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明細書 :石膏ボード廃材中の石膏を二水石膏として再生する方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第6195238号 (P6195238)
公開番号 特開2014-231447 (P2014-231447A)
登録日 平成29年8月25日(2017.8.25)
発行日 平成29年9月13日(2017.9.13)
公開日 平成26年12月11日(2014.12.11)
発明の名称または考案の名称 石膏ボード廃材中の石膏を二水石膏として再生する方法
国際特許分類 C01F  11/46        (2006.01)
B09B   3/00        (2006.01)
FI C01F 11/46 ZABB
B09B 3/00 303A
B09B 3/00 304J
請求項の数または発明の数 2
全頁数 7
出願番号 特願2013-112468 (P2013-112468)
出願日 平成25年5月29日(2013.5.29)
審査請求日 平成28年5月10日(2016.5.10)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】899000057
【氏名又は名称】学校法人日本大学
発明者または考案者 【氏名】小嶋 芳行
個別代理人の代理人 【識別番号】110000084、【氏名又は名称】特許業務法人アルガ特許事務所
【識別番号】100077562、【弁理士】、【氏名又は名称】高野 登志雄
【識別番号】100096736、【弁理士】、【氏名又は名称】中嶋 俊夫
【識別番号】100117156、【弁理士】、【氏名又は名称】村田 正樹
【識別番号】100111028、【弁理士】、【氏名又は名称】山本 博人
審査官 【審査官】山口 俊樹
参考文献・文献 国際公開第2010/013807(WO,A1)
小嶋芳行ほか,クエン酸溶液中でのセッコウボード廃材加熱物の水和による大形二水セッコウの作製,Journal of the Society of Inorganic Materials, Japan,日本,2012年,Vol. 19,p.311-316
調査した分野 C01F11/46
B09B3/00
特許請求の範囲 【請求項1】
平均粒径0.1~10mmの石膏ボード廃材を媒晶剤非添加で150~250℃で、30分~5時間加熱処理して石膏ボード廃材中の二水石膏を半水石膏とし、当該半水石膏を水性媒体中に15~35質量%の濃度になるように懸濁した後、70~85℃で7~20時間撹拌し、短径40~80μm、長径80~120μm、アスペクト比1~3の二水石膏を析出させることを特徴とする、石膏ボード廃材中の石膏を二水石膏として再生する方法。
【請求項2】
前記懸濁を10~35℃で行う請求項1記載の再生方法。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、石膏ボード廃材から石膏を再生する方法に関し、更に詳細には、石膏ボード廃材中の石膏を二水石膏として再生する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
石膏ボードは、石膏を板状にし、特殊な板紙で包んだ建築材料である。石膏ボード中で石膏は、二水石膏として存在しており、この結晶水により石膏ボードは優れた耐火性を有する。
【0003】
石膏ボード廃材の発生量は、年間約150万tあるといわれ、そのうち100万tは再利用されずに埋立処分されている。埋立処分にも費用を要し、再利用が望まれる。石膏ボード廃材の再利用手段としては、石膏ボード廃材から原紙を分離し、得られた石膏をそのまま利用する方法(特許文献1)、石膏ボード廃材の粉砕物に炭素数4~6のオキシカルボン酸アルカリ金属塩、硫酸アルカリ、硫酸アンモニウム等を添加することにより、二水石膏として再生する方法(特許文献2、3)、石膏ボード廃材の粉砕物に、水性媒体中で種晶石膏を添加し、50~80℃で0.2~6時間攪拌して二水石膏として再生する方法(特許文献4)等が報告されている。
【先行技術文献】
【0004】

