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明細書 :ルテニウムの分離回収方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 公開特許公報(A)
公開番号 特開2014-048084 (P2014-048084A)
公開日 平成26年3月17日(2014.3.17)
発明の名称または考案の名称 ルテニウムの分離回収方法
国際特許分類 G21F   9/08        (2006.01)
G21F   9/02        (2006.01)
FI G21F 9/08 511A
G21F 9/02 Z
請求項の数または発明の数 7
出願形態 OL
全頁数 16
出願番号 特願2012-189561 (P2012-189561)
出願日 平成24年8月30日(2012.8.30)
発明者または考案者 【氏名】佐藤 宗一
【氏名】福田 一仁
【氏名】森谷 洋一郎
【氏名】遠藤 昇
【氏名】森田 泰治
出願人 【識別番号】505374783
【氏名又は名称】独立行政法人日本原子力研究開発機構
個別代理人の代理人 【識別番号】100176164、【弁理士】、【氏名又は名称】江口 州志
審査請求 未請求
要約 【課題】ルテニウムを含有する放射性廃液の処理時に発生するRuO4、特に、高レベル放射性廃液のルテニウム電解除去プロセス又はガラス固化プロセスで発生するRuOからのルテニウムの分離回収を、溶液中で湿式処理する必要がなく、簡便で効率的に、且つ確実に行うことができる乾式処理のルテニウムの分離回収方法を提供する。
【解決する手段】放射性廃液等の液体に含まれるルテニウム(Ru)を四酸化物(RuO)として揮発分離した後、該揮発分離したRuOを含有する雰囲気を150℃以上、好ましくは200~200℃の温度で加熱することによって、少なくともRuOをRuOの固体として分離回収することを特徴とする。さらに、RuOを含有する雰囲気中に、あらかじめ150℃以上に加熱した空気又は還元性気体を含有する空気を流入することによってルテニウムの分離回収がより効率的に行える。
【選択図】図1
特許請求の範囲 【請求項1】
液体に含まれるルテニウム(Ru)を四酸化物(RuO)として揮発分離した後、該揮発分離したRuOを含有する雰囲気を150℃以上の温度で加熱することによって、少なくともRuOをRuOの固体として分離回収することを特徴とするルテニウムの分離回収方法。
【請求項2】
前記の加熱が200~250℃の温度で行われることを特徴とする請求項1に記載のルテニウムの分離回収方法。
【請求項3】
前記のRuOを含有する雰囲気中に、あらかじめ150℃以上に加熱した空気又は還元性気体を含有する空気を流入することを特徴とする請求項1又は2に記載のルテニウムの分離回収方法。
【請求項4】
前記の還元性気体が、一酸化炭素、NOx及び水素からなる群の1種又は2種以上を混合した気体であることを特徴とする請求項1~3の何れかに記載のルテニウムの分離回収方法。
【請求項5】
前記のRuOを含む雰囲気を150℃以上で加熱した後の気体を、さらにRuO吸収液に接触させることによって未反応のRuOの分離回収を進めることを特徴とする請求項1~4の何れかに記載のルテニウムの分離回収方法。
【請求項6】
前記のRuO吸収液が、水、水酸化ナトリウム水溶液、四塩化炭素、アルコール水溶液、アルコールと塩酸の混合溶液、塩酸と過酸化水素の混合溶液及びギ酸等のカルボン酸水溶液の1種又は2種以上の混合溶液からなることを特徴とする請求項5に記載の分離回収方法。
【請求項7】
前記のルテニウムを含む液体が、ルテニウムの電解除去プロセスを用いて処理される放射性廃液、又はガラス溶融炉により溶融し、ガラス固化体として処理される放射性廃液であることを特徴とする請求項1~6に記載のルテニウムの分離回収方法。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、ルテニウムの分離処理方法に係わり、特に、放射性廃液の蒸発濃縮工程や高レベル放射性廃液からのルテニウムの電解除去プロセス又は高レベル放射性廃液のガラス固化プロセスによって発生するオフガス中に含まれる揮発性ルテニウムからのルテニウムの分離回収方法に関する。
【背景技術】
【0002】
原子力発電プラント関連施設において発生した高レベル放射性廃液は、安全性と取扱い性を高めるために、一般にガラス溶融炉内で原料ガラスとともに溶融して固化させるガラス固化処理が施されている(例えば、特許文献1を参照)。このようなガラス固化プロセスで発生するオフガス中には、RuOからなる揮発性ルテニウムが混入しており、そのRuOからルテニウムを効率的に除去するためのルテニウムの分離回収技術が大きな技術課題となっている。
【0003】
オフガス中にRuOの状態で混入する揮発性ルテニウムを分離回収する技術としては、例えば、RuOをシリカゲル吸着剤に吸着させる技術が検討されていた。特許文献2には、エネルギーロスを少なくしてRuOの除去効果を上げるために、シリカと酸化鉄とを主成分とする吸着剤による放射性廃ガスの処理方法が提案されている。しかしながら、この方法は、吸着剤が新たな固形放射性廃棄物となるため、貯蔵スペース及び処理作業が増えることが問題となっている。また、RuOの吸着性能が、処理中に変化しやすく、ルテニウムの分離回収が安定的に行えないという課題もある。
【0004】
上記の吸着剤による処理方法の代わりに、特許文献3及び4には、揮発性ルテニウムをNOxと反応して生成される還元生成物を水等の液体に補足又は吸収させる湿式の分離回収方法が提案されている。特許文献5には、ルテニウムの液体処理方法として、揮発性ルテニウムを、溶液中で電気化学的な方法により酸化した後、還元して不溶性であるRuO(固体)の形態に転化する処理方法が開示されている。また、特許文献6には、高レベル放射性廃液を定電位電解することによってルテニウムを揮発せしめ、揮発したルテニウムを還元性のギ酸水溶液と接触させることによってルテニウム酸化物として沈殿せしめ、この沈殿物をギ酸水溶液から分離回収する方法が開示されている。
【0005】
さらに、RuOの状態で混入する揮発性ルテニウムを液体に補足又は吸収させる代わりに、特許文献7には揮発性ルテニウムそのものを回収する方法が提案されている。前記の特許文献7に記載のルテニウムの処理方法は、揮発性ルテニウムを凝縮させるとともに、その凝縮過程において窒素酸化物のガス又は亜硝酸溶液等の還元剤と反応させることにより、RuNOの不揮発性ルテニウム化合物に変化させて、高レベル廃液を低レベル廃液として処理するものである。
【0006】
一方、高レベル放射性廃液をガラス固化処理するための別の方法が特許文献8に提案されている。この方法は、カーボンブラック還元剤を添加した後の放射性廃液を、ガラスカートリッジからなる含浸体に含浸させて加熱処理し、前記の含浸体をガラス溶融炉に溶融した後に固化させるものである。すなわち、前記の特許文献1に記載の方法とは異なり、放射性廃液を直接、ガラス溶融体炉に導入するのではなく、還元して生成される安定な酸化物(RuO)の微粒子の形態にしてから導入する方法である。
【先行技術文献】
【0007】

