TOP > 国内特許検索 > 新規PIポリアミド > 明細書

明細書 :新規PIポリアミド

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第6044935号 (P6044935)
公開番号 特開2014-173032 (P2014-173032A)
登録日 平成28年11月25日(2016.11.25)
発行日 平成28年12月14日(2016.12.14)
公開日 平成26年9月22日(2014.9.22)
発明の名称または考案の名称 新規PIポリアミド
国際特許分類 C07D 403/14        (2006.01)
A61K  31/4178      (2006.01)
A61P  43/00        (2006.01)
A61P  35/00        (2006.01)
A61P  13/08        (2006.01)
C12N  15/09        (2006.01)
FI C07D 403/14 CSP
A61K 31/4178 ZNA
A61P 43/00 111
A61P 35/00
A61P 13/08
C12N 15/00 A
請求項の数または発明の数 3
全頁数 20
出願番号 特願2013-048126 (P2013-048126)
出願日 平成25年3月11日(2013.3.11)
審査請求日 平成28年2月24日(2016.2.24)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】899000057
【氏名又は名称】学校法人日本大学
発明者または考案者 【氏名】大日方 大亮
【氏名】高橋 悟
【氏名】藤原 恭子
【氏名】井上 聡
【氏名】高山 賢一
個別代理人の代理人 【識別番号】110000774、【氏名又は名称】特許業務法人 もえぎ特許事務所
審査官 【審査官】伊藤 佑一
参考文献・文献 米国特許出願公開第2009/0042965(US,A1)
特開2013-234135(JP,A)
Christian DOSE et al.,Next Generation Hairpin Polyamides with (R)-3,4-Diaminobutyric Acid Turn Unit,Journal of the American Chemical Society,2008年,Vol.130,pp.6859-6866
Nicholas G. NICKOLS et al.,Suppression of Androgen Receptor-mediated Gene Expression by a Sequence-specific DNA-bindig Polyamide,Proceedings of the National Academy of Sciences of the United States of America,2007年,Vol.104, No.25,pp.10418-10423
調査した分野 C07D
A61K
C08G
CAplus/REGISTRY(STN)
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
特許請求の範囲 【請求項1】
次の式1~3のいずれかに示されるピロール-イミダゾールポリアミド。
〔式1〕
JP0006044935B2_000016t.gif〔式2〕
JP0006044935B2_000017t.gif〔式3〕
JP0006044935B2_000018t.gif
【請求項2】
請求項1に記載のピロール-イミダゾールポリアミドを有効成分として含む、ACSL3遺伝子の発現抑制剤。
【請求項3】
請求項1に記載のピロール-イミダゾールポリアミドを有効成分として含む前立腺癌の予防または治療剤。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、新規のピロール-イミダゾール ポリアミド(以下、PIポリアミドと示す場合がある)に関する。さらに詳しくは、アンドロゲン応答遺伝子であるACSL3遺伝子の転写調節領域(AR応答領域)を認識して結合することにより、この遺伝子の発現を抑制する新規のPIポリアミドに関する。
【背景技術】
【0002】
ステロイドホルモンのひとつであるアンドロゲンと、この受容体であるアンドロゲンレセプター(Androgen Receptor;AR、以下、ARと示す場合がある)は、前立腺細胞において、その増殖、さらには癌化に密接に関与していることが知られている。
そこで、前立腺癌の治療法のひとつとして、ARの作用を抑制することにより、前立腺癌の進行を抑制させるアンドロゲン除去療法が行われてきた。しかし、治療が進むに従って、癌化した前立腺細胞の形質が変化するため効果がなくなり、その後の治療が困難であるという問題があった。
【0003】
また、ARを発現している前立腺癌細胞が、アンドロゲン応答遺伝子の発現を亢進していることから、アンドロゲン応答遺伝子に対し干渉性RNAやアンチセンス核酸を投与して、これらの遺伝子の発現を不安定化することによって前立腺癌を治療する方法や、癌化した細胞に細胞毒性遺伝子産物をコードするポリヌクレオチドを含む発現ベクターを投与することによって前立腺癌を治療する方法等も開示されている(特許文献1~4)。
