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明細書 :立体ディスプレイ

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第4958289号 (P4958289)
公開番号 特開2009-008837 (P2009-008837A)
登録日 平成24年3月30日(2012.3.30)
発行日 平成24年6月20日(2012.6.20)
公開日 平成21年1月15日(2009.1.15)
発明の名称または考案の名称 立体ディスプレイ
国際特許分類 G02B  27/22        (2006.01)
H04N  13/04        (2006.01)
FI G02B 27/22
H04N 13/04
請求項の数または発明の数 4
全頁数 13
出願番号 特願2007-169295 (P2007-169295)
出願日 平成19年6月27日(2007.6.27)
審査請求日 平成22年5月17日(2010.5.17)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】301022471
【氏名又は名称】独立行政法人情報通信研究機構
発明者または考案者 【氏名】吉田 俊介
【氏名】ロペス・グリベール ロベルト
【氏名】井ノ上 直己
個別代理人の代理人 【識別番号】100098305、【弁理士】、【氏名又は名称】福島 祥人
審査官 【審査官】福島 浩司
参考文献・文献 特開2006-098775(JP,A)
特開2004-272354(JP,A)
特開2004-347897(JP,A)
特開平11-232012(JP,A)
特開平04-014086(JP,A)
特開2001-331245(JP,A)
特開2000-099237(JP,A)
特開2007-034439(JP,A)
特開2005-295326(JP,A)
特開2003-316299(JP,A)
特開2002-165232(JP,A)
特開平08-241069(JP,A)
特開平07-244558(JP,A)
特開平02-178720(JP,A)
調査した分野 G02B 27/22
H04N 13/04
特許請求の範囲 【請求項1】
複数の要素表示面の組み合わせにより全方向から観察可能で操作者が全方向から接触可能な立体的な外面を有するように形成される立体表示面と、
操作者による前記立体表示面への全方向からの接触を検出可能に前記立体表示面に沿って設けられる触覚センサと、
前記立体表示面の表示を制御する制御手段とを備え、
前記複数の要素表示面は、光を発生する複数の画素により構成される空間光変調器と、
前記空間光変調器の各画素から発生される光の方向を制御する光線制御子とを含み、
前記制御手段は、前記立体表示面により囲まれる仮想空間に全方向から観察可能な立体画像が提示されるように前記空間光変調器を制御するとともに、前記触覚センサの出力信号に応答して操作者が触れた前記立体表示面の部分に対応する立体画像の部分が変化するように前記空間光変調器を制御することを特徴とする立体ディスプレイ。
【請求項2】
前記空間光変調器は、平面型マトリクス表示素子を含むことを特徴とする請求項1記載の立体ディスプレイ。
【請求項3】
前記光線制御子は、複数のレンズからなるレンズアレイまたは複数の回折格子からなる回折格子アレイを含むことを特徴とする請求項1または2記載の立体ディスプレイ。
【請求項4】
前記立体表示面は、前記仮想空間に提示される立体画像の立体形状と類似する外面を有することを特徴とする請求項1~3のいずれかに記載の立体ディスプレイ。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、立体画像を提示する立体ディスプレイに関する。
【背景技術】
【0002】
一般的な立体ディスプレイとしては、左右の両眼に異なる画像を与える二眼式立体視ディスプレイがある。ここで、立体視ディスプレイは、物体表面から発せられる光をスクリーンを通る光線として記述し再生する方式の立体ディスプレイである。二眼式立体視ディスプレイにおいて正確な立体感を表現するためには、常に観察者の視点位置を検出し、その視点位置からの観察に適した左右2枚分の画像を作成してスクリーン上に表示し続ける必要がある。通常は、観察者に特殊な眼鏡を装着させることにより左右の画像を分離して眼に提示する。そのため、画像を観察できるのは一人だけである。
【0003】
