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明細書 :建築物の耐震補強構造

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 公開特許公報(A)
公開番号 特開2015-212491 (P2015-212491A)
公開日 平成27年11月26日(2015.11.26)
発明の名称または考案の名称 建築物の耐震補強構造
国際特許分類 E04G  23/02        (2006.01)
FI E04G 23/02 E
請求項の数または発明の数 5
出願形態 OL
全頁数 11
出願番号 特願2014-095620 (P2014-095620)
出願日 平成26年5月7日(2014.5.7)
発明者または考案者 【氏名】市之瀬 敏勝
【氏名】高橋 之
【氏名】堀田 和敬
出願人 【識別番号】304021277
【氏名又は名称】国立大学法人 名古屋工業大学
審査請求 未請求
テーマコード 2E176
Fターム 2E176AA02
2E176BB28
要約 【課題】多層の鉄筋コンクリート構造等建築物の耐震性をあげるため、従来柱と梁で区画される開口部に、縦筋および横筋とコンクリートからなる補強壁をアンカーで柱と梁に固定している。しかし、強い地震の際、補強壁の下層のコーナ部では、大きな揺れにより補強壁がアンカーから外れる等により座屈し破壊する。
【解決手段】梁を介して、上下の補強壁を固定する補強材を取り付ける。補強材はスタッドにより補強壁に固定する。補強材は補強壁を複数のスパンにわけ取り付け、補強材の引張強度およびスタッドの前段強度は、各スパン内の縦筋の引張強度より大きくする。
【選択図】 図2
特許請求の範囲 【請求項1】
梁および柱により区画された開口部に、
複数の縦筋および横筋を配しコンクリートを打設した補強壁を有し、
前記補強壁は、前記梁および柱につけたアンカーにより固定された、
複数層の建築物おいて、
梁を介して、
上部を前記補強壁に、
下部を前記梁または前記補強壁に、
複数のスタッドにより固定する補強材を、
有する建築物の補強構造。
【請求項2】
前記補強材の引張強度は、
前記補強壁の縦筋の引張強度の総和より、
大きいことを特徴とする請求項1記載の建築物の補強構造。
【請求項3】
前記補強材の上側または下側の前記補強壁に固定するスタッドの剪断強度の総和は、
前記補強壁の縦筋の引張強度の総和より、
大きいことを特徴とする請求項1または2に記載の建築物の補強構造。
【請求項4】
前記補強壁を前記柱に平行に複数のスパンに区切り、
スパン毎に、
前記補強板を有することを特徴とする請求項1乃至請求項3の何れか1項に記載の建築物の補強構造。
【請求項5】
前記補強材は、
上側または下側のスタッドを取り付けた二つの固定部と、
前記固定部を連結する連結部からなることを特徴とする請求項1乃至請求項4の何れか1項に記載の建築物の補強構造。


















発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、鉄筋コンクリート構造あるいは鉄骨鉄筋コンクリート構造の建物(以下、建築物)を対象とした、鋼材を用いた耐震補強構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
建築基準法の改正に伴って、建築基準法の要件(以下、要件)を満足しなくなってしまった既存の不適格建築物は、要件を満足するために耐震補強が行われている。
【0003】
耐震補強は、例えば特許文献1の図1に示すように、柱と梁に区画された開口部に耐震性を増す補強壁を増設(以下、補強壁)する構造が一般的に用いられている。
【0004】
補強壁は、開口部に面した柱および梁に複数のアンカーを埋め込み、開口部に複数の縦筋および横筋を設置しコンクリートを流し込む(以下、打設)方法が採用されている。
【0005】
このように、補強壁を増設する従来の耐震補強では、既存の柱および梁と増設する耐震壁とを接続するためにアンカーが使用されているが、この方法は、非特許文献1のような不都合がある。
【0006】
非特許文献1で報告されている補強壁を施工した建築物の被害は、施工した最下部において柱が座屈破壊するものである。これは補強壁の施工の際に使用されたアンカーが、地震の振動により建築物全体が揺れることにより、補強壁から引き抜けたことが原因であり、耐震補強が耐震性能に悪影響を与えた例である。
【先行技術文献】
【0007】

