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明細書 :リチウムイオン電池用負極材料

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 公開特許公報(A)
公開番号 特開2015-125957 (P2015-125957A)
公開日 平成27年7月6日(2015.7.6)
発明の名称または考案の名称 リチウムイオン電池用負極材料
国際特許分類 H01M   4/38        (2006.01)
H01M   4/134       (2010.01)
FI H01M 4/38 Z
H01M 4/134
請求項の数または発明の数 5
出願形態 OL
全頁数 10
出願番号 特願2013-271077 (P2013-271077)
出願日 平成25年12月27日(2013.12.27)
新規性喪失の例外の表示 申請有り
発明者または考案者 【氏名】新井 進
【氏名】太子 敏則
【氏名】服部 義之
出願人 【識別番号】504180239
【氏名又は名称】国立大学法人信州大学
審査請求 未請求
テーマコード 5H050
Fターム 5H050AA02
5H050BA16
5H050BA17
5H050CB11
5H050DA03
5H050FA17
5H050FA19
要約 【課題】 リチウムイオン電池の負極に好適に使用することができるシリコンを用いたリチウムイオン電池用負極材料を提供する。
【解決手段】 本発明に係るリチウムイオン用負極材料は、集電体10に、シリコンの母材に導電性を付与する不純物をドープしたシリコン単結晶を粉末化した、導電性を備えるシリコン粒子12が、活物質として被着されていることを特徴とする。導電性を備えたシリコン粒子12としては、シリコンの母材に不純物としてホウ素をドープしたシリコン粒子を使用することができる。導電助剤を添加して使用することもできる。
【選択図】 図1
特許請求の範囲 【請求項1】
集電体に、シリコンの母材に導電性を付与する不純物をドープしたシリコン単結晶を粉末化した、導電性を備えるシリコン粒子が、活物質として被着されていることを特徴とするリチウムイオン電池用負極材料。
【請求項2】
シリコンの母材に不純物としてホウ素をドープしたシリコン粒子を使用することを特徴とする請求項1記載のリチウムイオン電池用負極材料。
【請求項3】
前記シリコン粒子がバインダーを介して前記集電体に被着されていることを特徴とする請求項1または2記載のリチウムイオン電池用負極材料。
【請求項4】
導電助剤が添加されてなることを特徴とする請求項1~3のいずれか一項記載のリチウムイオン電池用負極材料。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか一項記載のリチウムイオン電池用負極材料を負極に使用したことを特徴とするリチウムイオン電池。









発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、リチウムイオン電池用負極材料に関する。
【背景技術】
【0002】
リチウムイオン電池の電極材料には、一般に正極材料としてコバルト酸リチウム等の金属酸化物、負極材料としてグラファイトが使用されている。従来、リチウムイオン電池のエネルギー密度を向上させることを目的として種々の負極材料が検討されてきた。シリコン(Si)はグラファイトの約10倍の比容量を有し、負極として利用し得る材料のうち、もっとも大きな比容量を備える。しかしながら、シリコンは充放電時の体積変化が大きいという問題と、シリコンは導電性が低いためにそれ自体では電極材として使用できないといった問題があった。
【0003】
シリコンを負極材として使用するものには、充放電時のシリコンの形状変化を安定させる金属とシリコンとを合金化させ、粉砕した粉体状のものを集電体にバインダーで固着して使用するもの(特許文献1)、負極材料と固体電解質とを含む負極層を使用し、シリコン表面にニッケル、銅等の導電性物質をめっき法等により付着させたものを使用するもの(特許文献2)、負極活物質粒子として、金属粒子の表面がシリコンと合金化された非晶質粒子を使用するもの(特許文献3)、シリコン等の粒子とカーボンナノファイバを主成分とするカーボン材料と樹脂結着剤とを含む負極材料を使用するもの(特許文献4)、シリコンまたはシリコン系の繊維でドープされたシリコンを使用するもの(特許文献5)、ポーラスシリコンを使用するもの(特許文献6)等がある。
【先行技術文献】
【0004】