【特許文献1】特開2005-82417号公報
【特許文献2】特開平9-222496号公報
【特許文献3】特開平2-99898号公報
【特許文献4】特開平3-209198号公報
【特許文献5】特開平1-138496号公報
【特許文献6】特開平6-180392号公報
【特許文献7】特開平7-287096号公報
【特許文献8】特開2010-169415号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
前記の特許文献3~6に記載されているように、ルテニウムの分離回収方法としては、揮発性ルテニウムを液体中で処理する湿式法が一般的である。しかしながら、これらの方法では処理後のルテニウムを含む溶液が液体放射性廃棄物に変化しただけであり、新たに溶液中に含まれる放射性ルテニウムを分離回収するための操作が必要となる。溶液から放射性ルテニウムだけを分離回収する方法は、安全上から細心の注意を要するため、煩雑な処理である。そのため、このような湿式処理を行わないで、より簡便にルテニウムを分離回収できる方法が強く求められている。
【0009】
また、前記の特許文献7には、揮発性ルテニウムそのものをRuNOの不揮発性ルテニウム化合物に変化させて回収する方法が記載されているが、不揮発性ルテニウム化合物に変化させるための反応器、冷却器及び吹き込み装置等を配置する必要があり、処理装置そのものが大掛かりとなる。また、反応器内の反応を精緻に制御するための高度な技術も必要であり、必ずしも簡便な処理方法とは言えるものではなかった。
【0010】
前記の特許文献8に記載のガラス固化処理法は、ガラス溶融炉からのオフガス中に含まれる揮発性ルテニウム(RuO)を減量化できるという効果が期待できるものの、放射性廃液に還元剤を添加した後に、当該放射性廃液を含浸体に含浸させて加熱処理する工程が新たに必要となる。また、この方法は、ガラス溶融炉の底部に堆積しやすい白金族元素の大きな粒径が生成するのを抑制するためのものであり、放射性廃液に含まれるルテニウムのすべてを固体状のRuOに還元して、ガラス溶融炉中でRuOの発生を完全に抑えるという効果までは期待されていない。そのため、この方法を、RuOからルテニウムを効率的に除去するためのルテニウムの分離回収技術として適用できるものなのか否かは不明である。
【0011】
本発明は、上記した従来の問題点に鑑みてなされたものであって、ルテニウムを含有する放射性廃液の処理時に発生する揮発性ルテニウム(RuO)からのルテニウムの分離回収、特に、放射性廃液の蒸発濃縮工程や高レベル放射性廃液からのルテニウムの電解除去プロセス又は高レベル放射性廃液のガラス固化プロセスによって発生するオフガス中に含まれるRuOからのルテニウムの分離回収を、従来のように溶液中で湿式処理する必要がなく、簡便で効率的に、且つ確実に行うことができる乾式によるルテニウムの分離回収方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、ルテニウムの分離回収方法において、揮発性ルテニウム(RuO)を容易にRuOに還元し、RuOを固体状粒子として捕集する方法について鋭意検討した結果、RuOを加熱する場合にRuO→RuOへの反応が促進することを見出し、その加熱方法及びその条件を最適化するとともに、還元反応によって生成される固体状RuOの簡便で、且つ確実な回収方法を構築することによって、上記の課題を解決できることを見出して本発明に到った。
【0013】
すなわち、本発明の構成は以下の通りである。
[1]本発明は、液体に含まれるルテニウム(Ru)を四酸化物(RuO)として揮発分離した後、該揮発分離したRuOを含有する雰囲気を150℃以上の温度で加熱することによって、少なくともRuOをRuOの固体として分離回収することを特徴とするルテニウムの分離回収方法を提供する。
[2]本発明は、前記の加熱が200~250℃の温度で行われることを特徴とする前記[1]に記載のルテニウムの分離回収方法を提供する。
[3]本発明は、前記のRuOを含有する雰囲気中に、あらかじめ150℃以上に加熱した空気又は還元性気体を含有する空気を流入することを特徴とする前記[1]又は[2]に記載のルテニウムの分離回収方法を提供する。
[4]本発明は、前記の還元性気体が、一酸化炭素、NOx及び水素からなる群の1種又は2種以上を混合した気体であることを特徴とする前記[1]~[3]の何れかに記載のルテニウムの分離回収方法を提供する。
[5]本発明は、前記のRuOを含む雰囲気を150℃以上で加熱した後の気体を、さらにRuO吸収液に接触させることによって未反応のRuOの分離回収を進めることを特徴とする前記[1]~[4]の何れかに記載のルテニウムの分離回収方法を提供する。
[6]本発明は、前記のRuO吸収液が、水、水酸化ナトリウム水溶液、四塩化炭素、アルコール水溶液、アルコールと塩酸の混合溶液、塩酸と過酸化水素の混合溶液及びギ酸等のカルボン酸水溶液の1種又は2種以上の混合溶液からなることを特徴とする前記[5]に記載の分離回収方法を提供する。
[7]本発明は、前記のルテニウムを含む液体が、ルテニウムの電解除去プロセスを用いて処理される放射性廃液、又はガラス溶融炉により溶融し、ガラス固化体として処理される放射性廃液であることを特徴とする前記[1]~[6]に記載のルテニウムの分離回収方法を提供する。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、ルテニウムが含まれる放射性廃液を処理するときに発生する揮発性ルテニウム(RuO)を150℃以上、好ましくは200~250℃の温度範囲で加熱処理することによって、RuOからRuOへの還元反応によって生成されるRuOを固体状態で分離回収することができる。それによって、RuO又はRuOを溶液に吸収させる必要が無くなり、溶液中から放射性ルテニウムを分離回収するための湿式処理が省略できるために、簡便にルテニウムを分離回収することができる。また、RuOを含む雰囲気を加熱する際に、その雰囲気中にあらかじめ加熱した空気を導入するとともに、加熱空気中に還元性気体を混入させることによって、RuOからRuOへの還元反応を促進させる効果が得られることから、RuOからのルテニウムの分離回収の効率を高めることができる。
【0015】
本発明の方法は、150℃以上の加熱処理によって、揮発分離したRuOから放射性ルテニウムのほとんどを分離回収することが可能であるが、RuOを含む雰囲気を150℃以上で加熱した後の気体を、さらにRuO吸収液に接触させる方法を行うことによって、未反応のRuOの分離回収を進めることができる。両者を組み合わせる方法は、ルテニウムの分離回収を確実に行うことによって、放射性ルテニウムを外部へ一切漏洩させないために採用される。本発明の方法によれば、ルテニウムの分離回収の目的は150℃以上の加熱処理によってほぼ達成できるため、前記のRuO吸収液の接触による方法を採用したとしても、RuO吸収液の使用が長期間可能となる。その場合、溶液からの放射性ルテニウムの回収工程の回数と処理時間を大幅に削減できるという効果が得られる。
【0016】
本発明による方法は、従来と比べて簡便で確実に放射性ルテニウムを分離回収できるため、ルテニウムが含まれる放射性廃棄物から発生する揮発性ルテニウム(RuO)、例えば、放射性廃液の蒸発濃縮工程や高レベル放射性廃液の電解酸化法により除去するRuO、放射性廃棄物の焼却や溶融により発生するRuO、及び高レベル放射性廃液のガラス固化プロセスによって発生するRuOの何れの処理に対しても適用することができる。それらの中で、特に、放射性廃液の蒸発濃縮工程や高レベル放射性廃液の電解酸化法により発生する揮発性ルテニウム、又は高レベル放射性廃液のガラス固化プロセスによって発生するオフガス中に含まれる揮発性ルテニウムからのルテニウムの分離回収へ適用したときに、より簡便な処理法として大きな効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明のRuO乾式分離回収装置の一形態を示す概略断面図である。
【図2】RuOの捕集メカニズムを示す図である。
【図3】本発明のRuO乾式分離回収装置の別の形態を示す概略断面図である。
【図4】RuO乾式分離回収装置に湿式回収装置を接続した本発明の別の形態を示す分離回収装置の概略断面図である。
【図5】RuO乾式分離回収装置内にフィルターを備える本発明の別の形態を示す分離回収装置の概略断面図である。
【図6】本発明のRuO乾式分離回収装置における反応答内温度とルテニウム回収率との関係を示す図である。
【図7】RuOの分解反応速度定数のアレニウスプロットである。
【図8】本発明の乾式分離回収装置から実験で求めたルテニウム漏洩率と吸着及び反応速度から計算したRuO残留率との対比を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
RuOは非常に不安定な物質であり、RuOへ安定化する。実際に熱力学平衡計算ソフト(Factsage6.1)により出発物質をRuOとして化学平衡後のRu酸化物の濃度の計算を実施した結果、400℃以下においてRuO及び/又はRuOとして存在する割合は非常に少なく、化学平衡後ではほとんどRuOとして存在することが分かった。RuOの反応はRuOからのO脱離であり一次反応である。また、400℃以下の範囲内であれば、温度を上げることによりRuOのRuOとOへの分解(Ruの還元反応)の反応速度が大きくなる。従って、RuOガスの加熱により気体状のRuOを固体のRuOとして回収することができると考えられる。本発明はこの知見に基づいてなされたものであり、ルテニウムが含まれる放射性廃液を処理するときに発生する揮発性のRuOガスを加熱することによって、気体状のRuOを固体のRuOとして分離回収することを特徴とする。それによって溶液を使用しない乾式での分離回収を行うことができ、従来の湿式法によるオフガス処理とは異なり、廃液が発生しないか、又は廃液量の大幅な削減が可能となり、本発明は簡便で高効率の実際的なオフガス処理法とすることができる。

