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明細書 :リンを内包した単層カーボンナノチューブ、それを含むリチウム及びナトリウムイオン二次電池の負極及びその製造方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 公開特許公報(A)
公開番号 特開2015-221726 (P2015-221726A)
公開日 平成27年12月10日(2015.12.10)
発明の名称または考案の名称 リンを内包した単層カーボンナノチューブ、それを含むリチウム及びナトリウムイオン二次電池の負極及びその製造方法
国際特許分類 C01B  31/02        (2006.01)
H01M   4/587       (2010.01)
H01M   4/36        (2006.01)
FI C01B 31/02 101F
H01M 4/587
H01M 4/36 A
請求項の数または発明の数 6
出願形態 OL
全頁数 11
出願番号 特願2014-105734 (P2014-105734)
出願日 平成26年5月22日(2014.5.22)
発明者または考案者 【氏名】川崎 晋司
【氏名】ソン ハヨン
【氏名】早川 太一
出願人 【識別番号】304021277
【氏名又は名称】国立大学法人 名古屋工業大学
審査請求 未請求
テーマコード 4G146
5H050
Fターム 4G146AA12
4G146AA13
4G146AA15
4G146AB06
4G146AC03B
4G146AC16B
4G146AD23
4G146AD25
4G146CA01
4G146CA08
4G146CA12
4G146CA16
4G146CB08
4G146CB11
4G146CB12
4G146CB14
4G146CB19
4G146CB24
4G146CB32
5H050AA07
5H050AA08
5H050AA12
5H050BA15
5H050CB01
5H050CB07
5H050DA03
5H050FA16
5H050FA18
5H050GA02
5H050GA12
5H050GA14
5H050GA27
5H050HA07
5H050HA10
5H050HA14
5H050HA15
5H050HA20
要約 【課題】二次電池として機能しないリンを単層カーボンナノチューブに内包させることにより、リチウム及びナトリウムイオン二次電池負極を提供する。
【解決手段】洗浄されたカーボンナノチューブを酸化処理することにより、カーボンナノチューブの端部を開放し、次いでこのカーボンナノチューブ11とリン粉末13をガラス管15に真空下で封入し、次いでこのガラス管15を電気炉17内に配し、500~600度で3~10時間熱処理し、リンをカーボンナノチューブ11内部に導入し、次いでカーボンナノチューブ11外表面に析出したリンを除去することを特徴とする、または洗浄されたカーボンナノチューブの酸化処理前に、アニール処理することを特徴とする。
【選択図】 図1
特許請求の範囲 【請求項1】
洗浄されたカーボンナノチューブを酸化処理することにより、カーボンナノチューブの端部を開放し、
次に、このカーボンナノチューブ11とリン粉末13をガラス管15に真空下で封入し、
次に、このガラス管15を電気炉17内に配し、500~600度で3~10時間熱処理し、リンをカーボンナノチューブ11内部に導入し、
次に、カーボンナノチューブ11外表面に析出したリンを除去する
ことを特徴とするリンを内包した単層カーボンナノチューブの製造方法。
【請求項2】
洗浄されたカーボンナノチューブの酸化処理前に、アニール処理することを特徴とする請求項1記載のリンを内包した単層カーボンナノチューブの製造方法。
【請求項3】
請求項1または2記載のリン内包ナノチューブを作用極とし、金属リチウムあるいは金属ナトリウムを対極とし、
電解液として、1mol/l の過塩素酸リチウム、あるいは0.5mol/lの過塩素酸ナトリウムを溶解させたエチレンカーボネートと、ジエチルカーボネートとの体積比が1対1の混合液を、使用した
ことを特徴とするリチウム及びナトリウムイオン二次電池の負極の製造方法。
【請求項4】
洗浄済カーボンナノチューブを酸化処理することにより、カーボンナノチューブの端部を開放し、次にこのカーボンナノチューブ11とリン粉末13をガラス管15に真空下で封入し、次にこのガラス管15を電気炉17内に配し、500~600度で3~10時間熱処理し、リンをカーボンナノチューブ11内部に導入させ、次にカーボンナノチューブ11外表面に析出したリンを除去してなるリンを内包した単層カーボンナノチューブ。
