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明細書 :医療装置

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 公開特許公報(A)
公開番号 特開2015-159840 (P2015-159840A)
公開日 平成27年9月7日(2015.9.7)
発明の名称または考案の名称 医療装置
国際特許分類 A61B  17/28        (2006.01)
FI A61B 17/28
請求項の数または発明の数 7
出願形態 OL
全頁数 12
出願番号 特願2014-034903 (P2014-034903)
出願日 平成26年2月26日(2014.2.26)
新規性喪失の例外の表示 特許法第30条第2項適用申請有り 発行者名 一般社団法人 日本機械学会 刊行物名 2013年度 年次大会 講演論文集DVD-ROM 発行日 平成25年9月7日
発明者または考案者 【氏名】桑名 健太
【氏名】中井 亮仁
【氏名】土肥 健純
【氏名】正宗 賢
出願人 【識別番号】800000068
【氏名又は名称】学校法人東京電機大学
個別代理人の代理人 【識別番号】100101269、【弁理士】、【氏名又は名称】飯塚 道夫
審査請求 未請求
テーマコード 4C160
Fターム 4C160GG24
4C160MM32
4C160NN01
要約 【課題】対象物に加わる曲げ力やねじり力を把握して、これら力による対象物への不必要な負担を低減し得る医療装置を提供する。
【解決手段】支持軸14により一対の把持片12が回動可能に支持されてその先端部12Aが開閉し得るように形成される。一対の把持片12の先端部12Aに、各先端部12Aに加わる圧縮力及び剪断力を個別に検出する3軸力センサ16が相互に同軸上で対向して配置される。一対の3軸力センサ16は、送り出された力の信号を処理する信号処理部30にそれぞれ接続され、この信号処理部30は処理された信号を表示する表示部32に接続される。
【選択図】図1
特許請求の範囲 【請求項1】
先端部が開閉し得るように形成された一対の把持部材と、
一対の前記把持部材の先端部に相互に対向してそれぞれ設けられ、かつ、各前記先端部に加わる応力を個別に検出して信号を生成する力センサと、
各前記力センサで生成された信号を基に一対の前記把持部材の先端部に加わる応力を演算する信号処理部と、
を備えた医療装置。
【請求項2】
一対の前記把持部材にそれぞれ設けられた前記力センサ間の開閉量を検出して信号を生成する開閉量センサを有し、該開閉量センサで生成された信号が前記信号処理部に入力される請求項1に記載の医療装置。
【請求項3】
前記信号処理部が、前記開閉量センサで生成された信号及び前記力センサで生成された信号を基に、一対の前記把持部材に挟まれる対象物に作用するモーメントおよび対象物の物理特性を演算する請求項2に記載の医療装置。
【請求項4】
前記信号処理部において演算されるモーメントは、曲げモーメントおよびねじりモーメントとされ、前記信号処理部において演算される対象物の物理特性は、一対の前記把持部材に挟まれた対象物の硬さ及び厚さとされる請求項3に記載の医療装置。
【請求項5】
前記力センサが、 一対の前記把持部材の先端部に相互に対向して複数対設けられている請求項1から請求項4のいずれかに記載の医療装置。
【請求項6】
各前記力センサが、力の検出ポイントを複数ずつ有する請求項1から請求項5のいずれかに記載の医療装置。
【請求項7】
前記力センサが、相互に直交する3軸方向の力を検出し得る3軸力センサとされる請求項1から請求項6のいずれかに記載の医療装置。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、対象物に加わる曲げ力やねじり力を把握して対象物への不必要な負担を低減し得る医療装置に関し、特に内視鏡下手術において臓器の硬さ情報などの触覚情報を医師にフィードバックする医療装置に好適なものする。
【背景技術】
【0002】
病巣を除去等する外科手術として、従来から開腹手術や開胸手術が行われている。これらの手術では、腹壁又は胸壁を10数センチにわたって切開し、医師が患部を直に観察しながら手で触れて手術を行っていた。しかし、この開腹手術及び開胸手術は、切開領域が広いがゆえに痛みも大きく傷跡が残りやすく身体への負担も大きいだけでなく、術後の回復に長期間要するといった問題があった。
【0003】
これに対し、比較的身体への負担が小さい手術の一つとして内視鏡下手術がある。内視鏡下手術とは、腹部や胸部に3~15ミリ程度の小さな穴を数か所開けて、そこから内視鏡や把持鉗子等の細長い専用の医療器具を挿入し、モニタに映し出される体内の様子を観察しながら行う手術である。この内視鏡下手術は、開腹手術や開胸手術に比べ切開領域が狭く、それゆえに術後の疼痛も少なく、美容的にも良好で、術後の回復が早いため、近年広く普及している。
【0004】
しかしながら、内視鏡下手術では、開腹手術において触診により得られた患部の力覚、触覚情報を医師が得ることができない。そのため、しこりのように通常より硬くなっているが見た目からは識別が困難な病巣を認識できないという問題点がある。また、操作部(マスタ)と作業部(スレーブ)からなるマニピュレータを利用して手術を行う場合、作業部の先端に取り付けられた把持鉗子が臓器等の対象物を強くつかみすぎたりするなど、必要以上の力を対象物に加えてしまうことがある。特に、操作部と作業部が一体型でない遠隔操作用のマニピュレータでは、対象物の感触が手元に伝わりにくいため、熟練の外科医でも対象物に加える力を調節することは難しかった。したがって、内視鏡下手術での患者の負担軽減のためには、医師へ力覚情報や触覚情報の提示することが必要不可欠である。
【0005】
そこで、例えば下記特許文献1、2には、対象物を把持する先端部に力学センサを取り付け、この力学センサによる検出情報を術者に提示する機能を有する医療器具が記載されている。このような医療器具は、開閉し得るように形成された一対の把持片のうち一方に一つの力覚センサを一体的に設けた構成となっており、対象物を先端部に挟み込むことで対象物に与える把持力を検出し、測定するものである。
【先行技術文献】
【0006】

