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明細書 :ヨード比色分光測定による米澱粉特性の評価方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 公開特許公報(A)
公開番号 特開2015-055549 (P2015-055549A)
公開日 平成27年3月23日(2015.3.23)
発明の名称または考案の名称 ヨード比色分光測定による米澱粉特性の評価方法
国際特許分類 G01N  21/27        (2006.01)
G01N  21/33        (2006.01)
FI G01N 21/27 Z
G01N 21/33
請求項の数または発明の数 7
出願形態 OL
全頁数 25
出願番号 特願2013-188951 (P2013-188951)
出願日 平成25年9月12日(2013.9.12)
発明者または考案者 【氏名】大坪 研一
【氏名】中村 澄子
出願人 【識別番号】304027279
【氏名又は名称】国立大学法人 新潟大学
個別代理人の代理人 【識別番号】100080089、【弁理士】、【氏名又は名称】牛木 護
【識別番号】100161665、【弁理士】、【氏名又は名称】高橋 知之
審査請求 未請求
テーマコード 2G059
Fターム 2G059AA01
2G059BB11
2G059CC16
2G059EE01
2G059EE12
2G059FF12
2G059HH02
2G059HH03
2G059JJ01
2G059MM01
要約 【課題】難消化性澱粉含量など、機能性に関係する米澱粉の特性をヨード比色分光測定によって簡易迅速、低コスト、かつ高精度に評価する方法を提供する。
【解決手段】ヨード試薬を添加した米澱粉の紫外領域から可視領域の吸光度曲線から得られる解析値を説明変数とする重回帰式によって米澱粉特性を評価する。米澱粉特性は、難消化性澱粉含量、グルコースの重合度10又は重合度22の糖鎖画分の含量である。紫外領域から可視領域の吸光度曲線から得られる解析値は、可視領域から紫外領域に長波長側から入射光の波長を走査して吸光度を測定したときの、可視領域の最大吸収波長から可視領域の最大吸収波長のつぎに出現する吸光ピークの波長までの吸光度曲線下部の面積である。
【選択図】なし
特許請求の範囲 【請求項1】
ヨード試薬を添加した米澱粉の紫外領域から可視領域の吸光度曲線から得られる解析値を説明変数とする重回帰式によって米澱粉特性を評価することを特徴とする米澱粉特性の評価方法。
【請求項2】
米澱粉特性が難消化性澱粉含量であることを特徴とする請求項1記載の米澱粉特性の評価方法。
【請求項3】
米澱粉特性が、グルコースの重合度10又は重合度22の糖鎖画分の含量であることを特徴とする請求項1記載の米澱粉特性の評価方法。
【請求項4】
紫外領域から可視領域の吸光度曲線から得られる解析値が、可視領域から紫外領域に長波長側から入射光の波長を走査して吸光度を測定したときの、可視領域の最大吸収波長から可視領域の最大吸収波長のつぎに出現する吸光ピークの波長までの吸光度曲線下部の面積であることを特徴とする請求項1~3のいずれかに記載の米澱粉特性の評価方法。
【請求項5】
可視領域から紫外領域に長波長側から入射光の波長を走査して吸光度を測定したときの、可視領域の吸収が出現する波長から可視領域の最大吸収波長までの吸収曲線下部の面積、可視領域の最大吸収波長から400nmまでの吸収曲線下部の面積、400nmから可視領域の最大吸収波長のつぎに出現する吸光ピークの波長までの吸光度曲線下部の面積のうちの1種類又は2種類以上を使用することを特徴とする請求項1~4のいずれかに記載の米澱粉特性の評価方法。
【請求項6】
重回帰分析の説明変数として、可視領域の最大吸収波長、可視領域の最大吸収波長における吸光度、可視領域から紫外領域に長波長側から入射光の波長を走査して吸光度を測定したときの、可視領域の吸収が出現する波長から可視領域の最大吸収波長までの吸収曲線下部の面積、可視領域の最大吸収波長から400nmまでの吸収曲線下部の面積、400nmから可視領域の最大吸収波長のつぎに出現する吸光ピークの波長までの吸光度曲線下部の面積のうちの1種類又は2種類以上を使用することを特徴とする請求項1~4のいずれかに記載の米澱粉特性の評価方法。
【請求項7】
難消化性澱粉含量の推定式が
【数1】
