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明細書 :α-アミラーゼ阻害剤

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 公開特許公報(A)
公開番号 特開2014-051436 (P2014-051436A)
公開日 平成26年3月20日(2014.3.20)
発明の名称または考案の名称 α-アミラーゼ阻害剤
国際特許分類 A61K  31/223       (2006.01)
A61P   3/10        (2006.01)
A61P  43/00        (2006.01)
C12N   9/99        (2006.01)
A23L   1/30        (2006.01)
A23L   1/305       (2006.01)
A01K  67/00        (2006.01)
FI A61K 31/223
A61P 3/10
A61P 43/00 111
C12N 9/99
A23L 1/30 Z
A23L 1/305
A01K 67/00 Z
請求項の数または発明の数 8
出願形態 OL
全頁数 13
出願番号 特願2012-194643 (P2012-194643)
出願日 平成24年9月5日(2012.9.5)
発明者または考案者 【氏名】熊谷 日登美
【氏名】赤尾 真
【氏名】小林 ともみ
出願人 【識別番号】899000057
【氏名又は名称】学校法人日本大学
個別代理人の代理人 【識別番号】110001542、【氏名又は名称】特許業務法人銀座マロニエ特許事務所
【識別番号】100101591、【弁理士】、【氏名又は名称】佐藤 静子
審査請求 未請求
テーマコード 4B018
4C206
Fターム 4B018MD19
4B018MD55
4B018ME03
4B018MF01
4C206AA01
4C206AA02
4C206JA58
4C206MA01
4C206MA04
4C206NA14
4C206ZC20
4C206ZC35
4C206ZC61
要約 【課題】合成可能でα-アミラーゼ阻害作用の高い化合物を有効成分とするα-アミラーゼ阻害剤を提供し、さらに食後血糖上昇抑制のために使用することのできる組成物、糖尿病、糖尿病合併症、肥満等の予防、改善及び/または治療のために使用することのできる組成物を提供する。
【解決手段】S-アリルシステインスルホキシドまたはその薬理学上許容される塩もしくはエステルを有効成分とするα-アミラーゼ阻害剤、該α-アミラーゼ阻害剤を含有する食後血糖上昇抑制のための組成物、糖尿病等の予防、治療及び/または改善のための組成物。
【選択図】なし
特許請求の範囲 【請求項1】
S-アリルシステインスルホキシドまたはその薬理上許容される塩もしくはエステルを有効成分とするα-アミラーゼ阻害剤。
【請求項2】
請求項1記載のα-アミラーゼ阻害剤を含む食後血糖上昇抑制のための組成物。
【請求項3】
請求項1記載のα-アミラーゼ阻害剤を含む糖尿病の予防、治療及び/または改善のための組成物。
【請求項4】
医薬組成物である請求項2または3記載の組成物。
【請求項5】
ヒト以外の動物用の医薬組成物である請求項2または3記載の組成物。
【請求項6】
食品添加剤である請求項2または3記載の組成物。
【請求項7】
請求項1記載のα-アミラーゼ阻害剤を含む食品。
【請求項8】
請求項1記載のα-アミラーゼ阻害剤を含む飼料。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、α-アミラーゼ阻害剤及び該α-アミラーゼ阻害剤を含有する糖尿病の予防、治療及び/または改善のための組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、糖尿病の発症と進行には食後の血糖値上昇が密接に関係することが知られてきた。そして、食後高血糖はたとえ軽度であっても血管に大きなダメージを与え、糖尿病合併症の原因となることも明らかにされている。従って、糖尿病の予防及び治療において、食後の血糖値をコントロールすることは非常に重要である。 食事により摂取された多糖類は、唾液α-アミラーゼ及び膵臓α-アミラーゼにより二糖類やオリゴ糖に分解された後、小腸においてグルコシダーゼにより単糖類に分解され、腸管より吸収されて血中に移行し、その結果、血糖値が上昇する。通常は、血糖値が上昇すると、膵臓からインスリンが分泌され、上昇した血糖値を降下させるが、糖尿病または糖尿病予備群の患者においてインスリンが正常に作用しない等の原因により、血糖値が高い状態が続くことになる。
【0003】
食後高血糖の治療薬として、ボグリボース等、グルコシダーゼ阻害により二糖類から単糖類への分解を阻害し、食後の血糖値の急激な上昇を抑制する医薬品が使用されている。しかしながらグルコシダーゼ阻害薬は、グルコシダーゼの阻害により未消化のオリゴ糖を多く生じさせるため、腹部膨満感、下痢、放屁等の副作用があった。このため、別の作用機序に基づいて食後の血糖値上昇を抑制する医薬品が求められている。
【0004】
一方、α-アミラーゼ等の阻害により多糖類からオリゴ糖または二糖類への分解を阻害し、これにより食後血糖値の急激な上昇を抑制する植物成分が知られている。そのような成分としては、小麦アルブミン、ポリフェノール(フラボノイド類)等がある。例えば、特開2012-135227号公報(特許文献1)には、紅茶の成分であるテアシネンシン類及びエピテアフラビン類を有効成分とするα-アミラーゼ阻害剤が開示されている。
【0005】
また、特開2007-197361号公報(特許文献2)には、α-アミラーゼ阻害作用に基づく医薬組成物として、オリゴ糖誘導体を有効成分として含有する糖尿病、食後過血糖症、高血糖症若しくは耐糖能不全の予防又は治療のための医薬組成物が開示されている。
【先行技術文献】
【0006】

