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明細書 :マンガン賦活赤色蛍光体

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 公開特許公報(A)
公開番号 特開2015-078334 (P2015-078334A)
公開日 平成27年4月23日(2015.4.23)
発明の名称または考案の名称 マンガン賦活赤色蛍光体
国際特許分類 C09K  11/08        (2006.01)
C09K  11/64        (2006.01)
FI C09K 11/08 A
C09K 11/64 CQD
請求項の数または発明の数 4
出願形態 OL
全頁数 9
出願番号 特願2013-217914 (P2013-217914)
出願日 平成25年10月18日(2013.10.18)
発明者または考案者 【氏名】戸田 健司
【氏名】佐藤 峰夫
【氏名】上松 和義
【氏名】金 善旭
出願人 【識別番号】304027279
【氏名又は名称】国立大学法人 新潟大学
個別代理人の代理人 【識別番号】100140394、【弁理士】、【氏名又は名称】松浦 康次
審査請求 未請求
テーマコード 4H001
Fターム 4H001CA02
4H001CF01
4H001XA08
4H001XA09
4H001XA11
4H001XA12
4H001XA13
4H001YA25
要約 【課題】レア・アースフリーであって発光効率がさらに向上したAl2O3:Mn4+赤色蛍光体を提供する。
【解決手段】本発明のAl2O3:Mn4+赤色蛍光体は、一般式:(Al1-xMnx2O3、0.01≦x≦2.00で表される組成からなり、合成時にフラックスとしてMgF2およびNa3AlF6を用いたものである。MgF2およびNa3AlF6を用いることでAl2O3:Mn4+赤色蛍光体の発光特性が向上し、反応性が上がり高輝度の蛍光体が得られる。本発明の蛍光体は、フラックスとしてMgF2を10~50mol%及びNa3AlF6を4~25mol%混合して合成される。発光イオンの賦活濃度が0.01~0.50mol%であることが好ましい。
【選択図】図2
特許請求の範囲 【請求項1】
Mnを含んだ発光イオンによって賦活されたAl2O3を含み、前記発光イオンの賦活濃度は0.01~2.00 mol %であり、かつ、赤色に発光する蛍光体であって、
フラックスとしてMgF2を10~50mol%又はNa3AlF6を4~25mol%混合して、合成されたことを特徴とする蛍光体。
【請求項2】
Mnを含んだ発光イオンによって賦活されたAl2O3を含み、前記発光イオンの賦活濃度は0.01~2.00 mol %であり、かつ、赤色に発光する蛍光体であって、
フラックスとしてMgF2を10~50mol%及びNa3AlF6を4~25 mol%混合して合成されたこと特徴とする蛍光体。
【請求項3】
前記フラックスの混合においてMgF2を10~30mol%及びNa3AlF6を4~10mol%混合して合成されたことを特徴とする請求項1又は2に記載の蛍光体。
【請求項4】
前記発光イオンの賦活濃度が0.01~0.50mol%であることを特徴とする請求項1~3のいずれかに記載の蛍光体。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、フラックスとしてMgF2又は/及びNa3AlF6を用いることで発光効率の向上を示す4価のマンガン賦活蛍光体に関するものである。
【背景技術】
【0002】
蛍光体の多くは母体の構成元素や発光イオンとして希土類元素が使用されている。希土類元素とは、第三族元素であるScとY、ランタノイド元素であるLaからLuまでの元素の総称である。しかしながら希土類元素は埋蔵量、資源量、生産量のいずれにおいても中国が世界第一位であり、日本の希土類元素の供給は中国に依存している。そのため価格や供給が不安定な希土類元素を全く使用しない蛍光体(レア・アースフリー蛍光体)の開発が求められている。
【0003】
レア・アースフリー蛍光体として有名な蛍光体には発光イオンにMnやSnを賦活した蛍光体である(非特許文献1~3を参照)。Sn2+を賦活剤とした蛍光体にはCaGa2S4:Sn2+や(SrMg)3(PO4)2:Sn2+が報告されている。またマンガンは価数によって異なる発光を示し、Mn2+ではCaF2:Mn2+やCa5(PO4)3F:Mn2+などの蛍光体がある。一方Mn4+ではCaAl12O19:Mn4+やK2SiF6:Mn4+などの報告がある。
【0004】
古くから4価のマンガン賦活したアルミナ(Al2O3)蛍光体が知られているが、発光特性の詳細は報告されていない。また4価のマンガン賦活蛍光体の中では輝度が低いという問題点がある。
【先行技術文献】
【0005】