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であることを特徴とする請求項1又は2記載の米澱粉特性の評価方法。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、米澱粉のヨード比色分光特性に基づいて、難消化性澱粉含量および難消化性澱粉と密接な関係のある糖鎖画分含量などの澱粉特性を簡易迅速かつ高精度で評価する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、わが国は少子高齢化社会となり、機能性成分を多く含む食事によって健康の維持増進、疾病予防を図る必要がある。
【0003】
澱粉のアミロース含量の高い米やアミロペクチン長鎖の多い米は、難消化性であり、食後の血糖上昇が緩やかで、糖尿病発症の予防が期待されている(非特許文献1、2)ことから、各種の米の難消化性澱粉及び関連糖鎖画分含量を簡易迅速かつ高精度に測定する技術の開発はきわめて重要である。
【0004】
従来、米澱粉のアミロペクチン鎖長分布は、イソアミラーゼによって枝切りした後に高速液体クロマトグラフによって測定されてきた(非特許文献3)。
【0005】
また、アミロースの分子量分布の精密な分析方法として、花城らは、蛍光標識ゲルろ過法を開発した(非特許文献4)。
【0006】
五十嵐らは、蛍光標識ゲルろ過法によって分析した米澱粉のアミロース分子量分布やアミロペクチン鎖長分布が米澱粉の熱糊化特性や食味に影響すると報告している(非特許文献5)。
【0007】
また、五十嵐らは、蛍光標識ゲルろ過法によって分析したもち米のアミロペクチン単位鎖長分布が餅の硬化性に強く影響すること(非特許文献6)および400nmから900nmの米澱粉のヨード比色吸収曲線から600nmを境界として低波長側と高波長側の2つのピーク面積の比率を求め、この比率が米澱粉の老化性指標として有用であることを報告している(非特許文献7)。
【0008】
これらの従来の測定方法は、アミロペクチン鎖長分布などの正確な測定値が得られるものの、米澱粉における疾病予防機能の期待される難消化性澱粉含量を測定するものではない上に、時間と労力を要し、高速液体クロマトグラフなどの高価な装置を必要とするためにコストのかかる方法であり、育種選抜や食品加工の分野で簡易迅速かつ低コストで高精度に米澱粉の難消化性澱粉含量あるいは難消化性澱粉含量と関係の深い糖鎖画分含量を評価するためには、新たな測定方法が必要とされていた。
【先行技術文献】
【0009】

【非特許文献1】大坪研一、中村澄子、宇都宮一典、増田泰伸、辻 啓介:硬質米と糖尿病発症予防、実用化に向けた取り組み.食品工業, 53(14), 46-51, 2010.
【非特許文献2】Ken’ichi Ohtsubo, Sumiko Nakamura, Keisuke Tsuji, Kazunori Utsunomiya, Yasunobu Masuda, Mineo Hasegawa: Possibility of diabetes prevention by high-amylose rice. Rice studies, present and future, Sankyosyuppan Inc., pp.109-115, 2012.
【非特許文献3】Masako Asaoka, Kazutoshi Okuno, Yasumi Sugimoto, Masahiro Yano, Takeshi Omura, and Hidetsugu Fuwa: Structure and properties of endosperm starch and wated soluble polysaccharides from sugary mutant of rice, Starch, 37, 364-366(11), 1985.
【非特許文献4】Isao Hanashiro and Yasuhito Takeda: Examination of number average degree of polymerization and molar based distribution of amylose by fluorescent labeling with 2-aminopyridine. Carbohydrate Research, 306, 421-426, 1998.
【非特許文献5】Toshinari Igarashi, Isao Hanashiro, and Yasuhito Takeda:Molecular structures and some properties of rice starches from Hokkaido cultivars. J. Applied Glycoscience, 55, 5-12, 2008.
