TOP > 国内特許検索 > 肝細胞がん発症リスクの判定方法 > 明細書

明細書 :肝細胞がん発症リスクの判定方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 公開特許公報(A)
公開番号 特開2014-027898 (P2014-027898A)
公開日 平成26年2月13日(2014.2.13)
発明の名称または考案の名称 肝細胞がん発症リスクの判定方法
国際特許分類 C12Q   1/68        (2006.01)
G01N  33/53        (2006.01)
G01N  33/574       (2006.01)
C12N  15/09        (2006.01)
FI C12Q 1/68 ZNAA
G01N 33/53 D
G01N 33/53 M
G01N 33/574 Z
C12N 15/00 A
請求項の数または発明の数 14
出願形態 OL
全頁数 23
出願番号 特願2012-170087 (P2012-170087)
出願日 平成24年7月31日(2012.7.31)
発明者または考案者 【氏名】恒富 亮一
【氏名】岡 正朗
出願人 【識別番号】304020177
【氏名又は名称】国立大学法人山口大学
個別代理人の代理人 【識別番号】100107984、【弁理士】、【氏名又は名称】廣田 雅紀
【識別番号】100102255、【弁理士】、【氏名又は名称】小澤 誠次
【識別番号】100096482、【弁理士】、【氏名又は名称】東海 裕作
【識別番号】100120086、【弁理士】、【氏名又は名称】▲高▼津 一也
【識別番号】100131093、【弁理士】、【氏名又は名称】堀内 真
審査請求 未請求
テーマコード 4B024
4B063
Fターム 4B024AA12
4B024CA04
4B024CA09
4B024CA12
4B024CA20
4B024HA08
4B024HA11
4B063QA01
4B063QA18
4B063QA19
4B063QQ53
4B063QR08
4B063QR42
4B063QR62
4B063QS25
4B063QS36
4B063QX02
要約 【課題】精度よく肝細胞がん再発リスクを判定できるバイオマーカーを用いた、肝細胞がん再発リスクを判定する方法や肝細胞がん再発リスクの判定用キットを提供すること。
【解決手段】7種類の遺伝子(CYP2A6、SLC10A1、SLC22A1、ESR1、GLYAT、TSPAN8、及びNQO1)をバイオマーカーとして用いることにより、精度よく肝細胞がん再発リスクを判定することができる。また、かかる7種類のバイオマーカー遺伝子のうち、3種類のバイオマーカー遺伝子(SLC22A1、TSPAN8、及びNQO1)を選択し、さらにCOL15A1及びABCB6遺伝子をバイオマーカーとして選択して判別分析を行うと、術後2年以内肝細胞がん再発症群の中で「術後2年以内肝細胞がん再発症あり」と判定されるのは88%(感度)であるのに対して、術後2年を超えて肝細胞がん無再発症群の中で「術後2年を超えて肝細胞がん再発症なし」と判定されるのは100%(特異度)であり、肝細胞がん再発症リスクを高精度に判定できる。
【選択図】なし
特許請求の範囲 【請求項1】
以下の[Aグループ]における遺伝子から選ばれる1以上の遺伝子のmRNA若しくはcDNAの発現減少、又はそれらがコードするタンパク質の発現減少、あるいは、[Bグループ]における遺伝子から選ばれる1以上の遺伝子のmRNA若しくはcDNA、又はそれらがコードするタンパク質の発現増加を検出することを特徴とする、肝細胞がん発症リスクを判定する方法。
[Aグループ]
CYP2A6、SLC10A1、SLC22A1、ESR1、GLYAT
[Bグループ]
TSPAN8、NQO1
【請求項2】
遺伝子が、[Aグループ]に含まれる以下の[A’グループ]、又は[Bグループ]に含まれる以下の[B’グループ]から選択されることを特徴とする請求項1に記載の方法。
[A’グループ]
CYP2A6、SLC10A1、SLC22A1、ESR1
[B’グループ]
TSPAN8
【請求項3】
遺伝子が、[Aグループ]に含まれるESR1、又は[Bグループ]に含まれるNQO1であることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項4】
[Aグループ]及び/又は[Bグループ]における遺伝子から4以上を選択して判別分析を行うことを特徴とする請求項1~3のいずれかに記載の方法。
【請求項5】
少なくとも[Bグループ]に含まれるTSPAN8を選択することを特徴とする請求項4に記載の方法。
【請求項6】
[Aグループ]に含まれるCYP2A6、SLC10A1、及びGLYATと、[Bグループ]に含まれるTSPAN8とを選択することを特徴とする請求項4又は5に記載の方法。
【請求項7】
[Aグループ]及び/又は[Bグループ]における遺伝子に加えて、さらに、以下の[Cグループ]における遺伝子のmRNA若しくはcDNA、又はそれらがコードするタンパク質の発現増加、及び/又は[Dグループ]における遺伝子のmRNA若しくはcDNA、又はそれらがコードするタンパク質の発現減少を検出し、判別分析を行うことを特徴とする請求項4~6のいずれかに記載の方法。
[Cグループ]
COL15A1
[Dグループ]
ABCB6
【請求項8】
[Aグループ]に含まれるSLC22A1と、[Bグループ]に含まれるTSPAN8及びNQO1と、[Cグループ]に含まれるCOL15A1と、[Dグループ]に含まれるABCB6とを選択することを特徴とする請求項4~7のいずれかに記載の方法。
【請求項9】
以下の[Aグループ]における遺伝子から選ばれる1以上の遺伝子のmRNA又はcDNAの発現、あるいは、[Bグループ]における遺伝子から選ばれる1以上の遺伝子のmRNA又はcDNAの発現を検出するためのプライマー対若しくはプローブ、又はそれらの標識物を備えることを特徴とする、肝細胞がん発症リスクの判定用キット。
[Aグループ]
CYP2A6、SLC10A1、SLC22A1、ESR1、GLYAT
[Bグループ]
TSPAN8、NQO1
【請求項10】
遺伝子が、[Aグループ]に含まれる以下の[A’グループ]、又は[Bグループ]に含まれる以下の[B’グループ]から選択されることを特徴とする請求項9に記載のキット。
[A’グループ]
CYP2A6、SLC10A1、SLC22A1、ESR1
[B’グループ]
TSPAN8
【請求項11】
遺伝子が、[Aグループ]に含まれるESR1、又は[Bグループ]に含まれるNQO1であることを特徴とする請求項9に記載のキット。
【請求項12】
以下の[Aグループ]における遺伝子から選ばれる1以上の遺伝子がコードするタンパク質に特異的に結合する抗体、あるいは、[Bグループ]における遺伝子から選ばれる1以上の遺伝子がコードするタンパク質に特異的に結合する抗体、又はそれらの標識物を備えることを特徴とする、肝細胞がん発症リスクの判定用キット。
[Aグループ]
CYP2A6、SLC10A1、SLC22A1、ESR1、GLYAT
[Bグループ]
TSPAN8、NQO1
【請求項13】
遺伝子が、[Aグループ]に含まれる以下の[A’グループ]、又は[Bグループ]に含まれる以下の[B’グループ]から選択されることを特徴とする請求項12に記載のキット。
[A’グループ]
CYP2A6、SLC10A1、SLC22A1、ESR1
[B’グループ]
TSPAN8
【請求項14】
遺伝子が、[Aグループ]に含まれるESR1、又は[Bグループ]に含まれるNQO1であることを特徴とする請求項12に記載のキット。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、肝細胞がん発症リスクの判定方法や判定用キットに関する。
【背景技術】
【0002】
我が国では死亡原因の第一位はがんであり、その対策は国民の健康という観点から最重要課題となっている。肝細胞がん(hepatocellular carcinoma;HCC、以下、「HCC」ということもある)は、世界中で最も頻出の高い固形がんのひとつであり、2009年の日本におけるHCCによる死亡率は、がんの中でも3番目に高いことが報告されている。HCCは、その殆どがウイルス感染に起因する慢性肝炎や、慢性肝炎から進行した肝硬変を背景として発症することが知られており、HCC患者の中で、C型肝炎ウイルス(HCV)に陽性である人の割合は約70%、B型肝炎ウイルス(HBV)に陽性である人の割合は約20%にのぼる(非特許文献1)。これらの肝炎ウイルスがHCCを引き起こすメカニズムの詳細は明らかにされていないが、ウイルスの持続感染が慢性肝炎や肝硬変等を引き起こす過程で、肝細胞のがん化が起こると考えられている。
【0003】
現在のところ、HCC治療法としては外科的な摘除手術が有効であるとされているが、術後の再発率はきわめて高く、予後不良であることが知られている(非特許文献2)。術後早期(およそ1~2年)の肝内再発については、門脈浸潤を原因とした肝内転移によると考えられている。また、肝細胞がん患者の多くはウイルス感染の素地を有していることから、術後後期においても多中心性発がんにより肝細胞がんが再発することも知られている(非特許文献3)。以上のように、HCCの治療には、高い再発の危険性が伴っており、外科手術後の再発を予測するためのバイオマーカーの開発は、HCC患者のQOL(quality of life)の観点から非常に重要である。
【0004】
これまでに、DNAマイクロアレイ法などの網羅的解析から、がん細胞での遺伝子発現プロファイルが構築され、がんと関わりのある遺伝子が多数同定されてきた。これを基に、がん特異的遺伝子のmRNA発現をバイオマーカーとして、がんに対する早期検出・分類・予後予測などの診断法が開発されている。しかしながら、現在までに実用化されたものは、米国食品医薬品局に認可された、乳がんの再発リスクを70の遺伝子の発現から予測するMammaPrint(Agendia社製)にとどまっているのが現状である。
【先行技術文献】
【0005】

