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明細書 :膜タンパク質可溶化剤

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 公開特許公報(A)
公開番号 特開2015-224232 (P2015-224232A)
公開日 平成27年12月14日(2015.12.14)
発明の名称または考案の名称 膜タンパク質可溶化剤
国際特許分類 C07K   1/14        (2006.01)
C07K   5/06        (2006.01)
C07K   7/06        (2006.01)
C07K  14/195       (2006.01)
FI C07K 1/14
C07K 5/06
C07K 7/06
C07K 14/195
請求項の数または発明の数 5
出願形態 OL
全頁数 9
出願番号 特願2014-110888 (P2014-110888)
出願日 平成26年5月29日(2014.5.29)
発明者または考案者 【氏名】柴田 将英
【氏名】小枝 周平
【氏名】野地 智康
【氏名】出羽 毅久
【氏名】水野 稔久
出願人 【識別番号】304021277
【氏名又は名称】国立大学法人 名古屋工業大学
審査請求 未請求
テーマコード 4H045
Fターム 4H045AA20
4H045BA10
4H045BA11
4H045BA15
4H045CA11
4H045EA50
4H045EA61
4H045FA33
4H045GA01
要約 【課題】化学構造を新規な基本骨格とし、膜タンパク質を可溶化しうる膜タンパク質可溶化剤の提供
【解決手段】1対の炭化水素基間に親水性ペプチド鎖(ただし、酸性アミノ酸と塩基性アミノ酸が交互に並ぶ4残基のアミノ酸からなるアミノ酸配列からなるものは除く。)を配してなる化合物を含むことを特徴とし、一般式
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式中、Xは、主鎖が2-5残基の天然あるいは非天然のアミノ酸誘導体からなる親水性ペプチド鎖であり、Yは、1つの天然あるいは非天然のアミノ酸誘導体、あるいは2残基以上の天然あるいは非天然のアミノ酸誘導体からなるペプチド鎖(ただし、1残基の酸性アミノ酸、1残基の塩基性アミノ酸、2残基の酸性アミノ酸からなるアミノ酸配列又は2残基の塩基性アミノ酸からなるアミノ酸配列からなるものを除く。)であり、R1、R2は、C6-20の炭化水素基である。
【選択図】 なし
特許請求の範囲 【請求項1】
1対の炭化水素基間に親水性ペプチド鎖(ただし、酸性アミノ酸と塩基性アミノ酸が交互に並ぶ4残基のアミノ酸からなるアミノ酸配列からなるものは除く。)を配してなる化合物を含む膜タンパク質可溶化剤。
【請求項2】
1対の炭化水素基の一方端に、親水性または疎水性アミノ酸、あるいは親水性または疎水性ペプチド鎖(ただし、1残基の酸性アミノ酸、1残基の塩基性アミノ酸、2残基の酸性アミノ酸からなるアミノ酸配列又は2残基の塩基性アミノ酸からなるアミノ酸配列からなるものを除く。)を配してなる化合物を含む請求項1記載の膜タンパク質可溶化剤。
【請求項3】
一般式(1)
【化1】
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式中、Xは、主鎖が2-5残基の天然あるいは非天然のアミノ酸誘導体からなる親水性ペプチド鎖(ただし、酸性アミノ酸と塩基性アミノ酸が交互に並ぶ4残基のアミノ酸からなるアミノ酸配列からなるものは除く。)であり、Yは、1つの天然あるいは非天然のアミノ酸誘導体、あるいは2残基以上の天然あるいは非天然のアミノ酸誘導体からなるペプチド鎖(ただし、1残基の酸性アミノ酸、1残基の塩基性アミノ酸、2残基の酸性アミノ酸からなるアミノ酸配列又は2残基の塩基性アミノ酸からなるアミノ酸配列からなるものを除く。)であり、R1、R2は、C6-20の炭化水素基である化合物を含む請求項2記載の膜タンパク質可溶化剤。
【請求項4】
一般式(2)
【化2】
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(ただし、式中、R1、R2は炭化水素基を示す)の化合物を含む請求項2または請求項3記載の膜タンパク質可溶化剤。
【請求項5】
請求項1、請求項2、請求項3または請求項4に記載の膜タンパク質可溶化剤を用いて膜タンパク質を可溶化させる方法。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、膜タンパク質可溶化剤に関する。
【背景技術】
【0002】
天然タンパク質は、水溶性タンパク質と膜タンパク質に大別される。膜タンパク質を可溶化させる技術は、新薬創成におけるタンパク質の構造解析において必要とされる等、産業的要請がある。
【0003】
従来、膜タンパク質の可溶化剤として、親水性部位を糖とするものが知られている。特許文献1には、オリゴ糖のチオグリコシドを有効成分とする可溶化剤を開示しており、可溶化能、取扱性に優れた可溶化剤およびその可溶化剤を用いた膜タンパク質の可溶化、分離精製および人工膜の再構成方法が開示されている。
【0004】
一方、アミノ酸配列を有する両親媒性化合物として、非特許文献1は、基本構造がグルタミン酸-リシン-グルタミン酸(Glu-Lys-Glu)のペプチド骨格とラウロイル基からなるジェミニ型両親媒性化合物(ペリセアL-30)を開示している。ペプチドベースのジェミニ型両親媒性化合物(ペリセアL-30)に対し、その構成単位が天然にあるアミノ酸と脂肪酸であることから、安全性の高さを予想しており、ペリセアL-30が表面張力低下能、種々の油に対する乳化安定性能をもつこと、ダメージ毛に対してのリフトアップ抑制効果、毛髪内部への高浸透性、毛髪の太さや強度の改善効果をもつこと、さらに、皮膚バリア回復機能、皮膚刺激緩和効果をもつことが開示されている。
【先行技術文献】
【0005】