【請求項5】
洗浄されたカーボンナノチューブの酸化処理前に、アニール処理することを特徴とする請求項4記載のリンを内包した単層カーボンナノチューブ。
【請求項6】
請求項4または5記載のリン内包ナノチューブを作用極とし、金属リチウムあるいは金属ナトリウムを対極とし、電解液として、1mol/l の過塩素酸リチウム、あるいは0.5mol/lの過塩素酸ナトリウムを溶解させたエチレンカーボネートと、ジエチルカーボネートとの体積比が1対1の混合液を、使用したことを特徴とするリチウム及びナトリウムイオン二次電池の負極。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、リンを内包した単層カーボンナノチューブ、それを含むリチウム及びナトリウムイオン二次電池の負極及びその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、リチウムイオン二次電池の負極として用いられる炭素材料は、蓄えられるリチウムイオンの量が少ないことが問題であった。そのため、高容量負極として金属リチウム負極やシリコン等の合金系負極の研究が進められている。
【0003】
しかし、金属リチウム負極は高い反応性とデンドライトが生成しやすいため、安全性が問題であった。
【0004】
シリコン負極に関しては、低い電気伝導度と充放電時の大きい体積変化が問題であった。充放電時の体積変化による電極の微粉化を押さえるため、シリコンナノワイヤーなどを用いる、あるいは電気伝導度を向上させるために炭素材料との複合体を作る、などの研究がされているが、サイクル効率の低下は何ら改善されていない。
【0005】
一方、リチウムイオン二次電池には資源的な問題もある。リチウムは希少元素であり、資源は南アメリカに偏っており、かつその量も少ない。電気自動車のような大型電気デバイスが普及していくと、リチウムの需要は急激に増加することが見込まれる。このため、資源的に有利なナトリウムイオン二次電池が期待されている。
【0006】
しかし、ナトリウムイオン二次電池については、リチウムイオン二次電池の負極として用いられている黒鉛を用いることができない。なぜならば、黒鉛はナトリウムとは低次の層間化合物をつくらないからである。
【0007】
ナトリウムイオン二次電池の負極としては、ハードカーボン(難黒鉛化性炭素)が使用可能との報告がある。しかし、ハードカーボンの容量は、約300mAh/g程度しかナトリウムイオンを貯蔵できない。
【0008】
一方、ナトリウムイオン電池の負極として黒リンを用いる研究が非特許文献(Adv. Mater. 2007, 19, 2465-2468)により報告されている。この研究では絶縁体である赤リンの代わりに導電性を有する黒リンを用いることにより、電極として機能することが示されている。
【0009】
しかし、黒リンを製造するには200度以上で1.2GPa以上の圧力を印加するなど高温高圧を要する。また、黒リンを用いることでは充放電時の体積変化による微粉化を抑えることはできないため、充放電サイクルを重ねていくことによる容量低下も抑えられていない。さらに、黒リンが導電性をもつが、電気伝導度が乏しいので、高い出力が出せないことが問題となっている。
【0010】
リンを負極活物質として用いる際に問題となる低い電気伝導度を補う手法として炭素材料を導電補助剤として用いることが考えられる。しかし、カーボンブラックを混合しただけではやはり充放電サイクルにともなう容量低下の問題を解決できない。
【0011】
リンはリチウム、ナトリウムともに電気化学的に金属リン化物を作るため、従来のリチウムイオン二次電池およびナトリウムイオン二次電池の負極として使用することが可能である。
【先行技術文献】
【0012】

【非特許文献1】C. M. Park et al., Adv. Mater. 2007, 19, 2465-2468
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
現在のリン負極の作製においては、1.2GPa以上の高圧と200度以上の高温を同時に必要とするため、電極の作製に用いられるエネルギー量が大きい。それゆえに赤リンや白リンをそのまま電極として用いることができないことから、より簡単にリン負極を作製する技術が望まれている。
【0014】
リン及びその同素体である白リン、赤リンそして黒リンとも導電性が乏しいので、充放電の際抵抗が大きい。乏しい導電性は充電及び放電時に過電圧の原因となり、その分がエネルギーのロスになる。
