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明細書 :TRAIL感受性増強剤

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第5867830号 (P5867830)
登録日 平成28年1月15日(2016.1.15)
発行日 平成28年2月24日(2016.2.24)
発明の名称または考案の名称 TRAIL感受性増強剤
国際特許分類 A61K  38/00        (2006.01)
A61K  31/64        (2006.01)
A61K  31/5375      (2006.01)
A61P  35/00        (2006.01)
A61P  35/02        (2006.01)
FI A61K 37/02
A61K 31/64
A61K 31/5375
A61P 35/00
A61P 35/02
請求項の数または発明の数 2
全頁数 14
出願番号 特願2012-534959 (P2012-534959)
出願日 平成23年8月2日(2011.8.2)
国際出願番号 PCT/JP2011/067637
国際公開番号 WO2012/039197
国際公開日 平成24年3月29日(2012.3.29)
優先権出願番号 2010213645
優先日 平成22年9月24日(2010.9.24)
優先権主張国 日本国(JP)
審査請求日 平成26年7月16日(2014.7.16)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】899000057
【氏名又は名称】学校法人日本大学
発明者または考案者 【氏名】鈴木 良弘
【氏名】落合 豊子
【氏名】鈴木 美喜
【氏名】井上 寿男
【氏名】羅 智靖
個別代理人の代理人 【識別番号】110000774、【氏名又は名称】特許業務法人 もえぎ特許事務所
審査官 【審査官】安藤 公祐
参考文献・文献 徳島大学総合科学部自然科学研究,2001年,14,35-46
調査した分野 A61K 45/00
A61K 31/5375
A61K 31/64
A61P 35/00
A61P 35/02
A61P 43/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
特許請求の範囲 【請求項1】
5-クロロ-N-(4-[N-(シクロヘキシルカルバモイル)スルファモイル]フェネチル)-2-メトキシベンズアミド(5-chloro-N-(4-[N-(cyclohexylcarbamoyl)sulfamoyl]phenethyl)-2-methoxybenzamideN-(ヘキサヒドロシクロペンタ[c]ピロール-2(1H)-イルカルバモイル)-4-メチルベンゼンスルホンアミド(N-(hexahydrocyclopenta[c]pyrrol-2(1H)-ylcarbamoyl)-4-methylbenzenesulfonamideまたは4-モルフォリンカルボキシイミジン-N-アダマンチル-N’-シクロヘキシルヒドロクロリド(4-morpholinecarboxyimidine-N-adamantyl-N’-cyclohexylhydrochlorideのいずれか一種以上のTRAIL感受性増強剤を有効成分とし、TRAILと組み合わせて使用される悪性腫瘍治療薬。
【請求項2】
悪性腫瘍が慢性リンパ性白血病、星状細胞腫、髄膜腫またはメラノーマである請求項に記載の悪性腫瘍治療薬。

発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、ATP感受性カリウムチャネル阻害剤を有効成分とするTRAIL(Tumor necrosis factor-related apoptosis-inducing ligand;TRAIL、以下、TRAILと示す)感受性増強剤に関する。また、TRAIL感受性増強剤を用いる悪性腫瘍治療薬に関する。
【背景技術】
【0002】
TRAILはTNF(tumor necrosis factor;TNF、以下、TNFと示す)スーパーファミリーに属するサイトカインであり、腫瘍細胞の細胞表面受容体(DR4、DR5)と結合して腫瘍選択的殺細胞作用(アポトーシス誘導作用)を示すことが知られている。この作用が着目され、現在、悪性腫瘍の新たな治療剤として期待され、前臨床試験が進んでいる。
