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明細書 :活性金属塩凝集剤及びその製造方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第5498477号 (P5498477)
登録日 平成26年3月14日(2014.3.14)
発行日 平成26年5月21日(2014.5.21)
発明の名称または考案の名称 活性金属塩凝集剤及びその製造方法
国際特許分類 B01D  21/01        (2006.01)
C02F   1/52        (2006.01)
FI B01D 21/01 102
B01D 21/01 101A
C02F 1/52 Z
請求項の数または発明の数 8
全頁数 24
出願番号 特願2011-501694 (P2011-501694)
出願日 平成22年2月24日(2010.2.24)
国際出願番号 PCT/JP2010/053374
国際公開番号 WO2010/098492
国際公開日 平成22年9月2日(2010.9.2)
優先権出願番号 2009041973
優先日 平成21年2月25日(2009.2.25)
優先権主張国 日本国(JP)
審査請求日 平成25年2月25日(2013.2.25)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】304020177
【氏名又は名称】国立大学法人山口大学
【識別番号】800000013
【氏名又は名称】有限会社山口ティー・エル・オー
【識別番号】510039404
【氏名又は名称】株式会社アプローズ
発明者または考案者 【氏名】三木 俊克
【氏名】村田 卓也
【氏名】深石 準
個別代理人の代理人 【識別番号】100123696、【弁理士】、【氏名又は名称】稲田 弘明
【識別番号】100100413、【弁理士】、【氏名又は名称】渡部 温
【識別番号】100104684、【弁理士】、【氏名又は名称】関根 武
審査官 【審査官】富永 正史
参考文献・文献 特開平07-051677(JP,A)
特開2005-152880(JP,A)
国際公開第2001/060751(WO,A1)
調査した分野 B01D 21/01
C02F 1/52-1/56
C02F 1/46-1/48
特許請求の範囲 【請求項1】
ポリシリカ鉄系凝集剤または該凝集剤を含有する水溶液を電解処理してなる活性金属塩凝集剤。
【請求項2】
5.9~6.1eVの光吸収帯域の吸光度が、電解処理前よりも低くなっている、請求項1記載の活性金属塩凝集剤。
【請求項3】
電解処理が直流電解処理である、請求項1又は2記載の活性金属塩凝集剤。
【請求項4】
陰・陽両電極となる2つの電極を備えた容器中にポリシリカ鉄系凝集剤または該凝集剤を含有する水溶液を存在させ、両極間に通電することを特徴とする活性金属塩凝集剤の製造方法。
【請求項5】
陽極側と陰極側とが隔膜によって区画されている容器を用いて通電を行い、陽極側の凝集剤を回収することを含む、請求項4記載の活性金属塩凝集剤の製造方法。
【請求項6】
通電量が5~60クーロン/gである、請求項4記載の活性金属塩凝集剤の製造方法。
【請求項7】
通電が直流電圧の印加によりなされる、請求項4記載の活性金属塩凝集剤の製造方法。
【請求項8】
請求項1記載の活性金属塩凝集剤を被処理水と接触させる工程を含む、該被処理水を浄化する、水質浄化方法。
発明の詳細な説明
【0001】
本発明は、浄水、下水、産業用排水、農業用排水等の汚水の浄化に用いる凝集剤に係る。特に水溶性やコロイド状有機物を含む汚水に対して著効を有する活性凝集剤及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
浮遊性濁体や水溶性の除去対象物質を含む農業用排水、産業用排水や家庭用排水である下水の浄化或いは飲料水とするための源水(これらを総称して、本明細書において汚水と称する)の浄化においては、濾過分離処理、吸着分離処理、凝集沈殿処理、凝集浮上処理、電気化学処理といった物理化学的手段による懸濁物や溶解不純物の除去及び好気性菌や嫌気性菌の生物代謝によって除去対象物質を分解する生物学的手段が、単独または併用して用いられる。物理化学的手段のうち、溶解又はコロイド等として存在する除去対象物質は、通常凝集剤を用いて粗粒又はフロック状とし、沈殿又は浮遊させ分離除去する。
凝集剤としては一般にアルミニウム系、鉄系、マグネシウム系などの金属塩、中でもこれらの金属を含む重合体が高い効果を有するとされている。
【0003】
これらの凝集剤の働きは、一般に汚水中の濁質コロイドがその表面に負の電荷を帯びていることから、前記金属塩凝集剤は、水中で、たとえばアルミニウムヒドロキシ錯体など正の電荷となって電荷を中和し、コロイド粒子を集合させフロック状としたり、また汚水中に溶解しているサポニンやたん白質或いはフミン類などの有機物を塩析するなどの作用により、除去対象物をフロック等の塊状化するものである。
【0004】
従来、一般に使用されている金属塩系の凝集剤としては硫酸アルミニウム(硫酸バンド:Al(SO)やポリ塩化アルミニウム(PAC:〔Al(OH)Cll6-n)(n=1~5、m≦10)などのアルミニウム系、硫酸第1鉄(りょくばん:FeSO・7HO)や塩化第2鉄(FeCl・6HO)あるいは硫酸第2鉄の硫酸基の一部を水酸基で置換したポリ硫酸第2鉄(〔Fe(OH)(SO3-n/2などの鉄系、更には鉄-シリカ無機高分子である重合ケイ酸鉄(PSI:〔(SiO)・(Fe1~3)(n=50~200)などが主として用いられる。
【0005】