裸眼で画像を観察可能な立体ディスプレイとしてホログラフィがある。ホログラフィでは、ホログラムのスクリーン面を通過するあらゆる方向の光線の状態を記録し、記録した光線の状態をアナログ的に再現することができる。任意の視点からスクリーン面を観察した際に、観察者は、本来の物体が発していた光線と同じ光線を観察できるため、あたかもそこに物体が存在するかのように感じられる。しかしながら、ホログラフィでは、静止画しか表示することができない。
【0004】
多眼式立体視ディスプレイは、アナログ的に光線の状態を再現できるホログラフィに対して、再現される光線空間をスクリーン上で数方向に離散化させることにより情報量を減らし、立体画像を電子的に再現することを可能にする。この多眼式立体視ディスプレイは、スクリーン上にレンズ等の光線制御子を配置し、複数の視点においてスクリーンを観察した際に見えるべき物体の適切な画像を提示するものである。
【0005】
上記の立体ディスプレイにより表現される立体画像は、平面状のスクリーンの手前か奥に限定され、スクリーンの枠により物体が存在するという感覚を得にくい。また、立体ディスプレイを移動させるかまたは画像自体を変化させない限り物体の裏側へ回り込んで観察することはできない。そのため、直接的に立体画像を操作するという感覚も得にくい。また、観察者に画像を手に持つ感覚を与えることは目的としておらず、立体画像から触覚は得られない。
【0006】
さらに、裸眼かつ複数人で同時に観察可能なボリュームディスプレイがある。ボリュームディスプレイは、空間を発光させることにより物体の表面から発せられる光を再現する方式の立体ディスプレイである。このボリュームディスプレイとしては、走査方式、奥行き標本化方式等が提案されている。走査方式は、空気の一点をレーザで加熱し、発光させるものである。奥行き標本化方式は、高速回転する円盤形スクリーンに同期して画像を投影するものである。
【0007】
ボリュームディスプレイによれば、提示される物体の画像を任意の方向から観察することができ、画像の後に回り込んで裏側から観察することも可能である。しかしながら、レーザによる発光を行い、または高速駆動する機械部が必要となるため、安全上の問題が懸念される。また、比較的大きな表示面および駆動系が必要であるため、手に持つ感覚を与える画像表示は実現されない。
【0008】
非特許文献1には、視点に応じて画像を変化させることにより平面画像ながら擬似的に立体感を得るシステムである「メディアキューブ」について報告されている。メディアキューブは、平面型のディスプレイを直方体に組み合わせて作製された表示部を有する。この直方体の表示部の内部が仮想空間に相当する。仮想空間の内部の仮想物体が操作者の頭部の位置に応じて各面に表示される。メディアキューブは、手にとって様々な方向から観察することが可能であるため、三次元形状の把握をより直感的にかつ容易に行うことができる。
【0009】
一方、特許文献1には、複数枚の三次元画像表示装置を組み合わせた三次元画像表示システムが記載されている。各三次元画像表示装置は、表示面内に画素がマトリクス状に配置された表示ユニットと、その表示ユニットの画素からの光線を制限して観察領域に光線を向ける複数の光線制御部を有する光学ユニットとを備える。この三次元画像表示システムによれば、三次元画像を回り込んで観察することができる。

【非特許文献1】川上直樹、外3名、“バーチャル・ホログラムの手法によるメディアキューブの試作”、日本バーチャルリアリティ学会大会論文集,Vol.1,1996年10月
【特許文献1】特開2006-98775号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
上記の非特許文献1に記載されたメディアキューブを用いたシステムでは、表示部を手にとって様々な方向から観察することが可能である、しかしながら、仮想空間の内部に提示される仮想物体と操作者の頭部との位置関係に応じて画像を変化させるため、複数人での観察に適さない。
【0011】
また、特許文献1に記載された三次元画像表示システムでは、複数人による観察が可能であるとともに、三次元画像を回り込んで観察することができるため、視覚的な物体の存在感を得ることが可能である。しかしながら、触覚的な物体の存在感を得ることはできない。
【0012】
本発明の目的は、特殊な眼鏡を用いることなく任意の方向から複数人により観察可能でありかつ触覚的な物体の存在感を得ることが可能な立体画像を提示する立体ディスプレイを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