【0019】
本発明において、RuO→RuOの反応を行うための加熱は、ルテニウムが含まれる放射性廃液を処理するときに発生する気体状のRuOが導入される反応塔の雰囲気温度を150℃以上に加熱する必要がある。加熱温度が150℃未満では、気体状のRuOを固体のRuOとして迅速に回収する効果が得られない。さらに、加熱温度が200℃以上であれば、RuO→RuOの反応が促進されて、固体のRuOとして回収できる比率が大幅に向上するため、本発明は加熱温度を200℃以上にすることがより好ましい。また、加熱温度の上限は、上記でも述べたように、RuO及び/又はRuOの生成を抑えるために400℃以下にすることが好ましい。しかし、固体のRuOとしての回収率は、加熱温度が250℃のときにほぼ100%を達成することができ、250℃を超える加熱温度では飽和するだけである。逆に、加熱温度が250℃を超える場合は、エネルギーロスが大きくなるだけでなく、反応炉を含む装置全体の取扱い性や耐久性が低下するという悪影響が生じるため、加熱の上限温度は250℃以下がより好ましい。このように、本発明においては、雰囲気温度を150℃以上にする必要があり、好ましくは200~250℃に設定することによって、気体状のRuOを固体のRuOとして分離回収する際の回収率が大幅に向上し、加熱による乾式方法だけでもルテニウムの分離回収を確実に行うことができる。

