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明細書 :光学システム

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第4734652号 (P4734652)
公開番号 特開2008-158114 (P2008-158114A)
登録日 平成23年5月13日(2011.5.13)
発行日 平成23年7月27日(2011.7.27)
公開日 平成20年7月10日(2008.7.10)
発明の名称または考案の名称 光学システム
国際特許分類 G02B  17/08        (2006.01)
G02B   5/08        (2006.01)
FI G02B 17/08 Z
G02B 5/08 A
請求項の数または発明の数 7
全頁数 13
出願番号 特願2006-345084 (P2006-345084)
出願日 平成18年12月21日(2006.12.21)
審査請求日 平成21年3月26日(2009.3.26)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】301022471
【氏名又は名称】独立行政法人情報通信研究機構
発明者または考案者 【氏名】前川 聡
個別代理人の代理人 【識別番号】100130498、【弁理士】、【氏名又は名称】佐野 禎哉
審査官 【審査官】原田 英信
参考文献・文献 特開2004-40722(JP,A)
特開2007-116639(JP,A)
調査した分野 G02B 9/00 - 17/08
G02B 21/02 - 21/04
G02B 25/00 - 25/04
特許請求の範囲 【請求項1】
光を屈曲させつつ透過させて面対称位置へ実像の結像作用を持つ光線屈曲面と、当該光線屈曲面に向けて配置される鏡面とを具備し、前記光線屈曲面を挟んで前記鏡面とは反対側である観察側に配置した被投影物の像を、当該被投影物から発せられる光が前記光線屈曲面を透過して前記鏡面に反射し更に前記光線屈曲面を透過することによって、前記鏡面の前記光線屈曲面に対する面対称位置に移動させた実体のない仮想鏡に映した位置に結像させることを特徴とする光学システム。
【請求項2】
前記光線屈曲面を備えた光学素子として、相互に直交する2つの鏡面要素を備えた単位光学素子を複数平面的に形成してなる反射型面対称結像素子を具備し、当該反射型面対称結像素子は、前記複数の単位光学素子の光線屈曲面の一方側から他方側へ通過する光を各単位光学素子において2つの鏡面要素でそれぞれ反射させることで前記光線屈曲面の他方側に結像させるものであって、前記2つの鏡面要素を通り且つこれら2つの鏡面素子に垂直もしくはそれに近い角度をなす面を前記光線屈曲面としている請求項1に記載の光学システム。
【請求項3】
前記反射型面対称結像素子は、所定の基盤を厚み方向に貫通させた複数の穴を備え、各穴の内壁に前記直交する2つの鏡面要素から構成される単位光学素子を形成したものであって、前記穴を通じて基盤の一方の面方向から他方の面方向へ光が透過する際に、2つの鏡面要素でそれぞれ1回ずつ反射させるものである請求項2に記載の光学システム。
【請求項4】
前記反射型面対称結像素子は、所定の基盤を厚み方向に突出させた複数の透明な筒状体を備え、各筒状体の内壁面に前記直交する2つの鏡面要素から構成される単位光学素子を形成したものであって、前記筒状体を通じて基盤の一方の面方向から他方の面方向へ光が透過する際に、2つの鏡面要素でそれぞれ1回ずつ反射させるものである請求項2に記載の光学システム。
【請求項5】
前記単位光学素子を、前記基盤において規則的な格子状に形成している請求項3又は4に記載の光学システム。
【請求項6】
前記光線屈曲面を備えた光学素子として、前記被投影物を配置した空間と接する面を平面的な前記光線屈曲面としたメタマテリアル光学素子を具備し、該メタマテリアル光学素子は少なくとも前記光線屈曲面と前記鏡面との間をメタマテリアルで充填したものとしている請求項1に記載の光学システム。
