な生体ラベル化方法である。
【化3】
JP0006112659B2_000004t.gif

【0013】
「式中、R1aは、アルキル基を;R2bは、修飾されていてもよい生体分子を;R3は、水素原子を;R4aは、機能性分子を、それぞれ、意味する。」
【発明の効果】
【0014】
本発明方法は、チオアミドとスルホニルアジドを基質とする緩和なクリック反応により、スルホニルアミジンが高収率で生成し、容易にアシルスルホンアミドへと変換可能である。
また、クリック生成した結合の一部は、アシルスルホンアミドへの変換時に切断され、さらにアシルスルホンアミドもN-アルキル化後に切断可能である。
本発明方法では、脂肪族置換基、芳香族置換基、環状骨格など広範に反応が進行する。また、生体直交性を有し、水溶液中室温で容易に反応が進行するため、生体系への応用できる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】アミジン・アシルスルホンアミドを含む化合物ライブラリーのクリック構築の模式図である。
【図2】「Click & Cleave」型の結合生成・切断反応の展開の模式図である。
【図3】脱着可能な生体ラベル化試薬の開発の模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明のスルホニルアミジン誘導体の製造方法について説明する
【化4】
JP0006112659B2_000005t.gif

【0017】
「式中、Rは、アルキル基またはアリール基を;Rは、水素原子、アルキル基、アリール基または修飾されていてもよい生体分子を2aは、水素原子またはRと一緒になって5~7員の環を形成していてもよい;Rは、水素原子、アルキル基またはアリール基を;Rは、アルキル基、無置換のフェニル基、または機能性分子を、それぞれ、意味する。」

【0018】
一般式(1)のチオアミド誘導体に一般式(2)のスルホニルアジド誘導体を、溶媒中で反応させることにより一般式(3a)または一般式(3b)のスルホニルアミジン誘導体を得ることができる。この反応で用いられる溶媒は、特に限定されないが、水、含水溶媒、アルコールが挙げられ、好ましくは、水または含水溶媒である。
反応温度は、使用される溶媒により適宜決めればよいが、20℃~60℃、好ましくは室温である。

【0019】
次に、本発明のアシルスルホンアミド誘導体の製造方法について説明する。
【化5】
JP0006112659B2_000006t.gif

【0020】
「式中、Rは、アルキル基またはアリール基を;Rは、水素原子、アルキル基、アリール基または修飾されていてもよい生体分子を2aは、水素原子またはRと一緒になって5~7員の環を形成していてもよい;Rは、水素原子、アルキル基またはアリール基を;Rは、アルキル基、無置換のフェニル基、または機能性分子を、それぞれ、意味する。」

【0021】
一般式(3a)または一般式(3b)のスルホニルアミジン誘導体を加水分解反応に付すことにより一般式(4)アシルスルホンアミド誘導体を得ることができる。この反応は、公知の加水分解に準じて行えばよいが、例えば、希塩酸中、室温といった温和な条件下で行えばよい。

【0022】
次に、本発明の脱着可能な生体ラベル化方法について説明する。この方法は、以下のスキームで示される。
【化6】
JP0006112659B2_000007t.gif

【0023】
「式中、R1aは、アルキル基を;R2bは、修飾されていてもよい生体分子を;R3は、水素原子を;R4aは、機能性分子を、それぞれ、意味する。」

【0024】
工程1:ペプチドまたタンパク質のアミノ基に、一般式(6)の[(チオアシル)チオ]酢酸またはジチオ酢酸エステルを反応させて、一般式(1a)ので表されるチオアミド誘導体とする工程。
工程2:一般式(1a)のチオアミド誘導体に、一般式(2a)のスルホニルアジド誘導体を反応させ、一般式(3b)のスルホニルアミジン誘導体とする工程。
工程3:スルホニルアミジン誘導体を測定する工程。
工程4:測定が終了したスルホニルアミジン誘導体を加水分解する工程。
工程5:修飾されていてもよい生体分子を回収する工程。

【0025】
工程1の[(チオアシル)チオ]酢酸としては、例えば、[(チオアセチル)チオ]酢酸、[(チオベンゾイル)チオ]酢酸などが挙げられるが、[(チオアセチル)チオ]酢酸が好ましい。また、ジチオ酢酸エステルとしては、例えば、ジチオ酢酸メチルやジチオ酢酸エチルなどが挙げられるが、ジチオ酢酸エチルが好ましい。

【0026】
工程2の一般式(2a)のスルホニルアジド誘導体は、例えば、機能分子のアミノ基を以下のようなリンカー形成化合物と反応させたものを用いることが好ましい。
【化7】
JP0006112659B2_000008t.gif
【化8】
JP0006112659B2_000009t.gif