しかし、干渉性RNAやアンチセンス核酸は生体内で分解され易いため安定性が低く、生体内において細胞毒性遺伝子産物を発現させる方法も必ずしも安全とはいえないため、これらの治療方法は前立腺癌の治療において十分な方法とはいえなかった。
【0004】
そこで、本発明者らは、前立腺癌の治療に有効であり、かつ、安定で安全な物質を得るために、DNAに配列特異的に結合し、生体内での安定性が高く、組織、細胞への移行性が高いPIポリアミドに着目した(非特許文献1)。PIポリアミドは、芳香族アミノ酸であるN-methylpyrrole(N-メチルピロール、以下、Pyと示す場合がある)、N-methylimidazole(N-メチルイミダゾール、以下、Imと示す場合がある)で構成される物質である。
本発明者らは、アンドロゲン応答遺伝子であるTMPPR2と、転写制御因子であるETS familyのEGR遺伝子との融合遺伝子の発現を抑制するPIポリアミドを開発した(特願2012-106382)。本発明者らが開発したこのPIポリアミドは、TMPRSS2遺伝子とERG遺伝子との融合遺伝子の発現を抑制し、この融合遺伝子の発現に伴って起こるEZH2遺伝子の発現も抑制できるPIポリアミドであることから、前立腺癌の予防、治療等に有用なものであった。
【0005】
さらに、本発明者らは、網羅的な前立腺癌の予防、治療等を可能とすることを目的として、本発明においてアンドロゲン応答遺伝子の一つであるACSL3遺伝子に対し、有用なPIポリアミドの開発を試みた。ACSL3遺伝子は、長鎖脂肪酸の代謝に関連するアンドロゲン応答遺伝子で、前立腺癌に高発現することが知られているが、本発明者らは、さらに前立腺癌細胞の増殖と遊走能を亢進させることを見出している。
本発明者らは、ACSL3遺伝子の転写開始点上流63Kbに転写調節領域(AR応答領域)が存在し、ARが遺伝子に結合する部位(AR応答配列、以下、AREと示す場合がある)の近傍に転写因子としてOct1遺伝子結合配列およびGATA遺伝子結合配列が存在していることを見出した。そして、このOct1遺伝子結合配列がARの転写活性を正に亢進させる、前立腺癌の予後不良因子であることを見出した(非特許文献2)。
そこで、本発明において、このOct1遺伝子結合配列に特異的に結合するPIポリアミドを開発し、ACSL3遺伝子の発現を抑制することにより、前立腺癌の予防、治療等に有用なPIポリアミドの開発を試みた。
【先行技術文献】
【0006】

【特許文献1】特表2010-505446号公報
【特許文献2】特表2011-518552号公報
【特許文献3】特表2009-507492号公報
【特許文献4】特表2010-532663号公報
【0007】

【非特許文献1】Tomlins SA et al, Science 310:644-648, 2005
【非特許文献2】Daisuke Obinata,et al, International Journal of Cancer 130:1021-1028,2012
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
前立腺癌の予防、治療に有用かつ安全で安定した薬剤の提供を課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意研究を行った結果、ACSL3遺伝子の転写調節領域(AR応答領域)に存在し、ARによる転写活性を調節するOct1遺伝子結合配列の特異的な塩基配列を認識して結合する新規のPIポリアミドを得るに至った。
本発明者らは、本発明において、このPIポリアミドが、ACSL3遺伝子の発現を抑制し、また、ACSL3遺伝子の転写調節領域(AR応答領域)におけるAR活性を抑制するとともに、前立腺癌の予防、治療等に有用であることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0010】
すなわち、本発明は次の(1)~(4)のPIポリアミド、該PIポリアミドを有効成分とするACSL3遺伝子の発現抑制剤、前立腺癌の予防または治療剤等に関する。
(1)配列表配列番号1に示される塩基配列の全部または一部に結合するピロール-イミダゾールポリアミド。
(2)次の式1~3のいずれかに示される、上記(1)に記載のピロール-イミダゾールポリアミド。
[式1]
JP0006044935B2_000002t.gif[式2]
JP0006044935B2_000003t.gif[式3]
JP0006044935B2_000004t.gif(3)上記(1)または(2)に記載のピロール-イミダゾールポリアミドを有効成分として含む、ACSL3遺伝子の発現抑制剤。
(4)上記(1)または(2)に記載のピロール-イミダゾールポリアミドを有効成分として含む前立腺癌の予防または治療剤。
【発明の効果】
【0011】
本発明のPIポリアミドを提供することによって、前立腺癌の予防、治療に有用かつ安全で安定した薬剤を開発することが容易となる。生体内での安定性が高く、組織、細胞への移行性も高い、本発明のPIポリアミドを有効成分とする薬剤は、前立腺癌の予防、治療に効果的な薬剤となり得る。