【請求項7】
前記光線屈曲面を備えた光学素子として、第1レンズ要素と、第2レンズ要素とを同一光学軸上に配置したアフォーカル光学系とし、前記第1レンズ要素をアレー状に配列して同一平面上にするとともに、前記第2レンズ要素をアレー状に配列して同一平面上とした複数の当該アフォーカル光学系を有する光学部を備えるアフォーカル立体光学素子であって、前記アフォーカル光学系は前記第1レンズ要素及び前記第2レンズ要素を、当該第1レンズ要素から入射した平行光線を当該第2レンズ要素の前側焦点に集光する位置に配置したアフォーカル立体光学素子を具備し、前記第1レンズ要素と前記第2レンズ要素の中間位置において前記光学軸に垂直もくしくはそれに近い角度をなす面を前記光線屈曲面としている請求項1に記載の光学システム。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、光の透過や反射を利用した鏡のように機能する新規な光学システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
平面鏡に像を映す場合、観察者の目には鏡の表面における反射光の光線を鏡の中へ延長した方向から光が来たように見えるため、平面鏡に映し出された像(鏡映像)は鏡の内部に虚像として結像する(例えば、非特許文献1参照)。

【非特許文献1】“Virtual image(虚像)”の項、[online]、WIKIPEDIA(英語版)、[平成18年10月23日検索]、インターネット<URL:http://en.wikipedia.org/wiki/Virtual_image>
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
平面鏡に映された鏡映像は、鏡面に対して物体(被投影物)と面対称の関係にある鏡の内部で結像しているため、観察者が像に手を伸ばすなどの像へのアクセスを実現することは不可能である。
【0004】
本発明は、3次元を含む物体の鏡映像を、実体としては存在しないが、空中に仮想的に存在する鏡に映し出した場合の位置に結像させる、新たな光学システムを提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
すなわち本発明は、光を屈曲させつつ透過させて面対称位置へ実像の結像作用を持つ光線屈曲面と、当該光線屈曲面に向けて配置される鏡面とを具備し、前記光線屈曲面を挟んで前記鏡面とは反対側である観察側に配置した被投影物の像を、当該被投影物から発せられる光が前記光線屈曲面を透過して前記鏡面に反射し更に前記光線屈曲面を透過することによって、前記鏡面の前記光線屈曲面に対する面対称位置に移動させた実体のない仮想鏡に映した位置に結像させることを特徴とする光学システムである。
【0006】
すなわち、図1に原理図((a)は鏡面2を光線屈曲面1に対して傾斜させて配置した態様を示し、(b)は鏡面2を光線屈曲面1に対して平行に配置した態様を示す)を示すように、まず被投影物O(図中、点で示す)で反射した光線(被投影物から発せられる光線光線)は、光線屈曲面1を透過する際に入射光と面対称な経路進むため、光線屈曲面1を挟んで被投影物とは面対称な位置に結像する(I1)はずであるが、鏡面2が存在するために、実際にはその像I1とは鏡面2に対して面対称な位置に結像(I2)する。この位置における像I2からの光線は、さらに光線屈曲面を透過後、光線屈曲面1に対して面対称な経路を通るため、光線屈曲面1に対して被投影物Oと同じ側に結像することになる(I3)。この像I3は、鏡面2を光線屈曲面1に対して面対称位置に映した仮想鏡3に被投影物Oを映した際の像と同じ関係にある。すなわち、光線屈曲面1を鏡面2の観察側に配置することによって、鏡面2を仮想的に光線屈曲面1に対する面対称位置に移動することができ、その結果、観察者は、空中に浮かんだ物理的実体のない仮想鏡3に映ったように見える非投影物Oの像I3を観察することが可能となる。
【0007】
