TOP > 国内特許検索 > 蛍光物質及びその製造方法 > 明細書

明細書 :蛍光物質及びその製造方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第6090838号 (P6090838)
公開番号 特開2014-166143 (P2014-166143A)
登録日 平成29年2月17日(2017.2.17)
発行日 平成29年3月8日(2017.3.8)
公開日 平成26年9月11日(2014.9.11)
発明の名称または考案の名称 蛍光物質及びその製造方法
国際特許分類 C12P   1/04        (2006.01)
C07G  99/00        (2009.01)
FI C12P 1/04 Z
C07G 99/00 C
請求項の数または発明の数 7
微生物の受託番号 NPMD NITE P-1521
全頁数 9
出願番号 特願2013-019971 (P2013-019971)
出願日 平成25年2月4日(2013.2.4)
新規性喪失の例外の表示 特許法第30条第2項適用 第28回日本微生物生態学会大会 プログラム・講演要旨集、第178頁、2012年9月19日発行(第28回日本微生物生態学会大会委員会)
審査請求日 平成28年1月21日(2016.1.21)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】899000057
【氏名又は名称】学校法人日本大学
発明者または考案者 【氏名】岩淵 範之
【氏名】松藤 寛
【氏名】砂入 道夫
【氏名】滝口 肇
【氏名】濱口 峻
個別代理人の代理人 【識別番号】100064908、【弁理士】、【氏名又は名称】志賀 正武
【識別番号】100126882、【弁理士】、【氏名又は名称】五十嵐 光永
【識別番号】100129894、【弁理士】、【氏名又は名称】橋田 知臣
【識別番号】100175824、【弁理士】、【氏名又は名称】小林 淳一
審査官 【審査官】川口 裕美子
参考文献・文献 Atarhouch, T. et al.,Formation of polymeric pigments from syringaldehyde in the presence of bacteria.,European Polymer Journal,1991年,27(6),527-36
滝口肇ら,シリングアルデヒドから水溶性の黒色色素を生産する微生物Pseudomonas sp.ITH‐SA‐1,日本農芸化学会大会講演要旨集(Web),2012年 3月 5日,Vol.2012,Page.2C01P20
調査した分野 C12P 1/04
C07G 99/00
JSTPlus(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
特許請求の範囲 【請求項1】
シュードモナス・エスピー(Pseudomonas sp.)ITH-SA-1株(NITE P-1521)を、シリングアルデヒド共存下で培養して得られた蛍光物質。
【請求項2】
シュードモナス・エスピー(Pseudomonas sp.)ITH-SA-1株(NITE P-1521)を、シリングアルデヒド共存下で培養し、得られた培養物から、アルコール又はアルコール及び水を含有する溶媒で抽出して得られた請求項1に記載の蛍光物質。
【請求項3】
芳香族環を有しない請求項1又は2に記載の蛍光物質。
【請求項4】
分子量が2~9kDaである請求項1~3のいずれか一項に記載の蛍光物質。
【請求項5】
前記アルコールがメタノールである請求項2~4のいずれか一項に記載の蛍光物質。
【請求項6】
シュードモナス・エスピー(Pseudomonas sp.)ITH-SA-1株(NITE P-1521)を、シリングアルデヒド共存下で培養する工程を有する蛍光物質の製造方法。
【請求項7】
前記培養する工程で得られた培養物から、アルコール又はアルコール及び水を含有する溶媒で前記蛍光物質を抽出する工程をさらに有する請求項6に記載の蛍光物質の製造方法。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、新規の蛍光物質及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
リグニンは、植物細胞壁の15~30%を占める主要な成分であり、複雑な構造を有し、未利用バイオマスの一つである。微生物機能を利用して、このようなリグニンを有用性が高い物質に変換する方法の開発は、未利用バイオマスの有効利用という観点から非常に重要である。
このような中、本発明者らは、リグニン由来の成分であるシリングアルデヒドを含有する培地を用いて、特定の微生物を培養することにより、水溶性の黒色色素が得られることを見出している(非特許文献1参照)。
【0003】
一方、有機発光材料は、その多彩で鮮やかな発色性、優れた加工性に加え、検出感度が高く、分子設計により種々の機能付加が可能であり、発光素子、トレーサー、診断薬、試薬等、種々の分野への利用が見込まれることから、優れた化学素材として大きく期待されている。このような有機発光材料のうち、例えば、芳香族環を有する有機蛍光物質については、リグニン由来の成分以外のものを原料として用い、シュードモナス(Pseudomonas)属の微生物により産生されることが知られている(非特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【0004】