【非特許文献6】Toshinari Igarashi, Masafumi Kinoshita, Hideki Kanda, Tomoko Nakamori, and Toshimi Kusume: Evaluation of hardness of waxy rice cake based on the amylopectin chain-length distribution. J. Applied Glycoscience, 55, 13-19, 2008.
【非特許文献7】五十嵐俊成:北海道米澱粉の分子構造と性質.北海道立農業試験場報告, 127号,12-19, 2010.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、難消化性澱粉含量など、機能性に関係する米澱粉の特性をヨード比色分光測定によって簡易迅速、低コスト、かつ高精度に評価する方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記の課題を解決すべく鋭意研究した結果、本発明者らは、米澱粉試料にヨード試薬を添加し、紫外可視分光測定によって得られる吸光度曲線を解析し、その解析値を推定式に当てはめることによって、難消化性澱粉含量あるいは難消化性澱粉含量と関係の深い糖鎖画分含量を簡易迅速、低コスト、かつ高精度に推定することができることを見い出し、本発明に想到した。
【0012】
すなわち、本発明の米澱粉特性の評価方法は、ヨード試薬を添加した米澱粉の紫外領域から可視領域の吸光度曲線から得られる解析値を説明変数とする重回帰式によって米澱粉特性を評価することを特徴とする。
【0013】
また、米澱粉特性が難消化性澱粉含量であることを特徴とする。
【0014】
また、米澱粉特性が、グルコースの重合度10又は重合度22の糖鎖画分の含量であることを特徴とする。
【0015】
また、紫外領域から可視領域の吸光度曲線から得られる解析値が、可視領域から紫外領域に長波長側から入射光の波長を走査して吸光度を測定したときの、可視領域の最大吸収波長から可視領域の最大吸収波長のつぎに出現する吸光ピークの波長までの吸光度曲線下部の面積であることを特徴とする。
【0016】
また、可視領域から紫外領域に長波長側から入射光の波長を走査して吸光度を測定したときの、可視領域の吸収が出現する波長から可視領域の最大吸収波長までの吸収曲線下部の面積、可視領域の最大吸収波長から400nmまでの吸収曲線下部の面積、400nmから可視領域の最大吸収波長のつぎに出現する吸光ピークの波長までの吸光度曲線下部の面積のうちの1種類又は2種類以上を使用することを特徴とする。
【0017】
また、重回帰分析の説明変数として、可視領域の最大吸収波長、可視領域の最大吸収波長における吸光度、可視領域から紫外領域に長波長側から入射光の波長を走査して吸光度を測定したときの、可視領域の吸収が出現する波長から可視領域の最大吸収波長までの吸収曲線下部の面積、可視領域の最大吸収波長から400nmまでの吸収曲線下部の面積、400nmから可視領域の最大吸収波長のつぎに出現する吸光ピークの波長までの吸光度曲線下部の面積のうちの1種類又は2種類以上を使用することを特徴とする。
【0018】
また、難消化性澱粉含量の推定式が以下の式であることを特徴とする。
【0019】
【数1】
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【0020】
であることを特徴とする請求項1又は2記載の米澱粉特性の評価方法。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、人の食後血糖上昇を緩やかにすることで糖尿病発症予防や肥満予防などの機能性が期待される難消化性澱粉の米における含量を、定温器と分光光度計のみを必要とする米澱粉のヨード比色分光測定によって、簡易迅速かつ低コストで測定することができる。
【0022】
また、本発明によれば、米澱粉のヨード比色分光測定によって重合度10又は重合度22の糖鎖画分の含量を推定することが可能となり、当該米試料の機能性についての可能性を推定することができる。
【0023】
