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明細書 :グラフェンシートとの一体化ZnOナノロッド、およびグラフェンシート上へのZnOナノロッドの製造方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 公開特許公報(A)
公開番号 特開2015-212213 (P2015-212213A)
公開日 平成27年11月26日(2015.11.26)
発明の名称または考案の名称 グラフェンシートとの一体化ZnOナノロッド、およびグラフェンシート上へのZnOナノロッドの製造方法
国際特許分類 C01G   9/02        (2006.01)
C01B  31/02        (2006.01)
FI C01G 9/02 B
C01B 31/02 101Z
請求項の数または発明の数 5
出願形態 OL
全頁数 10
出願番号 特願2014-096012 (P2014-096012)
出願日 平成26年5月7日(2014.5.7)
発明者または考案者 【氏名】市川 洋
【氏名】廣芝 伸哉
【氏名】奥村 竜二
出願人 【識別番号】304021277
【氏名又は名称】国立大学法人 名古屋工業大学
審査請求 未請求
テーマコード 4G047
4G146
Fターム 4G047AA02
4G047AB02
4G047AB04
4G047AC03
4G047AD04
4G146AA01
4G146AB07
4G146AD17
4G146AD28
4G146BA11
4G146BA48
4G146BC01
4G146BC09
4G146BC23
4G146BC25
4G146BC26
4G146BC34B
4G146BC37B
4G146BC42
4G146BC43
4G146CB01
4G146CB19
4G146CB29
4G146CB32
4G146CB39
4G146DA03
4G146DA22
4G146DA34
4G146DA37
4G146DA40
4G146DA46
要約 【課題】グラフェンシート上に一方向に配向したZnOナノロッドを簡易な方法で合成する。本方法で得られたグラフェンシートとの一体化した酸化亜鉛ナノロッドをデバイス化する。
【解決手段】長手方向端面でグラフェンシートと一体化した配向した複数の酸化亜鉛ナノロッドであり、グラフェンシート上に水熱合成により複数の酸化亜鉛ナノロッドを形成する。そして、酸化亜鉛ナノロッドの表面に別途用意したグラフェンシートを固着させて、酸化亜鉛ナノロッドの長手方向の両端面にグラフェンシートを一体化する。
【選択図】図1
特許請求の範囲 【請求項1】
グラフェンシートと長手方向端面で一体化した複数の配向した酸化亜鉛ナノロッド。
【請求項2】
前記グラフェンシートのシート面に対して90°±15°に配向した請求項1の酸化亜鉛ナノロッド。
【請求項3】
請求項1または2に記載の酸化亜鉛ナノロッドを用いた振動子またはセンサー。
【請求項4】
グラフェンシート上に水熱合成により複数の配向した酸化亜鉛ナノロッドを形成する酸化亜鉛ナノロッドの製造方法。
【請求項5】
請求項4に記載の酸化亜鉛ナノロッドの表面に別途用意したグラフェンシートを固着させて、酸化亜鉛ナノロッドの長手方向の両端面にグラフェンシートが一体化された酸化亜鉛ナノロッドの製造方法。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明はZnO微粒子を用いた振動子あるいはセンサー等に関わる。
【背景技術】
【0002】
ZnO(酸化亜鉛)は紫外線発光デバイス、圧電センサー、化学センサー、光触媒、さらには色素増感太陽電池等の電極として幅広い用途が検討されている。これらの用途には一般的に化学的気相成長(CVD)法あるいは物理的気相成長(PVD)法により、薄膜化あるいは微粒子化が実現されている。一方、気相法の他に、液相法として、電解析出法、ゾルーゲル法等が検討されている。ゾルーゲル法の場合、コーティング液を基板に塗布した後、400℃以上の温度で焼成しなければ酸化亜鉛膜を形成することが出来ない。また、1マイクロメートル以上の膜厚を有する膜を調製するには、基板への塗布と焼成とを繰り返し行わなければならないという問題点がある。