これらの凝集剤と併せて、又は単独で、カチオン系、アニオン系又はノニオン系の高分子凝集剤(凝集助剤)が用いられる場合もある。これらの有機凝集剤としてカチオン系の例はアニリン誘導体、ポリエチレンイミン等のアミン類、ポリアミド、ポリアクリルアミド等のアミド系凝集剤であり、主として下水や屎尿など、又はクロレラ、緑藻類、バクテリアなどの藻類の除去に用いられる。また、アニオン系の例は、ポリアクリル酸ソーダなどであり、特に被処理水のpHが中性からアルカリ性の場合に用いられ、一般に重金属水酸化物などカチオン荷電粒子を含む排液、たとえば紙パルプ工場廃水、金属機械工場廃水、選鉱廃水、めっき廃水などの場合に多く用いられる。
また、ノニオン系の例は、ポリエチレンオキサイドなどで,特にpHが中性~酸性の場合に適し、砂利・粘土採取廃水、選鉱廃水など無機質懸濁物の沈降促進、濾過促進などの場合、金属塩凝集剤と併せて用いられる。
【0006】
また、電気分解(以下、本明細書において電解と称する)による汚水中の有機物凝集除去方法も開示されている。電解による汚水の処理手段としては、一般に金属電極を用いることにより、電解時に該電極の溶出により被処理汚水中に陽イオンを供給するものであり、たとえば、特許文献1、2は電極としてアルミニウムや鉄を用いている。また、PACにより懸濁粒子を凝集させた後、電解による気泡の発生により凝集粒を水面に浮上させ、フロスを形成させるもの(特許文献3)、また、難分解性有機物を含む排水について、まず好気性菌により分解した後、金属イオンを含む凝集剤、たとえばPACや塩化第二鉄を加えて、電解酸化・還元することにより、該金属イオンと難分解性有機物との錯体の生成を促進させる方法(特許文献4)、或いはシリカを含む排水に対して、鉄を電極とする電解操作により、一部シリカ-鉄よりなる凝集剤を系内で形成させて被除去物質を除去する方法(特許文献5)などがある。
【0007】
しかし、これらの電解による汚水の処理は悉く汚水中に含まれる汚濁物質自体に作用させるものであるため、装置の大型化や、オン・サイトで電解をしなければならないという問題があった。
更に汚水処理においては、上記金属塩凝集剤による浮遊物の除去処理と併せて、所謂活性汚泥法といわれる細菌を用いた有機物の分解処理が行われる。たとえば農業用排水の処理などにあっては、好気性菌処理と嫌気性菌処理とを併用することもしばしば行われている。
【0008】
以上の如く、汚水処理にあっては、一般にまず凝集剤による浮遊物、特にコロイド物質又は一部溶解した有機物を除去する必要があり、従来アルミニウム系の凝集剤が主として用いられてきた。しかし、アルミニウム系凝集剤、たとえばPAC等は低濃度原水,低水温,高アルカリ度原水、塩類の多い原水に対して著しく凝集効果が落ちることが知られているだけでなく、処理液中にアルミニウムが存在し、人体への影響が疑われるため、河川への放流や、田畑への給水等に使用する場合、可及的に低濃度とすることが望まれている。また、鉄系凝集剤、たとえばPSIなどは鉄鋼業における酸洗廃液等の利用が検討されているが、凝集対象となる汚水中有機物に応じてシリカ量を変化する必要があるだけでなく,濾過損失が大きいため、現在の処理施設をそのまま使うには制御系やノウハウの再構築が必要、ソースが限られるなどの事情もあってPACほどには一般的ではない。硫酸バンドやりょくばんあるいは塩化鉄などは凝集効果が劣るため、大量に用いる必要があるが、多量に使用したとしても必ずしも凝集効果の向上が期待できるわけではない。したがって、凝集効果の高い凝集剤の使用で使用量を削減できれば、汚水処理コストの低減となるので、より効率的な凝集剤の開発が望まれていた。特に、従来使用されている金属塩凝集剤によっては、溶解している有機物を除去する性能が劣り、有機物等を多く溶解している汚水に対しては、大量の凝集剤の使用や後処理による有機物の分解等を必要とするという欠点があった。
更に問題として、上記金属塩系凝集剤、特に塩素含有凝集剤にあっては、前記の電解を伴う処理の場合、たとえば農業用排水処理等でしばしば行われる凝集剤処理に続く嫌気性菌による処理が不可能(菌が死滅する)となる事態がしばしば生ずるという欠点があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】 特開平8-117737
【特許文献2】 特開2001-54700
【特許文献3】 特開2002-45630
【特許文献4】 特開2003-275765
【特許文献5】 特開2005-152880
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
そこで、本発明は従来使用されていた金属塩系凝集剤の凝集活性を著しく高めた活性金属塩凝集剤を提供することを目的とする。
また、本発明の目的は、活性金属塩凝集剤の製造時に電解を施すものであるが、本発明の活性金属塩凝集剤で処理された排液は、その後嫌気性菌を死滅させることはないので、好気性菌処理は勿論、嫌気性菌処理も可能となるのである。
更に、本発明は、汚水の浄化力が向上した汚水の浄化方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは鋭意検討し、従来より汚水の浄化に使用されていた金属塩系凝集剤に電解処理(通電処理)を施すことにより、上記目的を達成し得るという知見を得た。
本発明は上記知見に基づいてなされたものであり、金属塩凝集剤または該金属塩凝集剤を含有する水溶液を電解処理してなる活性金属塩凝集剤を提供するものである。
本発明において、金属塩凝集剤としては高分子金属塩凝集剤が挙げられる。
金属塩凝集剤がポリ塩化アルミニウム系凝集剤及びポリシリカ鉄系凝集剤が挙げられる。
【0012】
金属塩凝集剤がポリ塩化アルミニウム系凝集剤である場合、4.8~5.5eV及び3.8~4.2eVに光吸収帯を有するものが挙げられる。