また、本発明者らが開発している、アンドロゲン応答遺伝子であるTMPPR2と、転写制御因子であるETS familyのEGR遺伝子との融合遺伝子の発現を抑制するPIポリアミド(特願2012-106382)と組み合わせることにより、前立腺癌の網羅的な治療等も可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】ACSL3遺伝子の転写調節領域(AR応答領域)におけるOct1遺伝子結合配列(OCT1(No.1)、OCT1(No.2))、ARE(ARE(No.1)、ARE(No.2))、GATA遺伝子結合配列(GATA)の各塩基配列、およびOct1遺伝子結合配列(OCT1(No.2))の塩基配列の全部または一部に対するPIポリアミドの結合部位(Polyamide(1)~Polyamide(3))を模式的に示した図である。
【図2】ACSL3の転写調節領域(AR応答領域)におけるAR活性の評価結果を示した図である(試験例1)。
【図3】ACSL3の転写調節領域(AR応答領域)におけるAR活性の評価結果を示した図である(試験例1)。
【図4】各PIポリアミドを導入した細胞におけるACSL3遺伝子の発現の結果を示した図である(試験例2)。
【図5】PIポリアミド(1)を1μMまたは5μM導入した細胞におけるACSL3遺伝子の発現の結果を示した図である(試験例2)。
【図6】PIポリアミドを導入した細胞についてのACSL3の転写調節領域(AR応答領域)におけるAR活性の結果を示した図である(試験例3)。
【図7】陽性コントロールであるPSAプロモーター領域を組み込んだ細胞についてのACSL3の転写調節領域(AR応答領域)におけるAR活性の結果を示した図である(試験例3)。
【図8】PIポリアミドを導入した細胞における細胞増殖能の評価結果を確認した図である(試験例4)。
【図9】PIポリアミドを導入した細胞における細胞遊走能の評価結果を確認した図である(試験例5)。
【図10】細胞遊走能の評価における各PIポリアミドを導入した細胞の顕微鏡写真を示した図である(試験例5)。
【図11】PIポリアミドの腫瘍に対する効果を示した図である(試験例6)。
【図12】ヌードマウスに注射したLNCaP細胞由来のACSL3タンパク質に対するPIポリアミドの発現抑制効果を示した図である(試験例6)。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の「PIポリアミド」には、配列表配列番号1に示される塩基配列の全部または一部を認識して結合するPIポリアミドであればいずれのものも含まれる。
ここで「一部」とは、配列表配列番号1に示される塩基配列において、少なくとも1つ以上の塩基、好ましくは2つ以上の塩基、さらに好ましくは3つ以上複数の塩基のことをいい、認識する塩基の数が多ければ多いほど好ましい。塩基が複数の塩基の場合、連続する塩基を認識してもよく、連続しない塩基を認識してもよい。
この配列表配列番号1に示される塩基配列は、図1に示したように、ACSL3遺伝子の転写調節領域(AR応答領域)において、ARE(ARE(No.1)とARE(No.2))に囲まれたOct1遺伝子結合配列(OCT1(No.2))の塩基配列の全部または一部を認識して結合するPIポリアミドであることが好ましい。

【0014】
また、本発明のPIポリアミドは、配列表配列番号1に示される塩基配列の全部または一部を認識して結合するPIポリアミドであればよいが、配列表配列番号1に示される塩基配列と相補的な塩基配列の全部または一部を認識して結合するPIポリアミドであってもよい。
さらに、PIポリアミドのうちIm/PyペアはDNAにおけるG・Cを認識し、Py/ImペアはG・Cを認識し、Py/PyペアはT・AおよびA・Tを認識することから、本発明のPIポリアミドは、配列表配列番号1に示される塩基配列のうち、GとCが1つ以上入れ替わった塩基配列や、TとAが1つ以上入れ替わった塩基配列の全部または一部を認識して結合するものであってもよい。

【0015】
このような本発明の「PIポリアミド」として、例えば、次の式1に示されるPIポリアミド(1)、式2に示されるPIポリアミド(2)および式3に示されるPIポリアミド(3)を挙げることができる。これらの各PIポリアミドにおけるOct1遺伝子結合配列の塩基配列の全部または一部に対する結合部位を図1に模式的に示した。本発明の「PIポリアミド」は、これらの式1~式3に示されるPIポリアミドに限らず、上記のような特性を有する「PIポリアミド」であればいずれのものであってもよく、従来知られている方法により、独自に設計して作製した「PIポリアミド」も含まれる。

【0016】
[式1]
JP0006044935B2_000005t.gif

【0017】
[式2]
JP0006044935B2_000006t.gif

【0018】
[式3]
JP0006044935B2_000007t.gif

【0019】
本発明の「ACSL3遺伝子の発現抑制剤」とは、本発明のPIポリアミドを有効成分として含む剤であって、Oct1遺伝子結合配列の全部または一部に結合することにより、ACSL3遺伝子の発現を抑制する剤のことをいう。
ここで、「発現抑制」とは、例えば、前立腺癌細胞等の「ACSL3遺伝子の発現」が起こる細胞に本発明の該発現抑制剤を付与した場合に、本発明の該発現抑制剤を付与しない場合と比べて、ACSL3遺伝子の発現の程度が低下する状態のことをいう。このACSL3遺伝子の発現の程度の低下には、ACSL3遺伝子がまったく発現しない場合も含まれる。