(1)本発明に係る立体ディスプレイは、複数の要素表示面の組み合わせにより全方向から観察可能で操作者が全方向から接触可能な立体的な外面を有するように形成される立体表示面と、操作者による立体表示面への全方向からの接触を検出可能に立体表示面に沿って設けられる触覚センサと、立体表示面の表示を制御する制御手段とを備え、複数の要素表示面は、光を発生する複数の画素により構成される空間光変調器と、空間光変調器の各画素から発生される光の方向を制御する光線制御子とを含み、制御手段は、立体表示面により囲まれる仮想空間に全方向から観察可能な立体画像が提示されるように空間光変調器を制御するとともに、触覚センサの出力信号に応答して操作者が触れた立体表示面の部分に対応する立体画像の部分が変化するように空間光変調器を制御するものである。
【0014】
本発明に係る立体ディスプレイにおいては、複数の要素表示面の組み合わせにより全方向から観察可能で操作者が全方向から接触可能な立体的な外面を有するように立体表示面が形成されている。各要素表示面は、空間光変調器および光線制御子からなる。立体表示面により囲まれる仮想空間に立体画像が提示されるように制御手段により空間光変調器が制御される。それにより、特殊な眼鏡を用いることなく任意の方向から複数人で立体画像を観察することが可能となる。また、観察者は、立体表示面により囲まれる仮想空間の立体画像を裸眼で立体視することができる。したがって、視覚的な物体の存在感が得られる。
【0015】
また、操作者は、立体画像を取り囲む立体表示面に全方向から触れることまたは手に持つことが可能であるので、立体画像の立体形状を擬似的に触覚することが可能であるとともに、立体画像の観察方向を手で操作することができる。また、操作者が任意の方向から立体表示面の任意の部分に触れることにより仮想空間に提示される立体画像の対応する部分が変化する。それにより、操作者は、立体表示面に触れる行為に応答する立体画像の変化を通して立体画像により表される物体に直接触れている感覚を得ることができる。これらの結果、触覚的な物体の存在感を得ることができる。
【0016】
なお、仮想空間内の立体画像の一部が仮想空間の外部に提示されてもよい。
【0017】
(2)空間光変調器は、平面型マトリクス表示素子を含んでもよい。この場合、各要素表示面を容易に作製することができる。
【0018】
(3)光線制御子は、複数のレンズからなるレンズアレイまたは複数の回折格子からなる回折格子アレイを含んでもよい。この場合、光線制御子を容易に作製することができるとともに、空間光変調器の各画素から発生した光を任意の方向に容易に制御することができる。
【0019】
(4)立体表示面は、仮想空間に提示される立体画像の立体形状と類似する外面を有してもよい。
【0020】
この場合、操作者は、立体表示面に触れることまたは手に持つことにより、立体画像に直接触れている感覚を擬似的に得ることができる。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、特殊な眼鏡を用いることなく任意の方向から複数人により観察可能でありかつ触覚的な物体の存在感を得ることが可能な立体画像が提示される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
(1)立体ディスプレイの構成
図1は本発明の一実施の形態に係る立体ディスプレイを示す模式的外観図である。
【0025】
図1に示すように、立体ディスプレイは、立体的な外面を有する立体表示面1を備える。立体表示面1は、複数の要素表示面2を結合することにより構成される。図1には、1つの要素表示面2のみが示される。立体表示面1で囲まれる仮想空間の内部には立体画像3が提示される。
【0026】
図2は立体表示面1を構成する要素表示面2を示す模式的断面図である。
【0027】
図2に示すように、要素表示面2は、平面状の空間光変調器21、平面状の光線制御子22および透明外皮層24により構成される。
【0028】
空間光変調器21は、マトリクス状に色を提示することができるマトリクス表示素子からなる。この空間光変調器21は、マトリクス状に配列された複数の画素を有する。空間光変調器21として、例えば液晶ディスプレイ(LCD)、または有機エレクトロルミネッセンス(EL)ディスプレイ等を用いることができる。あるいは、空間光変調器21として、プロジェクタとスクリーンとを組み合わせて用いてもよい。
【0029】