【特許文献1】特開2012-135227号公報
【特許文献2】特開2007-197361号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、これらの成分の殆どはタンパク質等の植物抽出物由来の有機高分子化合物やタンパク質を非特異的に変性させることにより酵素を失活させるポリフェノール類であり、合成が困難であるか、または合成に複雑な工程を要する。また、タンパク質の場合には、高分子のため比較的多量に摂取する必要があるということや、摂取後にプロテアーゼによる分解があるということ、ポリフェノールの場合には、α-アミラーゼのみに特異的に作用するのではないということ等で、α-アミラーゼ阻害剤は未だに糖尿病の予防または治療のための医薬品として実用化されていない。
【0008】
本発明の発明者らはニンニクの抽出成分であり、合成により得ることもできるアミノ酸化合物であるS-アリル-L-システインスルホキシドについて研究を進める課程で、驚くべきことにS-アリル-L-システインスルホキシドがα-アミラーゼ阻害作用を有することを見出し、本発明を完成した。
上記のように、従来のα-アミラーゼ阻害物質の殆どが、天然植物由来の有機高分子化合物やポリフェノール類であることから、合成が容易なアミノ酸誘導体のような化合物がα-アミラーゼ阻害作用を有することは全く予想外のことであった。
【課題を解決するための手段】
【0009】
従って、本発明は、下記のα-アミラーゼ阻害剤に関する。
(1)
S-アリルシステインスルホキシドまたはその薬理上許容される塩もしくはエステルを有効成分とするα-アミラーゼ阻害剤。
また、本発明は下記の組成物及び食品及び飼料に関する。
(2)(1)のα-アミラーゼ阻害剤を含む食後血糖上昇抑制のための組成物。
(3)(1)のα-アミラーゼ阻害剤を含む糖尿病の予防、治療及び/または改善のための組成物。
(4)
医薬組成物である(2)または(3)の組成物。
(5) ヒト以外の動物用の医薬組成物である(2)または(3)の組成物。
(6)
食品添加剤である(2)または(3)の組成物。
(7)(1)のα-アミラーゼ阻害剤を含む食品。
(8)(1)のα-アミラーゼ阻害剤を含む飼料。
【0010】
(7)の食品は、糖尿病の予防、治療及び/または改善のための健康食品であり得る。(7)の食品は肥満の予防、治療及び/または改善のための健康食品であってもよい。
【0011】
さらに、本発明は、S-アリルシステインスルホキシドまたはその薬理上許容される塩もしくはエステルの有効量を投与することまたは摂取させることを含む糖尿病、糖尿病合併症及び/または肥満の予防、改善及び/または治療方法、並びにS-アリルシステインスルホキシドまたはその薬理上許容される塩もしくはエステルの有効量を投与することまたは摂取させることを含む食後血糖の上昇を抑制する方法にも関する。
これらの方法は、ヒト以外の動物に行われる方法であってもよい。従って、本発明は、S-アリルシステインスルホキシドまたはその薬理上許容される塩もしくはエステルの有効量をヒト以外の動物に投与することまたは摂取させることを含む糖尿病、糖尿病合併症及び/または肥満の予防、改善及び/または治療方法にも関する。
【0012】
さらに、本発明は、α-アミラーゼ阻害剤として使用するためのS-アリルシステインスルホキシドまたはその薬理上許容される塩もしくはエステル、食後血糖上昇抑制剤として使用するためのS-アリルシステインスルホキシドまたはその薬理上許容される塩もしくはエステル、ヒトまたはヒト以外の動物のための医薬品、特に糖尿病の予防及び/または治療用医薬品として使用するためのS-アリルシステインスルホキシドまたはその薬理上許容される塩もしくはエステル、ヒトまたはヒト以外の糖尿病の予防及び/または改善のための健康食品として使用するためのS-アリルシステインスルホキシドまたはその薬理上許容される塩もしくはエステル、食品添加剤として使用するためのS-アリルシステインスルホキシドまたはその薬理上許容される塩もしくはエステル、糖尿病、糖尿病合併症及び/または肥満の予防、改善及び/または治療に使用するためのS-アリルシステインスルホキシドまたはその薬理上許容される塩もしくはエステルに関する。