【非特許文献1】Kiyosawa K. et al., Gastroenterology 127, S17-26 (2004)
【非特許文献2】Makuuchi M. et al., Hepatogastroenterology 45, S1267-1274 (1998)
【非特許文献3】Poon RT. et al., Cancer 89, 500-507 (2000)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の課題は、精度よく肝細胞がんの発症リスクを判定できるバイオマーカーを用いた、肝細胞がんの発症リスクを判定する方法や肝細胞がん発症リスクの判定用キットを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意研究を続けていく過程において、マイクロアレイ法とHigh Coverage Expression Profiling(HiCEP)(登録商標)法の2つの異なる解析法を用いてバイオマーカー遺伝子の探索を行って、術後2年を超えてHCC無再発症群と術後1年以内HCC再発症群とで遺伝子のmRNAの発現レベルが異なるものをスクリーニングしたところ、マイクロアレイ法及びHiCEP法によりそれぞれ1806種類及び6種類のバイオマーカー候補遺伝子を同定した。さらに、これらの中から有意差検定等による二次選別を行い、リアルタイムPCR法を用いた定量解析を行ったところ、マイクロアレイ法からの3種類の遺伝子(TSPAN8、CYP2A6、及びSLC22A1)及びHiCEP法からの3種類の遺伝子(NQO1、SLC10A1、及びGLYAT)が精度よくHCC発症又は再発リスクを判定できるバイオマーカー(以下、「HCCバイオマーカー」ということもある。)となり得ることを見いだした。
【0008】
また、HCC組織と周辺非癌肝組織でのmRNA発現比を指標としてバイオマーカーの選定を行ったところ、COL15A1遺伝子をHCCバイオマーカーとして見いだした。さらに、上記7種類の遺伝子(TSPAN8、CYP2A6、SLC22A1、NQO1、SLC10A1、GLYAT、及びCOL15A1)に加え、本発明者らが以前に肝細胞がんの発症リスクを予測できるバイオマーカーとして見いだしたABCB6遺伝子(国際公開第2011/122021号パンフレット)の上流配列に存在する転写因子結合部位に着目してバイオマーカーの選定を行ったところ、ESR1遺伝子をHCCバイオマーカーとして見いだした。
【0009】
さらに、ある遺伝子の発現をバイオマーカーとした診断システムを構築する際、複数の遺伝子を組み合わせることで診断能力の向上が期待されるが、単一の手法から得られたバイオマーカーは、ある意味均質なものであるため、それらを組み合わせても診断システムの向上には限界があると本発明者らは考えた。そこで、多種類の方法によるアプローチで得られた上記8種類のHCCバイオマーカー遺伝子(TSPAN8、CYP2A6、SLC22A1、NQO1、SLC10A1、GLYAT、ESR1及びCOL15A1)に加え、ABCB6遺伝子を組合せて、HCC再発予測の検討を行った。その結果、5つの遺伝子(TSPAN8、SLC22A1、NQO1、COL15A1、及びABCB6)のmRNAの発現量を測定した結果を基に判別分析を行うと、術後2年以内HCC再発症群の中で「術後2年以内HCC再発症あり」と判定されるのは88%(感度)であるのに対して、術後2年を超えてHCC無再発症群の中で「術後2年を超えてHCC再発症なし」と判定されるのは100%(特異度)であり、HCC発症又は再発リスクを高精度に判定できることが確認された。本発明はこれらの知見に基づいて完成するに至ったものである。
【0010】
すなわち、本発明は、(1)以下の[Aグループ]における遺伝子から選ばれる1以上の遺伝子のmRNA若しくはcDNAの発現減少、又はそれらがコードするタンパク質の発現減少、あるいは、[Bグループ]における遺伝子から選ばれる1以上の遺伝子のmRNA若しくはcDNA、又はそれらがコードするタンパク質の発現増加を検出することを特徴とする、肝細胞がん発症リスクを判定する方法に関する。
[Aグループ]
CYP2A6、SLC10A1、SLC22A1、ESR1、GLYAT
[Bグループ]
TSPAN8、NQO1
【0011】
また本発明は、(2)遺伝子が、[Aグループ]に含まれる以下の[A’グループ]、又は[Bグループ]に含まれる以下の[B’グループ]から選択されることを特徴とする上記(1)に記載の方法に関する。
[A’グループ]
CYP2A6、SLC10A1、SLC22A1、ESR1
[B’グループ]
TSPAN8
【0012】
また本発明は、(3)遺伝子が、[Aグループ]に含まれるESR1、又は[Bグループ]に含まれるNQO1であることを特徴とする上記(1)に記載の方法や、(4)[Aグループ]及び/又は[Bグループ]における遺伝子から4以上を選択して判別分析を行うことを特徴とする上記(1)~(3)のいずれかに記載の方法や、(5)少なくとも[Bグループ]に含まれるTSPAN8を選択することを特徴とする上記(4)に記載の方法や、(6)[Aグループ]に含まれるCYP2A6、SLC10A1、及びGLYATと、[Bグループ]に含まれるTSPAN8とを選択することを特徴とする上記(4)又は(5)に記載の方法や、(7)[Aグループ]及び/又は[Bグループ]における遺伝子に加えて、さらに、以下の[Cグループ]における遺伝子のmRNA若しくはcDNA、又はそれらがコードするタンパク質の発現増加、及び/又は[Dグループ]における遺伝子のmRNA若しくはcDNA、又はそれらがコードするタンパク質の発現減少を検出し、判別分析を行うことを特徴とする上記(4)~(6)のいずれかに記載の方法に関する。
[Cグループ]
COL15A1
[Dグループ]
ABCB6
【0013】
また本発明は、(8)[Aグループ]に含まれるSLC22A1と、[Bグループ]に含まれるTSPAN8及びNQO1と、[Cグループ]に含まれるCOL15A1と、[Dグループ]に含まれるABCB6とを選択することを特徴とする上記(4)~(7)のいずれかに記載の方法に関する。
【0014】
上記本発明の判定方法には医師による診断行為は含まれず、また上記判定方法のその他の態様としては、肝細胞がん発症又は再発リスクを判定(予測)するためのデータを収集する方法を挙げることができる。
【0015】
また本発明は、(9)以下の[Aグループ]における遺伝子から選ばれる1以上の遺伝子のmRNA又はcDNAの発現、あるいは、[Bグループ]における遺伝子から選ばれる1以上の遺伝子のmRNA又はcDNAの発現を検出するためのプライマー対若しくはプローブ、又はそれらの標識物を備えることを特徴とする、肝細胞がん発症リスクの判定用キットに関する。