【0020】
以下、本発明によるルテニウムの分離回収方法を実施するための装置を、図面を用いて詳細に説明する。

【0021】
図1は本発明の分離回収方法で使用する乾式回収装置の一形態を示す概略断面図である。図1に示すように、この乾式回収装置は、気体状のRuOの導入用配管1、加熱部2と自然冷却部3とからなる反応塔4及び加熱処理後の気体排出用配管5から主に構成される。加熱部2は、その周囲に外部から加熱する手段、例えばヒーター等の加熱手段6を備えており、温度は自動制御できるようになっている。また、反応塔4の入口と出口に相当する個所には、反応塔4の交換が可能となるように、セパラブル用クランプ7を備えている。

【0022】
図1において、ガラス固化プロセスによってガラス溶融炉から発生するオフガス中に含まれるRuO、高レベル放射性廃液の電解酸化法により発生するRuO4、又は放射性廃棄物の焼却や溶融により発生するRuOは、導入用配管1を通して、反応塔4において150℃以上、好ましくは200~250℃の温度に制御した加熱部2へ導入し加熱した後、自然冷却部3において空冷されるようになっている。自然冷却後の気体は排出用配管5によって排出される。ここで、反応塔の上段、すなわち加熱部2では、Ruが塔の管内部に均一に蒸着したように光沢を有して付着している。また、下段に相当する自然冷却部3には、塔の管内を流体(粉体)が流れたような跡があり、比較的大きな粒子を確認する事ができ、固体状のRuOが観測される。

【0023】
これらの反応炉4の内壁に観測される現象に基づいて、RuOの捕集については次の2通りのメカニズムが考えられる(図2を参照)。詳細は後述するが、反応塔内に流れたRuOが未反応のまま気体の流れに沿って反応塔2の下方向へ移動しながら拡散して反応塔の壁面に吸着するか、或いは気相中に存在する微小なRuO粒子に付着してそのまま反応塔の下部に移動して反応塔の内部壁面に付着して捕集される場合と、RuOへ変化してこれが凝集して粒子として塔内部壁面付着に補足されて付着する場合である。

【0024】
固体状のRuOが塔内部壁面に付着している反応塔4は、放射性廃液を含む放射性廃棄物の処理量や処理頻度に応じて、セパラブル用クランプ7を備える箇所から取り外して交換することによって、放射性ルテニウムの分離回収が行われる。固体状のRuOが付着している反応塔4は、取り除かれた後、所定の隔離場所へ保管又は保存する。その場合、RuOが付着している反応塔4は、コンクリート等の固化剤とともに固めて保管又は保存しても良い。

【0025】
本発明において使用する反応塔4は、強度、耐腐食性、耐熱性、コスト及び廃棄のしやすさ等の取扱い性を考慮して、少なくとも加熱部において石英管等のガラス製又はステンレス管、鉄管等の金属製のものを使用するのが好ましい。特に、ガラス管は透明であることから、RuOの捕集状態を外観で把握することが可能であり、コスト的にも安価であるため、反応塔の材料として好適である。本発明において、反応塔4の自然冷却部3は、加熱部2と同じ材料であっても、異なる材料であっても良い。自然冷却部3は加熱部2と比べて温度上昇が小さいため、場合によっては自然冷却部3だけを透明性又は不透明性プラスチック等の耐熱性の低い材料で作製することができる。そのときは、図1に示すように、加熱部2と自然冷却部3との境に、両者を分離又は接続するための付加的なセパラブル用クランプ8を設ける。そのようにすれば、反応塔の長さを自由に調整することが容易となり、また、反応塔の交換をRuOの付着が著しい部分だけで済ますことができるという利点がある。なお、付加的なセパラブル用クランプ8は本発明において必ずしも必須のものではないので、図1において点線で図示してある。

【0026】
上記の反応塔4において、加熱部2及び自然冷却部3の長さはRuOの流速や反応塔4の直径等に応じて最適化して決められるが、それぞれ100以上及び50mm以上であれば、RuO→RuOの反応進行とRuOの付着捕集を行うことができ、本発明の効果が得られる。さらにRuO→RuOの反応進行を進めてRuOとしての回収率を上げるために反応塔の加熱部及び自然冷却部を長くしたい場合、又は反応塔を設置する場所のスペースが狭い場合には、図1に示す反応塔4を2段以上の多段で並列に配置して、配管は直列に繋ぐ方法を採用することができる。例えば、加熱部を1段目の反応塔とし、自然冷却部を2段目の反応塔として1段目の加熱部と並列して配置する方法である。このとき、RuOの導入用及び排出用の配管は直列に繋ぐ。また、加熱部と自然冷却部とを有する反応塔を1段目とし、それと並列して別の加熱部と自然冷却部とを有する反応塔を第2段目として配置しても良い。その場合は、第1段目の反応塔で完全に分離回収できなかったRuOを、第2段目の反応塔で再処理することができるようになり、発生するRuOのほぼすべてが固体状のRuOとして確実に分離回収される。本発明では、並列に配置する反応塔の数は、2つに限定されず、放射性廃棄物の量、反応塔の長さ及びルテニウム回収率に応じて、3つ以上としても良い。また、図1に示す反応塔2は、2つ以上の複数の反応塔を直列に配管して繋ぐだけでなく、並列に配管して繋ぐこともできる。その場合は、ルテニウムの分離回収を並列で同時に行うことができるため、処理速度と処理効率を高めることができるという効果が得られる。

