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明細書 :熱電変換材料

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 公開特許公報(A)
公開番号 特開2015-216280 (P2015-216280A)
公開日 平成27年12月3日(2015.12.3)
発明の名称または考案の名称 熱電変換材料
国際特許分類 H01L  35/20        (2006.01)
H01L  35/34        (2006.01)
C22C  38/00        (2006.01)
H02N  11/00        (2006.01)
FI H01L 35/20
H01L 35/34
C22C 38/00 302Z
H02N 11/00 A
請求項の数または発明の数 6
出願形態 OL
全頁数 9
出願番号 特願2014-099117 (P2014-099117)
出願日 平成26年5月13日(2014.5.13)
発明者または考案者 【氏名】西野 洋一
【氏名】宮崎 秀俊
【氏名】山田 友一郎
出願人 【識別番号】304021277
【氏名又は名称】国立大学法人 名古屋工業大学
審査請求 未請求
要約 【課題】本発明の課題は、300~600Kの温度域で熱電変換材料を実用化することを目的とし、その温度域でゼーベック係数の大きい熱電変換材料を提供する。
【解決手段】ホイスラー合金型の結晶構造をもち、化学式当たりの総価電子数が24であるFe2VAlの基本構造に対し、一般式Fe21+x-yTaAl1-xを満たす熱電変換材料であって、-0.10≦x≦-0.03、0.08≦y≦0.12であってp型に制御される、あるいは、0.03≦x≦0.10、0.08≦y≦0.12であり、n型に制御された熱電変換材料。
【選択図】図6
特許請求の範囲 【請求項1】
ホイスラー合金型の結晶構造をもち、化学式当たりの総価電子数が24であるFe2VAlの基本構造に対し、一般式Fe21+x-yTaAl1-xを満たす熱電変換材料であって、-0.10≦x≦-0.03、0.08≦y≦0.12であり、p型に制御された熱電変換材料。
【請求項2】
前記xとyがそれぞれ、-0.05≦x≦-0.03、0.10≦y≦0.12である、請求項1に記載の熱電変換材料。
【請求項3】
ゼーベック係数の絶対値がピークとなる温度が400K以上である請求項1または2に記載された熱電変換材料。
【請求項4】
ホイスラー合金型の結晶構造をもち、化学式当たりの総価電子数が24であるFe2VAlの基本構造に対し、一般式Fe21+x-yTaAl1-xを満たす熱電変換材料であって、0.03≦x≦0.10、0.08≦y≦0.12であり、n型に制御された熱電変換材料。
【請求項5】
前記xとyがそれぞれ、0.03≦x≦0.05、0.10≦y≦0.12である、請求項4に記載の熱電変換材料。
【請求項6】
ゼーベック係数の絶対値がピークとなる温度が360K以上である請求項4または5に記載の熱電変換材料。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、熱電変換材料に関する。
【背景技術】
【0002】
熱エネルギーと電気エネルギーとの相互変換が可能な熱電変換素子が知られている。熱電変換素子は、p型およびn型の二種類の熱電変換材料から構成されており、この二種類の熱電変換材料を電気的に直列に接続し、熱的に並列に配置した構成とされる。熱電変換素子は、両端子間に電圧を印加すれば、正孔および電子の移動が起こり両面間に温度差が発生する(ペルチェ効果)。一方、熱電変換素子は、両面間に温度差を与えれば、同じく正孔および電子の移動が起こり、両端子間に起電力が発生する(ゼーベック効果)。このため、熱電変換素子を冷蔵庫やカーエアコン等の冷却用の素子として用いており、またごみ焼却炉から生ずる排熱を利用した発電用の素子として使用されている。
【0003】
従来、熱電変換素子を構成する熱電変換材料として、金属間化合物が知られ、その中でもBiTeを主成分とする熱電変換材料が大きなゼーベック係数を有することにより古くから知られているが、難加工性であること、また高い原材料コストという欠点を有している。そのため、これら欠点を補うため、ホイスラー合金型結晶構造を有するFeVAl系の金属間化合物の開発が行われている。このFeVAl系熱電変換材料に関して、FeVAlを構成する一元素の少なくとも一部を他元素で置換することにより、室温あるいは室温よりやや高い、300~400Kでのゼーベック係数の絶対値が大きくなることが開示されている(特許文献1)。
【0004】
そして、被置換元素と置換元素の組み合わせにより総価電子数を変化させ、ゼーベック係数の符号を変える、すなわち、p型またはn型に制御することができるとしている。また、数多くの被置換元素と置換元素の組み合わせが可能であり、具体的には、FeをPtあるいはCoで置換、VをMoあるいはTiで置換、AlをSi,Ge、あるいはSnで置換することが開示されている。より具体的には、AlをSiあるいはGeにて置換してゼーベック係数が正から負に変化し、その絶対値が大きくなっている。また、VをTiで置換しても、ゼーベック係数は正のままであるが、Moで置換するとゼーベック係数は正から負に変化し、その絶対値は大きくなっている。
【0005】
さらに、FeVAl系において、前記特許文献1と同様な元素置換により、熱電性能指数を決めるゼーベック係数以外の因子である熱伝導率あるいは電気抵抗率を室温で測定している。元素置換により熱伝導率および電気抵抗率が小さくなり、結果として室温付近での性能指数が大きくなることが開示されている(特許文献2)。
【0006】
一方、同じくFeVAl系において、AlをGaあるいはBで置換し、さらに化学量論組成からシフトさせた実施例につき、室温付近でのゼーベック係数、熱伝導率を開示している(特許文献3)。
【0007】
しかし、上記特許文献1~3では、室温より高い、すなわち300~600Kの中高温度域でのゼーベック係数、電気抵抗率等は開示されていない。そして、室温より高い温度で測定がなされている文献1においても、ゼーベック係数のピークは300~400Kであり、またピーク温度が高くなる可能性があるものの絶対値は小さい。以上より、300~600Kの温度域で大きなゼーベック係数を得ることが困難であった。
【先行技術文献】
【0008】