【特許文献1】特開平9-98978号公報
【特許文献2】特開平8-117228号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、内視鏡下手術において対象物を把持した状態で曲げ、ねじり等の動作を行うことを考えた場合、これら特許文献1~2においても、把持鉗子で把持した際に対象物に加わる曲げ力やねじり力が分からないので、これら力による対象物への不必要な負担が生じるおそれを有していた。さらには、これら特許文献1~2においては、把持鉗子で対象物を把持した際に、把持鉗子の開閉量との関係で把持力等を検出できないので、対象物の硬さを把握できないだけでなく、把持鉗子に生じるモーメントを把握できないので、上記と同様に対象物への不必要な負担が生じるおそれを有していた。
【0008】
本発明は上記背景に鑑みてなされたもので、対象物に加わる曲げ力やねじり力を把握して、これら力による対象物への不必要な負担を低減し得る医療装置を提供することを第1の目的とする。また、対象物の厚みや硬さを把握できると共に、一対の把持部材に生じるモーメントを把握することで、対象物への不必要な負担を低減し得る医療装置を提供することを第2の目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決した請求項1記載の発明は、先端部が開閉し得るように形成された一対の把持部材と、
一対の前記把持部材の先端部に相互に対向してそれぞれ設けられ、かつ、各前記先端部に加わる応力を個別に検出して信号を生成する力センサと、
各前記力センサで生成された信号を基に一対の前記把持部材の先端部に加わる応力を演算する信号処理部と、
を備えた医療装置である。
【0010】
請求項1に係る医療装置は、開閉し得るように形成された一対の把持部材の先端部に、相互に対向してそれぞれ力センサを設けた構成とされている。この力センサは、各先端部に加わる応力を個別に検出して信号を生成し、この信号を基に信号処理部が一対の把持部材の先端部に加わる応力を演算する。
【0011】
例えば、腹腔鏡下手術の際にも臓器等の対象物を一対の把持部材で把持しつつ、術者が医療装置を動かしながら切除等をすることが考えられる。この際、各把持部材の先端部に加わる応力を演算することで、対象物に加わる圧縮力や引っ張り力が分かり、又、応力の内の剪断力の差を演算することで、対象物に加わる曲げ力やねじり力が分かるので、これら力による対象物への不必要な負担が低減される。
【0012】
請求項2に係る医療装置によれば、一対の把持部材にそれぞれ設けられた力センサ間の開閉量を開閉量センサが検出して、信号を生成して信号処理部に入力される。これに伴い、開閉量センサで生成された信号及び力センサで生成された信号を基に、信号処理部でのさまざまな演算が可能となる。
【0013】
請求項3に係る医療装置によれば、開閉量センサで生成された信号及び力センサで生成された信号を基に、一対の把持部材に挟まれる対象物に生じるモーメントおよび対象物の物理特性を信号処理部が演算する。このため、信号処理部が、単に一対の把持部材に生じる圧縮力、引っ張り力及び剪断力の和や差を演算して把握できるだけでなく、開閉量センサで検出された力センサ間の開閉量との関係で、一対の把持部材に生じるモーメントを把握できることになり、対象物への不必要な負担が一層低減される。
【0014】