このような本発明の「ACSL3遺伝子の発現抑制剤」は、本発明のPIポリアミドを有効成分として含む剤であればよく、本発明のPIポリアミドのみからなる剤でも、その他薬学的に許容される成分等を含む剤であっても良い。

【0020】
本発明の「前立腺癌の予防および/または治療剤」とは、本発明のPIポリアミドを有効成分として含む剤であって、前立腺癌の予防、前立腺癌の治療、または前立腺癌の予防および治療に有用な剤のことをいう。
このような本発明の「前立腺癌の予防および/または治療剤」は、本発明のPIポリアミドを有効成分として含む剤であればよく、本発明のPIポリアミドのみからなる剤でも、その他薬学的に許容される成分等を含む剤であっても良い。
このような本発明の剤は、前立腺癌を発症する可能性が高いヒトに発症前に投与したり、前立腺癌を発症した後に、癌の進行を抑制したり、癌を完寛させたりすることを目的として投与することができる。

【0021】
さらに、本発明の「前立腺癌の予防および/または治療剤」は、従来知られている前立腺癌の予防、治療等のための薬剤や、本発明者らが開発したアンドロゲン応答遺伝子であるTMPPR2と、転写制御因子であるETS familyのEGR遺伝子との融合遺伝子の発現を抑制するPIポリアミド(特願2012-106382)と組み合わせて使用することもできる。

【0022】
以下、実施例、試験例をあげて本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【実施例】
【0023】
<PIポリアミドの作製>
1.PIポリアミドの設計
Oct1遺伝子結合配列(配列表配列番号1)の全部または一部に結合するように、次のPIポリアミド(1)、PIポリアミド(2)、PIポリアミド(3)をそれぞれ設計した。また、これらとの比較のために、Oct1遺伝子結合配列(配列表配列番号1)の全部または一部に結合しないPIポリアミド(コントロール)も設計した。
図1にPIポリアミド(1)、PIポリアミド(2)、PIポリアミド(3)の結合部位を示した。なお、図1においてPIポリアミド(1)の結合部位を2箇所示しているが、同じ遺伝子にポリアミドが結合する場合には、4塩基以上間が空いている必要があることから、PIポリアミド(1)が同時に2箇所に結合することはない。
また、下式における各記号は次の意味を示す。
Ac:アセチル、Py:ピロール、Im:イミダゾール、β:β-アラニン、γ:γ-酪酸、Dp:N,N-ジメチル-1,3-プロパンジアミン。
【実施例】
【0024】
PIポリアミド(1)
図1に、PIpolyamide(1)として示した塩基配列(表1、PIポリアミド(1))を標的塩基配列として認識するように、AcPyPyβImPyPyγPyImPyβImPyβDpのPIポリアミドを設計した。このPIポリアミドは以下の式(式1)に示されるものであり、化学式はC77962915+、分子量は1667.77であった。
【実施例】
【0025】
[式1]
JP0006044935B2_000008t.gif
【実施例】
【0026】
PIポリアミド(2)
図1に、PIpolyamide(2)として示した塩基配列(表1、PIポリアミド(2))を標的塩基配列として認識するように、AcImPyβPyPyPyγPyPyPyβImPyβDpのPIポリアミドを設計した。このPIポリアミドは以下の式(式2)に示されるものであり、化学式はC78972815+、分子量は1666.78であった。
【実施例】
【0027】
[式2]
JP0006044935B2_000009t.gif
【実施例】
【0028】
PIポリアミド(3)
図1に、PIpolyamide(3)として示した塩基配列(表1、PIポリアミド(3))を標的塩基配列として認識するように、AcPyPyβPyPyPyγImPyPyβPyPyβDpのPIポリアミドを設計した。このPIポリアミドは以下の式(式3)に示されるものであり、化学式はC79982715+、分子量は1665.79であった。
【実施例】
【0029】
[式3]
JP0006044935B2_000010t.gif
【実施例】
【0030】
PIポリアミド(コントロール)
Oct1遺伝子結合配列(配列表配列番号1)の全部または一部に結合しないPIポリアミド(コントロール)として、表1、PIポリアミド(コントロール)に示した塩基配列を標的塩基配列として認識するようにAcPyPyPyImβImγPyβPyImβImβDpのPIポリアミドを設計した。このPIポリアミドは以下の式(式4)に示されるものであり、化学式はC73942915、分子量は1617.71であった。
【実施例】
【0031】
[式4]
JP0006044935B2_000011t.gif
【実施例】
【0032】
【表1】
JP0006044935B2_000012t.gif
【実施例】
【0033】
2.PIポリアミドの合成
<HCTUを用いたピロールイミダゾールポリアミドの合成>
HCTU(ペプチド研究所製)を縮合活性化剤として、上記1.で設計したPIポリアミド(1)~(3)(3種)およびPIポリアミド(コントロール)をそれぞれ合成した。
【実施例】
【0034】
1)試薬の調製
(1)モノマー
