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明細書 :太陽光発電装置の発電量予測システム及び発電量予測方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 公開特許公報(A)
公開番号 特開2015-167439 (P2015-167439A)
公開日 平成27年9月24日(2015.9.24)
発明の名称または考案の名称 太陽光発電装置の発電量予測システム及び発電量予測方法
国際特許分類 H02J   3/00        (2006.01)
G06Q  50/06        (2012.01)
FI H02J 3/00 G
G06Q 50/06
請求項の数または発明の数 7
出願形態 OL
全頁数 21
出願番号 特願2014-040950 (P2014-040950)
出願日 平成26年3月3日(2014.3.3)
発明者または考案者 【氏名】小林 智尚
【氏名】吉野 純
【氏名】嶋田 進
出願人 【識別番号】304019399
【氏名又は名称】国立大学法人岐阜大学
個別代理人の代理人 【識別番号】100129698、【弁理士】、【氏名又は名称】武川 隆宣
審査請求 未請求
テーマコード 5G066
5L049
Fターム 5G066AA03
5G066AE03
5G066AE09
5L049CC06
要約 【課題】 任意の地点における太陽光発電装置の発電量を太陽光発電パネルの傾斜をも考慮して高精度で予測することができる太陽光発電装置の発電量予測システム及び発電量予測方法を提供し、系統電力を効率よく安定して供給することを可能とする。
【解決手段】 本発明は、電子計算機を用いて太陽光発電装置の発電量を予測するシステム及び方法であって、異なる計算条件に基づく気象予報データD1~D3に基づく物理気象モデルから大気の光学的厚さを計算することなどにより予測地点の日射強度のアンサンブル予測値と、そのスプレッドとを算出し、予測日射強度の予測信頼度または予測信頼区間を加えて発電量を予測するようにした(ステップS1~S8)太陽光発電装置の発電量予測システム及び発電量予測方法である。
【選択図】図1
特許請求の範囲 【請求項1】
太陽光発電装置による発電量を電子計算機を用いて予測するシステムであって、
2以上の異なる計算条件に基づく物理気象モデルから日射強度または大気の光学的厚さを計算することで得られた予測地点の地上における光の直達成分による日射量と、2以上の異なる計算条件に基づく物理気象モデルから大気の光学的厚さを計算することなく得られた予測地点の地上における光の散乱成分による日射量と、を合算することで、予測地点における任意の斜面の予測日射強度及びそのスプレッドを算出し、
気象予報データに基づいて算出した過去の予測日射強度及びそのスプレッドと、過去の実測日射強度から得られた予測誤差との関係から、1)予測日射強度の信頼度、あるいは、2)所定の確率で得られる予測日射強度の信頼区間を算出し、太陽光発電装置による発電量を予測するようにしたことを特徴とする太陽光発電装置の発電量予測システム。
【請求項2】
太陽光発電装置による発電量を電子計算機を用いて予測するシステムであって、
2以上の異なる計算条件に基づく物理気象モデルから日射強度または大気の光学的厚さを計算することで得られた予測地点の地上における光の直達成分による日射量と、2以上の異なる計算条件に基づく物理気象モデルから大気の光学的厚さを計算することなく得られた予測地点の地上における光の散乱成分による日射量と、を合算することで、予測地点における任意の斜面の予測日射強度及びそのスプレッドを算出し、
そのスプレッドから予測日射強度の信頼度を算出し、太陽光発電装置による発電量を予測するようにしたことを特徴とする太陽光発電装置の発電量予測システム。
【請求項3】
太陽光発電装置による発電量を電子計算機を用いて予測し、系統電力を担う他の発電施設によって発電すべき発電量を予測する方法であって、
2以上の異なる計算条件に基づく物理気象モデルから日射強度または大気の光学的厚さを計算することで得られた予測地点の地上における光の直達成分による日射量と、2以上の異なる計算条件に基づく物理気象モデルから大気の光学的厚さを計算することなく得られた予測地点の地上における光の散乱成分による日射量と、を合算することで、予測地点における任意の斜面の予測日射強度及びそのスプレッドを算出し、
気象予報データに基づいて算出した過去の予測日射強度及びそのスプレッドと、過去の実測日射強度から得られた予測誤差との関係から、所定の確率で得られる予測日射強度の信頼区間を算出して太陽光発電装置による発電量を予測し、
太陽光発電装置以外の発電装置によって発電すべき発電量を予測するようにしたことを特徴とする発電量予測方法。
【請求項4】
太陽光発電装置による発電量を電子計算機を用いて予測し、系統電力を担う他の発電施設によって発電すべき発電量を予測する方法であって、
2以上の異なる計算条件に基づく物理気象モデルから日射強度または大気の光学的厚さを計算することで得られた予測地点の地上における光の直達成分による日射量と、2以上の異なる計算条件に基づく物理気象モデルから大気の光学的厚さを計算することなく得られた予測地点の地上における光の散乱成分による日射量と、を合算することで、予測地点における任意の斜面の予測日射強度及びそのスプレッドを算出し、
そのスプレッドから予測日射強度の信頼度を算出して太陽光発電装置による発電量を予測し、
太陽光発電装置以外の発電装置によって発電すべき発電量を予測するようにしたことを特徴とする発電量予測方法。
【請求項5】
太陽光発電装置による発電量を電子計算機を用いて予測し、系統電力を担う他の発電施設によって発電すべき発電量を予測する方法であって、
2以上の異なる計算条件に基づく物理気象モデルから、大気の光学的厚さを予測することで予測地点における予測日射強度及びそのスプレッドを算出し、
気象予報データに基づく物理気象モデルから算出した過去の予測日射強度及びそのスプレッドと、実測日射強度から得られた予測誤差との関係から所定の確率で得られる予測日射強度の信頼区間を算出して太陽光発電装置による発電量を予測し、