【特許文献1】特開2013-221331号公報
【0008】

【非特許文献1】鈴木一希, Hamood, 前田匡樹, 市之瀬敏勝:東北地方太平洋沖地震で大破したSRC造建物の被害と分析,コンクリート工学年次論文集,Vol.35,No.2, pp.1105-1110
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の課題は非特許文献1で報告された被害を防止するための耐震補強構造を提案することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、以下のような耐震補強部材を取り付ける耐震補強構造により、上記課題を解決できることを見出した。
【0011】
請求項1に記載の発明は、梁および柱により区画された開口部に、複数の縦筋および横筋を配しコンクリートを打設した補強壁を有し、前記補強壁は、前記梁および柱につけたアンカーにより固定された、複数層の建築物おいて、梁を介して、上部を前記補強壁に、
下部を前記梁または前記補強壁に、複数のスタッドにより固定する補強材を、有する建築物の補強構造である。
この補強構造により、補強壁が建築物の強度部材である柱と梁に強度的に一体化され、地震の振動による建築物全体の揺れによってアンカーが補強壁から引き抜けることがなくなる。
【0012】
請求項2に記載の発明は、前記補強材の引張強度は、前記補強壁の縦筋の引張強度の総和より、大きいことを特徴とする請求項1記載の建築物の補強構造である。
請求項3に記載の発明は、前記補強材の上側または下側の前記補強壁に固定するスタッドの剪断強度の総和は、前記補強壁の縦筋の引張強度の総和より、大きいことを特徴とする請求項1または2に記載の建築物の補強構造である。
請求項4に記載の発明は、前記補強壁を前記柱に平行に複数のスパンに区切り、スパン毎に、前記補強板を有することを特徴とする請求項1乃至請求項3の何れか1項に記載の建築物の補強構造である。
請求項5に記載の発明は、前記補強材は、上側または下側のスタッドを取り付けた二つの固定部と、前記固定部を連結する連結部からなることを特徴とする請求項1乃至請求項4の何れか1項に記載の建築物の補強構造である。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の耐震補強を行った建築物の全体立面図の例である。
【図2】図1において、5階床部分の拡大図である。
【図3】図1において、3階床部分の拡大図である。
【図4】本発明の補強材の実施形態1である。
【図5】本発明の補強材の実施形態1による建築物の施工例である。
【図6】本発明の補強材の実施形態2である。
【図7】本発明の補強材の実施形態2による建築物の施工例である。補強壁にスタッド用のナットをインサート施工し、スタッド用のボルトで固定。
【図8】本発明の補強材の実施形態2による建築物の施工例である。スタッドを施工後、コンクリートで固定する。
【図9】本発明の補強材の実施形態1による建築物の施工例において、補強壁を複数のスパンに区切りスパン毎に補強材を用いた場合の、補強壁と補強材の断面図である。補強材に板厚9mmの鋼板を使用。
【図10】本発明の補強材の実施形態1による建築物の施工例において、補強壁を複数のスパンに区切りスパン毎に補強材を用いた場合の、補強壁と補強材の断面図である。補強材に板厚12mmの鋼板を使用。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面を参照しつつ本発明の実施の形態について説明する。本発明は、以下の実施形態に限定されるものではなく、発明の範囲を逸脱しない限りにおいて、変更、修正、改良を加え得るものである。

【0015】
図1は本発明の耐震補強を行った後の建築物の立面図である。まず、既存建築物100がある。これは1階、2階の幅が広く、3階から9階までは幅が狭い構造である。
ここで、従来の補強方法は、3階から9階までの柱101と梁102より区画された各階の空間である開口部に、補強構造体である補強壁200が追加して施工されている。これは、地震時の振動により、建築物は高層ほど揺れが大きくなるからである。よって、2階部分の揺れは小さくなり、9階の高層部分の揺れにいる応力は、2階部分との接合部分が大きくなる。
本発明の補強材300は、各階毎に、建築部の梁102を介して上下階の追加した補強壁200にまたがって取り付けられている点が特徴である。この補強構造により、補強壁が建築物の強度部材である柱と梁に強度的に一体化され、地震の振動による建築物全体の揺れによってアンカーが補強壁から引き抜けることがなくなる。

【0016】
図2は図1の建築物の4階と5階の構造を示す断面矢視図である。柱101と梁102により区画された空間に、補強壁200が追加施工されている。本発明の補強材300は、5階の床部の梁102を介して、上部を5階の補強壁200に、下部を4階の補強壁200に固定されている。

【0017】
図3は図1の建築物の2階と3階の構造を示す断面矢視図である。柱101と梁102により区画された空間に、補強壁200が追加施工されている。本発明の補強材300は、3階の床部の梁102を介して、上部を3階の補強壁200に、下部を3階の床部の梁102に固定されている。

【0018】
本発明の補強材300の実施形態1を図4に示す。幅160mm、上部の補強壁200に当たる部分の長さ460mmの鋼板に、10個のスタッド302をつけている。補強材300の全長は、梁部102分に当たる長さと下部の補強壁200に当たる長さ(460mm)を加えたものである。
これは建築物の外壁の施工に用いることが多い。補強壁200の表面と梁102の表面に段差がないからである。

【0019】
図5に本発明の補強材300の実施形態1による建築物の施工例を断面図で示す。梁102の上部および下部に補強壁200が追加施工されている。具体的には、補強壁200は、梁102の上下の補強壁200に当たる部位に、穴をあけアンカー204を複数本取り付ける。次に、縦筋201と横筋202を格子条に複数本配し、補強材300の両側または片側に枠材を取り付け、アンカー204、縦筋201、横筋202を施工し、枠材で囲った空間(柱101と梁102で区画された空間である開口部)へコンクリート203を打設して施工される。
縦筋201および横筋202は補強壁200の強度に寄与する。また、アンカー204は、補強壁200の建築物100への取り付け強度に寄与する。アンカー204は直径13mm~16mmの鋼材を使用し、長さは110 mm程度とし、埋め込み長さを直径の8倍以上確保し、接着材を用いて施工する。
本発明の補強材300は、梁102を介して上部と下部を補強壁200にスタッド302により固定される。スタッド302は、補強壁200にほぼ垂直にスタッド用ナットを打ち込み、そこへスタッド302としてボルトで締結することにより固定する。また、枠材とともに補強材300を取り付けておき、コンクリート203を打設して固定してもよい。