FmocPyCOOH(Wako,20mg)、FmocImCOOH(Wako,40mg)、Fmoc-γ-Abu-OH(Nova Biochem,17.5mg)およびFmoc-β-Ala-OH(Nova Biochem,17.5mg)をそれぞれ、合成するPIポリアミドごとに必要なカップリング分用意し、レジンに対してFmocImCOOHを2当量、それ以外を4当量ずつ秤量し、1.5mLのエッペンドルフチューブに移した。さらにHCTUをFmocImCOOHのチューブに45mg、それ以外のチューブには22.5mgをそれぞれ加えた。また、NMP(Nacalai tesque製)をFmocImCOOHのチューブに500μL、それ以外のチューブには250μL加えボルテックスおよび1時間静置し完全に溶解させた。
(2)合成用試薬
合成機による合成のために、表2に記載の試薬を調製して用いた。
【実施例】
【0035】
【表2】
JP0006044935B2_000013t.gif
【実施例】
【0036】
3.レジンの調製
Fmoc-β-Ala-Wang-Resin(Peptide Institute製)をSmall Libra Tube(HiPep研究所製)に40mg(0.04mmol)取り、ペプチド合成機にセットした。これにNMP1mLを加え、20分間膨潤させた。
【実施例】
【0037】
4.ペプチド合成(自動)
上記1.で調製したDIEAを縮合活性化剤として合成機(PSSM-8;島津製作所製)にインストールした。また、先に準備しておいた各モノマーの入ったチューブをC末端から順番通りに合成機内ラックに配置した。PSSM-8の合成プログラムをセットし、合成機をスタートさせ、H2NAcPyPyβImPyPyγPyImPyβImPyβ-Resin、H2NAcImPyβPyPyPyγPyPyPyβImPyβ-Resin、H2NAcPyPyβPyPyPyγImPyPyβPyPyβ-ResinまたはH2NAcPyPyPyImβImγPyβPyImβImβ-Resinまで、次の(1)~(4)の反応サイクルを繰り返すことで自動合成を行った。
【実施例】
【0038】
反応サイクル
(1)カップリング処理を、上記活性化剤を用いてNMP中で30分間行った。
(2)余剰のモノマーおよび活性化剤を除くため、1mLのNMPによるレジンの洗浄を5回繰り返した。
(3)Fmoc脱保護溶液(30%Piperidine/NMP)を1mL加え3分間反応させ、溶液を除去後、再び同じサイクルを繰り返した。
(4)Fmoc脱保護溶液を除くため1mLのNMPによるレジンの洗浄を5回繰り返し(1)に戻った。目的産物が得られるまでこのサイクルを繰り返した。
【実施例】
【0039】
5.精製
合成機からレジンを取り出し、洗浄、乾燥の後、ネジ式キャップのエッペンドルフチューブに移した。これにN,N-Dimethylpropanediamine(Nacalai tesque製,2mL)を500μL加えてヒートブロックにより55℃で一晩加熱することにより、レジンからポリアミドの切り出しを行った。反応液をLibra Tubeに移し、濾過によりレジンを取り除き、レジンに付着している残りの反応液をNMP1mLおよびメタノール1mLで回収した。
溶媒を留去後、HPLC(0.1%AcOH:CH3CN=100:0~0:100,30min)で分取精製した。分取精製の後、凍結乾燥をして、上記1.で設計したPIポリアミド(3種)およびPIポリアミド(コントロール)をそれぞれ得た。
【実施例】
【0040】
6.DNA Binding Assay
上記5において生成したPIポリアミド(1)~(3)(3種)について、次の1)および2)の工程によるDNA Binding Assayにより、Oct1遺伝子結合配列(配列表配列番号1)への結合をそれぞれ確認した。また、PIポリアミド(コントロール)についても同様に、Oct1遺伝子結合配列(配列表配列番号1)への結合の有無を調べた。
【実施例】
【0041】
1)Oct1遺伝子結合配列(配列表配列番号1)と同じ塩基配列を含むOct1オリゴDNAにFITCをラベルした分子(50base)を作成し、終濃度1μMのオリゴをアニーリングバッファー(20mM Tris-HCl,2mM EDTA,200mM NaCl)中で100℃に熱し、その後2時間かけて段階的に30℃まで冷却した。これにより、Oct1オリゴDNAは自己アニーリングし、ヘアピン状の2本鎖を形成する。
2)上記1)のヘアピン状の2本鎖DNAを含む溶液15μlに0.2mMのPIポリアミド(1)~(3)またはPIポリアミド(コントロール)をそれぞれ5μl混合し、37℃で1時間インキュベートして混合液を得た。
3)上記(2)の混合液を5-20% アクリルアミドゲル(TBE バッファー)にて電気泳動しLAS 4000(GEヘルスケア・ジャパン製)にて泳動像を観察し、泳動度の違いから結合の有無を判定した。
4)その結果、Oct1オリゴDNAに対し、本発明のPI ポリアミド(1)~(3)はいずれも結合するが、PIポリアミド(コントロール)やPIポリアミドを加えていない溶媒のみの場合では結合が見られないことが確認できた。
【実施例】
【0042】
[試験例]
次の試験例1~6により、本発明のPIポリアミドによる、前立腺癌細胞(LNCaP)や腫瘍に対する効果を確認した。なお、各試験例における共通の試料として、次の試料を同様に調製して使用した。
【実施例】
【0043】
<試料>
1.PIポリアミド
