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明細書 :化合物連結糖タンパク質

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第6153292号 (P6153292)
公開番号 特開2013-234155 (P2013-234155A)
登録日 平成29年6月9日(2017.6.9)
発行日 平成29年6月28日(2017.6.28)
公開日 平成25年11月21日(2013.11.21)
発明の名称または考案の名称 化合物連結糖タンパク質
国際特許分類 C07K  14/705       (2006.01)
A61K  38/00        (2006.01)
A61P  35/00        (2006.01)
A61P  29/00        (2006.01)
FI C07K 14/705 ZNA
A61K 38/00
A61P 35/00
A61P 29/00
請求項の数または発明の数 7
全頁数 18
出願番号 特願2012-107821 (P2012-107821)
出願日 平成24年5月9日(2012.5.9)
審査請求日 平成27年2月24日(2015.2.24)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】399030060
【氏名又は名称】学校法人 関西大学
発明者または考案者 【氏名】岩▲崎▼ 泰彦
【氏名】藤井 秀悦
個別代理人の代理人 【識別番号】110000796、【氏名又は名称】特許業務法人三枝国際特許事務所
審査官 【審査官】上村 直子
参考文献・文献 特開2004-244639(JP,A)
Chemical Communications,2011年,Vol.47,p.10329-10331
Macromolecular Bioscience,2011年,Vol.11,p.1478-1483
Transactions of the Annual Meeting of the Society for Biomaterials,2010年,Vol.32,p.797,<metabolic expression of methacrylate-derivatized>
Trends in Glycoscience and Glycotechnology,1995年,Vol.7, No.36,p.333-342
調査した分野 JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/REGISTRY(STN)
特許請求の範囲 【請求項1】
糖鎖を構成する少なくとも1つのシアル酸残基が、一般式(1):
【化1】
JP0006153292B2_000009t.gif
[式中、Rは水素又は炭素数1~3のアルキル基を示す]
で表される基で置換されたシアル酸残基で置き換えられている、細胞から精製されたP-セレクチングリコプロテインリガンド-1
【請求項2】
糖鎖末端に存在する少なくとも1つのシアル酸残基が、一般式(1)で表される基で置換されたシアル酸残基で置き換えられている、請求項1に記載のP-セレクチングリコプロテインリガンド-1
【請求項3】
一般式(1)で表される基で置換されたシアル酸残基がN-メタクリロイルノイラミン酸残基である、請求項1又は2に記載のP-セレクチングリコプロテインリガンド-1
【請求項4】
請求項1~のいずれかに記載のP-セレクチングリコプロテインリガンド-1と、求核性基及び/又は一般式(1)で表される基を有する化合物とが、P-セレクチングリコプロテインリガンド-1上の一般式(1)で表される基を介して連結している、細胞から精製された化合物連結P-セレクチングリコプロテインリガンド-1
【請求項5】
求核性基及び/又は一般式(1)で表される基を有する化合物が、一般式(2):
【化2】
JP0006153292B2_000010t.gif
[式中、nは数平均で1~500を示す]
で表される化合物である、請求項に記載の化合物連結P-セレクチングリコプロテインリガンド-1
【請求項6】
求核性基及び/又は一般式(1)で表される基を有する化合物が、医薬化合物である、請求項4に記載の化合物連結P-セレクチングリコプロテインリガンド-1。
【請求項7】
医薬化合物が抗炎症剤又は抗がん剤である、請求項6に記載の化合物連結P-セレクチングリコプロテインリガンド-1。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は糖タンパク質及び化合物連結糖タンパク質に関する。
【背景技術】
【0002】
糖タンパク質は、細胞の相互認識、増殖、分化、又はがん化等において重要な役割を果たすことが知られている。例えば、血球細胞の細胞膜上に存在する膜タンパク質の一種であるP-セレクチングリコプロテインリガンド-1は、炎症した血管内皮細胞特異的に発現するP-セレクチンと結合することにより、炎症部位への血球細胞の遊走を仲介している。
【0003】
糖タンパク質に化合物を連結すれば、このような糖タンパク質の機能を利用することができると考えられる。例えば糖タンパク質として生体内の特定部位に局在(又は集積)する糖タンパク質を採用すれば、連結した化合物を特定細胞上に効率的に伝達することが可能になると考えられる。
【0004】
また、糖タンパク質に他の化合物を連結すれば、糖タンパク質の性質を改善することもできると考えられる。例えば、ポリエチレングリコールは肝臓での代謝を阻害するため、糖タンパク質に連結することにより糖タンパク質の血中寿命を延ばすことができると考えられる。
【0005】
一方、タンパク質に他の化合物を連結する技術が各種知られている。一例として、特許文献1には、タンパク質を構成するアミノ酸上の官能基(アミノ基又はカルボキシル基)を介して、ポリエチレングリコールを連結する技術について記載されている。
【0006】
しかしながら、上記技術を採用して糖タンパク質に他の化合物を連結する場合、連結される他の化合物を、アミノ酸上の官能基と反応するように修飾する必要があるため、化合物連結糖タンパク質の製造が煩雑なものとなる。
【先行技術文献】
【0007】

