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明細書 :カルボン酸化合物の水素化によるアルコールの製造方法、及び該製造方法に用いるルテニウム錯体

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 公開特許公報(A)
公開番号 特開2015-124153 (P2015-124153A)
公開日 平成27年7月6日(2015.7.6)
発明の名称または考案の名称 カルボン酸化合物の水素化によるアルコールの製造方法、及び該製造方法に用いるルテニウム錯体
国際特許分類 C07C  29/149       (2006.01)
C07C  33/20        (2006.01)
C07C  31/125       (2006.01)
C07C  33/22        (2006.01)
C07C  31/135       (2006.01)
C07C  33/46        (2006.01)
C07F  19/00        (2006.01)
C07F   9/50        (2006.01)
B01J  31/24        (2006.01)
C07B  61/00        (2006.01)
C07F  15/00        (2006.01)
FI C07C 29/149 CSP
C07C 33/20
C07C 31/125
C07C 33/22
C07C 31/135
C07C 33/46
C07F 19/00
C07F 9/50
B01J 31/24 Z
C07B 61/00 300
C07F 15/00 A
請求項の数または発明の数 15
出願形態 OL
全頁数 44
出願番号 特願2013-267866 (P2013-267866)
出願日 平成25年12月25日(2013.12.25)
発明者または考案者 【氏名】斎藤 進
【氏名】野依 良治
【氏名】鳴戸 真之
出願人 【識別番号】504139662
【氏名又は名称】国立大学法人名古屋大学
個別代理人の代理人 【識別番号】110000796、【氏名又は名称】特許業務法人三枝国際特許事務所
審査請求 未請求
テーマコード 4G169
4H006
4H039
4H050
Fターム 4G169AA06
4G169BA27A
4G169BA27B
4G169BC70A
4G169BC70B
4G169BE08B
4G169BE27B
4G169BE42B
4G169BE46B
4G169CB02
4H006AA02
4H006AC41
4H006BA23
4H006BA43
4H006BE20
4H006FE11
4H006FE73
4H006FE75
4H039CA60
4H039CB20
4H050AA01
4H050AA03
4H050AB40
要約 【課題】均一系触媒を用いて、効率的にカルボン酸化合物を水素化させてアルコールを得る方法の提供。具体的には、多様なカルボン酸化合物を、緩和な条件においても、均一系触媒を用いて、効率的に水素化してアルコールを得る方法の提供。
【解決手段】Ruで示されるルテニウム錯体と、特定のアルカリ金属塩との存在下に、カルボン酸化合物を水素化して、アルコールを製造する方法。
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【選択図】なし
特許請求の範囲 【請求項1】
カルボン酸化合物を水素化してアルコールを製造する方法であって、
ルテニウム錯体及びアルカリ金属塩の存在下に、水素雰囲気下でカルボン酸化合物を水素化する工程を備え、
前記ルテニウム錯体は、一般式(1):
Ru
[式中、Xは同じか又は異なり、それぞれハロゲン原子、RCOO-(Rは置換されていてもよいアルキル基、又は置換されていてもよいアリール基)で示される基、又はβ-ジケトネート;Yは、リン原子を1個以上含む配位子;ZはX及びY以外の配位子;mは1以上の整数;nは1以上の整数;pは0~6の整数;qは0~2の整数;ルテニウム原子に配位するリン原子の数は、ルテニウム原子の2~10倍である。]
で示される化合物である、製造方法。
【請求項2】
前記ルテニウム錯体において、ルテニウムが2価又は3価である、請求項1に記載の製造方法。
【請求項3】
前記一般式(1)において、Yは、置換されていてもよいアリール基を有するホスフィン配位子である、請求項1又は2に記載の製造方法。
【請求項4】
前記一般式(1)において、Zは、ヒドリド、酸素原子、水分子、一酸化炭素、一酸化窒素、シアン化物イオン、チオシアネート、アミン、芳香族炭化水素、不飽和炭化水素、ヘテロ環式化合物、カルボニル化合物、低級アルコキシ基、β-ジケトネート、ジメチルスルホキシド、ホスフィンオキシド、ニトリル、窒素分子、水素分子、酸素分子、二酸化炭素、N-ヘテロ環状カルベン、トリフラート、トシラート、又はトリフリルイミドである、請求項1~3のいずれかに記載の製造方法。
【請求項5】
前記一般式(1)において、mが1~4の整数であり、nが1~6の整数であり、pが1~4の整数であり、qが0又は1である、請求項1~4のいずれかに記載の製造方法。
【請求項6】
前記ルテニウム錯体は、一般式(1A):
Ru
[式中、Xは同じか又は異なり、それぞれハロゲン原子、又はRCOO-(Rは置換されていてもよいアルキル基、又は置換されていてもよいアリール基)で示される基;Yは前記に同じ;ZはX及びY以外の配位子;m、n及びqは前記に同じ;pは1~6の整数;ルテニウム原子に配位するリン原子の数は、ルテニウム原子の2~10倍である。]
で示される化合物、又は一般式(1B):
【化1】
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[式中、R及びR10は同じか又は異なり、それぞれ置換されていてもよいアルキル基、又は置換されていてもよいアリール基;実線と破線で示される結合は、単結合又は二重結合である。]
で示される化合物である、請求項1~5のいずれかに記載の製造方法。
【請求項7】
前記ルテニウム錯体は、
一般式(1A-1):
RuX
[式中、X、Y、Z、n、p及びqは前記に同じである。]
で示される化合物、
一般式(1A-2):
Ru
[式中、X、Y、Z、n、p及びqは前記に同じである。]
で示される化合物、又は一般式(1B):
【化2】
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[式中、R及びR10は前記に同じ;実線と破線で示される結合は、単結合又は二重結合である。]
で示される化合物である、請求項6に記載の製造方法。
【請求項8】
前記アルカリ金属塩は、一般式(3):
MW
[式中、Mはアルカリ金属;
Wは、
-BR(Rは同じか又は異なり、それぞれ置換されていてもよいアルキル基、又は置換されていてもよいアリール基)、
-N(SO(Rは同じか又は異なり、それぞれ置換されていてもよいアルキル基、又は置換されていてもよいアリール基)、
-OR(Rは同じか又は異なり、それぞれ置換されていてもよいアルキル基、置換されていてもよいアシル基、又は-SO(Rは置換されていてもよいアルキル基、置換されていてもよいアリール基で示される基))、又は
β-ジケトネートである。]
で示される塩である、請求項1~7のいずれかに記載の製造方法。
【請求項9】
前記水素化反応工程において、リン原子を1個以上含む配位子Y’を添加する、請求項1~8のいずれかに記載の製造方法。
【請求項10】
カルボン酸化合物を水素化してアルコールを製造する方法であって、
ルテニウム錯体及びリン原子を1個以上含む配位子Y”の存在下に、水素雰囲気下でカルボン酸化合物を水素化する工程を備え、
前記カルボン酸化合物は、ケトン基を有さない、製造方法。
【請求項11】
前記ルテニウム錯体において、ルテニウムは3価である、請求項10に記載の製造方法。
【請求項12】
ルテニウム錯体は、一般式(1B):
【化3】
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[式中、R及びR10は同じか又は異なり、それぞれ置換されていてもよいアルキル基、又は置換されていてもよいアリール基;実線と破線で示される結合は、単結合又は二重結合である。]
で示される化合物である、請求項10又は11に記載の製造方法。
【請求項13】
前記配位子Y”が、置換されていてもよいアリール基を有する、請求項10~12のいずれかに記載の製造方法。
【請求項14】
前記配位子Y”が、トリフェニルホスフィン、トリ(3,5-キシリル)ホスフィン、トリ(4-メチルフェニル)ホスフィン、トリ(3-メチ ルフェニル)ホスフィン、トリ(2-メチルフェニル)ホスフィン、トリス(4-トリフルオロメチルフェニル)ホスフィン、トリ(4-メトキシフェニル)ホスフィン、トリ(3-メトキシフェニル)ホスフィン、トリ(2-メトキシフェニル)ホスフィン、トリス(3,5-ジメトキシフェニル)ホスフィン、トリス(3,5-ジメチル-4-メトキシフェニル)ホスフィン、トリス[3, 5-ビス(1,1-ジメチルエチル)-4-メトキシフェニル]ホスフィン、トリス(3,5-ジフルオロフェニル)ホスフィン、トリ(1-ナフチル)ホスフィン、トリメチルホスフィン、トリエチルホスフィン、トリ-n-プロピルホスフィン、トリイソプロピルホスフィン、トリ-n-ブチルホスフィン、トリ-t-ブチルホスフィン、トリペンチルホスフィン、トリ-n-ヘキシルホスフィン、トリ-n-ヘプチルホスフィン、トリオクチルホスフィン、トリシクロペンチルホスフィン、トリシクロヘキシルホ スフィン、メチルジフェニルホスフィン、シクロヘキシルメチルフェニルホスフィン、ジシクロヘキシルフェニルホスフィン、1,2-ビス(ジフェニルホスフィノ)ベンゼン、ビスジフェニルホスフィノメタン、1,2-ビス(ジフェニルホスフィノ)エタン、1,3-ビス(ジフェニルホスフィノ)プロパン、1,4-ビス(ジフェニルホスフィノ)ブタン、1,5-ビス(ジフェニルホスフィノ)ペンタン、1,1’-ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセン、1,2-ビス(ビス(3,5-ジメチルフェニル)ホスフィノ)エタン、1,3-ビス(ビス(3,5-ジメチルフェニル)ホスフィノ)プロパン、1,4-ビス(ビス(3,5-ジメチルフェニル)ホスフィノ)ブタン、1,4-ビス(ビス(3,5-ジ-t-ブチルフェニル)ホスフィノ)ブタン、1,4-ビス(ビス(3,5-ジメトキシフェニル)ホスフィノ)ブタン、2,2’-ビス(ジフェニルホスフィノ)-1,1’-ビナフチル、2,2’-ビス(ビス(3,5-ジメチルフェニル)ホスフィノ)-1,1’-ビナフチル、4,5-ビス(ジフェニルホスフィノ)-9,9-ジメチルキサンテン、ビス(ジフェニルホスフィノエチル)フェニルホスフィン、1,1,1-トリス(ジフェニルホスフィノメチル)エタン、1,1,1-トリス(ビス(3,5-ジメチルフェニル)ホスフィノメチル)エタン、1,1,1-トリス(ジフェニルホスフィノ)メタン、又はトリス(2-ジフェニルホスフィノエチル)ホスフィンである、請求項10~13のいずれかに記載の製造方法。
【請求項15】
一般式(1A-2a1):
【化4】
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[式中、X~Xは同じか又は異なり、それぞれハロゲン原子;R~Rは同じか又は異なり、それぞれ置換されていてもよいアリール基;1個のRと1個のR、及び/又は1個のRと1個のRは互いに結合し、隣接する-P-Ru-P-とともに環を形成してもよい。]
で示されるルテニウム錯体。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、カルボン酸化合物の水素化によるアルコールの製造方法、及び該製造方法に用いるルテニウム錯体に関する。
【背景技術】
【0002】
水素化反応等の水素移動反応は、低分子及び高分子有機化合物の合成に広く利用されている。
【0003】
例えば、非特許文献1では、特定のルテニウム錯体が、エステルや二酸化炭素を水素化してアルコールを合成するのに有用であることが示されている。その他、アミドを水素化する例も知られている。
【0004】
しかしながら、分子性の触媒を用いたカルボン酸化合物の水素化の例はほとんど存在しない。これは、カルボン酸化合物は、水素添加反応に対し安定なカルボキシル基を有するため、一般に水素添加反応は困難とされているためである。また、従来のカルボン酸化合物の水素化方法においては、均一系触媒を用いた場合、基質依存性が高いため、基質の種類に応じて触媒の中心金属や配位子、反応条件等をその都度大幅に変える必要があった。
【0005】
このため、アミドやエステルのみならず、カルボン酸化合物であっても、水素化反応によりアルコールを合成することができれば、低分子及び高分子有機化合物の合成に適用することができ、多様なアルコールを合成できるため、より有用である。
【0006】
例えば、異種二核金属クラスター触媒や、不均一系触媒を用いた場合には、報告例が存在する(非特許文献2~3)。しかしながら、非特許文献2では、単一金属からなる均一系触媒を用いた場合には、カルボン酸化合物の水素化は困難であるうえに、高圧を必要としており、さらに、環還元が進行する。また、非特許文献3では、基質によっては脱炭酸を伴うため、基質一般性や選択性に乏しい。このため、緩和な条件で進行させることができる基質一般性に優れた方法とは言えない。
【0007】
一方、非特許文献4では、特定の錯体、特定の配位子、特定の添加剤を組合せることで、特定のカルボン酸基質を用いた場合には、環状エステル、環状エーテル、アルコール等、所望の化合物を得ることができることが示されている。しかしながら、一般的なカルボン酸化合物を用いても、同様に反応が進行するかどうかは示されておらず、特殊なカルボン酸基質を用いた場合のみ述べられている。
【0008】
このように、カルボン酸化合物を直接還元してアルコールを得ることは、基質によっては困難であることから、通常は、カルボン酸化合物を分子内エステル化した後に、還元反応を行っている。
【0009】
一方、特許文献1では、プロピオン酸や酪酸等の水素化についても述べられており、基質一般性に優れるとされているが、高温(190℃以上)を必要としており、やはり緩和な条件で反応を進行させることはできない。なお、特許文献1では、ルテニウム錯体に使用される配位子として、Triphos(1,1,1-トリス(ジフェニルホスフィノメチル)エタン)等の三座配位子が特に有用であるとされている。
【0010】
このため、均一系触媒を用いて、多様なカルボン酸基質を、緩和な条件で水素化させてアルコールを得る方法はいまだ達成されておらず、このような方法が求められている。
【先行技術文献】
【0011】