【0003】
液相法の他の方法として、pH8以上で安定なテトラヒドロキシ亜鉛酸イオンを含有する水溶液を酸化亜鉛粒子又は酸化亜鉛膜製造のための前駆体として用い、この水溶液中で100℃未満の温度での加熱処理により一次粒子径が1μm以上の酸化亜鉛粒子又は酸化亜鉛膜を製造する方法が開示されている(特許文献1参照)。この方法によれば、例えば、容器に入れた蒸留水に硝酸亜鉛6水和物を室温で溶解して0.1mol/lの濃度の亜鉛塩水溶液50mlを調製し、室温で攪拌しながら1.5mol/lのアンモニア水50mlを加え、最終的に得られた透明なテトラヒドロキシ亜鉛酸イオンを含有する水溶液にガラス基板を設置し、容器を密封して95℃の恒温槽中に2時間静置した後、ガラス基板を取り出し、蒸留水ですすぎ、乾燥することで酸化亜鉛膜が付着したガラス基板が得られるとのことである。そして、得られた酸化亜鉛膜の膜厚は0.1mmであり、長さが5μmから10μmの酸化亜鉛ウイスカーが凝集した構造が観察されている。
【0004】
上記液相法は簡便な酸化亜鉛微粒子の製造方法であるが、紫外線発光デバイス、圧電センサー、あるいは化学センサー等に利用する場合、各種デバイスの特性を向上させるためには、酸化亜鉛微粒子がランダムに配向しているよりも一方向に配向していることが好ましい。そして、デバイスにするには配向した複数微粒子の端面を連続化して電極を形成することが必要である。
【0005】
ところで、ナノ構造材料として、グラフェンが注目を集めている。グラフェンとは、炭素原子同士がsp結合でつながった1原子のシートで、蜂の巣のような六角形格子構造をとっている。グラフェンの特徴としては、室温で銀(Ag)並みの高い電気伝導性、熱伝導性、軽量、高強度、高柔軟性、可視光に対する透明性などの特徴から、様々な機能性材料、デバイス創成を目論んだ関連の研究開発が精力的に行われている。そこで、グラフェンシート上に酸化亜鉛微粒子を配向して形成、あるいは当該配向した酸化亜鉛微粒子群の端面にグラフェンからなる電極を形成してデバイスを作製することが考えられる。
【0006】
グラフェンシートの作製は、レーザーアブレーション法、スパッタ法などの物理的気相成長法(PVD)、あるいは化学的気相成長(CVD)法で作製が試みられており、量産に適した方法を選択する必要がある。
【0007】
前記のように、ZnOナノロッドの合成には、CVD法、PVD法、液相成長法があるが、CVD法、PVD法では、基板を600℃以上の高温に加熱する必要があり、また酸素ガスを必要とするので、基板としてのグラフェンの酸化、気化、劣化が生じるので、グラフェンシート上へのZnOナノロッド合成の例は無い。一方、液相成長法では、基板上にZnOナノロッドを配向成長させるためには、基板上に、ナノロッドの核になるZnO薄膜を、まず堆積させる必要があり、直接成長は無理であった(非特許文献1、2)。また、基板にZnO薄膜を設けずに水熱合成処理を施しても、配向したZnOナノロッドは得られてはいない(非特許文献3)。
【先行技術文献】
【0008】

【特許文献1】特開2004-149367号公報
【0009】

【非特許文献1】U.Alver,W.Zhou,A.B.Belay,R.Krueger,K.O.Davis,N.S.Hickman:Appl. Surf. Sci.258(2012)3109-3114
【非特許文献2】L.L.Wang,B.Z.Lin,M.P.Hung,L.Zhou,G.N.Panin,T.W.Kang,D.J.Fu:Solid-State Electronics 82(2013)99-102
【非特許文献3】J.Liu,R.Lu,G.Xu,P.Thapa,D.Moore:Adv.Funct.Mater.23(2013)4941-4948
