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明細書 :結晶粒微細化剤およびその製造方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 公開特許公報(A)
公開番号 特開2015-212402 (P2015-212402A)
公開日 平成27年11月26日(2015.11.26)
発明の名称または考案の名称 結晶粒微細化剤およびその製造方法
国際特許分類 B22F   9/08        (2006.01)
C22C  21/00        (2006.01)
B22D  27/20        (2006.01)
FI B22F 9/08 A
C22C 21/00 N
B22D 27/20 B
請求項の数または発明の数 3
出願形態 OL
全頁数 12
出願番号 特願2014-094548 (P2014-094548)
出願日 平成26年5月1日(2014.5.1)
発明者または考案者 【氏名】渡辺 義見
【氏名】佐藤 尚
【氏名】平子 孝明
出願人 【識別番号】304021277
【氏名又は名称】国立大学法人 名古屋工業大学
審査請求 未請求
テーマコード 4K017
Fターム 4K017AA04
4K017BA01
4K017BB09
4K017CA01
4K017CA07
4K017DA09
4K017EB00
要約 【課題】短時間で微細化能を示す結晶粒微細化剤を提供する。
【解決手段】溶湯中で分断可能な多結晶金属間化合物粒子を含有する微細化剤であり、好適には、その多結晶金属間化合物粒子がガスアトマイズ法にて作製した球状のAlTiであるアルミニウムあるいはアルミニウム合金用結晶粒微細化剤。
【選択図】 図10
特許請求の範囲 【請求項1】
ガスアトマイズ法を用いた多結晶金属間化合物粒子の製造方法。
【請求項2】
前記多結晶金属間化合物がAlTiである請求項1に記載の製造方法。
【請求項3】
請求項1または2に記載の多結晶金属間化合物粒子を含むアルミニウムあるいはアルミニウム合金用結晶粒微細化剤。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、鋳造アルミニウムおよび鋳造アルミニウム合金の結晶粒微細化に関するものである。
【背景技術】
【0002】
アルミニウムの代表的な加工法の一つに鋳造がある。鋳造は、溶湯を用いる加工であるため、外形が複雑であっても、中空部のある形状であっても成形可能である。しかし、結晶粒が粗大化し不均一な組織となるため、強度低下を生じやすいという欠点を持つ(非特許文献1参照)。そのため、凝固組織の均質化および材料強度の改善が必要である。その方法として、結晶粒微細化による機械的性質の向上が最適である。一般に、溶湯の冷却速度を速くして、凝固が開始する時の過冷却を大きく発生させることにより、核生成のための活性化に要するエネルギーが小さくなる。これにより核生成が容易になり、生成する結晶粒の数が増加するため組織が微細化される(非特許文献2参照)。しかし、凝固組織を微細にするために鋳造時に急冷した場合、鋳型が冷えすぎることや凝固バランスが崩れて溶湯補給が不十分になる。その結果、湯境や引け巣が発生するなど鋳造欠陥を増加させる要因となる可能性がある。
【0003】
鋳造アルミニウムおよび鋳造アルミニウム合金の結晶粒を微細化する一つの方法としてAlTi、TiBあるいはTiCなどの微細な粒子を含むAl-Ti-X系合金微細化剤の添加がある(非特許文献3参照)。ここで、Xはホウ素あるいは炭素であり、多くはチタンの質量分率が5パーセント程度の合金である。この微細化剤中のAlTi金属間化合物の異質核作用により微細化剤を添加した鋳造においては凝固核が増加し、これにより得られる鋳造材の結晶粒は微細化され、機械的強度が向上する。そのため、微細化剤の機能向上の指針としては、異質核の数密度(単位体積あたりの異質核の数)を増加させる、あるいは異質核物質と鋳造材との整合性を高めることで達成可能である。前者の方法として、微細化剤に繰り返し押し出し加工などの巨大ひずみ加工を施すことによって達成した例がある(特許文献1参照)。後者の例として、結晶学的に対称性のよいL1構造の金属間化合物粒子を異質核とした微細化剤が報告されている(特許文献2および特許文献3参照)。