しかし、慢性リンパ性白血病、星状細胞腫、髄膜腫およびメラノーマ等の一部の悪性腫瘍においては、細胞表面受容体(DR4、DR5)を発現しているにも関わらず、TRAILによる腫瘍選択的殺細胞作用(アポトーシス誘導作用)に対し、抵抗性を示すことが明らかにされた。そこで、これらの悪性腫瘍におけるTRAIL抵抗性を克服することがTRAIL臨床応用に向けての最重要課題のひとつとなっている。
【0003】
本発明者らが、本発明において着目したATP感受性カリウムチャネル阻害剤は、細胞膜に存在するカリウムチャネルを阻害する物質である。カリウムチャネルには、電位差依存性カリウムチャネル、カルシウム依存性カリウムチャネルやATP感受性カリウムチャネル等がある。このうちATP感受性カリウムチャネルは、細胞膜においてカリウムイオンを選択的に通過させることで、インスリン分泌など様々な細胞機能の制御に関わる。
このようなATP感受性カリウムチャネル阻害剤として、5-chloro-N-(4-[N-(cyclohexylcarbamoyl)sulfamoyl]phenethyl)-2-methoxybenzamide(以下、グリベンクラミドまたはGlibenclamideと示す)、N-(hexahydrocyclopenta[c]pyrrol-2(1H)-ylcarbamoyl)-4-methylbenzenesulfonamide(以下、グリクラジドまたはGlicladzideと示す)、または4-morpholinecarboxyimidine-N-adamantyl-N’-cyclohexylhydrochloride(以下、U37883Aと示す)等が知られ、2型糖尿病の治療薬として広く利用されている。
【0004】
グリクラジド、グリベンクラミド等は、1型スルホニル尿素受容体のアンタゴニストとしても知られており、虚血による脳浮腫の治療に使用できることが開示されている(例えば、特許文献1参照)。これは、グリクラジド、グリベンクラミド等によってNCca-ATPチャネルによる細胞内へのNaの流入を阻害し、細胞の脱分極化を防止することにより、細胞障害性浮腫を予防するというものである。
この特許文献1においては、NCca-ATPチャネルがATP感受性カリウムチャネルと同様に、1型スルホニル尿素受容の調節サブユニット等からなるヘテロ多量体構造体であることから、細胞障害性浮腫の予防のために、グリクラジド、グリベンクラミド等の利用を試みたことが記載されている。
【0005】
また、グリベンクラミドはUVB等の紫外線被爆に起因するメラニン合成や真皮色素沈着を濃度依存的に抑制することが確認されている。そして、グリベンクラミドは、細胞毒性を有さず、安全に、メラニン生成抑制剤等の有効成分として使用し得ることも開示されている(例えば、特許文献2参照)。
さらに、グリベンクラミドが容積感受性Clチャネルブロッカーのひとつとして、アポトーシス抑制剤の有効成分となり得ることも開示されている(たとえば、特許文献3参照)。これは、細胞の容積が変化したときに、細胞を元の大きさに戻す調節性容積収縮に関わるClチャネルの働きを容積感受性Clチャネルブロッカーにより抑制することで、アポトーシスの際にみられる細胞収縮を抑制するというものである。
この特許文献3においては、HeLa細胞、U937細胞等の株化された癌細胞を用い、アポトーシス性早期細胞収縮やアポトーシスによる細胞死自体が抑制されていることを確認しており、グリベンクラミドも有効であったことが記載されている。
しかし、これらの公知技術において、グリクラジド、グリベンクラミドまたはU37883A等のATP感受性カリウムチャネル阻害剤を、TRAIL抵抗性を有する悪性腫瘍において、TRAIL感受性を増強するために使用することは検討されていなかった。
【先行技術文献】
【0006】

【特許文献1】特表2008-513447号公報
【特許文献2】特開2010-105947号公報
【特許文献3】特許第3931022号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、TRAIL抵抗性を有する悪性腫瘍において、TRAIL抵抗性を克服することを課題とする。具体的には、TRAIL抵抗性を有する悪性腫瘍において、TRAIL感受性を増強し得る剤を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意研究を行った結果、グリクラジド、グリベンクラミドまたはU37883A等のATP感受性カリウムチャネル阻害剤が、TRAIL抵抗性を有する悪性腫瘍において、TRAIL感受性を増強できることを見出し、本発明を完成するに至った。
