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明細書 :ゲルアクチュエータ

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 公開特許公報(A)
公開番号 特開2015-115992 (P2015-115992A)
公開日 平成27年6月22日(2015.6.22)
発明の名称または考案の名称 ゲルアクチュエータ
国際特許分類 H02N  11/00        (2006.01)
FI H02N 11/00 Z
請求項の数または発明の数 5
出願形態 OL
全頁数 11
出願番号 特願2013-254612 (P2013-254612)
出願日 平成25年12月10日(2013.12.10)
発明者または考案者 【氏名】橋本 稔
【氏名】李 毅
【氏名】安田 圭吾
出願人 【識別番号】504180239
【氏名又は名称】国立大学法人信州大学
審査請求 未請求
要約 【課題】 印加電圧の周波数に対する応答特性を改善したゲルアクチュエータを提供する。
【解決手段】 電圧を印加した際にクリープ変形する誘電体材料からなる誘電体層15a、15bと、誘電体層15a、15bを厚さ方向に挟む配置に設けた陽極12及び陰極13a、13bとを備えるアクチュエータ素子10と、陽極12と陰極13a、13bとの間に電圧を印加する電圧印加手段20とを備えるゲルアクチュエータであって、電圧印加手段20は、電圧印加をON-OFF制御する制御部を備え、制御部は、陽極12と陰極13a、13b間に作用させる印加電圧を解除する際に、陽極12と陰極13a、13bとを電気的に短絡する手段24を備えていることを特徴とする。
【選択図】 図1
特許請求の範囲 【請求項1】
電圧を印加した際にクリープ変形する誘電体材料からなる誘電体層と、該誘電体層を厚さ方向に挟む配置に設けた陽極及び陰極とを備えるアクチュエータ素子と、
前記陽極と陰極との間に電圧を印加する電圧印加手段とを備えるゲルアクチュエータであって、
前記電圧印加手段は、電圧印加をON-OFF制御する制御部を備え、
該制御部は、前記陽極と陰極間に作用させる印加電圧を解除する際に、前記陽極と陰極とを電気的に短絡する手段を備えていることを特徴とするゲルアクチュエータ。
【請求項2】
前記アクチュエータ素子は、
前記誘電体層が、ゲルシートからなり、
前記陽極としてメッシュ状の電極を、前記陰極として箔状の電極を備えることを特徴とする請求項1記載のゲルアクチュエータ。
【請求項3】
前記アクチュエータ素子は、
前記誘電体層が、前記陽極に対向する面に多数個の凸部が形成されたゲルシートからなり、
前記陽極及び陰極として箔状の電極を備えることを特徴とする請求項1記載のゲルアクチュエータ。
【請求項4】
前記アクチュエータ素子は、前記誘電体層と前記陽極と陰極とを交互に積層した積層型のアクチュエータ素子であることを特徴とする請求項1~3のいずれか一項記載のゲルアクチュエータ。
【請求項5】
前記誘電体層が、ポリ塩化ビニルからなることを特徴とする請求項1~4のいずれか一項記載のゲルアクチュエータ。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、印加電圧に対する応答特性を改善したゲルアクチュエータに関する。
【背景技術】
【0002】
ポリ塩化ビニル(PVC)ゲルは、電圧を印加した際に、陽極近傍でクリープ変形を生じる特性を備える。図8は、電極間に電圧を印加した際に、陽極上にPVCゲルが這い上がるように変形(クリープ変形)し、電圧印加を解除すると元の形態に戻る様子を示す。このクリープ変形作用は、PVCゲルに電圧を印加すると、電荷が陰極からゲルを通じて陽極に移動し、陽極で放電して消失する前に陽極近傍に電荷が蓄積し、陽極表面へのゲルの静電的吸着を促進することによって生じる(非特許文献1、特許文献1)。
【0003】
図9は、ゲルアクチュエータの最も基本となる構造で、メッシュ状の電極(陽極)をゲルシートにより挟み、双方のゲルシートの外面に箔状の電極(陰極)を設けたものである。このゲルアクチュエータは、陽極と陰極との間に電圧を印加すると、ゲルがメッシュの空間内に引き込まれ、全体として厚さ方向に収縮し、電圧印加を除去するとゲル自体の弾性によって元の状態(元の厚さ)に戻るように作用する。
図10はメッシュ状の陽極を使用して電圧を印加したときのゲルシートの作用を示した例で、図10(a)は、ゲルシートに電圧を印加していない状態、図10(b)は電圧を印加した状態を示す。ゲルシートに電圧を印加すると、メッシュの孔内にゲルが引き込まれるように変形する。
【0004】
図9に示した、ゲルシートをメッシュ状の電極(陽極)と陰極とにより挟む構造は、ゲルシートと電極とを交互に積層した積層型のゲルアクチュエータとして構成することができ、積層型として構成すると、アクチュエータの変位量と回復応力が増大する(特許文献2、3)。
【先行技術文献】
【0005】