【特許文献1】特開2006-100244号公報
【特許文献2】特開2012-146479号公報
【特許文献3】特開2005-347147号公報
【特許文献4】特開2004-220911号公報
【特許文献5】特開2011-82179号公報
【特許文献6】特開2010-251647号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
シリコンは導電性が低いために電池の電極材として使用できないという問題を解消する方法として、導電助剤を利用する方法や、シリコンの表面に導電コートを施して導電性を付与するといった方法が検討されている。しかしながら、これらの方法では充放電回数が増大するとともに容量が低下する問題と、導電コートを施す方法は操作が煩雑であるという問題がある。
本発明は、シリコンを活物質として好適に使用することができるリチウムイオン電池用負極材料を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係るリチウムイオン電池用負極材料は、集電体に、シリコンの母材に導電性を付与する不純物をドープしたシリコン単結晶を粉末化した、導電性を備えるシリコン粒子が、活物質として被着されていることを特徴とする。シリコン単結晶を粉末化したとは、シリコン結晶の結晶状態をそのまま保持して粉末化されている意である。シリコン結晶からなるシリコン粒子を活物質とすることにより、優れた充放電特性を備えるリチウムイオン電池の負極材料として提供される。
シリコンの母材に添加して導電性を付与する不純物としては、ホウ素等の3価元素や、リン等の5価元素を用いることができる。添加する不純物はp型とn型の何れにするものであっても使用できる。
【0007】
導電性のシリコンを集電体に被着する方法としては、バインダーを用いて、シリコン粒子を集電体に被着させる方法が簡便で有用である。バインダーを用いる方法は、従来のグラファイトを活物質として使用する場合に利用されており、従来方法が利用できる利点がある。
導電性のシリコンを活物質とする場合に、導電助剤を加えて集電体に被着形成する方法も有効である。バインダーを加えることによって充放電特性を改善することができるからである。導電助剤はバインダーに加えることで容易に添加することができる。
【0008】
本発明に係るリチウムイオン電池用負極材料をリチウムイオン電池に適用することにより好適な充放電特性を有するリチウムイオン電池を提供することができる。
【発明の効果】
【0009】
本発明に係るリチウムイオン電池用負極材料はシリコン粒子そのものが導電性を備えることから、優れた充放電特性を備える負極を構成することができ、リチウムイオン電池の特性向上に有効に利用できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】シリコンを負極材料に使用したリチウムイオン電池の負極の構成として、導電性を備えたシリコン粒子を使用する例(a)、導電助剤を利用する例(b)、導電コートシリコン粒子を使用する例(c)を示す説明図である。
【図2】集電体上に導電性のシリコン粒子を被着させ方法を示す説明図である。
【図3】シリコンに添加したホウ素の量と、シリコン単結晶の比抵抗との関係を示すグラフである。
【図4】結晶から粉末化した3種のシリコン粉末試料について測定した粉末X線回折パターンである。
【図5】結晶から粉末化した3種のシリコン粉末試料の粒度分布を測定した結果を示すグラフである。
【図6】3種のシリコン粉末試料のSEM画像である。
【図7】導電性を備えるシリコン粒子を活物質とした試料と、純シリコン粒子を活物質とした試料についての充放電試験結果を示すグラフである。
【図8】導電助剤を使用した場合の充放電試験結果を示すグラフである。
【図9】導電助剤を使用しない場合のサイクリックボルタンメトリー試験結果を示すグラフである。
【図10】導電助剤を使用した場合のサイクリックボルタンメトリー試験結果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
図1は、シリコンを負極材料に使用したリチウムイオン電池の負極の構成を示す。
図1(a)は、集電体10の表面に、活物質として、導電性を備えたシリコン粒子12をバインダーを介して被着した構成からなる負極を示す。この負極に使用しているシリコン粒子12は、シリコンを母材としてホウ素(B)を添加したホウ素ドープシリコン単結晶を粉砕して得たものでり、ホウ素をドープして導電性を付与したものである。このシリコン粒子12は、粒子自体が導電性を備えるから、バインダーを介して集電体10の表面に被着させることにより、リチウムイオン電池用負極(材料)として好適に使用することができる。