【0015】
充電及び放電時に起こる体積変化による電極の微粉化は、電池のサイクル特性を悪化させることが知られており、黒リンを用いたときも同様に電極の劣化が報告されている。
【0016】
ナトリウムイオン電池の負極材は、研究の歴史も浅く、有望な負極材が見つかっていない。ハードカーボンが一応負極として機能するが、容量(ナトリウムイオン貯蔵可能な量)は小さく、また、放電電位が一定でないという欠点があった。
【0017】
リチウムイオン二次電池の負極としては黒鉛系材料が永年使用されてきたが、電気自動車のような大型用途にはより高容量な材料が望まれる。高容量材料としてSiなどが期待されるが、充放電時の体積変化が大きく、充放電に伴う容量劣化が大きいという欠点があった。
【課題を解決するための手段】
【0018】
本発明者らは、毒性が無く空気中で安定な赤リンを用いて単層カーボンナノチューブにリンを効果的に内包させる方法、また、リンを内包させた単層カーボンナノチューブをリチウムイオン二次電池及びナトリウムイオン二次電池の電極として用いることにより、高容量の負極材料として機能することを確認した。さらに、リンを内包させた単層カーボンナノチューブをリチウム及びナトリウム金属に対して放電を行うとリチウムの場合0.59 V(vs. Li+/Li)の平均放電電圧、ナトリウムの場合 0.18 V(vs. Na+/Na)の放電電圧が得られていることから、容量、電位とも負極材料として適合していることを知見した。
【0019】
本発明の目的は、本来二次電池として機能しないリンを単層カーボンナノチューブに内包する製造方法、およびそれを使用したナトリウムイオン二次電池負極およびリチウムイオン電池負極を提供することにある。
【発明の効果】
【0020】
本発明に係るリンを内包した単層カーボンナノチューブ、それを含むリチウム及びナトリウムイオン二次電池の負極及びその製造方法によれば、ハードカーボンの3倍以上の容量を有し、かつ放電電位も一定である効果を奏する。
【0021】
また、リンはLiを蓄えたときの体積変化がSiに比べ小さく、またカーボンナノチューブに内包させることにより、充放電時に微粉化が起こっても、電極に保持でき容量低下を防ぐことができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】図1は本発明に係るリンを内包した単層カーボンナノチューブ製造工程を示す模式図であり、(a)は第1工程、(b)は第2工程を示す。
【図2】図2はリンをドープしたカーボンナノチューブのTEM写真画像である。
【図3】図3は同、炭素 のマッピング写真画像である。
【図4】図4は同、リン のマッピング写真画像である。
【図5】図5はリンをドープしたカーボンナノチューブのリチウムイオンの充放電特性を示すグラフである。
【図6】図6は同、ナトリウムイオンの充放電特性を示すグラフである。
【図7】図7は合成したリン内包カーボンナノチューブとリン未内包中空カーボンナノチューブとの周波数特性を示すグラフであり、(上段)がリン内包カーボンナノチューブ、(下段)がリン未内包中空カーボンナノチューブを示す。
【図8】図8はリンとカーボンブラックを混合した試料についての充放電特性を示すグラフであり、(左側)がリチウムイオン充放電曲線、(右側)がナトリウムイオン放電曲線を示す。
【図9】図9はリンを内包した単層カーボンナノチューブを使用したリチウムまたはナトリウムイオン二次電池負極を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本発明に係るリンを内包した単層カーボンナノチューブの製造方法を以下に説明する。
【実施例1】
【0024】
(合成)
ホスト材料として平均直径約1.5nm の単層カーボンナノチューブ11を使用した。本例において、単層カーボンナノチューブ11はアーク放電法により合成されたものである。平均直径が約1nmより小さいと、リンの導入が困難であり、約2nmより大きいとバルクのリンと同様となってしまうため、不適である
【実施例1】
【0025】
この際、カーボンナノチューブは、その製造に起因して金属ナノ粒子触媒等の不純物や付着物を含有しうるため、それらを除去することにより、リンの内包をより効率的に行えるとともに負極の性能向上に寄与し得る。
【実施例1】
【0026】
カーボンナノチューブの精製方法は特に限定されないが、例えば酸(例、塩酸、硝酸、硫酸、過酸化水素等)を用いた洗浄であってもよい。なお、洗浄後には高温(例えば1000~2000度)でアニール処理してもよく、このアニール処理は真空下で行われることが好ましい。このアニール処理後、空気中で500度程度の酸化処理することにより、チューブの端部を開放し、リンを内包できるようにする。