【0004】
面心立方格子構造を有するアルミニウム母相とD022構造を有するAlTi金属間化合物の結晶構造とそれらの格子定数を図1に示す。ここで、D022構造は面心立方格子の単位胞を2つ重ねた単位胞を有し、AlTiの場合、c軸方向に12パーセントも伸張した面心正方格子構造になっており、結晶学的異方性が強い。異相界面の界面構造を評価する指標として不整合度が一般的に広く採用されている。異質核物質の低指数面の格子定数をa、鋳造材の低指数面の格子定数をaとすると、不整合度δは、
JP2015212402A_000003t.gif

となる(非特許文献4参照)。ここで、不整合度δが小さいほど原子配列の整合性がよい。この値が10パーセント以下であると異質核物質は核として有効に働くと言われている。
【0005】
凝固する金属と異質核との結晶構造が違う場合における不整合度を記述する方法として、平面不整合度が提案されており、式(2)で算出できる(非特許文献5参照)。
JP2015212402A_000004t.gif

ここで、(hkl)は異質核粒子の低次指数面、[uvw]は(hkl)面の低次指数方向、(hkl)は核生成する金属の低次指数面、[uvw]は(hkl)面の低次指数方向、d[uvw]は[uvw]方向に沿った原子間距離、d[uvw]は[uvw]方向に沿った原子間距離、θは[uvw]と[uvw]との間の角度を表している。
【0006】
アルミニウム母相とAlTiの低指数面間の格子対応を図2に示す。AlTiは結晶の対称性の低さゆえ、面によって平面不整合度が異なる。これらの結晶学的方位関係における平面不整合度を表1に示す。これらの面の中では、最大では(001)Al3Tiにおける4.89パーセント、最小では{112}Al3Tiにおける2.17パーセントである。
【0007】
アルミニウム母相とAlTi金属間化合物の低指数面間における平面不整合度の値を表1に示す。
【0008】
【表1】
JP2015212402A_000005t.gif

【0009】
Al-Ti合金微細化剤中のAlTi金属間化合物粒子の形態は板状である。ここで、最も占有面積の大きい板面は(001)Al3Ti面である。表1に示すように、不整合度の小さい面も存在するが、ほとんどを占める板面が、最も不整合度が大きい面となっている。例えば、Al-Ti合金微細剤インゴットにおける板状AlTi金属間化合物粒子のアスペクト比は図3 に示すように0.08程度であり、このアスペクト比の板状粒子の場合、平均不整合度は4.78パーセントとなる(特許文献4および非特許文献6参照)。仮に、図3 に示すような球状に近い粒子を実現できれば、平均不整合度は2.99パーセントまで下がり、高い微細化能を有することが期待される。また、このとき、異質核が非常に細かければ、短時間にて高性能な微細化能を示す。しかし、前述のようにAl-Ti合金中のAlTi金属間化合物粒子の平衡形状は板状である。また、いずれかの方法により微細な球状AlTi金属間化合物粒子を製造できたとしても、その表面は酸化物に覆われており、直接アルミニウム母相に分散しても表面酸化物の影響で高い微細化能を示さない。
【先行技術文献】
【0010】

【特許文献1】特許第4691735号
【特許文献2】PCT/JP2012/051050
【特許文献3】特願2013-231357
【特許文献4】特願2013-183743
【0011】

【非特許文献1】田村博:溶融加工,森北出版,(1982),119.
【非特許文献2】神尾彰彦:軽金属,56,(2006),496-500.
【非特許文献3】日本金属学会 編:鋳造凝固,丸善,(1999),pp.24—29.
【非特許文献4】D.Turnbull and B.Vonnegut:Ind.Eng.Chem.,44,(1952),1292-1298.
【非特許文献5】L.Bramfitt:Metall.Trans.,1,(1970),1987-1995.