【特許文献1】特開2011-63521号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、他の化合物を容易に連結できるように修飾された糖タンパク質、さらには他の化合物が連結された糖タンパク質を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者等は、鋭意研究の結果、糖タンパク質中の糖鎖を構成する少なくとも1つの糖残基が、メタクリロイル基のような反応性基で置換された糖残基で置き換えられている糖タンパク質を用いることにより、該糖タンパク質に他の化合物を容易に連結できることを見出した。糖鎖は糖タンパク質の機能の発揮に重要であるため、糖鎖部分に改変が加えられた糖タンパク質は、糖タンパク質本来の機能を発揮できない可能性が示唆されていた。ところが、驚くべきことに本発明の糖タンパク質は、糖タンパク質本来の機能を損なうことなく発揮できることが示された。これらの知見に基づき、さらに研究を進めることにより本発明が完成した。
【0010】
即ち、本発明は、下記の構成を有するものを包含する。
【0011】
項1.糖鎖を構成する少なくとも1つの糖残基が、一般式(1):
【0012】
【化1】
JP0006153292B2_000002t.gif

【0013】
[式中、Rは水素又は炭素数1~3のアルキル基を示す]
で表される基で置換された糖残基で置き換えられている、糖タンパク質。
【0014】
項2.糖鎖末端に存在する少なくとも1つの糖残基が、一般式(1)で表される基で置換された糖残基で置き換えられている、請求項1に記載の糖タンパク質。
【0015】
項3.一般式(1)で表される基で置換された糖残基で置き換えられている少なくとも1つの糖残基がシアル酸残基である、請求項1又は2に記載の糖タンパク質。
【0016】
項4.一般式(1)で表される基で置換された糖残基がN-メタクリロイルノイラミン酸残基である、請求項1~3のいずれかに記載の糖タンパク質。
【0017】
項5.糖タンパク質が膜タンパク質である、請求項1~4のいずれかに記載の糖タンパク質。
【0018】
項6.糖タンパク質がP-セレクチングリコプロテインリガンド-1である、請求項1~5のいずれかに記載の糖タンパク質。
【0019】
項7.請求項1~6のいずれかに記載の糖タンパク質と、求核性基及び/又は一般式(1)で表される基を有する化合物とが、糖タンパク質上の一般式(1)で表される基を介して連結している、化合物連結糖タンパク質。
【0020】
項8.求核性基及び/又は一般式(1)で表される基を有する化合物が、一般式(2):
【0021】
【化2】
JP0006153292B2_000003t.gif

【0022】
[式中、nは数平均で1~500を示す]
で表される化合物である、請求項7に記載の化合物連結糖タンパク質。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、他の化合物を容易に連結できるように修飾された糖タンパク質、さらには他の化合物が連結している化合物連結糖タンパク質を提供できる。
【0024】
本発明の糖タンパク質中の一般式(1)で表される基は、求核性基などの官能基と容易に反応できるため、該糖タンパク質に多様な化合物を簡便かつ効率的に連結することができる。また、本発明の糖タンパク質は糖タンパク質本来の機能を損なうことなく発揮できる。
【0025】
本発明の化合物連結糖タンパク質によれば、糖タンパク質の機能を利用して、連結された化合物の性質を効率的に発揮することができる。例えば、糖タンパク質として生体内の特定部位に局在(又は集積)する糖タンパク質を採用する場合は、連結した化合物(例えば医薬化合物)を特定細胞上に効率的に伝達することが可能になる
また、本発明の化合物連結糖タンパク質によれば、特定の機能を有する化合物を連結することにより、糖タンパク質の機能を改善することもできる。例えば、化合物としてエチレングリコールが重合した構造を有する化合物を採用する場合は、該化合物が肝臓での代謝を阻害するという機能を利用して、糖タンパク質の血中寿命を延ばすことができる。別の例としては、化合物として水溶性の化合物を採用することにより、不溶性の糖タンパク質を水溶性に改質し、該糖タンパク質の精製を容易にすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】N-N-メタクリロイルマンノサミンの合成結果を示すNMRデータ。
【図2】細胞表面上の糖鎖にメタクリル基が導入されたことを示す顕微鏡画像。
【図3】糖タンパク質とPentaerythritol tetra(mercaptoethyl) polyoxyethyleneとが連結していることを示すウェスタンブロットデータ。
【図4】糖タンパク質とリゾチームとが連結していることを示すウェスタンブロットデータ。
【図5】Poly(MPC)の合成結果を示すNMRデータ。
【図6】PMPC-SHの合成結果を示すNMRデータ。
【図7】糖タンパク質とPMPC-SHとが連結していることを示すウェスタンブロットデータ。
【図8】シアル酸残基がN-メタクリロイルシアル酸残基に置き換えられても、P-セレクチングリコプロテインリガンド-1がP-セレクチンと結合できること示す顕微鏡画像。
【発明を実施するための形態】
【0027】
(1)糖タンパク質
本発明の糖タンパク質は、糖鎖を構成する少なくとも1つの糖残基が、一般式(1):

【0028】
【化3】
JP0006153292B2_000004t.gif

【0029】
[式中、Rは水素又は炭素数1~3のアルキル基を示す]
で表される基で置換された糖残基で置き換えられている、糖タンパク質である。

【0030】
糖タンパク質は、糖鎖(N結合型及び/又はO結合型)が連結しているタンパク質であれば特に限定されない。糖タンパク質は、ヒト、サル、マウス、ラット、又はウサギ等の生物由来の天然タンパク質であってもよいし、人工的に設計したタンパク質発現プラスミドを生体内に導入することにより発現させた人工タンパク質であってもよい。