[Aグループ]
CYP2A6、SLC10A1、SLC22A1、ESR1、GLYAT
[Bグループ]
TSPAN8、NQO1
【0016】
また本発明は、(10)遺伝子が、[Aグループ]に含まれる以下の[A’グループ]、又は[Bグループ]に含まれる以下の[B’グループ]から選択されることを特徴とする上記(9)に記載のキットに関する。
[A’グループ]
CYP2A6、SLC10A1、SLC22A1、ESR1
[B’グループ]
TSPAN8
【0017】
また本発明は、(11)遺伝子が、[Aグループ]に含まれるESR1、又は[Bグループ]に含まれるNQO1であることを特徴とする上記(9)に記載のキットに関する。
【0018】
また本発明は、(12)以下の[Aグループ]における遺伝子から選ばれる1以上の遺伝子がコードするタンパク質に特異的に結合する抗体、あるいは、[Bグループ]における遺伝子から選ばれる1以上の遺伝子がコードするタンパク質に特異的に結合する抗体、又はそれらの標識物を備えることを特徴とする、肝細胞がん発症リスクの判定用キットに関する。
[Aグループ]
CYP2A6、SLC10A1、SLC22A1、ESR1、GLYAT
[Bグループ]
TSPAN8、NQO1
【0019】
また本発明は、(13)遺伝子が、[Aグループ]に含まれる以下の[A’グループ]、又は[Bグループ]に含まれる以下の[B’グループ]から選択されることを特徴とする上記(12)に記載のキットに関する。
[A’グループ]
CYP2A6、SLC10A1、SLC22A1、ESR1
[B’グループ]
TSPAN8
【0020】
さらに本発明は、(14)遺伝子が、[Aグループ]に含まれるESR1、又は[Bグループ]に含まれるNQO1であることを特徴とする上記(12)に記載のキットに関する。
【発明の効果】
【0021】
本発明によると、肝細胞がん治療における術後の肝細胞がん再発リスクを精度よく判定(予測)することが可能となり、肝細胞がん治療の術後の治療方針を決定することができる。また、本発明によると、肝細胞がんの予防及び早期発見のために有用な情報を提供することができる。さらに、本発明によると、本発明のHCCバイオマーカー遺伝子におけるDNAのメチル化と、肝細胞がん発症との関連性を示唆している。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】3種類の遺伝子(TSPAN8、CYP2A6、及びSLC22A1)のmRNAの発現レベルを、マイクロアレイ法(上段)及びリアルタイムPCR法(下段)により解析した結果を示す図である。図中、「無再発」、「1~2年再発」、及び「1年以内再発」は、それぞれ術後2年を超えてHCC無再発症群、術後1年を超えて且つ2年以内(1~2年)HCC再発症群、及び術後1年以内HCC再発症群を示す(図2及び3も同様)。また、図中、「*」は、Kruskal Wallis検定で統計的な有意差を示し、「**」は、Steel検定で統計的に有意差(P<0.05)があることを示す(図2及び3も同様)。
【図2】3種類の遺伝子(NQO1、SLC10A、及びGLYAT)のmRNAの発現レベルを、マイクロアレイ法(上段)及びリアルタイムPCR法(下段)により解析した結果を示す図である。
【図3】ESR1遺伝子のmRNAの発現レベルを、マイクロアレイ法(左図)及びリアルタイムPCR法(右図)により解析した結果を示す図である。
【図4】リアルタイムPCR法を用いて解析した、9種類の遺伝子(TSPAN8、CYP2A6、SLC22A1、ESR1、NQO1、SLC10A、GLYAT、COL15A1、及びABCB6)のmRNAの発現レベルについて、その結果を基に統計解析ソフトウェアIBM SPSS Statics 17.0 (IBM社製)を用いてReceiver Operating Characteristic(ROC)曲線解析を行い、ROC曲線下面積(Area Under the Curve;AUC)を指標として判別性能を評価した結果を示す図である。図中、「1年以内再発」は、術後1年以内HCC無再発症群と術後1年以内HCC再発症群の間での比較検討した結果を示し、また、「2年以内再発」は、術後2年を超えてHCC無再発症群と術後2年以内HCC再発症群の間での比較検討した結果を示す。また、図中、「IHR predictive value」は、5種類の遺伝子(TSPAN8、SLC22A1、NQO1、COL15A1、及びABCB6)のmRNAの発現レベルを組み合わせたものを示す。
【図5】図4で得られた結果を基に、5種類の遺伝子(TSPAN8、SLC22A1、NQO1、COL15A1、及びABCB6)の組合せによる判別分析を行った結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本発明の肝細胞がん発症リスクを判定する方法としては、例えば、肝細胞がんを発症しているかどうか不明な被験者や手術などの肝細胞がん治療が施された被験者(肝細胞がん患者)などから採取された判定用試料中の、上記[Aグループ]におけるHCCバイオマーカー遺伝子(群)のmRNA若しくはその逆転写物(cDNA)の発現減少、又は該mRNA若しくはcDNAがコードするタンパク質の発現減少、及び/又は上記[Bグループ]におけるHCCバイオマーカー遺伝子(群)のmRNA若しくはcDNAの発現増加、又は該mRNA若しくはcDNAがコードするタンパク質の発現増加を検出する方法であれば特に制限されない。
また、本発明の肝細胞がん発症リスクの判定用キットとしては、上記[Aグループ]におけるHCCバイオマーカー遺伝子のmRNA若しくはcDNAの発現、及び/又は上記[Bグループ]におけるHCCバイオマーカー遺伝子のmRNA若しくはcDNAの発現を検出するためのプライマー対若しくはプローブ、又はそれらの標識物を備えるキット(以下、「本件キット1」という)や、上記[Aグループ]におけるHCCバイオマーカー遺伝子がコードするタンパク質に特異的に結合する抗体、及び/又は上記[Bグループ]におけるHCCバイオマーカー遺伝子がコードするタンパク質に特異的に結合する抗体、又はそれらの標識物を備えるキット(以下、「本件キット2」という)であれば特に制限されない。
本発明における「肝細胞がん発症」には、がん化していない肝細胞、若しくは前がん状態にある肝細胞ががん化したり、或いは肝臓以外の他の臓器におけるがん細胞が肝臓に転移することにより、肝臓組織で初めてがんが形成される、肝細胞がんの新規発症の他、治療のためにがん部を除去した後の非がん部肝臓組織において、再度がんが形成される、肝細胞がんの再発(再発症)も含まれる。