【特許文献1】特開平5-32689号公報
【0006】

【非特許文献1】田村幸永 山脇幸男著 「月刊ファインケミカル2007年4月号」シーエムシー出版 2007年3月15日 p.8-18
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1における膜タンパク質の可溶化剤であるオリゴ糖のチオグリコシドによればタンパク質の変性を伴うことなく種々の膜タンパク質の可溶化を図ることができるとし、実施例として腸炎ビブリオ菌の膜に存在するATPアーゼの可溶化を図ることができるとしている。また、高い活性を保持した形でATPアーゼを可溶化できるとしている。膜タンパク質の可溶化剤と膜タンパク質には相性があり、膜タンパク質を溶解させるには個々の膜タンパク質に合う可溶化剤の選択が必要である。さらに、膜タンパク質を失活させることなく溶解させることが重要である。ゆえに、目的となる膜タンパク質を溶解させる可溶化剤として、親水基に糖を有するといった従来の基本骨格とは異なる化学構造を持つ可溶化剤が求められている。
【0008】
非特許文献1は、安全性の高さを想定しアミノ酸を構成単位とした、Glu-Lys-Gluのペプチド骨格とラウロイル基からなるジェミニ型両親媒性化合物を開示しているが、両親媒性化合物を用いた膜タンパク質の可溶化については検討されていない。膜タンパク質の可溶化を図るには可溶化剤の構造設計が必要あり、アミノ酸1残基の有無で可溶化剤自体が沈殿化する、膜タンパク質が溶解しない、といった問題が生じる。また、非特許文献1で開示されているジェミニ型両親媒性化合物のペプチド骨格は、リシンの主鎖のアミノ基と側鎖のアミノ基が両端のグルタミン酸のカルボキシル基と結合し形成されているため、両親媒性化合物におけるアミノ酸配列のアミノ酸の数、種類を変えることは難しい。
【0009】
従って、本発明の目的は、化学構造を新規な基本骨格とし、膜タンパク質を変成させることなく可溶化しうる膜タンパク質可溶化剤を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するため、本発明者は、膜タンパク質可溶化剤として、親水性部位をアミノ酸配列とする、膜タンパク質を変成させずに可溶化させる分子を見いだした。
【0011】
即ち、請求項1に係る発明は、1対の炭化水素基間に親水性ペプチド鎖(ただし、酸性アミノ酸と塩基性アミノ酸が交互に並ぶ4残基のアミノ酸からなるアミノ酸配列からなるものは除く。)を配してなり、
請求項2に係る発明は、1対の炭化水素基の一方端に、親水性または疎水性アミノ酸、あるいは親水性または疎水性ペプチド鎖を配してなり、
請求項3に係る発明は、一般式(1)で示されるものである。
【0012】
【化1】
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【0013】