【特許文献1】米国特許出願公開第2005/0234269号明細書
【0012】

【非特許文献1】Angew. Chem. Int. Ed. 2012, 51, 7499-7502
【非特許文献2】Tetrahedron Lett. 1995, 36, 1059-1062
【非特許文献3】Chem. Commun. 2010, 46, 6279-6281
【非特許文献4】Angew. Chem. Int. Ed. 2010, 49, 5510-5514
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
上記したエステルやアミド等の不活性カルボニル基を有する基質の水素化反応は、一般には、塩基性条件で行われる場合に効果的である場合が多い。しかしながら、基質としてカルボン酸化合物を用いる場合には、反応系が酸性条件となり、エステルやアミドを水素化する際の条件はそのまま適用できない。
【0014】
このような状況下、本発明は、均一系触媒を用いて、効率的にカルボン酸化合物を水素化させてアルコールを得る方法を提供することを目的とする。具体的には、多様なカルボン酸化合物を、緩和な条件においても、均一系触媒を用いて、効率的に水素化してアルコールを得る方法を提供することを目的とする。
【0015】
また、本発明は、当該方法に用いることができる新規なルテニウム錯体を提供することも目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明者らは上記の課題を解決するために鋭意研究を行った。
【0017】
その結果、特定のルテニウム錯体に対して、アルカリ金属塩を添加することで、緩和な条件においても、効率的に、カルボン酸化合物を水素化してアルコールを得ることができることを見出した。この際使用されるルテニウム錯体のうち、一部は文献未記載の新規化合物である。
【0018】
本発明者らは、このような知見に基づき、さらに研究を重ね、本発明を完成した。
【0019】
すなわち、本発明は以下のアルコールの製造方法及びルテニウム錯体を包含する。
項1.カルボン酸化合物を水素化してアルコールを製造する方法であって、
ルテニウム錯体及びアルカリ金属塩の存在下に、水素雰囲気下でカルボン酸化合物を水素化する工程を備え、
前記ルテニウム錯体は、一般式(1):
Ru
[式中、Xは同じか又は異なり、それぞれハロゲン原子、RCOO-(Rは置換されていてもよいアルキル基、又は置換されていてもよいアリール基)で示される基、又はβ-ジケトネート;Yは、リン原子を1個以上含む配位子;ZはX及びY以外の配位子;mは1以上の整数;nは1以上の整数;pは0~6の整数;qは0~2の整数;ルテニウム原子に配位するリン原子の数は、ルテニウム原子の2~10倍である。]
で示される化合物である、製造方法。
項2.前記ルテニウム錯体において、ルテニウムが2価又は3価である、項1に記載の製造方法。
項2-1.前記一般式(1)において、Xは同じか又は異なり、それぞれ塩素原子、CHCOO-で示される基、又はアセチルアセトナトである、項1又は2に記載の製造方法。
項2-2.前記一般式(1)において、Yはホスフィン配位子である、項1~2-1のいずれかに記載の製造方法。
項3.前記一般式(1)において、Yは、置換されていてもよいアリール基を有するホスフィン配位子である、項1~2-2のいずれかに記載の製造方法。
項3-1.前記一般式(1)において、Yは、トリフェニルホスフィン、トリ(3,5-キシリル)ホスフィン、トリ(4-メチルフェニル)ホスフィン、トリ(3-メチ ルフェニル)ホスフィン、トリ(2-メチルフェニル)ホスフィン、トリス(4-トリフルオロメチルフェニル)ホスフィン、トリ(4-メトキシフェニル)ホスフィン、トリ(3-メトキシフェニル)ホスフィン、トリ(2-メトキシフェニル)ホスフィン、トリス(3,5-ジメトキシフェニル)ホスフィン、トリス(3,5-ジメチル-4-メトキシフェニル)ホスフィン、トリス[3, 5-ビス(1,1-ジメチルエチル)-4-メトキシフェニル]ホスフィン、トリス(3,5-ジフルオロフェニル)ホスフィン、トリ(1-ナフチル)ホスフィン、トリメチルホスフィン、トリエチルホスフィン、トリ-n-プロピルホスフィン、トリイソプロピルホスフィン、トリ-n-ブチルホスフィン、トリ-t-ブチルホスフィン、トリペンチルホスフィン、トリ-n-ヘキシルホスフィン、トリ-n-ヘプチルホスフィン、トリオクチルホスフィン、トリシクロペンチルホスフィン、トリシクロヘキシルホ スフィン、メチルジフェニルホスフィン、シクロヘキシルメチルフェニルホスフィン、ジシクロヘキシルフェニルホスフィン、1,2-ビス(ジフェニルホスフィノ)ベンゼン、ビスジフェニルホスフィノメタン、1,2-ビス(ジフェニルホスフィノ)エタン、1,3-ビス(ジフェニルホスフィノ)プロパン、1,4-ビス(ジフェニルホスフィノ)ブタン、1,5-ビス(ジフェニルホスフィノ)ペンタン、1,1’-ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセン、1,2-ビス(ビス(3,5-ジメチルフェニル)ホスフィノ)エタン、1,3-ビス(ビス(3,5-ジメチルフェニル)ホスフィノ)プロパン、1,4-ビス(ビス(3,5-ジメチルフェニル)ホスフィノ)ブタン、1,4-ビス(ビス(3,5-ジ-t-ブチルフェニル)ホスフィノ)ブタン、1,4-ビス(ビス(3,5-ジメトキシフェニル)ホスフィノ)ブタン、2,2’-ビス(ジフェニルホスフィノ)-1,1’-ビナフチル、2,2’-ビス(ビス(3,5-ジメチルフェニル)ホスフィノ)-1,1’-ビナフチル、4,5-ビス(ジフェニルホスフィノ)-9,9-ジメチルキサンテン、ビス(ジフェニルホスフィノエチル)フェニルホスフィン、1,1,1-トリス(ジフェニルホスフィノメチル)エタン、1,1,1-トリス(ビス(3,5-ジメチルフェニル)ホスフィノメチル)エタン、1,1,1-トリス(ジフェニルホスフィノ)メタン、又はトリス(2-ジフェニルホスフィノエチル)ホスフィンである、項1~3のいずれかに記載の製造方法。
項4.前記一般式(1)において、Zは、ヒドリド、酸素原子、水分子、一酸化炭素、一酸化窒素、シアン化物イオン、チオシアネート、アミン、芳香族炭化水素、不飽和炭化水素、ヘテロ環式化合物、カルボニル化合物、低級アルコキシ基、β-ジケトネート、ジメチルスルホキシド、ホスフィンオキシド、ニトリル、窒素分子、水素分子、酸素分子、二酸化炭素、N-ヘテロ環状カルベン、トリフラート、トシラート、又はトリフリルイミドである、項1~3-1のいずれかに記載の製造方法。
項5.前記一般式(1)において、mが1~4の整数であり、nが1~6の整数であり、pが1~4の整数であり、qが0又は1である、項1~4のいずれかに記載の製造方法。
項6.前記ルテニウム錯体は、一般式(1A):
Ru
[式中、Xは同じか又は異なり、それぞれハロゲン原子、又はRCOO-(Rは置換されていてもよいアルキル基、又は置換されていてもよいアリール基)で示される基;Yは前記に同じ;ZはX及びY以外の配位子;m、n及びqは前記に同じ;pは1~6の整数;ルテニウム原子に配位するリン原子の数は、ルテニウム原子の2~10倍である。]
で示される化合物、又は一般式(1B):
【0020】
【化1】
JP2015124153A_000002t.gif

【0021】
[式中、R及びR10は同じか又は異なり、それぞれ置換されていてもよいアルキル基、又は置換されていてもよいアリール基;実線と破線で示される結合は、単結合又は二重結合である。]
で示される化合物である、項1~5のいずれかに記載の製造方法。
項7.前記ルテニウム錯体は、
一般式(1A-1):
RuX
[式中、X、Y、Z、n、p及びqは前記に同じである。]
で示される化合物、
一般式(1A-2):
Rup’Z’
[式中、X、Y、Z、n、p及びqは前記に同じである。]
で示される化合物、又は一般式(1B):
【0022】
【化2】
JP2015124153A_000003t.gif

【0023】
[式中、R及びR10は前記に同じ;実線と破線で示される結合は、単結合又は二重結合である。]
で示される化合物である、項6に記載の製造方法。
項7-1.前記ルテニウム錯体は、一般式(1A-2a):
【0024】
【化3】
JP2015124153A_000004t.gif

【0025】
[式中、X~Xは同じか又は異なり、それぞれハロゲン原子;R~Rは同じか又は異なり、それぞれ置換されていてもよいアリール基;1個のRと1個のR、及び/又は1個のRと1個のRは互いに結合し、隣接する-P-Ru-P-とともに環を形成してもよい。]
で示される化合物、又は一般式(1B):
【0026】
【化4】
JP2015124153A_000005t.gif