【非特許文献1】滝口肇、濱口俊、山下俊輔、松藤寛、岩淵範之、砂入道夫、第28回日本微生物生態学会大会 プログラム・講演要旨集、第178頁、PL-08
【非特許文献2】Kolesnikova IG, Sergeeva LN, Bekhtereva MN, Khokhlova IuM. Formation of pigments by Pseudomonas bacteria in relation to the ratio of medium components. Mikrobiologiia. 1971 May-Jun;40(3):485-9.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、リグニン由来の成分を原料として用いて新規の蛍光物質を得る試みは、その蛍光物質の有用性の高さに比して、未だ十分に為されたとはいえないのが実情である。
【0006】
本発明は上記事情に鑑みて為されたものであり、リグニン由来の成分を原料として得られる新規の蛍光物質、及びその製造方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するため、
本発明は、シュードモナス・エスピー(Pseudomonas sp.)ITH-SA-1株(NITE P-1521)を、シリングアルデヒド共存下で培養して得られた蛍光物質を提供する。
【0008】
本発明の蛍光物質は、シュードモナス・エスピー(Pseudomonas sp.)ITH-SA-1株(NITE P-1521)を、シリングアルデヒド共存下で培養し、得られた培養物から、アルコール又はアルコール及び水を含有する溶媒で抽出して得られたものが好ましい。
本発明の蛍光物質は、芳香族環を有しないものが好ましい。
本発明の蛍光物質は、分子量が2~9kDaであるものが好ましい。
本発明の蛍光物質は、前記アルコールがメタノールであるものが好ましい。
【0009】
また、本発明は、シュードモナス・エスピー(Pseudomonas sp.)ITH-SA-1株(NITE P-1521)を、シリングアルデヒド共存下で培養する工程を有する蛍光物質の製造方法を提供する。
本発明の蛍光物質の製造方法は、前記培養する工程で得られた培養物から、アルコール又はアルコール及び水を含有する溶媒で前記蛍光物質を抽出する工程をさらに有することが好ましい。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、リグニン由来の成分を原料として得られる新規の蛍光物質、及びその製造方法が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】実施例1で得られた(a)黒色色素及び(b)蛍光物質のH-NMRスペクトルのデータである。
【図2】実施例1で得られた(a)黒色色素及び(b)蛍光物質の13C-NMRスペクトルのデータである。
【図3】実施例1で得られた蛍光物質のFT-IRスペクトルであり、aはKBr錠剤法でのスペクトル、bはATR補正を行って得られたスペクトルである。
【図4】実施例1で得られた黒色色素のFT-IRスペクトルであり、aはKBr錠剤法でのスペクトル、bはATR補正を行って得られたスペクトルである。
【図5】実施例1で得られた蛍光物質の励起光及び蛍光のスペクトルである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明に係る蛍光物質は、シュードモナス・エスピー(Pseudomonas sp.)ITH-SA-1株(NITE P-1521)(以下、「本菌株」と略記することがある)を、シリングアルデヒド(以下、「SYAL」と略記することがある)共存下で培養して得られたものである。
本発明者らは、本菌株をSYAL共存下で培養することにより、黒色色素が得られることを確認しているが、本発明に係る蛍光物質は、前記黒色色素とは異なる成分である。

【0013】
本菌株は、岩手県釜石市の生海水から取得でき、例えば、この生海水を微生物源として、SYALと共に無機塩培地又は完全培地に添加して培養を行い、蛍光物質を産生する菌株を単離することにより、取得できる。本菌株は、蛍光物質産生時に黒色色素も産生するため、この黒色色素の産生の有無により、本菌株を識別することも可能である。

【0014】
本菌株は、2013年2月1日付けで、受託番号NITE P-1521として、独立行政法人製品評価技術基盤機構特許微生物寄託センターに受託されてる。

【0015】
本菌株の培養は、SYAL共存下で行えばよいが、培地中のSYALの初期濃度(培養開始時の濃度)は、0.01~20mg/mLであることが好ましく、このようにすることで、蛍光物質の産生量がより増大する。
本菌株の培養は、SYAL以外に本菌株の培養を促進する成分を含有する培地で行ってもよい。ただし、培地中のグルコースの濃度は、0.35質量%以下であることが好ましく、このようにすることで、蛍光物質の産生量がより増大する。