このような光学システムの一例としては、前記光線屈曲面を備えた光学素子として、相互に直交する2つの鏡面要素を備えた単位光学素子を複数平面的に形成してなる反射型面対称結像素子(参考文献;特願2006-080009出願明細書)を具備するものが挙げられる。この場合、反射型面対称結像素子は、前記複数の単位光学素子の光線屈曲面の一方側から他方側へ通過する光を各単位光学素子において2つの鏡面要素でそれぞれ反射させることで前記光線屈曲面の他方側に結像させるものであって、前記2つの鏡面要素を通り且つこれら2つの鏡面素子に垂直もしくはそれに近い角度をなす面を前記光線屈曲面とする。
【0008】
このような反射型面対称結像素子は、素子の一方側にある被投影物の像を素子の他方側の面対称となる位置に結像させる。したがって、被投影物から発せられた光(直接光)は反射型面対称結像素子の単位光学素子を通過する際に2つの鏡面要素でそれぞれ1回ずつ反射した後、鏡面で反射して反射光となり、さらに単位光学素子を通過する際に2つの鏡面要素で1回ずつ反射して、被投影物を仮想鏡に映した位置に結像することになる。そして2つの鏡面要素は、光線屈曲面とほぼ垂直に配置されるため、図1(a)に示すとおり、鏡面2は光線屈曲面1に対して鋭角をなすように配置されることになる。ここで、鏡面の配置位置は、反射型面対称結像素子を透過して結像する被投影物の実像の位置と反射型面対称結像素子との間に設定され、鏡面の配置角度は、直接光と反射光が共に2つの鏡面要素で1回ずつ反射し得る適宜の角度に設定される。また、上述のように2つの鏡面要素に直接光及び反射光を反射させるため、像の観察は反射型面対称結像素子に対して斜めから角度をつけて(光線屈曲面に対して鋭角、特に好ましくは光線屈曲面の法線に対して30~40°)行うこととなる。なお、「垂直もしくはそれに近い角度」若しくは「ほぼ垂直」とは、本発明においては「ちょうど垂直、ないし垂直から数分程度の誤差範囲内の角度」を意味するものとする。
【0009】
さらに具体的に、反射型面対称結像素子は、所定の基盤を厚み方向に貫通させた複数の穴を備え、各穴の内壁に前記直交する2つの鏡面要素から構成される単位光学素子を形成したものであって、前記穴を通じて基盤の一方の面方向から他方の面方向へ光が透過する際に、2つの鏡面要素でそれぞれ1回ずつ反射させるものとすることができる。すなわち、基盤面に多数の穴を形成し、その各穴に2つの直交する鏡面要素を形成するという比較的簡素な構成で、反射型面対称結像素子を作成することができる。
【0010】
或いは反射型面対称結像素子は、所定の基盤を厚み方向に突出させた複数の透明な筒状体を備え、各筒状体の内壁面に前記直交する2つの鏡面要素から構成される単位光学素子を形成したものであって、前記筒状体を通じて基盤の一方の面方向から他方の面方向へ光が透過する際に、2つの鏡面要素でそれぞれ1回ずつ反射させるものとすることも可能である。このようなものでも、基盤面に多数の筒状体を形成し、その各筒状体に2つの直交する鏡面要素を形成するという比較的簡素な構成で、反射型面対称結像素子を作成することができる。
【0011】
以上のような反射型面対称結像素子を備えた光学システムでは、このような単位光学素子を、前記基盤において規則的な格子状に形成すれば、被投影物の像の高精細化を図ることが可能である。
【0012】
以上のような反射型面対称結像素子を用いる態様の他、屈折率が負の経路で光を透過させる物質であるメタマテリアル(参考文献;「光学技術に革命を起こす スーパーレンズ」,日経サイエンス2006年10月号,株式会社日経サイエンス)を利用することによっても、本発明の光学システムを実現することができる。すなわち、本発明の光学システムを、前記光線屈曲面を備えた光学素子として、前記被投影物を配置した空間と接する面を平面的な前記光線屈曲面としたメタマテリアル光学素子を具備するものとすることができる。この場合、メタマテリアル光学素子は、少なくとも前記光線屈曲面と前記鏡面との間をメタマテリアルで充填したものとする。被投影物の光線屈曲面(メタマテリアルの表面)に対する面対称位置に実像を結像させるものとするには、メタマテリアルの屈折率を-1とすることが望ましい。また、鏡面の配置位置は、光線屈曲面と光線屈曲面による被投影物の実像の結像位置との中間に設定され、鏡面の配置角度は、入射光と出射光が共に光線屈曲面を通過する範囲で適宜設定することができる。すなわち、図1(a)(b)何れの構成としてもよい。さらに、メタマテリアル光学素子を用いる場合は、観察角度は特に制限されることはない。