【特許文献1】特開2009-273204号公報
【特許文献2】特開2012-130201号公報
【特許文献3】特開2012-161221号公報
【0006】

【非特許文献1】山野美咲、小川尚紀、橋本稔、高崎緑、平井利博:“収縮型PVCゲルアクチュエータの構造と駆動特性”日本ロボット学会誌、Vol.27 No.7pp718~24,2009
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上述したゲルアクチュエータが厚さ方向に収縮-復元する作用は、電圧印加によりゲルがクリープ変形し、電圧の印加を解除することによりゲルが、ゲル自体の弾性力によって復元する作用によっている。したがって、ゲルの変形作用(駆動)をコントロールするにはゲルに作用させる電圧をコントロールすればよい。
しかしながら、従来のゲルアクチュエータでは、印加電圧の周波数が数Hz程度の場合には応答できても、印加電圧の周波数が10Hz程度以上になると、電圧の変動にゲルが応答できず、十分な駆動作用が得られないという問題があった。
本発明は、印加電圧の周波数が10Hz程度になっても十分な応答特性を備えるゲルアクチュエータを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係るゲルアクチュエータは、電圧を印加した際にクリープ変形する誘電体材料からなる誘電体層と、該誘電体層を厚さ方向に挟む配置に設けた陽極及び陰極とを備えるアクチュエータ素子と、前記陽極と陰極との間に電圧を印加する電圧印加手段とを備えるゲルアクチュエータであって、前記電圧印加手段は、電圧印加をON-OFF制御する制御部を備え、該制御部は、前記陽極と陰極間に作用させる印加電圧を解除する際に、前記陽極と陰極とを電気的に短絡する手段を備えていることを特徴とする。
【0009】
本発明に係るゲルアクチュエータにおいては、陽極に印加する電圧を解除する際に、陽極と陰極とを電気的に短絡する手段を備えることにより、電圧が印加されてクリープ変形した誘電体層が、変形状態から元の状態(元の厚さ)に復帰する速度を促進させる作用があり、誘電体層の変形-復元作用の応答速度を向上させ、ゲルアクチュエータの応答特性を効果的に向上させることができる。
誘電体層がクリープ変形する作用は、電圧印加時に、陽極近傍に電荷が蓄積し、電荷の静電的作用によるから、陽極と陰極とを強制的に短絡させる手段は、陽極近傍において電荷を消失させる作用に積極的に寄与するものと考えられる。
陽極と陰極とを電気的に短絡する手段としては、たとえば、陽極への電圧印加を遮断する際に、同時に陽極と陰極とを電気的に短絡させる回路を設け、スイッチ手段により電圧印加回路から短絡回路に切り替える方法がある。
【0010】
本発明に係るゲルアクチュエータは、アクチュエータ素子と電圧印加手段とから構成される。アクチュエータ素子は、電圧印加手段により電圧が印加される陽極及び陰極と、陽極と陰極とにより厚さ方向に挟む配置に設けられた誘電体層を備える。誘電体層は電圧が印加されることによりクリープ変形する誘電体材料によって形成する。誘電体層を形成する誘電体材料としては、例えば、ポリ塩化ビニルを好適な例として挙げることができる。
【0011】
誘電体層と陽極及び陰極とから構成されるアクチュエータ素子としては、誘電体層が、ゲルシートからなり、陽極としてメッシュ状の電極を、陰極として箔状の電極を備えるものを使用することができる。このアクチュエータ素子は、陽極と陰極との間に電圧を印加すると、メッシュ状の陽極の隙間にゲルが引き込まれ、アクチュエータ素子が厚さ方向に収縮する。電圧印加を解除すると、ゲルの弾性によりゲルシートは元の厚さに復帰する。