【0013】
さらに、本発明はS-アリルシステインスルホキシドまたはその薬理上許容される塩もしくはエステルを含有する食後血糖上昇抑制のための組成物、S-アリルシステインスルホキシドまたはその薬理上許容される塩もしくはエステルを含有する糖尿病の予防、治療または改善のための組成物に関する。
上記本発明の組成物は、好ましくはS-アリルシステインスルホキシドとしての有効成分量が1回の投与あたり10mg/kg体重~1000mg/kg体重、好ましくは100mg/kg体重~200mg/kg体重である組成物である。
【0014】
本発明の食品についても、1回あたり10mg/kg体重~1000mg/kg体重、好ましくは100mg/kg体重~200mg/kg体重のS-アリルシステインスルホキシドまたはその薬理上許容される塩もしくはエステルが摂取される食品であることが好ましい。
【発明の効果】
【0015】
本発明のα-アミラーゼ阻害剤は、唾液α-アミラーゼ及び膵臓α-アミラーゼの作用を阻害することにより、多糖類の分解を抑制し、食後血糖値の急激な上昇を抑制することができる。このため、糖尿病、糖尿病予備軍の患者が医薬、健康食品として摂取した場合、高い食後血糖上昇抑制効果を得られる。
【0016】
本発明において使用されるS-アリルシステインスルホキシドは、食用として長年摂取されているニンニク由来の化合物であるため安全性が高く、また、容易に合成し得る。
さらに、本発明のS-アリルシステインスルホキシドによる食後血糖上昇抑制は、インスリン分泌促進によるものではないとは考えられるため、広い範囲の病態に対して使用することができる。
【0017】
また、S-アリルシステインスルホキシドは水溶性で実質的に無味無臭であり、しかも加熱耐性であるため、加工しやすく種々の機能性食品に利用することができる。
また、本発明のα-アミラーゼ阻害剤を含む組成物または食品または飼料を摂取させて食後血糖の上昇を抑制することにより、体重の減量、肥満の予防、改善及び治療を図ることもできる。
【0018】
さらに、S-アリルシステインスルホキシドはこく味物質であるため、甘味、塩味、うま味成分との同時摂取により、これらの味を増強し、持続性を高めることができる。従って、少量の蔗糖や食塩の添加でも、これらの味を強く感じるため、糖分や塩分の摂取を控えることが可能である。従って、本発明の食品は、糖尿病、糖尿病予備群の患者、また糖尿病に加えて高血圧症を患う患者の食事療法にも有効に使用され得る。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】デンプン負荷試験におけるラットの食後血糖値の変化を示すグラフである。
【図2】デンプン負荷試験における血糖値-時間曲線下面積 (AUC)を示すグラフである。
【図3】デンプン負荷試験におけるラットのインスリン分泌量を示すグラフである。
【図4】図3のグラフのAUCを示すグラフである。
【図5】本発明のα-アミラーゼ阻害剤のα-アミラーゼ阻害活性を示すグラフである。
【図6】本発明のα-アミラーゼ阻害剤のα-アミラーゼ阻害活性を示すグラフである。
【図7】抽出により得られたS-アリル-L-システインスルホキシドの純度を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明において、S-アリルシステインスルホキシド(以下、ACSOと記す)またはその薬理上許容される塩もしくはエステルを含有するα-アミラーゼ阻害剤は、α-アミラーゼ阻害作用により食後の血糖上昇を抑制するための組成物、糖尿病の予防、治療及び/または改善のための組成物に使用することができる。
本発明のα-アミラーゼ阻害剤は、種々の食品に添加して、食後血糖上昇の抑制を図ることのできる食品添加剤として使用することもできる。本発明は、そのような食品添加剤、またはそのような食品添加剤が添加された食品にも関する。なお、そのような食品添加剤は動物用飼料のためのものであってもよい。
本発明のα-アミラーゼ阻害剤及び該α—アミラーゼ阻害剤を含む組成物及び食品は、糖尿病患者だけでなく、糖尿病には至っていないが血糖値が高く、糖尿病になるおそれのある患者にも用い得る。