【0013】
以上の他にも本発明の光学システムには、前記光線屈曲面を備えた光学素子として、第1レンズ要素と、第2レンズ要素とを同一光学軸上に配置したアフォーカル光学系とし、前記第1レンズ要素をアレー状に配列して同一平面上にするとともに、前記第2レンズ要素をアレー状に配列して同一平面上とした複数の当該アフォーカル光学系を有する光学部を備えるアフォーカル立体光学素子であって、前記アフォーカル光学系は前記第1レンズ要素及び前記第2レンズ要素を、当該第1レンズ要素から入射した平行光線を当該第2レンズ要素の前側焦点に集光する位置に配置したアフォーカル立体光学素子を具備するものを採用することができ、この場合、前記第1レンズ要素と第2レンズ要素の中間位置において前記光学軸に垂直もくしくはそれに近い角度をなす面を前記光線屈曲面とする。
【0014】
アフォーカル光学系については、第1レンズ要素と第2レンズ要素のそれぞれの焦点距離を隔てて同一光学軸上に配置してアフォーカル光学系とし、当該アフォーカル光学系の入射レンズ面及び出射レンズ面をそれぞれアレー状に同一平面上として配置した前記光学部とすることができる。第1レンズ要素及び第2レンズ要素の組み合わせとしては、2つの凸レンズとしたもの、2つのシリンドリカルレンズとしたもの、2つの光ファイバレンズとしたもの、等を採用することができる(参考文献;特開2005-10755公報)。ここで、アフォーカル光学系とは、焦点距離が無限大の光学系である。また、面対称位置に結像させるには、第1および第2レンズの焦点距離がほぼ等しくなっている必要がある。
【0015】
斯かる構成のアフォーカル立体光学素子は、アフォーカル光学系の第1レンズ要素から入射された被投影物の光を、それぞれの第1レンズ要素により要素画像とし、第2レンズ要素から出射する。そして、アフォーカル立体光学素子は、第2レンズ要素から出射された要素画像の光線群全体により、被投影物に対する立体光学像を形成して表示する。そして、被投影物から発せられた光は、アフォーカル立体光学素子を透過して被投影物の光線屈曲面に対する面対称位置に立体光学像を形成する前に鏡面で反射し、入射時とは反対方向にアフォーカル立体光学素子を透過し、鏡面の光線屈曲面に対する面対称位置に形成される仮想鏡に被投影物を映した位置に、当該被投影物の実像を結像させる。
【0016】
このようなアフォーカル立体光学素子を用いる光学システムの場合、光は各レンズ要素に対して主に正面方向から透過することになるため、直接光及び反射光が共に2つのレンズ要素を透過するようにするためには、図1(b)に示したように、鏡面を光線屈曲面とほぼ平行に配置することが望ましい。また、像の観察は、光線屈曲面に対してほぼ垂直方向から行うことが望ましい。
【発明の効果】
【0017】
本発明は、光を透過し面対称位置へ実像の結像作用を持つ光学素子と鏡面を利用することで、実体としては存在しない仮想鏡に映った被投影物の実像を観察することができるという、新しい結像様式の光学システムを創出するものである。したがって、本発明の光学システムを、適度な角度・距離から覗き込むことで、仮想鏡に映った鏡映像(例えば観察者自身の顔)を空中に観察することができる。このようにして得られる仮想鏡に映る像は、通常の平面鏡とは異なり光学システムよりも手前(観察者側)に結像したものであるので、本発明は、観察者が手を伸ばしてアクセスする(仮想的に触れる)ことも可能であるため、観察者と像との斬新なコミュニケーション方法をも提供することができるものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、本発明の実施形態を、図面を参照して説明する。