【0024】
本発明の判定する方法や本件キット1や本件キット2における遺伝子としては、肝細胞がん治療後2年以内に再発する肝細胞がん発症リスクを判定する場合、上記[Aグループ]に含まれる上記[A’グループ]、及び/又は上記[Bグループ]に含まれる上記[B’グループ]から選択される遺伝子が好ましく、また、肝細胞がん治療後1年以内に再発する肝細胞がん発症リスクを判定する場合、上記[Aグループ]に含まれるESR1、及び/又は上記[Bグループ]に含まれるNQO1が好ましい。また、上記[Cグループ]に含まれるCOL15A1遺伝子のmRNA若しくはcDNA、又はそれらがコードするタンパク質の発現増加を検出することにより、肝細胞がん治療後2年以内に再発する肝細胞がん発症リスクを判定することもできる。

【0025】
上記判定用試料としては、肝臓組織由来の組織、細胞、器官等の非液性試料や、血液、血清、唾液等の液性試料を例示することができる。例えば、上記肝臓組織は、被験者より採取された後に、凍結処理が施された凍結組織であっても、病理組織学的処理が施された病理組織であってもよく、かかる病理組織としては、ホルマリン固定組織や、ホルマリン固定パラフィン包埋組織等を例示することができる。

【0026】
本発明の判定する方法において、被験者から採取された判定用試料中の、上記[Aグループ]におけるHCCバイオマーカー遺伝子のmRNA若しくはcDNAの発現量、又は該mRNA若しくはcDNAがコードするタンパク質の発現量が、対照試料における発現量と比較して減少している場合や、被験者から採取された判定用試料中の、上記[Bグループ]におけるHCCバイオマーカー遺伝子のmRNA若しくはcDNAの発現量、又は該mRNA若しくはcDNAがコードするタンパク質の発現量が、対照試料における発現量と比較して増加している場合、被験者の肝細胞がん発症(再発)リスクが高い、或いは被験者における肝細胞がん治療の予後が悪い(予後不良)と評価(予測)することができる。
また、被験者から採取された判定用試料中の、上記[Aグループ]におけるHCCバイオマーカー遺伝子のmRNA若しくはcDNAの発現量、又は該mRNA若しくはcDNAがコードするタンパク質の発現量が、対照試料における発現量と比較して減少していない場合や、被験者から採取された判定用試料中の、上記[Bグループ]におけるHCCバイオマーカー遺伝子のmRNA若しくはcDNAの発現量、又は該mRNA若しくはcDNAがコードするタンパク質の発現量が、対照試料における発現量と比較して増加していない場合、被験者の肝細胞がん発症(再発)リスクが低い、或いは被験者における肝細胞がん治療の予後が良い(予後良好)と評価(予測)することができる。
なお、肝細胞がん治療の予後とは、肝細胞がん治療が施された、肝細胞がん発症患者、肝細胞がん再発患者、肝細胞がん転移患者などの肝細胞がん患者(被験者)の、治療後の生存期間や回復期間(肝細胞がん再発や肝臓以外の他の臓器への転移が認められない期間)を意味する。

【0027】
上記対照試料としては、健常者由来の組織、細胞、血液、唾液などの試料の他、医師等当業者が通常用いる基準に照らして明らかにがん化していないと判断される組織、細胞、器官等の非液性試料や血液、唾液等の液性試料を例示することができる。また、これら対照試料は、採取された後に、判定用試料と同様の処理が施された対照試料であることが好ましい。

【0028】
本発明の判定する方法において、遺伝子のmRNA又はcDNAの発現減少若しくは増加を検出する方法としては、上記[Aグループ]及び[Bグループ]におけるHCCバイオマーカー遺伝子(以下、これらを総称して「本件HCCバイオマーカー遺伝子」という)のmRNA又はcDNAの一部若しくは全部を特異的に検出できる方法であればどのような方法であってもよく、具体的には、判定用試料中の細胞における全RNAを抽出・精製し、本件HCCバイオマーカー遺伝子のmRNAに相補的な塩基配列からなるプローブを用いたノーザンブロッティング法で検出する方法や、判定用試料中の細胞における全RNAを抽出・精製し、逆転写酵素を用いてcDNAを合成した後、本件HCCバイオマーカー遺伝子のcDNAを特異的に増幅するプライマー対を用いた、競合的PCR法、リアルタイムPCR法等の定量PCR法で検出する方法や、判定用試料中の細胞における全RNAを精製し、逆転写酵素を用いてcDNAを合成した後、ビオチン(biotin)やジゴキシゲニン(digoxigenin)などでcDNAをラベルし、蛍光物質が標識されたビオチンに対する親和性の高いアビジン(avidin)やジゴキシゲニンを認識する抗体などで間接的にcDNAを標識した後、ガラス、シリコン、プラスチックなどのハイブリダイゼーションに使用可能な支持体上に固定化された、本件HCCバイオマーカー遺伝子のcDNAに相補的な塩基配列からなるプローブを用いたマイクロアレイで検出する方法や、判定用試料中の細胞における全RNAを精製し、逆転写酵素を用いてcDNAを合成した後、cDNAを制限酵素(MspI、MseI等)によって切断し、アダプター配列を結合した後、これらを鋳型DNAとしたPCRを行い、それぞれのPCR産物をキャピラリー電気泳動により展開し、得られたPCR産物由来のピークを検証するHiCEP法などの方法を挙げることができる。なお、本件HCCバイオマーカー遺伝子のmRNAやcDNAの配列情報は、例えば本件HCCバイオマーカー遺伝子名を基に、NCBI(http://www.ncbi.nlm.nih.gov/guide/)のデータベースで検索することにより得ることができる。

【0029】
本発明の判定する方法において、タンパク質の発現減少又は増加を検出する方法としては、本件HCCバイオマーカー遺伝子のmRNA又はcDNAがコードするタンパク質(以下、「本件HCCバイオマーカータンパク質」という)の一部若しくは全部を特異的に検出できる方法であればどのような方法であってもよく、具体的には、本件HCCバイオマーカータンパク質を特異的に認識する抗体を用いた免疫学的測定法や、本件HCCバイオマーカータンパク質を構成するペプチドを検出する質量分析法を挙げることができる。なお、本件HCCバイオマーカータンパク質のアミノ酸配列情報は、例えば本件HCCバイオマーカー遺伝子名を基に、NCBI(http://www.ncbi.nlm.nih.gov/guide/)のデータベースで検索することにより得ることができる。