太陽光発電装置以外の発電装置によって発電すべき発電量を予測するようにしたことを特徴とする発電量予測方法。
【請求項6】
太陽光発電装置による発電量を電子計算機を用いて予測し、系統電力を担う他の発電施設によって発電すべき発電量を予測する方法であって、
2以上の異なる計算条件に基づく物理気象モデルから、大気の光学的厚さを予測することで予測地点における予測日射強度及びそのスプレッドを算出し、
そのスプレッドから予測日射強度の信頼度を算出して太陽光発電装置による発電量を予測し、
太陽光発電装置以外の発電装置によって発電すべき発電量を予測するようにしたことを特徴とする発電量予測方法。
【請求項7】
請求項3~請求項6の何れか一項に記載の発電量予測方法を電子計算機で実行するためのプログラム。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、太陽光発電システムの発電量予測方法に関するものであり、さらに詳しくは、気象予報モデルを用いて、任意の地点、任意の高度・方位角で設置された太陽光発電システムの発電量を高精度に予測すると共に、その予測値の信頼度あるいは信頼区間も合わせて予測することができる太陽光発電装置の発電量予測システム及び発電量予測方法であって、系統電力を効率よく安定して供給することを可能とするものである。
【背景技術】
【0002】
太陽光発電の発電出力は天候に大きく作用される。そのため現在、気象予報システムを用いた太陽光発電発電量予測技術開発が世界的に主流になりつつある。しかし、太陽光発電システムあるいは電力事業者という電気電子工学分野と気象予報という気象学分野では大きな隔たりがあり、予測技術開発の進捗は思わしくないのが現状である。
【0003】
太陽光発電は、余剰電力買取制度等の政府・自治体の政策もあり、現在住宅用の普及率は3.8%(2011)におよび、今後もさらに急速な普及が見込まれている。しかし、太陽光発電の発電出力は天候に左右され不安定である、という欠点を有している。太陽光発電がさらに普及した近い将来、この不安定な太陽光発電の出力が電力事業者等の系統電力の不安定要因になりかねないという問題がある。
【0004】
このような理由から、電力事業者にとって有効な情報として、太陽光発電に係わる日射予測や、それに基づく発電量予測を提供する技術が開発されている。
たとえば、「電力供給方法」(特許文献1:特開2004-289918)の様にリアルタイムの気象情報に含まれる日射強度を用いる方法、
「エネルギー需給制御方法及び装置」(特許文献2:特開2005-86953)、「太陽光発電システムの発電量予測方法、装置、およびプログラム」(特許文献3:特開2006-33908)の様に過去の気象データに関するデータベースと前日の気象情報から経験的に当日の予測を行う方法、
「電源システム,電源システムの制御方法およびプログラム(特許文献4:特開2008-43147)」は予測手法が具体的に記載されておらず不明、
資源エネルギー庁やNEDOが近年行っている気象予報モデルを用いて物理的プロセスに従って気象予報および日射強度予報を行う手法などがある。
【0005】
このなかで、気象予報モデルは気象の物理プロセスをそのまま計算機でシミュレートしている点から最も精度が高い。しかし気象予報モデルによる高精度の日射強度予測でも、予報が外れることもあるため、電力事業者がこの予測技術や予測値を電力需要予測に活用するにはリスクが伴い、実際には現状でも利用されていない。
【0006】
岐阜大学では局地気象予報システムを構築し、2006年より国内大学では唯一の気象予報として、岐阜県・愛知県を対象としたピンポイント局地気象予報を公開している。
そしてこの技術を基礎に、太陽光発電システムの発電量予測に係わる局地気象予報モデルを用いた高精度日射強度予測技術を開発している(橋本 潤 外4名,大気放射モデルSMARTS2と局地気象モデルMM5による全天候型分光日射推定モデルの提案,太陽エネルギー学会誌,2008年、特許文献5:特開2011-159199)。
【0007】
現在、電力事業者より太陽光発電システムに係わる日射量予測の要請があるにもかかわらず、実際には上記の予測技術および予測結果は活用されていない。これは、その予測結果の信頼性が不明確なためである。
【0008】
そこで、気象庁が提供する週間アンサンブル予報を利用して、翌日から一週間先を対象とする日射量予測の信頼性を推定する手法が提案されている(非特許文献1)。
しかしながら、この非特許文献1に記載の手法は、気象庁から提供される週間アンサンブル予報のデータから全雲量を予測し、過去の全雲量と日射量の関係から日射量を予測するものであるが、その日射量予測と信頼性の精度は、電力事業者の給電計画で求められている電力需要予測の誤差の許容範囲に達するレベルではない。
【0009】
本件発明においては、前記アンサンブル予測手法をさらに発展させ、局地気象予報モデルによる高精度日射強度予測を行うと共に、当日や翌日について、その予測結果の特に優れた信頼度あるいは信頼区間も合わせて提供できる技術を開発した。
これにより電力事業者は予測の信頼度あるいは信頼区間により、発電予備電力の運用を効果・効率的に行い、系統電力の安定供給が可能となると共に、運用コストの削減にもつなげることが可能である。
【先行技術文献】
【0010】

【特許文献1】特開2004-289918号公報
【特許文献2】特開2005-86953号公報
【特許文献3】特開2006-33908号公報
【特許文献4】特開2008-43147号公報
【特許文献5】特開2011-159199号公報
【0011】

【非特許文献1】野原大輔、田村英寿「太陽光発電のための日射量予測の信頼性指標」、電力中央研究所報告、電力中央研究所、平成25年4月、研究報告V12015