金属塩凝集剤がポリシリカ鉄系凝集剤である場合、5.9~6.1eVの光吸収帯域の吸光度が、電解処理前よりも低くなっているものが挙げられる。
電解処理としては直流電解処理であることが好ましい。
また、本発明は、陰・陽両電極となる2つの電極を備えた容器中に金属塩凝集剤または該金属塩凝集剤を含有する水溶液を存在させ、両極間に通電することを特徴とする、本発明の活性金属塩凝集剤の製造方法を提供する。
【0013】
前記活性金属塩凝集剤の製造方法としては、陽極側と陰極側とが隔膜によって区画されている容器を用いて通電を行い、陽極側の凝集剤を回収することを含む方法であってもよい。
通電量は、5~60クーロン/gであることが好ましい。
また、本発明は、 請求項1記載の活性金属塩凝集剤を被処理水と接触させる工程を含む、該被処理水を浄化する、水質浄化方法を提供する。
【発明の効果】
【0014】
本発明の活性凝集剤は、従来用いられている金属塩系凝集剤又はその水溶液に直流または交流の電流を流す電解処理により得られる。本発明の処理により得られる活性凝集剤は、従来の未電解処理の凝集剤に較べ、例えば100倍を超える格段に強い凝集作用を示すのである。その理由は必ずしも明らかではないが、電解処理として液体状凝集剤又は凝集剤水溶液に通電することにより液中に陽電荷或いは陰電荷をもつ水酸化金属系で比較的分子量の大きい化合物のポリイオンが形成され、該イオンによる懸濁粒子の電荷の中和と、該凝集剤分子により、多数の懸濁粒子の吸着による架橋等が生じ凝集力が向上すること及び溶解有機物の塩析作用も得られるものと思われる。
【0015】
本発明の活性凝集剤は、従来公知の凝集剤を電解処理し、その凝集剤としての性能を著しく向上させるものであって,凝集剤としての使用方法は従来の凝集剤の使用方法と特に変わるものではなく、従来用いられている浄化装置や浄化プロセスは、何ら変更することなく利用することができる。
本発明の活性金属塩凝集剤の製造方法によれば、強い凝集作用を示す金属塩凝集剤を得ることができる。
また、本発明の汚水の浄化方法は、本発明の活性金塩凝集剤を用いているので、従来の凝集剤を用いるよりも、浄化効率が優れたものとなる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】 図1は、活性化処理したPACによるグロブリンの凝集状態を時間の経過と共に示した写真及び比較のために未処理のPACにおける写真である。
【図2】 図2は、活性化処理したPACによるアルブミンの凝集状態を時間の経過と共に示した写真及び比較のために未処理のPACにおける写真である。
【図3】 図3は、PACの活性化電解処理について、処理時間と光吸収スペクトルの変化を示した図である。
【図4】 図4は、光吸収スペクトルについて、初期光吸収スペクトルを減算し、電解処理による変化の増加成分を明確に示した図である。
【図5】 図5は、PSIについて、活性化処理を行った場合と活性化処理なしのPSIについて、両者の相違を示すための写真である。
【図6】 図6は、PSIについて活性化処理時間による光吸収スペクトルの変化を示す図である。
【図7】 図7は、PACにおける活性化処理時間と凝集性能の関係を示す写真である。
【図8】 図8は、PSIにおける活性化処理時間と凝集性能の関係を示す写真である。
【図9】 図9は、通電量と乾燥重量比との関係を示すグラフである。
【図10】 図10は、通電量と乾燥重量比との関係を示すグラフである。
【図11】 図11は、通電量と吸光度とのとの関係を示すグラフである。
【図12】 図12は、通電量と乾燥重量比との関係を示すグラフである。
【図13】 図13は、食肉センター総合排水を凝集剤で処理した実験の結果を示す写真である。
【図14】 図14は、食肉センター総合排水を凝集剤で処理した実験における、上澄み液の光透過スペクトルの測定結果を示す。
【図15】 図15は、公共下水最初沈殿池出水を凝集剤で処理した実験における、上澄み液の光透過スペクトルの測定結果を示す。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、まず本発明の活性金属塩凝集剤について説明する。
本発明の活性金属塩凝集剤は、金属塩凝集剤又は該金属塩凝集剤を含有する水溶液を電解処理してなる。本発明において用いられる金属塩凝集剤とは、従来より、例えば汚水処理に用いられている金属塩凝集剤を意味する。このような金属塩凝集剤としては、例えば第2鉄塩 (塩化第2鉄、硫酸第2鉄、ポリ硫酸第2鉄など)、アルミニウム塩(硫酸アルミニウム [硫酸バンド]又はポリ塩化アルミニウム [PAC]、Al(OH)Cl16-n,1≦n≦5,m≦10))、又はチタン塩(塩化チタンなど)、硫酸第1鉄(りょくばん:FeSO・7HO)や塩化第2鉄(FeCl・6HO)あるいは硫酸第2鉄の硫酸基の一部を水酸基で置換した(〔Fe(OH)(SO3-n/2などの鉄系、更には鉄-シリカ無機高分子である重合ケイ酸鉄(PSI:〔(SiO)・(Fe1~3)(n=50~200)等が挙げられるが、これらに限定されず、従来より、汚水処理などに用いられているものであれば特に制限なく用いることができる。
【0018】