光線制御子22は、光線の方向を制御することができる光学素子からなり、空間光変調器21から様々な方向へ向かう光の状態を再現させる機能を有する。本実施の形態では、光線制御子22として、複数のレンズからなるレンズアレイが用いられる。レンズアレイの代わりに複数の回折格子からなる回折格子アレイを用いてもよい。また、光線制御子22として、複数のピンホールを有するピンホールアレイ、または複数のプリズムからなるプリズムアレイ等を用いることができる。特に、レンズアレイまたは回折格子アレイを用いた場合には、空間光変調器21の各画素からの光線を容易に特定の方向に制御することができる。
【0030】
光線制御子22の各レンズにより空間光変調器21の複数の画素からの光線の方向が制御される。各レンズには、その下部に位置する画素群が対応している。各レンズが対応する画素群のみからの光線の方向を制御することができるように、空間光変調器21と光線制御子22と間に隣接するレンズ間を仕切る遮光部材25が設けられてもよい。なお、レンズと画素群との距離を調整するなどの他の方法により、各レンズがその下部に位置する画素群のみからの光線の方向を制御するように構成してもよい。
【0031】
光線制御子22により制御可能な光線の数および光線の方向は、各レンズの下部に位置する画素の数、レンズと画素との距離、およびレンズの屈折率等のレンズの光学的な設計等により決まる。
【0032】
図2に示すように、光線制御子22のレンズ23aは、空間光変調器21の画素Pa,Pb,Pc,Pdから種々の方向へ向かう光をそれぞれ点線で示す方向に制御する。
【0033】
要素表示面2に沿って触覚センサ23が設けられる。触覚センサ23は、例えば触覚センサアレイからなる。触覚センサアレイは、マトリクス状に配列された複数の触覚センサ素子からなる。触覚センサ素子としては、人または物が触れたことを検出することができる種々の接触センサを用いることができる。本実施の形態では、触覚センサ23は、レンズアレイのレンズ間に埋め込まれた複数の触覚センサ素子により構成される。例えば、触覚センサ素子としては、圧電効果による電圧変化を検出する圧電素子(ピエゾ素子)、歪を検出する歪ゲージ、静電容量の変化を検出する可変容量素子を用いることができる。また、指により遮光される光を検出するフォトダイオード等の光検出素子、温度変化を検出する熱検出素子等を用いることもできる。
【0034】
また、触覚センサ23として、触覚センサアレイの代わりにシート状の透明の触覚センサを用いてもよい。その場合、透明の触覚センサは光線制御子22に重ねて配置される。例えば、触覚センサ素子としては、光ファイバへの通光状態の変化を検出するシート状光検出素子、接触部位の静電容量の変化を検出するシート状可変容量素子、または電極間の通電状態により接触を検出する導電シート等を用いることができる。
【0035】
本実施の形態では、触覚センサ23は、観察者が触れたときの荷重の大きさ、荷重の方向および荷重が加わった位置を示す検出信号を出力する。
【0036】
光線制御子22および触覚センサ23は、例えば透明の樹脂からなる透明外皮層24内に埋め込まれる。
【0037】
要素表示面2には、一般的にインテグラルフォトグラフィ(IP)と呼ばれる裸眼立体視の技術を適用することができる。
【0038】
図3は立体表示面1を構成する要素表示面2の形状の例を示す平面図である。また、図4は立体表示面1の形状の例を示す斜視図である。
【0039】
図3に示すように、要素表示面2は、例えば多角形からなる。図3(a)の例では、要素表示面2は正三角形からなり、図3(b)の例では、要素表示面2は正四角形からなり、図3(c)の例では、要素表示面2は正六角形からなる。
【0040】
図4(a)の例では、正三角形の4枚の要素表示面2を組み合わせることにより正4面体の立体表示面1が形成される。図4(b)の例では、正方形の6枚の要素表示面2を組み合わせることにより立方体の立体表示面1が形成される。図4(c)の例では、正三角形のN枚の要素表示面2を組み合わせることにより正N面体からなる疑似球体が形成される。ここで、Nは5以上の整数である。また、五角形の要素表示面2と六角形の要素表示面2とを組み合わせることにより切頂二十面体(サッカーボールの形状)が形成されてもよい。
【0041】
なお、立体表示面1の形状は上記の例に限定されず、立体表示面1を任意の立体形状に形成することができる。例えば、立体表示面1を縦長の直方体に形成してもよく、あるいは起伏を有する立体のように複雑な立体形状に形成してもよい。
【0042】
後述するように、立体表示面1が内部に提示される立体画像3の表面形状に近似または類似する立体形状を有することが好ましい。