【0012】
また、アクチュエータ素子として、誘電体層が、陽極に対向する面に多数個の凸部が形成されたゲルシートからなり、陽極及び陰極として箔状の電極を備えたものを使用することができる(特許文献3)。このアクチュエータ素子では、陽極に電圧を印加すると、ゲルシートの凸部が陽極に吸着するように変形(凸部の高さが低くなる)してアクチュエータ素子が厚さ方向に収縮し、電圧印加を解除すると元の形状に復帰することで収縮-復元作用をなす。
【0013】
なお、アクチュエータ素子を構成する誘電体層はシート状に形成したゲルを使用する場合に限るものではない。たとえば、PVCのようなクリープ変形作用を有する誘電体材料からなるナノファイバーを誘電体層として利用することにより、ゲルシートと同様に収縮-復元作用を生じさせることができる。
本発明に係るゲルアクチュエータはこのような誘電体層を備えるアクチュエータ素子を使用する場合についても含むものである。本発明では、種々の誘電体材料、種々の構成からなる誘電体層を備えるアクチュエータ素子と電圧印加手段とからなるアクチュエータを、ゲルアクチュエータと総称する。
【発明の効果】
【0014】
本発明に係るゲルアクチュエータによれば、陽極に作用させる印加電圧をOFFにしたときのアクチュエータ素子の応答特性を従来のゲルアクチュエータと比較して効果的に改善することができ、素早い応答が求められる用途に好適に利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明に係るアクチュエータの構成例を示す説明図である。
【図2】アクチュエータの比較例の構成を示す説明図である。
【図3】積層型のアクチュエータの構成例を示す説明図である。
【図4】陽極に対する印加電圧をOFFにしたときからの回復応力の変化を測定した結果を示すグラフである。
【図5】陽極に対する印加電圧をOFFにしたときからの変位量の変化を測定した結果を示すグラフである。
【図6】陽極に印加する電圧をOFFにしたときの実施例(a)、比較例(b)のアクチュエータの電圧出力波形を示すグラフである。
【図7】陽極に印加する電圧の周波数を0.4Hzとした場合(a)、2Hzとした場合(b)、20Hzとした場合(c)の陽極電圧波形を示すグラフである。
【図8】ゲルアクチュエータのクリープ変形作用を示す図である。
【図9】メッシュ状の陽極を備えるゲルアクチュエータの構成と作用を示す図である。
【図10】電圧印加を解除した状態(a)、電圧を印加した状態のゲルを示す写真である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
(アクチュエータの構成)
図1(a)は、本発明に係るアクチュエータの構成例を示す。このアクチュエータは、メッシュ状に形成された陽極12を厚さ方向に挟む一対のゲルシート15a、15bと、ゲルシート15a、15bのそれぞれの外面を被覆する陰極13a、13bとからなるアクチュエータ素子10と、陽極12と陰極13a、13bとの間に電圧を印加する電圧印加手段20とを備える。電圧印加手段20は、電圧供給部22と電圧の印加をON-OFF制御する制御部24とを備える。
本実施形態のアクチュエータでは、電圧供給部22として電池を使用し、制御部24としてON-OFFスイッチを含む陽極12と陰極13a、13bとを電気的に短絡させる回路を設けている。