本発明のグリクラジド、グリベンクラミドまたはU37883A等のATP感受性カリウムチャネル阻害剤を有効成分とするTRAIL感受性増強剤を使用することにより、TRAIL抵抗性を有する悪性腫瘍においても、TRAILによる腫瘍選択的殺細胞作用(アポトーシス誘導作用)を示すことが可能となる。
【0009】
即ち、本発明は次の(1)~(11)のTRAIL感受性増強剤および悪性腫瘍治療薬等に関する。
(1)ATP感受性カリウムチャネル阻害剤を有効成分とするTRAIL感受性増強剤。
(2)ATP感受性カリウムチャネル阻害剤が5-chloro-N-(4-[N-(cyclohexylcarbamoyl)sulfamoyl]phenethyl)-2-methoxybenzamide、N-(hexahydrocyclopenta[c]pyrrol-2(1H)-ylcarbamoyl)-4-methylbenzenesulfonamideまたは4-morpholinecarboxyimidine-N-adamantyl-N’-cyclohexylhydrochlorideのいずれか一種以上である上記(1)に記載のTRAIL感受性増強剤。
(3)上記(1)または(2)に記載のTRAIL感受性増強剤を有効成分とし、TRAILと組み合わせて使用される悪性腫瘍治療薬。
(4)悪性腫瘍が慢性リンパ性白血病、星状細胞腫、髄膜腫またはメラノーマである上記(3)に記載の悪性腫瘍治療薬。
(5)ATP感受性カリウムチャネル阻害剤を有効成分とする悪性腫瘍のTRAIL感受性増強剤。
(6)ATP感受性カリウムチャネル阻害剤が5-chloro-N-(4-[N-(cyclohexylcarbamoyl)sulfamoyl]phenethyl)-2-methoxybenzamide、N-(hexahydrocyclopenta[c]pyrrol-2(1H)-ylcarbamoyl)-4-methylbenzenesulfonamideまたは4-morpholinecarboxyimidine-N-adamantyl-N’-cyclohexylhydrochlorideのいずれか一種以上である上記(5)に記載のTRAIL感受性増強剤。
(7)上記(5)または(6)に記載のTRAIL感受性増強剤を有効成分とし、TRAILと共に投与されるための悪性腫瘍を処置するための医薬。
(8)悪性腫瘍が慢性リンパ性白血病、星状細胞腫、髄膜腫またはメラノーマである上記(7)に記載の医薬。
(9)上記(5)または(6)に記載のTRAIL感受性増強剤およびTRAILを含む悪性腫瘍治療薬。
(10)ATP感受性カリウムチャネル阻害剤を投与する工程を含むTRAIL感受性の増強方法。
(11)ATP感受性カリウムチャネル阻害剤とTRAILを投与する工程を含む悪性腫瘍の治療方法。
【発明の効果】
【0010】
本発明によって、慢性リンパ性白血病、メラノーマ等のTRAIL抵抗性の悪性腫瘍においてもTRAILによる治療が可能となる。グリクラジド、グリベンクラミドまたはU37883A等のATP感受性カリウムチャネル阻害剤は2型糖尿病の治療剤としてすでに使用されている剤であることから、これらを有効成分とすることにより、安全性の高い悪性腫瘍治療薬の提供が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】Jurkat細胞におけるTRAIL感受性増強剤の効果を示した図である(試験例1)。
【図2】Jurkat細胞におけるTRAIL感受性増強剤の効果を示した図である(試験例1)。
【図3】メラノーマ細胞におけるTRAIL感受性増強剤の効果を示した図である(試験例1)。
【図4】メラノーマ細胞におけるTRAIL感受性増強剤の効果を示した図である(試験例1)。
【図5】正常メラニン合成細胞におけるTRAIL感受性増強剤の毒性の有無を確認した図である(試験例2)。

【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
本発明の「TRAIL感受性増強剤」とは、TRAIL抵抗性を有する悪性腫瘍や、TRAIL抵抗性は示さないもののTRAILによる効果が弱い悪性腫瘍等において、TRAILに対する感受性を増強し、TRAILによる腫瘍選択的殺細胞作用(アポトーシス誘導作用)を示すことを可能とする剤のことをいう。