【特許文献1】特許第4035572号公報
【特許文献2】特開2004-253618公報
【特許文献3】特開2004-119647公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の課題は、300~600Kの温度域で熱電変換材料を実用化することを目的とし、その温度域でゼーベック係数の大きく、かつ電気抵抗率の小さい熱電変換材料を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、基本組成FeVAl系の熱電変換材料において、Feに対するVとAlの配合率を化学量論組成からシフトさせ、かつ少なくともVの一部をTaにて置換することにより、上記課題を解決しうることを見出した。すなわち、本発明によれば、以下の熱電変換材料が提供される。
【0011】
[1] ホイスラー合金型の結晶構造をもち、化学式当たりの総価電子数が24であるFe2VAlの基本構造に対し、一般式Fe21+x-yTaAl1-xを満たす熱電変換材料であって、-0.10≦x≦-0.03、0.08≦y≦0.12であり、p型に制御された熱電変換材料。
【0012】
[2] 前記xとyがそれぞれ、-0.05≦x≦-0.03、0.10≦y≦0.12である、前記[1]に記載の熱電変換材料。
【0013】
[3] ゼーベック係数の絶対値がピークとなる温度が400K以上である前記[1]または[2]に記載された熱電変換材料。
【0014】
[4] ホイスラー合金型の結晶構造をもち、化学式当たりの総価電子数が24であるFe2VAlの基本構造に対し、一般式Fe21+x-yTaAl1-xを満たす熱電変換材料であって、0.03≦x≦0.10、0.08≦y≦0.12であり、n型に制御された熱電変換材料。
【0015】
[5]前記xとyがそれぞれ、0.03≦x≦0.05、0.10≦y≦0.12である、前記[4]に記載の熱電変換材料。
【0016】
[6]ゼーベック係数の絶対値がピークとなる温度が360K以上である前記[4]または[5]に記載の熱電変換材料。

【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の熱電変換材料の製造フローを示す図である。
【図2】本発明のp型およびn型の熱電変換材料の各X線回折パターンと各格子定数の組成依存性を示す図である。
【図3】本発明のp型およびn型の熱電変換材料の各電気抵抗率の温度依存性を示す図である。
【図4】本発明のp型およびn型の熱電変換材料の各ゼーベック係数の温度依存性を示す図である。
【図5】本発明のp型およびn型の熱電変換材料の各熱伝導率の温度依存性を示す図である。
【図6】本発明のp型およびn型の熱電変換材料の各性能指数の温度依存性を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図面を参照しつつ本発明の実施の形態について説明する。本発明は、以下の実施形態に限定されるものではなく、発明の範囲を逸脱しない限りにおいて、変更、修正、改良を加え得るものである。