【非特許文献4】J.Liu,R.Lu,G.Xu,P.Thapa,D.Moore:Adv.Funct.Mater.23(2013)4941-4948
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明の課題は、グラフェンシート上に一方向に配向したZnOナノロッドを簡易な方法で合成することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは、まず、基板上にグラフェン膜を作製し、当該グラフェン膜の形状を維持しつつその上に一方向に配向したZnOナノロッドを形成することを創案した。
【0012】
[1]グラフェンシートと長手方向端面で一体化した複数の配向した酸化亜鉛ナノロッド。
【0013】
[2]前記グラフェンシートのシート面に対して90°±15°に配向した前記[1]に記載の酸化亜鉛ナノロッド。
【0014】
[3]前記[1]または[2]に記載の酸化亜鉛ナノロッドを用いた振動子またはセンサー。
【0015】
[4]グラフェンシート上に水熱合成により複数の配向した酸化亜鉛ナノロッドを形成する酸化亜鉛ナノロッドの製造方法。
【0016】
[5]前記[4]に記載の酸化亜鉛ナノロッドの表面に別途用意したグラフェンシートを固着させて、酸化亜鉛ナノロッドの長手方向の両端面にグラフェンシートが一体化された酸化亜鉛ナノロッドの製造方法。

【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明において基板上にグラフェンシートを形成するCVD装置の概略図である。
【図2】CVDによりCu基板上に形成したグラフェン膜表面を走査型電子顕微鏡で観察した図である。
【図3】グラフェン膜を石英基板に転写した試料の透過率の分光特性を示す図である。
【図4】グラフェンシート上に酸化亜鉛ナノロッドが形成された酸化亜鉛ナノロッドの表面の走査型電子顕微鏡で観察した図である。
【図5】R面サファイア基板上にZnOシード層が形成された領域とシード層が形成されていない領域での酸化亜鉛ナノロッドの形状の違いを示す光学顕微鏡観察を示す図である。
【図6】図6は、図5の領域(a)と(b)の境界部分の電子顕微鏡観察を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図面を参照しつつ本発明の実施の形態について説明する。本発明は、以下の実施形態に限定されるものではなく、発明の範囲を逸脱しない限りにおいて、変更、修正、改良を加え得るものである。

【0019】
本発明のグラフェンシートの合成には、CVD法が好ましく、独立に温度制御ができる
管状炉二つで構成されることが好ましい。合成用キャリアガスとしてのアルゴン(Ar)とグラフェンの成長を促進させる水素(H)ガスを流す。グラフェンの原料として樟脳、ポリスチレン等の固形物、あるいはメタン(CH)などの炭化水素ガスを用いる。グラフェンシート合成用の基板として、銅(Cu)などの触媒性金属、あるいは触媒性金属が塗布された石英板、シリコン(Si)板等が一般的に用いる。グラフェンの原料を加熱して基板上にグラフェンシートを合成する。

【0020】
前記Cu基板上に生成した膜状の物質(グラフェンシート)を、PMMA(ポリメチルメタクリレート樹脂)の熱可塑性樹脂等でグラフェンシートの表面を覆い、その後、当該試料を別途用意した基板に転写する。すなわち、硫酸鉄(FeSO)を溶かした蒸留水に、前記試料を浸し、Cu基板を溶解し、残ったPMMA膜上のグラフェンシートを基板面に合わせ、温度60~80℃に上げて水分を取り除き、その後、温度を150~200℃に上げ、60~90分保持して、グラフェン膜と基板と接着する。次に試料をアセトン等に浸し、PMMAを溶かす。なお、膜の合成を確認しやすい石英あるいはサファイア等の基板を用いることが好ましい。

【0021】