【0027】
また、本発明は、RuOを導入する反応塔の内部雰囲気を150℃以上で加熱するだけでなく、その反応塔内部の雰囲気中に、あらかじめ加熱した空気を流入する手段を設けることによって、ルテニウムの分離回収の効率を上げることができる。図3は、本発明の分離回収方法で使用する乾式回収装置の一形態を示す概略断面図であり、装置の構成として、あらかじめ加熱した空気9をRuOとともに反応塔の内部へ流入させる手段を有する。図3において、加熱した空気9の流入は、送風ポンプ10を用いて流入させた空気を加熱器11を経由させることによって直接反応塔4の上部から供給される。

【0028】
上記の加熱した空気9は、反応炉4の加熱部2において150℃以上におけるRuO→RuOの反応を促進するために、あらかじめ反応塔4の上部で150℃以上となるように加熱器11の温度を調整することが好ましい。加熱器11の温度調整は、例えば、反応塔4の上部の温度センサを配置することによって、その実測温度に応じた調整を自動で行うことができる。本発明において、反応塔4の加熱部2の温度を200~250℃に設定する場合は、200~250℃の温度範囲に調整して加熱した空気9を直接導入しても良いし、また、あらかじめ150℃以上に加熱した空気9を反応塔4の内部に導入した後、加熱手段6によって温度を上げる方法を採用しても良い。

【0029】
本発明では、あらかじめ加熱した空気9をRuOとともに反応塔の内部へ流入させる手段を採用することによって、反応塔4の内部へ導入する供給気体の圧力及び流量を調整できるという効果を奏する。反応塔4の内部全域でRuO→RuOの反応を均一に進行させるためには、気体の流れが層流となることが好ましいが、例えば、導入用配管1から供給するRuOを含む気体の圧力や流量が小さい場合には層流状態を維持できず、反応塔4の内部においてRuO→RuOの反応が不均一に起こりやすくなる。それによって、反応管4の内壁へのRuOの吸着及び固体状RuOの付着が不均一となり、分離回収操作の途中でルテニウム回収率の低下が顕著になるという問題が発生する場合がある。また、後述するように、本発明の乾式分離回収装置の後に液体回収装置を備える場合、又は本発明の乾式分離回収装置の気体排出口近くに固体状のRuOを回収するためのフィルターを設置する場合には、それらの付加的な装置から背圧が発生し、RuOを含む気体の流れが阻害されやすくなり、最悪の場合には逆流の可能性がある。したがって、あらかじめ加熱した空気9を、RuOが含まれる気体とともに反応塔4の内部へ供給する際に、加熱した空気9の圧力又は流量を調整することによって、そのような問題の発生を防止することができる。

【0030】
本発明で適用する加熱した空気9には、RuO→RuOの還元反応を進めるために、還元性気体を混合させても良い。還元性気体としては、例えば、一酸化炭素、NOx及び水素からなる群の1種又は2種以上からなるものを使用する。それらの中で、取り扱い性及び安全性の点から、NOxの還元性気体を混合させることが好ましい。加熱した空気9に混合される還元性気体の比率は、ルテニウムの分離回収率に応じて決めることができるが、RuO→RuOの還元反応は加熱温度によって制御がほぼ可能であるため、高くする必要はない。したがって、還元性気体の混合気体に占める比率は、混合気体の全量に対して30体積%以下であり、好ましくは10体積%以下、より好ましくは5体積%以下である。

【0031】
図3に示す乾式分離回収装置は、図1に示すものと比べて、揮発分離したRuOから放射性ルテニウムの分離回収をより効率的に、且つ安定的に行うことができる。また、上記で述べたように、反応塔4を2段以上の多段で並列に配置する方法を採用することによって、放射性廃棄物の処理時に発生するRuOからのルテニウムの分離回収がより確実となる。

【0032】
本発明においては、未反応のRuOの存在を皆無にして、ルテニウムの分離回収を完璧に近い形で進めるために、RuOを含む雰囲気を150℃以上、好ましくは200~250℃の範囲で加熱した後の気体を、さらにRuO吸収液に接触させる湿式回収方法を採用することができる。図4は、両者を組み合わせた方法を実施するための分離回収装置であり、図3に示すRuO乾式分離回収装置の後に湿式回収装置を接続した本発明の別の形態を示す分離回収装置の概略図である。

【0033】
図4において、湿式の回収槽12は、一定温度を保持するための恒温槽13内に、RuO吸収液を収納した第1の吸収筒14及び第2の吸収筒15を設置し、乾式分離回収装置から気体排出用配管5を通過してきた気体を第1の配管16及び第2の配管17を介して、第1の吸収筒14及び第2の吸収筒15へ導くようになっている。気体排出用配管5と第1の配管16は、同じ配管であっても良いし、ジョイントを設けて異なる配管をそれぞれを接続しても良い。第1の配管16と第2の配管17は、ガラス製又は金属製である。また、吸収筒14、15としては、取扱い性の点で、市販のガラス製のガス洗浄瓶を使用しても良いが、実際のプラントへの適用を考慮すると、オフガス吸収塔等の化学プラントで一般的に使用されている吸収塔が好適である。図示の例では、吸収筒を2個配置し、仮に、気体に含まれる微量のRuOが第1の吸収筒14で吸収されなった場合に、引き続き第2の吸収筒へ導かれてRuOの吸収が確実に行えるようにしている。本発明においては、配置する吸収筒の数は、2個に限定されないで、1個又は3個以上であっても良い。ルテニウムの分離回収は、図1又は図2に示す本発明の乾式分離回収装置を用いて150℃以上の加熱処理によって、そのほとんどを分離回収することが可能であるため、湿式回収装置で使用する吸収筒の数は、1個又は2個で十分である。また、乾式分離回収装置に備える排出用配管5、第1の配管15及び第2の配管16、17には、リボンヒーター等を巻いて加温することによって、RuOがそれぞれの配管内部で凝縮しないようにしても良い。さらに、気体排出用配管5から排出される気体の流れをスムーズに行えるように、ポンプ(P)18を使用して、前記の気体を吸収筒16及び17へ導くように吸引することもできる。