【0019】
本発明の熱電変換材料は以下のようにして製造される。この製造方法は、上記熱電変換材料を製造可能な元素構成比率を有する原料混合物を用意する第1工程と、該原料混合物を真空中又は不活性ガス中にて溶融または気化した後、固化して熱電変換材料を得る第2工程とを有する。

【0020】
第2工程としては、例えば、原料混合物を真空中あるいは不活性ガス中においてアーク溶融または鋳造法等により溶融し、固化することによりインゴットを作成する。このインゴットのまま熱電変換材料とすることもできるが、このインゴットを不活性ガスあるいは窒素ガス雰囲気中で機械的に粉砕する方法、溶湯アトマイズあるいはガスアトマイズによる方法、さらにはメカニカルアロイングという不活性ガスあるいは窒素ガス雰囲気中で原料混合物の圧着と破断を繰り返す方法等により、ほぼ均一粒径の紛体を得る。そして、このようにして得られた紛体をホットプレス法、HIP法(熱間静水圧成形法)、放電プラズマ焼結法、あるいはパルス通電法等により、焼結することができる。例えば、HIP法により紛体を焼結する場合、例えば、800℃で150MPaのアルゴンガス雰囲気にて圧縮成形と焼結を同時に進行させ、ほぼ真密度で固化を行うことができる。また、p型あるいはn型の熱電変換材料を可及的に小さな結晶粒とするために、熱間圧延等の歪加工を行う、あるいは溶融した原料を急冷すること、等の方法が適宜採用される。

【0021】
そして、原料混合物を溶融固化した後、粉砕して得られた粉末をX線回折法によりX線回折測定を行う。一方、前記粉砕して得られた粉末をHIP法等により焼結し、さらに切断等を行い、電気抵抗率の測定、ゼーベック係数の測定、熱伝導率の測定を各々所定のサイズにて行う。

【0022】
本発明のFeVAl系の熱電変換材料は、Feに対するVとAlの配合率を化学量論組成からシフトさせ、かつVの一部をTaにて置換した一般式Fe21+x-yTaAl1-xを満たす熱電変換材料であって、-0.10≦x≦-0.03、0.08≦y≦0.12であり、p型に制御された熱電変換材料であることが好ましい。前記xとyがそれぞれ、-0.05≦x≦-0.03、0.10≦y≦0.12であることがより好ましい。さらに、本発明のp型に制御された熱電変換材料はそのゼーベック係数の絶対値がピークとなる温度は400K以上であることが好ましい。本発明のp型に制御された熱電変換材料では化学式あたりの総価電子数が23.7以上24.0未満である。