次に、グラフェン膜が転写された基板上に水熱合成法にてZnOナノロッドを合成する。すなわち硝酸亜鉛等の亜鉛塩水溶液と水酸化ナトリウム水溶液等のアルカリ水溶液の混合溶液(pH12~13)に浸漬し、水溶液温度を70~90℃の一定に保ち、所定時間保持すると、グラフェンシート上に配向性のZnOナノロッドが形成される。なお、水酸化ナトリウムの代わりに、水酸化リチウム(LiOH)、水酸化カリウム(KOH)、水酸化セシウム(CsOH)を用いても良い。ZnOロッドの径が50nm~300nm、ロッドの長軸の長さが1μm~20μmに形成する。


【0022】
以上のようにして、基板に転写されたグラフェン膜上にZnOナノロッドが合成され、当該ZnOナノロッドの長手方向の両端面にグラフェンからなる電極を形成してデバイス化するには、ZnOナノロッドの表面にグラフェンシートを60℃~200℃で固着させる。グラフェンシート接合性を上げるためにPMMA等の樹脂材料で成る中間膜を設けてもよい。
【実施例】
【0023】
以下、本発明を実施例により更に具体的に説明するが、本発明はこれら実施例に限定さ
れない。
【実施例】
【0024】
(グラフェンシートの作製)
後のZnOナノロッド成長を考え、また将来的なデバイスへの展開を踏まえて、大面積化が容易なCVD法でグラフェンシートの作製を行った。図1に、CVD装置概略図を示す。本CVD装置は、それぞれ独立に温度制御が可能な管状炉二つで構成されている。管状炉には、外径100mm、内径96mm、長さ1mの石英管が通っており、キャリアガスとしてのアルゴン(Ar)と水素(H)ガスを流した。管状炉1の石英管内部には、石英ボートを置き、その中にグラフェンの原料として、樟脳(純度95%)3mgを置いた。樟脳はC1016Oで表される二環性モノ
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の一種で、IUPAC命名法による系統名は“1,7,7-トリメチルビシクロ[2.2.1]ヘプタン-2-2オンである。管状炉2の石英管内部には、石英ボートの上に基板を置いた。本実施例では、厚み20μmのCuシート(純度99.9%)を基板(15mm×20mm)に用いた。グラフェンシートは、基板の結晶粒の上に成長することが知られているので、まずCu結晶を作り、それからグラフェン原料を供給してCu結晶粒上にグラフェンシートを成長させる。そのために、最初は、図1の管状炉2の温度だけを上げ、Cu基板の結晶化を行ったところ、管状炉2の温度が1000℃のとき、Cu結晶粒の大きさが数10μmと最も大きくなった。しかし、電気炉2が1000℃と高温になるので、隣接する管状炉1内の樟脳の温度も上がり、昇華してグラフェン成長前に無くなる可能性がある。そこで、管状炉1と2の間に、50mm程度の隙間をあけて、石英管外側を送風機で冷やし、管状炉1の温度上昇を抑えた。管状炉2内のCu基板の温度が1000℃に到達後、その温度を保持して保持時間30~60分でCu結晶を充分に成長させ、その後、管状炉1の温度を上げて、樟脳を蒸発させた。樟脳の融点は180℃、沸点は208℃であるが、管状炉1の温度を昇温速度5℃/分で上げ、100~210℃の設定温度にすると、Cu基板上にグラフェンシートと思われる白いくすみのような膜状物質が肉眼で観察された。例えば、管状炉1の温度が110℃に到達後、その温度を5分保持したとき、その膜状物質は、Cu基板上のほぼ全面に観られた。CVDによる成膜終了後のCu基板の表面を走査型電子顕微鏡で観測すると、図2のように、幾何学的な模様の構造が発生しており、明らかに基板のCuが結晶化していることがわかる。このCu基板表面に成長した膜状物質は、グラフェンシートと考えられるが、成長していても数原子層であり、ラマン分光法、X線回折法などの結晶構造解析においては、結晶化したCuから生じるスペクトルに埋もれて、その結晶性の確認は難しい。
【実施例】
【0025】
(グラフェンシートの転写)