【0027】
[式中、R及びR10は前記に同じ;実線と破線で示される結合は、単結合又は二重結合である。]
で示される化合物である、項1~7のいずれかに記載の製造方法。
項8.前記アルカリ金属塩は、一般式(3):
MW
[式中、Mはアルカリ金属;
Wは、
-BR(Rは同じか又は異なり、それぞれ置換されていてもよいアルキル基、又は置換されていてもよいアリール基)、
-N(SO(Rは同じか又は異なり、それぞれ置換されていてもよいアルキル基、又は置換されていてもよいアリール基)、
-OR(Rは同じか又は異なり、それぞれ置換されていてもよいアルキル基、置換されていてもよいアシル基、又は-SO(Rは置換されていてもよいアルキル基、置換されていてもよいアリール基で示される基))、又は
β-ジケトネートである。]
で示される塩である、項1~7のいずれかに記載の製造方法。
項9.前記水素化反応工程において、リン原子を1個以上含む配位子Y’を添加する、項1~8のいずれかに記載の製造方法。
項9-1.前記配位子Y’がホスフィン配位子である、項1~9のいずれかに記載の製造方法。
項9-2.前記配位子Y’が、置換されていてもよいアリール基を有するホスフィン配位子である、項9又は9-1に記載の製造方法。
項9-3.前記配位子Y’が、トリフェニルホスフィン、トリ(3,5-キシリル)ホスフィン、トリ(4-メチルフェニル)ホスフィン、トリ(3-メチ ルフェニル)ホスフィン、トリ(2-メチルフェニル)ホスフィン、トリス(4-トリフルオロメチルフェニル)ホスフィン、トリ(4-メトキシフェニル)ホスフィン、トリ(3-メトキシフェニル)ホスフィン、トリ(2-メトキシフェニル)ホスフィン、トリス(3,5-ジメトキシフェニル)ホスフィン、トリス(3,5-ジメチル-4-メトキシフェニル)ホスフィン、トリス[3, 5-ビス(1,1-ジメチルエチル)-4-メトキシフェニル]ホスフィン、トリス(3,5-ジフルオロフェニル)ホスフィン、トリ(1-ナフチル)ホスフィン、トリメチルホスフィン、トリエチルホスフィン、トリ-n-プロピルホスフィン、トリイソプロピルホスフィン、トリ-n-ブチルホスフィン、トリ-t-ブチルホスフィン、トリペンチルホスフィン、トリ-n-ヘキシルホスフィン、トリ-n-ヘプチルホスフィン、トリオクチルホスフィン、トリシクロペンチルホスフィン、トリシクロヘキシルホ スフィン、メチルジフェニルホスフィン、シクロヘキシルメチルフェニルホスフィン、ジシクロヘキシルフェニルホスフィン、1,2-ビス(ジフェニルホスフィノ)ベンゼン、ビスジフェニルホスフィノメタン、1,2-ビス(ジフェニルホスフィノ)エタン、1,3-ビス(ジフェニルホスフィノ)プロパン、1,4-ビス(ジフェニルホスフィノ)ブタン、1,5-ビス(ジフェニルホスフィノ)ペンタン、1,1’-ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセン、1,2-ビス(ビス(3,5-ジメチルフェニル)ホスフィノ)エタン、1,3-ビス(ビス(3,5-ジメチルフェニル)ホスフィノ)プロパン、1,4-ビス(ビス(3,5-ジメチルフェニル)ホスフィノ)ブタン、1,4-ビス(ビス(3,5-ジ-t-ブチルフェニル)ホスフィノ)ブタン、1,4-ビス(ビス(3,5-ジメトキシフェニル)ホスフィノ)ブタン、2,2’-ビス(ジフェニルホスフィノ)-1,1’-ビナフチル、2,2’-ビス(ビス(3,5-ジメチルフェニル)ホスフィノ)-1,1’-ビナフチル、4,5-ビス(ジフェニルホスフィノ)-9,9-ジメチルキサンテン、ビス(ジフェニルホスフィノエチル)フェニルホスフィン、1,1,1-トリス(ジフェニルホスフィノメチル)エタン、1,1,1-トリス(ビス(3,5-ジメチルフェニル)ホスフィノメチル)エタン、1,1,1-トリス(ジフェニルホスフィノ)メタン、又はトリス(2-ジフェニルホスフィノエチル)ホスフィンである、項9~9-2のいずれかに記載の製造方法。
項9-4.前記水素化工程は、溶媒の存在下で行われる、項1~9-3のいずれかに記載の製造方法。
項9-5.前記溶媒は、芳香族炭化水素、エーテル又はアルコールである、項9-4に記載の製造方法。
項9-6.前記水素化工程は、0.1~20MPaの水素圧下で、0~190℃で反応させる工程である、項1~9-5のいずれかに記載の製造方法。
項10.カルボン酸化合物を水素化してアルコールを製造する方法であって、
ルテニウム錯体及びリン原子を1個以上含む配位子Y”の存在下に、水素雰囲気下でカルボン酸化合物を水素化する工程を備え、
前記カルボン酸化合物は、ケトン基を有さない、製造方法。
項11.前記ルテニウム錯体において、ルテニウムは3価である、項10に記載の製造方法。
項12.ルテニウム錯体は、一般式(1B):
【0028】
【化5】
JP2015124153A_000006t.gif

【0029】
[式中、R及びR10は同じか又は異なり、それぞれ置換されていてもよいアルキル基、又は置換されていてもよいアリール基;実線と破線で示される結合は、単結合又は二重結合である。]
で示される化合物である、項10又は11に記載の製造方法。
項13.前記配位子Y”が、置換されていてもよいアリール基を有する、項10~12のいずれかに記載の製造方法。
項14.前記配位子Y”が、トリフェニルホスフィン、トリ(3,5-キシリル)ホスフィン、トリ(4-メチルフェニル)ホスフィン、トリ(3-メチ ルフェニル)ホスフィン、トリ(2-メチルフェニル)ホスフィン、トリス(4-トリフルオロメチルフェニル)ホスフィン、トリ(4-メトキシフェニル)ホスフィン、トリ(3-メトキシフェニル)ホスフィン、トリ(2-メトキシフェニル)ホスフィン、トリス(3,5-ジメトキシフェニル)ホスフィン、トリス(3,5-ジメチル-4-メトキシフェニル)ホスフィン、トリス[3, 5-ビス(1,1-ジメチルエチル)-4-メトキシフェニル]ホスフィン、トリス(3,5-ジフルオロフェニル)ホスフィン、トリ(1-ナフチル)ホスフィン、トリメチルホスフィン、トリエチルホスフィン、トリ-n-プロピルホスフィン、トリイソプロピルホスフィン、トリ-n-ブチルホスフィン、トリ-t-ブチルホスフィン、トリペンチルホスフィン、トリ-n-ヘキシルホスフィン、トリ-n-ヘプチルホスフィン、トリオクチルホスフィン、トリシクロペンチルホスフィン、トリシクロヘキシルホ スフィン、メチルジフェニルホスフィン、シクロヘキシルメチルフェニルホスフィン、ジシクロヘキシルフェニルホスフィン、1,2-ビス(ジフェニルホスフィノ)ベンゼン、ビスジフェニルホスフィノメタン、1,2-ビス(ジフェニルホスフィノ)エタン、1,3-ビス(ジフェニルホスフィノ)プロパン、1,4-ビス(ジフェニルホスフィノ)ブタン、1,5-ビス(ジフェニルホスフィノ)ペンタン、1,1’-ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセン、1,2-ビス(ビス(3,5-ジメチルフェニル)ホスフィノ)エタン、1,3-ビス(ビス(3,5-ジメチルフェニル)ホスフィノ)プロパン、1,4-ビス(ビス(3,5-ジメチルフェニル)ホスフィノ)ブタン、1,4-ビス(ビス(3,5-ジ-t-ブチルフェニル)ホスフィノ)ブタン、1,4-ビス(ビス(3,5-ジメトキシフェニル)ホスフィノ)ブタン、2,2’-ビス(ジフェニルホスフィノ)-1,1’-ビナフチル、2,2’-ビス(ビス(3,5-ジメチルフェニル)ホスフィノ)-1,1’-ビナフチル、4,5-ビス(ジフェニルホスフィノ)-9,9-ジメチルキサンテン、ビス(ジフェニルホスフィノエチル)フェニルホスフィン、1,1,1-トリス(ジフェニルホスフィノメチル)エタン、1,1,1-トリス(ビス(3,5-ジメチルフェニル)ホスフィノメチル)エタン、1,1,1-トリス(ジフェニルホスフィノ)メタン、又はトリス(2-ジフェニルホスフィノエチル)ホスフィンである、項10~13のいずれかに記載の製造方法。
項14-1.前記水素化工程は、溶媒の存在下で行われる、項10~14のいずれかに記載の製造方法。
項14-2.前記溶媒は、芳香族炭化水素類、エーテル又はアルコール類である、項10~14-1に記載の製造方法。
項14-3.前記水素化工程は、0.1~20MPaの水素圧下で、0~190℃で反応させる工程である、項10~14-2のいずれかに記載の製造方法。
項15.一般式(1A-2a1):
【0030】
【化6】
JP2015124153A_000007t.gif

【0031】
[式中、X~Xは同じか又は異なり、それぞれハロゲン原子;R~Rは同じか又は異なり、それぞれ置換されていてもよいアリール基である。]
で示されるルテニウム錯体。
【発明の効果】
【0032】
本発明によれば、カルボン酸化合物に対して、高温高圧を必要とせず、つまり、緩和な条件においても、効率的に水素化を進行させ、アルコールを得ることができるため、実用性及び利便性が高い。
【0033】
また、基質、錯体及びアルカリ金属塩を選択することにより、非常に高収率にアルコールを得ることも可能である。この場合、アルコールの選択性も高いので、より省エネ法へとつながる可能性も高い。
【0034】
さらに、本発明の製造方法においては、室温及び空気中でも取り扱いが容易で、合成が極めて容易な触媒を用いることができるため経済的であり、実用性及び利便性が高い。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】合成例1で得られたルテニウム錯体(化合物2a)のX線単結晶構造解析の結果(ORTEP)である。
【発明を実施するための形態】
【0036】
1.第1の態様(製造方法)
本発明の第1の態様におけるアルコールの製造方法は、ルテニウム錯体及びアルカリ金属塩の存在下に、水素雰囲気下でカルボン酸化合物を水素化する工程を備える。

【0037】
(1)ルテニウム錯体
第1の態様における本発明で使用するルテニウム錯体は、一般式(1):
Ru
[式中、Xは同じか又は異なり、それぞれハロゲン原子、RCOO-(Rは置換されていてもよいアルキル基、又は置換されていてもよいアリール基)で示される基、又はβ-ジケトネート;Yは、リン原子を1個以上含む配位子;ZはX及びY以外の配位子;mは1以上の整数;nは1以上の整数;pは0~6の整数;qは0~2の整数;ルテニウム原子に配位するリン原子の数は、ルテニウム原子の2~10倍である。]
で示される化合物である。

【0038】
本発明で使用するルテニウム錯体は、単核錯体でも多核錯体でもよいが、単核錯体又は二核錯体が好ましく、二核錯体がより好ましい。

【0039】
第1の態様における本発明で使用するルテニウム錯体中におけるルテニウムの価数は、何価でもよいが、2価又は3価が好ましく、2価がより好ましい。なお、反応系中で、ルテニウムの価数が不明な場合も含むものとする。

【0040】
一般式(1)において、Xで示される基は、ハロゲン原子、RCOO-で示される基、又はβ-ジケトネートである。

【0041】
Xで示されるハロゲン原子としては、例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等が挙げられ、塩素原子が好ましい。

【0042】
また、RCOO-で示される基におけるRとしては、例えば、置換されていてもよいアルキル基、又は置換されていてもよいアリール基である。

【0043】
Rで示されるアルキル基としては、例えば、炭素数が1~20(特に1~12、さらに1~6、特に1~4)の飽和の直鎖若しくは分岐状脂肪族アルキル基が好ましく、例えば、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基等が挙げられる。

【0044】
Rで示されるアルキル基が置換されている場合における置換基は特に制限されないが、フッ素原子、塩素原子、臭素原子等のハロゲン原子;メチル基、エチル基等のアルキル基;メトキシ基、エトキシ基等のアルコキシ基;ニトロ基;アミノ基;ヒドロキシ基;シアノ基;トリメチルシリル基等のシリル基;チオール基等が挙げられる。置換基で置換されている場合の置換基の数は、例えば1~3個程度とすることができる。

【0045】
Rで示されるアリール基としては、例えば、フェニル基、ナフチル基、ピレニル基、トルイル基、キシリル基、メシチル基、ピリジル基、フリル基、チオフェニル基、ピロリル基等が挙げられる。