【0012】
図1(b)、図1(c)は、シリコン粒子を負極材料に使用した従来の負極の構成例を示す。図1(b)は、シリコン粒子13と導電助剤15とをバインダーを介して集電体10上に被着形成した例である。図1(c)は、シリコン粒子13の表面に、導電材14をコートした導電コートシリコン粒子13aをバインダーを介して集電体10上に被着形成した例である。シリコン粒子13は導電性を備えないから、図1(b)の例では導電助剤15を使用し、図1(c)では、導電材14をコートして導電性を付与している。

【0013】
本実施形態の導電性を備えたシリコン粒子12を使用する場合は、シリコン粒子12が導電性を備えるから、図2に示すように、導電性を備えた活物質であるシリコン粒子12とバインダー16とからなる複合ペースト18を調製し、集電体10上に複合ペースト18を塗布して乾燥させることにより、シリコン粒子12を活物質とする負極を形成することができる。
従来のグラファイトを活物質としたリチウムイオン電池の負極は、グラファイトの粉末とバインダーとからなるペーストを集電体上に塗布して負極としている。本実施形態の導電性を備えるシリコン粒子12を使用する負極も、グラファイトを負極材料とする場合とまったく同様の方法を利用して、負極が形成できる点で有用である。

【0014】
リチウムイオン電池の負極を構成するシリコン粒子12は、ホウ素をドープすることにより導電性を備えるものとなる。ホウ素ドープシリコン単結晶は、たとえばチョクラルスキー法によって作製することができる。
図3は、シリコンに添加したホウ素の量と、シリコン単結晶の比抵抗との関係を示すグラフである(T.Taishi et al.,Jpn.J.Appl.Phys,38,L223-L225(1999))。ホウ素の添加量によって比抵抗が変化する。なお、比抵抗値が0.5(mΩcm)のときのシリコン結晶中におけるホウ素濃度は、約2.5×1020(atoms/cm3)である。
なお、シリコンに導電性を付与するための添加物はホウ素に限らない。ホウ素の他にアルミニウム(Al)、インジウム(In)等の3価元素、あるいはリン(P)、ヒ素(As)、アンチモン(Sb)、ビスマス(Bi)等の5価元素を添加することによってもシリコンに導電性を付与することができる。

【0015】
(実験例)
以下、ホウ素をドープしたシリコン単結晶から得たシリコン粒子(粉末)を用いてリチウムイオン電池の充放電特性を測定した結果について説明する。
負極の作成に使用したシリコン材料は、比抵抗A:0.3(mΩcm)、B:10(mΩcm)、C:300(mΩcm)の3種の粉末である。比抵抗0.3(mΩcm)の試料Aと、比抵抗10(mΩcm)の試料Bは、チョクラルスキー法によりホウ素をドープして育成したシリコン単結晶から得たもので、ホウ素のドープ量が異なるものである。比抵抗300(mΩcm)の試料Cは、チョクラルスキー法により育成した純シリコン単結晶から得たものである。

【0016】
シリコン粉末は、ホウ素ドープシリコン単結晶及び純シリコン単結晶を、遊星型ボールミル装置を使用して粉末化した。
ボールミル条件は、試料:ボール:水=1:2:2(体積比)、回転数400rpm、1時間である。

【0017】
図4は、ボールミルにより粉末化した3種のシリコン粉末について測定した粉末X線回折パターンである。図4では、試料A、B、Cの各パターンを対比して示している。グラフ中にシリコン結晶の結晶面に対応するピークを示した。
図4からわかるように、3種の試料A、B、Cのいずれも、シリコン結晶に特有のピークを保持しており、ボールミルによって得られた粉末はシリコン結晶状態を保持していることが確かめられた。

【0018】
図5は、ボールミルにより粉末化した3種のシリコン粉末の粒度分布を測定した結果を示す。粒度分布はレーザ回折式粒度分布計を用いて行った。この測定結果は、3種のシリコン粉末のいずれも、ほぼ同様の粒度分布を有すること、すなわち、粒子径500nm程度の粉末と、粒子径50nm程度の粉末の、2群の粉末からなることがわかる。
図6は、3種のシリコン粉末のSEM画像である。図6(a)、(b)、(c)は、それぞれ試料A、B、Cである。図6から、シリコン粉末中に、粒子径が500nm程度の比較的大きな粒子径のものと、粒子径が50nm程度の小さな粒子径のものが混在していることがわかる。図6に示すSEM画像の測定結果も、図5に示した粒度分布の測定結果と一致している。