【0031】
天然の糖タンパク質としては、例えば、膜タンパク質や分泌タンパク質などが挙げられ、好ましくは膜タンパク質が挙げられる。

【0032】
天然の糖タンパク質として、具体的には、P-セレクチングリコプロテインリガンド-1、CD43、CD45、又はCD11bが挙げられ、好ましくはP-セレクチングリコプロテインリガンド-1、又はCD43が挙げられる。ヒト由来P-セレクチングリコプロテインリガンド-1のアミノ酸配列は配列番号1に示され、マウス由来のP-セレクチングリコプロテインリガンド-1のアミノ酸配列は配列番号2に示される。

【0033】
これらの天然の糖タンパク質は、本来の機能を発揮できる限り、例えば糖タンパク質がP-セレクチングリコプロテインリガンド-1である場合はP-セレクチンと結合するという機能を発揮できる限り、1~50個のアミノ酸、好ましくは1~20個のアミノ酸、より好ましくは1~10個のアミノ酸、さらに好ましくは1~5個のアミノ酸が置換、欠失、又は負荷されていてもよい。アミノ酸が置換される場合は性質が類似のアミノ酸に置換されることが好ましい。例えば、酸性アミノ酸であるアスパラギン酸が置換される場合は、同じく酸性アミノ酸であるグルタミン酸に置換されることが好ましい。

【0034】
一般式(1)で表される基で置換された糖残基で置き換えられる「糖鎖を構成する糖残基」としては、糖タンパク質の糖鎖(N結合型及び/又はO結合型)を構成する糖残基であれば特に限定されない。このような糖残基としては、例えば、シアル酸残基(N-アセチルノイラミン酸残基若しくはN-グリコイルノイラミン酸残基)、グルコース残基、ガラクトース残基、マンノース残基、フコース残基、N-アセチルグルコサミン残基、N-アセチルガラクトサミン残基、又はキシロース残基等が挙げられ、好ましくはシアル酸残基(N-アセチルノイラミン酸残基又はN-グリコイルノイラミン酸残基)が挙げられ、より好ましくはN-アセチルノイラミン酸残基が挙げられる。

【0035】
「一般式(1)で表される基で置換された糖残基」とは、水素及び/又は官能基が一般式(1)で表される基で置き換わっている糖残基を意味する。

【0036】
一般式(1)で表される基で水素及び又は官能基が置き換えられている糖残基としては、例えば、シアル酸残基(N-アセチルノイラミン酸残基若しくはN-グリコイルノイラミン酸残基)、グルコース残基、ガラクトース残基、マンノース残基、フコース残基、N-アセチルグルコサミン残基、N-アセチルガラクトサミン残基、又はキシロース残基等が挙げられ、好ましくはシアル酸残基(N-アセチルノイラミン酸残基又はN-グリコイルノイラミン酸残基)が挙げられ、より好ましくはN-アセチルノイラミン酸残基が挙げられる。

【0037】
一般式(1)で表される基で置き換えられている糖残基上の水素又は官能基としては、例えばN-アセチルノイラミン酸残基中のアセチル基、又はN-グリコリルノイラミン酸残基中のグリコリル基が挙げられる。

【0038】
「一般式(1)で表される基で置換された糖残基」として、具体的にはN-アセチルノイラミン酸残基中のアセチル基、又はN-グリコリルノイラミン酸残基中のグリコリル基が、一般式(1)で表される基で置き換わっている糖残基が挙げられ、好ましくはN-アセチルノイラミン酸残基中のアセチル基、又はN-グリコリルノイラミン酸残基中のグリコリル基が、メタクリル基で表される基で置き換わっている糖残基(N-メタクリロイルノイラミン酸残基)が挙げられる。

【0039】
一般式(1)中、Rは水素又は炭素数1~3のアルキル基を示す。Rとして、具体的には、水素、メチル基、エチル基、1-プロピル基、又は2-プロピル基が挙げられ、好ましくはメチル基、エチル基、1-プロピル基、又は2-プロピル基が挙げられ、より好ましくはメチル基、又はエチル基が挙げられ、さらに好ましくはメチル基が挙げられる。

【0040】
一般式(1)で表される基で置換された糖残基で置き換えられる「糖鎖を構成する糖残基」の糖鎖上の位置は特に限定されない。置き換えられる糖残基としては、具体的には、糖鎖末端に存在する糖残基が好ましく挙げられる。

【0041】
本発明の糖タンパク質は、糖タンパク質を発現している細胞と、一般式(1)で表される基で置換された糖、及び/又は細胞内において一般式(1)で表される基で置換された糖に代謝される糖とを接触させることを含む方法により製造することができる。この製造方法によれば、細胞内でタンパク質に糖鎖が付加されて糖タンパク質が合成される際に、本来付加される糖の代わりに、一般式(1)で表される基で置換された糖が付加されることにより、本発明の糖タンパク質が合成される。

【0042】
糖タンパク質を発現している細胞としては、特に限定されず、例えば動物細胞を広く使用することができる。細胞としては、所望の糖タンパク質の発現量が高い細胞が好ましい。例えば、所望の糖タンパク質がP-セレクチングリコプロテインリガンド-1である場合は、該糖タンパク質の発現量が高い細胞、例えば血球細胞を使用することが好ましい。