実施例と同様の方法によって合成したPIポリアミド(1)~(3)(3種)およびPIポリアミド(コントロール)を使用した。
これらの各PIポリアミドを蒸留水に溶解したものを、細胞を培養している培地に添加することで細胞への導入を行った。
【実施例】
【0044】
2.前立腺癌細胞LNCaP
ATCC(American Type Culture Collection)より入手したヒト前立腺癌細胞LNCaP(ATCCナンバー:CRL-174)を用いた。
【実施例】
【0045】
3.培地
(1)フェノールレッド含有培地
フェノールレッド含有RPMI-1640培地(SIGMA-Aldrich製、カタログナンバーR7509)500mLに、チャコール処理を行った牛血清(FBS)を50ml添加したものをフェノールレッド含有培地として用いた。
(2)フェノールレッド非含有培地
また、フェノールレッド非含有RPMI-1640培地(SIGMA-Aldrich製、カタログナンバーR8758)500mに、チャコール処理を行った牛血清(FBS)を12.5ml添加したものをフェノールレッド非含有培地として用いた。
【実施例】
【0046】
4.DHT(デヒドロテストステロン)(和光純薬)
エタノール(EtOH)で、100nMに溶解したDHTをアンドロゲン刺激のために用いた。
【実施例】
【0047】
[試験例1]
ACSL3の転写調節領域(AR応答領域)におけるAR活性の評価
ACSL3の転写調節領域(AR応答領域)における次の各塩基配列をそれぞれ変異または欠失させた場合におけるAR活性への影響を調べた。
1)Oct1遺伝子結合配列(図1、OCT1(No.1)、OCT1(No.2))
2)ARE(図1、ARE(No.1)、ARE(No.2))
3)GATA遺伝子結合配列(図1、GATA)
【実施例】
【0048】
1.PCR
ACSL3転写開始点上流63kbに存在する、AR結合部位(AR binding site;ARBS)を約1kb抽出し(配列表配列番号10)、これを鋳型DNAとして、次の(1)~(5)の変異ARBSをそれぞれPCRによって増幅させた。
(1)OCT1(No.1)を欠失させたもの(表3、Mut Oct #1プライマー使用)
(2)OCT1(No.2)を欠失させたもの(表3、Mut Oct #2プライマー使用)
(3)GATAを欠失させたもの(表3、Mut GATAプライマー使用)
(4)OCT1(No.2)を欠失させ、ARE(No.1)を変異させたもの(表3、Mut Oct #2プライマーとMut ARE 1プライマー使用)
(5)Oct1(No.2)を欠失させ、ARE(No.1)とARE(No.2)を変異させたもの(表3、Mut Oct #2プライマー、Mut ARE 1プライマーおよびMut ARE 2プライマー使用)
【実施例】
【0049】
各変異ARBSは、以下の手順によって得た。
(1)鋳型DNA(配列表配列番号10)に対し、変異または欠失させたい遺伝子に対するプライマーをフォワードプライマー、鋳型DNAの末端に対するプライマー(表3、ACSL3 ARBS rvプライマー)をリバースプライマーとしてPCRを行い、増幅されたコンストラクトを得た。
(2)鋳型DNA(配列表配列番号10)に対し、鋳型DNAの先端に対するプライマー(表3、ACSL3 ARBS fwプライマー)をフォワードプライマーとし、変異または欠失させたい遺伝子に対するプライマーをリバースプライマーとしてPCRを行い、増幅されたコンストラクトを得た。
(3)上記(1)および(2)で得たコンストラクトを混合したものを鋳型DNAとして、鋳型DNAの先端に対するプライマー(表3、ACSL3 ARBS fwプライマー)をフォワードプライマーとし、鋳型DNAの末端に対するプライマー(表3、ACSL3 ARBS rvプライマー)をリバースプライマーとしてPCRを行うことにより、変異ARBSを得た。
【実施例】
【0050】
【表3】
JP0006044935B2_000014t.gif
【実施例】
【0051】
2.ルシフェラーゼアッセイ
上記(1)~(5)の変異ARBSをそれぞれルシフェラーゼベクター(pGL3 promoter vector:Promega,Madison,WI)に挿入したものを、FuGENE(登録商標) HD(Roche Applied Science)をトランスフェクション試薬とし、このプロトコールに従って上記3.(2)のフェノールレッド非含有培地にて約60時間培養した前立腺癌細胞(LNCaP)にトランスフェクションした。
その約12時間後、R1881(NEN Life Science Products)を用いたアンドロゲン刺激を行い、さらに24時間後ルシフェラーゼアッセイを行った。この試験において、ルシフェラーゼベクターの陽性コントロールとして、欠失または変異していないARBS(鋳型DNA:配列表配列番号10)を組み込んだ前立腺癌細胞(LNCaP)を使用した。
【実施例】
【0052】
その結果、図2に示したように、(1)Oct1(No.1)を欠失させたもの(図2、Oct1(No.1)deletion)と、(3)GATAを欠失させたもの(図2、GATA deletion)は陽性コントロール(図2、ACSL3 Enhancer)と同様のAR活性を示したが、(2)Oct1(No.2)を欠失させたもの(図2、Oct1(No.2)deletion)はAR活性が有意に低下することが確認できた。