電解処理手段としては限定されず、電極間に金属塩凝集剤又はその水溶液を存在させて直流又は交流を通電すればよいが、本発明においては直流を通電させることが好ましい。電解処理を行う際に金属塩凝集剤を含有させる水溶液としては、電解液であることが好ましい。この場合の電解液としては、電解処理を行う際に用いられるものを特に制限なく用いることができる。このような電解液としては、水中でイオン化し、水溶液の導電率(イオン強度)を増加させる物質が特に制限なく用いられ、例えば、無機酸、例えば塩酸、硫酸、リン酸、硝酸、炭酸など;有機酸、例えばメタンスルホン酸、ギ酸、酢酸、クエン酸、シュウ酸、テレフタル酸など;アルカリ性物質、例えば水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、アンモニアなど;アルカリ金属塩、例えば塩化カリウム、塩化ナトリウムなどが挙げられる。電解液の濃度は、通常は0.1mol/L~8mol/L、程度であり、好ましくは0.1mol/L~8mol/Lであり、更に好ましくは0.3mol/L~4mol/L程度である。電解処理の条件については後述する。本明細書においては、電解処理を通電処理と表現する場合もあり、両者を同義として用いている。
【0019】
なお、本発明において用いられる金属塩凝集剤としては、ポリ塩化アルミアルミニウム系凝集剤(PAC)及び鉄-シリカ無機高分子である重合ケイ酸鉄(ポリシリカ鉄系凝集剤)が好ましい。 ポリ塩化アルミニウム系凝集剤は、電解処理によって4.8~5.5eV及び3.8~4.2eVに光吸収帯を有する。ここで、光吸収帯を有するとは、PACを含む溶液(場合により、水等の溶媒で希釈する)を分光光度計により光吸収スペクトルを測定した場合、その範囲の吸光度が、電解処理を行っていないものよりも大きいことを意味する。PACは、電解処理を施す前には、この範囲に光吸収帯を有していないので、電解処理を施したものと区別することができる。また、後述する実施例から明らかなように、上記範囲に光吸収帯を有するPACは、凝集効率が向上したものである。また、光吸収帯の範囲は、原料として用いる金属塩凝集剤により異なり、例えば、5.2~5.4eV及び4.0~4.2eVの範囲であり、又は4.9eV及び3.9eV付近である。この光吸収体の増加の出現は、HOMO-LUMOの遷移によるもの、又は微量不純物等によって、エネルギー準位に少し変化が生じる可能性があり、それを反映したものと思われる。いずれにしても、この範囲の光吸収帯の出現は、得られる活性金属塩凝集剤の凝集活性の向上と一致している。
【0020】
また、本発明において、金属塩凝集剤としては、ポリシリカ鉄系凝集剤(鉄-シリカ無機高分子である重合ケイ酸鉄、PSI)を用いることもできる。この場合は、活性金属塩凝集剤は5.9~6.1eVの光吸収帯域の吸光度が、電解処理前よりも一旦増加し、電解処理を継続するとこの範囲の吸光度が低下するので、電解処理を施していないものと区別することができる。
また、本発明の活性金属塩凝集剤は、その中に含まれる塩素イオン濃度が低い方が好ましい。塩素イオンが存在すると凝集能を阻害すると考えられるが、本発明の活性金属塩凝集剤は、電解処理を行うことによって塩素イオンが電解反応によって塩素ガスとして放出され、塩素イオン濃度が低くなっており、これにより凝集能が向上していると考えられる。
【0021】
本発明の活性金属塩凝集剤は、本発明の水質浄化方法に用いることができる。
本発明の水質浄化方法は、上述した本発明の活性金属塩凝集剤を被処理水と接触させる工程を含む。
本発明の水質浄化方法において、対象となる被処理水には、特に制限はないが、生活排水や産業排水が挙げられ、例えば、最終処分地浸出水、ゴミ焼却排水、下水処理水、し尿処理水、半導体工場排水、電子工場排水、めっき工場排水、水産加工場排水、食品飲料製造工場排水などの工場排水、鉱業排水、農業排水、畜産排水、浄水処理排水といった、処理の際に浄化を要するものが挙げられる。本発明の活性金属塩凝集剤はタンパク質成分を凝集させる効果に優れるので、特に、タンパク質性の被除去成分(食品や血液成分なども含む)を含む排水を被処理水として用いるのに適している。
【0022】
本発明の水質浄化方法は、本発明の活性金属塩凝集剤を被処理水と接触させる工程を含む。活性金属塩凝集剤を被処理水と接触させる方法としては、特に制限はないが、例えば、被処理水と活性金属塩凝集剤とを混合する方法が挙げられる。いずれの方法においても、活性金属塩凝集剤を被処理水と連続的に接触させることが好ましい。接触させる方法としては、上述のように、活性金属塩凝集剤を被処理水と混合させる方法の他に、例えば、繊維等で形成された袋状体の中やシート状体の間に、本発明の活性金属塩凝集剤を入れ、それを被処理水に浮かべたり、沈めたりして用いてもよい。また、排水の浄化装置の水循環経路に配設されるろ過槽に、本発明の活性金属塩凝集剤を配置して用いてもよい。この際、従来より被処理水を浄化するために用いられている、フィルターや活性炭、他のろ過剤などを併用することもできる。
【0023】
次に、本発明の活性金属塩凝集剤の製造方法について説明する。
本発明の活性金属塩凝集剤の製造方法は、陰・陽両電極となる2つの電極を備えた容器中に金属塩凝集剤または該凝集剤を含有する水溶液を存在させ、両極間に通電することを含む。
すなわち、本発明の活性金属塩凝集剤の製造方法は、陰・陽両電極となる2つの電極を、金属塩凝集剤又は該凝集剤を含有する水溶液に浸漬し、両極間に通電することを含む。
水溶液としては、電解液であることが好ましい。電解液については上述した通りである。
【0024】
電解手段としては限定されず、電極間に金属塩凝集剤又はその水溶液を存在させて直流又は交流を通電すればよい。本発明においては、通電が直流電圧の印加によりなされることが好ましい。