【非特許文献1】S. Geschwind, P. Kisliuk, M. P. Klein, J. P. Remeika, D. L. Wood,Physical Review, 126(1962), P.1684
【非特許文献2】B. R. Jovanic, Journal of Luminescence, 75(1997), p.171
【非特許文献3】M. G. Brik, A. M. Srivastava, Journal of Luminescence, (2011)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
そこで、本発明では上記問題点に鑑み、レア・アースフリーであって発光効率がさらに向上したAl2O3:Mn4+赤色蛍光体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは上記課題を解決するために鋭意検討を行ったところ、フラックスとしてMgF2又は/及びNa3AlF6を用いることで、高輝度を得られることを見出し、本発明に想到した。
【0008】
すなわち本発明は、以下の構成・特徴を備えるものである。
(態様1)
Mnを含んだ発光イオンによって賦活されたAl2O3を含み、前記発光イオンの賦活濃度は0.01~2.00 mol %であり、かつ、赤色に発光する蛍光体であって、
フラックスとしてMgF2を10~50mol%又はNa3AlF6を4~25mol%混合して、合成されたことを特徴とする蛍光体。
(態様2)
Mnを含んだ発光イオンによって賦活されたAl2O3を含み、前記発光イオンの賦活濃度は0.01~2.00 mol %であり、かつ、赤色に発光する蛍光体であって、
フラックスとしてMgF2を10~50mol%及びNa3AlF6を4~25 mol%混合して合成されたこと特徴とする蛍光体。
(態様3)
前記フラックスの混合においてMgF2を10~30mol%及びNa3AlF6を4~10mol%混合して合成されたことを特徴とする態様1又は2に記載の蛍光体。
(態様4)
前記発光イオンの賦活濃度が0.01~0.50mol%であることを特徴とする態様1~3のいずれかに記載の蛍光体。
【発明の効果】
【0009】
本発明のAl2O3:Mn4+赤色蛍光体は、合成時にフラックスとしてMgF2又は/及びNa3AlF6を用いたもので、発光特性を改善したものである。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】(Al1-xMnx)2O3, x=0.0005およびフラックス法により作成した(Al1-xMnx)2O3,x=0.0005の粉末X線回折パターンである。
【図2】フラックス法により作成した(Al1-xMnx)2O3、x=0.0005蛍光体の励起スペクトルおよび発光スペクトルである。
【図3】0.9995Al2O3・0.0005MnO2・xMgF2・y Na3AlF6、x=0.1~0.5、y=0.04~0.25の蛍光特性を示した図である。
【図4】1-xAl2O3・xMnO2・0.3MgF2・0.049Na3AlF6, x=0.0001~0.0200の蛍光特性を示した図である。
【図5】実施例1及び比較例の蛍光体サンプルのSEM画像を示した図である。
【図6】実施例の蛍光体が比較例に対して発光強度の改善度合を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明のAl2O3:Mn4+赤色蛍光体は、一般式:(Al1-xMnx)2O3、0.01≦x≦2.00で表される組成からなり、合成時にフラックスとしてMgF2又は/及びNa3AlF6を用いたものである。つまり、MgF2又は/及びNa3AlF6を用いることで発光特性が向上し、反応性が上がり高輝度の蛍光体が得られる。

【0012】
ここで、発光イオン(Mn)の上記の濃度下限あるいは上限を超えると、十分な発光強度を得られなくなるため、好ましくない。上記濃度範囲は、好ましくは、0.01~0.50mol%であり、さらに好ましい最適な濃度は0.1 mol%である。

【0013】
また、フラックス(MgF2、Na3AlF6)の上記の濃度下限あるいは上限を超えると、十分な発光強度を得られなくなるため、好ましくない。加えて、フラックスの混合においてMgF2を10~30mol%及びNa3AlF6を4~10mol%混合して合成されることが好ましい。さらに最適な濃度はMgF2が30 mol%でありNa3AlF6が4mol%である。