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明が解決しようとする課題は、従来の太陽光発電装置による発電量予測方法のために使用される日射量予測と信頼性の精度が、電力事業者の給電計画で求められている電力需要予測の誤差の許容範囲に達するレベルではないことであり、本発明の目的は、局地気象予報モデルを用いて予測地点における任意の斜面の予測日射強度を高精度に算出して太陽光発電装置による発電量を予測し、当日や翌日について、その予測結果の特に優れた信頼度あるいは信頼区間も合わせて提供できる技術を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明は、各種の太陽光発電装置の実際の設置地点における発電量を高精度で予測するため、大気の運動、雲の生成・移動・消散過程、降雨、気温変化などを流体力学や熱力学などの方程式に従って忠実に再現したコンピュータ・シミュレーション・モデルである物理気象モデルを用いて大気や雲中の水粒子などによる太陽光の反射・散乱・吸収過程を光学的に忠実に再現して、大気の光学的厚さなどを算出し、地表に達する日射強度を詳細かつ正確に算出し、太陽光発電装置による発電量を算出して予測するものであり、
『太陽光発電装置による発電量を電子計算機を用いて予測するシステムであって、
2以上の異なる計算条件に基づく物理気象モデルから日射強度または大気の光学的厚さを計算することで得られた予測地点の地上における光の直達成分による日射量と、2以上の異なる計算条件に基づく物理気象モデルから大気の光学的厚さを計算することなく得られた予測地点の地上における光の散乱成分による日射量と、を合算することで、予測地点における任意の斜面の予測日射強度及びそのスプレッドを算出し、
気象予報データに基づいて算出した過去の予測日射強度及びそのスプレッドと、過去の実測日射強度から得られた予測誤差との関係から、1)予測日射強度の信頼度、あるいは、2)所定の確率で得られる予測日射強度の信頼区間を算出し、太陽光発電装置による発電量を予測するようにしたことを特徴とする太陽光発電装置の発電量予測システム。』を主要な特徴とする。
【0014】
さらに、本発明は、
『太陽光発電装置による発電量を電子計算機を用いて予測するシステムであって、
2以上の異なる計算条件に基づく物理気象モデルから日射強度または大気の光学的厚さを計算することで得られた予測地点の地上における光の直達成分による日射量と、2以上の異なる計算条件に基づく物理気象モデルから大気の光学的厚さを計算することなく得られた予測地点の地上における光の散乱成分による日射量と、を合算することで、予測地点における任意の斜面の予測日射強度及びそのスプレッドを算出し、
そのスプレッドから予測日射強度の信頼度を算出し、太陽光発電装置による発電量を予測するようにしたことを特徴とする太陽光発電装置の発電量予測システム。』を主要な特徴とする。
【0015】
また、本発明は、
『太陽光発電装置による発電量を電子計算機を用いて予測し、系統電力を担う他の発電施設によって発電すべき発電量を予測する方法であって、
2以上の異なる計算条件に基づく物理気象モデルから日射強度または大気の光学的厚さを計算することで得られた予測地点の地上における光の直達成分による日射量と、2以上の異なる計算条件に基づく物理気象モデルから大気の光学的厚さを計算することなく得られた予測地点の地上における光の散乱成分による日射量と、を合算することで、予測地点における任意の斜面の予測日射強度及びそのスプレッドを算出し、
気象予報データに基づいて算出した過去の予測日射強度及びそのスプレッドと、過去の実測日射強度から得られた予測誤差との関係から、所定の確率で得られる予測日射強度の信頼区間を算出して太陽光発電装置による発電量を予測し、
太陽光発電装置以外の発電装置によって発電すべき発電量を予測するようにしたことを特徴とする発電量予測方法。』を主要な特徴とする。
【0016】
さらに、本発明は、
『太陽光発電装置による発電量を電子計算機を用いて予測し、系統電力を担う他の発電施設によって発電すべき発電量を予測する方法であって、
2以上の異なる計算条件に基づく物理気象モデルから日射強度または大気の光学的厚さを計算することで得られた予測地点の地上における光の直達成分による日射量と、2以上の異なる計算条件に基づく物理気象モデルから大気の光学的厚さを計算することなく得られた予測地点の地上における光の散乱成分による日射量と、を合算することで、予測地点における任意の斜面の予測日射強度及びそのスプレッドを算出し、
そのスプレッドから予測日射強度の信頼度を算出して太陽光発電装置による発電量を予測し、
太陽光発電装置以外の発電装置によって発電すべき発電量を予測するようにしたことを特徴とする発電量予測方法。』を主要な特徴とする。
【0017】
また、本発明は、
『太陽光発電装置による発電量を電子計算機を用いて予測し、系統電力を担う他の発電施設によって発電すべき発電量を予測する方法であって、
2以上の異なる計算条件に基づく物理気象モデルから、大気の光学的厚さを予測することで予測地点における予測日射強度及びそのスプレッドを算出し、
気象予報データに基づく物理気象モデルから算出した過去の予測日射強度及びそのスプレッドと、実測日射強度から得られた予測誤差との関係から所定の確率で得られる予測日射強度の信頼区間を算出して太陽光発電装置による発電量を予測し、
太陽光発電装置以外の発電装置によって発電すべき発電量を予測するようにしたことを特徴とする発電量予測方法。』を主要な特徴とする。
【0018】
さらに、本発明は、
『太陽光発電装置による発電量を電子計算機を用いて予測し、系統電力を担う他の発電施設によって発電すべき発電量を予測する方法であって、
2以上の異なる計算条件に基づく物理気象モデルから、大気の光学的厚さを予測することで予測地点における予測日射強度及びそのスプレッドを算出し、
そのスプレッドから予測日射強度の信頼度を算出して太陽光発電装置による発電量を予測し、
太陽光発電装置以外の発電装置によって発電すべき発電量を予測するようにしたことを特徴とする発電量予測方法。』を主要な特徴とする。
また、本発明は、上記の発電量予測方法を電子計算機で実行するためのプログラムを主要な特徴とするものである。