【0019】
(電極作製)
電極は次のようにして作製した。
まず、シリコン粉末とバインダーであるポリフッ化ビニリデン(PVDF)と溶媒とを混合して試料ペーストを作製し、集電体の銅箔に試料ペーストを塗工し、真空乾燥機で110℃、2時間保持して溶媒を飛散させペーストを乾燥させて電極とした。
シリコン粉末とPVDFとの混合比は、
シリコン粉末:PVDF=9:1(体積比)
である。

【0020】
なお、充放電試験では、負極にシリコンを使用し、バインダーに導電助剤を加えた場合についても測定を行った。導電助剤を使用する場合の混合比は、
シリコン粉末:カーボンブラック:PVDF=8:1:1(体積比)
とした。銅箔に試料ペーストを塗工し、真空乾燥機で乾燥させて電極としたことは、上記例と同様である。

【0021】
(充放電試験)
充放電試験は2電極式コインセル(セパレータ使用)を用いて行った。
作用電極:導電性Si、純Si(導電助剤:有/無)
対電極:リチウム
電解質:1M LiPF6(エチレンカーボネート(EC):ジエチルカーボネート(DEC)=1:1vol%)
測定電位範囲:0.02-1.5V
電流値:0.5mAcm-2
サイクリックボルタンメトリー試験は、以下の条件で行った。
測定電位範囲:0.02-2V
dE/dt=0.05mVs-1

【0022】
図7は、導電性を備えるシリコン粒子を活物質とした試料A、Bと、純シリコン粒子を活物質とした試料Cについて充放電試験を行った結果を示す。
導電性を備えるシリコン粒子を使用した試料A、Bからなる負極を使用した場合は、純シリコン粒子を使用したものと比較して、充放電特性が改善されており、導電性シリコン粒子を負極材料として使用する優位性は確認できた。しかしながら、リチウムイオン電池に求められる特性値と比較すると相当程度低く、満足できる結果とはなっていない。

【0023】
図8は、シリコン粒子を活物質として負極を作製する際に、導電助剤(カーボンブラック)をバインダーに加えて負極を形成した場合の充放電試験結果を示す。図8(a)、(b)は導電性シリコン粒子を使用した場合、図8(c)は純シリコン粒子を使用した場合である。
導電助剤を使用しない場合の放電特性は、導電助剤を使用した場合と比較して、大きく劣っている。
図8において特徴的な傾向は、導電助剤を使用した場合も、比抵抗がより小さな導電性シリコン粒子を使用した場合に、充放電特性の改善が見られること、すなわち導電性を備えたシリコン粒子を使用することにより充放電特性を改善することが可能である。

【0024】
図9、10はサイクリックボルタンメトリー試験結果を示す。図9は、導電助剤を使用しない場合の試験結果、図10は導電助剤を使用した場合の試験結果である。
図9に示す導電助剤を使用しない場合については、充電時のリチウムの吸収量が限定的であるが、図10に示した導電助剤を使用した場合は、1stサイクルからリチウムの吸収量が大きく、リチウムイオン電池用の電極として十分に利用できる可能性を示している。また、図9から、導電性シリコン粒子を使用した場合は、純シリコン粒子を使用した場合と比較して、導電性が改善されるとともに、充放電特性が改善される傾向が見られる。導電性シリコン粒子を使用した場合に充放電特性が改善される傾向は、導電助剤を使用した図10においても見られる。すなわち、導電性シリコンを使用することにより充放電特性を改善することができ、導電助剤の添加量の削減を図ることが期待される。
【符号の説明】
【0025】
10 集電体
12、13 シリコン粒子
13a 導電コートシリコン粒子
14 導電材
15 導電助剤
16 バインダー

図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
5
【図7】
6
【図8】
7
【図9】
8
【図10】
9