【0021】
(ACSO)
本発明に使用されるACSOは塩またはエステルの形態であってもよい。ACSOの塩は、製薬学的に許容される塩であり、例として、塩酸、臭化水素酸、ヨウ化水素酸、硫酸、硝酸、リン酸等の無機酸や、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、フマル酸、マレイン酸、乳酸、リンゴ酸、マンデル酸、酒石酸、ジベンゾイル酒石酸、ジトルオイル酒石酸、クエン酸、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、p-トルエンスルホン酸、アスパラギン酸、グルタミン酸等の有機酸との酸付加塩;並びにリチウム、ナトリウム、カリウムのようなアルカリ金属塩;カルシウム、バリウム、マグネシウムのようなアルカリ土類金属塩;アルミニウム塩等の金属塩が挙げられる。ACSOのエステルは、薬理学的に受け入れられるエステルであれば特に限定はない。
また、本発明のα-アミラーゼ阻害剤において、ACSOまたはその塩もしくはエステルには、これらの化合物の水和物も含まれる。

【0022】
ACSOは不斉炭素原子に基づく光学異性体が存在するが、本発明において使用されるACSOは光学異性体の等量または非等量混合物であってもよく、光学異性体の一方であってもよい。好ましくはS-アリル-L-システインスルホキシドである。
ACSOは、例えば、システインをハロゲン化アリルと反応させ、S-アリルシステインを合成し、これを酸化することにより合成することができる。より具体的には、システインをエタノール中に添加して攪拌し、これに臭化アリルを水酸化ナトリウム溶液と共に滴下して反応させ、S-アリルシステインとし、その後、反応液を酸性とすることによりS-アリルシステインを析出させ、これを所望により精製した後、水に懸濁させ、過酸化水素等の酸化剤と反応させることによりACSOを合成することができる。しかしながら、本発明で使用されるACSOの合成法は上記方法に限定されない。

【0023】
ACSOはニンニクから抽出して単離されたACSOであっても良い。
抽出は、例えば、ニンニクを、熱処理等により酵素を失活させた後、破砕し、水または水性溶媒、例えば、水、熱水、水-エタノール混合物、水性緩衝液等で抽出することにより行われる。熱処理は、例えばニンニクを熱水中で加熱する、蒸す、マイクロ波加熱する、焼く等の方法で行い得る。熱処理は、好ましくはニンニク破砕物が80~200℃となる温度で10秒~30分間行われる。水性緩衝液は、例えばpH4~9の水性緩衝液、例えばクエン酸緩衝液である。

【0024】
合成または抽出されたACSOは所望により精製して使用することができる。精製は、例えば再結晶、再沈殿等により行うことができる。また、有機化合物の分離精製に慣用されている方法、例えば、吸着カラムクロマトグラフィー法、分配カラムクロマトグラフィー法等の合成吸着剤を使用する方法、イオン交換クロマトグラフィーを使用する方法、又は、シリカゲル若しくはアルキル化シリカゲルによる順相・逆相カラムクロマトグラフィー法を適宜組み合わせ、適切な溶離剤で溶出することによって、さらに精製することもできる。

【0025】
ACSOは酸性領域でも十分に作用し、酸性食品及び酸性飲料と共に摂取した場合にも作用を発揮する。また、十二指腸等において胃液の影響により腸内pHが酸性となる場合であっても良好に作用する。本発明のACSOを有効成分とするα-アミラーゼ阻害剤、またはこれを含有する組成物、食品、飼料等には、口腔内で酸性環境を作るために、酸または酸性食品と配合することもできる。酸としては、例えばクエン酸、酢酸、アスコルビン酸等の有機酸が挙げられる。酸性食品としては、オレンジ、レモン、グレープフルーツ等の柑橘類の果汁、穀物酢、米酢、黒酢等の食用酢が挙げられる。

【0026】
また、本発明のα—アミラーゼ阻害剤は、異なるpH領域において高い効果を有する別のα-アミラーゼ阻害剤と組み合わせて使用してもよい。
本発明で使用されるACSOは、上記方法により合成または抽出され、所望により精製されたACSO粉末を乾燥したものでも、該粉末の水溶液を凍結乾燥したものとして使用されても良い。

【0027】
(α-アミラーゼ阻害剤、医薬組成物、医薬として使用されるACSO)
本発明は、ACSOを有効成分とするα-アミラーゼ阻害剤、並びに該アミラーゼ阻害剤を含む食後血糖上昇抑制のための医薬組成物及び糖尿病の予防及び/治療のための医薬組成物に関する。また、本発明は医薬品として使用されるACSOに関する。医薬組成物は食後血糖上昇抑制剤または血糖降下剤であり得る。
本発明のα-アミラーゼ阻害剤、並びに該アミラーゼ阻害剤を含む医薬組成物、医薬として使用されるACSOは、糖尿病、糖尿病には至っていないが血糖値が高く血糖値のコントロールが必要な病態、糖尿病合併症、肥満等の予防または治療に使用することができる。なお、糖尿病には、1型糖尿病及び2型糖尿病が含まれる。