【発明の効果】
【0019】
上記構成を採用したことにより、本発明による太陽光発電装置の発電量予測システム及び発電量予測方法は、以下の優れた効果を奏することができる。
1.『2以上の計算条件で予測することによって、そのスプレッドから太陽光発電装置の発電量予測の信頼度あるいは信頼区間を求めることができる。』
2.『大気の光学的厚さを算出することで、日射強度を高精度に予測して太陽光発電装置による発電量を正確に予測することもできる。』
3.『日射を直達日射と、散乱日射とに分けて(2つ以上の計算条件で)予測することにより、斜面でも(信頼度あるいは信頼区間を加えて)日射強度を正確に予測することができる。即ち、任意の地点における太陽光発電装置の発電量を太陽光発電パネルの傾斜をも考慮して高精度で予測することができる。』
【0020】
上記により、系統電力の地域内により多くの太陽光発電システムの導入が可能となり、太陽光発電の普及に貢献すると共に、発電事業者の効率化・コスト削減を通して、地域社会電気需用者には再生可能エネルギー賦課金等の削減などの地域貢献、経済効果も期待できる。さらに太陽光発電普及促進を通して地球温暖化ガス排出削減という環境面でも重要となる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】図1は、本発明の太陽光発電装置の発電量予測方法のフローを概念的に示すブロック図である。
【図2】図2は、本発明の太陽光発電装置の発電量予測システムと配電系統を示す概念図である。
【図3】図3は、本発明の一実施例における気象予報計算の対象領域を示す図である。
【図4】図4は、本発明の一実施例における水平面全天日射強度予測結果と観測値との比較を示すグラフ図である。
【図5】図5は、日々の水平面全天日射強度のアンサンブル予測結果の一例を示すグラフ図である。
【図6】図6は、水平面全天日射強度の当日予測値とそのスプレッドの時系列を示すグラフ図である。
【図7】図7は、水平面全天日射強度のアンサンブル予測スプレッドと予測誤差との関係を示すグラフ図である。
【図8】図8は、水平面全天日射強度の当日予測値とその信頼区間の時系列を示すグラフ図である。
【図9】図9は、WRFによる大気の光学的厚さ予測結果と観測値との比較を示すグラフ図である。
【図10】図10は、大気の光学的厚さのアンサンブル予測スプレッドと予測誤差との関係を示すグラフ図である。
【図11】図11は、水平面全天日射強度の当日予測値とその信頼区間の時系列を示すグラフ図である。
【図12】図12は、傾斜面全天日射強度の当日予測値とその信頼区間の時系列を示すグラフ図である。
【図13】図13は、本発明の太陽光発電装置の発電量予測方法のフローを概念的に示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本発明は、
太陽光発電装置による発電量を電子計算機を用いて予測するシステムであって、
2以上の異なる計算条件に基づく物理気象モデルから日射強度または大気の光学的厚さを計算することで得られた予測地点の地上における光の直達成分による日射量と、2以上の異なる計算条件に基づく物理気象モデルから大気の光学的厚さを計算することなく得られた予測地点の地上における光の散乱成分による日射量と、を合算することで、予測地点における任意の斜面の予測日射強度及びそのスプレッドを算出し、
気象予報データに基づいて算出した過去の予測日射強度及びそのスプレッドと、過去の実測日射強度から得られた予測誤差との関係から、1)予測日射強度の信頼度、あるいは、2)所定の確率で得られる予測日射強度の信頼区間を算出し、太陽光発電装置による発電量を予測するようにしたことを特徴とするものである。

【0023】
また、本発明は、
太陽光発電装置による発電量を電子計算機を用いて予測するシステムであって、
2以上の異なる計算条件に基づく物理気象モデルから日射強度または大気の光学的厚さを計算することで得られた予測地点の地上における光の直達成分による日射量と、2以上の異なる計算条件に基づく物理気象モデルから大気の光学的厚さを計算することなく得られた予測地点の地上における光の散乱成分による日射量と、を合算することで、予測地点における任意の斜面の予測日射強度及びそのスプレッドを算出し、
そのスプレッドから予測日射強度の信頼度を算出し、太陽光発電装置による発電量を予測するようにしたことを特徴とするものである。
本発明の具体的構成について、以下において説明する。

【0024】
本発明においては、日射強度予測の予測値とその信頼度あるいは信頼区間を得るために、米国大気科学研究センター(NCAR:National Center for Atmospheric Research)および米国環境予測センター(NCEP:National Center for Environmental Prediction)共同開発の気象予報モデル(WRF:Weather Research and Forecasting,Shamarock et al.,2008)バージョン3.3.1を用いた。
この気象予報モデルは、熱力学を含む数値流体力学モデルに降水や大気放射等のあらゆる気象現象の物理過程を組み込んだ非静力学・完全圧縮の領域気象モデルである。

【0025】
現業予報機関(気象庁)から配信される等間隔の格子状に配列された気象パラメータ(風速、温度、湿度、気圧)を回転座標における熱流体力学の方程式および各種物理過程の方程式の初期値および境界値として与えることで、入力されたパラメータ以外に降水量や日射量などの新たな変数を数km格子間隔で出力することができる。

【0026】
しかしながら、上記の気象予報モデルWRFでは、水平面日射強度しか予測・推定できない。
一方、太陽光発電パネルは、ある方位角および高度角を有して設置されている。このような太陽光発電パネルに入射する日射強度を推定するためには、任意の斜面(傾斜面)における日射強度を推定する必要がある。