【0043】
一般式(1)で表される基で置換された糖としては、前述の「一般式(1)で表される糖残基」に対応する糖を用いることができる。

【0044】
細胞内において一般式(1)で表される基で置換された糖に代謝される糖とは、細胞内における代謝により各種修飾が行われることにより一般式(1)で表される基で置換された糖に変換される糖を意味する。具体的には、マンノサミンは細胞内における代謝によりシアル酸に変換されるため、一般式(1)で表される基で置換されたシアル酸に代謝される糖として、一般式(1)で表される基で置換されたマンノサミンが例示される。

【0045】
一般式(1)で表される基で置換された糖、及び/又は細胞内において一般式(1)で表される基で置換された糖に代謝される糖としては、一種又は二種以上を組み合わせてもよい。

【0046】
一般式(1)で表される基で置換された糖、又は細胞内において一般式(1)で表される基で置換された糖に代謝される糖は、公知の方法又はそれに準じた方法に従って合成することができる。

【0047】
接触の態様は、特に限定されず、例えば糖タンパク質を発現している細胞の培養培地と、一般式(1)で表される基で置換された糖、及び/又は細胞内において一般式(1)で表される基で置換された糖に代謝される糖とを混合するという態様が挙げられる。この態様において、一般式(1)で表される基で置換された糖、及び/又は細胞内において一般式(1)で表される基で置換された糖に代謝される糖の培地中の濃度としては、例えば0.1~50mMが挙げられ、好ましくは0.5~20mMが挙げられ、より好ましくは1.5~15mMが挙げられ、さらに好ましくは3~8mMが挙げられる。この濃度範囲は、製造される糖タンパク質が、一般式(1)で表される基で置換された糖で置き換えられていながらも、糖タンパク質本来の機能を損なわずに発揮できるという観点から好ましい。

【0048】
接触後、細胞を一定時間、例えば1~5日間培養することにより、本発明の糖タンパク質が合成される。

【0049】
培養後、本発明の糖タンパク質を、所望により公知の方法に従って精製してもよい。このような方法としては、例えば、細胞破砕物から、公知のタンパク質画分分離方法によりタンパク質画分を精製する方法、又は所望の糖タンパク質に対する抗体を用いたアフィニティークロマトグラフィーによって精製する方法が挙げられる。

【0050】
本発明の糖タンパク質は、一般式(1)で表される基を介して求核性基などの官能基を有する化合物と連結できるため、後述の化合物連結タンパク質を簡便且つ効率的に製造するのに利用できる。また、本発明の糖タンパク質は、糖タンパク質の機能を損なわずに発揮することができる。例えば、糖タンパク質がP-セレクチングリコプロテインリガンド-1である場合は、P-セレクチングリコプロテインリガンド-1の機能、すなわちP-セレクチンに結合する機能を損なわない。

【0051】
(2)化合物連結糖タンパク質
本発明の化合物連結糖タンパク質は、本発明の糖タンパク質と、求核性基及び/又は一般式(1)で表される基を有する化合物とが、糖タンパク質上の一般式(1)で表される基を介して連結している、化合物連結糖タンパク質である。

【0052】
本発明の糖タンパク質としては、前述の「(1)糖タンパク質」と同じものを採用できる。

【0053】
求核性基としては、求核性を有する基であれば特に限定されない。求核性基としては、例えば、チオール基、カルボキシル基、カルボン酸塩基、カルボン酸無水物基、スルホン酸(塩)基、1,2級アミノ基、フェノキシド基、水酸基、スルフィド基、ホスフィン基、ホスファイト基、リン酸基、アルシン基、有機セレン基、ヒドロキシド基、ハロゲンイオン(例えば塩素イオン)等が挙げられ、好ましくはチオール基、又は1級アミノ基が挙げられる。

【0054】
求核性基及び/又は一般式(1)で表される基を有する化合物としては、求核性基及び/又は一般式(1)で表される基を有する限り特に限定されない。例えば、医薬化合物、又は高分子化合物が挙げられる。

【0055】
医薬化合物としては、抗炎症剤、又は抗がん剤が挙げられる。

【0056】
高分子化合物としては、例えば、タンパク質、核酸、脂質、多糖類、若しくは天然ゴム等の天然高分子、又は合成樹脂、シリコン樹脂、合成繊維、若しくは合成ゴム等の合成高分子等が挙げられる。具体的には、エチレングリコールが重合した構造を有する化合物、又はアクリル樹脂が挙げられる。

【0057】
求核性基及び/又は一般式(1)で表される基を有する化合物として医薬化合物を採用する場合は、連結される糖タンパク質の局在を利用して、糖タンパク質に連結した医薬化合物を特定部位に効率的に伝達することができる。

【0058】
求核性基及び/又は一般式(1)で表される基を有する化合物としてエチレングリコールが重合した構造を有する化合物を採用する場合は、肝臓での代謝を阻害するという該化合物の機能を利用して、連結される糖タンパク質の血中寿命を延ばすことができる。エチレングリコールが重合した構造を有する化合物としては、例えば、一般式(2):

【0059】
【化4】
JP0006153292B2_000005t.gif

【0060】
[式中、nは数平均で1~500を示す]
で表される化合物が挙げられる。nとしては、好ましくは数平均で5~100が挙げられ、より好ましくは数平均で20~70が挙げられる。

【0061】
本発明の化合物連結糖タンパク質においては、本発明の糖タンパク質と、求核性基及び/又は一般式(1)で表される基を有する化合物とが、糖タンパク質上の一般式(1)で表される基を介して連結している。