本発明の「TRAIL感受性増強剤」は、ATP感受性カリウムチャネル阻害剤を有効成分とする剤であり、TRAIL抵抗性を有する悪性腫瘍や、TRAIL抵抗性は示さないものの、TRAILによる効果が弱い悪性腫瘍等において、TRAILに対する感受性を増強できる剤であればいずれのものも含まれる。
本発明の「TRAIL感受性増強剤」は、有効成分となるATP感受性カリウムチャネル阻害剤のみからなる剤であってもよく、有効成分となるATP感受性カリウムチャネル阻害剤の作用を維持できる成分であれば、薬学的に許容されるその他の成分を含有するものであっても良い。本発明の「TRAIL感受性増強剤」は、溶液状、固体状、ゲル状やゾル状等が挙げられるが、形態は特に問わない。
【0013】
「TRAIL感受性増強剤」の有効成分となるATP感受性カリウムチャネル阻害剤は、「TRAIL感受性増強剤」として働き得るATP感受性カリウムチャネル阻害剤であればいずれのものも含まれる。例えば、グリクラジド、グリベンクラミドまたはU37883A等が挙げられ、これらのATP感受性カリウムチャネル阻害剤を一種または複数組み合わせて本発明の「TRAIL感受性増強剤」の有効成分とすることもできる。
グリクラジド、グリベンクラミドまたはU37883A等は、市販されているものであっても良く、ヒト等の生物において安全に使用できるものであれば、従来知られているいずれの方法によって合成されたものであっても良く、独自に合成したものを用いても良い。
本発明の「TRAIL感受性増強剤」に含まれるATP感受性カリウムチャネル阻害剤は、グリクラジドの場合は1~980μg/ml、2~650μg/ml、3~440μg/ml、5~290μg/ml、8~190μg/ml、11~130μg/ml、17~90μg/ml、または25~60μg/mlで含まれていることが好ましく、9.5~38.2μg/mlで含まれていることがより好ましく、38.2μg/mlとなるように含まれていることが特に好ましい。また、U37883Aの場合もグリクラジドと同様である。
グリベンクラミドの場合は1~1900μg/ml、2~1270μg/ml、3~850μg/ml、4~560μg/ml、7~380μg/ml、10~250μg/ml、15~170μg/ml、22~110μg/ml、または33~70μg/mlで含まれていることが好ましく、12.4~49.4μg/mlで含まれていることがより好ましく、49.4μg/mlとなるように含まれていることが特に好ましい。
これらの濃度のATP感受性カリウムチャネル阻害剤を含む「TRAIL感受性増強剤」を用いることで、TRAIL抵抗性を有する悪性腫瘍においてもTRAILによるアポトーシスの誘導を増強することができる。
【0014】
本発明の「悪性腫瘍治療薬」とは、TRAIL抵抗性を有する悪性腫瘍や、TRAIL抵抗性は示さないものの効果が弱い悪性腫瘍等において、TRAILと組み合わせて使用することにより、TRAILによる腫瘍選択的殺細胞作用(アポトーシス誘導作用)を有効に示すことが可能となる薬のことをいう。
本発明の「悪性腫瘍治療薬」は、本発明の「TRAIL感受性増強剤」を有効成分とするものであればいずれのものも含まれる。本発明の「TRAIL感受性増強剤」は、有効成分となるTRAIL感受性増強剤のみを含有するものであってもよく、有効成分となるTRAIL感受性増強剤の作用を維持できる成分であれば、薬学的に許容されるその他の成分を含有するものであっても良い。本発明の「免疫賦活剤」は、溶液状、固体状、ゲル状やゾル状等が挙げられるが、形態は特に問わない。
このような本発明の薬剤の投与は、同時又は順次行うことができる。同時投与は、化合物を単一の組成物として投与するか、同時又はほぼ同時に投与する異なる組成物として投与することによって行うことができる。連続(順次)投与は、必要に応じて任意の順序とすることができる。
【0015】
本発明の「悪性腫瘍治療薬」は、TRAIL抵抗性を有する悪性腫瘍や、TRAIL抵抗性は示さないもののTRAILによる効果が弱い悪性腫瘍等を対象として使用することができる。対象となる悪性腫瘍は、これらの悪性腫瘍に該当すればいずれであってもよく、例えば、慢性リンパ性白血病、星状細胞腫、髄膜腫またはメラノーマ等が挙げられる。
【0016】
以下、実施例をあげて本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【実施例1】
【0017】
<TRAIL感受性増強剤>
1.TRAIL感受性増強剤(A)
グリクラジド(Enzo Life Science社)をTRAIL感受性増強剤(A)として用いた。