そこで、本発明においては、全天候型大気放射モデル(Hashimoto et al.,2008)を用いてWRFによる気象予報結果から直達日射強度および散乱日射強度を推定し、これにより任意の斜面における日射強度を推定することとした。

【0027】
<<アンサンブル予測手法>>
さらに、本発明においては、アンサンブル予測を用いており、このアンサンブル予測は、複数の異なる条件下で予測計算を行い、得られる複数の結果の平均値やばらつき(スプレッド)から尤もらしい予測値やその信頼度、信頼区間を推定する手法である。
この手法では、異なる条件の設定方法からさまざまな種類があるが、一例として、初期値アンサンブル予測の時間ずらし平均法(Lagged Averaged Forecast,LAF法)を用いた。また、アンサンブル予測変数には、日射強度あるいは大気の光学的厚さを用いた。

【0028】
複数の予測値のばらつき(スプレッド)が小さい場合には初期値等に依存しない気象状態であり、予測値が大きく外れることは考えづらく、予測の信頼度は高い。
一方このばらつき(スプレッド)が大きい場合には、わずかな計算条件の違いで計算結果が大きく異なるため、予測が困難な気象状態に対応し、予測値が大きく外れるリスクが大きく、予測の信頼度は低い。
【実施例1】
【0029】
まず、電子計算機を用いた本発明の太陽光発電装置の発電量予測方法及び太陽光発電装置の発電量予測システムの概要について図1~図12に従って説明する。
【実施例1】
【0030】
本発明の太陽光発電装置の発電量予測システムは、図2に示すように、電子計算機1と電子計算機2とから構成されており、これらの電子計算機1,2と気象庁3とは、インターネット4を介して互いに接続されている。
【実施例1】
【0031】
前記電子計算機1は、物理気象モデルに基づいて大気及び地上の物体による物理現象について計算(シュミレーション)を行うものであって、気象庁3から気象予報データ5を24時間毎に受信し、大気の光学的厚さ、予測日射量、太陽光発電装置6による予測発電量などを算出するものである。
【実施例1】
【0032】
なお、前記電子計算機1は、気象予報データ5などの受領に約1時間、2日分のシュミレーション及び日射強度予測計算に約6時間要する。
【実施例1】
【0033】
また、電子計算機2は、電子計算機1にて算出された太陽光発電装置6による予測発電量と、配電系統7に接続されている電力需要家8によって消費される電力需要の予測とから、火力発電所など9の太陽光発電装置6以外の発電施設(他の発電装置)によって発電すべき発電量を予測し、火力発電所など9の発電量を制御する。
なお、この発電量の制御は、電子計算機2によるプログラムによることなく、適宜人為的に決定することも可能である。
【実施例1】
【0034】
<初期条件・境界条件>
本発明の気象予報システムにおいて使用している気象予報データは、下記表1に示すように気象庁から提供されるGSM-JPデータであり、そのほかには、地表面温度条件としてNCARの地表面温度データを、海表面温度条件にはNCARのOSTIAデータを用いた。
【実施例1】
【0035】
【表1】
JP2015167439A_000003t.gif
【実施例1】
【0036】
なお、前記電子計算機1には、複数台の電子計算機2がインターネット4を介してアクセス可能に構成することができ、本発明による発電量の算出(予測)はインターネット4の利用環境がある場所であれば、本発明の電子計算機用プログラムを組み込んだ電子計算機1によっても、電子計算機2によっても行うことが可能である。
また、電子計算機1と電子計算機2の役割を1台の電子計算機にまとめる事もできる。
【実施例1】
【0037】
そして、前記電子計算機1(又は電子計算機2)には、気温、気圧、湿度、風速などの気象に関するデータの他に、発電量を予測する予測対象地点に関する地理データ及び太陽光発電装置に関する発電システムデータなどが入力される。
前記発電システムデータには、太陽光発電装置6についての分光発電効率、受光面積、方位角、高度角といったデータが含まれ得る。
【実施例1】
【0038】
次に、本発明の実施例において、太陽光発電装置の発電量予測システムによるデータ処理方法の概略について説明する。
【実施例1】
【0039】
まず、当日の発電量予測は、以下の通りにて算出する。
<当日の発電量予測について>
前記電子計算機1は、上記の表1及び図1に示すように、気象庁3から気象予報データ5として、異なる日に予測された気象庁予報データD1、D2、D3などを受領し、それらの異なる計算条件1~3に基づいて、72時間先までの物理気象モデルをシミュレーションにて計算し、予測対象場所の日時毎の地上水平面日射強度及び大気の光学的厚さを算出する(ステップS1~S3)。
ここで、当日の気象庁予報データD1、D2、D3は、それぞれ当日に出された気象庁予報データ、昨日出された気象庁予報データ、2日前に出された気象庁予報データというように、異なる気象予報データを用いるものである。
アンサンブル予測を可能とする、このような異なる計算条件としては、少なくとも2以上あればよいが、4以上あってもよい。
【実施例1】
【0040】
上記のとおり異なる計算条件1~3に基づいて水平面予測日射強度のアンサンブル予測値とそのスプレッドを算出する(ステップS4)。
また、上記のとおり異なる計算条件1~3に基づいて予測大気の光学的厚さのアンサンブル予測値とそのスプレッドを算出する(ステップS5)。
【実施例1】
【0041】
上記により得られた水平面予測日射強度と、予測大気の光学的厚さから任意の斜面における予測日射強度のアンサンブル予測値およびそのスプレッドを算出する(ステップS6)。
ここで、大気の光学的厚さを考慮することで光の直達成分を予測すれば、より一層正確な日射強度を予測できる。
また、大気の光学的厚さを考慮することなく散乱日射強度を算出することで、予測対象地点の光の散乱成分を予測する。
【実施例1】
【0042】
電子計算機1は、上記の通り得られた予測日射強度およびそのスプレッドから、予測日射強度の予測信頼度を得ることができる(ステップS7)。