【0016】
本菌株の培養方法は、振とう培養、静置培養等、公知のいずれの方法でもよい。
本菌株の培養温度は、4~30℃であることが好ましい。また、培養時間は、蛍光物質の産生量が十分となるように適宜調節すればよく、特に限定されない。例えば、培養温度が4~30℃である場合、本菌株の培養時間は48~120時間であることが好ましい。

【0017】
本発明に係る蛍光物質は、上記の方法による本菌株の培養(本菌株をSYAL共存下で培養する工程)後に、例えば、本菌株の菌体外に産出された培養物から得られる。そして、前記蛍光物質は、例えば、この培養物からアルコール又はアルコール及び水を含有する溶媒(抽出溶媒)で抽出すること(蛍光物質を抽出する工程)により、高純度で得られる。このとき、黒色色素は抽出溶媒に溶解せず、固形物となるが、蛍光物質は抽出溶媒に溶解するため、ろ過や遠心分離等の固液分離操作を行い、必要に応じて洗浄して得られた液体成分から、溶媒を除去することにより、容易に蛍光物質を分離できる。

【0018】
抽出溶媒に用いる前記アルコールは、水酸基を有し、常温・常圧で液状のものであればよいが、メタノールであることが好ましい。

【0019】
抽出溶媒中のアルコール及び水の総含有量は、95質量%以上であることが好ましく、98質量%以上であることがより好ましく、100質量%であることが特に好ましい。このような範囲とすることで、蛍光物質の分離(回収)効率がより向上する。抽出溶媒中のアルコール及び水以外の溶媒成分の種類は、本発明の効果を損なわない限り、特に限定されない。
また、抽出溶媒中のアルコールの含有量は、アルコールの種類に応じて適宜調節すればよいが、85質量%以上であることが好ましく、90質量%以上であることがより好ましく、95質量%以上であることが特に好ましく、100質量%であってもよい。このような範囲とすることで、得られる蛍光物質の純度がより向上する。

【0020】
蛍光物質の抽出は、例えば、培養物を濃縮し、好ましくは乾固させた後、得られた濃縮物に対して抽出溶媒を添加して撹拌することにより、行うことができる。ここで、「乾固」とは、常温及び常圧下で濃縮物を静置した状態において、この濃縮物の質量が変動しない程度にまで濃縮されることを意味する。そして、上記の抽出操作を繰り返し行うことで、蛍光物質の分離(回収)効率がより向上する。

【0021】
抽出溶媒の使用量は、濃縮物に対して1~100質量倍であることが好ましく、3~30質量倍であることがより好ましい。抽出溶媒の使用量が前記下限値以上であることで、得られる蛍光物質の純度がより向上し、前記上限値以下であることで、蛍光物質の分離(回収)効率がより向上する。

【0022】
蛍光物質は、前記培養物からの抽出以外に、必要に応じてその他の操作を適宜追加して分離してもよい。そして、分離した蛍光物質は、さらに各種クロマトグラフィー等の公知の精製操作に供して、純度を向上させることもできる。

【0023】
本発明に係る蛍光物質は、核磁気共鳴分光法(NMR)、赤外分光法(IR)等の分析によって、有機化合物であるものの、芳香族環を有しないことが確認されている。ここで「芳香族環」とは、芳香族炭化水素環及び芳香族複素環の両方を含む概念である。従来知られている有機蛍光物質は芳香族環を有しており、本発明に係る蛍光物質は、有機非芳香族化合物である点で、従来のものとは全く相違するものである。

【0024】
本発明に係る蛍光物質は、ゲルろ過等の分析によって、分子量が2~9kDa、数平均分子量が6~8kDaの高分子化合物であることが確認されている。

【0025】
本発明に係る蛍光物質は、例えば、極大波長が365nmの光で励起され、極大波長が498nmの蛍光を発生する。すなわち、前記蛍光物質は、紫外線又は可視光線により励起され、青緑色の蛍光を発生する。