【0028】
本発明のα-アミラーゼ阻害剤、医薬組成物、医薬に使用されるACSOは、食品由来の化合物を有効成分とするものであるので安全に摂取でき、糖尿病の長期にわたる治療及び予防に適している。
上記本発明のα-アミラーゼ阻害剤、医薬組成物は、ACSOに、賦形剤、結合剤、希釈剤、添加剤、香料、緩衝剤、増粘剤、着色剤、安定剤、乳化剤、分散剤、懸濁化剤、防腐剤等の薬理学的に許容される補助剤を配合し、製剤技術分野で一般的な方法により製剤化することができる。

【0029】
固形の経口製剤は、例えば、錠剤、散剤、顆粒剤、細粒剤、丸剤、フィルム剤、トローチ剤、カプセル剤、チュアブル剤、糖衣錠等であり、有効成分としてのACSOに、剤形に応じて、賦形剤(例えば乳糖、デキストロース、ショ糖、セルロース、コーンスターチ、デンプン類、部分アルファー化デンプン、結晶セルロース、D-マンニトール、ブドウ糖、炭酸カルシウムおよびリン酸カルシウム等)、滑沢剤(例えばシリカ、タルク、ステアリン酸、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、ポリエチレングリコール、ショ糖脂肪酸エステル、含水二酸化ケイ素等)、結合剤(例えばデンプン類、アラビアゴム、ゼラチン、ヒドロキシプロピルセルロース、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ポリビニルピロリドン等)、崩壊剤(例えばデンプン類、アルギン酸、アルギン酸塩、クロスカルメロースナトリウム、炭酸カルシウム、カルボキシメチルセルロース等)、飽和剤、着色料、矯味剤、湿潤剤(例えばレシチン、ポリソルベート、硫酸ラウリル塩等)等を配合して製造することができる。

【0030】
液状の経口製剤は、例えば溶液、乳濁液及び懸濁液の形態とすることができる。懸濁液及び乳濁液は、担体として、例えば天然ゴム、寒天、アルギン酸ナトリウム、ペクチン、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ポリビニルアルコール等を使用して製造することができる。

【0031】
本発明のα-アミラーゼ阻害剤、医薬組成物中のACSOまたはその薬理上許容される塩もしくはエステル、医薬品として使用されるACSOまたはその薬理上許容される塩もしくはエステルの投与量は、患者の年齢、体重、症状及び投与経路によるが、例えば成人に経口的に投与する場合の投与量は、一日に例えば1~5回、一回当り有効成分量がACSOの量として、例えば0.5g~50g、好ましくは1.0g~10gとなる量である。本発明のα-アミラーゼ阻害剤、医薬組成物、医薬品として使用されるACSOは、例えば食前、食直前または食後に投与される。

【0032】
上記のα-アミラーゼ阻害剤、該α-アミラーゼ阻害剤を含む医薬組成物、医薬品として使用するためのACSOまたはその薬理上許容される塩もしくはエステルは、ヒト以外の動物用のものであってもよい。即ち、本発明は、ACSOまたはその薬理上許容される塩もしくはエステルを有効成分とするα-アミラーゼ阻害剤を含有するヒト以外の動物用の医薬組成物、ヒト以外の動物用の医薬品として使用するためのACSOまたはその薬理上許容される塩もしくはエステルにも関する。

【0033】
(食品)
本発明のα-アミラーゼ阻害剤を含有する組成物及び食品は、たとえば糖尿病、糖尿病合併症、糖尿病関連疾患、肥満、体重の減量等の予防または改善に使用することができる。
本発明の食品は健康食品、例えばサプリメント製剤のようなα-アミラーゼ阻害剤を含有する製剤化された組成物の形態、機能性食品の形態、代替食品の形態であり得る。
組成物の形態の健康食品は、上記で経口投与用の医薬組成物等について記載したような錠剤、散剤、顆粒剤、カプセル剤、糖衣錠、フィルム剤、トローチ剤、チュアブル剤、溶液、乳濁液、懸濁液等の任意の形態のサプリメントとして提供され得る。その場合、本発明の健康食品は、ACSOまたはその薬理上許容される塩もしくはエステルを上記で例示した補助剤と配合して一般的な製剤方法により製剤化したものであり得る。また、本発明の健康食品はACSOまたはその薬理上許容される塩もしくはエステルを有効成分とするα-アミラーゼ阻害剤に加えて、健康増進のための他の成分を含んでいてもよい。