【0017】
図2は、比較例として、従来用いられているアクチュエータの構成を示す。アクチュエータ素子10は、メッシュ状に形成された陽極12と、一対のゲルシート15a、15bと、陰極13a、13bとを備える。図2に示すアクチュエータは、アクチュエータ素子10と、アクチュエータ素子10の陽極12と陰極13a、13bとの間に電圧を印加する電圧印加手段25として、電圧供給部26と電圧の印加をON-OFF制御する制御部27とを備える。
なお、図1、2のアクチュエータ回路のグランド接地には10kΩの抵抗を介している。

【0018】
図1と図2に示すアクチュエータの構成において相異する点は、アクチュエータ素子10の陽極12と陰極13a、13bに印加する電圧をON-OFF制御する制御部の構成である。すなわち、図2に示すアクチュエータの制御部27は、陽極12と陰極13a、13bに印加する電圧を解除する際に、単に、電圧印加回路を開放して、電圧供給部26による電圧印加を遮断するように作用するのに対して、図1に示すアクチュエータの制御部24は、電圧供給部22による電圧印加を電気的に遮断するともに、陽極12と陰極13a、13bとを電気的に短絡させるように作用するように構成される。

【0019】
本実施形態のアクチュエータにおいて、アクチュエータ素子10の陽極12と陰極13a、13bとの間に印加する電圧をOFFとする際に、陽極12と陰極13a、13bとを電気的に短絡させるように回路構成している理由は、ゲルシート15a、15bが厚さ方向に収縮した状態から元の厚さに復帰するまでの時間を短縮させるためである。

【0020】
図1(b)は、陽極12と陰極13a、13bとの間に電圧を印加した状態を示す。陽極12と陰極13a、13bとの間に電圧を印加すると、ゲルシート15a、15bがクリープ変形し、メッシュ状に形成された陽極12の隙間部分(空間部分)にゲルが入り込む。このクリープ変形は、陽極12のメッシュにゲルが這い上がる作用であり、メッシュの隙間部分にゲルが引き込まれることにより、ゲルシート15a、15bは全体として厚さ方向に収縮する。図1(b)は、電圧印加によって、ゲルシート15a、15bが厚さ方向に収縮した状態である。

【0021】
図1(b)に示す状態から、電圧供給部22による電圧印加を解除し、同時に陽極12と陰極13a、13bを電気的に短絡させると、ゲルシート15a、15bは陽極12に引き込まれた位置から、元の厚さに復帰する。ゲルシート15a、15bが元の厚さに復帰する作用は、ゲルシート15a、15b自体が備える弾性力による。
本実施形態のアクチュエータにおいては、陽極12と陰極13a、13bとの間に印加する電圧をOFFにする際に、陽極12と陰極13a、13bとを電気的に短絡させることにより、ゲルシート15a、15bが元の厚さに復帰するまでの時間を短縮させることを可能にしている。

【0022】
図1に示すアクチュエータは、陽極12を一対のゲルシート15a、15bによって挟む配置としたアクチュエータ素子を使用する例であるが、電極とゲルシートを多層に積層した積層型のアクチュエータ素子を使用することも可能である。
図3は、積層型のアクチュエータ素子11を使用してアクチュエータを構成した例であり、ゲルシート15を挟んで陽極12と陰極13とを交互に積層する配置としたものである。陽極12と陰極13とは共通電極として電圧印加手段20の電圧供給部22に接続する。
この場合も、陽極12と陰極13に共通に印加する電圧を制御する制御部24は、電圧印加をOFFにする際に、陽極12と陰極13とを電気的に短絡させることにより、ゲルシート15が元の厚さに復帰するまでの時間を従来のアクチュエータと比べて短縮させることができる。