【0020】
図6に本発明の補強材の実施形態2を示す。実施形態2は、補強材300を2個の固定部301と1個の連結部303より構成される。これは、主に建築物の内側の補強壁200に本発明を適用する場合が多い。
図6は、上部の補強壁200に施工した場合の矢視図である。具体的には、固定部301は、スタッド302を取り付けた鋼材に対して垂直且つ格子条に鋼材を取り付け構成する。連結部303は円筒状の鋼材であり、上下の固定部301にナットで固定される。このような固定部301の構成により、固定部301の強度(剛性)が増し、スタッド302の取り付け面と、連結部303の取り付け位置をオフセットすることができる。連結部303は、床であるスラブ103に穴を開けて施工する。

【0021】
図7に本発明の補強材300の実施形態2による建築物の施工例を示す。補強壁200にスタッド用ナットをインサート施工し、スタッド302としてボルトで固定する。ここで、固定部301のスタッド302の取付け部と連結部303とはオフセットして施工ができるので、スタッド302を取り付ける補強壁200と連結部303を取り付ける梁102の面に段差があっても吸収して取り付けができるので施工性が格段に良くなる。

【0022】
図8は本発明の補強材300の実施形態2による建築物の施工例である。スタッド302を補強壁200の枠材とともに施工後、コンクリート203を打設し固定する。主に、新規に補強壁200を増設する場合に用いる。

【0023】
<強度設計>
本発明の補強材300の連結部303の引張強度およびスタッド302の剪断強度について説明する。

【0024】
本発明の補強材300の実施形態1による建築物の施工例において、補強壁200を複数のスパン205に区切りスパン毎に補強材300を用いた場合の構造を、図9に補強壁200と補強材300の梁102に平行な断面図である。補強材に板厚9mmの鋼板を使用している。

【0025】
基礎とするのは補強壁200に施工した縦筋201の強度である。図9に示した500mmのスパン205には、7本の縦筋201(標準外径による区分 D13、縦筋1本の断面積 127 mm2)があるとする。
各スパン205の補強壁の強度は、スパン205にある7本の縦筋201の引張強度は数1となる。

【0026】
【数1】
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【0027】
本発明の補強材300の連結部303の引張強度は、数1の値より大きくする。即ち、補強壁のスパン205の引張強度より大きくする(以下、強度設計の条件)。

【0028】
SS400(400N/mm2)の場合、断面 幅130 mm 厚さ 9 mmとすれば、数2の引張強度が得られ、各スパン205の補強壁の強度

【0029】
【数2】
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【0030】
図10に、補強材300として、板厚12mmのSS330(330N/mm2)を用いた場合を示す。断面 幅130 mm 厚さ 12 mmとすれば、数3の引張強度が得られ、強度設計の条件(数1)を満たす。

【0031】
【数3】
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【0032】
次に、片側の固定部301のスタッド302(10本)の総前段断強度の強度設計について説明する。

【0033】
総剪断強度は、各スパン205の補強壁の強度である数1より大きくする。

【0034】
スタッド302は、材質SS400、直軽13mmのものを使用して設計する。
既存鉄筋コンクリート造建物の耐震改修設計指針より、スタッド1本当たりの剪断強度は数4のようになる。

【0035】
【数4】
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【0036】
一方、 スタッド302を支えるコンクリート203の強度(支圧)は数5となる。

【0037】
【数5】
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【0038】
よって、数5の値は、数6の値より大きいので、コンクリート203はスタッド302を十分支えることができる。スタッド302の剪断強度は数6となる。

【0039】
【数6】
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【0040】
次に、10本のスタッド302の総剪断強度は、数7となり各スパン205の補強壁の強度条件(数1)を満たす。

【0041】
【数7】
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【0042】
ここれ、本発明の実施形態2の連結部303は、断面積が実施形態1の鋼板と同程度となるものを使用する。実施形態2においてはφ36の丸棒を使用した。
【産業上の利用可能性】
【0043】
本発明は、耐震補強に使用することができる。
【符号の説明】
【0044】
100 建築物
101 柱
102 梁
103 スラブ
200 補強壁
201 縦筋
202 横筋
203 コンクリート(補強壁)
204 アンカー
205 補強壁のスパン(補強材を入れる単位)
300 補強材
301 固定部
302 スタッド
303 連結部


































図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
5
【図7】
6
【図8】
7
【図9】
8
【図10】
9