【0034】
そのような成分としては、例えば、アミノ酸,ペプチド;ビタミンE、ビタミンC、ビタミンA、ビタミンB、葉酸等のビタミン類;ミネラル類;糖類;無機塩類;クエン酸またはその塩;茶エキス;油脂;プロポリス、ローヤルゼリー、タウリン等の滋養強壮成分;ショウガエキス、高麗人参エキス等の生薬エキス;ハーブ類:コラーゲン等が挙げられる。
例えば、ACSO、液糖、クエン酸、クエン酸ナトリウム、ビタミンCを混合し、水を加えてドリンク剤の形態の本発明の健康食品を製造することができる。

【0035】
本発明の健康食品は、機能性食品の形態であってもよい。好ましい例としては、緑茶、麦茶、ウーロン茶、紅茶、コーヒー、ココア、スポーツドリンク、水、清涼飲料、乳酸飲料、乳飲料、果汁飲料、ゼリー状飲料、アルコール飲料、薬用酒等の飲料;ビスケット、クッキー、ケーキ、ゼリー、チョコレート等の洋菓子、饅頭、最中、羊羹、煎餅、練切等の和菓子;キャンデー;チューインガム;アイスクリーム、シャーベット等の冷菓;パン、麺類、ごはん、漬物、味噌汁、豆腐もしくはその加工品等の食品;みりん、食酢、甘味料、醤油、味噌、ドレッシング、マヨネーズなどの調味料;ヨーグルト、ハム、ベーコン、ソーセージなどの畜農食品;かまぼこ、揚げ天、はんぺんなどの水産加工品;インスタント食品、レトルト食品等の加工食品等が挙げられる。

【0036】
上記本発明の機能性食品としての健康食品は、上記ACSOまたはその薬理上許容される塩もしくはエステルを、一般食品の原料とともに配合し、通常の方法により加工して製造することができる。ACSOは水溶性で実質的に無味無臭であり、加熱耐性であるため、食品の製造工程で添加しても、メイラード反応が急速に進行しない程度の加熱では、食品の味、臭いに悪影響を及ぼさない。
例えば、茶飲料の形態の本発明の健康食品を下記の方法により製造することができる:穀物茶、ウーロン茶、緑茶、紅茶等の茶葉を単独で又は混合して抽出液を得る。抽出液に、ACSOと、アスコルビン酸、炭酸水素ナトリウムを添加してpH約6.0~6.5に調製し、純水を加えて茶飲料とする。
また、ACSO、グラニュー糖、ゼラチン、オレンジ果汁を加熱して溶解し、冷却してゼリーの形態の本発明の健康食品を製造することができる。

【0037】
さらに、ACSOの粉末または凍結乾燥品と、所望により緑茶抽出物、紅茶抽出物、ウーロン茶抽出物、コーヒー抽出物などの飲料成分抽出物の顆粒もしくは粉末、酸化防止剤(例えばビタミンC)、矯味剤、着色料及び/または香料からなる組成物を1回摂取量毎にスティック包装またはピロー包装に充填して湯に溶かして飲用できる食品として提供してもよい。

【0038】
さらに、本発明の健康食品は栄養補助食品または代替食品の形態であってもよい。栄養補助食品は、食事による栄養摂取を補うための食品である。代替食品は、1日あたり1回または複数の通常の食事に替えて使用するための製品であり、例えばダイエットや肥満治療の目的で使用されるものを意味する。
ダイエットまたは肥満治療目的の代替食品は、一定の範囲のカロリー含有量、例えば好ましくは50~1000カロリー、より好ましくは100~700カロリー、最も好ましくは200~500カロリーのカロリー含有量を有する。

【0039】
栄養補助食品または代替食品は、液体、粉末、固体、半固体の形態の製品であり得る。例えば、バー、スープ、水やミルクなどに溶解または懸濁して摂取される可溶性粉末、シリアル、麺、パン、パスタ製品、ライスプディング、ゼリー等のデザートの形態であり得る。

【0040】
本発明の栄養補助食品または代替食品は、ACSOまたはその薬理上許容される塩もしくはエステルに加え、炭水化物(スクロース、ラクトース、グルコース、フルクトース等の糖類、コーンシロップ、マルトデキストリン、デンプン、加工デンプン等)、タンパク質(乳性タンパク質、乳性ペプチド、大豆タンパク質等)を含有し得る。さらに、所望によりビタミン類、ミネラル類、ハーブ類、アミノ酸、甘味料、調味料、香料、香辛料、酸化防止剤、保存料、着色料、乳化剤、例えばレシチン、卵黄または卵由来乳化剤等、安定剤、果物もしくは野菜またはそれらの小片、乾燥物、濃縮物、ジュースもしくはピューレ、任意の食用塩、例えば塩化ナトリウム、塩化カリウム;クエン酸、乳酸、安息香酸、アスコルビン酸のアルカリ金属塩もしくはアルカリ土類金属塩、コレステロール低下剤、たとえば、イソフラボン、フィトステロール、大豆抽出物または魚油抽出物、茶葉抽出物等を含有していてもよい。