【0030】
上記免疫学的測定法としては、免疫組織化学染色法、ELISA法、EIA法、RIA法、ウェスタンブロッティング法等を好適に例示することができる。また、上記質量分析法とは、ペプチド試料を、イオン源を用いて気体状のイオンとし(イオン化)、分析部において、真空中で運動させ電磁気力を用いて、あるいは飛行時間差によりイオン化したペプチド試料を質量電荷比に応じて分離し、検出できる質量分析計を用いた測定方法のことをいい、イオン源を用いてイオン化する方法としては、EI法、CI法、FD法、FAB法、MALDI法、ESI法などの方法を適宜選択することができ、また、分析部において、イオン化したペプチド試料を分離する方法としては、磁場偏向型、四重極型、イオントラップ型、飛行時間(TOF)型、フーリエ変換イオンサイクロトロン共鳴型などの分離方法を適宜選択することができる。また、2以上の質量分析法を組み合わせたタンデム型質量分析(MS/MS)やトリプル四重極型質量分析を利用することができる。また、液体クロマトグラフ(LC)やHPLCにより、本件HCCバイオマーカータンパク質を構成するペプチドを分離・精製してサンプルとすることができる。また、検出部やデータ処理方法も適宜選択することができる。なお、質量分析法を用いて本件HCCバイオマーカータンパク質を構成するペプチドを質量分析法で検出・定量する場合、かかるペプチドと同一のアミノ酸配列からなる、濃度が既知の安定同位体で標識したペプチドを内部標準とすることができる。かかる安定同位体標識ペプチドとしては、検出する本件HCCバイオマーカータンパク質を構成するペプチドにおけるアミノ酸の1個以上が、15N,13C,18O,及びHのいずれか1以上を含む安定同位体標識ペプチドであれば、アミノ酸の種類、位置、数などは適宜選択することができ、かかる安定同位体標識ペプチドは、安定同位元素により標識されたアミノ酸を用いてF-moc法(Amblard., et al. Methods Mol Biol.298:3-24(2005))等の適当な手段で化学合成することができるが、iTRAQ(登録商標)試薬、ICAT(登録商標)試薬、ICPL(登録商標)試薬、NBS(登録商標)試薬などの標識試薬を用いて作製することもできる。

【0031】
本発明の判定する方法の精度を高めるために、上記[Aグループ]や[Bグループ]における遺伝子から判別分析を行うことが好ましく、判別分析を行うために選択する遺伝子数としては、肝細胞がん発症リスクを判別できれば特に制限されず、例えば2以上、3以上、4以上などを挙げることができ、特に4以上を好適に例示することができる。また、上記[Aグループ]や[Bグループ]における遺伝子に加えて、さらに、上記[Cグループ]における遺伝子のmRNA若しくはcDNA、又はそれらがコードするタンパク質の発現増加や、上記[Dグループ]における遺伝子のmRNA若しくはcDNA、又はそれらがコードするタンパク質の発現減少を検出し、判別分析を行ってもよい。判別分析を行う場合、選択する遺伝子の数や種類については、感度(真の肝細胞がん発症又は再発群において、検査陽性[肝細胞がん発症又は再発あり]と判別できる確率)及び特異度(真の健常者又は肝細胞がん無再発群において、検査陰性[肝細胞がん発症又は再発なし]と判別できる確率)、及び/又は、陽性的中率(検査陽性[肝細胞がん発症又は再発ありと判別]群において、真の肝細胞がん発症患者又は再発患者である確率)及び陰性的中率(検査陰性[肝細胞がん発症又は再発なしと判別]群において、真の健常者又は肝細胞がん無再発者である確率)を考慮して適宜選択することができ、感度及び/又は特異度としては、少なくとも50%であればよく、好ましくは少なくとも78%、より好ましくは少なくとも88%、さらに好ましくは少なくとも92%、最も好ましくは100%を挙げることができ、陽性的中率及び/又は陰性的中率は、少なくとも50%であればよく、好ましくは少なくとも78%、より好ましくは少なくとも88%、さらに好ましくは少なくとも92%、最も好ましくは100%を挙げることができる。なお、感度(%)は、式「([真の肝細胞がん発症又は再発群のうちで検査陽性者の数]/[真の肝細胞がん発症又は再発者数])×100」に入力することにより算出することができ、特異度(%)は、式「([真の健常者又は無再発者群のうちで検査陰性者の数]/[真の健常者又は無再発者数])×100」に入力することにより算出することができ、陽性的中率(%)は、式「([検査陽性者群のうちで真の肝細胞がん発症又は再発者の数]/[検査陽性者数])×100」に入力することにより算出することができ、陰性的中率(%)は、式「([検査陰性者群のうちで真の健常者又は無再発者の数]/[検査陰性者数])×100」に入力することにより算出することができる。

【0032】
本発明の判定する方法において、判別分析を行う場合、少なくとも[Bグループ]に含まれるTSPAN8を選択することが好ましく、少なくとも[Bグループ]に含まれるTSPAN8を選択する場合の遺伝子の組合せとしては、例えば、[Aグループ]に含まれるCYP2A6、ESR1、及びGLYATと、[Bグループ]に含まれるTSPAN8との組合せや、[Aグループ]に含まれるCYP2A6、SLC10A1、及びGLYATと、[Bグループ]に含まれるTSPAN8との組合せや、[Aグループ]に含まれるCYP2A6、SLC10A1、及びGLYATと、[Bグループ]に含まれるTSPAN8との組合せや、[Aグループ]に含まれるSLC10A1、及びGLYATと、[Bグループ]に含まれるTSPAN8、及びNQO1との組合せや、[Aグループ]に含まれるCYP2A6、SLC10A1、ESR1、及びGLYATと、[Bグループ]に含まれるTSPAN8との組合せや、[Aグループ]に含まれるCYP2A6、SLC10A1、及びGLYATと、[Bグループ]に含まれるTSPAN8、及びNQO1との組合せや、[Aグループ]に含まれるSLC22A1と、[Bグループ]に含まれるTSPAN8、及びNQO1と、[Cグループ]に含まれるCOL15A1と、[Dグループ]に含まれるABCB6との組合せや、[Aグループ]に含まれるSLC10A1、及びSLC22A1と、[Bグループ]に含まれるTSPAN8、及びNQO1と、[Cグループ]に含まれるCOL15A1と、[Dグループ]に含まれるABCB6との組合せや、[Aグループ]に含まれるSLC22A1、及びGLYATと、[Bグループ]に含まれるTSPAN8、及びNQO1と、[Cグループ]に含まれるCOL15A1と、[Dグループ]に含まれるABCB6との組合せや、[Aグループ]に含まれるSLC10A1、SLC22A1、及びGLYATと、[Bグループ]に含まれるTSPAN8と、[Cグループ]に含まれるCOL15A1と、[Dグループ]に含まれるABCB6との組合せや、[Aグループ]に含まれるCYP2A6、SLC10A1、SLC22A1、及びGLYATと、[Bグループ]に含まれるTSPAN8、及びNQO1と、[Cグループ]に含まれるCOL15A1との組合せや、[Aグループ]に含まれるCYP2A6、SLC10A1、及びSLC22A1と、[Bグループ]に含まれるTSPAN8、及びNQO1と、[Cグループ]に含まれるCOL15A1と、[Dグループ]に含まれるABCB6との組合せや、[Aグループ]に含まれるCYP2A6、SLC10A1、SLC22A1、及びGLYATと、[Bグループ]に含まれるTSPAN8と、[Cグループ]に含まれるCOL15A1と、[Dグループ]に含まれるABCB6との組合せや、[Aグループ]に含まれるSLC10A1、SLC22A1、及びGLYATと、[Bグループ]に含まれるTSPAN8、及びNQO1と、[Cグループ]に含まれるCOL15A1と、[Dグループ]に含まれるABCB6との組合せや、[Aグループ]に含まれるCYP2A6、SLC10A1、SLC22A1、ESR1及びGLYATと、[Bグループ]に含まれるTSPAN8と、[Cグループ]に含まれるCOL15A1と、[Dグループ]に含まれるABCB6との組合せや、[Aグループ]に含まれるCYP2A6、SLC10A1、SLC22A1、及びGLYATと、[Bグループ]に含まれるTSPAN8、及びNQO1と、[Cグループ]に含まれるCOL15A1と、[Dグループ]に含まれるABCB6との組合せや、[Aグループ]に含まれるCYP2A6、SLC10A1、SLC22A1、ESR1及びGLYATと、[Bグループ]に含まれるTSPAN8、及びNQO1と、[Cグループ]に含まれるCOL15A1と、[Dグループ]に含まれるABCB6との組合せなどを挙げることができ、これらの中でも、[Aグループ]に含まれるCYP2A6、SLC10A1、及びGLYATと、[Bグループ]に含まれるTSPAN8との組合せや、[Aグループ]に含まれるSLC22A1と、[Bグループ]に含まれるTSPAN8及びNQO1と、[Cグループ]に含まれるCOL15A1と、[Dグループ]に含まれるABCB6との組合せが好ましい。