【0046】
Rで示されるアリール基が置換されている場合における置換基は特に制限されないが、フッ素原子、塩素原子、臭素原子等のハロゲン原子;メチル基、エチル基等のアルキル基;メトキシ基、エトキシ基等のアルコキシ基;ニトロ基;アミノ基;ヒドロキシ基;シアノ基;トリメチルシリル基等のシリル基;チオール基等が挙げられる。置換基で置換されている場合の置換基の数は、例えば1~3個程度とすることができる。

【0047】
これらのなかでも、Rとしては、非置換アルキル基が好ましく、メチル基、エチル基、n-プロピル基がより好ましい。このため、Xで示されるRCOO-で示される基としては、CHCOO-、CCOO-、CCOO-等で示される基が好ましく、CHCOO-で示される基がより好ましい。

【0048】
Xで示されるβ-ジケトネートとしては、例えば、アセチルアセトナト等が挙げられる。

【0049】
上記の条件を満たすXとしては、塩素原子、CHCOO-で示される基、又はアセチルアセトナトが特に好ましい。

【0050】
一般式(1)において、Yで示される配位子は、リン原子を1個以上含む配位子であり、具体的には、ホスフィン配位子が好ましい。このような配位子としては、単座配位子、二座配位子、三座配位子及び四座配位子のいずれも使用できるが、単座配位子又は二座配位子が好ましい。

【0051】
また、リン原子を1個以上含む配位子としては、カルボン酸化合物の水素化(還元)によるアルコールの収率の観点から、置換されていてもよいアリール基を有する配位子が好ましい。なお、置換されていてもよいアリール基としては、上記Rとしてのアリール基と同様のものが挙げられ、フェニル基、ナフチル基、ピレニル基、トルイル基、キシリル基、メシチル基、ピリジル基、フリル基、チオフェニル基、ピロリル基等が好ましい。

【0052】
本発明で使用できるリン原子を1個以上含む配位子Yとしては、具体的には、単座配位子としては、例えば、トリメチルホスフィン等のトリアルキルホスフィン;トリシクロヘキシルホスフィン(PCy)等のトリシクロアルキルホスフィン;トリフェニルホスフィン、トリ(4-フルオロフェニル)ホスフィン、トリ(2-トリル)ホスフィン、トリ(3-トリル)ホスフィン、トリ(4-トリル)ホスフィン、トリス[4-(トリフルオロメチル)フェニル]ホスフィン、トリ(4-アニシル)ホスフィン、トリ(2,4-キシリル)ホスフィン、トリ(3,5-キシリル)ホスフィン、トリ(2,4,6-トリメトキシフェニル)ホスフィン等のトリアリールホスフィン;トリ-2-フラニルホスフィン等のトリヘテロアリールホスフィン等が挙げられ、二座配位子としては、ビスジフェニルホスフィノメタン(dppm)、1,2-ビス(ジフェニルホスフィノ)エタン(dppe)、1,3-ビス(ジフェニルホスフィノ)プロパン(dppp)、1,4-ビス(ジフェニルホスフィノ)ブタン(dppb)、1,5-ビス(ジフェニルホスフィノ)ペンタン(dpppn)、1,6-ビス(ジフェニルホスフィノ)ヘキサン(dpphe)、1,2-ビス(ジフェニルホスフィノ)ベンゼン、4,5-ビス(ジフェニルホスフィノ)-9,9-ジメチルキサンテン、2,2’-ビス(ジフェニルホスフィノ)-1,1’-ビナフチル(BINAP)、1,1’-ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセン、1,4-ビス(ビス(3,5-ジメチルフェニル)ホスフィノ)ブタン、1,4-ビス(ビス(3,5-ジ-t-ブチルフェニル)ホスフィノ)ブタン、等が挙げられ、三座配位子としては、ビス(2-ジフェニルホスフィノエチル)フェニルホスフィン、1,1,1-トリス(ジフェニルホスフィノメチル)エタン、1,1,1-トリス(ビス(3,5-ジメチルフェニル)ホスフィノメチル)エタン等が挙げられ、四座配位子としては、トリス(2-ジフェニルホスフィノエチル)ホスフィン等が挙げられる。なかでも、置換されていてもよい1価の芳香族炭化水素基を有する単座又は二座配位子が好ましく、具体的には、トリフェニルホスフィン、トリ(3,5-キシリル)ホスフィン、ビスジフェニルホスフィノメタン(dppm)、1,3-ビス(ジフェニルホスフィノ)プロパン(dppp)、1,4-ビス(ジフェニルホスフィノ)ブタン(dppb)、1,5-ビス(ジフェニルホスフィノ)ペンタン(dpppn)、1,1’-ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセン、2,2’-ビス(ジフェニルホスフィノ)-1,1’-ビナフチル(BINAP)、ビス(ジフェニルホスフィノエチル)フェニルホスフィン、1,1,1-トリス(ジフェニルホスフィノメチル)エタン、1,4-ビス(ビス(3,5-ジメチルフェニル)ホスフィノ)ブタン、1,4-ビス(ビス(3,5-ジ-t-ブチルフェニル)ホスフィノ)ブタン、等が好ましい。

【0053】
これらの配位子Yは、仕込むルテニウム錯体中に含まれていてもよいし、系中でルテニウム錯体に形成されてもよい。

【0054】
一般式(1)において、Zで示される配位子は、X及びY以外の配位子であり、Ruに配位し得るものであれば特に制限はない。具体的には、水素原子(ヒドリド;H)、酸素原子(オキソ基;O2-)、水分子(HO)、一酸化炭素(CO)、芳香族炭化水素(ベンゼン、ナフタレン、ピレン、シクロペンタジエン、p-シメン等)、低級アルコキシ基(メトキシ基等のC1~4アルコキシ基等)、β-ジケトネート(アセチルアセトン等)、ジメチルスルホキシド、一酸化窒素(NO)、不飽和炭化水素(シクロオクタジエン、アセチレン、2-メチルアリル等)、シアン化物イオン(CN)、チオシアネート(NCS)、アミン(アンモニア、トリエチルアミン等)、ヘテロ環式化合物(ピリジン、チオフェン、THF)、カルボニル化合物(ホルムアルデヒド、アセトン、酢酸エチル、DMF等)、ホスフィンオキシド、ニトリル(アセトニトリル等)、窒素分子(N2)、水素分子(H)、酸素分子(O)、二酸化炭素(CO)、N-ヘテロ環状カルベン、トリフラート(CFSO)、トシラート(p-CHSO)、トリフリルイミド((CFSO)等が挙げられ、水分子(HO)、一酸化炭素(CO)、芳香族炭化水素(シクロペンタジエン、p-シメン等)、1,3-ジケトン(アセチルアセトン等)、ジメチルスルホキシド、シクロオクタジエン等が好ましい。

【0055】
一般式(1)において、mは1以上の整数である。カルボン酸化合物の水素化(還元)によるアルコールの収率の観点から、mは1~4の整数が好ましく、1又は2がより好ましく、2がさらに好ましい。

【0056】
一般式(1)において、nは1以上の整数であり、カルボン酸化合物の水素化(還元)によるアルコールの収率の観点から、1~6の整数が好ましい。なお、本発明のルテニウム錯体が単核錯体(m=1)の場合は、nは1~3の整数が好ましく、1又は2がより好ましい。また、本発明のルテニウム錯体が多核錯体(m=2)の場合は、nは2~6の整数が好ましく、3~5の整数がより好ましい。

【0057】
一般式(1)において、pは0~6の整数であり、カルボン酸化合物の水素化(還元)によるアルコールの収率の観点から、1~4の整数が好ましい。

【0058】
一般式(1)において、qは0~2の整数であり、カルボン酸化合物の水素化(還元)によるアルコールの収率の観点から、0又は1が好ましい。

【0059】
なお、ルテニウム原子に配位するリン原子の数は、ルテニウム原子の2~10倍が好ましく、2~6倍がより好ましく、2~3倍がさらに好ましい。

【0060】
本発明で使用するルテニウム錯体の好ましい例としては、例えば、一般式(1A):
Ru
[式中、Xは同じか又は異なり、それぞれハロゲン原子、又はRCOO-(Rは置換されていてもよいアルキル基、又は置換されていてもよいアリール基)で示される基;Yは前記に同じ;ZはX及びY以外の配位子;m、n及びqは前記に同じ;pは1~6の整数;ルテニウム原子に配位するリン原子の数は、ルテニウム原子の2~10倍である。]
で示される化合物(以下、ルテニウム錯体(1A)と言うこともある)が挙げられる。

【0061】
一般式(1A)において、Y、m、n、及びqは前記に同じである。

【0062】
一般式(1A)において、Xはハロゲン原子又はRCOO-であり、ハロゲン原子及びRCOO-の具体例や好ましい例は上記したとおりである。

【0063】
一般式(1A)において、ZはX及びY以外の配位子であり、その具体例や好ましい例は上記したとおりである。

【0064】
一般式(1A)において、pは1~6の整数であり、2~4の整数がより好ましい。

【0065】
このようなルテニウム錯体(1A)の好ましい例としては、例えば、一般式(1A-1):
RuX
[式中、X、Y、Z、n、p及びqは前記(一般式(1A))に同じである。]
で示される化合物(以下、ルテニウム錯体(1A-1)と言うこともある)が挙げられる。

【0066】
一般式(1A-1)において、X、Y、Z、n、p及びqは前記(一般式(1A))に同じである。

【0067】
このようなルテニウム錯体(1A-1)としては、例えば、RuCl(PPh(Phはフェニル基、以下同様)、RuCl(PPh、RuCl(OAc)(PPh(Acはアセチル基、以下同様)、RuCl(CO)(PPh、RuHCl(CO)(PPh、CpRuCl(PPh(Cpはシクロペンタジエニル基、以下同様)、CpRuCl(dppm)(dppmはビスジフェニルホスフィノメタン、以下同様)、(p-シメン)RuCl(PCy)(Cyはシクロヘキシル基)等が挙げられ、カルボン酸化合物の水素化(還元)によるアルコールの収率の観点から、RuCl(PPh、RuCl(PPh、RuCl(OAc)(PPh、RuCl(CO)(PPh、RuHCl(CO)(PPh、CpRuCl(PPh、CpRuCl(dppm)等が好ましく、RuCl(PPh、RuCl(PPh、RuCl(OAc)(PPh、RuHCl(CO)(PPh等がより好ましく、RuCl(PPh、RuCl(OAc)(PPh等がさらに好ましい。

【0068】
また、ルテニウム錯体(1A)の別の好ましい例としては、例えば、一般式(1A-2):
Ru
[式中、X、Y、Z、n、p及びqは前記(一般式(1A))に同じである。]
で示される化合物(以下、ルテニウム錯体(1A-2)と言うこともある)が挙げられる。

【0069】
一般式(1A-2)において、X、Y、Z、n、p及びqは前記(一般式(1A))に同じである。

【0070】
ルテニウム錯体(1A-2)のなかでも、カルボン酸化合物の水素化(還元)によるアルコールの収率の観点から、特に、一般式(1A-2a):

【0071】
【化7】
JP2015124153A_000008t.gif

【0072】
[式中、X~Xは同じか又は異なり、それぞれハロゲン原子;R~Rは同じか又は異なり、それぞれ置換されていてもよいアリール基;1個のRと1個のR、及び/又は1個のRと1個のRは互いに結合し、隣接する-P-Ru-P-とともに環を形成してもよい。]
で示される化合物(以下、ルテニウム錯体(1A-2a)と言うこともある)が好ましい。

【0073】
一般式(1A-2a)において、X~Xはハロゲン原子であり、例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等が挙げられ、塩素原子が好ましい。

【0074】
一般式(1A-2a)において、R~Rは置換されていてもよいアリール基であり、例えば、フェニル基、ナフチル基、ピレニル基、トルイル基、キシリル基、メシチル基、ピリジル基、フリル基、チオフェニル基、ピロリル基等が挙げられ、フェニル基が好ましい。