【0041】
なお、本発明の健康食品に対する本発明のACSOまたはその薬理上許容される塩もしくはエステルの添加量は、1回の食事に対して摂取されるACSOが0.5g~50g、より好ましくは1g~10gとなるように添加するのが好ましい。

【0042】
(飼料または動物用サプリメント)
本発明のα-アミラーゼ阻害剤、該α-アミラーゼ阻害剤を含む組成物及び食品はヒト以外の動物用のものであってもよい。従って、本発明は上記α-アミラーゼ阻害剤を含む飼料や動物用サプリメントにも関する。
飼料または動物用サプリメントも、上記健康食品の製造方法に準じて製造され得る。
飼料または動物用サプリメントにおいて、ACSOまたはその薬理上許容される塩もしくはエステルの添加量は、例えば1食当たり10mg/kg体重~1000mg/kg体重、好ましくは100mg/kg体重~200mg/kg体重となる量である。
飼料として製造される場合、通常の飼料の原料にACSOまたはその薬理上許容される塩もしくはエステルを配合して製造することができる。
サプリメントとして製造される場合、そのまま、または飼料に混ぜて摂取するための粉末、顆粒、細粒、液体、錠剤などの形態で製造することができる。

【0043】
(食品添加剤)
本発明のα-アミラーゼ阻害剤を含有する食品添加剤は、たとえばα-アミラーゼ阻害剤としてのACSOまたはその薬理上許容される塩もしくはエステルの粉末または水溶液の凍結乾燥品を所望により他の成分と共に含み、食品加工における食品添加物、特に食後血糖上昇抑制作用を付与するための食品添加物として使用することができる。