【0034】
上記のRuO吸収液としては、例えば、水、水酸化ナトリウム水溶液、四塩化炭素、アルコール水溶液、アルコールと塩酸の混合溶液、塩酸と過酸化水素の混合溶液及びギ酸等のカルボン酸水溶液の1種又は2種以上の混合溶液を使用できる。これらのRuO吸収液は、すでにRuOの吸収能の実績があるため、吸収筒への収納量や混合溶液の配合比率については当業者の技術範囲内で調整することが可能である。また、図4において、第1の吸収筒14と第2の吸収筒15には、両者とも同じ種類のRuO吸収液を収納しても良いし、それぞれ異なる種類のRuO吸収液を収納しても良い。

【0035】
図4に示す分離回収装置を用いて実施するルテニウムの分離回収方法は、ルテニウムの分離回収を確実に行うことができるため、放射性ルテニウムを外部へ一切漏洩させないという効果が得られる。さらに、ルテニウムの分離回収は、乾式分離回収装置を用いて150℃以上の加熱処理によってほぼ達成できていることから、RuO吸収液の接触による湿式方法を採用したとしても、RuO吸収液の長期間使用が可能となる。これは、溶液からの放射性ルテニウムの分離回収工程の回数及び処理時間の大幅な削減に貢献する。

【0036】
次に、図1、図3又は図4に示すRuO乾式分離回収装置の反応塔4の下部に、加熱処理によって生成するRuOの固体微粒子を補足するためのフィルターを備える装置例を説明する。図5は、図4に示すRuO乾式分離回収装置内にフィルターを備える分離回収装置の概略断面図である。図5において、フィルター19は金属フランジを有するフィルターホルダーの間に挿入されており、当該フィルターホルダーは反応塔4の底部に配置されている。図5では、図4に示す装置にフィルターを備える例を示しているが、本発明においては図1又は図3に示すRuO乾式分離回収装置内にもフィルターを備えることができる。ここで、フィルター19は、加熱処理によって生成するRuOの固体微粒子のすべてが反応炉4の内壁に付着しないで、下方へ移動して装置の底部に堆積する場合に、下方へ落下するRuOの固体微粒子を完全に補足するために使用する。それによって、排出用配管5から装置外部へ流出するのを防止することができる。

【0037】
上記のフィルター19としては、一般的にプラントで使用されているHEPAフィルターや、さらにいえば、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリエチレン又はポリプロピレン等の樹脂製又はステンレス等の金属製のものが使用でき、フィルターの孔径は0.1~3μmの範囲である。フィルターの孔径は1種類に限定されないで、2種類以上を積層して使用しても良い。フィルター19がRuOの固体微粒子の補足によって目詰まりが顕著になる場合は、装置から外して、新しいものと交換する。使用後のフィルターは、そのまま廃棄することは問題があるため、外部から隔離された場所に保管又は保存する。

【0038】
本発明において、フィルター19を備えるRuO乾式分離回収装置は、RuOの固体微粒子の補足には効果があるものの、フィルターを設けたことによる背圧の影響があるため、RuOを含む気体の圧力又は流量が小さい等の特殊な場合には、ルテニウムの分離回収率が期待した程度まで上がらないことがある。そのため、放射性廃棄物の処理方法と状況に応じて、フィルターを備えるRuO乾式分離回収装置の適用を図ることが好ましい。

【0039】
次に、具体的な実施形態によって本発明を説明するが、本発明は、これらの実施形態に限定されない。

【0040】
〈第1の実施形態〉
RuOの分解反応の温度依存性を調べるために、図5に示すルテニウムの乾式分離回収装置を用いて反応塔4の加熱部の雰囲気温度を室温、100℃、150℃、200℃、210℃に設定して、それぞれの温度におけるルテニウム(Ru)の回収率を求めた。本実施形態では、ルテニウムの乾式分離回収装置の後段に湿式回収装置を配置し、吸収筒14、15においてそれぞれのRu濃度を測定することにより、初期のRuO濃度及び吸収筒14、15に収納されるRuO吸収液中のRu濃度から、乾式分離回収装置を用いたときのRuの回収率を求めることができる。

【0041】
本実施形態においては、放射性廃液を処理して揮発性RuOを発生させる代わりに、模擬的にRuO発生装置を作製してRuOを発生させた。前記のRuO発生装置の容器内に、硝酸ルテニウム溶液(0.03mol/L)と硝酸セリウムアンモニウム溶液(0.15mol/L)を0.3mL/minの速度で供給し、RuOを連続的に発生させる。発生したRuOは、図5の導入用配管1から反応塔4の内部に供給する。このとき、送風ポンプ10を用いて流入した空気を加熱器11の経由によって加熱し、この加熱した空気を、RuOを含む気体と同時に直接反応塔上部へ供給する。本実施形態で使用した反応答4は円筒の石英管であり、内径が52mmである。また、反応答4の加熱部2及び自然冷却部3の長さはそれぞれ300mm及び150mmである。

【0042】
前記のRuO発生装置によって発生させたRuOを含む気体は、反応塔4の加熱部2の内部の温度が設定の温度になるまでに加熱され一定温度に維持した後、加熱器11によって加熱した空気とともに反応塔4の内部に、それぞれ0.5L/min 及び1.5L/minの流量で供給する。反応塔の底部には粒子を捕集するためのバックアップフィルター19(Millipore type FH(孔径)0.5μm、PTFE製)を配した。さらにその後段に、湿式回収装置12を配置し、RuO吸収液として6M塩酸-1%エタノール溶液を300mL投入したガス吸収ビンを2本直列につなぎ、乾式回収装置から漏洩してきたRuOを捕集した。ここで、前記のガス吸収ビンの2本は、それぞれ吸収塔14、15として機能する。