【0075】
ただし、1個のRと1個のR、及び/又は1個のRと1個のRは互いに結合し、隣接する-P-Ru-P-とともに環を形成してもよい。環を形成する場合、形成し得る環は、特に制限はないが、具体的には、

【0076】
【化8】
JP2015124153A_000009t.gif

【0077】
[R~Rは同じか又は異なり、前記に同じである。]
等が挙げられる。

【0078】
このように環を形成する場合も、R~Rは置換されていてもよいアリール基であり、例えば、フェニル基、ナフチル基、ピレニル基、トルイル基、キシリル基、メシチル基、ピリジル基、フリル基、チオフェニル基、ピロリル基等が挙げられ、フェニル基が好ましい。

【0079】
上記説明したルテニウム錯体(1A-2a)としては、例えば、

【0080】
【化9】
JP2015124153A_000010t.gif

【0081】
[3,5-xylylは3,5-キシリル基である;以下同様]
等が挙げられ、カルボン酸化合物の水素化(還元)によるアルコールの収率の観点から、ルテニウム錯体(1A-2a1a)等が好ましい。

【0082】
本発明で使用されるルテニウム錯体のさらに他の好ましい態様としては、一般式(1B):

【0083】
【化10】
JP2015124153A_000011t.gif

【0084】
[式中、R及びR10は同じか又は異なり、それぞれ置換されていてもよいアルキル基、又は置換されていてもよいアリール基;実線と破線で示される結合は、単結合又は二重結合である。]
で示される化合物も挙げられる。

【0085】
及びR10は置換されていてもよいアルキル基又は置換されていてもよいアリール基であり、その具体例は、上記したもの等が挙げられる。好ましい例も同様である。

【0086】
このような条件を満たすルテニウム錯体としては、具体的には、

【0087】
【化11】
JP2015124153A_000012t.gif

【0088】
等が挙げられる。

【0089】
その他、ルテニウム錯体としては、Ru(NHCl、Ru(NHCl、RuCl及びその水和物、RuI及びその水和物、ニトロシル硝酸ルテニウム(III)、ニトロシル塩化ルテニウム(III)、酢酸ルテニウム(III)、トリフルオロ酢酸ルテニウム(III)、ジクロロ(1,5-シクロオクタジエン)ルテニウム(II)ポリマー、ジクロロ(ペンタメチルシクロペンタジエニル)ルテニウム(II)ポリマー、ジクロロ(p-シメン)ルテニウム(II)ダイマー、ジクロロ(ヘキサメチルベンゼン)ルテニウム(II)ダイマー、ジクロロ(メシチレン)ルテニウム(II)ダイマー、ベンゼンルテニウム(II)クロリドダイマー、テトラキス(ジメチルスルホキシド)ジクロロルテニウム(II)、クロロ(ペンタメチルシクロペンタジエニル)(シクロオクタジエン)ルテニウム(II)、トリカルボニルジクロロルテニウム(II)ダイマー、ドデカカルボニル三ルテニウム等も使用できる。

【0090】
本発明で使用されるルテニウム錯体としては、ルテニウム錯体(1A-2)又はルテニウム錯体(1B)が好ましくなかでも、ルテニウム錯体(1A-2a)又はルテニウム錯体(1B)が特に好ましい。

【0091】
このようなルテニウム錯体は、公知又は市販のものを用いてもよいし、合成してもよい。

【0092】
(2)アルカリ金属塩
本発明において、アルカリ金属塩は、カルボン酸か符合物を水素化して、エステルや環状エステル等の中間体を経ることなく、アルコールを得るために使用されるが、反応系中でカチオン性のルテニウム錯体を形成させることにより、酸性条件下においても、カルボン酸化合物を水素化して、アルコールを得ることができる。

【0093】
このような観点から、アルカリ金属塩としては、塩基性が低く、イオン性が高いものが好ましい。ただし、カルボン酸を過剰量使用すれば、強塩基(NaH等)を用いても反応を進行させることができる。

【0094】
このようなアルカリ金属塩としては、一般式(3):
MW
[式中、Mはアルカリ金属;
Wは、
-BR(Rは同じか又は異なり、それぞれ置換されていてもよいアルキル基、又は置換されていてもよいアリール基)、
-N(SO(Rは同じか又は異なり、それぞれ置換されていてもよいアルキル基、又は置換されていてもよいアリール基)、
-OR(Rは同じか又は異なり、それぞれ置換されていてもよいアルキル基、置換されていてもよいアリール基、又は-SO(Rは置換されていてもよいアルキル基、置換されていてもよいアリール基で示される基))、又は
β-ジケトネートである。]
で示される塩が好ましい。

【0095】
アルカリ金属としては、特に制限はなく、リチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウム、セシウム等が挙げられ、カルボン酸化合物の水素化(還元)によるアルコールの収率の観点から、ナトリウム、カリウム、セシウム等が好ましい。

【0096】
Wで示される-BRにおけるRとしては、上記Rで示されるアルキル基又はアリール基と同様のものが挙げられる。置換基も同様のものが挙げられる。なかでも、カルボン酸化合物の水素化(還元)によるアルコールの収率の観点から、置換又は非置換アリール基が好ましく、置換又は非置換フェニル基が特に好ましい。このような-BRとしては、例えば、テトラフェニルボレート、[3,5-(トリフルオロメチル)フェニル]ボレート等が挙げられる。

【0097】
Wで示される-N(SOにおけるRとしては、上記Rで示されるアルキル基又はアリール基と同様のものが挙げられる。置換基も同様のものが挙げられる。なかでも、カルボン酸化合物の水素化(還元)によるアルコールの収率の観点から、置換又は非置換アルキル基が好ましく、置換又は非置換のメチル基、エチル基、プロピル基等が特に好ましい。このような-N(SOとしては、例えば、NTf(Tfはトリフルオロメタンスルホニル基、以下同様)等が挙げられる。

【0098】
Wで示される-ORにおけるRとしては、上記Rで示されるアルキル基と同様のものが挙げられる。置換基も同様のものが挙げられる。

【0099】
また、-ORにおけるRは、置換されていてもよいアシル基であってもよい。アシル基としては、例えば、ホルミル基、アセチル基、プロピオニル基等が挙げられ、アセチル基が好ましい。置換基を有する場合、置換基としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子等のハロゲン原子、メチル基、エチル基等のアルキル基;メトキシ基、エトキシ基等のアルコキシ基;ニトロ基;アミノ基;ヒドロキシ基;シアノ基;トリメチルシリル基等のシリル基;チオール基等が挙げられる。置換基で置換されている場合の置換基の数は、例えば1~3個程度とすることができる。

【0100】
さらに、-ORにおけるRは、-SO(Rは置換されていてもよいアルキル基、置換されていてもよいアリール基で示される基)で示される基であってもよい。ここで、Rは、上記Rで示されるアルキル基又はアリール基と同様のものが挙げられる。置換基も同様のものが挙げられる。

【0101】
なかでも、Wで示される-ORにおけるRとしては、カルボン酸化合物の水素化(還元)によるアルコールの収率の観点から、置換又は非置換アシル基、又は-SOが好ましく、アセチル基、トシル基等が特に好ましい。

【0102】
このようなWで示される-ORとしては、例えば、-OCOCH、-OTs(Tsはトシル基、以下同様)等が挙げられる。

【0103】
β-ジケトネートとしては、例えば、アセチルアセトン等が挙げられる。

【0104】
このような条件を満たすアルカリ金属塩としては、例えば、LiBPh、LiB(3,5-(CFPh)、NaBPh、NaB(3,5-(CFPh)、KBPh、KB(3,5-(CFPh)、CsBPh、CsB(3,5-(CFPh)、LiOTs、NaOTs、KOTs、CsOTs、LiNTf、NaNTf、KNTf、CsNTf、LiOTf、NaOTf、KOTf、CsOTf、LiH、NaH、KH、CsH、Li(acac)(acacはアセチルアセトナト;以下同様)、Na(acac)、K(acac)、Cs(acac)、LiOAc、NaOAc、KOAc、CsOAc、LiOH、NaOH、KOH、CsOH、Li(Ot-Bu)(t-Buはtert-ブチル基;以下同様)、Na(Ot-Bu)、K(Ot-Bu)、Cs(Ot-Bu)等が挙げられ、カルボン酸化合物の水素化(還元)によるアルコールの収率の観点から、LiBPh、NaBPh、KBPh、CsBPh、LiOTs、NaOTs、KOTs、CsOTs等が好ましく、NaBPh、KBPh、CsBPh、NaOTs等がより好ましい。なお、これらのアルカリ金属塩は、単独で用いてもよいし、2種以上を組合せて用いてもよい。また、アルカリ金属塩は、そのまま用いることもできるし、水和物又は溶媒和物といて用いてもよい。ただし、カルボン酸化合物の水素化(還元)によるアルコールの収率の観点から、そのまま用いることが好ましい。

【0105】
(3)リン原子を1個以上含む配位子Y’
本発明の製造方法においては、上記のとおり、ルテニウム錯体中に配位子を導入しておいてもよいが、ルテニウム錯体とは別途、リン原子を1個以上含む配位子Y’を投入してもよい。この際使用できる配位子Y’としては、特に制限されないが、上記した配位子Yと同様の配位子を使用できる。

【0106】
つまり、単座配位子、二座配位子、三座配位子及び四座配位子のいずれも使用でき、置換されていてもよいアリール基を有することが好ましい。なかでも、トリフェニルホスフィン、トリ(4-フルオロフェニル)ホスフィン、トリ(3-トリル)ホスフィン、トリ(4-トリル)ホスフィン、トリス[4-(トリフルオロメチル)フェニル]ホスフィン、トリ(4-アニシル)ホスフィン、トリ(2,4,6-トリメトキシフェニル)ホスフィン、トリ-2-フラニルホスフィン、1,2-ビス(ジフェニルホスフィノ)エタン、1,2-ビス(ジフェニルホスフィノ)ベンゼン、4,5-ビス(ジフェニルホスフィノ)-9,9-ジメチルキサンテン、1,1,1-トリス(ジフェニルホスフィノメチル)エタン、トリス(2-ジフェニルホスフィノエチル)ホスフィン等が好ましい。

【0107】
(4)水素化反応
本発明の製造方法では、具体的には、ルテニウム錯体、アルカリ金属塩及び必要に応じて配位子の存在下に、基質(カルボン酸化合物)に水素を添加して水素化反応を引起こし、アルコールを得る。

【0108】
反応に供される基質としては、カルボン酸化合物であれば特に制限はなく、広範なカルボン酸化合物を使用できる。この点において、本発明は、特殊な基質に対してしか水素化反応を起こすことができず、また、基質によって錯体を変える必要が生じる従来技術と比較して有用である。

【0109】
本発明においては、カルボキシル基を1個のみ有するカルボン酸のみならず、これらの基を複数有するカルボン酸化合物も、水素化反応を引起こしてアルコールを得ることができる。つまり、分子内エステル化し得ないようなカルボン酸も含めて、種々多様なカルボン酸化合物を水素化してアルコールを得ることもできる。

【0110】
なお、基質がカルボキシル基以外に官能基(ケトン基、エーテル基、エステル基、アミド結合、二重結合等)を有する場合は、カルボキシル基と同様に水素化させることもできるし、カルボキシル基以外の官能基を保護し、カルボキシル基のみを水素化(還元)することもできる。官能基の保護は、常法にしたがい行うことができる。基質がカルボキシル基を複数有する場合も同様である。

【0111】
ただし、カルボン酸化合物の水素化(還元)によるアルコールの収率の観点から、カルボキシル基以外の官能基を有さないことが好ましく、カルボキシル基を1個のみ有し、他の官能基を有さないカルボン酸化合物がより好ましい。