【非特許文献6】渡辺義見, 佐藤尚: 軽金属,64,(2014),157-163.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明の課題は、上記点に鑑みて、鋳造アルミニウムおよび鋳造アルミニウム合金に対して、短時間で高い微細化能をもつ微細化剤およびその製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明者らは、球状かつ多結晶AlTi金属間化合物粒子をガスアトマイズ法により作製し、それを用いて微細化剤を製造することにより、上記課題を解決しうることを見出した。すなわち、本発明によれば、短時間に高い微細化能を示す結晶粒微細化剤が提供される。
【0014】
[1]ガスアトマイズ法を用いた多結晶金属間化合物粒子の製造方法。
【0015】
[2]前記多結晶金属間化合物がAlTiである前記[1]に記載の製造方法。
【0016】
[3]前記[1]または[2]に記載の多結晶金属間化合物粒子を含むアルミニウムあるいはアルミニウム合金用結晶粒微細化剤。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】アルミニウム母相とD022構造のAlTi金属間化合物の結晶構造と格子定数を示した図である。
【図2】アルミニウム母相とAlTi金属間化合物の低指数面間の格子対応を模式的に描いた図である。
【図3】平均不整合度計算のために模式化したAl—Ti合金インゴットにおける板状AlTi金属間化合物粒子と本発明品の球状AlTi金属間化合物粒子を示す図である。
【図4】本発明で使用したガスアトマイズ装置の模式図である。
【図5】本発明の実施例においてガスアトマイズ装置にて製造した球状AlTi金属間化合物粒子の走査型電子顕微鏡写真である。
【図6】本発明の実施例においてガスアトマイズ装置にて製造した球状AlTi金属間化合物粒子のX線回折のグラフである。
【図7】本発明で製造したAl—10vol%AlTi微細化剤の走査型電子顕微鏡写真である。
【図8】650℃で時効を施した製造したAl—10vol%AlTi微細化剤の時効後の微細化剤の走査型電子顕微鏡写真である。(a)3時間時効の微細化剤、(b)6時間時効の微細化剤および(c)24時間時効の微細化剤。
【図9】時効処理を施す前および650℃で3時間の時効を施した微細化剤における電子線後方散乱回折法により測定した逆極点図マップを示す図である。
【図10】製造した微細化剤を添加あるいは添加せずに鋳造したアルミニウムの断面組織写真である.(a)微細化剤無添加、(b)微細化剤添加後に30秒間撹拌し、保持時間0秒の条件で鋳造、(d)微細化剤添加後に30秒間撹拌し、保持時間130秒の条件で鋳造。
【図11】アルミニウム溶湯に微細化剤を添加して、30秒撹拌してからの保持時間とアルミニウム鋳造材の平均結晶粒径の関係を示すグラフである。
【図12】(a)20秒および(b)30秒間攪拌した後、保持時間なしで鋳造したアルミニウム鋳造材の組織写真を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図面を参照しつつ本発明の実施の形態について説明する。本発明は、以下の実施形態に限定されるものではなく、発明の範囲を逸脱しない限りにおいて、変更、修正、改良を加え得るものである。

【0019】
本発明の微細化剤は、溶湯中で分断が可能な多結晶の金属間化合物粒子をアルミニウムの母相中に含むことを特徴とし、好ましくはその粒子がAlTi金属間化合物であり、形状が球状であることを特徴とする。これは分断が部分的であった場合においても、高い結晶粒微細化能を生じさせるためである。多結晶のAlTi金属間化合物粒子の製造方法としてはガスアトマイズ法が好ましく、AlTi金属間化合物粒子をアルミニウム母相中に含有させるためには放電プラズマ焼結法を適用することが好ましい。
【実施例】
【0020】
以下、本発明を実施例に基づいてさらに詳細に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【実施例】
【0021】
本発明では、図4に模式的に示すガスアトマイズ装置によって、AlTi金属間化合物粒子の作製を行った。ここで、ガスアトマイズ法とは、溶かした金属に高圧ガスを吹き付け、微細な金属粒子を作製する方法である.まず、真空排気後、不活性ガスをチャンバー内に置換させ、高周波誘導溶解加熱によってAlTi金属間化合物の原料となる,純アルミニウムと純チタンを溶解した。次に、チャンバーと噴霧チャンバー間に差圧を生じさせ、かつ、ストッパーを上昇させることにより溶融金属を下方に落とし、その溶融金属に高圧ガスを噴きつけて球状粒の金属間化合物を作製した。なお、多結晶AlTi金属間化合物粒子の作製が可能であり、その結晶粒界を起点として溶湯中で粒子の分断が行われるものであれば、その作製方法はガスアトマイズ方法に限定されるものではないが、球状粒の金属間化合物を比較的容易に作製するには、ガスアトマイズ方法が好ましい。