【0043】
また、観察者は、立体表示面1に触れることができる。特に、本実施の形態では、観察者が立体ディスプレイを手で持つことができるサイズおよび重さを有するように立体表示面1が形成される。
【0044】
(2)画像データの作成方法
次に、立体ディスプレイに立体画像3を提示するための画像データの作成方法について説明する。図5は立体画像3を提示するための画像データの作成方法を説明するための図である。
【0045】
立体表示面1で囲まれる仮想空間に視覚されるべき立体形状30を定義する。この立体形状30は立体形状データにより表される。立体形状30の表面の任意の点において、任意の方向へ向かう光線を考える。立体表示面1と立体形状30との間の位置関係はデータの定義により一意に求まる。
【0046】
各光線が立体表示面1と交差する際の交点の位置(座標)、光線と立体表示面1との角度、および色を求める。また、各光線がどの要素表示面2のどの位置で交差するかを求める。最終的に、光線制御子22により上記の角度の方向へ向かう光線を再現するように、空間光変調器21の各画素に交点の色を表示するための画像データを作成する。
【0047】
理想的には、立体形状30の全表面から全方向に向かう光線について上記の交点の位置、角度および色を求め、各要素表示面2に表示すべき画像を表す画像データを作成する。実際には、立体表示面1で囲まれる仮想空間を複数のボクセルに離散化するとともに、各ボクセルから発せられる光線の方向を離散化する。本実施の形態では、各ボクセルから発せられる光線の方向は、光線制御子22により離散化された方向に制御される。
【0048】
立体表示面1で囲まれた仮想空間の1つのボクセルが立体形状30の一部であれば、そのボクセルから離散化された方向に向かう光線を求める。このようにして、立体形状30の表面上の複数のボクセルの各々から離散化された複数の方向に向かう光線と立体表示面1との交点を求めるとともに、光線と立体表示面1との角度、およびボクセルの色を求め、それらの交点、角度および色に基づいて画像データを作成する。
【0049】
例えば、図5に示すように、立体形状30の表面上の1つのボクセルb1から発せられる光線は、光線制御子22により点線の矢印の方向に向かうように制御される。これらの光線と要素表示面2との交点の画素にボクセルb1の色を表示させるように画像データを作成する。
【0050】
また、立体形状30の表面上の他のボクセルb2から発せられる光線は、光線制御子22により実線の矢印の方向に向かうように制御される。これらの光線と要素表示面2との交点の画素にボクセルb2の色を表示させるように画像データを作成する。
【0051】
上記の説明は、理解を容易にするために行ったが、実際には、光線制御子22の各レンズと空間光変調器21の画素数との関係により再現可能な光線が制限されるため、上記の説明とは逆のアルゴリズムが用いられる。すなわち、光線制御子22の各レンズにより再現可能な光線を空間光変調器21の画素を経由して逆に辿り、提示すべき立体形状30との交点のボクセルの色を求め、その色を画素に表示させる色と決定する。
【0052】
光線制御子22のレンズにより再現可能な一本の光線が立体形状30の複数のボクセルと交差する場合には、より要素表示面2に近いボクセルの色が画素に表示すべき色と決定される。観察者から見て奥に位置する点は手前に位置する点により隠されるからである。例えば、図5に示すように、光線制御子22のレンズにより再現可能な一本の光線が立体形状30の複数のボクセルb2,b3と交差する場合には、より要素表示面2に近いボクセルb3の色を画素に表示すべき色と決定する。
【0053】
このようにして、立体形状30の表面上の各ボクセルの色を立体表示面1の複数の画素に表示させるための画像データが作成される。画像データに基づいて空間光変調器21の複数の画素に画像を表示させることにより、結果的に立体形状30からの光線が再現される。
【0054】
図6は画像データに基づいて立体ディスプレイの空間光変調器21に表示される画像を説明するための図である。
【0055】
例えば、観察点V1から立体形状を見た場合の画像が空間光変調器21の画素“A”に表示される。また、観察点V2から立体形状を見た場合の画像が空間光変調器21の画素“B”に表示される。それにより、観察者は眼を観察点V1から観察点V2に移動させた場合に、立体形状を異なる角度から見ることができる。
【0056】
このように、本実施の形態に係る立体ディスプレイは、多眼式立体視ディスプレイでありながら、結果的にボリュームディスプレイと同等の立体画像3を提示することができる。