さらに、現地で過去に実際に観測された日射強度と比較することで、所定の確率で得られる予測日射強度の信頼区間を算出することができる(ステップS8)。
そして、上記光の直達成分と散乱成分の合計から、太陽光発電装置による発電量を予測すれば、上記太陽光発電装置のパネルの方位角と高度角を考慮した予測発電量およびその信頼度または信頼区間を正確に得ることができる。
【実施例1】
【0043】
<翌日の発電量予測について>
同様に、前記電子計算機1は、気象庁3から翌日の気象庁予報データを複数受領し、それらの異なる計算条件に基づいて、72時間先までの物理気象モデルをシミュレーションにて計算し、予測対象場所の日時毎の地上水平面日射強度及び大気の光学的厚さを算出する。
ここで、翌日の気象庁予報データは、当日に出された気象庁予報データ、昨日出された気象庁予報データというように、異なる気象予報データを用いるものである。
【実施例1】
【0044】
そして、上記のとおり異なる計算条件に基づいて水平面予測日射強度のアンサンブル予測値とそのスプレッドを算出する。
また、上記のとおり異なる計算条件に基づいて予測大気の光学的厚さのアンサンブル予測値とそのスプレッドを算出する。
【実施例1】
【0045】
さらに、上記により得られた水平面予測日射強度と、予測大気の光学的厚さから任意の斜面における予測日射強度のアンサンブル予測値およびそのスプレッドを算出する
電子計算機1は、上記の通り得られた予測日射強度およびそのスプレッドから、予測日射強度の予測信頼度を得ることができる。
【実施例1】
【0046】
さらに、現地で過去の一定期間、例えば2ヶ月間又は3ヶ月間に実際に観測された日射強度と比較することで、所定の確率で得られる予測日射強度の信頼区間を算出することができる。
そして、上記光の直達成分と散乱成分の合計から、太陽光発電装置による発電量を予測すれば、上記太陽光発電装置のパネルの方位角と高度角を考慮した予測発電量およびその信頼度または信頼区間を正確に得ることができる。
【実施例1】
【0047】
上記の予測発電量及び電力需要家による電力需要予測を基に、電子計算機2は、配電系統7に接続されている火力発電装置など9によって発電することが必要な発電量を予測し、火力発電所など9の他の発電装置による発電量を制御する。
なお、上記配電系統7に接続されている火力発電装置など9によって発電することが必要な発電量の予測は、太陽光発電装置6による予測発電量から電子計算機2に依ること無く、配電系統7の管理者が決定してもよい。
上記の通り、当日の発電量予測は、過去2日分の気象庁予報データ及び当日の気象庁予報データからアンサンブル予測できる。
翌日の発電量予測は、昨日出された翌日についての気象庁予報データ及び当日出された翌日についての気象庁予報データからアンサンブル予測できる。
【実施例1】
【0048】
予報結果の一例として、水平面日射強度の予報と実際の観測結果を図8に示す。この図は当日朝に行った1日分の予測結果を接続して時系列的に表示している。図中には日射強度予測の最確値(実線)と共に50%確率の信頼区間(点線)を示している。この図では、日々の天気の変化に伴い、予測される日射強度が変化していることや、予測の信頼度により、2本の点線で表される信頼区間の幅も変化していることがわかる。
【実施例1】
【0049】
このように、本願発明の技術により、太陽光発電に係わる日射強度予測で高精度の予測値を提供できると共に、その予測値の信頼度あるいは信頼区間も合わせて提供可能となる。
即ち、本願発明の気象予報モデルによるアンサンブル予測により、太陽光発電に係わる日射強度予測を気象予報モデル単体に比べてより高精度に予測が可能となる。
さらに、気象予報モデルによるアンサンブル予測により、太陽光発電に係わる日射強度予測を予測値の信頼度あるいは信頼区間も合わせて提供できる。
【実施例1】
【0050】
本発明は、上記のように、アンサンブル予測の変数に、日射強度のみを用いる場合のほか、大気の光学的厚さを用いる手法も開発したため、これによりより精度の高い予測が可能となる。
また、本発明は、日射を直達日射、散乱日射に分けて予測することにより、任意の高度角・方向角を有する傾斜面、即ち、個々の太陽光発電装置のパネルの斜面での日射強度を正確にアンサンブル予測することができる。
【実施例1】
【0051】
次に、本発明の太陽光発電装置の発電量予測方法及び太陽光発電装置の発電量予測システムについての詳細について説明する。
【実施例1】
【0052】
<アンサンブル予測で得られる情報>
本発明では、日射強度を予測するためにアンサンブル予測を行っている。しかし、一般に気象予測の結果は予測期間が長くなるに従って予測精度が低下する。そこで、日射強度の予測値は直近の予測の結果を用いることとした。この点が、予測値にアンサンブル予測の平均値を用いる通常のLAF法とは異なっている。
【実施例1】
【0053】
アンサンブル予測メンバーのばらつきを示す指標として、以下のここでは式(1)に示すスプレッドSを採用した。
下記式(1)中、Nはメンバー数、xi はi番目のメンバーの予測値である。
【数1】
JP2015167439A_000004t.gif
…式(1)
予測の信頼区間は、過去の予測結果のスプレッドと観測結果の関係から求めることとした。
【実施例1】
【0054】
<アンサンブル予測変数>
本発明では、アンサンブル予測の変数に日射強度あるいは大気の光学的厚さを用いた。
日射強度のうち水平面全天日射強度は気象予報モデルWRFにより求めることができる。また、直達日射強度、散乱日射強度はWRFによる計算結果を基に全天候型大気放射モデルより求めた。
一方、大気の光学的厚さτは以下のLambert Beerの式(2)で表される。
【実施例1】
【0055】
【数2】
JP2015167439A_000005t.gif
…式(2)
【実施例1】
【0056】
ここで、Iは地上での日射強度、I は大気上端での日射強度、 AMはエアマスである。この光学的厚さτはWRFあるいは大気放射モデルより得られた日射強度から、上記式(2)を用いて求めることができる。
【実施例1】
【0057】