【0062】
糖タンパク質上の一般式(1)で表される基を介して連結しているとは、本発明の糖タンパク質上の一般式(1)で表される基と、求核性基及び/又は一般式(1)で表される基を有する化合物上の求核性基及び/又は一般式(1)で表される基とが、付加反応や重合反応などにより連結していることを意味する。例えば求核性基として少なくとも1つのチオール基を有する化合物を採用する場合は、少なくとも1つの下記式

【0063】
【化5】
JP0006153292B2_000006t.gif

【0064】
[式中、*1は、本発明の糖タンパク質から少なくとも1つの一般式(1)で表される基を除いて得られる基と結合する部位を示し、*2は、チオール基を有する化合物から少なくとも1つのチオール基を除いて得られる基を示し、Rは水素又は炭素数1~3のアルキル基を示す]
で表される二価の基を介して、本発明の糖タンパク質とチオール基を有する化合物とが連結していることを示す。

【0065】
本発明の化合物連結糖タンパク質は、本発明の糖タンパク質と、求核性基及び/又は一般式(1)で表される基を有する化合物とを反応させることにより製造することができる。

【0066】
反応条件(溶媒、反応温度、又は反応時間等)は、本発明の糖タンパク質上の一般式(1)で表される基と、求核性基及び/又は一般式(1)で表される基を有する化合物上の求核性基及び/又は一般式(1)で表される基とが付加反応や重合反応などにより連結できる限り特に限定されない。

【0067】
溶媒としては、例えば緩衝液、具体的にはPBS、又はハンクス緩衝溶液等の水系溶媒が挙げられる。

【0068】
反応温度としては、例えば4~50℃が挙げられる。

【0069】
反応時間としては、例えば5~60分間が挙げられる。

【0070】
反応中、紫外線を照射することにより、付加反応や重合反応を効率的に進めることができる。

【0071】
また、反応中、重合開始剤を共存させることにより、反応を効率的に進めることができる。重合開始としては、例えばアルキルフェノン系光重合開始剤、アシルフォスフィンオキサイド系光重合開始剤、又はチタノセン系光重合開始剤等のラジカル型光重合開始剤が挙げられる。

【0072】
反応後、精製した本発明の化合物連結糖タンパク質を、公知の方法に従って精製してもよい。このような方法としては、例えば、反応物から、各種クロマトグラフィーによって本発明の化合物連結糖タンパク質を精製する方法、又は所望の糖タンパク質に対する抗体を用いたアフィニティークロマトグラフィーによって精製する方法等が挙げられる。

【0073】
本発明の化合物連結糖タンパク質は、連結する糖タンパク質又は化合物の種類に応じて種々の機能を発揮する。

【0074】
例えば、糖タンパク質として生体内の特定部位に局在(又は集積)する糖タンパク質を採用すれば、その性質を利用して、連結する化合物を特定部位に効率的に伝達することができる。具体的には、糖タンパク質としてP-セレクチングリコプロテインリガンド-1を採用すれば、該糖タンパク質が炎症細胞特異的に発現するP-セレクチンに結合するという機能を利用して、連結された化合物(例えば医薬化合物)を効率的に炎症部位に伝達することができる。

【0075】
また別の例として、連結する化合物として特定の性質を有する化合物を採用すれば、糖タンパク質の性質を改善(改質)することができる。具体的には、連結する化合物として、エチレングリコールが重合した構造を有する化合物を採用すれば、肝臓での代謝を阻害するという該化合物の機能を利用して、連結される糖タンパク質の血中寿命を延ばすことができる。

【0076】
本発明の化合物連結糖タンパク質は上記のような機能を発揮するため、医薬組成物の有効成分として有用である。

【0077】
医薬組成物は、本発明の化合物連結糖タンパク質そのものであってもよいし、これと他の薬理活性成分、薬学的に許容される基剤、担体、添加剤(例えば溶剤、分散剤、乳化剤、緩衝剤、安定剤、賦形剤、結合剤、崩壊剤、滑沢剤等)等が必要に応じて配合され、注射剤、錠剤、丸剤、散剤、液剤、懸濁剤、乳剤、顆粒剤、カプセル剤等の医薬製剤に調製されたものでもよい。

【0078】
本発明の化合物連結糖タンパク質の医薬組成物中の含有量は、例えば、0.1~100重量%であり得る。医薬組成物の有効成分の一日摂取量は、患者の年齢や性別、病状の重篤度等に応じて、適宜設定することができる。