活性化処理金属塩凝集剤又はその水溶液は通電電気量(クーロン量)に比例して電気化学的変化を受けることになるため、通電電気量の増大と共に凝集活性は高くなるが、一定値を過ぎると凝集活性は低下することもある。これは過剰に電気分解を受けることにより、一旦形成された凝集力の強い状態から、更に電解により分子が分解を受け、凝集活性を低下させるものと考えられる。通電量は、使用する凝集剤の種類や濃度によっても異なり、後述する実施例等を参考にして予備試験により適当な電解処理条件を容易に求めることができる。例えば、通電量としては、合計の通電量として、好ましくは5~60クーロン/gであり、更に好ましくは5~20クーロン/gである。ここで、通電量は、原料として用いる金属塩凝集剤の1gあたりのクーロン量で表している。すなわち、用いる金属塩凝集剤の量を増やした場合、電流量を増加させるか、通電時間を長くすることにより、凝集効率の同じ活性金属塩凝集剤を得ることができる。上記通電量が5クーロン/g未満であると凝集活性効果が向上しない場合があり、一方、通電量を60クーロン/gより高くしても、凝集活性効果はそれ以上に向上しない。
【0025】
通電処理をする時間は、通電量が上記範囲となる時間でよいが、後述する実施例から明らかなように、本発明の活性金属塩凝集剤は、4.8~5.5eV及び3.8~4.2eVに光吸収帯を有する場合に、その凝集効率が向上しているので、4.8~5.5eV及び3.8~4.2eVに光吸収帯を有するようになるまで通電処理を実施することが好ましい。この場合、通電処理の最中に試料の一部をサンプリングし、吸光度を測定し、上記範囲に光吸収帯が出現しているかどうかを確認しながら通電処理を行ってもよい。
【0026】
電解条件としては、まず一定の電流が流れることが必要であり、そのために必要な通電量は,電極材料の種類や、処理する金属塩凝集剤の種類、水の有無などによって決まる。一般に電圧が低すぎると電流は流れないし、またあまりに高くすることは過度の水の電解を来たすので良くない。また、電圧が過剰に高くなるのを避けるため、助剤として、アルカリ金属塩、たとえば塩化カリウム、塩化ナトリウム等を加えることも好ましい場合がある。すなわち、電解液を用いることが好ましい。
【0027】
また、電極材料としては、直流の場合、陰極は鉄やニッケル,炭素等の導電体材料でよく、陽極は金属の溶出を考慮し、溶出してよい場合はアルミニウムや鉄でよいが、金属の溶出を避けたい場合は白金等の貴金属又は白金等を鍍金した金属など、他には炭素等を用いるのが好ましい。
なお、交流電解にあっては、金属の溶出を避けたい場合は、両極とも白金電極等を用いるのが好ましい。
更に、電解温度は特に限定されず、室温で十分である。
【0028】
本発明の電解による活性化処理は、金属塩凝集剤全般に対して有効ではあるが、特に重縮合型の金属塩高分子よりなる金属塩凝集剤、就中PACやPSIに対して著効を有する。その理由は必ずしも明らかではないが、電解によってPACやPSIの分子の切断が生じると共に、金属のヒドロニウムゲル化を生じ、イオン量の増大が生じているのではないかと予想される。
これらは、電解の進行に伴って、光吸収スペクトルに現れる。すなわち、PACにあっては、4.8~5.5(特に5.3)eV及び3.8~4.2(特に4.13)eVに、光吸収スペクトルのピークが現れる。またPSIにあっては、電解処理時間と共に5.9~6.1eV及び4.0~4.3eVの光吸収帯を変化させるのである。PACにあっては電解によって新たに現れる光吸収ピークの値が最大に達したところが、凝集活性の最大とほぼ一致する。PSIにあっては光吸収帯のピーク強度が減少したところで凝集性能が高くなる。従って、光吸収スペクトルを測定することによっても本発明の電解処理の適当な条件を見極めることもできる。
【0029】
また、本発明の活性金属塩凝集剤の製造方法においては、陽極側と陰極側とが隔膜によって区画されている容器を用いて通電を行い、陽極側の凝集剤を回収することを含む方法であってもよい。本発明の活性金属塩凝集剤の製造方法においては、陽極反応が凝集性能の向上を引き起こしていると考えられるので、陽極側の凝集剤を回収することにより、凝集性能が更に向上したものが得られる。
なお、用いられる隔膜としては、浸透膜、カーボンファイバーの板等が用いられる。
本発明の活性金属塩凝集剤の製造方法によって得られた活性金属塩凝集剤は、そのまま、浄化すべき水に加えて使用してもよいが、例えば遠心分離等によって水分を減少させたものを用いてもよく、又は凍結乾燥したものを用いてもよい。
【0030】
実施例
以下、本発明を実施例により更に詳細に説明する。なお、本発明の範囲は、かかる実施例に限定されないことはいうまでもない。
実施例1
電解装置としては以下のものを用いた。
内径18mm、高さ50mmの円柱状ガラス容器に、電極として白金線〔直径0.3mm、長さ12.5mm(有効長さ40mm)、電極間距離13mm〕を設置した電解槽を用いた。
電解処理の条件は以下の通りである
印加電圧 直流45V(以下)
電流値 30mA(定電流制御)
水温 23℃
処理時間 90分
通電量 16クーロン/g
【0031】
上記電解装置に、ポリ塩化アルミニウム(PAC:〔Al(OH)Cll6-n)(n=1~5、m≦10)(北海道曹達株式会社製)を10mLを入れ、通電を行い、電解処理を行い、活性化金属塩凝集剤としての活性化PACを得た。
上述のようにして得られた活性化PAC1mLを水1mLと混合し、試料とした。これと別個に、電解処理を行っていない、PACを比較例1とした。
ビーカーにKCl水溶液(濃度100mM)50mLを入れ、次いで、グロブリン水溶液(濃度50μM)2mLを加え、よく撹拌した。次いで、上述のようにして得られた試料をビーカーに加え、400rpmで1分間撹拌し、ビーカーの中に生成される沈殿を、0分、5分、10分、30分、60分、90分及び120分静置した後に肉眼で観察した。
【0032】
結果を図1に示す。図1において、A1~A7は比較例1についての結果を、B1~B7は実施例1についての結果を、それぞれ0分、5分、10分、30分、60分、90分及び120分静置した後の結果を示す。