【0044】
(予防、改善及び治療方法)
本発明によるACSOの有効量を投与することまたは摂取させることを含む糖尿病、糖尿病合併症及び/または肥満の予防、改善及び/または治療方法、ACSOまたはその薬理上許容される塩もしくはエステルの有効量を投与することまたは摂取させることを含む食後血糖の上昇を抑制する方法において、ACSOまたはその薬理上許容される塩もしくはエステルの投与量は、患者の年齢、体重、症状及び投与経路によるが、例えば成人に経口的に投与する場合の投与量は、一日に例えば1~5回、一回当り有効成分量がACSOの量として例えば0.5g~50g、好ましくは1.0g~10gとなる量である。また、ACSOまたはその薬理上許容される塩もしくはエステルは、例えば食前、食直前または食後に投与され得る。
【実施例】
【0045】
以下、実施例及び試験例により本発明を更に具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
製造実施例1:S-アリル-L-システインスルホキシドの合成
(1)S-アリル-L-システイン(ACS)の合成
L-システイン塩酸塩-水和物50g(0.28mol)を95%エタノール330mlに加え1時間攪拌後、1.9NのNaOH溶液330ml(0.66mol)と臭化アリル28.9ml(0.34 mol)を同時にゆっくりと滴下した。滴下終了後、濃塩酸により反応液のpHを4付近に調整し、4℃で1晩放置することによりS-アリル-L-システイン(ACS)の結晶を析出させた。ここで得られた粗結晶をろ紙で吸引ろ過後、真空乾燥(室温)し、その乾燥粉末を1%酢酸含有沸騰水にて溶解させた。この溶液を15倍量の沸騰水エタノールに加え再結晶化させた。得られた結晶をろ紙で吸引ろ過後、真空乾燥(室温)し、S-アリル-L-システイン(ACS)を得た。
【実施例】
【0046】
(2)S-アリル-L-システインスルホキシドの合成
(1)で合成したS-アリル-L-システイン8.061g(0.05mol)を蒸留水65mlに懸濁させ、S-アリル-L-システイン1molに対して過酸化水素が2molとなるよう、30%過酸化水素11.2ml(0.1mol)をゆっくりと加え、室温で24時間攪拌した。この反応液をろ紙にてろ過後、そのろ過液をロータリーエバポレーターにて減圧濃縮し、1%酢酸含有沸騰水にて溶解させた。この溶液を15倍量の沸騰水エタノールに加え再結晶化させた。得られた結晶をろ紙で吸引ろ過後、真空乾燥(室温)し、S-アリル-L-システインスルホキシドを得た。
【実施例】
【0047】
試験例1:デンプン負荷試験
6週齢Wistar系ラット(n=7群)を予備飼育後、S-アリル-L-システインスルホキシドを0.5もしくは1.0mmol/kg体重となるように7日間経口胃内投与(コントロール群には蒸留水を胃内投与)し、投与7日目に絶食後、可溶性デンプンを1g/kg体重となるように無麻酔下で経口胃内投与した。サンプル群は、ACSOを0.5、1.0mmol/kg体重となるようデンプン溶液に添加し、経口胃内投与した。コントロール群は蒸留水を経口胃内投与した。投与後、0、15、30、45、90分後に尾静脈採血し、血中グルコース濃度を血糖値自動測定装置(バイエル)を用いて測定し、さらに血中インスリン濃度を測定した。
【実施例】
【0048】
結果を図1及び図2のグラフに示す。グラフに示されるように、S-アリル-L-システインスルホキシド(ACSO)は濃度依存的にデンプン摂取後の血糖値上昇およびグルコース吸収量を、コントロール群と比較して有意に低下させた。
また、血中インスリン濃度の測定結果及びAUCを各々図3及び図4のグラフに示す。グラフに示されるように、本発明の血糖値上昇抑制効果はインスリン放出促進によるものではないと考えられる。
【実施例】
【0049】
試験例2:α-アミラーゼ阻害活性の測定
S-アリル-L-システインスルホキシドを0~80mg/mlになるように50mMNaCl、3mMCaCl含有20mMHEPES緩衝液に溶解し、pH4~7におけるα-アミラーゼ阻害活性を測定した。S-アリル-L-システインスルホキシドの類縁化合物であるS-メチル-L-システインスルホキシド(MCSO)、S-エチル-L-システインスルホキシド(ECSO)、S-アリル-L-システイン(ACS)を用い、80mg/mlにおけるα-アミラーゼ阻害活性をpH4~8の範囲で測定した。
【実施例】
【0050】
試料溶液25μlにブタ膵臓α-アミラーゼ0.8U/mlを25ml添加し37℃でインキュベート後、2mMの2-クロロ-4-ニトロフェニル-α-d-マルトリオシド(G3-CNP)をα-アミラーゼの基質として加え、37℃で反応させた。α-アミラーゼによるG3-CNPの分解(下記式の反応)で生成する2-クロロ-4-ニトロフェノール(CNP)の405nmにおける吸光度を測定し、各試料のα-アミラーゼ阻害活性の有無を確認した。
【実施例】
【0051】
【化1】
JP2014051436A_000002t.gif
【実施例】
【0052】
ポジティブコントロールとしては、既にα-アミラーゼ阻害活性を有するとして特定保健用食品にも使用されている5mg/mlの小麦由来のα-アミラーゼ阻害剤を用いた。
その結果、pH6以下で、S-アリル-L-システインスルホキシドはα-アミラーゼを濃度依存的に阻害した(図5)。特に、pH5~6において阻害活性が強くみられ、60~80mg/mlS-アリル-L-システインスルホキシドはα-アミラーゼ活性を80%以上阻害した。一方、S-アリル-L-システインスルホキシドの類縁化合物であるMCSO、ECSO、ACSにはα-アミラーゼ阻害活性がほとんどみられず(図6)、S-アリル-L-システインスルホキシドのα-アミラーゼ阻害活性には、構造中のアリル基およびスルホキシドの構造が必要であることが示唆された。
【実施例】
【0053】
抽出実施例:S-アリル-L-システインスルホキシドの抽出
ニンニク鱗茎1粒(約3g)当たり20秒電子レンジ(960W)で加熱後、等量の水を加え、ミキサーで約30秒間破砕した。このホモジネートをガーゼでろ過後、凍結乾燥をし、ニンニク粗抽出物を得た。このニンニク粗抽出物1gに対し25mlの水を加えて溶解後、エタノールを70~99.5%となるように添加した。10分間撹拌後、遠心分離(17,000g,20分,4℃)を行い、上清を得た。この上清をエバポレータにより30℃で濃縮し、エタノール除去を行い、得られた濃縮物を凍結乾燥した。得られた凍結乾燥物中のS-アリル-L-システインスルホキシドの純度をFmoc誘導体化法により測定した。結果を図7のグラフに示す。グラフに示されるように、90%以上のエタノール濃度では、純度約14%のS-アリル-L-システインスルホキシド粗抽出物が得られた。
【産業上の利用可能性】
【0054】
本発明のα-アミラーゼ阻害剤により、糖尿病の予防、改善及び/または治療のための医薬組成物や健康食品が提供される。
図面
【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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