【0079】
医薬組成物は、本発明の化合物連結糖タンパク質を配合し、さらに必要に応じて上記他の薬理活性成分、上記薬学的に許容される基剤、担体、添加剤を配合し、またさらに必要に応じて注射剤、錠剤、丸剤、散剤、液剤、懸濁剤、乳剤、顆粒剤、カプセル剤等の医薬製剤に調製されることによって製造することができる。
【実施例】
【0080】
以下に、実施例に基づいて本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例によって限定されるものではない。
【実施例】
【0081】
1.メタクリル基で置換された糖の合成
下記反応式に従って、アミノ基がメタクリル基で置換されたマンノサミン(以下、「N-N-メタクリロイルマンノサミン」と示すこともある)を合成した。詳細を以下に説明する。
【実施例】
【0082】
【化6】
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【実施例】
【0083】
三口フラスコに、脱水テトラヒドロフラン(THF)(Wako:試薬特級)を77 ml、トリエチルアミン(TEA)(Wako:和光特級)を常圧蒸留して得られたb.p89.4℃/760 mmHgの留分を4.2 ml、及びメタクリル酸(Wako:試薬特級)を減圧蒸留して得られたb.p 72℃/14 mmHgの留分を2.4 ml取り、30分間撹拌した。そこへ、3.3 mlのクロロギ酸イソブチル(Wako:ペプチド合成用)を一滴ずつ加え、3時間撹拌した。別の三角フラスコに、脱水テトラヒドロフラン(THF)(Wako:試薬特級)を68.4 ml、及び純水を85.6 ml加え、撹拌しながらさらにD-マンノースアミン塩酸塩(Aldrich)5.00 gとトリエチルアミン(TEA)(Wako:和光特級)を常圧蒸留して得られたb.p89.4℃/760 mmHgの留分3.6mlを加え、5分間撹拌した。三口フラスコ中の溶液を三角フラスコに一滴ずつ加え、24時間撹拌した。そこへ、重合禁止剤としてp-メトキシフェノール(Wako)を0.3 ml加えた。エバポレーターにより有機溶媒を除去し、その後凍結乾燥することにより水を除去して濃縮した。濃縮液をクロロホルムとメタノールとの混合溶液(クロロホルム:メタノール=15:1(容量比))に溶解し、該溶解液をシリカゲル(Merck silicagel60 0.063-0.200mm)カラムに通した。クロロホルムに対するメタノールの容量を増加させながら、クロロホルムとメタノールとの混合溶液で溶出し、クロロホルム:メタノール=5:1の混合溶液で溶出したフラクションを回収した。該フラクション中の溶液をエバポレーターで濃縮した。該濃縮液を陽イオン交換樹脂(Biorad AG50W-X8 pyridium form)カラムで精製し、精製物を凍結乾燥により濃縮した。該濃縮液をさらに陰イオン交換樹脂(Biorad AG-1X2 acetate form)カラムで精製し、精製物を凍結乾燥することにより水を除去した。得られた化合物をNMRで解析した結果を図1に示す。
【実施例】
【0084】
図1より、N-N-メタクリロイルマンノサミンの合成が確認できた。
【実施例】
【0085】
2.糖鎖への反応性基の導入
細胞内ではマンノサミンからシアル酸が生合成され、該シアル酸が細胞表面の糖鎖に取り込まれることが知られている。このことを利用して、合成したN-N-メタクリロイルマンノサミンを細胞培養環境下に添加することにより、細胞表面の糖鎖を構成するシアル酸残基を、メタクリロイルシアル酸残基に置き換えた。メタクリロイルシアル酸に置き換えられていることの確認は、メタクリロイル基を介して蛍光物質を連結し、蛍光を確認することにより行った。詳細を以下に説明する。
【実施例】
【0086】
細胞としてはHL-60細胞(ヒト骨髄性白血病細胞:ヒューマンサイエンス資源バンク)を用いた。培地としては、RPMI Medium 1640(GIBCO)に、FBS(終濃度10%)及び抗生物質(終濃度1%)を添加したものを用いた。N-メタクリロイルマンノサミンはPBS(-)で50mMに調製した。なお、これらは、下記「3.糖タンパク質と化合物の連結」及び「4.反応性基が導入された糖タンパク質の機能の評価」においても使用した。
【実施例】
【0087】
HL-60細胞を培地中に2.0×105cells/mlになるように懸濁した。12 wellプレートの1 well当たり、該細胞懸濁液1 mlと、50 mMN-メタクリロイルマンノサミン溶液(またはPBS(-))110μlを入れた。 37℃、CO2濃度5%の湿潤環境下で3日間培養した。培養後の培養液を回収し、1000 rpmで3分間遠心分離し、分離された細胞を無血清培地で3回洗浄した。2.5%Pentaerythritol tetra(mercaptoethyl) polyoxyethylene (日油株式会社:PTE-100SH)と0.05wt% Irgacure 2959(Ciba)の混合溶液300μlを加え、365nmのUVランプを15分間照射した。1000 rpmで3分間遠心分離し、分離された細胞を無血清培地で3回洗浄した。10μg/ml Alexa Fluor 488 C5-maleimide(invitrogen)を、細胞が懸濁されている無血清培地中に、終濃度0.6 μg/mlになうように添加し、暗所において室温で15分間静置した。1000 rpmで3分間遠心分離し、無血清培地で3回洗浄した。洗浄後の細胞を、共焦点顕微鏡(ZEISS:LSM5PASCAL-V3.2)により観察した。観察された微分干渉画像および蛍光画像を図2に示す。
【実施例】
【0088】
図2中、ManMA(+)はN-メタクリロイルマンノサミン溶液を添加したサンプルの画像を示し、ManMA(-)はN-メタクリロイルマンノサミン溶液の代わりにPBS(-)を添加したサンプルの画像を示す。