【0033】
上記判別分析としては、予めどのサンプル(検出試料)がどの群(健常者若しくは肝細胞がん無再発群又は肝細胞がん発症若しくは肝細胞がん再発群)に属すのかというデータをもとに、どの群に属すのかわからないサンプルがどの群に属すのかを判別する関数(判別関数)を求める手法であれば制限されず、判別関数のうち、線形判別関数として、例えば超平面・直線による判別関数等を挙げることができ、非線形判別関数として、例えば超曲面・曲線によるマハラノビス氾距離による判別関数等を挙げることができる。

【0034】
本件キット1におけるプライマー対としては、本件HCCバイオマーカー遺伝子のcDNAの上流及び下流の配列の一部とアニーリングしうる相補的なプライマー対であれば、プライマー配列の長さ、かかるcDNAとアニーリングする部位、増幅するcDNAの長さ等は、DNAの増幅効率や特異性を考慮して適宜選択することができる。例えば、プライマー配列の長さとしては、15~30塩基を選択することができ、また、増幅するcDNAの長さとしては、50~300塩基を選択することができる。

【0035】
本件キット1におけるプローブとしては、本件HCCバイオマーカー遺伝子のmRNA又はcDNAの一部若しくは全部がハイブリダイゼーションするプローブであれば、プローブの長さ、かかるスプライシングバリアントとハイブリダイズする部位等は、ハイブリダイゼーションの効率や特異性を考慮して適宜選択することができる。

【0036】
本件キット2における抗体としては、モノクローナル抗体、ポリクローナル抗体、ヒト抗体、キメラ抗体、ヒト化抗体などの抗体であってもよく、また、この中には、F(ab’)、Fab、diabody、Fv、ScFv、Sc(Fv)などの抗体の一部からなる抗体断片も含まれる。また、本件キット2には、本件HCCバイオマーカータンパク質のアミノ酸残基に結合した本件キット2における抗体を検出するための、蛍光物質、酵素等の標識物質をコンジュゲートした2次抗体を含めることや、本件キット2における抗体とは異なるエピトープと反応する少なくとも1種類の抗体を含めることができる。また、本件キット2には、必要と目的に応じた緩衝液、pH調製剤、反応容器等をさらに備えたものであってもよい。

【0037】
本件キット1におけるプライマー対やプローブや、本件キット2における抗体の標識物における標識物質としては、例えばビオチン、緑色蛍光タンパク質(Green Fluorescent Protein;GFP)、西洋ワサビペルオキシダーゼ(Horse Radish Peroxidase;HRP)、32Pなどを具体的に挙げることができる。