【0026】
本発明に係る蛍光物質は、本菌株の培養時における代謝産生物の解析から、以下の化学式で表される経路で本菌株により産生されると推測される。
SYAL共存下で本菌株の培養を開始すると、培養の進行と共に培地中のSYALの濃度が低下する。次いで、シリンガ酸(以下、「SYAC」と略記することがある)の産生が確認され、培地中でのSYALの濃度の低下に伴い、SYACの濃度が上昇する。次いで、3-O-メチルガリック酸(以下、「3MGA」と略記することがある)の産生が確認され、SYACの濃度の上昇よりも遅れる形で、3MGAの濃度が上昇する。次いで、前記蛍光物質及び黒色色素の産生が確認され、以降、ある時点を境にSYAC及び3MGAの濃度は低下していくが、前記蛍光物質及び黒色色素の濃度が上昇していく。なお、前記蛍光物質及び黒色色素の産生に伴い、微量のガリック酸(以下、「GA」と略記することがある)の産生が確認されることがある。このように、本菌株の培養の進行と共に、SYALは酸化されてSYACとなり、SYACは2個のメトキシ基のうち、一方において脱メチル化されて3MGAとなり、この3MGAが何らかの作用を受けて重合することにより、前記蛍光物質及び黒色色素が産生されると推測される。前記蛍光物質以外のこれら代謝産生物(SYAC、3MGA、GA、黒色色素)は、いずれも蛍光活性を有していない。
ここで挙げた各成分はすべて、例えば、逆相高速液体クロマトグラフィー(逆相HPLC)により分離して検出可能である。