【0027】
工程1~工程5は、水溶液中または緩衝液中、0℃~50℃で、15分~24時間実施すればよい。
以下、本発明を実施例で説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【実施例】
【0028】
実施例1
<反応溶媒の検討>
【化9】
JP0006112659B2_000010t.gif
【実施例】
【0029】
エタンチオチオアミドとメタンスルホニルアジドを各1M用い、各種溶媒中、室温で15時間反応させ、N-(メチルスルホニル)アセチイミダミド[N-(methylsulfonyl)acetimidamide]を得た。各種溶媒でのN-(メチルスルホニル)アセチイミダミドの収率は、以下のとおり。
エタノール37%、メタノール29%、クロロホルム14%、酢酸エチル17%、アセトニトリル16%、アセトン17%、テトラヒドロフラン18%、N,N-ジメチルホルムアミド12%、水63%。
【実施例】
【0030】
実施例2
<スルホニルアミジンの合成>
【化10】
JP0006112659B2_000011t.gif
【実施例】
【0031】
2-チオピペリドン(115mg,1mmol)とベンゼンスルホニルアジド(916mg,5mmol)を1 mL のエタノールに溶解し、15 時間室温で撹拌した。溶媒留去後、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(塩化メチレン:酢酸エチル=1:5)にて精製し、対応するスルホニルアミジン(228mg,96%)を無色固体として得た。
【実施例】
【0032】
融点:144-145℃
1H NMR (DMSO-d6):8.91
(brs, 1 H), 7.79 (dd,
J = 6.8, 1.8 Hz, 2 H), 7.51-7.57 (m, 3 H), 3.22 (brd, J = 2.5 Hz,
2 H), 2.55 (brd, J = 6.5 Hz, 2 H), 1.62-1.64 ppm (m, 4 H).
13C NMR (DMSO-d6):166.9,
143.8, 131.5, 128.7, 125.8, 41.6, 28.6, 20.6, 18.7 ppm.
IR
(KBr):3226, 3140, 3066, 2969, 1614, 1405, 1276, 1148, 847, 754 cm-1.
HRMS
(ESI):calcd for MH+, C11H15N2O2S:
239.0854; found 239.0851.
【実施例】
【0033】
実施例3
各種チオアミド(1mmol)と各種スルホニルアジド(1mmol)をエタノール中で、室温または加熱還流下で反応させ、対応するスルホニルアミジンを得た。結果を表1および表2に示す。
【実施例】
【0034】
【表1】
JP0006112659B2_000012t.gif
【実施例】
【0035】
【表2】
JP0006112659B2_000013t.gif
【実施例】
【0036】
実施例4
<スルホニルアミジンの製造に続くアシルスルホンアミドへの変換>
【化11】
JP0006112659B2_000014t.gif
【実施例】
【0037】
チオアセトアミド(90mg, 1.2mmol)の蒸留水(2mL)溶液に、スルホニルアジド(benzyl 2-(azidosulfonyl)ethylcarbamate:284mg,
1mmol)のTHF(4mL)溶液を加え、50℃にて24 時間撹拌した。反応溶液を室温まで冷却した後、1 M-HCl溶液(6mL)を追加し、室温で 18時間撹拌した。溶媒留去した後、10%メタノール/塩化メチレン溶液で抽出し、有機層を無水硫酸ナトリウムで乾燥した。溶媒留去後、酢酸エチルより再結晶し、目的とするアシルスルホンアミド[benzyl 2-(N-acetylsulfamoyl)ethylcarbamate:240mg,
80%)を無色針状結晶として得た。
【産業上の利用可能性】
【0038】
(1)合成分野での利用として、スルホニルアミジンおよびアシルスルホンアミドを含む化合物ライブラリーのクリック構築が挙げられる。本反応により容易にクリック生成するアミジンは正電荷を、変換後のアシルスルホンアミドは負電荷をそれぞれ有し、医薬品骨格中に利用されている官能基である。この化合物ライブラリーを容易に構築できる特色を生かし、ファモチジン(H2ブロッカー)やシアル酸(抗インフルエンザ薬)の誘導体ライブラリーをクリック構築することができる(図1)。
【0039】
(2)合成分野での利用として、クリック生成した結合の任意切断が挙げられる。切断は、スルホニルアミジンからアシルスルホンアミドへの変換過程でアミンを遊離しつつ起きる。例えば、1級アミンを持つチオアミド(R-C=SNH2)を用いてクリック反応を行うと、アシルスルホンアミドへの変換時にはアンモニアを生じつつ、アミジンが切断される。同様に、2級アミンを持つチオアミド(R-C=SNHR’)の場合は、1級アミン(R’NH2)を生じつつ切断が起きる。またその結果生じたアシルスルホンアミド結合も、N-アルキル化後に容易に切断可能である。したがって本反応を用いることで結合が形成され、その後2段構えで切断箇所とタイミングを任意に選びながら結合を切断することができることから、“Click & Cleave”型のユニークな結合生成・切断反応として展開することができる(図2)。
【0040】
(3)化学修飾分野での利用として、脱着可能な生体ラベル化試薬の開発が挙げられる。本反応の生体直交性を活用し、蛍光分子やビオチン、磁気ビーズなどをクリック導入する新規標識化剤を開発することができる。具体的には、タンパク質などの生体分子に含まれるアミノ基をチオアセチル化することで生体分子のチオアミド体が作成できる。したがって、スルホニルアジドを導入した各種標識化剤を準備すれば、生体分子への標識化剤のクリック導入が可能となる。またクリック形成されたスルホニルアミジンをアシルスルホンアミドに変換する過程で、標識化剤が生体分子から切断されるとともに元の生体分子が遊離してくるため、本反応を任意に脱着可能な新規な標識化法へと展開することができる(図3)。
【0041】
(4)化学修飾分野への展開として、基板上への生体分子のクリック固定化と基板上からの切断が挙げられる。上記(2)と同様に、タンパク質などの生体分子に含まれるアミノ基をチオアセチル化することで生体分子のチオアミド体が作成できる。したがって基板上にスルホニルアジドを予め表面修飾しておけば、基板上に生体分子をクリック固定化することができる。またこちらも(2)と同様に、アシルスルホンアミドに変換する過程で生体分子を基板表面から遊離させ回収することができるため、本反応を任意に脱着可能な新規生体分子固定化法へと展開することができる(図3)。
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2