比較例1においては、ビーカー内のグロブリン溶液にPAC試料溶液を添加後、直ちに溶液が白濁し始め、その後、30分程度までは白濁した溶液の色に大きな変化は観察されなかったが、50分経過後からフロック状のタンパク質成分凝集体と思われるものがビーカーの底に沈殿する様子が観察された。更に放置すると、60分後にはフロック状体がはっきりし、120分後以降沈殿凝集体に変化は見られなかった。活性金属塩凝集体は、添加直後に溶液は白濁したが、凝集濃度は比較例1よりも濃く、5分後にはビーカーの底に沈殿物が観察できた。
その後、10分で溶液は透明になり、凝集体はすべてビーカーの底に沈殿した。40分経過すると、その後沈殿凝集体の沈殿層の高さの変化はなくなった。この結果よりも、実施例1の凝集体の方が、比較例1の凝集体よりも、グロブリンの凝集活性が高いことがわかる。
【0033】
実施例2
グロブリン水溶液に代え、アルブミン水溶液(濃度50μM)を用いて、実施例1と同様に試験を行った。また、電解処理を行っていないPACについても同様に試験を行い、これを比較例2とした。結果を図2に示す。図2において、C1~C7は比較例2についての結果を、D1~D7は実施例2についての結果を、それぞれ0分、5分、10分、30分、60分、90分及び120分静置した後の結果を示す。
【0034】
比較例2においては、ビーカー内のアルブミン水溶液にPSI試料を添加し、撹拌すると、すぐに白濁を生じたが、放置すると直ちに沈殿凝集し、溶液は透明になった(C1)。その後ビーカーの底の凝集体に変化は見られなかったが、30分経過後、水面に凝集体が浮遊してきた。浮遊凝集体は90分まで増え続け、120分以降おさまった。
一方、実施例2においては、撹拌後すぐに凝集体が見られたが、凝集完了(沈殿物の増加がなくなった時)は遅く、30分程度かかった。しかし、凝集濃度は高く、フロックの浮遊は見られなかった。
実施例1及び2、比較例1及び2をまとめて表1に示す。
【0035】
【表1】
JP0005498477B2_000002t.gif
【0036】
実施例3
電解処理と光吸収スペクトルとの関係を調べた。
実施例1と同様に、ポリ塩化アルミニウムを電解処理し、電解処理開始前、電解処理開始5分後、電解処理開始10分後、その後は10分間隔に90分まで試料をサンプリングし、光吸収スペクトルを自記分光光度計(株式会社日立製作所製:U-3500)にて測定した。結果を図3に示す。
図3から明らかなように、電解処理を行うと、紫外可視光領域の全域にわたって、吸光度が一様に増加するが、電解処理時間と共に5.2~5.4eV及び4.0~4.2eV付近に光吸収帯が現れた。
【0037】
これら各々の時間で処理したPACの光吸収スペクトルから、初期光吸収スペクトルを減算し、電解処理により変化した光吸収増加成分を求めたものを図4に示す。この図から、4.8~5.5eV(特に5.3eV)及び3.8~4.2eV(特に4.13eV)付近にエネルギーのピークが生ずることが分かった。これらのピークは電解処理時間に応じて増加するが、一定時間後に飽和し、それ以上の処理で減少に転じる傾向を持つ。
【0038】
実施例4
実施例1と同じ電解装置に、ポリシリカ鉄系凝集剤(PSI:〔(SiO)・(Fe1~3)(n=50~200)(南海化学工業株式会社製)を11mLを入れ、実施例1と同じ装置を用い、30mAの通電を行い、電解処理を行った。電解処理の時間は、360分行い、活性化金属塩凝集剤としての活性化PSIを得た。通電量は、59クーロン/gとなる。
試験管に、純水2.5mL及びグロブリン水溶液(濃度200μM)0.1mLを入れ、よく撹拌した。次いで、上述のようにして得られた活性化PSIを1mL加え、よく撹拌した。また、電解処理していないものを比較実験として行った。活性化PSIを加えて撹拌し、直ちに試験管を肉眼で観察し、その後、5分、10分、30分、60分、90分、120分、180分、240分及び360分間静置した後、試験管内に生成される沈殿を肉眼で観察した。
【0039】
結果を図5に示す。図5においては、それぞれの写真の下に静置した時間を記載し、それぞれの写真の左側の試験管は、電解処理していないPSIを用いた実験、写真の右側の試験管は、360分間電解処理を行ったPSIを用いた実験の結果を示す。図5から明らかなように、電解処理を行っていないものは、静置時間に関係なくほとんど凝集を示さなかった。一方、360分間の電解処理を行ったものは、静置時間によらず、添加直後に全面に亘って凝集体が生じ、時間経過とともに沈殿した。
【0040】
実施例5
電解処理と光吸収スペクトルとの関係を調べた。
実施例と同様に、PSIを電解処理し、電解処理開始前、電解処理開始5、10、20、30、45、60、90、120、150、180、210、240、380及び440分後に試料をサンプリングし、光吸収スペクトルを自記分光光度計(株式会社日立製作所製:U-3500)にて測定した。なお、光吸収度が高いため、測定は試料を数千倍に希釈して行った。結果を図6に示す。
PSIは元々5.9~6.1eV付近と、4.1~4.5eV付近に光吸収帯を持つが、これらが電解処理時間(通電量)に応じて変動する。すなわち、一定時間まではピーク強度が増減し、120分を過ぎると減少する傾向にある。
【0041】
実施例6
凝集剤として、実施例1で用いたポリ塩化アルミニウム10mLを用いた場合の電解処理時間と凝集効果との関係を調べた。電解装置については実施例1と同様のものを用いた。
電解処理条件は以下の通りである。
印加電圧 8V以下
電流値 30mA(定電流制御)
水温 25℃
処理時間 30分、60分、90分及び180分
【0042】