アンサンブル予測の変数に大気の光学的厚さを用いることにより、日射強度の予測値に含まれる不確実性を、既知の値であるエアマスAMを用いて、理論的にさらに絞り込むことができる。ただし、Lambert Beerの式は透過光の式であるため、散乱光の推定にはこの光学的厚さを使用することはできない。
【実施例1】
【0058】
<<水平面全天日射強度によるアンサンブル予測>>
<局地気象予報モデルWRFによる日射予測>
そこで、まず局地気象予報モデルWRFの日射予測精度を検討した。対象地点は、図3に示す長野・静岡・岐阜・愛知・三重の東海5県の61地点とし、これらの地点での日射予測結果を観測結果と比較した。
この例では二日先までの予測を行っているので、当日予測、翌日予測、二日先の予測の、予測期間ごとに検討した。両者の相関図を図4に示す。また、予測期間毎の予測誤差を下記の表2に示す。
【実施例1】
【0059】
【表2】
JP2015167439A_000006t.gif
【実施例1】
【0060】
これらの図表より局地気象予報モデルWRFによる日射強度予測の精度は高いことがわかるが、特に日射強度が中位程度(400W/m程度)の場合に、WRFは観測値に比べて過大評価する傾向があることがわかる。また、予測期間が長期化するに従って予測精度が低下していることがわかる。
【実施例1】
【0061】
<日射強度のアンサンブル予測>
上記の例における気象予測計算は、毎日、二日先までの予測計算を行っている。また、アンサンブル予測としては、初期値アンサンブル予測のLAF法により、24時間毎に予測計算を行っているため、アンサンブルメンバー数は、当日予測は3メンバー、翌日予測は2メンバー、二日先予測は1メンバーとなる。これらを踏まえ、日々の水平面全天日射強度のアンサンブル予測結果の一例を図5に示す。図中には、最新の予測結果とスプレッドを示している。
【実施例1】
【0062】
図中、予測期間によりメンバー数が異なっており、さらに二日先予測ではメンバー数が1つであるために、スプレッドは0となっている。この様に、日々の予測では、二日先までの日射強度予測と、当日および翌日予測のスプレッドが計算できる。
【実施例1】
【0063】
次に、当日予測とそのスプレッドを時系列的に並べた結果の一例を図6に示す。この図では、アンサンブルメンバー数は3メンバーである。
予測値およびスプレッドの時系列変化は、太陽の日周運動のほか、日々の天気の変化で変化していることがわかる。
【実施例1】
【0064】
<スプレッドと予測誤差の関係>
日射強度アンサンブル予測のスプレッドと実際の予測誤差の関係を図7に示す。
図中の横軸がアンサンブル予測スプレッド、縦軸が観測値を基準とした予測誤差である。この図はさらに、予測誤差の正負別々に、スプレッドを10W/m毎のバンドでの、予測誤差の出現頻度も折れ線で示している。この図より、負の予測誤差に比べて正の予測誤差が大きいことがわかる。これは、図4に示すとおり、局地気象予報モデルWRFは特に中程度の日射強度で過大評価する傾向があるためである。また折れ線グラフで示される予測誤差の出現頻度から、予測誤差の正側負側ともに、スプレッドが大きくなるに従って、予測誤差が大きくなっていることがわかる。
【実施例1】
【0065】
<信頼区間を含めた日射強度予測>
図7に示すスプレッドと予測誤差との関係から、信頼区間を含めた日射強度予測を行った。当日予測を時系列的に並べた予想結果の一例を図8に示す。
図中の信頼区間は図7で得られた予測誤差の出現頻度から算出している。この図では、出現頻度50%の誤差範囲を信頼区間50%として表示している。また、信頼区間の上限値は大気上端での日射強度、下限値はゼロとしている。
以上のように、アンサンブル予測を用いて、日射強度を信頼区間も含めて予測することが可能である。
【実施例1】
【0066】
<<大気の光学的厚さを用いたアンサンブル予測>>
<大気の光学的厚さを用いる意義>
ここでは式(2)で示される大気の光学的厚さをアンサンブル予測変数として用いた水平面全天日射強度のアンサンブル予測を行う。
ここで、日射強度の予測誤差と大気の光学的厚さの予測誤差との関係について解析する。日射強度Iおよび大気の光学的厚さτをそれぞれ以下の式(3)のように表す。
【実施例1】
【0067】
【数3】
JP2015167439A_000007t.gif
…式(3)
【実施例1】
【0068】
上記の日射強度と光学的厚さを上記式(2)に代入する。
【数4】
JP2015167439A_000008t.gif
…式(4)
【実施例1】
【0069】
ここで、大気の光学的厚さτの誤差は最確値に対して小さいと仮定し、マクローリング展開する。
【数5】
JP2015167439A_000009t.gif
…式(5)
【実施例1】
【0070】
これにより、以下の関係が導かれる。
【数6】
JP2015167439A_000010t.gif
…式(6)
【実施例1】
【0071】
上記式(6)の第2式より、日射強度の誤差I’は、大気の光学的厚さの誤差τ’に既知の値IおよびAMを掛けた値となっている。
すなわち、光学的厚さの誤差τ’が一定でも、異なる時間帯、地点によりIやAMが変化した場合には、その変化量が日射強度の誤差I’に現れてしまうという点がわかる。これより、日射強度の予測誤差を議論する場合、大気の光学的厚さの予測誤差τ’がより基本的な変数となることがわかる。そこで、ここではこの大気の光学的厚さτをアンサンブル予測の変数として扱うこととした。
【実施例1】
【0072】
<局地気象予報モデルWRFによる大気の光学的厚さの予測>
まず、局地気象予報モデルWRFによる大気の光学的厚さの予測精度を検討した。計算条件等は上記にて説明した水平面全天日射強度と同様にして、その光学的厚さを予測した。この予測値と、過去の約3ヶ月間の観測値からの算出値との相関図を図9に示す。
また、予測期間ごとの予測誤差を以下の表3にまとめる。
【実施例1】
【0073】
【表3】
JP2015167439A_000011t.gif
【実施例1】
【0074】
<スプレッドと予測誤差の関係>