【特許文献1】特開平10-286553号公報
【特許文献2】特開2006-273599号公報
【特許文献3】特開2009-40638号公報
【特許文献4】特開2010-13304号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1記載の方法で得られた石膏には界面活性剤等が含まれており、再利用は困難であった。また、特許文献2及び3の方法で得られた二水石膏中にも添加した成分に由来するナトリウムイオンやクエン酸イオンが二水石膏表面に吸着しており、再利用する際の硬化反応に悪影響を及ぼすという欠点があった。さらに、特許文献4の方法においては、種晶石膏が必要であることの他に、本発明者の追試では半水石膏と二水石膏の混合物しか得られず、さらに得られた混合物の粒子径が小さいため、再利用時の焼結反応で高純度の半水石膏が得られないという問題があった。
【0006】
従って、本発明は、石膏ボード廃材中の石膏から、何ら添加剤を使用することなく、石膏ボードへの再利用が可能な粒子径が大きく、かつ高純度の二水石膏を再生する方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
そこで本発明者は、石膏ボード廃材から高純度で大粒子径の二水石膏を再生すべく種々検討したところ、石膏ボード廃材を加熱処理して半水石膏とし、これを水懸濁液とし、70~85℃という高温で7~24時間という長時間かけて析出させることにより、二水石膏だけが選択的に析出し、かつその粒子が大形化することを見出し、本発明を完成した。
【0008】
すなわち、本発明は、次の〔1〕~〔5〕の発明を提供するものである。
【0009】
〔1〕石膏ボード廃材を加熱処理して石膏ボード廃材中の二水石膏を半水石膏とし、当該半水石膏を水性媒体中に懸濁した後、70~85℃で7~24時間攪拌し、短径40μm以上でアスペクト比1~3の二水石膏を析出させることを特徴とする、石膏ボード廃材中の石膏を二水石膏として再生する方法。
〔2〕得られる二水石膏が、短径40~80μm、長径80~120μm、アスペクト比1~3の二水石膏である〔1〕記載の再生方法。
〔3〕攪拌時間が、7~20時間である〔1〕又は〔2〕記載の再生方法。
〔4〕半水石膏の水性媒体懸濁液中の濃度が、15~35質量%である〔1〕~〔3〕のいずれかに記載の再生方法。
〔5〕石膏ボード廃材の加熱処理が、150~250℃で、30分~5時間である〔1〕~〔4〕のいずれかに記載の再生方法。
【発明の効果】
【0010】
本発明方法によれば、石膏ボード廃材から短径40μm以上でアスペクト比1~3という大形かつ粒子状の二水石膏が高純度で得られる。このようにして得られる大粒径かつ高純度の二水石膏は、焼成工程で半水石膏への移行がスムーズであることから、石膏ボード原料として直接再利用することができる。また、その他肥料、地盤改良材等としても再利用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】60℃で6時間水和反応させて得られた石膏のSEM像を示す。
【図2】73℃で3~8時間水和反応させて得られた石膏のX線回折スペクトルを示す。
【図3】73℃で5~8時間水和反応させて得られた石膏のSEM像を示す。
【図4】40~73℃で6~8時間水和反応させて得られた石膏のSEM像を示す。
【図5】水和終了時間及び半水石膏の溶解度に及ぼす水和温度の影響を示す。
【図6】二水石膏の平均長径及び平均短径に及ぼす過飽和度の影響を示す。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明方法においては、まず、石膏ボード廃材を加熱処理して石膏ボード廃材中の二水石膏を半水石膏とする。
原料である石膏ボード廃材としては、石膏ボードの生産工程及び建築現場の施工工程で発生する端材、残材、改装、解体工事で発生する石膏ボード廃材が挙げられる。石膏ボード廃材は、通常その大きさが一定でなく、また原紙を有しているので、粉砕し、原紙を除去して使用するのが好ましい。
上記破砕及び原紙の除去は、いずれも公知の方法によって行うことができる。例えば原紙の分離工程は、特開平10-286553号公報、特開2000-254531号公報等に記載された方法で行うことができる。
粉砕後の石膏ボード廃材の粒径は、機械的に運搬する際の容易さから、平均粒径として0.1~10mmであることが好ましく、0.1~5mmであることがより好ましい。この平均粒径は、ふるい分けにより測定することができる。

【0013】
石膏ボード廃材の加熱処理は、石膏ボード廃材中の二水石膏を半水石膏に変換できる条件であればよく、110~250℃に10分~10時間加熱するのが好ましく、150~250℃に30分~5時間加熱するのがより好ましく、150~250℃に40分~4時間加熱するのがさらに好ましい。加熱装置としては、熱風乾燥機、伝導電熱乾燥機等を用いることができる。なお、ここで加熱した半水石膏はできるだけIII型無水石膏を含まないほうがよい。

【0014】
前記加熱処理により、石膏ボード廃材中の二水石膏が半水石膏に変換される。

【0015】
次に、得られた半水石膏を水性媒体中に懸濁する。用いられる水性媒体としては、水が好ましい。半水石膏の水性媒体懸濁液中の濃度は、10~35質量%が好ましく、15~35質量%がより好ましく、20~35質量%がさらに好ましい。懸濁液中の半水石膏濃度がこの範囲にあると、攪拌性及び粒径の大きな二水石膏が得られる点で好ましい。なお、この懸濁は、室温、例えば10~35℃の条件で行うことができる。