予め試験管に純水2.5mLとグロブリン溶液(濃度200μM)を0.1mL加えておき,上述のようにして得られた活性化金属塩凝集剤としての活性化PACを1mLずつ加え,十分に攪拌した.試験管内に生成される沈殿を、撹拌直後、1、2、3、4、5及び20時間静置した後に肉眼で観察した。結果を図7に示す。図7において、写真の右側に電解処理時間を示し、写真においては、左から撹拌直後、1、2、3、4、5及び20時間静置後の結果を示す。図7から明らかなように、60分間電解処理したものは、2時間静置後に沈殿が多量に生成されていたが、30分間処理したもの、90分間処理したもの、180分間処理したものは、2時間静置後にも沈殿の生成はあったが、60分間処理したものよりも沈殿の生成は遅かった。
【0043】
実施例7
凝集剤として、実施例4で用いたのと同じポリシリカ鉄系凝集剤(PSI)を10mL用いた場合の電解処理時間と凝集効果との関係を調べた。電解装置については実施例1と同様のものを用いた。
電解処理条件は以下の通りである。
印加電圧 5V以下
電流値 30mA(定電流制御)
水温 25℃
処理時間 30分、60分、120分及び440分
【0044】
予め試験管に純水2.5mLとグロブリン溶液(濃度200μM)を0.1mL加えておき,上述のようにして得られた活性化金属塩凝集剤としての活性化PSIを1mLずつ加え,十分に攪拌した.なお、比較として電解処理を行っていないものと同様に試験を行った。試験管内に生成される沈殿を、撹拌直後、1、2、3、4、5及び20時間静置した後に肉眼で観察した。結果を図8に示す。図8において、写真の右側に電解処理時間を示し、写真においては、左から撹拌直後、1、2、3、4、5及び20時間静置後の結果を示す。図8から明らかなように、電解処理時間にかかわらず、凝集剤混合直後に沈殿が生成し、時間経過と共に沈殿が増加することがわかった。
【0045】
実施例8
ポリ塩化アルミニウム(南海化学株式会社製,10~11%)11mLを、実施例1と同様の装置を用いて60mAで電解処理し、活性化金属塩凝集剤としての活性化PACを得た。処理時間は、15,30,90,180分とした。それぞれの通電量は、5、10、29及び59クーロン/gである。次いで、得られた活性化PAC1.0mLを、7.7μM濃度のグロブリン水溶液2.6mLを試験管中で混合した。20分間静置した後、2,500rpmで遠心分離し、上清を捨て、沈殿を得た。得られた沈殿を110℃の温度で乾燥し、電子天秤により乾燥重量を測定した。電解処理していないPACも同様に試験を行った(この場合の通電量は0である)。通電量が0の場合の重量を1とし、それぞれの電解処理により得られた活性化PACを用いた場合の沈殿の乾燥重量との比を求め、グラフを作成した。このグラフを図9に示す。図9において、横軸は通電量であり、縦軸は乾燥重量比である。図9から明らかなように、電解処理を施すことにより、沈殿の乾燥重量は電解処理前に比べ7倍以上に上昇することがわかった。また、通電量は60クーロン/g以上としても効果に差がないことがわかった。
【0046】
実施例9
ポリシリカ鉄系凝集剤(南海化学工業株式会社製,PSI—025)を10/3倍に希釈し、その6.0mLを用い、グロブリン溶液として4.3μMのものを4.6mL用いた以外は、実施例8と同様に電解処理を行い、試験を行った。結果を図10に示す。図10から明らかなように、PSIを用いた場合、電解処理を実施しない場合に比べ、電解処理を行うことにより、乾燥重量は10倍以上に上昇した。また、沈殿の乾燥重量比は通電量が50クーロン/gの時に最大値を得ることができ、それ以上の通電を行っても効果は上昇しなかった。
【0047】
実施例10
実施例8で用いたポリ塩化アルミニウム 6.0mLを、実施例8と同様の装置を用いて60mAで電解処理し、活性化金属塩凝集剤としての活性化PACを得た(直流電解処理)。また、同様の装置を用い、正弦波(交流、20、60及び600Hz)による交流電解処理(時間:90分、通電量:54クーロン/g)を実施した。得られた活性化PAC1.0mLをとり、実施例8と同様に試験を行った。電解処理をしていない場合の乾燥重量を1とした場合の乾燥重量を測定したところ、直流電解処理の場合は、約5.5であったのに対し、交流電解処理の場合は、いずれも約1であった。すなわち、商用周波数である60Hzの交流で電解処理してもPACの凝集性能は向上せず、これは20Hz~600Hzの範囲でも変わらなかった。
【0048】
実施例11
実施例9で用いたPSI 6.0mLを実施例9と同様の装置を用いて60mAで電解処理し、活性化金属塩凝集剤としての活性化PSIを得た(直流電解処理)。また、同様の装置を用い、正弦波(交流、20、60及び600Hz)による交流電解処理(時間:90分、通電量:54クーロン/g)を実施した。得られた活性化PSI 1.0mLをとり、実施例9と同様に試験を行った。電化処理をしていない場合の乾燥重量を1とした場合の乾燥重量を測定したところ、直流電解処理の場合は、約9.5であったのに対し、交流電解処理の場合は、いずれも約1であった。すなわち、商用周波数である60Hzの交流で電解処理してもPSIの凝集性能は向上せず、これは20Hz~600Hzの範囲でも変わらなかった。
【0049】
実施例12
直流電解処理を行った場合、凝集剤の凝集性能が向上することがわかったので、この効果はいずれか一方の電極反応によって生じると推定できる。そこで、電解槽をフィルタで隔離した実験を行った。
【0050】
実施例1と同様の電解装置を用い、陽極と陰極との間に、浸透膜を配置し、陽極と陰極とを隔離した。これにより、電気的には陽極側のPAC(PSI)と陰極側のPAC(PSI)とは導通状態になっているが、陽極側のPAC(PSI)と陰極側のPAC(PSI)とは混合し難い条件になっている。100mAで10分間及び30分間電解処理し、陽極側及び陰極側のPACをサンプリングし、実施例8と同様に乾燥して乾燥重量を測定し、電解処理をしていない場合のものと比較した。結果を下記表2に示す。