請求項4に係る医療装置によれば、信号処理部において演算されるモーメントが、曲げモーメントおよびねじりモーメントとされ、また、対象物の物理特性が、一対の把持部材に挟まれた対象物の硬さ及び厚さとされることから、これらの特性を確実に信号処理部にて把握可能となる。
【0015】
請求項5に係る医療装置によれば、力センサが、一対の把持部材の先端部に相互に対向して複数対設けられることで、一対の把持部材の各先端部に加わる圧縮力の分布を検出できるようになる。
【0016】
請求項6に係る医療装置によれば、力センサが、力の検出ポイントを複数有することで、一対の把持部材の各先端部に加わる圧縮力の分布を検出できるようになる。
【0017】
請求項7に係る医療装置によれば、力センサが、相互に直交する3軸方向の力を検出し得る3軸力センサとされることで、単に一対の把持部材の各先端部に加わる1方向の剪断力や圧縮力を検出できるだけでなく、2方向の剪断力及び圧縮力を検出できるようになる。これに伴い、圧縮力と請求項2の開閉量センサが検出した開閉量との関係で、対象物の硬さをより精密に把握できるようにもなった。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、対象物に加わる曲げ力やねじり力を把握して、これら力による対象物への不必要な負担を低減し得る医療装置が提供されるという優れた効果を奏する。さらに、本発明によれば、対象物の厚みや硬さを把握できると共に、一対の把持部材に生じるモーメントを把握することで、対象物への不必要な負担を低減し得る医療装置が提供されるという優れた効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る医療装置の構成図(但し、ブラケットは省略する)である。
【図2】本発明の第1の実施形態に係る医療装置の一対の把持片を示す斜視図である。
【図3】本発明の第1の実施形態に係る医療装置の一対の把持片を説明するための側面図(但し、ブラケットは省略する)である。
【図4】本発明の第1の実施形態に係る医療装置の一対の把持片が対象物を把持した状態を示す側面図(但し、ブラケットは省略する)である。
【図5】本発明の第1の実施形態に係る医療装置の一対の把持片が対象物を把持しつつ曲げ動作をした状態を示す側面図(但し、ブラケットは省略する)である。
【図6】本発明の第1の実施形態に係る医療装置の一対の把持片が対象物を把持しつつねじり動作をした状態を示す側面図(但し、ブラケットは省略する)である。
【図7】本発明の第2の実施形態に係る医療装置の一対の把持片を説明するための側面図(但し、ブラケットは省略する)である。
【図8】本発明の第3の実施形態に係る医療装置の3軸力センサを説明するための斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明に係る医療装置の第1の実施形態を、図面を参照しつつ詳細に説明する。
本実施形態の医療装置10は、図1及び図2に示すように支持軸14により基端側寄りを回動可能に支持されて先端部12Aが開閉し得るように形成された一対の把持部材である把持片12が、主要部とされている。これら一対の把持片12の先端部12Aには、各先端部12Aに加わる圧縮力及び剪断力等の応力を個別に検出して信号を生成する3軸力センサ16が相互に同軸上で対向してそれぞれ配置されている。このため、把持片12の先端部12A間に対象物Tが挟まれた際に、一対の3軸力センサ16の表面とされて力を検出し得る力検出面16A同士で対象物Tを把持することになる。