【実施例】
【0089】
図2より、N-メタクリロイルマンノサミンを添加したサンプルは、細胞表面が蛍光標識されていることが示された。すなわち、N-メタクリロイルマンノサミンを添加することにより、細胞表面の糖鎖を構成する糖残基が、メタクリロイルシアル酸に置き換えられたことが確認できた。
【実施例】
【0090】
3.糖タンパク質と化合物の連結
3-1. Pentaerythritol tetra(mercaptoethyl) polyoxyethyleneの連結
膜タンパク質の糖鎖を構成するシアル酸残基を、N-メタクリロイルシアル酸残基に置き換え、さらにメタクリル基を介してPentaerythritol tetra(mercaptoethyl) polyoxyethyleneを連結した。メタクリロイルシアル酸に置き換えられていることの確認、及びPentaerythritol tetra(mercaptoethyl) polyoxyethyleneが連結されていることの確認は、膜タンパク質であるP-セレクチングリコプロテインリガンド-1に対する抗体を用いたウェスタンブロットで解析することにより確認した。抗P-セレクチングリコプロテインリガンド-1抗体で検出されるバンドが、P-セレクチングリコプロテインリガンド-1の分子量から推定される位置よりも高い位置に検出されれば、膜タンパク質であるP-セレクチングリコプロテインリガンド-1上のシアル酸残基がメタクリロイルシアル酸に置き換えられ、且つメタクリロイル基を介してPentaerythritol tetra(mercaptoethyl) polyoxyethyleneが連結されていることを示す。詳細を以下に説明する。
【実施例】
【0091】
HL-60細胞を培地中に8.0×105cells/mlになるように懸濁した。12 wellプレートの1 well当たり、該細胞懸濁液1 mlと、50 mMN-メタクリロイルマンノサミン溶液(またはPBS(-))110μlを入れた。 37℃、CO2濃度5%の湿潤環境下で3日間培養した。培養後の培養液を回収し、1000 rpmで3分間遠心分離し、分離された細胞をPBS(-)で3回洗浄した。洗浄後、細胞をPBS(-)195μl中に懸濁した。該懸濁液に0.01 wt% PTE-100SHと0.05 w% Irgacure 2959との混合溶液を105μl加え、365nmのUVランプを10分間照射した。1000 rpmで3分間遠心分離し、分離された細胞をPBS(-)で3回洗浄した。
【実施例】
【0092】
洗浄後の細胞を定法に従って溶解し、ウェスタンブロットを行った。一次抗体溶液としてPSGL-1抗体(TOYOBO)を0.5%スキムミルク/TBSTで333倍に希釈したものを用いた。ウェスタンブロットの結果を図3に示す。
【実施例】
【0093】
図3中、ManMA(+)はN-メタクリロイルマンノサミンを添加したサンプルを示し、ManMA(-)はN-メタクリロイルマンノサミンを添加していないサンプルを示す。PEG-SH(+)はPTE-100SHを添加したサンプルを示し、PEG-SH(-)はPTE-100SHを添加していないサンプルを示す。
【実施例】
【0094】
図3より、N-メタクリロイルマンノサミン及びPTE-100SHを添加したサンプルのレーン(図3中の「5」)において、P-セレクチングリコプロテインリガンド-1の分子量から推定される位置よりも高い位置にバンドが検出された。すなわち、膜タンパク質であるP-セレクチングリコプロテインリガンド-1上のシアル酸がメタクリロイルシアル酸に置き換えられ、メタクリロイル基を介してPentaerythritol tetra(mercaptoethyl) polyoxyethyleneが連結したことが示された。
【実施例】
【0095】
3-2.リゾチームの連結
0.01 wt% PTE-100SHの代わりに10 wt%リゾチーム(Wako)を用いる以外は、上記「3-1.Pentaerythritol tetra(mercaptoethyl) polyoxyethyleneの連結」と同様に行った。ウェスタンブロットの結果を図4に示す。
【実施例】
【0096】
図4中、ManMA(+)はN-メタクリロイルマンノサミンを添加したサンプルを示し、ManMA(-)はN-メタクリロイルマンノサミンを添加していないサンプルを示す。リゾチーム(+)はリゾチームを添加したサンプルを示し、リゾチーム(-)はリゾチームを添加していないサンプルを示す。
【実施例】
【0097】
図4より、N-メタクリロイルマンノサミン及びリゾチームを添加したサンプルのレーン(図4中の「5」)において、P-セレクチングリコプロテインリガンド-1の分子量から推定される位置よりも高い位置にバンドが検出された。すなわち、膜タンパク質であるP-セレクチングリコプロテインリガンド-1上のシアル酸がメタクリロイルシアル酸に置き換えられ、メタクリロイル基を介してリゾチームが連結したことが示された。
【実施例】
【0098】
3-3. PMPC-SHの連結
<PMPC-SHの合成>
PMPC-SHの合成は、下記反応式に従って行った。詳細を以下に説明する。
【実施例】
【0099】
【化7】
JP0006153292B2_000008t.gif
【実施例】
【0100】
純水を沸騰するまで加熱し、1時間バブリングした。丸底フラスコに2-メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリン(日油株式会社:MPC)、10.30g(34.88mmol)、4-シアノ吉草酸ジチオベンゾエート0.123g(0.44mmol)、4-4’アゾビス(シアノ吉草酸) 0.0170g(0.63mmol)を加えバブリングした純水30mlに溶かした。30分間撹拌しながらアルゴンでバブリングした。バブリング後、75℃で3時間加熱した。加熱後、純水で3日間透析(MWCO=3500)し、凍結乾燥した。凍結乾燥物をNMRにより解析した結果を図5に示す。図5より、Poly(MPC)が合成されていることが確認された。