PACを用いた場合の結果を以下の表2に、PSIを用いた場合の結果を表3に示す。
【0051】
【表2】
JP0005498477B2_000003t.gif
【0053】
表2から明らかなように、陽極側の凝集剤は凝集性能の向上を示したが、陰極側の凝集剤は、その凝集性能が全く向上しなかった。
次いで、PSIについても同様に試験を行った。電解処理の条件は浸透膜を配置したこと以外は実施例9と同様に、30分及び60分の電解処理時間で実施した。結果を以下の表3に示す。
【0054】
【表3】
JP0005498477B2_000004t.gif
【0055】
表3から明らかなように、陽極側の凝集剤は凝集性能の向上を示したが、陰極側の凝集剤は、その凝集性能が全く向上しなかった。
【0056】
実施例13
実施例8で用いたポリ塩化アルミニウム(南海化学株式会社製、10~11%)11mLを、実施例1と同様の装置を用いて60mAで電解処理し、活性化金属塩凝集剤としての活性化PACを得た。処理時間は、5、15、30、60、180分とした。それぞれの通電量は、2、5、10、20及び59クーロン/gである。次いで、得られた活性化1.0mLを、7.7μM濃度のグロブリン水溶液2.6mLを試験管中で混合した。20時間静置した後、2,500rpmで遠心分離し、上清について光吸収スペクトルを測定した。結果を図11に示す。また、沈殿を110℃の温度で乾燥し、電子天秤により乾燥重量を測定した。電解処理していないPACも同様に試験を行った(この場合の通電量は0である)。通電量が0の場合の重量を1とし、それぞれの電解処理により得られた活性化PACを用いた場合の沈殿の乾燥重量との比を求め、3.9eVにおける吸光度との対比を示すグラフを作成した。このグラフを図12に示す。
【0057】
11において、横軸はエネルギー(eV)を示し、縦軸は吸光度である。測定した装置の測定限界が吸光度3.5であるので、吸光度が3.5以上である測定データは信頼度がなく、.5が上限として表されている。
また、図12から明らかなように、本実施例においては、4.9eV及び3.9eVに光吸収帯が出現し、その吸光度は通電量の増加に従って増加することがわかった。図12において、横軸は3.9eVにおける吸光度を示し、縦軸は乾燥重量比である。図12から明らかなように、3.9eVにおける吸光度が増加すると、乾燥重量比が増加し、従って、凝集効率が向上していることがわかる。
【0058】
実施例14
食肉センター総合排水スクリーン池出水(山口県宇部市、pH約6.9)について、本発明の活性金属塩凝集剤を用いて水質の浄化を実施した。
実施例1と同様の電解装置を用いてポリ塩化アルミニウム(実施例8で用いたものと同じもの)を、下記の電解処理条件で電解処理し、活性化PACを得た。
印加電圧 7V
電流値 60mA(定電流制御)
水温 20℃
処理時間 60分
【0059】
予め試験管に食肉センター総合排水スクリーン池出水2.6mLに濃度調整のための純水85μLを加えておき,上述のようにして得られた活性化金属塩凝集剤としての活性化PACを15μL加え,十分に攪拌した.
試験管内に生成される沈殿を、撹拌直後、30分、1.5時間、3時間及び9時間静置した後に肉眼で観察した。
また、ポリシリカ鉄系凝集剤(南海化学工業株式会社製,PSI—025)を10/3倍に希釈したものを下記の電解処理条件で電解処理し、活性化PSIを得た。
【0060】
印加電圧 4V
電流値 100mA(定電流制御)
水温 20℃
処理時間 30分
予め試験管に食肉センター総合排水スクリーン池出水2.6mLに濃度調整のための純水70μLを加えておき,上述のようにして得られた活性化金属塩凝集剤としての活性化PSIを30μL加え,十分に攪拌した.試験管内に生成される沈殿を、撹拌直後、30分、1.5時間、3時間及び9時間静置した後に肉眼で観察した。
【0061】
結果を図13に示す。
図13において、左側はPACを用いた系であり、PACの列は、比較としての電解処理していないPACを用いた実験、e-PACの列は電解処理したPACを用いた実験であり、右側はPSIを用いた系であり、PSIの列は比較としての電解処理していないPSIを用いた実験、e-PSIの列は電解処理したPSIを用いた実験である。図13から明らかなように、電解処理したPAC又はPSIを用いた時は、電解処理していないものに比べ、沈殿量が多かった。
【0062】
実施例15
実施例14の実験において9時間静置した試験管の肉眼による観察終了後、遠心分離により上澄み液を回収し、光透過スペクトルを測定した。結果を図14に示す。図14から明らかなように、PAC及びPSIいずれも、電解処理したものの方が上澄み液の透過度は高かった。これは、排水に含まれる物質が、電解処理した凝集剤によって効果的に除去されていることを示す。
【0063】
実施例16
公共下水最初沈殿池出水(山口県宇部市、pH約6.5~7.1)について、実施例14で得られた活性化PAC及び活性化PSIを用いて実施例3と同様に処理し、9時間静置した後、その上澄み液の光透過スペクトルを測定した。結果を図15に示す。図15にから明らかなように、PAC及びPSIいずれも、電解処理したものの方が上澄み液の透過度は高かった。これは、排水に含まれる物質が、電解処理した凝集剤によって効果的に除去されていることを示す。
図面
【図3】
0
【図4】
1
【図6】
2
【図9】
3
【図10】
4
【図11】
5
【図12】
6
【図14】
7
【図15】
8
【図1】
9
【図2】
10
【図5】
11
【図7】
12
【図8】
13
【図13】
14