グリクラジド5mgをPBS 1.3mlに溶解し、-20℃で保存した。これを使用時に最終濃度が100μMになるように希釈して用いた。
2.TRAIL感受性増強剤(B)
グリベンクラミド(Enzo Life Science社)をTRAIL感受性増強剤(B)として用いた。
グリベンクラミド55mgをDMSO 2.2mlに溶解し、-20℃で保存した。これを使用時に最終濃度が100μMになるように希釈して用いた。
3.TRAIL感受性増強剤(C)
U37883A(Enzo Life Science社)をTRAIL感受性増強剤(C)として用いた。
U37883A5mgをPBS 1.3mlに溶解し、-20℃で保存した。これを使用時に最終濃度が100μMになるように希釈して用いた。
【0018】
[試験例1]
実施例1で製造したTRAIL感受性増強剤と、ポジティブコントロールとして塩化カリウム(KCl)、比較として電位差依存性カリウムチャネル阻害剤(Tetraethylammonium;TEA)を用い、TRAIL抵抗性の悪性腫瘍由来の腫瘍細胞におけるTRAIL感受性増強作用を調べた。
【0019】
<試料>
1.試薬
1)TRAIL感受性増強剤
実施例1で製造したTRAIL感受性増強剤(A)、TRAIL感受性増強剤(B)およびTRAIL感受性増強剤(C)を用いた。
2)塩化カリウム(KCl)
KCl 18.6mgをPBS 1mlに溶解して5倍濃度溶液を作成した。これを使用時に50mMになるように希釈して用いた。
3)電位差依存性カリウムチャネル阻害剤
電位差依存性カリウムチャネル阻害剤(Tetraethylammonium;TEA、Sigma-Aldrich社)2gをPBS 60mlに溶解し、-20℃保存で保存した。これを使用時に最終濃度が20mMになるように希釈して用いた。
【0020】
2.TRAIL抵抗性の悪性腫瘍由来の腫瘍細胞
1)Jurkat細胞
慢性リンパ性白血病由来の腫瘍細胞として、Jurkat細胞(理研バイオリソースセンターより譲受)を用いた。Jurkat細胞はRPMI1640/10%FBSで培養した。
2)メラノーマ細胞(A375)
メラノーマ由来の腫瘍細胞として、メラノーマ細胞(A375)(American Type Culture Collection;ATCC(以下、ATCCと示す)より購入)を用いた。メラノーマ細胞(A375)はDMEM/10%FBS High Glucoseで培養した。
【0021】
3.TRAIL
Killer TRAIL(登録商標),Soluble human recombinant (Enzo Life Science社、500μg/ml)を-20℃で保存した。これを使用時に最終濃度が6.3~100ng/mlになるように希釈して使用した。
【0022】
<試験>
上記2.の24ウエルプレートに接着させ培養した各腫瘍細胞に、25ng/mlとなるように調製したTRAILと、の上記1.のTRAIL感受性増強剤(A)(グリクラジド 38.2μg/ml)、TRAIL感受性増強剤(B)(グリベンクラミド 49.4μg/ml)またはTRAIL感受性増強剤(C)(U37883A 38.2μg/ml)をそれぞれ添加した。添加後24時間経過した後、アポトーシスがどれくらい誘導されているかをフローサイトメトリー(FITC-Annexin V Apoptosis Detection Kit I BD-Pharmingen社)によって調べた。
培養液または0.2% DMSOを加えたもの(図1~4:vehicleと示す)、コントロールとしてTRAILのみを添加したもの(図1~4:TRAIL aloneと示す)およびTRAIL感受性増強剤のみを添加したもの(図1~4:U37883A aloneまたはGlibenclamide aloneと示す)についても調べた。
【0023】
<結果>
図1、2にJurkat細胞の結果を、図3,4にメラノーマ細胞(A375)の結果を示した。
その結果、図2、図4のグラフから読み取れるように、vehicleおよびTRAIL感受性増強剤単独ではいずれもアポトーシスの誘導が増強されていなかったが、本発明のTRAIL感受性増強剤(C)とTRAILを組み合わせて作用させた場合や、TRAIL感受性増強剤(B)とTRAILを組み合わせて作用された場合には、Jurkat細胞およびメラノーマ細胞(A375)のいずれにおいても、TRAILによるアポトーシスの誘導が増強されていることが確認できた。また、TRAIL感受性増強剤(A)とTRAILを組み合わせて作用させた場合も、TRAIL感受性増強剤(C)を用いた場合と同様の結果であった。