【0019】
図2に示す本発明の第1実施形態は、光を透過させて面対称位置へ実像の結像作用を持つ光線屈曲面を有する反射型面対称結像素子10と、この反射型面対称結像素子10を挟んで被投影物Oの反対側に配置される平面鏡20とから構成される光学システムX1である。以下、この光学システムX1の各部の構成と結像様式について説明する。
【0020】
反射型面対称結像素子10は、図2及び図3に示すように、平板状の基盤11を備え、この基盤11に、平らな基盤表面に対して垂直に肉厚を貫通する穴12を多数形成し、各穴12を単位光学素子13として利用するためにその内壁面に2つの直交する鏡面要素14a,14bを形成したものである。
【0021】
基盤11は、厚み寸法が50~200μm、例えば本実施形態では100μmの薄板状のものであり、本実施形態では、巾寸法及び奥行き寸法がそれぞれ約5cmのものを適用しているが、基盤11の厚さや平面寸法はこれらに限られることなく適宜設定することができる。図3のA部を拡大して図4に示すように、各単位光学素子13は、光を透過させるために基盤11に形成した物理的・光学的な穴12を利用したものである。本実施形態では、単位光学素子13として、平面視ほぼ矩形状(具体的に本実施形態では正方形状)の穴12を適用し、相互に直交する2つの内壁面に平滑鏡面処理を施して鏡面要素14a,14bとし、これら鏡面要素14a,14bを反射面として機能させるとともに、穴12の内壁面の他の部分には鏡面処理を施さず光が反射不能な面とするか、もしくは角度をつけるなどして反射光を抑制したものである。各単位光学素子13は基盤11上において、全て同じ向きで鏡面要素14a,14bを形成している。鏡面要素14a,14bの形成にあたって本実施形態では、金属製の金型をまず作成し、鏡面要素14a,14bを形成すべき内壁面をナノスケールの切削加工処理をすることによって鏡面形成を行い、これらの面粗さを10nm以下とし、可視光スペクトル域に対して一様に鏡面となるようにしている。
【0022】
具体的に、各単位光学素子13は、一辺が例えば50~200μm、好ましくは本実施形態では100μmであり、先に作成した金型を用いたプレス工法をナノスケールに応用したナノインプリント工法又は電鋳工法により、1つの基盤11に所定ピッチで複数形成されている。本実施形態では、各単位光学素子13の縦横に延びる各辺を、基盤11の巾方向又は奥行き方向に対して45度傾斜させるとともに、任意の異なる2つの単位光学素子13同士は相互に平行をなすようにしている。ただし、任意の異なる2つの単位光学素子13同士は、平行ではなく様々(ランダム)な角度をつけることも考えられる。角度をつけることによって、迷光となる1回反射光がより拡散するとともに、2回反射光の横方向視野角が広がり、透過率の視野角に対するピークが平坦になるからである。なお、隣り合う単位光学素子13同士の離間寸法を極力小さく設定することで、透過率を向上させることができる。そして、前記基盤11のうち、単位光学素子13を形成した部分以外の部位に、遮光処理を施し、基盤11の上面及び下面に図示しない薄板状をなす補強材を設けている。なお、この板材によって各単位光学素子13が蓋封されないようにしていることはいうまでもない。本実施形態では、このような単位光学素子13を、基盤11に数万ないし数十万個設けている。
【0023】
他の鏡面要素の形成方法として、電鋳工法によりアルミやニッケル等の金属で基盤11を形成した場合、鏡面要素14a,14bは、金型の面粗さが十分小さければ、それによって自然に鏡面となる。また、ナノインプリント工法を用いて、基盤11を樹脂製などとした場合には、鏡面要素14a,14bを作成するには、スパッタリング等によって、鏡面コーティングを施す必要がある。
【0024】