【0112】
このような基質としては、広範なカルボン酸化合物を使用できるが、例えば、酢酸、プロピオン酸、酪酸、吉草酸、ヘキサン酸、ヘプタン酸、オクタン酸、ノナン酸、デカン酸、安息香酸、3-フェニルプロピオン酸、3-シクロヘキシルプロピオン酸、3-(4-クロロフェニル)アクリル酸、ギ酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、ペンタデシル酸、パルミチン酸、パルミトレイン酸、マルガリン酸、ステアリン酸、オレイン酸、バクセン酸、リノール酸、リノレン酸、3-ヒドロキシプロピオン酸、乳酸、マロン酸、リンゴ酸、フマル酸、コハク酸、キシロン酸、グルタル酸、イタコン酸、レブリン酸、アコニチン酸、クエン酸、グルコン酸、グルカル酸、リジン、グルタミン酸、2、5-フランジカルボン酸、アスパラギン酸、セリン、スレオニン等を使用できる。

【0113】
ルテニウム錯体の使用量は、基質(カルボン酸化合物)の種類により適宜選択することが可能であり、カルボン酸化合物の水素化(還元)によるアルコールの収率の観点から、例えば、基質(カルボン酸化合物)1モルに対して、通常、0.0001~1モル程度、好ましくは0.001~0.1モル程度、より好ましくは0.003~0.07モル程度とすることができる。

【0114】
本発明の製造方法においては、反応系を酸性の反応条件とすることが好ましい。詳細には、基質(カルボン酸化合物)の量をアルカリ金属塩に対して過剰量とすることが好ましい。具体的には、アルカリ金属塩の使用量は、カルボン酸化合物の水素化(還元)によるアルコールの収率の観点から、基質(カルボン酸化合物)1モルに対して、通常、0.02~1モル、好ましくは0.03~0.5モル、より好ましくは0.04~0.2モルとすることができる。

【0115】
また、アルカリ金属塩の使用量は、ルテニウム錯体に対して過剰量とすることが好ましく、具体的には、カルボン酸化合物の水素化(還元)によるアルコールの収率の観点から、ルテニウム錯体1モルに対して、通常、2~100モル、好ましくは3~50モル、より好ましくは4~20モルとすることができる。

【0116】
配位子を投入する場合、配位子の使用量は、カルボン酸化合物の水素化(還元)によるアルコールの収率の観点から、例えば、ルテニウム錯体1モルに対して、通常、0.05~100モル、好ましくは0.5~10モル、より好ましくは1~5モルとすることができる。

【0117】
本発明の水素化は、溶媒中で行うことが好ましい。

【0118】
溶媒としては、例えば、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、テトラヒドロフラン(THF)、ジオキサン(1,4-ジオキサン等)、t-ブチルメチルエーテル、シクロペンチルメチルエーテル、1,2-ジメトキシエタン、ジグライム、トリグライム等のエーテル;ベンゼン、トリフルオロメチルベンゼン、トルエン、キシレン、メシチレン等の芳香族炭化水素;ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、シクロペンタン、シクロヘキサン、オクタン、ノナン、デカン、石油エーテル等の脂肪族炭化水素;イソプロパノール、n-ブチルアルコール、tert-ブチルアルコール、sec-ブチルアルコール等の分岐状C3~6アルコール等が挙げられる。これらの溶媒は単独で用いてもよいし、2種以上を組合せて用いてもよい。これらのうち、芳香族炭化水素又はC3~C6アルコールが好ましく、トリフルオロメチルベンゼン、トルエン、メシチレン、tert-ブチルアルコール等がより好ましく、トルエンが特に好ましい。

【0119】
本発明の水素化工程では、基質(カルボン酸化合物)に対して水素を添加するが、水素としては水素ガスを用いることができる。水素化中の水素の分圧(水素圧)は、カルボン酸化合物の水素化(還元)によるアルコールの収率の観点から、通常、0.1~20MPa程度、好ましくは0.5~10MPa程度、より好ましくは0.7~8MPa程度とすることができる。

【0120】
反応温度及び反応時間は、基質(カルボン酸化合物)の種類により変動し得るが、カルボン酸化合物の水素化(還元)によるアルコールの収率の観点から、反応温度は、通常、0~190℃程度、好ましくは10~170℃程度、より好ましくは20~160℃程度とすることができる。反応時間は、水素化(還元)におけるアルコールの収率の観点から、通常、10分~50時間程度、好ましくは1~30時間程度とすることができる。本反応では、通常、オートクレーブ等を用いることができる。

【0121】
本発明の水素化では、水素の存在下又は非存在下にルテニウム錯体、アルカリ金属塩及び必要に応じて配位子を反応させた後、水素の存在下に基質(カルボン酸化合物)を反応させることもできる。ルテニウム錯体、アルカリ金属塩及び必要に応じて配位子の反応により、一旦水素化還元能の高い触媒活性種が調製されるため、これと基質(カルボン酸化合物)を反応させることにより効率よく水素添加反応物を得ることができる。この場合、いずれの反応においても、条件は上記と同様とすることができる。

【0122】
反応終了後は、通常の単離及び精製工程を経て、水素添加反応物(アルコール)を得ることができる。

【0123】
2.第2の態様(製造方法)
本発明の第2の態様におけるアルコールの製造方法は、ルテニウム錯体及びリン原子を1個以上含む配位子Y”の存在下に、水素雰囲気下でカルボン酸化合物を水素化する工程を備える。

【0124】
(1)ルテニウム錯体
本発明において使用されるルテニウム錯体としては、特に制限されない。なかでも、特に好ましいルテニウム錯体の一例としては、カルボン酸化合物の水素化(還元)によるアルコールの収率の観点から、一般式(2):

【0125】
【化12】
JP2015124153A_000013t.gif

【0126】
[式中、R及びR10は前記に同じ;実線と破線で示される結合は、単結合又は二重結合である。]
で示される化合物が挙げられる。

【0127】
及びR10は前記に同じであり、その具体例や好ましい例も同様である。

【0128】
このような条件を満たすルテニウム錯体としては、具体的には、

【0129】
【化13】
JP2015124153A_000014t.gif

【0130】
等が挙げられる。

【0131】
また、本発明において、好ましいルテニウム錯体の他の好ましい例としては、例えば、ビス(2、4-ジメチルペンタジエニル)ルテニウム(II)、ビス(2-メチルアリル)(1、5-シクロオクタジエン)ルテニウム(II)、ビス(シクロペンタジエニル)ルテニウム(II)、ビス(エチルシクロペンタジエニル)ルテニウム(II)、トリス(アセトニトリル)シクロペンタジエニルルテニウム(II)ヘキサフルオロホスファート、ビス(ペンタメチルシクロペンタジエニル)ルテニウム(II)等が挙げられる。

【0132】
(2)リン原子を1個以上含む配位子Y”
本発明の水素化工程においては、配位子Y”は、カルボン酸化合物を水素化して、エステルや環状エステル等の中間体を経ることなく、アルコールを得るために使用される。この際使用できる配位子Y”としては、上記したリン原子を1個以上含む配位子Yと同様の配位子が挙げられる。

【0133】
つまり、単座配位子、二座配位子、三座配位子及び四座配位子のいずれも使用でき、置換されていてもよいアリール基を有することが好ましい。なかでも、トリ(3,5-キシリル)ホスフィン、1,3-ビス(ジフェニルホスフィノ)プロパン、1,4-ビス(ジフェニルホスフィノ)ブタン、1,5-ビス(ジフェニルホスフィノ)ペンタン、2,2’-ビス(ジフェニルホスフィノ)-1,1’-ビナフチル、1,1’-ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセン、ビス(2-ジフェニルホスフィノエチル)フェニルホスフィン、又は1,1,1-トリス(ジフェニルホスフィノメチル)エタン等が好ましい。

【0134】
(3)水素化反応
本発明の製造方法では、具体的には、ルテニウム錯体及び配位子の存在下に、基質(カルボン酸化合物)に水素を添加して水素化反応を引起こし、アルコールを得る。

【0135】
反応に供される基質としては、カルボン酸化合物であれば特に制限はなく、広範なカルボン酸化合物を使用できる。この点において、本発明は、特殊な基質に対してしか水素化反応を起こすことができず、また、基質によって錯体を変える必要が生じる従来技術と比較して有用である。

【0136】
本発明においては、カルボキシル基を1個のみ有するカルボン酸のみならず、これらの基を複数有するカルボン酸化合物も、水素化反応を引起こしてアルコールを得ることができる。つまり、分子内エステル化し得ないようなカルボン酸も含めて、種々多様なカルボン酸化合物を水素化してアルコールを得ることもできる。

【0137】
なお、基質がカルボキシル基以外に官能基(ケトン基、エーテル基、エステル基、アミド結合、二重結合等)を有する場合は、カルボキシル基と同様に水素化させることもできるし、カルボキシル基以外の官能基を保護し、カルボキシル基のみを水素化(還元)することもできる。官能基の保護は、常法にしたがい行うことができる。基質がカルボキシル基を複数有する場合も同様である。

【0138】
ただし、カルボン酸化合物の水素化(還元)によるアルコールの収率の観点から、カルボキシル基以外の官能基を有さないことが好ましく、カルボキシル基を1個のみ有し、他の官能基を有さないカルボン酸化合物がより好ましい。

【0139】
このような基質としては、広範なカルボン酸化合物を使用でき、第1の態様と同様の基質を用いることができる。好ましい具体例も同様である。

【0140】
ルテニウム錯体の使用量は、基質(カルボン酸化合物)の種類により適宜選択することが可能であり、カルボン酸化合物の水素化(還元)によるアルコールの収率の観点から、例えば、基質(カルボン酸化合物)1モルに対して、通常、0.0001~1モル程度、好ましくは0.001~0.1モル程度、より好ましくは0.003~0.07モル程度とすることができる。

【0141】
また、配位子の使用量は、カルボン酸化合物の水素化(還元)によるアルコールの収率の観点から、例えば、ルテニウム錯体1モルに対して、通常、0.05~100モル、好ましくは0.5~10モル、より好ましくは1~5モルとすることができる。

【0142】
本発明の水素化は、溶媒中で行うことが好ましい。

【0143】
溶媒としては、上記の第1の態様と同様の溶媒を用いることができる。好ましい具体例も同様である。

【0144】
本発明の水素化工程では、基質(カルボン酸化合物)に対して水素を添加するが、水素としては水素ガスを用いることができる。水素化中の水素の分圧(水素圧)は、カルボン酸化合物の水素化(還元)によるアルコールの収率の観点から、通常、0.1~20MPa程度、好ましくは0.5~10MPa程度、より好ましくは0.7~8MPa程度とすることができる。

【0145】
反応温度及び反応時間は、基質(カルボン酸化合物)の種類により変動し得るが、カルボン酸化合物の水素化(還元)によるアルコールの収率の観点から、反応温度は、通常、0~190℃程度、好ましくは10~170℃程度、より好ましくは20~160℃程度とすることができる。反応時間は、水素化(還元)におけるアルコールの収率の観点から、通常、10分~50時間程度、好ましくは1~30時間程度とすることができる。本反応では、通常、オートクレーブ等を用いることができる。

【0146】
本発明の水素化では、水素の存在下又は非存在下にルテニウム錯体、アルカリ金属塩及び必要に応じて配位子を反応させた後、水素の存在下に基質(カルボン酸化合物)を反応させることもできる。ルテニウム錯体、アルカリ金属塩及び必要に応じて配位子の反応により、一旦水素化還元能の高い触媒活性種が調製されるため、これと基質(カルボン酸化合物)を反応させることにより効率よく水素添加反応物を得ることができる。この場合、いずれの反応においても、条件は上記と同様とすることができる。

【0147】
反応終了後は、通常の単離及び精製工程を経て、水素添加反応物(アルコール)を得ることができる。

【0148】
3.第3の態様(新規ルテニウム錯体)
上記説明した本発明の製造方法(特に第1の態様)で使用するルテニウム錯体のうち、一般式(1A-2a1):