従って、これらの結果より、本発明のATP感受性カリウムチャネル阻害剤を有効成分とするTRAIL感受性増強剤によって、TRAIL抵抗性の悪性腫瘍においても、TRAIL感受性を増強でき、アポトーシスを誘導することが可能になることが示された。
なお、ATP感受性カリウムチャネルや電位差依存性カリウムチャネル等のすべてのカリウムチャネルによる細胞内カリウムの排出を抑制するKCl(ポジティブコントロール)と組み合わせた場合も同様の結果が得られたが、電位差依存性カリウムチャネル阻害剤と組み合わせた場合では、TRAILによるアポトーシスの誘導の増強は見られなかった。これは、TRAIL抵抗性の悪性腫瘍におけるアポトーシスの誘導において、電位差依存性カリウムチャネルではなく、ATP感受性カリウムチャネルによって、細胞内カリウムの排出を抑制することが重要であることを示唆するものと考えられた。
【0024】
[試験例2]
実施例1で製造したTRAIL感受性増強剤を用い、正常細胞への毒性の有無を調べた。
<試料>
1.試薬
1)TRAIL感受性増強剤
実施例1で製造したTRAIL感受性増強剤(C)を用いた。
【0025】
2.細胞
1)メラノーマ細胞(A375)
TRAIL抵抗性の悪性腫瘍由来の腫瘍細胞として、試験例1と同様にメラノーマ細胞(A375)(ATCC)を用いた。
2)ヒトメラニン産生細胞 正常細胞として、ヒト上皮メラニン産生細胞(Invitrogen社製)を用いた。
ヒトメラニン産生細胞は、ヒトメラニン産生細胞増殖補助因子(HMGS, Invitrogen)を含むM254培地(Invitrogen)で培養した。
【0026】

3.TRAIL
使用時に最終濃度が100ng/mlになるように希釈して、試験例1と同様に調製したものを使用した。
【0027】
<試験> 上記2.の各細胞を8-チャンバーカバーガラス(Asahi Glass Co.製)に播き、100ng/mlとなるように調製したTRAILと、の上記1.のTRAIL感受性増強剤(C)(U37883A)を終濃度が100μMとなるように、それぞれ添加した。これを37°Cで24時間、COインキュベーター中で培養した後、培地を除きPBSで洗浄した。
それぞれの細胞に各4μMのcalcein-アセトキシメチルエステル(AM)またはethidium bromide homodimerを加え、暗所で室温、30分間静置して、細胞を染色した。ここで、使用したCalcein-AMおよびethidium bromide homodimerは、LIVE/DEAD(登録商標) Viability/Cytotoxicity Kit(Invitrogen社製)に含まれるものである。
細胞染色後、倒立蛍光顕微鏡(IX71 inverted microscope)(Olympus製)で細胞を観察し、生細胞および死細胞についてのデータをLuminaVision ソフトウエア(Mitani Corporation製)で解析した。

【0028】
<結果>
その結果、図5に示したように、ヒトメラニン産生細胞は、TRAIL、TRAIL感受性増強剤(C)およびこれらを組み合わせて作用させても、いずれもアポトーシスを起こした細胞(死細胞)が確認されず、本発明のtrail感受性増強剤(C)は、単独およびTRAILとの組合せであっても、正常細胞には作用しない、毒性の低い剤であることが確認できた。
一方、ヒトメラノーマ細胞に対しては、TRAILおよびTRAIL感受性増強剤(C)はいずれも細胞のアポトーシスを誘導し、これらを組み合わせて使用することによって、著しい細胞死を起こすことが確認できた。
【実施例2】
【0029】
<悪性腫瘍治療薬>
実施例1において製造した、グリクラジド、グリベンクラミドまたはU37883Aを有効成分として含むTRAIL感受性増強剤を有効成分として、悪性腫瘍治療薬を製造した。
【産業上の利用可能性】
【0030】
本発明のTRAIL感受性増強剤の提供によって、慢性リンパ性白血病、メラノーマ等のTRAIL抵抗性の悪性腫瘍においてもTRAILによる治療が可能となる。グリクラジド、グリベンクラミドまたはU37883A等のATP感受性カリウムチャネル阻害剤は2型糖尿病の治療剤としてすでに使用されている剤であることから、これらを有効成分とすることにより、安全性の高い悪性腫瘍治療薬が提供できる。
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4