【0038】
以下、実施例により本発明をより具体的に説明するが、本発明の技術的範囲はこれらの例示に限定されるものではない。
【実施例1】
【0039】
1.マイクロアレイ法を用いたHCC再発症に関わる候補遺伝子のスクリーニング
1-1 cDNAの単離法
術後1年以内HCC再発症群由来の5検体の肝細胞がん組織試料を用いて、TRIzol Reagent(Life Technologies社製)とPureLink Micro-to-Midi Total RNA Purification Kit(Life Technologies社製)により全RNAの精製を行った後、PrimeScript RT reagent Kit(TaKaRa Bio社製)を用いてcDNAを合成した。なお、術後2年を超えてHCC無再発症群由来の5検体の肝組織試料から合成したcDNAをコントロールとして用いた。
【実施例1】
【0040】
1-2 マイクロアレイ法
上記実施例1の「1-1 cDNAの単離法」の項目に記載の方法で合成したcDNAを、DNA Labeling Kits(Roche Applied Science社製)を用いてCy3で蛍光標識した後、蛍光標識したcDNAをHuman Gene Expression 4x72K Arrays(Roche社製)にハイブリダイズさせた。ハイブリダイゼーションは、Hybridization Kits(Roche Applied Science社製)及びNimbleGen Hybridization Systems(Roche Applied Science社製)を用いて42℃にて16時間の条件下で行った。蛍光シグナルのスキャニングは、GenePix 4000B(Molecular Devices社製)を用いて行い、取得した蛍光シグナルの画像解析は、NimbleScan Software(Roche Applied Science社製)を用いて行った。その後の統計学的解析は、GeneSpring GX(アジレント・テクノロジー社製)を用いて行った。選択基準(Fold-change>2.0、P値<0.05)を基に、HCC再発症に関わる候補遺伝子を同定した。P値は、漸近計算した対応のないt-検定(unpaired t-test)とBenjamini-Hochberg FDR多重検定(multiple-testing correction)により算出した。
【実施例1】
【0041】
1-3 結果
術後2年を超えてHCC無再発症群と比べ、術後1年以内HCC再発症群で蛍光シグナルの増減、すなわちmRNAの発現量の増減が認められた遺伝子は1806種類(830種類;発現量増加、976種類;発現量減少)あることが確認された。このうち、上記選択基準を満たす遺伝子として、45種類(24種類;発現量増加、21種類;発現量減少)の遺伝子を同定することができ、かかる遺伝子をHCC再発症に関わる候補遺伝子とした。
【実施例2】
【0042】
2.HiCEP法を用いたHCC再発症に関わる候補遺伝子の同定
2-1 HiCEP法
上記実施例1の「1-1-1 cDNAの単離法」の項目に記載の方法で単離したcDNAを用いたHiCEP法は、文献(Fukumura R et al., Nucleic Acids Res. 2003. 31: e94.)に記載の方法にしたがって行った。すなわち、cDNAを2種類の制限酵素(MspI及びMseI)によって切断した後に、アダプター配列を結合した。これらを鋳型DNAとして「256 primer sets」を用いたPCRを行い、それぞれのPCR産物をキャピラリー電気泳動により展開し、得られたPCR産物由来のピークを検証した。選択基準(Fold-change>5.0、Higher peak height>1500)を基にピークのスクリーニングを行った後、ピーク由来のPCR産物のシーケンスを行い、PCR産物がmRNAであることが明らかになったものを、HCC再発症に関わる候補遺伝子として同定した。
【実施例2】
【0043】
2-2 結果
術後2年を超えてHCC無再発症群と比べ、術後1年以内HCC再発症群で蛍光シグナルの増減、すなわち発現量の増減(Fold-change>2.0、Higher peak height>100)が認められたPCR産物は、2858種類(1390種類;発現量増加、1468種類;発現量減少)あることが確認された。このうち、さらに上記選択基準(Fold-change>5.0、Higher peak height>1500)を満たすPCR産物として、28種類(15種類;発現量増加、13種類;発現量減少)のPCR産物が示された。このうち、15種類のPCR産物についてシーケンスを行ったところ、6種類がmRNA由来のものであることが明らかとなり、かかる6種類のPCR産物由来の遺伝子をHCC再発症に関わる候補遺伝子とした。
【実施例3】
【0044】
3.リアルタイムPCR法を用いたHCC再発症に関わる遺伝子の同定
3-1 リアルタイムPCR法
上記実施例1の方法で同定した45種類のHCC再発症に関わる候補遺伝子について、また、上記実施例2の方法でスクリーニングした6種類のHCC再発症に関わる候補遺伝子について、mRNAの発現量を、リアルタイムPCR法を用いた解析により定量した。具体的には、「1-1-1 cDNAの単離法」の項目に記載の方法で単離したcDNAを鋳型DNAとして、Universal ProbeLibrary Set, Human(Roche Applied Science社製)、LightCycler 480 Probe Master(Roche Applied Science社製)、及びLightCycler480 System II(Roche Applied Science社製)を用いてリアルタイムPCR法を行い、PCR産物が一定量になるPCRのサイクル数(threshold cycle;Ct値)を測定した。コントロールとして非がん部由来のcDNAを鋳型DNAとしてリアルタイムPCR法を行って得られたCt値を基準として、比較Ct法(ΔΔCt法)によりPCR産物の相対量、すなわちmRNAの相対量を算出した。
【実施例3】
【0045】
3-2 結果
リアルタイムPCR法による解析の結果、上記実施例1に記載のマイクロアレイ法でスクリーニングした45種類のHCC再発症に関わる候補遺伝子のうち、3種類の遺伝子(TSPAN8、CYP2A6、及びSLC22A1)がリアルタイムPCR法による解析においても検出レベルが特に高く、また術後2年を超えてHCC無再発症群と比べてその発現量に統計学的有意差のあることが明らかとなった。また、術後1年以内HCC再発症群及び術後2年を超えてHCC無再発症群から上記実施例1で用いた検体とは異なるもの(それぞれ6検体及び7検体)を選択し、cDNAを単離した後、マイクロアレイ法(図1上段)及びリアルタイムPCR法(図1下段)を行ったところ、同様に、術後1年以内HCC再発症群におけるTSPAN8遺伝子のmRNAの発現レベルは、術後2年を超えてHCC無再発症群と比べ、増加しており(図1の左図)、また、術後1年以内HCC再発症群におけるCYP2A6及びSLC22A1遺伝子のmRNAの発現レベルは、術後2年を超えてHCC無再発症群と比べ、減少しており(それぞれ図1の中央図及び右図)、両群間で統計学的有意差が認められた(P<0.05)。さらに、術後1~2年HCC再発症群由来の11検体を用いて検討したところ、上記3つの遺伝子の発現量は、術後2年を超えてHCC無再発症群と比べ、術後1~2年再発症群で増加(TSPAN8)、又は減少(CYP2A6及びSLC22A1)しており、両群間の上記3つの遺伝子の発現量に統計学的有意差が認められた(P<0.05)(図1)。これらの結果から、HCC再発症に関わる遺伝子として3種類の遺伝子(TSPAN8、CYP2A6、及びSLC22A1)を同定することができた。
【実施例3】
【0046】
また、リアルタイムPCR法による解析の結果、上記実施例2に記載のHiCEP法でスクリーニングした6種類のHCC再発症に関わる候補遺伝子のうち、3種類の遺伝子(NQO1、SLC10A1、及びGLYAT)がリアルタイムPCR法による解析においても検出レベルが特に高く、また術後2年を超えてHCC無再発症群と比べてその発現量に統計学的有意差のあることが明らかとなった。また、術後1年以内HCC再発症群及び術後2年を超えてHCC無再発症群から上記実施例1で用いた検体とは異なるもの(それぞれ6検体及び7検体)を選択し、cDNAを単離した後、マイクロアレイ法及びリアルタイムPCR法を行ったところ、同様に、術後1年以内HCC再発症群におけるNQO1遺伝子のmRNAの発現量は、術後2年を超えてHCC無再発症群と比べ、増加しており(図2の左図)、また、術後1年以内HCC再発症群におけるSLC10A1及びGLYAT遺伝子のmRNAの発現量は、術後2年を超えてHCC無再発症群と比べ、減少しており(それぞれ図2の中央図及び右図)、両群間におけるこれらの発現量は、統計学的有意差が認められた(P<0.05)。さらに、術後1~2年再発症群を用いて比較検討したところ、上記3種類の遺伝子の発現量は、術後2年を超えてHCC無再発症群と比べ、術後1~2年再発症群で増加(NQO1)、又は減少(SLC10A1及びGLYAT)しており、両群間のSLC10A1遺伝子の発現量に統計学的有意差が認められた(P<0.05)(図2)。これらの結果から、HCC再発症に関わる遺伝子として3種類の遺伝子(NQO1、SLC10A1、及びGLYAT)を同定することができた。
【実施例4】
【0047】
4.HCC組織特異的な発現を示す遺伝子に着目したHCC再発症に関わる遺伝子の同定