また、図3に示したように、陽性コントロール(図3、ACSL3 Enhancer)に対し、(2)Oct1(No.2)を欠失させたもの(図3、Oct1(No.2)deletion)、(4)Oct1(No.2)を欠失させ、ARE(No.1)を変異させたもの(図3、Oct1(No.2)del.ARE(No.1)mut.)、(5)Oct1(No.2)を欠失させ、ARE(No.1)とARE(No.2)を変異させたもの(図3、Oct1(No.2)del.ARE(No.1)mut.ARE(No.2)mut.)はいずれもAR活性が有意に低下することが確認できた。
従って、この結果よりACSL3の転写調節領域(AR応答領域)におけるAR活性には、Oct1遺伝子結合配列のうち、Oct1(No.2)の作用が重要であることが示唆された。
【実施例】
【0053】
[試験例2]
ACSL3遺伝子の発現の検討
RT-PCRにより、PIポリアミド(1)~(3)をそれぞれ導入した細胞におけるACSL3遺伝子の発現を検討した。比較として、PIポリアミド(コントロール)を導入した細胞においても同様に検討した。
1)PIポリアミドの導入およびcDNAの調製
各PIポリアミドを5μMとなるように添加した上記3.(2)のフェノールレッド非含有培地でLNCaP細胞を3日間培養した。その後、上記4.のDHT(100nM)を培地内に添加し、アンドロゲン刺激を加えた。
この細胞から、アイソゲン(ニッポンジーン製)を用いてマニュアルに従って、RNAを抽出した後、PrimeScript(登録商標) Reverse Transcriptase(TaKaRa製)を用いてcDNAを調製した。
【実施例】
【0054】
2)RT-PCR
上記1)で調製したcDNAをそれぞれ鋳型DNAとして、表4に示したプライマーにより、各PIポリアミドを導入した前立腺癌細胞における融合遺伝子またはERG遺伝子の発現の有無を調べた。このRT-qPCRにおいて、Power SYBR(登録商標) Green PCR Master Mix(アプライドバイオシステム製)を使用した。
【実施例】
【0055】
【表4】
JP0006044935B2_000015t.gif
【実施例】
【0056】
その結果、図4に示したように、本発明のPIポリアミド(1)、PIポリアミド(2)またはPIポリアミド(3)を導入した細胞においては(図4、Polyamide(1)、Polyamide(2)、Polyamide(3))、アンドロゲン刺激を与えても、ACSL3遺伝子の発現が抑制されることが確認できた。一方、PIポリアミド(コントロール)を導入した細胞においては、ACSL3遺伝子の発現は抑制されなかった(図4、Polyamide(Control))。
また、図5にPIポリアミド(1)を1μMまたは5μM導入した細胞における、ACSL3遺伝子の発現抑制の結果を示したが、アンドロゲン刺激を与えても、PIポリアミド(1)を5μM導入した細胞は特にACSL3遺伝子の発現が抑制されることが確認できた。
【実施例】
【0057】
[試験例3]
ACSL3の転写調節領域(AR応答領域)におけるAR活性の評価
ACSL3転写開始点上流63kbに存在する、AR結合部位(AR binding site;ARBS)を約1kb抽出し(配列表配列番号10)、ルシフェラーゼベクター(pGL3 promoter vector:Promega,Madison,WI)に挿入したものを、FuGENE(登録商標) HD(Roche Applied Science)をトランスフェクション試薬とし、このプロトコールに従って上記3.(2)のフェノールレッド非含有培地にて約60時間培養した前立腺癌細胞(LNCaP)にトランスフェクションした。
その約12時間後、DHT100nMを用いたアンドロゲン刺激と、PIポリアミド(1)またはPIポリアミド(コントロール)の導入(1μMまたは5μM)を行い、ルシフェラーゼアッセイを行った。この試験において、ルシフェラーゼベクターの陽性コントロールとしてAR応答活性が知られているPSAプロモーター領域(配列表配列番号22)を組み込んだ前立腺癌細胞(LNCaP)を使用した。
【実施例】
【0058】
その結果、図6に示したようにPIポリアミド(1)を導入したものは、同量のPIポリアミド(コントロール)を導入したものに対して、有意にACSL3の転写調節領域(AR応答領域)におけるAR活性を低下させることが確認できた。PIポリアミド(2)およびPIポリアミド(3)を用いた場合も同様であった。
また、図7に示したように、陽性コントロールであるPSAプロモーター領域を組み込んだ前立腺癌細胞(LNCaP)を使用した場合には、PIポリアミド(1)を導入したものと同量のPIポリアミド(コントロール)を導入したものに有意な差がないことが確認できた。
【実施例】
【0059】
[試験例4]
細胞増殖能の評価
PIポリアミド(1)を導入した細胞、および、比較としてPIポリアミド(コントロール)を導入した細胞を培養し、MTSアッセイによって各細胞の増殖能を検討した。
即ち、このLNCaP細胞を全部で5×103細胞となるように96ウェルプレートに播き、各PIポリアミドを1μMまたは5μMとなるように添加した上記3.(2)のフェノールレッド非含有培地で3日間培養した。その後、上記4.のDHT(100nM)を培地内に添加し、アンドロゲン刺激を加えた。刺激後、それぞれ24時間、48時間または96時間培養した。