【0149】
【化14】
JP2015124153A_000015t.gif

【0150】
[式中、X~Xは同じか又は異なり、それぞれハロゲン原子;R~Rは同じか又は異なり、それぞれ置換されていてもよいアリール基である(RとR、RとRが結合し、隣接する-P-Ru-P-とともに環を形成することはない)。]
で示される化合物は、例えば、

【0151】
【化15】
JP2015124153A_000016t.gif

【0152】
等が挙げられるが、文献未記載の新規化合物である。

【0153】
この化合物群は、カルボン酸化合物を水素化反応させて、アルコールを製造するための触媒として用いることができる。特に、本発明の製造方法に用いることができる。

【0154】
以下、本発明の新規ルテニウム錯体は、例えば、以下の反応式:

【0155】
【化16】
JP2015124153A_000017t.gif

【0156】
[式中、X~X及びR~Rは前記(一般式(1A-2a1))に同じ;Xは同じか又は異なり、それぞれハロゲン原子であり、X~Xのいずれかと同じ;Rは同じか又は異なり、それぞれ置換されていてもよいアリール基であり、R~Rのいずれかと同じである。]
にしたがって合成することができる。

【0157】
原料として使用するRuXで示される化合物は、ルテニウムハロゲン化物である。式中、Xはいずれもハロゲン原子であり、その具体例は上述したものが挙げられる。また、Xは、最終的に得られる新規ルテニウム錯体におけるX~Xのいずれかと同じものである。

【0158】
このようなルテニウムハロゲン化物としては、具体的には、RuCl、RuBr、RuF、RuI等が使用できる。これらは、そのまま用いてもよいし、水和物又は溶媒和物として用いてもよい。

【0159】
また、配位子として使用するPRは、上記説明したリン原子を1個以上含む配位子Yと同じものである。また、Rは、置換されていてもよいアリール基であり、最終的に得られる新規ルテニウム錯体におけるR~Rのいずれかと同じものである。

【0160】
配位子PRの使用量は、ルテニウムハロゲン化物に対して過剰量とすることが好ましく、具体的には、カルボン酸化合物の水素化(還元)によるアルコールの収率の観点から、ルテニウムハロゲン化物1モルに対して、通常、2~100モル、好ましくは3~50モル、より好ましくは4~20モルとすることができる。

【0161】
この反応は、通常溶媒中で実施することができる。溶媒としては、例えば、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン(THF)、ジオキサン、t-ブチルメチルエーテル、シクロペンチルメチルエーテル、1,2-ジメトキシエタン、ジグライム等のエーテル;ベンゼン、トルエン、キシレン、メシチレン等の芳香族炭化水素;ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、シクロペンタン、シクロヘキサン、オクタン、ノナン、デカン、石油エーテル等の脂肪族炭化水素;メタノール、エタノール、イソプロパノール、n-ブチルアルコール、tert-ブチルアルコール、sec-ブチルアルコール等の分岐状C1~6アルコール等が挙げられる。これらの溶媒は単独で用いてもよいし、2種以上を組合せて用いてもよい。これらのうち、芳香族炭化水素又はC1~C6アルコールが好ましく、C1~C6アルコールがより好ましく、メタノール、エタノール等が特に好ましい。

【0162】
反応雰囲気は、特に制限されないが、不活性ガス雰囲気とすることが好ましい。具体的には、窒素ガス雰囲気、アルゴンガス雰囲気等とすればよい。

【0163】
反応温度及び反応時間は、ルテニウムハロゲン化物の種類により変動し得るが、収率の観点から、反応温度は、通常、0~190℃程度、好ましくは10~170℃程度、より好ましくは20~160℃程度とすることができる。反応時間は、収率の観点から、通常、10分~50時間程度、好ましくは20分~30時間程度とすることができる。本反応では、通常、オイルバス等を用いることができる。