【0021】
そして、これら一対の把持片12の先端部12Aは、先端側がテーパー状にそれぞれ広がると共に内部に三角形の貫通穴18をそれぞれ有する構造とされていて、この貫通穴18を介して3軸力センサ16の配線19が外側に延びている。ここで、本実施形態の医療装置10は、腹腔鏡下手術において用いられる把持鉗子であるので、対象物Tとしては例えば人体の臓器の一部等が考えられる。

【0022】
この3軸力センサ16としては、例えばピエゾ抵抗素子を用いた3軸触覚センサ(タッチエンス株式会社製)等の力センサが考えられる。つまり、この3軸力センサ16は、半導体製造技術を応用して製作されたMEMS(Micro Electro Mechanical Systems)センサの一種であり、例えば縦横がそれぞれ7mmであると共に高さが2mmのサイズの直方体とされ、この3軸力センサ16の7mm×7mmの正方形の力検出面16A上において、相互に直交する3軸方向の力である圧縮力および2方向の剪断力を同時に検出可能なものである。

【0023】
この一方、これら一対の把持片12の支持軸14に対して図1の下側に位置する基端部12Bには、把持片12の長手方向に対して相互に斜めに延びる長孔22がそれぞれ形成されている。図1に示すようにシリンダ24から伸縮可能に延びるピストン軸26の先端部が、この基端部12Bに隣り合って位置している。そして、このピストン軸26の先端部から突出する係合ピン26Aが、一対の把持片12の各長孔22内に連続的に係り合っている。さらに、支持軸14は、図2に示すようにシリンダ24の先端側から延びるブラケット20に取り付けられているものの、ピストン軸26は手動または図示しない駆動源によりシリンダ24に対して伸縮動されることになる。

【0024】
このため、ピストン軸26がシリンダ24に対して伸縮した場合、係合ピン26Aが長孔22内を滑って移動するのに伴い、一対の把持片12が支持軸14廻りにそれぞれ回動して一対の把持片12の先端部12Aが開閉することになる。また、シリンダ24には、一対の把持片12の開閉に使用されるピストン軸26の移動量を計測するためのポテンショメータ28が設置されている。但し、支持軸14自体の回転量をポテンショメータ28により計測することとしても良い。つまり、このポテンショメータ28によるピストン軸26の変位量の測定に伴い一対の把持片12の開口角度を把握することで、これら一対の把持片12の先端部12Aにそれぞれ設けられた3軸力センサ16間の距離である開閉量Kを実施的に検出可能となる。この結果として、本実施形態ではこのポテンショメータ28が開閉量センサとされる。

【0025】
さらに、これら一対の3軸力センサ16及びポテンショメータ28は、これらから送り出された力の信号や開閉量Kの信号を処理するCPU等の図1に示す信号処理部30にそれぞれ接続され、この信号処理部30は処理された信号を表示するモニタ等の表示部32に接続されている。従って、各3軸力センサ16で生成された信号を基に、この信号処理部30が一対の把持片12の先端部12Aに加わる応力を演算することで、対象物Tに加わる圧縮力や引っ張り力の大さが分かる。また、信号処理部30は、応力の内の特に一対の把持片12に生じる2方向それぞれの剪断力の和や差を演算するだけでなく、ポテンショメータ28で生成された信号及び3軸力センサ16で生成された信号を基に、一対の把持片12に生じるモーメントを演算することにもなる。

【0026】
ここで、図2から図6に示すように、基準となる座標軸としては、医療装置10のシリンダ24やピストン軸26で構成される本体部分の周りのXYZ軸、上側の3軸力センサ16の周りのXYZ軸および、下側の3軸力センサ16の周りのXYZ軸がそれぞれ考えられる。つまり、各把持片12の先端部12Aに取り付けられた2つの3軸力センサ16は、把持動作に伴って医療装置10の本体部分に対して相互間の位置及び角度が変わってしまうので、図2及び図3等に示すように各3軸力センサ16の座標軸と医療装置10の本体部分の座標軸をそれぞれ考える必要が生じる。

【0027】
尚、各3軸力センサ16から出力される信号は、各3軸力センサ16の座標軸で検出されるものの、個別の各3軸力センサ16から出力される信号を元にして、信号処理部30にて、曲げ力、ねじり力、曲げモーメント及びねじりモーメント等を医療装置10の本体部分の座標軸に合うように、演算処理することになる。

【0028】
例えば、各把持片12の先端部12Aに取り付けた3軸力センサ16の座標軸を図2から図6に示すように、力検出面16Aに対して垂直な方向をZ軸方向(圧縮力方向)、このZ軸方向とピストン軸26の軸方向に対して垂直な方向をX軸方向、これらX軸方向及びZ軸方向に対して垂直な方向をY軸方向とそれぞれする。また、一対の3軸力センサ16間の開閉量Kは、把持片12の開閉に使用されるピストン軸26の移動量をポテンショメータ28により計測し、一対の把持片12の幾何学的な構造を基に信号処理部30で演算する。

【0029】
以上より、本実施形態の医療装置10は、一対の3軸力センサ16及び信号処理部30を有することで圧縮力や剪断力を計測できるが、これだけでなくポテンショメータ28を有することで、対象物Tの物理特性である硬さや厚さ、曲げモーメント及びねじりモーメントを下記のように演算することができる。