【0014】
本発明のAl2O3:Mn4+赤色蛍光体は、酸化物とフッ化物を化学量論比に従って秤量し、混合したものを空気中で焼成することにより得られる。なお、特別な合成装置を必要とせずに製造することができる。
【実施例1】
【0015】
(実施例1の蛍光体)
実施例1としてMnを含んだ発光イオンによって賦活されたAl2O3を含み、発光イオンの賦活濃度が0.01~2.00 mol%であり、かつフラックスとしてMgF2とNa3AlF6を用いた蛍光体を以下のように作成した。
【実施例1】
【0016】
(実施例1の蛍光体の製造方法)
出発原料にはAl2O3、MnO2、MgF2、Na3AlF6を用いる。なおNa3AlF6は、NaF、Al2O3、50wt%のポリテトラフルオロエチレン(PTFE)を化学量論比に従って秤量し、乾式混合した後、電気炉を用いて空気中で700℃及び12時間の条件で焼成したものを用いた。全ての原料を化学量論比に従って秤量し、乾式混合した。混合物は空気中で1100℃及び6時間の条件で焼成した。得られた粉末を粉砕後、粉末X線回折装置、蛍光分光光度計を用いて評価した。
【実施例1】
【0017】
(実施例1の蛍光体のXRDパターン)
合成した蛍光体の粉末X線回折パターンを図1に示す。上段3つはシミュレーションパターンであり、上から順にNaAl11O17、Al2MgO4、α-Al2O3である。また下段の4つは(Al1-xMnx)2O3、x=0.0005蛍光体およびフラックスを用いた試料のパターンであり、それぞれ(a)が(Al0.999Mn0.0012O3、(b)がMgF2フラックスを用いたもの、(c)Na3AlF6がフラックスを用いたもの、(d)がMgF2とNa3AlF6フラックスを用いたものである。フラックスを用いたものは不純物としてNaAl11O17やAl2MgO4が生成していることが分かる。
【実施例1】
【0018】
(実施例1の蛍光体の蛍光特性)
図2に、実施例1の蛍光体に関する励起スペクトルおよび発光スペクトルを示す。短波長側が励起スペクトルで長波長側が発光スペクトルである。この図より、実施例1の蛍光体は紫外領域の光強度を主に有する光で励起し、赤色の発光(具体的には677 nm付近にピークを持った発光スペクトル)を示す。それぞれのスペクトルは(a)が(Al0.999Mn0.0012O3、(b)がMgF2フラックスを用いたもの、(c)Na3AlF6がフラックスを用いたもの、(d)がMgF2とNa3AlF6フラックスを用いたものである。MgF2とNa3AlF6フラックスそれぞれ使用している試料はフラックスを使用しない(a)に比べ発光強度が増大しているが、2つのフラックスを使用すると更に増大していることがわかる。
【実施例1】
【0019】
(実施例1の蛍光体の濃度消光)
図3は0.9995Al2O3・0.0005MnO2・xMgF2・y Na3AlF6、x=0.1~0.5、y=0.04~0.25の蛍光特性を示した図である。この図からフラックスの混合においてMgF2を10~30mol%及びNa3AlF6を4~10mol%混合して合成されることが好ましいことが分かる。さらに好ましくは、MgF2およびNa3AlF6の最適濃度は30mol%のMgF2と4 mol%(図中4.9mol%を参照)のNa3AlF6との組み合わせである。
【実施例1】
【0020】
(実施例1の蛍光体の濃度消光)
図4は1-xAl2O3・xMnO2・0.3MgF2・0.049Na3AlF6, x=0.0001~0.0200の蛍光特性を示した図である。この図からMn4+の好ましい濃度は0.01~0.50mol%であり、さらに最適な濃度は0.1mol%であることが分かる。
【実施例1】
【0021】
(実施例1の蛍光体の粒子の状況)
図5に、MgF2やNa3AlF6 をフラックスとして使用し、合成を行った各サンプルのSEMの画像を示す。なお、左上の画像は、フラックスを使用していないサンプル(比較例 図中「Non flux」と表示)を示す。この図に示すように、MgF2やNa3AlF6 を使用したサンプルの平均粒径はフラックスを使用していない比較例よりも大きいことから、MgF2およびNa3AlF6 は粒子成長を促進する働きがあるといえる。
【実施例1】
【0022】
(実施例1の蛍光体の発光強度の改善度合の比較)
上述した図2の結果と関連するが、実施例1の蛍光体を使用した場合の発光強度の改善度合(つまり、フラックスを使用せずに合成した比較例の蛍光体の発光強度との比較)を図6に示す。フラックスを組み合わせたもの(MgF2-Na3AlF6)は、約21倍と著しく発光強度が増大していることが分かる。
図面
【図2】
0
【図3】
1
【図4】
2
【図1】
3
【図5】
4
【図6】
5