このようにして基盤11に形成した単位光学素子13は、基盤11の表面側(又は裏面側)から穴12に入った光を一方の鏡面要素(14a又は14b)で反射させ、さらに他方の鏡面要素(14b又は14a)で反射させて基盤11の裏面側(又は表面側)へと通過させる機能を有し、この光の経路を側方から見れば光の進入経路と射出経路とが基盤11を挟んで面対称をなすことから、基盤11上の単位光学素子13の集合は、反射型面対称結像素子10を構成する。すなわち、斯かる反射型面対称結像素子10の光線屈曲面(単位光学素子13の全ての鏡面要素を通り且つそれら鏡面要素と直交する面)は、基盤11の一方側にある物体の実像を他方側の面対称位置に結像させる光線屈曲面1(図中、想像線で示す。基盤11の肉厚の中央部を通り各鏡面要素と直交する面を仮定)となる。
【0025】
一方、平面鏡20は、基盤11を向く面を平らな鏡面2としたものであって、鏡面21が反射型面対称結像素子10における光線屈曲面1となす角度が鋭角(図示例では45°)となる姿勢で基盤11の裏面側に配置される。この平面鏡20の位置は、被投影物Oの反射型面対称結像素子10による結像位置までの光の経路上であって、その結像位置よりも基盤11に近くに設定することを条件とする。なお、平面鏡20の形状や大きさや角度は適宜設定することができる。さらに本実施形態の光学システムXは、例えば基盤11を蓋とするような箱状の装置としてもよく、その場合は箱内に平面鏡20を設置することになる。
【0026】
ここで、本実施形態の光学システムX1を用いた結像様式を、被投影物Oから発せられた光の経路とともに説明する。まず、図5に平面的な模式図で示すように、被投影物Oから発せられる光(矢印方向、実線で示す。3次元的には紙面手前から紙面奥方向へ進行する)は、反射型面対称結像素子10を透過する際に、一方の鏡面要素14a(又は14b)で反射して更に他方の鏡面要素14b(又は14a)で反射することで(透過光の光線を破線で示す)、鏡面2が存在しなければ、反射型面対称結像素子4の光線屈曲面1に対して被投影物Oの面対称位置に結像する。しかしながら、鏡面2の存在により、透過光は結像する前に鏡面2で反射する。したがって、図6に側面から見た模式図で示すように、被投影物O(太い矢印の図形、位置A)から発せられた光は、反射型面対称結像素子10による像(位置B)の鏡面2に対する面対称位置(位置C)に結像することになる。この位置Cにおける像は、先ほどとは反対側から、つまり基盤11の裏面側から表面側へ反射型面対称結像素子10を透過する際に、2つの鏡面要素14a,14bで1回ずつ反射して、光線屈曲面1に対して面対称となる位置(位置D)に実像として結像する。ここで、反射型面対称結像素子10の光線屈曲面1に対する鏡面2の面対称位置に、実際には存在しない仮想鏡3を考慮すると、位置Aにおける被投影物Oと位置Dにおける像とは、仮想鏡3に対して面対称の関係にある。すなわち、本実施形態の光学システムXを利用することで、何も存在しない空中にあたかも鏡に映したように被投影物Oの像を観察することができることとなる。
【0027】
なお、上述したような反射型面対称結像素子10は、穴12の内壁に2つの直交する鏡面要素14a,14bを形成した態様に代えて、図7に拡大図を示すように、基盤11の厚み方向に突出する透明な筒状体15を碁盤目状に多数形成し、各筒状体15の内壁面のうち、直交する2つを鏡面要素14a,14bとした態様によっても実現可能である。この鏡面要素は全反射を利用することもできるし、反射膜による反射を利用することも可能である。この場合、筒状体15の鏡面要素14a,14b以外の内壁面を反射面としないかもしくは角度をつけることにより、余分な反射をなくして、より鮮明な像を得ることができる。
【0028】
また本発明の第2実施形態は、図8(a)に示すように、光学システムX2を、屈折率が負の物質であるメタマテリアルで構成されるメタマテリアル光学素子30と、平面鏡20とから構成したものである。メタマテリアルでは、正の屈折率の媒質(例えば大気中)から光が入る際に、入射光はメタマテリアルの表面(すなわち光線屈曲面1)を通る法線に対して同じ側に屈折してメタマテリアル中を進む。図示例では、面対称位置への実像の結像を実現するべく、メタマテリアルとして屈折率が-1の物質を適用した態様を示している。同図に示した光学システムX2は、メタマテリアルでできた直方体状をなすメタマテリアル光学素子30の内部に、被投影物Oを向くメタマテリアル光学素子30の表面である光線屈曲面1に向けて所定角度(例えば45°)で傾斜させた鏡面2を有する平面鏡20を設置した構成を備えている。