さらに、簡易なヨード比色分光測定によって、従来のアミロース含量に加えて、アミロペクチンの構造についても情報が得られるため、当該試料米の品質特性をある程度推定することも可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】各種の試料米の難消化性澱粉含量を示すグラフである。
【図2】澱粉のヨード比色における分光特性である。
【図3】高アミロース米およびモチ米の澱粉のヨード比色分光特性である。
【図4】良食味米および超硬質米の澱粉のヨード比色分光特性である。
【図5】各種の試料米のアミロース含量を示すグラフである。
【図6】ヨード吸収曲線の解析方法を示す説明図である。
【図7】各種の試料米における澱粉ヨード比色の最大吸収波長(λmax)を示すグラフである。
【図8】各種試料米澱粉のヨード比色最大吸収波長における吸光度を示すグラフである。
【図9】各種の米澱粉の分光測定におけるF1の面積を示すグラフである。
【図10】各種の米澱粉の分光測定におけるF2の面積を示すグラフである。
【図11】各種の米澱粉の分光測定におけるF1+F2の面積を示すグラフである。
【図12】難消化性澱粉と相関を示す新指標(New λmax)である。
【図13】米澱粉の分光特性に基づく糖鎖画分含量の推定式である。
【図14】米澱粉の分光特性に基づく難消化性澱粉含量の推定式である。
【図15】短鎖糖鎖画分を変数とする難消化性澱粉の推定式である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
本発明は、米澱粉のヨード比色分光特性に基づいて、難消化性澱粉含量及び難消化性澱粉と密接な関係のある糖鎖画分含量などの澱粉特性を簡易迅速かつ高精度で評価する技術に関する。

【0026】
本発明における米澱粉とは、精米試料を脱脂・除タンパクしたものであり、低温下で希アルカリによってタンパク質を除去し、続いてエタノール及びアセトンによって脱脂したものを指すが、アルカリに替えてプロテアーゼなどによって除タンパクしても良く、熱ブタノールやヘキサンなどによって脱脂しても良い。

【0027】
本発明におけるヨード試薬とは、アミロースやアミロペクチンの長鎖にヨウ素を結合させることによって青紫色の発色を行うための試薬であり、ヨウ素2gおよびヨウ化カリウム20gを1Lの水に溶解したものを指す。

【0028】
本発明における紫外可視分光測定とは、可視領域(380~780nm)と、紫外領域(200~380nm)の光を糊化澱粉水溶液に照射してその吸光度曲線を得ることを指し、広範囲の波長領域の光を連続的に入射して吸光度を測定した場合の可視領域における吸光度が最大になる波長を最大吸収波長(λmax)と呼ぶ。

【0029】
本発明における重回帰分析とは、1つの目的変数を複数の説明変数で予測しようというもので、多変量解析の1種であり、どの説明変数が、どの程度目的変数に影響を与えているかを知る事ができる。たとえば3つの独立変数がある場合、重回帰式は以下の式となる。それぞれの独立変数にかかっている係数を「偏回帰係数」と呼ぶ。モデルの適合性は決定係数(重相関係数の2乗)で表され、分散分析で検定できる。

【0030】
【数2】
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【0031】
本発明における澱粉特性とは、澱粉の機能上の特性を指し、たとえば摂食後の消化吸収性のような生理機能上の特性や、糊化澱粉の粘度特性のような物理的な特性を指す。

【0032】
本発明における難消化性澱粉とは、摂食後に人の胃や小腸まで消化・吸収されにくい澱粉を指し、澱粉分子が共有結合によって相互に架橋されている場合や、化学的に修飾されている場合、水素結合によって結晶化している場合、澱粉分子が構造的に他の素材で被覆されている場合、糊化澱粉が老化したものなどが挙げられ、食後血糖上昇が緩やかになる、食物繊維と同様に整腸効果があるなどと報告されている澱粉を指す。

【0033】
本発明における糖鎖画分とは、澱粉を構成するアミロースやアミロペクチンがアミラーゼやイソアミラーゼによって部分分解を受けて形成されるグルコースの重合体を指し、ゲルろ過クロマトグラフィーなどの手法を用いることで、分子量の大小による分離・分画を行うことができる。