グラフェンシートの結晶性、物性を測定するため、また、グラフェンシート上にZnOナノロッドを形成するために、グラフェンシートの無機基板への転写を行った。グラフェンシートの転写は、デバイス化の上でも重要なプロセスであるが、グラフェンシートを機能性ナノ微粒子、あるいは薄膜の基板として考える場合、後続のナノ微粒子、薄膜の製造方法を考慮する必要がある。つまり、グラフェンシートが、ZnOナノロッド合成のために、PVD法、CVD法の気相成長法を用いることで、変質することが予想される。一般に、気相成長法では、基板の加熱、酸化性ガスの導入が欠かせない。このような環境では、グラフェンシートは酸化され二酸化炭素(CO)もしくは一酸化炭素(CO)になり気化する。またスパッタ法などプラズマ用いた気相成長法では、グラフェンシートがプラズマ中のイオンでエッチングされ消失する。本実施例では、前記Cu基板上に生成した膜状の物質を、まずPMMA(ポリメチルメタクリレート樹脂)で保持し、そして透明性の基板に転写することを行った。前記CVDによる膜形成後、ビーカーにアセトン5mlを入れ、PMMA100mgを加えて、ホットプレートで60℃に加熱する。そして、PMMAが充分に溶けた溶剤をCu基板に滴下し、グラフェン表面をコーティングする。滴下溶剤の温度が下がり硬化したら、膜状物質とPMMAの接着性を上げるため試料温度を120℃に上げ3~5分間保持して固める。続いて、硫酸鉄(FeSO)3~5gを溶かした100mlの蒸留水に、試料を浸し、Cu基板を溶解し、残ったPMMA膜上のグラフェンシートと思われる膜状物質の面を別途用意した石英、サファイア等の透明基板面に基板に合わせ、ホットプレートに乗せる。ホットプレートの温度を60~80℃に上げ、試料の水分を蒸発させ取り除く。試料が乾燥したら、ホットプレートの温度を150~180℃に上げ、60~90分保持して、膜状物質と基板との接着性を上げる。次に試料をアセトンに浸し、PMMAを溶かす。PMMAは室温のアセトン中では15~20分で完全に溶ける。試料の色が薄緑色のときは、Cu基板を溶かした時の硫酸鉄が残っていることが考えられるので、そのときには試料を、試料の淡緑色が消えるまで、硝酸(HNO)5mlを溶かした蒸留水50mlに漬ける。そして、充分に乾燥させた試料を分析に適用する。なお、このような酸性の処理において、グラフェンシートと思われる膜状物質に、色変化、剥がれ等の変質は観られなかった。
【実施例】
【0026】
(グラフェンシートの特定)
図3は、前記プロセスで膜状物質を石英基板に転写した試料透過率の分光特性を示している。可視光領域では、70%程度の透過率を示しているが、波長260nm付近の紫外域に吸収が確認された。これはグラフェンシートに特徴的な光学特性に合致していることから、この膜状物質はシート状のグラフェン、すなわちグラフェンシートであることが確認された。ただ本実験で得られたグラフェンシートは、可視光領域での透過率が低く、紫外域での吸収が大きいことから、単層ではなく、数層の多層構造になっていることが予想される。
【実施例】
【0027】
(シード層無しでグラフェンシート上へのZnOナノロッドの直接合成)
本実施例では、量産性に優れること、プロセス温度が水の蒸発温度100℃を超えない低温であることから、液相成長法の一つである水熱合成法による、グラフェンシート上へのZnOナノロッド成長を試みた。配向性のZnOナノロッドを得るためには、一般的に基板上にナノロッド成長の核になるZnO薄膜(シード層)を堆積する必要があるが、まずはシード層無しの場合で、水熱合成法でグラフェンシート上にどのような構造体が形成されるか否か検討した。グラフェンシートが転写された石英基板を、硝酸亜鉛水溶液(Zn(NO、0.1M、50ml)と水酸化ナトリウム水溶液(NaOH、1.5 M、 50ml)の混合溶液(pH13)に浸漬し、水溶液温度を90℃一定に保ち、2時間放置した。図4に水熱処理後、充分に純水で洗浄し、乾燥させた試料のグラフェンシート表面の電子顕微鏡(SEM)観察像を示す。基板表面に対して、真上から観察した像である。ZnOシード層無しでも、ZnOナノロッドが基板表面に対してほぼ垂直(グラフェンシートのシート面に対して90°±15°)に配向して成長していることが確認できた。