【0030】
対象物Tの硬さは、図4に示すように一対の把持片12で対象物Tを把持して対象物Tに圧縮力を加えた際に、加えた圧縮力をその際の変位量(開閉量Kの差分)で除することにより、演算する。対象物Tを把持して図5に示すように曲げた際に生じる曲げモーメントは、2つの3軸力センサ16のY軸方向の剪断力成分間の差分と開閉量Kの積により演算する。同じく対象物Tを把持して図6に示すようにねじった際に生じるねじりモーメントは、2つの3軸力センサ16のX軸方向の剪断力成分間の差分と開閉量Kの積により演算する。

【0031】
例えば、図5に示すように対象物Tを曲げつつY軸方向に引っ張った場合等には、上側の3軸力センサ16に生じる剪断力τYUの値と下側の3軸力センサ16に生じる剪断力τYD の値が相互に異なることから、これら剪断力の和や差を求めることができる。そして、この際に生じる曲げモーメントは、開閉量Kとの関係より求めることができる。

【0032】
また、図6に示すように対象物TをY軸廻りにねじりつつX軸方向に引っ張った場合等には、上側の3軸力センサ16に生じる剪断力τXUの値と下側の3軸力センサ16に生じる剪断力τXD の値が相互に異なることから、これら剪断力の和や差を求めることができる。そして、この際に生じるねじりモーメントは、開閉量Kとの関係より求めることができる。

【0033】
つまり、各3軸力センサ16に生じる応力の内の剪断力の和を演算することで、対象物Tに加わる全体の引っ張り力が分かり、剪断力の差を演算することで、対象物Tに加わる曲げ力やねじり力が分かる。また、剪断力の差と開閉量Kの積により、曲げモーメントやねじりモーメントを演算することもできる。

【0034】
一方、対象物Tに圧縮力を加えた場合、図3に示す2つの3軸力センサ16の両方に圧縮力が生じ始めた際の開閉量Kに基づき、対象物Tの厚さを求めることができる。また、このとき上側の3軸力センサ16に生じる圧縮力をFZUとし、下側の3軸力センサ16に生じる圧縮力をFZDとすると、そこからさらに、図4に示すように3軸力センサ16の両方に圧縮力を加えた際の各圧縮力FZU、FZDの変化量ΔFZおよび開閉量Kの変化量ΔKに基づき、対象物Tの硬さを求めることができる。

【0035】
上記に伴い具体的には、一対の3軸力センサ16及びポテンショメータ28から送り出された力のデータや移動量のデータの信号が信号処理部30に入力される。ポテンショメータ28の移動量の信号に基づき幾何学的な構造から開閉量Kを信号処理部30が演算し、一対の3軸力センサ16間のY軸方向成分の剪断力の差分と開閉量Kの積により、曲げモーメントを演算し、一対の3軸力センサ16間のX軸方向成分の剪断力の差分と開閉量Kの積により、ねじりモーメントを演算する。また、2つの3軸力センサ16の両方に圧縮力が生じ始めた開閉量Kにより対象物Tの厚さを求め、この初期の開閉量Kに対する現状の開閉量Kの差分で、対象物Tに加えた圧縮力を除することにより、対象物Tの硬さを演算する。
以上より、本実施例の医療装置10によれば、曲げモーメント、ねじりモーメント、対象物Tの厚さや硬さの計測が可能となり、これに伴って信号処理部30で処理された信号を表示部32が表示することになる。

【0036】
次に、本実施形態に係る医療装置10の作用を以下に説明する。
本実施形態に係る医療装置10は、開閉し得るように形成された一対の把持片12の先端部12Aに、相互に直交する3軸方向の力を検出し得る3軸力センサ16を相互に対向してそれぞれ設けた構成とされる。この3軸力センサ16は、各先端部12Aに加わる圧縮力と2方向の剪断力を個別に検出して信号を生成する。そして、この信号を基に信号処理部30が一対の把持片12に生じる剪断力の和や差を演算する。また、3軸力センサ16間の開閉量Kをポテンショメータ28が検出して信号を生成し、ポテンショメータ28で生成された信号と3軸力センサ16で生成された信号を基に、信号処理部30が一対の把持片12に生じる曲げモーメントとねじりモーメントを演算する。

【0037】
例えば、腹腔鏡下手術の際にも臓器等の対象物Tを一対の把持片12で把持しつつ、術者が医療装置10を動かしながら切除等をすることが考えられるが、剪断力の和を演算することで、対象物Tに加わる引っ張り力が分かり、又、剪断力の差を演算することで、対象物Tに加わる曲げ力やねじり力が分かる。さらに、ポテンショメータ28で検出された3軸力センサ16間の開閉量Kとの関係で、対象物Tの厚さや硬さを把握できると共に、一対の把持片12に生じる曲げモーメントやねじりモーメントを把握できることになるので、これら力による対象物Tへの不必要な負担が低減される。