日射強度のアンサンブル予測において、大気の光学的厚さ予測のスプレッドと観測値から算出された予測誤差の関係を図10に示す。
図中の横軸がアンサンブル予測スプレッド、縦軸が観測値からの算出値を基準とした予測誤差である。この図にはさらに、予測誤差の正負別々に、スプレッドを0.02ごとのバンドでの、予測誤差の出現頻度も折れ線で示している。折れ線グラフで示される予測誤差の出現頻度から、予測誤差の正側負側ともに、スプレッドが大きくなるに従って,予測誤差が大きくなっていることがわかる。
【実施例1】
【0075】
<信頼区間を含めた日射強度予測>
図10に示すスプレッドと予測誤差との関係から、信頼区間を含めた日射強度予測を行った。当日予測を時系列的に並べた予測結果の一例を図11に示す。
図中の信頼区間は、図10で得られた予測誤差の出現頻度から算出している。この図では、出現頻度50%の誤差範囲を信頼区間50%として表示している。また、信頼区間の上限値には大気の光学的厚さで対象期間中の最小値τminを用いて算出した日射強度を、下限値はゼロとしている。この最小値τminは、雲や水蒸気を含まない大気、すなわち大気構成ガスのみによる光学的厚さにほぼ相当している。
以上のように、アンサンブル予測を用いて、日射強度を信頼区間も含めて予測することが可能である。
【実施例1】
【0076】
<任意傾斜面における日射強度アンサンブル予測>
直達日射強度・散乱日射強度のアンサンブル予測から任意の方位角、高度角を有する斜面における日射強度のアンサンブル予測を行う。直達日射強度と散乱日射強度の予測手法の一例として、ここでは既に述べた局地気象予報モデルWRFと全天候型大気放射モデルを用いる。
日射強度予測の一例として、図3に示す対象地点61地点において、真東方向、高度角20度の傾斜面における全天日射強度アンサンブル予測のうち、当日予測を時系列で図12に示す。
【実施例1】
【0077】
予測計算過程で、直達日射成分は大気の光学的厚さを用いたアンサンブル予測を行い、散乱日射成分は水平面全天日射強度によるアンサンブル予測を用いた。そして斜面での予測日射強度およびその信頼区間は斜面に対する直達日射成分、散乱日射成分をそれぞれ合成した。ただし傾斜面における観測値は有していないため、信頼区間の算出には便宜的に図7と図10に示される出現頻度を用いた。
【実施例1】
【0078】
以上のように、任意の方位角、高度角を有する斜面における日射強度の正確なアンサンブル予測も可能である。
【実施例1】
【0079】
図13は、本発明の他の実施形態を示しており、この実施形態では、ステップS11~S13において前記電子計算機1は、気象予報データ5として気象庁3から当日の気象庁予報データD1、D2、D3などを受領し、それらの異なる計算条件1~3に基づいて、72時間先までの物理気象モデルをシミュレーションにて計算し、予測対象場所の日時毎の大気の光学的厚さを算出する。
【実施例1】
【0080】
次に、上記のとおり異なる計算条件1~3に基づいて予測大気の光学的厚さのアンサンブル予測値とそのスプレッドを算出する(ステップS14)。
このスプレッドによって、予測の信頼度を得ることができる(ステップS15)。
【実施例1】
【0081】
上記により得られた予測大気の光学的厚さから予測日射強度のアンサンブル予測値およびそのスプレッドを算出することができる(ステップS16)。
また、前記予測大気の光学的厚さのアンサンブル予測値とそのスプレッド、及び、現地で過去の一定期間、例えば2ヶ月間又は3ヶ月間に実際に観測された日射強度と比較することで、所定の確率で得られる予測日射強度の信頼区間を算出することができる(ステップS17)。
そして、上記予測日射強度から、太陽光発電装置による発電量を予測すれば、上記太陽光発電装置の予測発電量およびその信頼度または信頼区間を正確に得ることができる。
【実施例1】
【0082】
本発明は、上記実施例の形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で変更して実施することが可能であり、例えば、信頼区間を50%以外の60%、70%、80%、90%、95%といった確率のものとして算出したり、予測発電量の信頼性のみを提供するようにして実施してもよい。
また、本発明は、気象予報データとして気象庁から提供される気象庁予報データ以外のデータを用いて物理気象モデルをシミュレーションするシステムにおいて本発明を具体化して実施してもよい。
さらに、日射強度予測に際して分光日射強度についても計算し、その計算結果に基づいて個々の太陽光発電装置の分光特性に応じた発電量予測を詳細に行うようにしてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0083】
本発明は、太陽光発電装置の発電量予測システム及び発電量予測方法として、さらには、太陽光発電装置の発電量算出システム及び発電量算出方法として、太陽光発電装置とリンクした発電所による発電量を気象の変化に応じて的確に調整することが可能となり、電力を安定供給することに利用することが可能である。
即ち、本発明の手法により、高精度日射強度予測を行うと共に、その予測結果の信頼度あるいは信頼区間も合わせて提供できる。これにより電力事業者は予測の信頼度あるいは信頼区間により、発電予備電力の運用を効果・効率的に行い、系統電力の安定供給が可能となると共に、運用コストの削減にもつなげることが可能である。
これは,太陽光発電システムの大量導入時代において、安定した系統電力供給体制の確立に貢献するものである。
【符号の説明】
【0084】
1 電子計算機
2 電子計算機
3 気象庁
4 インターネット
5 気象予報データ(気象庁予報データD1~D3)
6 太陽光発電装置
7 配電系統
8 電力需要家
9 火力発電所など(他の発電装置)
S1~S8、S11~S17 ステップ
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
5
【図7】
6
【図8】
7
【図9】
8
【図10】
9
【図11】
10
【図12】
11
【図13】
12