【0043】
前記のRuO発生装置からのRuOの発生量は、試験終了後直ちに、発生装置内残存液中のRuの濃度を測定して、投入量との差から算出した。なお、前記のRuO発生装置内に残存した溶液については、試験終了後ただちに、吸収液と同じ組成の塩酸溶液に採取し、Ruを還元し揮発しないように固定化した。

【0044】
実験を行った時の反応塔4の加熱部2の温度は、実測の結果、それぞれ22℃、94℃、151℃、200℃、及び210℃であり、各温度に保持した後にRuO発生装置から発生させたRuOの混合ガスを0.5 L/min、加熱器11によって加熱した空気を1.5 L/minの速度で約30分間流した。反応塔4を通過したガスについては、上記で述べたようガス吸収ビンからなる吸収塔14、15に導き、ここでRuを捕集した。このRu量を分析することにより、初期のRuO濃度から、吸収筒14、15に収納されるRuO吸収液中のRuO濃度を差し引くことによって、温度を変化させたときの乾式分離回収装置におけるRu回収率が求まる。具体的に、Ru回収率は次のようなステップに従って求める。

【0045】
RuOの発生量(Cvap)は、RuO発生装置の容器に供給したRuの量(Cin)から、残った溶液中のRuの濃度から求めたRuの量(Cre) (いずれも単位はmg)を差し引く事から求まる。また、乾式回収装置から漏洩したRuOの量は、後段のRu吸収ビンに捕集されたRu量(Cout)から求まる。これらの値から、乾式回収装置におけるRu回収率(RE)は下記の式(1)及び式(2)で求めることができる。なお、図5において、第2の吸収筒15中のRuの濃度は検出限界値以下で、第1の吸収筒14で十分にRuを捕集できることを確認している。
JP2014048084A_000003t.gif

【0046】
また、RuO→RuOの反応によって生成するRuO固体粒子については、反応塔の後段に配置したバックアップフィルターの重量変化が0.1mg程度であり、今回の試験の平均の発生量である12mgと比較しても1%以下であった。このように、バックアップフィルターによって補足されるRuO固体粒子は、非常に少なく、ほとんどが反応塔の内壁に付着していることが確認できる。

【0047】
得られた回収率の値を図6に示す。図6から、温度が高いほどRuの回収率(RE )は高くなることが明らかとなった。また、温度が150℃以上では、150℃未満と比べてRuの回収率が高くなる傾向が見られる。回収率は、200℃において89.9%であり、210℃では98.6%である。図6から分かるように、加熱温度が210℃以上ではRuの回収率が飽和する傾向にあり、250℃の加熱温度でほぼ100%のRuの回収率が得られる。このように、本発明によるルテニウムの分離回収方法は、湿式回収法を使用しないでも、200℃以上の加熱処理することによってルテニウムをほぼ90%以上で分離回収でき、さらに250℃まで加熱処理することによって確実な分離回収が可能となる。一方、加熱温度が150℃以上200℃未満では、Ruの回収率は高まるものの、乾式分離回収方法だけではRuをすべて回収することが難しくなる。しかし、湿式回収法と併用することによって、ルテニウムの回収率を高めることができ、ルテニウムの分離回収が完璧に近い形で進められる。

【0048】
〈第2の実施形態〉
次に、図2に示すRuOの捕集メカニズムを明確にするために、本実施形態において、RuO→RuOの反応速度定数及びRuOの吸着反応の加熱処理温度に影響について検討する。

【0049】
図7は、図6に示す結果から各温度におけるRuOのRuOへの反応速度定数(k)を求めて、温度の逆数に対してアレニウスプロットを行った図である。反応速度定数(k)は次のようにして求まる。

【0050】
RuOのRuOへの反応は、下記の式(3)
JP2014048084A_000004t.gifで示されるように一次反応と考えられることから、反応速度定数をkとして、t分後のRuOの濃度(Ct)は初期濃度(Co)に対して、
JP2014048084A_000005t.gifである。ここで、反応塔内の加熱部の通過時間を反応時間として、反応速度定数kを求める。

【0051】
図7には、下記の式(5)で表される文献値を合わせて示しているが、文献値とは高温度領域では、ほぼ値が等しくなるものの、低温度領域では大きく値が外れることが分かる。
JP2014048084A_000006t.gif

【0052】
低温度領域において実験結果と文献値とが大きく異なる理由は、上記の式(3)による反応の他にも、Ruの回収率を高めるような別の反応が起きているものと考えられる。以下に示すように、本発明で実施するルテニウムの分離回収においてRuOの捕集メカニズムは、(A)RuOの気相内での反応による捕集、及び(B)RuOの反応塔への吸着による捕集、の2つの要因で説明できることが分かった。

【0053】
上記の(A)及び(B)の2つの要因に基づいて、最終的なRuの全捕集率をそれぞれ吸着及び還元反応の捕集効率の積として計算した結果を図8に示す。図8は、本発明の乾式分離回収装置から実験で求めたルテニウム漏洩率と吸着及び反応速度から計算したRuO残留率との対比を示す図である。図8に示すルテニウム漏洩率は、ルテニウムを分離回収できなかったルテニウムの割合を示すものであり、[1-(Ruの捕集率)]で表される物理量である。すなわち、漏洩率が小さくなるほど、Ruの捕集率は高いことを意味する。

【0054】
図8において、RuO→RuO反応(計算式)は、上記の(5)式を用いて、各温度のRuOの平均流速(m/s)及び反応時間(s)から算出したものである。この計算値は、反応塔内壁面に吸着することが無いとした場合に未反応のRuO気体が残存する割合となる。