【0029】
ここで、本実施形態の光学システムX2を用いた結像様式を、被投影物Oから発せられた光の経路とともに説明する。この光学システムX2では、被投影物O(位置A)から発せられた光は、メタマテリアル光学素子30の表面(光線屈曲面1)で入射光と同じ側に屈折してメタマテリアル光学素子30内を進み、鏡面2で反射して結像し(位置C)、さらにその反射光がメタマテリアル光学素子30の表面(光線屈曲面1)で屈折して外部へ射出して位置Dにおいて結像する。ここで、前述した第1実施形態の光学システムX1と同様に、メタマテリアル光学素子30の表面に対する鏡面2の面対称位置に、実際には存在しない仮想鏡3を考慮すると、位置Aにおける被投影物Oと位置D’における像とは、仮想鏡3に対して面対称の関係にある。すなわち、本実施形態の光学システムX2を利用することによっても、何も存在しない空中に鏡に映したように被投影物Oの像を観察することができることとなる。
【0030】
なお、平面鏡20の配置位置及びその鏡面2の配置角度は、光線屈曲面1を入射光及び出射光が共に透過する限りにおいて任意であり、例えば図8(b)に示すように、鏡面2がメタマテリアル光学素子30の表面(光線屈曲面1)と平行となるように平面鏡20を配置することも可能である。このように、メタマテリアル光学素子30を用いた光学システムX2では、光線屈曲面1と鏡面2との間において入射光及び出射光が通過する領域が均質なメタマテリアルで充填されていればよいため、図示例のように、メタマテリアル光学素子30を直方体形状のブロック状をなすものとして、光線屈曲面1と対向する面に鏡面2を密着させるように平面鏡20を設置するという態様を採用することができる。
【0031】
また本発明の第3実施形態は、図9及び図10に示すように、光学システムX3を、アフォーカル立体光学素子40と、平面鏡20とから構成したものである。アフォーカル立体光学素子40は、1つのアフォーカル光学系であるアフォーカルレンズ41を複数、アレー状に配置した光学部42として備えている。アフォーカルレンズ41は、第1レンズ要素411及び第2レンズ要素412を同一光軸t上に配置して、それらの焦点距離を隔てた位置に離間させて配置している。このアフォーカル立体光学素子40は、アフォーカルレンズ41の第1レンズ要素411の入射レンズ面をアレー状に配列して同一平面上に配置し、且つ第2レンズ要素412を出射レンズ面としてアレー状に配列して同一平面上に配置することで、複数のアフォーカルレンズ41から光学部42を構成している。なお、アフォーカルレンズ41の入射面41a及び出射面41bは、それぞれ同一平面上に配置された第1レンズ要素411及び第2レンズ要素412の焦点距離となる位置に形成されることになり、複数の第1レンズ要素411又は第2レンズ要素412の焦点距離となる位置に連続して、すなわち光学部42の前側及び後側の全面に形成されたものとして示される。ここで本実施形態では、第1及び第2レンズ要素を同一光学軸t上に配置し、且つ第1レンズ要素の後側焦点と第2レンズ要素の前側焦点とが一致する位置にそれぞれ配置したものをアフォーカル光学系(アフォーカルレンズ41)とする。
【0032】
本実施形態では、アフォーカルレンズ41を構成する第1レンズ要素411と第2レンズ要素412として、何れも凸レンズを利用した態様を示す。図10に示すように、アフォーカル光学系を構成する第1レンズ要素41と第2レンズ要素を同一光学軸t上の位置(共軸位置)の関係として、互いに焦点距離fs、feを離間させた状態で配置してアフォーカルレンズ41としている。アフォーカル立体光学素子40は、各アフォーカルレンズ41の光学軸tにおける光線に注目すると、各レンズ要素により形成される各要素画像における光線が集まった光線群全体として、立体光学像を形成することになる。焦点距離fs、feが等しい場合、この立体光学像は、被投影物の光線屈曲面に対する面対称位置に結像することとなる。