【0164】
反応終了後は、通常の単離及び精製工程を経て、新規ルテニウム錯体を得ることができる。
【実施例】
【0165】
次いで、実施例を挙げて本発明について説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【実施例】
【0166】
[合成例1:ルテニウム錯体2aの合成]
【実施例】
【0167】
【化17】
JP2015124153A_000018t.gif
【実施例】
【0168】
アルゴンガスで置換された75mLのヤングシュレンク容器に、撹拌子、塩化ルテニウム水和物(RuCl3・nH2O:Ru含有量40%、125.7mg、0.50 mmol)及び約30分間の窒素バブリングによって脱気した脱水メタノール(25mL)を収容した。その後、ヤングシュレンク容器を、オイルバス内に配置し、ヤングシュレンク容器内の成分を撹拌しながら、80℃に加熱し、反応させたところ、反応溶液の色が茶色から深緑色に変化した。1時間後に加熱を終了し、反応溶液の温度を室温に戻した。その後、アルゴンガスを容器内に導入しながらトリ(3,5-キシリル)ホスフィン(1039.4mg、3.0mmol)と前述のように脱気した脱水メタノール(10mL)を加え、オイルバスを用いて80℃に加熱し、24時間反応させたところ反応溶液の色が赤色に変化し、茶褐色の結晶が生成した。
【実施例】
【0169】
次に、上記反応液の温度が下がる前に、生成した茶褐色結晶をアルゴンガス雰囲気下、熱メタノールで洗浄しながら濾取し、減圧下で乾燥させ、赤褐色結晶である上記ルテニウム錯体179.6mg(0.10mmol、41%)を得た。
【実施例】
【0170】
得られたルテニウム錯体2aのスペクトルデータは以下の通りであった。
31P{1H} NMR (243MHz, C6D6): δ 61.1 (d, J = 39.5 Hz), 52.1 (d, J = 39.5 Hz), HRMS (ESI, (RuCl{P(3,5-xylyl)3}2)+) Calcd for C48H54ClP2Ru+: 829.2433. Found m/z = 829.2580。
【実施例】
【0171】
なお、得られたルテニウム錯体2aのX線単結晶構造解析の結果(ORTEP)を図1に示す。なお、構造を明確にするために、水素原子は省略している。
【実施例】
【0172】
[実施例1:第1の態様の例]
実施例1-1
【実施例】
【0173】
【化18】
JP2015124153A_000019t.gif
【実施例】
【0174】
以下の方法により、3-フェニルプロピオン酸の還元(水素化)を行った。
【実施例】
【0175】
乾燥したガラス製のチューブ(30mL)に、撹拌子、3-フェニルプロピオン酸(150.2mg、1.0mmol)、合成例1で得たルテニウム錯体2a(17.5mg、0.010mmol)、テトラフェニルホウ酸ナトリウム(34.2mg、0.10mmol)を収容し、この混合物を含むチューブを、オートクレーブ内に挿入した。次いで、オートクレーブ内をアルゴンガス雰囲気に置換した後、アルゴンガスを流し続けながら脱水トルエン(3.0mL)を加えた。このオートクレーブに、ステンレス管を介して接続した水素ガスボンベから水素ガスを導入し、オートクレーブ内を水素ガスで置換した。すなわち、オートクレーブ内に1.5MPaの水素ガス圧をかけ、その後、リークバルブから水素ガス圧を抜いた。この操作(置換-脱置換)を10回繰り返した。最後に、オートクレーブ内の水素ガス圧を4MPaに設定し、恒温槽を用いて、160℃で24時間反応させた。
【実施例】
【0176】
反応終了後、オートクレーブを氷浴に浸して冷却し、ほぼ室温とした。そして、オートクレーブのリークバルブを静かに開放し、内部にある水素ガスを空気中に放出した。次に、オートクレーブからチューブを取り出し、反応生成物(溶液)を得た。この溶液を、クロロホルムを用いて100mLナスフラスコに移した後、エバポレーターで減圧濃縮した。1H NMR解析のため、内部標準物質(メシチレン)を加えた。この内部標準物質の水素原子量の積分値を基準として、反応生成物の収率を算出した。その結果、3-フェニルプロピルアルコール及び3-フェニルプロピオン酸3-フェニルプロピルの収率は、それぞれ65%及び12%であった。
【実施例】
【0177】
本実施例1-1の結果は、後述する表1のエントリー2に相当する。
【実施例】
【0178】
実施例1-2
上記実施例1-1において、基質、ルテニウム錯体、添加剤(アルカリ金属塩)、及び水素化条件について、表1に記載された条件を採用すること以外は、実施例1-1と同様にして還元(水素化)を行った。なお、合成例1で合成したルテニウム錯体2a以外の原料は、市販品又は公知の方法により合成したものを使用した。その結果を表1に示す。
【実施例】
【0179】
【表1】
JP2015124153A_000020t.gif
【実施例】
【0180】
【化19】
JP2015124153A_000021t.gif
【実施例】
【0181】
[実施例2:第2の態様の例]
実施例2-1
【実施例】
【0182】
【化20】
JP2015124153A_000022t.gif
【実施例】
【0183】
以下の方法により、3-フェニルプロピオン酸の還元(水素化)を行った。
【実施例】
【0184】
乾燥したガラス製のチューブ(30mL)に、撹拌子、3-フェニルプロピオン酸(150.2mg、1.0mmol)、トリス(アセチルアセトナト)ルテニウム(8.0mg、0.020mmol)、1,4-ビス(ジフェニルホスフィノ)ブタン(8.5mg、0.020mmol)を収容し、この混合物を含むチューブを、オートクレーブ内に挿入した。次いで、オートクレーブ内をアルゴンガス雰囲気に置換した後、アルゴンガスを流し続けながら脱水トルエン(3.0mL)を加えた。このオートクレーブに、ステンレス管を介して接続した水素ガスボンベから水素ガスを導入し、オートクレーブ内を水素ガスで置換した。すなわち、オートクレーブ内に0.8MPaの水素ガス圧をかけ、その後、リークバルブから水素ガス圧を抜いた。この操作(置換-脱置換)を10回繰り返した。最後に、オートクレーブ内の水素ガス圧を1MPaに設定し、恒温槽を用いて、160℃で24時間反応させた。
【実施例】
【0185】
反応終了後、オートクレーブを氷浴に浸して冷却し、ほぼ室温とした。そして、オートクレーブのリークバルブを静かに開放し、内部にある水素ガスを空気中に放出した。次に、オートクレーブからチューブを取り出し、反応生成物 (溶液)を得た。この溶液を、クロロホルムを用いて100mLナスフラスコに移した後、エバポレーターで減圧濃縮した。1H NMR解析のため、内部標準物質(メシチレン)を加えた。この内部標準物質の水素原子量の積分値を基準として、反応生成物の収率を算出した。その結果、3-フェニルプロピルアルコール及び3-フェニルプロピオン酸3-フェニルプロピルの収率は、それぞれ45%及び16%であった。
【実施例】
【0186】
本実施例2-1の結果は、後述する表2のエントリー1に相当する。
【実施例】
【0187】
実施例2-2
上記実施例2-1において、表2に記載された条件を採用すること以外は、実施例2-1と同様にして還元(水素化)を行った。その結果を表2に示す。
【実施例】
【0188】
【表2】
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【実施例】
【0189】
【化21】
JP2015124153A_000024t.gif
【実施例】
【0190】
[実施例3:ルテニウム錯体に対する配位子添加の効果(その1)]
【実施例】
【0191】
【化22】
JP2015124153A_000025t.gif
【実施例】
【0192】
実施例3-1
以下の方法により、3-フェニルプロピオン酸の還元(水素化)を行った。
【実施例】
【0193】
乾燥したガラス製のチューブ(30mL)に、撹拌子、3-フェニルプロピオン酸(150.2mg、1.0mmol)、ジクロロテトラキス(ジメチルスルホキシド)ルテニウム(II)(cis-RuCl2(dmso)4)(9.69mg、0.020mmol)、テトラフェニルホウ酸ナトリウム(34.2mg、0.10mmol)、及びトリフェニルホスフィン(10.49mg、0.04mmol)を収容し、この混合物を含むチューブを、オートクレーブ内に挿入した。次いで、オートクレーブ内をアルゴンガス雰囲気に置換した後、アルゴンガスを流し続けながら脱水トルエン(3.0mL)を加えた。このオートクレーブに、ステンレス管を介して接続した水素ガスボンベから水素ガスを導入し、オートクレーブ内を水素ガスで置換した。すなわち、オートクレーブ内に1.5MPaの水素ガス圧をかけ、その後、リークバルブから水素ガス圧を抜いた。この操作(置換-脱置換)を10回繰り返した。最後に、オートクレーブ内の水素ガス圧を8MPaに設定し、恒温槽を用いて、160℃で24時間反応させた。
【実施例】
【0194】
反応終了後、オートクレーブを氷浴に浸して冷却し、ほぼ室温とした。そして、オートクレーブのリークバルブを静かに開放し、内部にある水素ガスを空気中に放出した。次に、オートクレーブからチューブを取り出し、反応生成物(溶液)を得た。この溶液を、クロロホルムを用いて100mLナスフラスコに移した後、エバポレーターで減圧濃縮した。1H NMR解析のため、内部標準物質(メシチレン)を加えた。この内部標準物質の水素原子量の積分値を基準として、反応生成物の収率を算出した。その結果、3-フェニルプロピルアルコール及び3-フェニルプロピオン酸3-フェニルプロピルの収率は、それぞれ31%及び15%であった。
【実施例】
【0195】
本実施例3-1の結果は、後述する表3のエントリー2に相当する。
【実施例】
【0196】
実施例3-2
上記実施例3-1において、表3に記載された条件を採用すること以外は、実施例3-1と同様にして還元(水素化)を行った。その結果を表3に示す。
【実施例】
【0197】
【表3】
JP2015124153A_000026t.gif
【実施例】
【0198】
[実施例4:ルテニウム錯体に対する配位子添加の効果(その2)]
【実施例】
【0199】
【化23】
JP2015124153A_000027t.gif
【実施例】
【0200】
上記表3のentry 3において、表4に記載された条件を採用すること以外は、表3のentry 3と同様にして水素還元(水素化反応)を行った。その結果を表4に示す。なお、表3のentry 3と表4のentry 1とは同じ条件である。
【実施例】
【0201】
【表4】
JP2015124153A_000028t.gif
【実施例】
【0202】
[実施例5:ルテニウム錯体に対するアルカリ金属塩添加の効果(その1)]
【実施例】
【0203】
【化24】
JP2015124153A_000029t.gif
【実施例】
【0204】
上記表1のentry 5において、表5に記載された条件を採用すること以外は、表1のentry 5と同様にして還元(水素化)を行った。その結果を表5に示す。なお、表1のentry 5と表5のentry 2とは同じ条件である。
【実施例】
【0205】
【表5】
JP2015124153A_000030t.gif
【実施例】
【0206】
[実施例6:ルテニウム錯体に対する溶媒添加の効果]
【実施例】
【0207】
【化25】
JP2015124153A_000031t.gif
【実施例】
【0208】
上記表1のentry 5において、表6に記載された条件を採用すること以外は、表1のentry 5と同様にして還元(水素化)を行った。その結果を表6に示す。なお、表1のentry 5と表6のentry 1とは同じ条件である。
【実施例】
【0209】
【表6】
JP2015124153A_000032t.gif
【実施例】
【0210】
[実施例7:ルテニウム錯体に対して添加する溶媒量の効果]
【実施例】
【0211】
【化26】
JP2015124153A_000033t.gif
【実施例】
【0212】
上記表1のentry 5において、表7に記載された条件を採用すること以外は、表1のentry 5と同様にして還元(水素化)を行った。その結果を表7に示す。なお、表1のentry 5と表7のentry 2とは同じ条件である。
【実施例】
【0213】
【表7】
JP2015124153A_000034t.gif
【実施例】
【0214】
[実施例8:ルテニウム錯体に対する配位子添加の効果(その3)]
【実施例】
【0215】
【化27】
JP2015124153A_000035t.gif
【実施例】
【0216】
実施例8-1
以下の方法により、3-フェニルプロピオン酸の還元(水素化)を行った。
【実施例】
【0217】
乾燥したガラス製のチューブ(30mL)に、撹拌子、3-フェニルプロピオン酸(150.2mg、1.0mmol)、ジクロロトリス(トリフェニルホスフィン)ルテニウム(II)(RuCl2(PPh3)3)(19.18mg、0.020mmol)、テトラフェニルホウ酸ナトリウム(34.2mg、0.10mmol)、及び1,2-ビス(ジフェニルホスフィノ)エタン(7.97mg、0.02mmol)を収容し、この混合物を含むチューブを、オートクレーブ内に挿入した。次いで、オートクレーブ内をアルゴンガス雰囲気に置換した後、アルゴンガスを流し続けながら脱水トルエン(3.0mL)を加えた。このオートクレーブに、ステンレス管を介して接続した水素ガスボンベから水素ガスを導入し、オートクレーブ内を水素ガスで置換した。すなわち、オートクレーブ内に1.5MPaの水素ガス圧をかけ、その後、リークバルブから水素ガス圧を抜いた。この操作(置換-脱置換)を10回繰り返した。最後に、オートクレーブ内の水素ガス圧を8MPaに設定し、恒温槽を用いて、160℃で24時間反応させた。
【実施例】
【0218】
反応終了後、オートクレーブを氷浴に浸して冷却し、ほぼ室温とした。そして、オートクレーブのリークバルブを静かに開放し、内部にある水素ガスを空気中に放出した。次に、オートクレーブからチューブを取り出し、反応生成物(溶液)を得た。この溶液を、クロロホルムを用いて100mLナスフラスコに移した後、エバポレーターで減圧濃縮した。1H NMR解析のため、内部標準物質(メシチレン)を加えた。この内部標準物質の水素原子量の積分値を基準として、反応生成物の収率を算出した。その結果、3-フェニルプロピルアルコール及び3-フェニルプロピオン酸3-フェニルプロピルの収率は、それぞれ3%及び8%であった。
【実施例】
【0219】
本実施例8-1の結果は、後述する表8のエントリー1に相当する。
【実施例】
【0220】
実施例8-2
上記実施例8-1において、表8に記載された条件を採用すること以外は、実施例8-1と同様にして還元(水素化)を行った。その結果を表8に示す。
【実施例】
【0221】
【表8】
JP2015124153A_000036t.gif
【実施例】
【0222】
[実施例9:ルテニウム錯体に対する配位子添加の効果(その4)]
【実施例】
【0223】
【化28】
JP2015124153A_000037t.gif
【実施例】
【0224】
実施例9-1
以下の方法により、3-フェニルプロピオン酸の還元(水素化)を行った。
【実施例】
【0225】
乾燥したガラス製のチューブ(30mL)に、撹拌子、3-フェニルプロピオン酸(150.2mg、1.0mmol)、(1、5-シクロオクタジエン)ルテニウム(II)ポリマー([Ru(cod)Cl2]n)(5.60mg、0.020mmol)、テトラフェニルホウ酸ナトリウム(34.2mg、0.10mmol)、及び1,2-ビス(ジフェニルホスフィノ)エタン(7.97mg、0.02mmol)を収容し、この混合物を含むチューブを、オートクレーブ内に挿入した。次いで、オートクレーブ内をアルゴンガス雰囲気に置換した後、アルゴンガスを流し続けながら脱水トルエン(3.0mL)を加えた。このオートクレーブに、ステンレス管を介して接続した水素ガスボンベから水素ガスを導入し、オートクレーブ内を水素ガスで置換した。すなわち、オートクレーブ内に1.5MPaの水素ガス圧をかけ、その後、リークバルブから水素ガス圧を抜いた。この操作(置換-脱置換)を10回繰り返した。最後に、オートクレーブ内の水素ガス圧を8MPaに設定し、恒温槽を用いて、160℃で24時間反応させた。
【実施例】
【0226】
反応終了後、オートクレーブを氷浴に浸して冷却し、ほぼ室温とした。そして、オートクレーブのリークバルブを静かに開放し、内部にある水素ガスを空気中に放出した。次に、オートクレーブからチューブを取り出し、反応生成物(溶液)を得た。この溶液を、クロロホルムを用いて100mLナスフラスコに移した後、エバポレーターで減圧濃縮した。1H NMR解析のため、内部標準物質(メシチレン)を加えた。この内部標準物質の水素原子量の積分値を基準として、反応生成物の収率を算出した。その結果、3-フェニルプロピルアルコール及び3-フェニルプロピオン酸3-フェニルプロピルの収率は、それぞれ13%及び15%であった。
【実施例】
【0227】
本実施例9-1の結果は、後述する表9のエントリー1に相当する。
【実施例】
【0228】
実施例9-2
上記実施例9-1において、表9に記載された条件を採用すること以外は、実施例9-1と同様にして還元(水素化)を行った。その結果を表9に示す。
【実施例】
【0229】
【表9】
JP2015124153A_000038t.gif
【実施例】
【0230】
[実施例10:ルテニウム錯体に対する溶媒及び配位子添加の効果]
【実施例】
【0231】
【化29】
JP2015124153A_000039t.gif
【実施例】
【0232】
上記表2のentry 4において、表10に記載された条件を採用すること以外は、表2のentry 4と同様にして還元(水素化)を行った。その結果を表10に示す。なお、表2のentry 4と表10のentry 2とは同じ条件である。
【実施例】
【0233】
【表10】
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【実施例】
【0234】
[実施例11:ルテニウム錯体に対するアルカリ金属塩添加の効果(その2)]
【実施例】
【0235】
【化30】
JP2015124153A_000041t.gif
【実施例】
【0236】
実施例11-1
以下の方法により、3-フェニルプロピオン酸の還元(水素化)を行った。
【実施例】
【0237】
乾燥したガラス製のチューブ(30mL)に、撹拌子、3-フェニルプロピオン酸(150.2mg、1.0mmol)、トリス(アセチルアセトナト)ルテニウム(8.0mg、0.020mmol)、トリ(3,5-キシリル)ホスフィン(20.79mg、0.060mmol)、酢酸ナトリウム(8.20mg, 0.10mmol)を収容し、この混合物を含むチューブを、オートクレーブ内に挿入した。次いで、オートクレーブ内をアルゴンガス雰囲気に置換した後、アルゴンガスを流し続けながら脱水トルエン(3.0mL)を加えた。このオートクレーブに、ステンレス管を介して接続した水素ガスボンベから水素ガスを導入し、オートクレーブ内を水素ガスで置換した。すなわち、オートクレーブ内に1.5MPaの水素ガス圧をかけ、その後、リークバルブから水素ガス圧を抜いた。この操作(置換-脱置換)を10回繰り返した。最後に、オートクレーブ内の水素ガス圧を4MPaに設定し、恒温槽を用いて、160℃で24時間反応させた。
【実施例】
【0238】
反応終了後、オートクレーブを氷浴に浸して冷却し、ほぼ室温とした。そして、オートクレーブのリークバルブを静かに開放し、内部にある水素ガスを空気中に放出した。次に、オートクレーブからチューブを取り出し、反応生成物 (溶液)を得た。この溶液を、クロロホルムを用いて100mLナスフラスコに移した後、エバポレーターで減圧濃縮した。1H NMR解析のため、内部標準物質(メシチレン)を加えた。この内部標準物質の水素原子量の積分値を基準として、反応生成物の収率を算出した。その結果、3-フェニルプロピルアルコール及び3-フェニルプロピオン酸3-フェニルプロピルの収率は、それぞれ62%及び18%であった。
【実施例】
【0239】
本実施例11-1の結果は、後述する表11のエントリー1に相当する。
【実施例】
【0240】
実施例11-2
上記実施例11-1において、表11に記載された条件を採用すること以外は、実施例11-1と同様にして還元(水素化)を行った。その結果を表11に示す。
【実施例】
【0241】
【表11】
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図面
【図1】
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