【0038】
したがって、本実施例に係る医療装置10は、一対の把持片12の先端部12Aそれぞれに3軸力センサ16を取りつけて、各先端部12Aに加わる力を検出できる結果として、各先端部12Aに加わる3軸方向の力と力のベクトルの計測も可能となるだけでなく、曲げモーメント及びねじりモーメントの計測により、対象物Tに加える負荷の見積もりが可能となる。この際、対象物Tの硬さの定量化情報は、しこりの識別のための情報ともなる。

【0039】
開腹手術においては、前述のように対象物Tを傷つけない力で把持したり、しこりのように通常より硬くなっている位置を見分けたりするために、触覚が用いられていた。これに対して、本実施例に係る医療装置10によれば、触覚の欠落が問題となっている腹腔鏡下手術でも、触覚が得られるようになった。さらに、本実施例に係る医療装置10は、対象物Tの硬さ等の情報の定量化により、術者間や術式間での比較が可能となり、教育、トレーニング及び術式の評価指標としての利用も期待できる。

【0040】
他方、開腹手術において、目的の臓器とその隣の臓器の間に指を入れて、目的の臓器をつかむといった状況を考えた場合、医師などの術者が感じる触覚は、目的の臓器をつかむ感覚とその隣の臓器を押しのける感覚の2種類が挙げられる。
この2種類の触覚を腹腔鏡下手術用の把持鉗子が受ける力(加える力の反力)として術者に提示することを考えると、一対の把持片12の先端部12Aで把持して目的の臓器に加える力(目的の臓器をつかむ感覚)および、シリンダ24等の本体部分が目的の臓器の隣の臓器に加える力(その隣の臓器を押しのける感覚)の計測が必要とも考えられる。しかし、後者の力の計測をするものとしては、把持鉗子や腹腔鏡下手術用のその他の術具を患者の腹部に通すためのポートにひずみゲージを取りつけたものが既に知られている。

【0041】
このことから、本実施例に係る医療装置10は、目的の臓器をつかむ感覚の提示のために把持片12の先端部12Aが目的の臓器に加える力やモーメントの計測機能を有しているので、ポートにひずみゲージを取りつけたものと併用することで、2種の触覚の提示が可能ともなる。

【0042】
次に、本発明に係る医療装置の第2の実施形態を、図7を参照しつつ詳細に説明する。
本実施形態の医療装置10は、図7に示すように一対の把持片12の先端部12Aに複数対になるように3軸力センサ16が相互に対向して設けられた構造とされている。このことで、本実施形態によれば、一対の把持片12の各先端部12Aに加わる圧縮力の分布を検出できるようになる。従って、広範囲に硬さの分布等が分かるので、しこりの範囲等を具体的に把握できるようになる。

【0043】
次に、本発明に係る医療装置の第3の実施形態を、図8を参照しつつ詳細に説明する。
本実施形態の医療装置10は、図8に示すように一対の把持片12(一方のみ示す)の先端部12Aに、力の検出ポイントPを複数有する3軸力センサ16が相互に対向して設けられた構造とされている。つまり、本実施形態のように3軸力センサ16が力の検出ポイントを複数有することでも、一対の把持片12の各先端部12Aに加わる圧縮力の分布を検出できるようになる。

【0044】
尚、上記実施形態では、3軸力センサ16としてMEMS(Micro Electro Mechanical Systems)センサによるものが考えられるが、MEMSは、例えば機械要素部品、センサ、アクチュエータ、電子回路を一つのシリコン基板、ガラス基板、有機材料などの上に集積化したものである。さらに、本発明に係る医療装置は、一体型のマニピュレータのみへの適用に限定されるものではなく、例えば遠隔操作用のマニピュレータ、あるいは例えば手術用の練習器具にも適用可能である。

【0045】
以上、本発明に係る実施の形態を説明したが、本発明は係る実施の形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変形して実施することができる。
【産業上の利用可能性】
【0046】
本発明は、人体への手術等の医療用だけでなく産業用等の他の技術分野にも適用可能なものである。
【符号の説明】
【0047】
10 医療装置
12 把持片(把持部材)
12A 先端部
12B 基端部
14 支持軸
16 3軸力センサ(力センサ)
28 ポテンショメータ(開閉量センサ)
30 信号処理部
T 対象物
K 開閉量
P 検出ポイント
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
5
【図7】
6
【図8】
7