【実施例1】
【0027】
アニール処理を行う際、1000度より低いと、結晶性の向上が期待できず、2000度より高いと、ナノチューブの融合が起こってしまうため、不適である。
【実施例1】
【0028】
また、酸化処理を行う際、400度より低いと開端が困難であり、600度より高いとナノチューブの消失が大きく、不適である。
【実施例1】
【0029】
次に、開端処理したカーボンナノチューブ11とリン粉末13を、ガラス管15に、真空下で封入する。この際、真空度は1Pa 以下であることが望ましい。
【実施例1】
【0030】
次に、このガラス管15全体を電気炉17内に挿入、配置し、500~600度で3~10時間熱処理し、リンをカーボンナノチューブ11内部に導入する(図1(a)参照)。
【実施例1】
【0031】
電気炉17内の温度が500度より低いと、リンの導入が困難であり、600度より高いと副反応を生じるため、不適である。
【実施例1】
【0032】
また、電気炉17内での可燃時間が3時間より短いと、リンの導入量が少なく、10時間より長くしてもそれ以上のリンの導入は望めないため、不適である。
【実施例1】
【0033】
次に、この熱処理により、カーボンナノチューブ11内部だけでなく外表面にもリンが析出するため、これを除去する。
【実施例1】
【0034】
この際、ガラス管15の位置をずらし、カーボンナノチューブ端を電気炉17外部に出した後、電気炉17内にあるリン内包カーボンナノチューブを200度で1時間加熱する。この温度でカーボンナノチューブ11外表面のリンは昇華し、温度の低い電気炉17外のガラス管15端部に析出する(図1(b)参照)。
【実施例1】
【0035】
リン内包カーボンナノチューブを200度で1時間加熱するのは、ナノチューブ外表面に物理吸着したリンを除去するためである。
【実施例1】
【0036】
その後、ガラス管15を割り、リン内包カーボンナノチューブを取り出す。
【実施例1】
【0037】
(生成物評価)
リン内包カーボンナノチューブの構造評価をするため、透過型電子顕微鏡観察およびラマン散乱実験を行った。
【実施例1】
【0038】
透過型電子顕微鏡観察により、内包処理を実施してもチューブ形態に変化がないことが確認できた。また、ラマン散乱からはカーボンナノチューブに特有のG-バンドや2D-バンドなどは内包処理後も観察されるが、いずれも内包処理後に高波数シフトが観測され、内包したリンの影響である(図7参照)。
【実施例1】
【0039】
一方、STEM観察によりカーボンとリンの分布を調べると空間的に両者は同様な分布を示しており、カーボンナノチューブ内部にリンが導入されていることが確認できた。
【実施例1】
【0040】
(負極性能評価)
リン内包カーボンナノチューブを作用極、金属リチウムあるいは金属ナトリウムを対極とするテストセルを構築する(図9参照)。
【実施例1】
【0041】
電解液は1mol/l の過塩素酸リチウム、あるいは0.5mol/lの過塩素酸ナトリウムを溶解させたエチレンカーボネートと、ジエチルカーボネートとの体積比が1対1の混合液を使用した。
【実施例1】
【0042】
その結果、リチウムイオン電池負極として1600mAh/g 程度の可逆容量が、ナトリウムイオン電池負極として1200mAh/g 程度の可逆容量が、それぞれ観測された(図5、6参照)。これは、リンを単にカーボンブラックなどの導電補助剤と混合しただけの試料では可逆容量がほとんど観測されない(図8参照)ことと対照的である。
【実施例1】
【0043】
過塩素酸リチウム、過塩素酸ナトリウムの濃度は高い方が、イオン数が大きくなり望ましく、それぞれの飽和濃度に近い1mol/l、0.5mol/lとした。
【実施例1】
【0044】
エチレンカーボネートと、ジエチルカーボネートとの体積比が1対1としてあるのは、粘度を下げイオン伝導性を良くするためである。
【産業上の利用可能性】
【0045】
本発明に係るリンを内包した単層カーボンナノチューブ、それを含むリチウム及びナトリウムイオン二次電池の負極及びその製造方法によれば、リンの有効活用ができる。
【符号の説明】
【0046】
11 カーボンナノチューブ
13 リン粉末
15 ガラス管
17 電気炉
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
5
【図7】
6
【図8】
7
【図9】
8