【0034】
以下、実施例に基づいて本発明を詳細に説明するが、本発明はこれら実施例に何ら限定されるものではない。
【実施例1】
【0035】
(試料米の難消化性澱粉含量の測定)
精米2gを10mLの0.1%水酸化ナトリウムに懸濁し、4℃で3時間、振とうし、除タンパクした。軽く遠心し、沈殿を3回純水で洗浄し、2回99%エタノールで洗浄し、次いでアセトンで洗浄して風乾し、試料澱粉とした。
【実施例1】
【0036】
乾物重量100mgの澱粉試料を試験管に取り、メガザイム社製レジスタントスターチ測定用キットを用いて、難消化性澱粉含量を測定した。結果は図1に示すとおりであり、EM174、越のかおり、北陸粉243号などが高い値を示した。
【実施例2】
【0037】
(鎖長の異なる糖鎖画分の定量)
実施例1で調製した澱粉試料4mgを蒸留水1.6mLに懸濁し、100℃で澱粉を糊化し、1M酢酸緩衝液pH3.5を16μL加え、pH3.5に調製した後、イソアミラーゼ(林原生化学研究所製)0.67μL(0.03U/mg)を加え、45℃で15時間反応させ、澱粉の1,6グルコシド結合を枝切りした。次いで、100℃で10分間加熱して酵素を失活させ、水中で冷却し、遠心濃縮機(トミー製CC-105)で乾燥試料とした。
【実施例2】
【0038】
この試料にジメチルスルホキシド111μLを加えて加熱溶解した。これに蒸留水89μLと2-アミノピリジン200μLを加えて良く混合し、暗所で60℃、1時間インキュベートした。その後、シアノ水素化ホウ素ナトリウムを200μL加え、24時間インキュベートし、HPLC用試料とした。次にこの試料をメンブレンフィルター(ミリポア製、ポアサイズ0.2μm)で濾過し、濾液20μLを日本分光製HPLCに注入して分析を行った。カラムはSHODEXOHPAKSB-803HQとSHODEXOHPAKSB—802.5を連結し、蛍光検出器LP2020で検出した。米試料澱粉の糖鎖画分の測定結果を表1に示す。
【実施例2】
【0039】
【表1】
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【実施例3】
【0040】
(米澱粉のヨード比色分光測定)
試料澱粉溶液の濃度はJulianoのヨード比色定量法に従って行い、まず200~900nmのスキャンを行い、図2に示した、可視領域の最大吸収波長λmaxと、この波長での吸光度であるAλmax、400nmから低波長側の最初の最大吸収波長Bと400nmの面積をF1とし、同様に400nmからλmaxまでの面積をF2、λmaxから900nmまでの面積をF3として測定し、32品種の米澱粉における分光特性を評価した。測定例として、高アミロース米およびモチ米の測定例を図3に、良食味米の例およびアミロペクチン長鎖型の超硬質米の測定例を図4に示す。
【実施例4】
【0041】
(米澱粉のヨード比色分光測定結果の解析)
図5にJulianoの方法による各種の米のアミロース含量を示す。
【実施例4】
【0042】
図6に新たなヨウ素吸収曲線の分析として、澱粉のヨード吸収曲線の値から、もち米のヨード吸収曲線の値との差を求め、この値とヨウ素結合量(アミロース含量)の比率をだし、この値をNew λmaxとした。
【実施例4】
【0043】
ヨード比色分光測定における32品種の試料米のヨード吸収曲線の可視領域の最大吸収波長λmaxの測定値を図7に、それぞれの試料米の可視領域の最大吸収波長における吸光度(Aλmax)を図8に示す。λmaxの値では、高アミロース米の越のかおりが最も高く、アミロース含量がそれほど高くない日印交雑米のカルナローリ、台湾産米の香り米、アミロース含量の低い良食味米の中国産米88号、および北海道産米のゆめぴりか等が高い値を示した。Aλmaxの値では、北陸粉243号を除くAE米は非常に高い値を示し、インド型の夢十色、日印交雑米のホシユタカ、高アミロース米の越のかおりが高い値を示し、カルナローリ、ミズホチカラ等が、良食味米に比べてやや高い値を示した。
【実施例4】
【0044】