【0033】
平面鏡20は、第2レンズ要素412の第1レンズ要素411とは反対側において、アフォーカル立体光学素子40による立体光学像の結像位置よりも手前(第2レンズ要素412に近い位置)に、鏡面2が第1レンズ要素411及び第2レンズ要素412の光学軸tとほぼ垂直となるように配置される。
【0034】
ここで、本実施形態の光学システムX3を用いた結像様式を、被投影物Oから発せられた光の経路とともに説明する。図9及び図10に示すように、被投影物Oから発せられる光(矢印方向、実線で示す。)は、アフォーカル立体光学素子40を透過する際に、まず入射面41aに入射角度φsで入射して各第1レンズ要素411で屈折し、さらに第2レンズ要素412で屈折して出射面41bから出射角度φeで出射する。ただし、fsとfeが等しい場合には、φsとφeは等しい角度となる。この出射光は、鏡面2が存在しなければ、アフォーカル立体光学素子40の光線屈曲面1に対して被投影物Oの面対称位置(位置B)に結像するが、鏡面2の存在により、当該鏡面2で反射して、位置Bにおける像の鏡面2に対する面対称位置(位置C)に結像する。この位置Cにおける像を形成する光は、再びアフォーカル立体光学素子40における出射面41bに角度φeで入射し、第2レンズ要素412で屈折するとともに第1レンズ要素411で屈折して入射面41aから角度φsで出射する。そして、鏡面2の光線屈曲面1に対する面対称位置に形成される仮想鏡3に対して被投影物Oを映した場合と同じ位置Dに、被投影物Oの実像(仮想的な鏡像)が結像することとなる。像の観察は、第1レンズ要素411及び第2レンズ要素412の光学軸方向から第1レンズ要素411に向かって行う。すなわち、本実施形態の光学システムXを利用することによっても、何も存在しない空中にあたかも鏡に映したように被投影物Oの像を観察することができることとなる。
【0035】
なお、本実施形態は、アフォーカル光学系として、上述のように第1及び第2レンズ要素に凸レンズと凸レンズを利用したものの他にも、光ファイバレンズと光ファイバレンズを利用したもの等を適用することができる。
【0036】
本発明は上述した実施形態に限定されるものではない。また、各部の具体的構成についても上記実施形態に限られるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変形が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】本発明の光学システムによる結像様式を示す原理図。
【図2】本発明の第1実施形態に係る光学システムを示す概略的な斜視図。
【図3】同光学システムにおける面対称結像素子を示す平面図。
【図4】同光学システムにおける面対称結像素子の一部を拡大して示す斜視図。
【図5】同面対称結像素子による光の透過及び屈折の状態を示す模式図。
【図6】同光学システムによる結像様式を示す模式図。
【図7】同光学システムに適用される面対称結像素子の他の例を示す図。
【図8】本発明の第2実施形態に係る光学システム及びその結像様式を示す模式図。
【図9】本発明の第2実施形態に係る光学システム及びその結像様式を示す模式図。
【図10】同光学システムのアフォーカル光学系による光の透過を示す模式図。
【符号の説明】
【0038】
1…光線屈曲面
2…鏡面
3…仮想鏡
10…面対称結像素子
11…基盤
12…穴
13…単位光学素子
14a,14b…鏡面要素
15…筒状体
20…平面鏡
30…メタマテリアル光学素子
40…アフォーカル立体光学素子
41…アフォーカル光学系(アフォーカル光学レンズ)
42…光学部
411…第1レンズ要素
412…第2レンズ要素
X1,X2,X3…光学システム
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
5
【図7】
6
【図8】
7
【図9】
8
【図10】
9