【実施例】
【0022】
作製したAlTi金属間化合物粒子の電子顕微鏡写真を図5に示す。この図より、得られた粒子の形状が球状であることが分かる。エネルギー分散型X線分光器を使ったX線分光法によって組成分析を行った結果、AlとTiのモル比は3:1となっており、球状粒子はAlTiの化学量論的組成を有することが分かった。また、粒子の表面は鱗状になっており、多結晶体であることがわかる。なお、図6に示すようにX線回折により相の同定を行ったところ、D022構造であることが見いだされた。このように、ガスアトマイズ法により、D022型金属間化合物である多結晶体の球状AlTi粒子を作製することができた。
【実施例】
【0023】
アルミニウム中のAlTi金属間化合物粒子の平衡状態での形状は板状であり、この時の平均不整合度が大きい。そこで、前記工程にて作製したAlTi金属間化合物粒子を、形状を変化させることなくアルミニウム母相に含有させなければならない。低温かつ短時間での焼結を採用すれば、作製した球状AlTi金属間化合物粒子の形状を変化させることなくアルミニウム母相に含有させることが可能と考えて、放電プラズマ焼結(SPS)法をその一例として実施した。ここで、放電プラズマ焼結はホットプレス焼結と同様、固体圧縮焼結法の一種であり、粉体を充填したグラファイト(黒鉛)製焼結型を、加圧しながら加熱する。ただし、通常の焼結法と異なるのは加熱方法であり、直流パルス電圧・電流を焼結用の型と焼結したい材料に直接印加する。これにより電気エネルギーを導電性の焼結型および導電性の材料に与えて材料自身の自己発熱を、加圧とともに焼結駆動力として利用する。加熱範囲が限定されるため、電気炉などの雰囲気加熱よりも急速昇温および冷却が可能であり、これにより、粒成長や安定状態への変化を抑制した焼結体の作製が可能である。
【実施例】
【0024】
作製したAlTi金属間化合物粒子を粒子径75μm~150μmの範囲に分級し、さらに純アルミニウムと混合し、SPS装置(住友石炭鉱業株式会社、ドクターシンターシリーズ、SPS-515S)を用い、成形圧力は45MPa、昇温速度は1.67℃毎秒、焼結温度は500℃および保持時間は300秒の条件で焼結を行って微細化剤の製造を行った。本発明では、AlTi金属間化合物粒子の体積分率を10パーセントとしたが、これに限定されるものではない。製造したAl-10vol%AlTi微細化剤の走査型電子顕微鏡写真を図7に示す。母相であるアルミニウムとAlTi金属間化合物粒子との間には、明確な境界面が存在し、反応生成物は観察されない。組成分析を行った結果、粒子は化学量論的組成のAlTi金属間化合物、マトリックスはアルミニウムであった。加えて、X線回折により相の同定を行ったところ、D022構造の存在が確認でき、AlTi金属間化合物粒子はD022構造を保ったままであることが分かった。さらに、図7に示したAlTi金属間化合物粒子を詳細に調査したところ、AlTi金属間化合物粒子には結晶粒界が観察され、多結晶体であることが見いだされた。この様に、SPS法により、D022構造の多結晶かつ球状AlTi金属間化合物粒子を体積分率10パーセント含有する結晶粒微細化剤を製造することができた。
【実施例】
【0025】
次に、アルミニウム溶湯に添加したAl-10vol%AlTi微細化剤中の多結晶AlTi金属間化合物粒子が分断効果を有するか否かを調査する目的で、製造したAl-10vol%AlTi微細化剤を温度650℃で時間を変えて時効処理を施した。時効後の微細化剤の走査型電子顕微鏡による組織観察の結果を図8に示す。時効処理を施すことにより、多結晶AlTi金属間化合物粒子は分断されていくことが見いだされた。また、時効時間を増やしていくと、AlTi金属間化合物粒子同士がより細かくなり、離れていくことが確認された。3時間時効した材料において、AlTi金属間化合物粒子全体の径は約150μm、個々の粒径は22μm、平均粒子間距離は8μmであった。したがって、異質核として働くのは球状の粒径22μmAlTi金属間化合物粒子である。元々のAlTi金属間化合物粒子の大きさが75μm~150μmであるため、1個の粒子が40個から317個の粒子に分断したこととなる。
【実施例】
【0026】
そこで、電子線後方散乱回折法により、AlTi金属間化合物粒子の結晶方位解析を行った。ここで、電子線後方散乱回折法とは、結晶性材料に電子線を照射した際に試料表面に生じる電子線後方散乱回折により観察されるEBSDパターンを用いて、試料の結晶系や結晶方位に関する情報を得る解析方法である。走査電子顕微鏡と組み合わせて、電子線を走査しながらEBSDパターンを測定、解析することで、微小領域の結晶系や結晶方位の分布に関する情報が得られる。図9は時効前および3時間時効後の微細化剤における逆極点図マップを示している。時効前の逆極点図マップより、ガスアトマイズ法により作製した逆極点図マップ粒子は単結晶ではなく、一つの球状粒子中にランダムな方位を有する結晶が集まった多結晶状態になっていることが確認できる。この微細化剤を時効すると、AlTi金属間化合物粒子の粒界において分断が生じ、細かな単結晶AlTi金属間化合物粒子に分断される。