【実施例】
【0101】
凍結乾燥により得られたPoly(MPC) 2.0g(149μmol)をメタノール44.8mLに溶かし、微量のTCEPを加え、2-アミノエタノールを溶液の色が無色になるまで滴下した。室温で1時間撹拌した。反応後メタノールで2日間、純水で1日透析(MWCO=3500)し、凍結乾燥した。凍結乾燥物をNMRにより解析した結果を図6に示す。図5及び図6より、PMPC-SHを合成できたことが確認された。
【実施例】
【0102】
<PMPC-SHの連結>
0.01 wt% PTE-100SHの代わりに、合成したPMPC-SHを用いる以外は、上記「3-1.Pentaerythritol tetra(mercaptoethyl) polyoxyethyleneの連結」と同様に行った。ウェスタンブロットの結果を図7に示す。
【実施例】
【0103】
図7中、ManMA(+)はN-メタクリロイルマンノサミンを添加したサンプルを示し、ManMA(-)はN-メタクリロイルマンノサミンを添加していないサンプルを示す。PMPC-SH(+)はPMPC-SHを添加したサンプルを示し、PMPC-SH(-)はPMPC-SHを添加していないサンプルを示す。
【実施例】
【0104】
図7より、N-メタクリロイルマンノサミン及びPMPC-SHを添加したサンプルのレーン(図7
中の「5」)において、P-セレクチングリコプロテインリガンド-1の分子量から推定される位置よりも高い位置にバンドが検出された。すなわち、膜タンパク質であるP-セレクチングリコプロテインリガンド-1上のシアル酸がメタクリロイルシアル酸に置き換えられ、メタクリロイル基を介してPMPC-SHが連結したことが示された。
【実施例】
【0105】
4.反応性基が導入された糖タンパク質の機能の評価
P-セレクチングリコプロテインリガンド-1は、炎症した血管内皮細胞特異的に発現するP-セレクチンと結合することにより、炎症部位への血球細胞の遊走を仲介することが知られている。この機能の発揮には、P-セレクチングリコプロテインリガンド-1上の糖鎖を構成するシアル酸残基が重要な役割を果たしているため、シアル酸残基がメタクリロイルシアル酸残基に置き換えられた場合、この機能が発揮されない、もしくは著しく機能が低下する可能性が高い。そこで、シアル酸残基がメタクリロイルシアル酸残基に置き換えられても、P-セレクチングリコプロテインリガンド-1が本来の機能を発揮できるか否か、すなわちP-セレクチンと結合できるか否かを調べた。詳細を以下に説明する。
【実施例】
【0106】
HL-60細胞を培地中に2.0×105cells/mlになるように懸濁した。12 wellプレートの1 well当たり、該細胞懸濁液1 mlと、50 mMN-メタクリロイルマンノサミン溶液(またはPBS(-))110μlを入れた。 37℃、CO2濃度5%の湿潤環境下で3日間培養した。培養後、1000 rpmで3分間遠心分離し、培地で3回洗浄した。洗浄後の細胞を1 mlの培地に懸濁し、そこへCalcein AMを5μl加え、暗所で15分間静置した。静置後、細胞をPBS(-)で3回洗浄した。洗浄後の細胞を500μlの培地に懸濁した。
【実施例】
【0107】
一方で、ガラスベースディシュにHUVEC(正常ヒト臍帯静脈内皮細胞:ヒューマンサイエンス資源バンク)を播種し、コンフルエントになるまで培養した。HUVECを培養したガラスベースディシュにIL-1α(またはPBS(-))を5μl加え、4時間培養した。培養後の細胞を培地で洗浄後、500μlの培地を加えた。
【実施例】
【0108】
HL-60細胞の懸濁液をHUVECが培養されているガラスベースディシュに加え、37℃、CO2濃度5%の湿潤環境下で30分間培養した。培養後、PBS(-)で2回洗浄した。洗浄後、蛍光顕微鏡で観察した。観察画像を図8に示す。
【実施例】
【0109】
洗浄により、ガラスベースディシュに接着して培養されているHUVECはディッシュ上に残り、浮遊細胞であるHL-60細胞は、HUVECと接着していない場合はディッシュ上に残らないが、HUVECと接着している場合はディッシュ上に残る。HL-60細胞はCalcein AMで蛍光標識されているため、洗浄後の蛍光観察により蛍光が確認されれば、HL-60細胞とHUVECとが接着していることを示す。
【実施例】
【0110】
図8中、ManMA(+)はN-メタクリロイルマンノサミンを添加したサンプルを示し、ManMA(-)はN-メタクリロイルマンノサミンを添加していないサンプルを示す。IL-1α(+)はIL-1αを添加したサンプル、すなわちHUVEC上にP-セレクチンの発現が誘導されたサンプルを示し、IL-1α(-)はIL-1αを添加していないサンプルを示す。
【実施例】
【0111】
図8より、N-メタクリロイルマンノサミンを添加していない場合と、N-メタクリロイルマンノサミンを添加した場合との間に、蛍光量の差はなかった。すなわち、シアル酸残基がメタクリロイルシアル酸残基に置き換えられたHL-60細胞でも、置き換えられていない場合と同様に、P-セレクチンを発現しているHUVECに接着したことが示された。より具体的には、シアル酸残基がメタクリロイルシアル酸残基に置き換えられたP-セレクチングリコプロテインリガンド-1でも、P-セレクチンと結合するという本来の機能を発揮できることが示された。
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
5
【図7】
6
【図8】
7