【0016】
次に懸濁液を70~85℃で7~24時間攪拌して、短径40μm以上でアスペクト比1~3の二水石膏を選択的に析出させる。反応温度が70℃未満又は反応時間が7時間未満では、大粒径の二水石膏は得られるが、アスペクト比が大きくなる。例えば60℃で攪拌した場合には、長時間攪拌すれば二水石膏は得られるが、その粒子はアスペクト比の大きい針状であり、大粒径のものが得られない。一方、70℃を超える温度で攪拌しても攪拌時間が6時間程度では半水石膏と二水石膏の混合物となってしまう。
より好ましい攪拌条件(水和反応条件)は、70~85℃で7~20時間であり、さらに好ましくは70~85℃で7~15時間である。
また、攪拌速度は、特に限定されず、100r/min以上が好ましく、100~400r/minがより好ましく、100~300r/minがさらに好ましい。
また、攪拌前に種晶を添加する必要はないが、得られる二水石膏の粒子径が小さくならず、アスペクト比が大きくならない範囲で添加してもよく、例えば、0~1質量%濃度の排煙脱硫石膏を添加してもよい。

【0017】
本発明方法により得られる二水石膏は、短径40μm以上でアスペクト比1~3という粒状であり、石膏ボードに再利用する際の焼結反応が効率的に進行する。二水石膏のより好ましい形状は、短径40~80μm、長径80~120μm、アスペクト比1~3のものである。また、本発明方法により得られる二水石膏は高純度であり、純度90%以上であり、より好ましくは95%以上である。

【0018】
析出した二水石膏は、粒径が大きく、かつアスペクト比が小さいのでろ過性が極めて良好であり、通常のろ過手段、遠心分離手段により容易に採取することができる。具体的には、ロータリースクリーン、ドラムフィルター、ディスクフィルター、ヌッチェフィルター、フィルタープレス、スクリュウプレス、チューブプレス等のろ過装置;スクリュウデカンター、スクリーンデカンター等の遠心分離機等により、水と分離する方法を採用することができる。

【0019】
得られた二水石膏は、例えばメタノール等により洗浄して乾燥を促進させることもできる。

【0020】
本発明方法により得られる二水石膏は、高純度でかつ粒子径が大きいため、石膏ボードとして利用する際の焼結反応が効率的に進行する。従って、石膏ボードへの再利用が促進できる。
【実施例】
【0021】
次に実施例を挙げて、本発明を更に詳細に説明するが、本発明は何らこれに限定されるものではない。
【実施例】
【0022】
実施例1
(1)操作条件
石膏ボード廃材(原紙除去、粉砕済、粒径0.1~1mm)を220℃に60分間加熱し、半水石膏を得た。室温下、得られた半水石膏に純水を添加し、11~33質量%の半水石膏懸濁液を得た。半水石膏懸濁液を、攪拌速度200r/min、40~73℃で180分~480分攪拌(水和反応)した。析出した石膏をろ取し、メタノールで洗浄した。
【実施例】
【0023】
(2)水和温度60℃で180分(3時間)水和反応させ、得られた石膏の走査型電子顕微鏡(SEM)写真を撮影した。結果を図1に示す。懸濁液濃度11質量%、20質量%、28質量%及び33質量%のいずれにおいても、得られた結晶は針状でありアスペクト比の大きいものであった。この結晶のろ過性は低かった。この結果、特許文献4の攪拌条件では、アスペクト比が小さく、大粒径の二水石膏は得られないことが判明した。
【実施例】
【0024】
(3)懸濁濃度28質量%、水和温度を73℃とし、水和時間を180分~480分に変化させ、得られた石膏のX線回折スペクトルを測定した。
その結果、図2に示すように、水和温度73℃の場合、水和時間6時間までは半水石膏又は半水石膏と二水石膏の混合物が生成するが、水和時間が7時間以上になると高純度の二水石膏が得られることが判明した。
【実施例】
【0025】
また、得られた石膏のSEM写真を図3に示す。図3より、水和時間7時間以上の場合に、アスペクト比が小さく大粒径の二水石膏が生成していることがわかる。
【実施例】
【0026】
(4)懸濁液濃度28質量%で、水和温度を40~73℃に変化させ、水和時間を6~8時間に変化させた場合に得られる石膏のSEM写真を図4に示す。
また、水和反応終了時間(二水石膏生成時間)及び石膏の溶解度に及ぼす水和温度の影響を図5に示す。
また、得られた二水石膏の平均長径及び平均短径に及ぼす過飽和度の影響を図6に示す。
図4より、水和温度70℃以上、かつ水和時間7時間以上の場合に短径40μm以上アスペクト比1~3の大粒径の二水石膏が選択的に生成することが判明した。また、図5及び図6より、過飽和度〔(半水石膏の溶解量-二水石膏の溶解量)/二水石膏の溶解量〕が0.76以下の時にアスペクト比の小さな二水石膏が選択的に生成することがわかる。
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
5