【0055】
図8において、吸着(計算式)は、次のようにして算出することができる。本実施形態で用いる反応塔は円筒の石英管の中をガスが流れる構造であるので、円筒管内の壁へのガスの吸着については、一般的には大気中のガス状物質であるアンモニア、二酸化硫黄や硝酸の濃度の回収に使用されている拡散デニューダ法に従うものと考えた。その方法において、入り口の対象ガスの濃度(C)と出口での濃度(C)については下記の式(6)及び 式(7)が用いられる。

【0056】
JP2014048084A_000007t.gif

【0057】
ここでΔについては温度依存性のあるパラメータ(粘度、密度、動粘度、拡散係数)が含まれているので、それぞれの温度に対する補正を行う。詳細は省略するが、最終的に、粘度(kg/m・s)、密度(kg/m)、動粘度(m/s)、平均流速(m/s)、Re(レイノルズ数)、拡散係数(m/s)から吸着率C/C(計算値)を算出する。図8に示す吸着(計算式)は、このようにして求めた計算値を温度の逆数に対してプロットしたものである。

【0058】
図8から明らかなように、吸着及び還元反応の捕集効率の積として計算した総合的なRuOの全漏洩率は、ほぼ実験値と一致することが分かった。この結果から、RuOの捕集については、低い温度の時は吸着が主であるが、温度を上げることにより、その捕集のメカニズムは吸着したものも含み、RuOからRuOへの反応が主となってきている。したがって、150℃以上においては両者の相乗効果が得られ、捕集効率は急激に向上することが分かった。特に、両者の相乗効果は200℃以上で大きくなり、図6に示すように、Ruの回収率を90%以上、さらには100%近くまで高めることができる。このことは、図5に示す乾式分離回収装置において、反応塔4の上段、すなわち加熱部2では、Ruが塔の管内部に均一に蒸着したように光沢を有して付着しており、下段に相当する自然冷却部3には、塔の管内を流体(粉体)が流れたような跡があり、比較的大きな粒子を確認する事ができ、固体状のRuOが観測されるという実験結果からも容易に理解される。

【0059】
〈第3の実施形態〉
前記の第1及び第2の実施形態で使用した装置は、図5に示すように、湿式回収装置12及びバックアップフィルター19を備える。ここで、湿式回収装置12は、本発明の効果を明確にする目的から、乾式分離回収装置におけるRuの回収率を正確に求める目的で厳密な実験を行うために用いたものである。本発明は、加熱温度を200℃及び210℃以上とすることによって、ルテニウムの回収率はそれぞれほぼ90%及び98%%以上に高めることができるため、湿式回収装置12を具備しない乾式の分離回収装置が本発明を実施するための装置の基本構成とすることができる。また、第1の実施形態で述べたように、RuO→RuOの反応によって生成するRuO固体粒子については、反応塔の後段に配置したバックアップフィルターの重量変化が0.1mg程度であり、今回の試験の平均の発生量である12mgと比較しても1%以下である。このように、バックアップフィルターによって補足されるRuO固体粒子は、ほとんど無視できるほどの微量である。そこで、湿式回収装置12及びバックアップフィルター19を具備しない乾式分離回収装置、すなわち、図1及び図2に示す装置を用いる場合についても、ルテニウムの回収率を確保できるか否かについて確認実験を行った。

【0060】
その結果、加熱温度を200℃以上から250℃に設定するとともに、RuOの流量又はRuOとともに供給する加熱した空気の流量を調整することによって、図6に示す結果と同じような回収率を得られることが確認できた。したがって、本発明は、図1及び図2に示す乾式分離回収装置だけからなる構成でおいても、本発明の効果を十分に奏することができ、ルテニウムの分離回収を行うための簡便で効率的な方法を構築する上で有用である。

【0061】
以上のように、本発明によれば、ルテニウムが含まれる放射性廃液等の放射性廃棄物を処理するときに発生する揮発性ルテニウム(RuO)を150℃以上、好ましくは200~250℃の温度範囲で加熱処理することによって、RuOからRuOへの還元反応によって生成されるRuOを固体状態で分離回収することができる。それによって、RuO又はRuOを溶液に吸収させる必要が無くなり、溶液中から放射性ルテニウムを分離回収するための湿式処理が省略できるために、簡便にルテニウムを分離回収することができる。また、RuOを含む雰囲気を150℃以上で加熱した後の気体を、さらにRuO吸収液に接触させる湿式回収方法を行うことによって、未反応のRuOの分離回収を進めることができ、放射性ルテニウムを外部へ一切漏洩させないという大きな効果が得られる。さらに、本発明による方法は、従来と比べて簡便で確実に放射性ルテニウムを分離回収できるため、特に、放射性廃液の蒸発濃縮工程や高レベル放射性廃液からのルテニウムの電解除去プロセス又は高レベル放射性廃液のガラス固化プロセスに適用するときに、従来の電解酸化法等で用いる電解除去装置又はガラス固化のために用いるガラス溶融炉装置と、本発明で使用する乾式分離回収装置とを配管を通して接続するだけで対応できるため、より簡便な処理法を構築するのに好都合である。本発明は、前記の電解除去プロセス及びガラス固化プロセス以外にも、放射性廃棄物の焼却や溶融により発生するRuOからのルテニウムの分離回収方法として適用が可能であり、その有用性は極めて高い。
【符号の説明】
【0062】
1・・・導入用配管、2・・・加熱部、3・・・自然冷却部、4・・・反応塔、5・・・気体排出用配管、6・・・加熱手段、7・・・セパラブル用クランプ、8・・・付加的なセパラブル用クランプ、9・・・加熱した空気、10・・・送風ポンプ、11・・・加熱器、12・・・湿式の回収槽、13・・・恒温槽、14・・・第1の吸収筒、15・・・第2の吸収筒、16・・・第1の配管、17・・・第2の配管、18・・・ポンプ、19・・・フィルター。
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
5
【図7】
6
【図8】
7