【0057】
(3)立体ディスプレイの制御系の構成および動作
図7は本実施の形態に係る立体ディスプレイの制御系の構成を示すブロック図である。
【0058】
図7に示すように、立体ディスプレイの制御系は、制御部10、形状データ記憶部11、空間光変調器21および触覚センサ23により構成される。
【0059】
制御部10は、CPU(中央演算処理装置)、および半導体メモリ等の記憶装置を含む。記憶装置には、表示制御プログラムが記憶される。形状データ記憶部11は、ハードディスクまたはメモリカード等のデータ記憶媒体からなり、仮想空間に提示すべき立体画像の形状を表す立体形状データを記憶する。
【0060】
制御部10のCPUは、記憶装置に記憶された表示制御プログラムを実行することにより形状データ記憶部11に記憶された立体形状データに基づいて画像データを作成し、画像データに基づいて表示のための制御信号を空間光変調器21に与えるとともに、触覚センサ23の検出信号に基づいて立体形状データを修正する。
【0061】
制御部10および形状データ記憶部11は、立体表示面1で囲まれた空間の内部に設けられてもよい。あるいは、制御部10および形状データ記憶部11が立体表示面1で囲まれた空間の外部に設けられてもよい。その場合には、制御部10から空間光変調器21に有線または無線の通信により制御信号が与えられ、触覚センサ23から制御部10に有線または無線の通信により検出信号が与えられる。また、制御部10および形状データ記憶部11の一方が立体表示面1で囲まれた空間の内部に設けられ、他方が立体表示面1で囲まれた空間の外部に設けられてもよい。
【0062】
次に、本実施の形態に係る立体ディスプレイの動作について説明する。図8は本実施の形態に係る立体ディスプレイの制御部10の動作を示すフローチャートである。また、図9および図10は立体ディスプレイの立体画像3の変化を示す模式図である。
【0063】
制御部10は、記憶装置に記憶された表示制御プログラムにしたがって図8のフローチャートの動作を実行する。
【0064】
なお、形状データ記憶部11には、立体画像3の形状を表す立体形状データが記憶されている。
【0065】
図9および図10の例では、立体表示面1が提示すべき立体画像3の表面と近似または類似する表面形状を有する。
【0066】
まず、制御部10は、形状データ記憶部11から立体形状データをロードする(ステップS1)。そして、制御部10は、立体形状データに基づいて画像データを作成する(ステップS2)。さらに、制御部10は、画像データに基づいて空間光変調器21に画像を表示させる(ステップS3)。それにより、図9に示すように、立体ディスプレイの仮想空間に立体画像3が提示される。この場合、操作者および他の観察者は、仮想空間内に立体画像3を視覚することができる。仮想空間内の立体画像3の一部が仮想空間の外部に飛び出すように提示されてもよい。
【0067】
操作者は、立体ディスプレイの立体表示面1に触れることができる。制御部10は、触覚センサ23から検出信号が出力されたか否かを判別する(ステップS4)。
【0068】
触覚センサ23から検出信号が出力された場合には、制御部10は、検出信号に基づいて立体形状データを修正する(ステップS5)。この場合、制御部10は、検出信号から操作者が触覚センサ23に触れたときの荷重の大きさ、荷重の方向および荷重の位置を判別し、それらの荷重の大きさ、荷重の方向および荷重の位置に基づいて、立体表示面1への接触に伴って立体画像3が変化するように立体形状データを修正する。
【0069】
そして、制御部10は、ステップS2に戻り、修正後の立体形状データに基づいて画像データを作成する。さらに、制御部10は、画像データに基づいて空間光変調器21に画像を表示させる(ステップS3)。それにより、操作者および他の観察者が視覚する立体画像30が変化する。
【0070】
例えば、図10に示すように、操作者が立体表示面1の一部を指5で押した場合には、その部分に近い立体画像3の部分(うさぎの耳)が変形する。立体表示面1の一部に接触した場合の立体画像3の変化の態様は、上記の例に限らなず、立体画像3の何らかの変化であれば他の変化の態様であってもよい。例えば立体画像3が動物である場合に、動物の表情の変化等であってもよい。
【0071】
なお、ステップS4において、触覚センサ23から検出信号が出力されない場合には制御部10はステップS3に戻る。
【0072】
(4)本実施の形態の効果