また、各試料米のF1を図9に、F2を図10に、F1とF2の合計を図11に示す。次に表1の鎖長分布とヨウ素吸収曲線の各分析値、難消化性澱粉含量の相関分析を行った結果を表2に示す。DP7からDP12まで(重合度7から重合度12まで)の糖鎖画分の含量はF2と、DP12からDP16まで(重合度12から重合度16まで)の糖鎖画分の含量はAλmaxと、DP17からDP19まで(重合度17から重合度19まで)の糖鎖画分の含量はF1と、DP20からDP23まで(重合度20から重合度23まで)の糖鎖画分の含量はF2と、DP24(重合度24)以上の糖鎖画分の含量はAλmaxと、DP25からDP30まで(重合度25から重合度30まで)の糖鎖画分の含量はF2と最も高い相関を示した。この結果、ヨウ素吸収曲線のF2はアミロペクチンの中鎖画分と相関が高く、F1はDP18からDP23まで(重合度18から重合度23まで)のアミロペクチン中鎖画分と相関の高いことが確認できた。これとは相対的にλmaxはDP17からDP23まで(重合度17から重合度23まで)の画分とは相関がなく、短鎖のDP7からDP15まで(重合度7から重合度15まで)の画分とは5%の危険率で有意差を示した。
【実施例4】
【0045】
【表2】
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【実施例4】
【0046】
難消化性澱粉と可視領域の最大吸収波長(λmax)、Aλmax、F1、F2、およびF1+F2との関係を表3に示す。難消化性澱粉含量と相関が最も高かったのはAλmaxであり、F2、F1+F2が1%の危険率で有意な相関を示した。
【実施例4】
【0047】
図6で説明したNew λmaxを各種の試料米について測定した結果を図12に示す。通常のλmaxは、難消化性澱粉と相関を示さなかった(r=0.133)が、New λmaxの場合は、1%の危険率で有意な正の相関を示し(r=0.5967)、米澱粉のヨード比色分光測定の結果から、難消化性澱粉を推定するに当たって有望な指標と考えられた。
【実施例4】
【0048】
【表3】
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【実施例5】
【0049】
(ヨード比色分光測定結果に基づく糖鎖画分含量の推定式の作成)
図13のAとBに示すように、10品種のヨウ素吸収曲線の分析値を説明変数とし、目的変数をAではDP10(重合度10)の糖鎖画分含量、BではDP22(重合度22)の糖鎖画分とし、重回帰分析を行って推定式を作成した結果、これらの推定式の重相関係数はAで0.9467、Bで0.9062示し、きわめて相関係数の高い推定式の作成が可能となった。
【実施例6】
【0050】
(ヨード比色分光測定結果に基づく難消化性澱粉含量の推定式の作成)
実施例4の結果を踏まえて、New λmaxを説明変数に加えて重回帰分析を行った結果を図14に示す。図のAとBに示すように、難消化性澱粉含量を目的変数とし、12品種のヨウ素吸収曲線の分析値を説明変数として、重回帰分析を行って推定式を作成した結果、Aに示すように、決定係数0.9332の検量線が得られた。この推定式について、Aとは異なる10品種によって未知試料への適用性の検定を行った結果、Bに示すように、決定係数0.9326を示し、きわめて相関係数の高く、しかも未知試料への適用性も高い推定式であることが示された。
【実施例6】
【0051】
比較のために、特許文献1に示す五十嵐らの方法によってFr.I/Fr.IIを求め、本実施例の難消化性澱粉含量との相関を調べたところ、r=0.58であり、このことから、本発明の推定式が、従来技術に比べて著しく優れていることが明らかになった。
【実施例7】
【0052】
(難消化性澱粉含量の推定式の作成—その2—)
図15に示すように、難消化性澱粉含量を目的変数とし、9品種のヨウ素吸収曲線の分析値を説明変数として、重回帰分析を行って推定式を作成した結果、図に示すように、決定係数0.8523の検量線が得られた。
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
5
【図7】
6
【図8】
7
【図9】
8
【図10】
9
【図11】
10
【図12】
11
【図13】
12
【図14】
13
【図15】
14