【0023】
なお、アクチュエータ素子を、ゲルシートと電極とを多層に積層した積層型とすることにより、一対のゲルシートを使用したアクチュエータ素子と比較して、アクチュエータ素子全体の変形量をより大きくすることができ、アクチュエータ素子が元の厚さに復帰するときの回復応力も大きくなる。積層型の場合は、個々のゲルシートの変形量を重畳した作用となるからである。

【0024】
アクチュエータ素子に使用するゲルシートには、電圧を印加した際にクリープ変形する材料によって形成する。電圧を印加した際にクリープ変形する性質を備える材料としては、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリメタクリル酸メチル、ポリウレタン、ポリスチレン、ポリ酢酸ビニル、ナイロン6、ポリビニルアルコール、ポリカーボネイト、ポリエチレンテレフタレート、ポリアクリロニトリル、シリコーンゴム等がある。

【0025】
これら誘電体材料のうち、ポリ塩化ビニル(PVC)は材料が廉価であること、取り扱いが容易であること、電圧を印加したときのクリープ変形量が大きいことから、アクチュエータ素子の誘電体材料として好適に使用できるという利点がある。
PVCゲルシートは、ポリ塩化ビニルと可塑剤であるアジピン酸ジブチル(DBA)を溶媒テトラヒドロフラン(THF)中で混合し、この混合物を底面が平坦な容器にキャストし、静置して、溶媒を蒸発させることによって作製することができる。キャスト法のかわりに、フィルムアプリケータを使用し、離型フィルム上に前述した混合液を塗布してフィルム状とすることもできる。
【実施例】
【0026】
図1に示した構成を備えるアクチュエータ(実施例)と図2に示した構成を備えるアクチュエータ(比較例)を用いて、陽極に印加する電圧を0FFにしたときの応答特性について実験した。それぞれのアクチュエータは下記の構成からなる。
ゲルシート:厚さ 0.2mm 平面積5cm2 材料 ポリ塩化ビニル+アジピン酸ジブチル(可塑剤)
陽極:メッシュ数(インチ当り)100 線径φ0.09mm 目開き0.164mm 開口率41.7% 材料 ステンレスSUS316
陰極:材料 ステンレス箔(SUS304 厚さ0.01mm)
【実施例】
【0027】
(回復応力についての応答特性)
まず、実施例と比較例のアクチュエータについて、印加する電圧をオフにしたときの回復応力について応答特性を測定した結果について説明する。実施例と比較例のアクチュエータの応答特性は、電圧印加をOFFにしてから、回復応力の最大値の10%まで到達する時間と、90%まで到達する時間を測定して比較した。実際の測定は以下のようにして行った。
印加電圧:240V
測定サイクル:印加電圧 オン 1sec 印加電圧 オフ 4sec
繰り返し数:5回
回復応力(安定時):1800Pa
測定系は電圧印加するための高圧アンプと応力測定のためのロードセル、PCと入出力信号をやり取りするためのインターフェイスボードからなる。
回復応力はPCから出力電圧を高圧アンプで増幅しアクチュエータに電場を与え、収縮したときをロードセル荷重のゼロ点とし、印加電圧をオフした時ゲルの弾性回復により発生するアクチュエータ厚さ方向の応力をロードセルにて計測した。
【実施例】
【0028】
図4に、回復応力について測定した結果を示す。
表1は、測定結果を整理したものである。
【表1】
JP2015115992A_000003t.gif
表1に示すように、実施例のアクチュエータは比較例のアクチュエータと比較して、回復応力の応答速度として、0.07sec改善され、75.9%の改善率が得られた。
【実施例】
【0029】
(変位量についての応答特性)
次に、実施例と比較例のアクチュエータについて、陽極に印加する電圧をOFFとしたときからのゲルアクチュエータの変位量の変化を測定した結果について説明する。