【実施例】
【0027】
次に、製造したAl-10vol%AlTi微細化剤を用いて鋳造実験を行った。初めに、純度99.99パーセントのアルミニウムインゴット148.8gを750℃でるつぼ内にて溶解し、微細化剤を1.2g(添加量0.8質量パーセント)添加した。本実験における微細化剤の添加量は、Al-Ti二元系における包晶組成である0.12質量パーセントに比べ、Ti濃度が十分低い値となるよう設定した。また、結晶粒微細化剤添加直後は30秒間撹拌し、その後の保持時間を変化させてアルミニウム鋳造実験を行った。使用した鋳型はステンレス製で,内径45mm、外形70mm、 および高さ70mmの寸法を有する。また、ここでいう保持時間とは、撹拌終了から鋳型に注湯するまでの時間である。
【実施例】
【0028】
製造したアルミニウム鋳造材の底面から5mm 部分を切断機(平和テクニカ,FINE CUT HS-45AC)を用いて切断し、その面切断面を観察面とした。観察面に対して、エメリー紙を用いて#80から#2000まで湿式研磨を施した後、1μm のアルミナ懸濁液を用いてバフ研磨を行った。研磨を施した試料に対し、フッ化水素酸水溶液を用いて腐食を施した。 その後、光学顕微鏡による組織観察を行った。その結果を図10に示す。結晶粒微細化剤を添加しないで作製したアルミニウム鋳造材(比較例)では、図10(a)に示す様に等軸晶や柱状晶を有する通常の凝固組織が観察できる。これに対し、微細化剤を添加して作製したアルミニウム鋳造材において、図10(b)に示すように、保持時間が0秒(攪拌後直ちに鋳湯)での条件では,アルミニウム鋳造材の組織は均質かつ微細になっていた。しかしながら、保持時間が40秒および130秒での条件で鋳造したアルミニウム鋳造材の組織は、それぞれ図10(c)および図10(d)に示すように粗大化する傾向を示していた。
【実施例】
【0029】
アルミニウム溶湯に微細化剤を添加して、30秒撹拌してからの保持時間とアルミニウム鋳造材の平均結晶粒径の関係を図11に示す。縦軸はアルミニウム鋳造材の平均結晶粒径、横軸は保持時間を示している。図から明らかであるが、保持時間を長くするほど、平均結晶粒径が大きくなり、フェーディング現象が鋳造初期に発生していた。このように、製造したAl-10vol%AlTi微細化剤は微細なAlTi金属間化合物粒子を含有するため、短時間で高い微細化能を示す。
【実施例】
【0030】
したがって、攪拌時間を短縮し,保持時間を0秒とすることで、より優れた微細化能を示す可能性がある。図12(a)および(b)に20秒および30秒間攪拌した後、保持時間なしで鋳造したアルミニウム鋳造材の組織写真を示す。30秒の攪拌を行ったアルミニウム鋳造材の平均結晶粒径が627μmであったのに対して、20秒の攪拌を行ったアルミニウム鋳造材の平均結晶粒径が556μmであった。このように、非常に短時間で微細化能を示す微細化剤の提供が可能となった。
【実施例】
【0031】
これより、ガスアトマイズによって作製したAl-10vol%AlTi金属間化合物粒子は球状の多結晶体であり、SPS法によりこの粒子形態を保ったままアルミニウム母相中に含有することが可能であり、この手法により製造したAl-10vol%AlTi微細化剤中のAlTi金属間化合物粒子は溶湯に添加後に微細な球状AlTi金属間化合物粒子に分断されることにより平均不整合度の低くかつ粒子数密度が増加する。以上の結果より、本発明によって、高い微細化能を有する結晶粒微細化剤およびその製造方法を提供することができる。
【産業上の利用可能性】
【0032】
本発明は、鋳造アルミニウムおよび鋳造アルミニウム合金の結晶粒微細化に関するものであり、本発明で提供される微細化剤を溶湯に添加することにより鋳物のいたるとところに凝固核が存在することとなり、鋳造材の結晶粒が微細化され、これに伴い、鋳造材の強度が向上する。例えば、オイルパンの製造、フライホイールハウジングの製造、クラッチハウジングの製造、トランスミッションカバーの製造、ギヤケースの製造、ポンプハウジングの製造、カバーサーモスタットの製造、ケースサーモスタットの製造、シリンダーの製造、シリンダーヘッドの製造、ターボチャージャー用コンプレッサーカバーの製造、自動車およびバイクのアルミホイールの製造、カーエアコン部品の製造、高速鉄道用ギヤケースの製造、工作機械および建設機械などの各種耐圧空圧容器やバルブなどの製造、航空機用部品の製造、ロボットアームの製造、医療機器部品の製造、半導体装置部品の製造、門扉などの建築金物の製造などに提供できる。
図面
【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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