【0027】
【化1】
JP0006090838B2_000002t.gif

【0028】
本発明に係る蛍光物質は、芳香族環を有しないため、従来の蛍光物質のように芳香族環を有していることによる制約を受けない。したがって、本発明に係る蛍光物質は、従来の蛍光物質では実現できなかった新規の利用法の開発に有望なものである。
また、本発明に係る蛍光物質は、従来とは異なり、リグニン由来の成分であるシリングアルデヒドを原料として製造されるため、未利用バイオマスの有効利用という点においても優れたものである。
【実施例】
【0029】
以下、具体的実施例により、本発明についてさらに詳しく説明する。ただし、本発明は、以下に示す実施例に何ら限定されるものではない。
なお、本実施例における「数平均分子量」は、特に断りの無い限り、HPLC分析でのピーク面積値のデータを用いて算出したものである。
【実施例】
【0030】
<蛍光物質の製造>
[実施例1]
マリンブロスに、初期濃度が10mg/mLとなるようにSYALを添加した培地を作製し、本菌株をこの培地に添加して、25℃で96時間振とう培養を行った。
次いで、培養によって得られ、菌体外に産出された黒色溶液状の培養物を40℃で減圧乾固させ、黒色の固形状の濃縮物を得た。
次いで、この濃縮物15gに、メタノール(和光純薬社製、特級メタノール、以下、同様)80gを添加し、25℃で1分間撹拌することにより、黒色の不溶物を含み、液相部分が薄青緑色に蛍光発色する液体を得た。そして、この液体から上澄みを回収し、残った前記不溶物に対して、メタノールを添加してから上澄みを回収するまでの上記操作を3回繰り返し、回収した上澄みをすべてあわせて300mLの抽出液を得た。
次いで、この抽出液から、エバポレーターを用いてメタノールを除去し、得られた濃縮物に水を添加して溶解させた後、この水溶液を凍結乾燥させることにより、目的物である蛍光物質を得た。
【実施例】
【0031】
一方、固液分離で得られた黒色の前記不溶物10gには、水100gを添加し、25℃で1分間撹拌することにより、前記不溶物が溶解した水溶液を得た。
次いで、得られた水溶液を、膨潤させたイオン交換樹脂(Amberlite XAD2000)(カラム:3.0×38cm)に充填し、水及び20質量%メタノール水溶液で順次洗浄した後、80質量%メタノール水溶液を用いて溶出させることにより、黒色色素含有画分を得た後、溶媒を除去することにより、黒色色素を得た。
【実施例】
【0032】
得られた蛍光物質及び黒色色素について、H-NMR、13C-NMR及びFT-IRによる構造解析を行った。このとき取得したスペクトルデータを図1~3に示す。図1中、(a)が黒色色素の、(b)が蛍光物質のH-NMRスペクトルであり、図2中、(a)が黒色色素の、(b)が蛍光物質の13C-NMRスペクトルである。また、図3は蛍光物質のFT-IRスペクトルであり、図4は黒色色素のFT-IRスペクトルであり、それぞれにおいて、aはKBr錠剤法でのスペクトルであり、bはATR(Attenuated Total Reflection)補正を行って得られたスペクトルである。なお、図3及び4において、縦軸は吸光度(Abs)であり、横軸は波数(cm-1)である。FT-IRでは、試料の屈折率を1.5、プリズムの屈折率を2.4とし、入射光の入射角度を45°に設定して解析を行った。
【実施例】
【0033】
図1及び2に示すように、H-NMR及び13C-NMRにおいて、蛍光物質は黒色色素と概ね類似のスペクトルを示したが、H-NMRにおいては2.8ppmに、13C-NMRにおいては40ppmに、それぞれ特徴的なシグナルが見られた。これらのシグナルは、-C(=O)-CHのメチル基(CH)、又は-C(=O)-CH-C(=O)-のメチレン基(CH)に対応するものと推測された。そして、H-NMR及び13C-NMRにおいて、蛍光物質及び黒色色素はいずれも、カルボニル基(C=O)、メチン基(CH)、メチレン基(CH)、メチル基(CH)の各基に相当するシグナルが多数見られたのに対し、図1に示すようにH-NMRにおいては、6~8ppm辺りの領域に通常見られる、芳香族環に特有のシグナルは見られず、蛍光物質及び黒色色素が非芳香族有機化合物であることを示していた。
【実施例】
【0034】
また、図3及び4に示すように、蛍光物質及び黒色色素は、いずれもFT-IRにおいて、C=Oと、C-H、O-H又はN-Hの各結合に相当するシグナルが見られたのに対し、500~1000cm-1辺りの領域に通常見られる、芳香族環に特有のシグナルが見られず(図3及び4において、この領域に見られるピークらしきものは、ベースラインのせり上がりによるノイズであり、何らかのシグナルを示すものではない)、NMRの場合と同様に、蛍光物質及び黒色色素が非芳香族有機化合物であることを示していた。
【実施例】
【0035】
蛍光物質は、極大波長が356nmの励起光の照射によって、極大波長が498nmの蛍光を発生した。このときの励起光及び蛍光のスペクトルを図5に示す。
【実施例】
【0036】
蛍光物質は、FT-IRスペクトルが硫酸カルシウムのものと類似していた。なお、原子吸光による解析の結果、蛍光物質はカルシウム塩を多く含んでいたが、これは培地中の塩化カルシウムに由来する可能性がある。
【実施例】
【0037】
上記で得られた蛍光物質を、さらに下記条件でゲルろ過に供した。
(ゲルろ過の条件)
カラム:TSKgel G3000SWXL(7.8mm i.d.×300mm、東ソー社製)
移動相:0.2モル/L塩化ナトリウム含有0.1モル/Lリン酸緩衝液(pH 7.0)
流速:1.2mL/分
カラム温度:室温
検出波長:210nm、254nm
【実施例】
【0038】
その結果、得られた蛍光物質は数平均分子量が7.2kDaであった。ゲルろ過で得られた、蛍光物質を含む画分を、さらにアミコンウルトラ-遠心式フィルターユニット(3K)(ミリポア社製)を用いて、4000×gで50分間遠心処理した後、得られた上清を、さらにアミコンウルトラ-遠心式フィルターユニット(10K)(ミリポア社製)を用いて、4000×gで50分間遠心処理することにより、合計で3つの試料を得た。そして、これら試料をさらにゲルろ過に供して解析した結果、最初のゲルろ過で得られた蛍光物質は、複数種の蛍光物質の混合物であり、分子量が2.1kDa、5.2kDa、8.5kDaの3種のものに大別され、8.5kDaのものが主たる成分であった。
【実施例】
【0039】
これに対して、上記で得られた蛍光物質を別途、ODSカラムを用いたHPLC解析に供したところ、複数のピークが分離されて観測されることはなかった。
【実施例】
【0040】
蛍光物質の場合と同じ方法で、黒色色素もゲルろ過及び遠心処理で解析した結果、黒色色素は数平均分子量が12.8kDaであり、これは分子量が5.8kDa、8.5kDa、16.8kDaの3種のものに大別され、16.8kDaのものが主たる成分であった。
【実施例】
【0041】
<蛍光物質の安定性試験>
[試験例1]
実施例1で得られた蛍光物質を、pH1~13の緩衝液に溶解させたところ、pH1の場合には、得られた溶液は蛍光を発生しなかったが、pH2~13の場合には、得られた溶液は蛍光を発生した。一方、pH1の場合には、得られた溶液にさらにアルカリを加えてpHを7に調整したところ、蛍光を発生するようになり、前記蛍光物質は、pH依存性の光吸収と蛍光発色を示すことが確認された。また、いずれのpHの場合も、得られた溶液をHPLCで分析すると、全く同じクロマトグラムを示し、いずれのpHでも蛍光物質の分解は確認されなかった。また、蛍光物質をpH7の緩衝液に溶解させて95℃で3日間加熱しても、蛍光は変化しなかった。このように、前記蛍光物質はアルカリ性条件下及び酸性条件下のいずれにおいても安定であり、またその水溶液は95℃での加熱に対しても安定であることが確認できた。
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4