指定された刺激時間後、各細胞にMTS試薬(Cell Titer 96 AQueous One Solution Cell Proliferation Assay, Promega, Madison WI)を10μl添加して1時間インキュベートした。その後、各細胞の吸光度(490nm)を測定し、培養後の細胞数を調べることで、細胞増殖能を評価した。
【実施例】
【0060】
その結果、図8に示したように、PIポリアミド(コントロール)を導入した細胞(図8、Polyamide(Control)、5μM)に対し、本発明のPIポリアミド(1)を5μM導入した細胞(図8、Polyamide(1)、5μM)では、48時間培養した段階で有意に増殖が抑制されることが確認でき、96時間培養した場合には、さらに有意に増殖が抑制されることが確認できた。PIポリアミド(2)およびPIポリアミド(3)を用いた場合も同様に、細胞の増殖が抑制された。
【実施例】
【0061】
[試験例5]
細胞遊走能の評価
PIポリアミド(1)を導入した細胞、および、比較としてPIポリアミド(コントロール)を導入した細胞を培養し、Cell Cultuer Insertと、8.0μm pore size PET filter(Becton Dickinson製)を用いてCell migration アッセイによって各細胞の遊走能を検討した。
即ち、培養皿にPBSで10μg/mlに希釈したフィブロネクチン(Sigma製)を30分間作用させ、下層フィルターを作成した後、下層チャンバーに上記3.(1)のフェノールレッド含有培地RPMI 1640培地を700μl加えた。
各PIポリアミドを5μMとなるように添加した上記3.(1)のフェノールレッド含有培地で3日間培養したLNCaP細胞を5×104細胞ごとに分け、各細胞を300μlの上記3.(1)のフェノールレッド含有培地に懸濁したものをそれぞれ上層チャンバーに加えた。これを、37℃、5%CO2条件下で24時間培養した後、フィルターを剥がした。
下層フィルター上の細胞を30分間メタノールで固定した後、PBSで洗浄し、Gimsa‘s stain solution(Muto Pure Chemicals製)で30秒間インキュベートした。その後、細胞を200倍率の顕微鏡で観察し、細胞数を数えることで、細胞遊走能を評価した。
【実施例】
【0062】
図9に各PIポリアミドを添加した細胞における遊走した細胞数を示した。また、各PIポリアミドを添加した細胞の顕微鏡写真を図10に示した。
その結果、図9および図10に示したように、本発明のPIポリアミド(1)を導入した細胞においては(図9、10、Polyamide(1))、PIポリアミド(コントロール)を導入した細胞(図9、10、Polyamide(Control))に比べて、細胞の遊走能(浸潤能)が顕著に抑制されることが確認できた。PIポリアミド(2)、PIポリアミド(3)においても同様に、細胞の遊走能(浸潤能)が抑制された。
【実施例】
【0063】
[試験例6]
本発明のPIポリアミドの腫瘍に対する効果を確認した。
前立腺癌細胞(LNCaP)3×106個を7週齢の雄性ヌードマウス(n=10)の右脇腹に皮下注射した。3日毎にキャリパー測定し、腫瘍の大きさをモニターした。腫瘍の大きさが100cm2に達した段階で、dH2Oに溶解したPIポリアミド(1)またはPIポリアミド(コントロール)を6mg/kg体重となるように尾静脈から注射した(PIポリアミド(1):n=4、PIポリアミド(コントロール):n=6)。
週に1回の注射を4週間続け、腫瘍の大きさを毎週測定した。最後の注射から1週間経過後、ヌードマウスを解剖し、腫瘍を摘出した。
その結果、図11に示したように、PIポリアミド(1)を注射したヌードマウスでは、PIポリアミド(コントロール)を注射したヌードマウスに比べ、顕著に腫瘍の形成が抑制されることが確認できた。
また、摘出した腫瘍から溶解バッファー(NP40バッファー)を用いてタンパク質を抽出し、ACSL3抗体によりウエスタンブロットした結果(#1、#2の各2個体)を図12に示した(図12上段、下段はβアクチンタンパク質の発現を示す)。その結果、PIポリアミド(コントロール)を注射したヌードマウスではACSL3タンパク質が発現しているのに対し、PIポリアミド(1)を注射したヌードマウスではいずれもACSL3タンパク質の発現が顕著に抑制されることが確認できた。
【産業上の利用可能性】
【0064】
本発明のPIポリアミドを提供することによって、前立腺癌の予防、治療に有用かつ安全で安定した薬剤を開発することが容易となる。また、本発明者らが開発している、アンドロゲン応答遺伝子であるTMPPR2と、転写制御因子であるETS familyのEGR遺伝子との融合遺伝子の発現を抑制するPIポリアミド(特願2012-106382)と組み合わせることにより、前立腺癌の網羅的な治療等も可能となる。
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図6】
4
【図7】
5
【図8】
6
【図9】
7
【図5】
8
【図10】
9
【図11】
10
【図12】
11