本実施の形態に係る立体ディスプレイにおいては、任意の方向から複数人により観察可能な立体画像3が提示される。また、立体表示面1の内部に提示される立体画像3を裸眼立体視可能な疑似ボリュームディスプレイが実現される。したがって、視覚的な物体の存在感が得られる。
【0073】
さらに、内部に立体画像3を提示する立体ディスプレイを手に持つことができるので、立体画像3の立体形状を擬似的に触覚することが可能であるとともに、立体画像3を観察する方向を手で操作することができる。また、操作者が任意の方向から立体表示面1の任意の部分に触れることにより立体画像3の対応する部分の形状が変化する。それにより、操作者は、立体表示面1に触れる行為に応答する立体画像3の変形を通して立体画像3により表される物体に直接触れている感覚を得ることができる。これらの結果、触覚的な物体の存在感を得ることができる。
【0074】
(5)応用例
本発明に係る立体ディスプレイは、以下のように、手にとって任意の角度から確認するとともに、複数人が同時に観察する要求がある物体の表示に利用することができる。
【0075】
(a)製品の検査時に、製品の画像をスキャナでデータとして読み込み、そのデータに基づいて製品の立体画像を立体ディスプレイにより提示する。それにより、立体画像を用いて製品の表面の傷等の欠陥の有無を非破壊検査することができる。
【0076】
(b)空港で手荷検査の際に、手荷物の立体画像を立体ディスプレイで提示することができる。
【0077】
(c)立体ディスプレイを手で実際に回したり位置を変更したりすることができるので、明示的に機能がわかるインタフェースとして用いることができる。
【0078】
(d)医療分野において、インフォームドコンセントまたは技術向上教育のために、立体ディスプレイにより臓器模型の立体画像を提示することができる。また、超音波スキャナまたはCT(コンピュータ断層撮影)のデータ等を立体画像として提示し、病状検査に用いることができる。
【0079】
(e)日常生活では、立体テレビ電話の立体画像の提示に用いることができる。また、立体写真を提示する立体写真立てとして利用することもできる。
【0080】
(f)娯楽の分野では、立体ディスプレイをチェス等の駒の動画立体表示、ルービックキューブの立体画像の提示等に用いることができる。
【0081】
(g)広告の分野では、手に取って見ることができ、他人に指さしながら説明することができる立体画像を用いた広告を提示することができる。
【0082】
(h)遠隔会議の場面において、ネットワークで試作製品の形状データを送信し、立体ディスプレイにより形状データを立体画像として提示することができる。この場合、立体画像を複数人で指し示しながら手に持ち、製品の検討を行うことも可能である。
【産業上の利用可能性】
【0083】
本発明は、種々の立体形状を提示する立体ディスプレイとして利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0084】
【図1】本発明の一実施の形態に係る立体ディスプレイを示す模式的外観図である。
【図2】立体表示面を構成する要素表示面を示す模式的断面図である。
【図3】立体表示面を構成する要素表示面の形状の例を示す平面図である。
【図4】立体表示面の形状の例を示す斜視図である。
【図5】立体画像を提示するための画像データの作成方法を説明するための図である。
【図6】画像データに基づいて立体ディスプレイの空間光変調器に表示される画像を説明するための図である。
【図7】本実施の形態に係る立体ディスプレイの制御系の構成を示すブロック図である。
【図8】本実施の形態に係る立体ディスプレイの制御部の動作を示すフローチャートである。
【図9】立体ディスプレイの立体画像の変化を示す模式図である。
【図10】立体ディスプレイの立体画像の変化を示す模式図である。
【符号の説明】
【0085】
1 立体表示面
2 要素表示面
3 立体画像
5 指
10 制御部
11 形状データ記憶部
21 空間光変調器
22 光線制御子
23 触覚センサ
24 透明外皮層
30 立体形状
V1 観察点
V2 観察点
Pa,Pb,Pc,Pd 画素
b1,b2,b3 ボクセル
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
5
【図7】
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【図8】
7
【図9】
8
【図10】
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