式中、Xは、主鎖が2-5残基の天然あるいは非天然のアミノ酸誘導体からなる親水性ペプチド鎖(ただし、Xが酸性アミノ酸と塩基性アミノ酸が交互に並ぶ4残基のアミノ酸からなるアミノ酸配列からなるものは除く。)である。Yは、1つの天然あるいは非天然のアミノ酸誘導体、あるいは2残基以上の天然あるいは非天然のアミノ酸誘導体からなるペプチド鎖(1残基の酸性アミノ酸、1残基の塩基性アミノ酸、2残基の酸性アミノ酸からなるアミノ酸配列又は2残基の塩基性アミノ酸からなるアミノ酸配列からなるものは除く。)である。R1、R2は、C6-20の炭化水素基である。
【0014】
前記発明に係る膜タンパク質可溶化剤を使用する場合は、可溶化剤自体が沈殿化せずに、膜タンパク質を溶解させる。また、細胞膜サンプルから、膜タンパク質の抽出を、可能とする。さらに、アミノ酸配列を有する新規膜タンパク質可溶化剤であり、アミノ酸配列の選択により、多様な構造となり、特定の膜タンパク質を可溶化する。さらに、膜タンパク質を変性させずに溶解させる。
【0015】
また、請求項2に係る発明は、一般式(2)の化合物を含む膜タンパク質可溶化剤であり、R1、R2は、C6-20の炭化水素基である。
【0016】
【化2】
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【0017】
前記発明に係る膜タンパク質可溶化剤を使用する場合も、前記同様の効果を奏する。
【0018】
また、請求項3に係る発明は、一般式(1)の化合物を含む膜タンパク質可溶化剤を用いて膜タンパク質を可溶化させる方法にある。
【0019】
上記膜タンパク質を可溶化させる方法を使用する場合は、可溶化剤自体が沈殿化せずに、膜タンパク質を溶解させる。また、細胞膜サンプルから、膜タンパク質の抽出を、可能とする。さらに、膜タンパク質を変性させずに溶解させる。
【発明を実施するための形態】
【0020】
(第1実施形態)
本発明は、1対の炭化水素基間に親水性ペプチド鎖(ただし、酸性アミノ酸と塩基性アミノ酸が交互に並ぶ4残基のアミノ酸からなるアミノ酸配列からなるものは除く。)を配し、1対の炭化水素基の一方端に、親水性または疎水性アミノ酸、あるいは親水性または疎水性ペプチド鎖を配してなる一般式(1)の化合物を含む膜タンパク質可溶化剤に関する。

【0021】
【化1】
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【0022】
式中、Xは、主鎖が2-5残基の天然あるいは非天然のアミノ酸誘導体からなる親水性ペプチド鎖(ただし、Xが酸性アミノ酸と塩基性アミノ酸が交互に並ぶ4残基のアミノ酸からなるアミノ酸配列からなるものを除く。)であり、Yは1つの天然あるいは非天然のアミノ酸誘導体、あるいは2残基以上の天然あるいは非天然のアミノ酸誘導体からなるペプチド鎖(ただし、1残基の酸性アミノ酸、1残基の塩基性アミノ酸、2残基の酸性アミノ酸からなるアミノ酸配列又は2残基の塩基性アミノ酸からなるアミノ酸配列からなるものを除く。)である。R1、R2は、C6-20の炭化水素基である。