陽極と陰極との間に電圧を印加するとアクチュエータ素子は厚さ方向に収縮する。電圧をOFFにすると、アクチュエータ素子は収縮した状態から元の厚さに復帰しようとする。変位量についての応答特性は、収縮した状態における収縮量に対して、収縮量が10%戻った状態まで到達する時間、収縮量が90%戻った状態まで到達する時間をそれぞれ測定して比較した。
【実施例】
【0030】
変位量の測定系は、電圧を印加するための高圧アンプとレーザ変位計、PCと入出力信号をやり取りするためのインターフェイスボードからなる。
変位量測定はPCから出力電圧を高圧アンプで増幅しアクチュエータに電場を与え、その時のアクチュエータの厚さ方向の変位をレーザ変位計で計測した。
図5に、変位量(収縮量)の測定データを示す。横軸が印加電圧をOFFにしたとき(0sec)からの経過時間、縦軸が収縮率の変化量である。電圧を印加した状態で変位量(収縮量)が最も大きくなっており、電圧をOFFにすると、時間経過とともに収縮量(収縮率)が減少していく。
【実施例】
【0031】
表2に、収縮量が10%戻った状態、90%戻った状態まで到達した時間を示す。
【表2】
JP2015115992A_000004t.gif
表2から、実施例のアクチュエータでは、比較例に対して、変位の応答速度の特性について、0.08450sec改善され、31.6%の改善効果が認められた。
【実施例】
【0032】
(陽極電圧の出力波形)
次に、陽極電圧の出力波形について測定した結果について説明する。
図6(a)は、実施例のアクチュエータについて、陽極に印加する電圧をOFFにした状態後の電圧出力波形、図6(b)は比較例のアクチュエータについて陽極印加電圧をOFFにした状態後の電圧出力波形を示す。横軸が時間、縦軸が電圧である。
出力電圧が印加電圧の90%-10%となる時間を比較すると、実施例のアクチュエータは14μsec、比較例のアクチュエータは50msecであり、実施例のアクチュエータは、比較例に対し約3500倍の改善効果を有する。
【実施例】
【0033】
図7(a)、(b)、(c)は、陽極に印加する電圧の周波数を変えたときの陽極電圧の出力波形を示す。図7(a)は、周波数を0.4Hzとした場合、図7(b)は2Hz、図7(c)は20Hzとした場合である。図中で改善前とあるのは比較例のアクチュエータ、改善後とあるのは実施例のアクチュエータについての測定結果を示す。
図7(a)、(b)、(c)のいずれの場合も、実施例のアクチュエータについては比較例と比べて、明らかにシャープな矩形波状の出力波形が得られている。とくに、電圧印加周波数を20Hzとした場合には、比較例のアクチュエータでは電圧波形が鈍るために、電圧が0Vまで戻らずに立ち上がる波形になるのに対して、実施例のアクチュエータの場合は、ほぼ矩形波形となり、周波数特性に優れていることがわかる。
なお、陽極に電圧を印加する立ち上がり部分についても、実施例のアクチュエータの電圧波形はシャープになっている。すなわち、印加電圧をOFFにするときに陽極と陰極とを短絡させる手段は、電圧を印加させる際においても良い効果を奏している。
【実施例】
【0034】
比較例のアクチュエータの場合に、電圧出力波形の応答特性が劣化する理由は、図6(a)、(b)に示したように、印加電圧をOFFにしたときに電圧低下に遅れが生じるためである。
人の歩行サポートに上記アクチュエータを使用するような場合には、駆動周波数が比較的小さいので、周波数に対する応答特性はさほど問題にならないが、人間の筋肉並みのアクチュエータを想定した場合は、10Hz程度の周波数での使用が求められる。実施例のアクチュエータは、10Hz程度で使用する場合は十分な応答特性を備えるものであり、さらに広い用途に使用することができる。
【符号の説明】
【0035】
10、11 アクチュエータ素子
12 陽極
13、13a、13b 陰極
15、15a、15b ゲルシート
20、25 電圧印加手段
22、26 電圧供給部
24、27 制御部

図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
5
【図7】
6
【図8】
7
【図9】
8
【図10】
9