【実施例】
【0028】
(シード層有無によるZnOナノロッドの成長状態の比較)
さらに、グラフェンシート上へのZnOナノロッド成長を確認するため、ZnOシード層上と、グラフェンシート上へのZnOナノロッドの成長状態を比較した。まず基板として、R面サファイア単結晶基板を用意する。R面サファイア基板上に、ZnOシード層を高周波マグネトロンスパッタ法により成膜速度20nm/minで成膜した。スパッタは、酸化亜鉛の焼結ターゲット(高純度化学研究所社製、直径100mm、厚み5mm、純度99.99%)を用い、アルゴンガス(Ar、99.9995%以上)と酸素ガス(O、純度99.999%以上)を圧力比率4:1で混合したガス雰囲気中で、基板温度600℃、成膜圧力1Pa、高周波電力100Wで行った。成膜時間は5分とした。本発明者らの予備実験では、この条件で作製されたZnOシード層上には、ZnOナノロッド同士が互いに交差する、すなわちX字状にナノロッドが成長することが確認されている。R面サファイア基板上に形成されたZnOシード層の一部分を覆うようにグラフェンシートを転写し、水熱合成処理を施した。図5、図6は、水熱合成処理後の試料表面の、それぞれ光学顕微鏡観察像と電子顕微鏡観察像を示している。図5中、透明の領域はR面サファイア基板上にZnOシード層が直接堆積している領域(領域(a))、灰色に見える長方形の領域は、グラフェンシートが転写された箇所(領域(b))を示している。図6は、図5の領域(a)と(b)の境界部分の電子顕微鏡観察像である。図6中、領域(a)では、予想通りZnOナノロッドがX字状に成長しているが、領域(b)ではZnOナノロッドがグラフェンシート面にほぼ垂直方向に配向して成長していることが確認した。この結果は、グラフェンシート表面には、ZnOナノロッドがシート面に垂直に配向して成長することを示している。
【実施例】
【0029】
グラフェンシート上にZnOナノロッドが、ZnOシード層無しで直接配向成長できた理由は不明であるが、グラフェンの持つ炭素元素から構成される六角形の網状構造が、ZnO結晶がc軸成長しやすい条件を充たすのではないかと考えられる。一方、同じく水熱合成法で、グラフェンシート上へのZnOナノロッドの成長を試みた先例(非特許文献4)では、ZnOナノロッド等のナノ構造が、グラフェンシート上に不規則に成長しているが、この先例では、水酸化アンモニウム(NHOH)を用いている。それに対して、本実施例では、NHOHを用いていないこと、加えて、水熱合成溶剤にNaOHを用いて溶剤をアルカリ性にしていることがグラフェンシート上へのZnOナノロッドの直接かつ配向成長につながっているのではないかと考えられる。なお、本発明者らは、PH7以上のアルカリ性溶液で、グラフェンシート上にZnOナノロッドが直接配向成長することを確認している。なお、グラフェンシートは、本実施例のように加熱されたアルカリ性雰囲気でも、基板、ZnOナノロッドから剥がれることもなく、機械的強度を保持していることを確認した。
【実施例】
【0030】
一方、合成したZnOナノロッド上にもグラフェンシートを転写できる。すなわち、別途用意したPMMA膜上のグラフェンシートを、グラフェンシート面とZnOナノロッド先端が接触するように60~80℃に上げ、試料の水分を蒸発させて取り除き、さらに150~180℃に上げ、60~90分保持する。最後に、アセトンに15~20分間浸し、PMMAを溶かす。このプロセスを施すことによりグラフェンシートがZnOナノロッドに固着することを確認しており、これによって配向したZnOナノロッドの両端面にそれぞれグラフェンシートからなる電極を形成することができ、振動子あるいはセンサー等の素子を形成できることが分かった。
【産業上の利用可能性】
【0031】
本発明は、振動子あるいはセンサーに応用することができる。

図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
5