【0023】
炭化水素基とは、炭素原子6-20個の炭化水素基が好ましく、さらには炭素原子12個の直鎖の炭化水素基がより好ましい。

【0024】
一般式(1)の化合物を含む膜タンパク質可溶化剤とは、膜タンパク質可溶化剤が本質的に一般式(1)の化合物からなることをいう。すなわち、膜タンパク質可溶化剤は、一般式(1)の化合物又は一般式(1)の化合物に膜タンパク質の可溶化に影響を与えないものを付加したものをいう。

【0025】
(第2実施形態)
また、一般式(1)のX、Yを特定した一般式(2)の化合物を含む膜タンパク質可溶化剤において、式中R1、R2は炭化水素基であり、炭素原子6-20個の炭化水素基が好ましく、さらには炭素原子12個の直鎖の炭化水素基がより好ましい。

【0026】
【化2】
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【0027】
一般式(2)の化合物を含む膜タンパク質可溶化剤とは、膜タンパク質可溶化剤が本質的に一般式(2)の化合物からなることをいう。すなわち、膜タンパク質可溶化剤は、一般式(2)の化合物又は一般式(2)の化合物に膜タンパク質の可溶化に影響を与えないものを付加したものをいう。

【0028】
一般式(2)は、一般式(1)のXの位置の親水性ペプチド部位のアミノ酸配列をAsnProAspGlyとし、Yの位置のアミノ酸配列をN末端がアセチル化したLsyLsyとする。

【0029】
(第3実施形態)
一般式(2)のR1、R2を特定した一般式(3)の化合物を含む膜タンパク質可溶化剤である。

【0030】
【化3】
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【0031】
一般式(3)の化合物を含む膜タンパク質可溶化剤を使用する場合は、可溶化剤自体が沈殿化せずに、膜タンパク質を溶解させる。また、細胞膜サンプルから、膜タンパク質の抽出を、可能とする。さらに、アミノ酸配列を有する新規膜タンパク質可溶化剤であり、アミノ酸配列の選択により、多様な構造となり、特定の膜タンパク質を可溶化する。さらに、膜タンパク質を変性させずに溶解させる。一般式(3)における炭化水素基は直鎖のC12の飽和炭化水素基である。

【0032】
膜タンパク質可溶化剤における一般式(3)の化合物の合成は、アミノ酸配列への修飾が可能なアルキル鎖誘導体の合成、アルキル鎖誘導体を用いたアルキル鎖修飾Fmocシステイン誘導体の合成、固相合成法によるアミノ酸配列の合成、からなる。固相合成法によるアミノ酸配列の合成において、Rink Amide AM Resin(Merck社)を用いたFmoc固相合成法により、一般式(3)を得る。

【0033】
アミノ酸配列への修飾が可能なアルキル鎖誘導体の合成は、以下のように行った。10mmolのアルキルアミン(和光純薬)を30mLの乾燥塩化メチレンと0.1mLのピリジンの混合溶媒に溶かし、氷浴で冷却しながら10mmolのブロモアセチルブロミド(和光純薬)を10mLの乾燥ジクロロメタンに溶解したものを、15分かけて滴下した。その後、室温で2時間ほど撹拌した。反応終了後、反応溶液を1M HCl水溶液で洗浄し、未反応のアルキルアミンを除いた後に、有機相を無水硫酸マグネシウムで乾燥し、溶媒を留去した。得られた粗生成物を、シリカゲルクロマトグラフィー(溶離液:ジクロロメタン/メタノール=20/1-10/1)にかけることにより、目的とするブロモアセチル基がアミド結合を介して修飾されたアルキルアミン誘導体を得た。

【0034】
ドデシルアミン誘導体を側鎖に持ちFmoc基をα-アミノ基の保護基に持つシステイン誘導体の合成は、以下のように行った。窒素気流下、21.9mmolのブロモアセチル基がアミド結合を介して修飾されたドデシルアミン誘導体、14.6mmolのFmoc-Cys-OHを250mLのメタノールに溶かし、トリスヒドロキシメチルアミノメタン36.5mmolを加えた後に、そのまま室温で2時間撹拌を行った。溶媒を減圧留去後、得られた粗生成物をシリカゲルクロマトグラフィー(溶離液:ジクロロメタン/メタノール=10/1-5/1)にかけることにより、目的とするドデシルアミン誘導体を側鎖に持ち、さらにFmoc基をα-アミノ基の保護基に持つシステイン誘導体を得た。