上記実施例1~3では、HCC再発症に関わる候補遺伝子を、HCC再発症検体の中からスクリーニングし、同定したが、本実施例では、HCC発症に関わる候補遺伝子を、HCC組織特異的な発現を示す遺伝子の中から同定し、その中からHCC再発症にも関わる遺伝子を同定することを試みた。まず、HCC発症5検体由来の肝細胞がん組織試料を用いて、上記実施例の「1-1-1 cDNAの単離法」の項目に記載の方法でcDNAを合成した。なお、上記HCC発症5検体由来の周辺非がん肝組織試料から合成したcDNAをコントロールとして用いた。cDNAを用いて、上記実施例1の「1-2 マイクロアレイ法」の項目に記載の方法でマイクロアレイ解析を行い、HCC発症に関わる候補遺伝子のスクリーニングを行った。その結果、HCC発症に関わる候補遺伝子として、41種類の遺伝子をスクリーニングすることができた。かかる41種類の遺伝子のうち、5種類を、上記実施例3に記載の方法でリアルタイムPCR法によってHCC発症に関わる遺伝子として同定し、そのうちの1つであるCOL15A1遺伝子のHCC組織における発現量は、術後2年を超えてHCC無再発症群では周辺非がん肝組織における発現量と比較した場合10.4倍であったのに対して、術後1年以内HCC再発症群では周辺非がん肝組織における発現量と比較した場合は3.2倍であったことが明らかとなった。すなわち、HCC組織におけるCOL15A1遺伝子の発現上昇レベルは、術後2年を超えてHCC無再発症群と比較して術後1年以内HCC再発症群の方が有意に減少していることが示された。この結果から、HCC再発症に関わる遺伝子としてCOL15A1を同定することができた。
【実施例5】
【0048】
5.転写制御因子に着目したHCC再発症に関わる遺伝子の同定
上記実施例1及び2では、マイクロアレイ法やHiCEP法による網羅的解析によりHCC再発症に関わる候補遺伝子をスクリーニングしたが、本実施例では、別の手法、すなわち、上記実施例1~4のマイクロアレイ法及びHiCEP法により、術後2年を超えてHCC無再発症群と比べ、術後1年以内HCC再発症群で発現レベルの増減が認められた7種類の遺伝子(TSPAN8、CYP2A6、SLC22A1、NQO1、SLC10A1、GLYAT、及びCOL15A1)に加え、本発明者らが以前に肝細胞がんの発症リスクを予測できるバイオマーカーとして見いだしたABCB6遺伝子の上流配列(翻訳開始点より5kb上流~翻訳開始点より0.5kb下流の領域を含む配列)に存在する転写因子結合部位に着目して、HCC再発症に関わる候補遺伝子をスクリーニングすることを試みた。まず、転写因子結合部位が存在するかどうかを、MATCH及びp-MATCHプログラムを用いて解析したところ、40の転写因子結合部位が明らかとなった。かかる転写因子結合部位に結合とする転写因子について、術後2年を超えてHCC無再発症群と比べ、術後1年以内HCC再発症群でmRNAの発現量の増減が認められるかどうかを、マイクロアレイ法及びリアルタイムPCR法により検証した。マイクロアレイ法は、選択基準(Fold-change>1.2)を基に、上記実施例1の「1-2 マイクロアレイ法」の項目に記載の方法を用いて行い、リアルタイムPCR法は、上記実施例3の「3-1 リアルタイムPCR法」の項目に記載の方法を用いて行った。
【実施例5】
【0049】
上記転写因子のうち、上記選択基準(Fold-change>1.2)を満たすHCC再発症に関わる候補遺伝子として、21種類を同定することができた。かかる21種類の遺伝子のmRNAの発現量を、リアルタイムPCR法により確認したところ、ESR1遺伝子の検出レベルが特に高く、また術後2年を超えてHCC無再発症群と比べてその発現量に統計学的有意差のあることが明らかとなった。また、術後1年以内HCC再発症群及び術後2年を超えてHCC無再発症群から上記実施例1で用いた検体とは異なるもの(それぞれ6検体及び7検体)を選択し、cDNAを単離した後、マイクロアレイ法(図3の左図)及びリアルタイムPCR法(図3の右図)を行ったところ、同様に、術後1年以内HCC再発症群におけるESR1遺伝子のmRNAの発現量は、術後2年を超えてHCC無再発症群と比べ、減少しており、両群間で統計学的有意差が認められた(P<0.05)。(図3)。さらに、術後1~2年再発症群を用いて比較検討したところ、ESR1遺伝子の発現量は、術後2年を超えてHCC無再発症群と比べ、術後1~2年再発症群で減少していることが明らかとなった(図3)。これらの結果から、HCC再発症に関わる遺伝子としてESR1を同定することができた。
【実施例6】
【0050】
6.同定した8つの遺伝子を用いたHCC再発予測の検討
6-1 術後1年を超えてHCC無再発症群と術後1年以内HCC再発症群の間での比較検討、及び、術後2年を超えてHCC無再発症群と術後2年以内HCC発症群の間での比較検討
上記実施例1~5では、HCC再発症予測できる8つの遺伝子(TSPAN8、CYP2A6、SLC22A1、ESR1、NQO1、SLC10A1、GLYAT、及びCOL15A1)のmRNAの発現量について、術後2年を超えてHCC無再発症群と術後1年以内HCC再発症群の間での比較検討、あるいは、術後2年を超えてHCC無再発症群と術後1~2年再発症群の間での比較検討を行ったが、本実施例では、術後1年を超えてHCC無再発症群(術後2年を超えてHCC無再発症群+術後1~2年再発症群)と術後1年以内HCC再発症群の間での比較検討、及び、術後2年を超えてHCC無再発症群と術後2年以内HCC再発症群(術後1年以内HCC再発症群+術後1~2年再発症群)の間での比較検討を行った(図4)。なお、コントロールとして以前発明者が同定した肝細胞がんの再発予測用バイオマーカーであるABCB6遺伝子(国際公開第2011/122021号パンフレット)を用いた。上記実施例3のリアルタイムPCR法により得られた結果を基に比較検討を行ったところ、上記8つの遺伝子とコントロールのABCB6遺伝子のうち、1年を超えてHCC無再発症群と術後1年以内HCC再発症群の間で発現量(発現量比[HCCにおけるmRNA発現量/周辺非がん肝組織における発現量])の違いに統計学的有意差があったものは、3つ(ESR1[P値=0.023、AUC値=0.815]、NQO1[P値=0.033、AUC値=0.796]、及びABCB6[P値=0.009、AUC値=0.861])あり、また、術後2年を超えてHCC無再発症群と2年以内HCC発症群の間で発現量の違いに統計学的有意差があったものは、6つ(TSPAN8[P値=0.033、AUC値=0.782]、CYP2A6[P値=0.001、AUC値=0.933]、SLC22A1[P値=0.008、AUC値=0.849]、ESR1[P値=0.008、AUC値=0.849]、SLC10A1[P値=0.007、AUC値=0.857]、及びCOL15A1[P値=0.017、AUC値=0.815])あることが明らかとなった(図4)。この結果は、3つの遺伝子(ESR1、NQO1、及びABCB6)は、術後1年以内のHCC再発症予測するためのバイオマーカーとして有用であり、また、6つの遺伝子(TSPAN8、CYP2A6、SLC22A1、ESR1、SLC10A1、及びCOL15A1)は、術後2年以内のHCC再発症予測するためのバイオマーカーとして有用であることを示している。特に、ESR1遺伝子は、術後1年以内と術後2年以内の両方でHCC再発症予測するためのバイオマーカーとして有用であることを示している。
【実施例6】
【0051】
6-2 判別分析
図4で得られた結果を基に判別分析を行ったところ、線形判別式(Y=-0.288×[TSPAN8のmRNA発現量]+0.266×[SLC22A1のmRNA発現量]+(-0.125)×[NQO1のmRNA発現量]+0.511×[COL15A1のmRNA発現量]+0.379×[ABCB6のmRNA発現量]+0.059)を用いて、判別得点Yを求めることができる。判別得点0以上を、術後2年を超えてHCC再発症なしとし、判別得点0未満を、術後2年以内HCC再発症ありとした場合、真の術後2年以内HCC再発症17検体中でこの判別式により「術後2年以内HCC再発症」と判定(判別得点が0点未満)されたのは15検体(感度:88%)であるのに対し、真の術後2年を超えてHCC無再発症7検体中で「術後2年を超えてHCC再発症なし」と判定(判別得点が0点以上)されたのは7検体(特異度:100%)であった(図5)。また、陽性的中率(検査陽性者[術後2年以内HCC再発症ありと判別]群において、真の術後2年以内HCC再発症である確率)は、100%であるのに対して、陰性的中率(検査陰性[術後2年を超えてHCC再発症なしと判別]群において、真のである確率)は、78%であった(図5)。以上の結果から、HCC再発症予測できる上記8つの遺伝子の中から5つの遺伝子(TSPAN8、SLC22A1、NQO1、COL15A1、及びABCB6)のmRNAの発現量を測定した結果を基に判別分析を行うと、感度及び特異度が共に高く、術後2年以内のHCC再発症を精度よく予測できることが明らかとなった。かかる5つの遺伝子は、術後2年以内でHCC再発症予測するためのバイオマーカーとして有用であることも明らかとなった。(図4の「IHR predictive value」参照)(P値<0.001、AUC値=0.983)。
【実施例6】
【0052】
さらに、術後2年以内でHCC再発症を精度よく予測できる遺伝子の組合せバターンの検証を行ったところ、上述の図4及び5で示した組合せ以外にもHCC再発症を精度よく予測できる組合せがあることが明らかとなった(表1及び2)。例えば、4つの遺伝子(CYP2A6、SLC10A1、GLYAT、及びTSPAN8)のmRNAの発現量を測定した結果を基に判別分析を行うと、感度(82%)及び特異度(100%)が共に高く、術後2年以内のHCC再発症を精度よく予測できることが明らかとなった(AUC値≒0.99)。さらに、術後2年以内でHCC再発症を精度よく予測するためには、少なくともTSPAN8遺伝子を選択して判別分析を行うことが必要であることも確認された。
【実施例6】
【0053】
【表1】
JP2014027898A_000002t.gif
【実施例6】
【0054】
【表2】
JP2014027898A_000003t.gif

【産業上の利用可能性】
【0055】
本発明により、肝細胞がん再発リスクを予測することができるため、術後の治療方針を決定することができる。また、術後の生存期間や回復期間を延ばすことが期待される。
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4