【0023】
また、本発明のFeVAl系の熱電変換材料は、Feに対するVとAlの配合率を化学量論組成からシフトさせ、かつVの一部をTaにて置換した一般式Fe21+x-yTaAl1-xを満たす熱電変換材料であって、0.03≦x≦0.10、0.08≦y≦0.12であり、n型に制御された熱電変換材料であることが好ましい。前記xとyがそれぞれ、0.03≦x≦0.05、0.10≦y≦0.12であることがより好ましい。さらに本発明のn型に制御された熱電変換材料はそのゼーベック係数の絶対値がピークとなる温度は310K以上である ことが好ましい。本発明のn型に制御された熱電変換材料では化学式あたりの総価電子数が24.0超24.2以下である。
【実施例】
【0024】
以下、本発明を実施例に基づいてさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【実施例】
【0025】
(実施例)
p型の組成Fe0。88-aTa0。12Al1+aにおいて、a=0.03、0.05、0.08とした材料の熱電変換特性に影響する因子の特性を調べた。純度99,99質量%の鉄(Fe)、同99.99質量%のアルミニウム(Al)、同99.9質量%のバナジウム(V)、そして同99.9%のTaを前記組成になるように計量し、さらに混合して原料混合物を得た。一方、n型の組成Fe0。90+aTa0。10Al1-aについてもa=0.03、0.05、0.08とした材料の混合物を得た。
【実施例】
【0026】
次に、図1に示す製造フローに従い、この原料混合物をアルゴン雰囲気下でアーク溶解してボタン状のインゴットを作成した。均質なインゴットを得るため、前記インゴットを再溶解し、均質なインゴットを得た。溶解前後での質量変化は0.1%以下であり、溶解による質量変化は無視できる程度と仮定した。
【実施例】
【0027】
その後、このインゴットを5×10-3Pa以下の高真空中において、1273Kで48時間の均質化処理を行った後、短冊状、粉末、およびブロック形状の各測定形状に加工した。その後、真空中で1273K×1Hrの歪除去処理と673K×4Hrの規則化処理を行った。このようにして熱電変換材料を得た。
【実施例】
【0028】
<評価>
・ X線回折測定
得られた実施例の熱電変換材料を紛末とし、粉末X線回折法によってX線回折測定を行った。この結果を図2に示す。XRDパターンより、DO(L2)単相により構成され、ホイスラー合金型の結晶構造を有していることを確認した。また、格子定数の組成依存性から、V/Al量が連続的に変化していることを確認した。さらに、蛍光X線分析から、不純物が存在せず、ほぼ目的組成であることも確認した。
【実施例】
【0029】
・ 電気抵抗率(比抵抗)の測定
実施例の熱電変換材料のインゴットをダイシングソーにて切断し、1.0mm×1.0mm×15mmの短冊状の試験片を得た。この試験片を直流四端子法にて、温度4.2~600Kで電気抵抗率を測定した。p型材料およびn型材料の電気抵抗率の温度変化を各々図3(a)および図3(b)に示す。p型材料の電気抵抗率はいずれも500K超でピークを有した。一方、n型材料の電気抵抗率のピークは250K~500Kであったが、aが大きくなるほどピークが高温側にシフトした。
【実施例】
【0030】
・ ゼーベック係数の測定
実施例の熱電変換材料のインゴットをダイシングソーにて切断し、0.5mm×0.5mm×5.0mmの短冊状の試験片を得た。そして、MMR-Technologies社製「SB100」を用いてゼーベック係数を100K~600Kで測定した。p型材料およびn型材料のゼーベック係数の温度変化を図4(a)および図4(b)に示す。p型材料は400K以上で正のピークを示した、一方n型材料は250K~500K付近で負のピークを示した。
【実施例】
【0031】
(4)熱伝導率の測定
実施例のp型およびn型の熱電変換材料のインゴットをダイシングソーにて切断し、3.5mm×3.5mm×4mmのブロック形状の試験片を得た。そして、4×10-4Paの真空中において、熱流法による定常比較測定法を用いて熱伝導率を測定した。その結果を各々図5(a)および図5(b)に示す。p型、n型ともに、400K~600Kで約8~10(W/mK)であった。
【実施例】
【0032】
以上の電気抵抗率測定、ゼーベック係数測定、および熱伝導率測定より、無次元熱電性能指数((ゼーベック係数)×温度/電気抵抗率×熱伝導率)を求めた結果を図6に示す。この結果より、少なくとも室温において、VをTaで置換せずに、単にVとAlとを相補的に化学量論組成からシフトさせた材料よりも、本発明のp型材料およびn型材料ともに性能指数が優れていることが判る。また、電気抵抗率およびゼーベック係数の温度依存性では単にVとAlとを相補的に化学量論組成からシフトさせた材料と本発明のp型材料およびn型材料とはあまり違いはないが,熱伝導率では大幅に低減していることから300K~600Kにおいてもp型材料およびn型材料ともに性能指数が優れていることが推測できる。
【実施例】
【0033】
以上の結果より、本発明のTa置換の性能指数が大きい理由は定かではないが、単にVとAlとを相補的に化学量論組成からシフトさせた材料では、非化学量論組成による熱伝導率低減しか見込めないのに対して,Ta置換では重元素置換と非化学量論組成の複合効果により熱伝導率が大幅に低減していることに起因していると推察する。
【産業上の利用可能性】
【0034】
本発明の材料は、熱電変換素子、特に300K~600Kの温度域で排熱を利用して発電する発電素子に利用することができる。
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
5