【0035】
最後に、固相合成法によるアミノ酸配列の合成は以下のように行った。ドデシルアミン誘導体を側鎖に持ち、さらにFmoc基をα-アミノ基の保護基に持つシステイン誘導体、Fmoc基をα-アミノ基の保護基に持ち、側鎖カルボキシル基にも保護基を持つリジン酸誘導体(渡辺化学)、Fmoc基をα-アミノ基の保護基に持つアスパラギン誘導体(渡辺化学)、Fmoc基をα-アミノ基の保護基に持つプロリン誘導体(渡辺化学)、Fmoc基をα-アミノ基の保護基に持つグリシン誘導体(渡辺化学)を用い、通常のFmoc固相合成法に従い、固相合成担体リンクアミドAMレジン(Novabiochem)上にて順次縮合反応と脱保護反応を繰り返して行った。トリフルオロ酢酸を含む脱樹脂試薬により合成されたアミノ酸配列を切り出した後に、各種クロマトグラフィー操作にて精製を行うことにより、目的とするアミノ酸配列を得た。

【0036】
(第4実施形態)
一般式(3)の化合物を含む膜タンパク質可溶化剤を用いてThermosynecoccus vulcanus由来の膜タンパク質、光化学系I(PSI)三量体を可溶化させる方法の一例を示す。PSI3量体の溶液(40mM HEPES-NaOH(pH 7.8)、100mM NaCl、15mM CaCl2、15mM MgCl2、0.1%(w/v)β-ドデシルD-マルトピラノシド(β-DDM))に、最終濃度17%(w/v)になるようにPEG1450(シグマ・アルドリッチ社)を添加し、PSI三量体を一旦沈殿化させた。その後、超遠心分離(104000Xg、30分)により上清と分離し、得られた沈殿を、新たなバッファー溶液(40mM HEPES-NaOH(pH 7.8)、100mM NaCl、15mM CaCl、15mM MgCl、0.1%(w/v) β-ドデシルD-マルトピラノシド(β-DDM))により洗浄することにより、大部分のβ-DDMを除いた。その後、得られたPSI三量体の沈殿物に、0.1%(w/v) の一般式(3)の化合物を含むバッファー溶液(40mM HEPES-NaOH(pH 7.8)、100mM NaCl、15mM CaCl、15mM MgCl)に加えて0℃で30分静置することにより、それぞれ再可溶化させた。この可溶化されたPSI三量体溶液の吸収スペクトル測定、78Kにおける蛍光スペクトル測定から、PSI三量体の変成度を評価したところ、全く変成が見られなかった。

【0037】
光照射に伴う酸素分解の初速度によりPSI三量体の活性評価を行った。クラーク型酸素電極(Hansatech社)を用いて、PSI三量体溶液中の酸素濃度の時間変化を評価した。光照射は、550Wのハロゲン・ランプから波長フィルタ(R-62、保谷社製)、熱カットフィルタ(HA-50、保谷社製)、及び12cmの水フィルタを介して行った。16nMのPSI3量体溶液(40mM HEPES-NaOH(pH 7.8)、100mM NaCl、15mM CaCl、15mM MgCl、0.4M ショ糖、0.1%(w/v)の一般式(3)の化合物)に電子供与体として2mM アスコルビン酸ナトリウム、電子移動メディエータとして0.5mM ジクロロインドフェノール(DCIP)、電子受容体として0.5mM メチルビオロゲンを加え、この溶液に対して25℃で光照射を行った。得られた酸素濃度減少の時間変化から分解初速度を作図により求めると、膜タンパク質PSI三量体の活性は保たれていた。

【0038】
(第5実施形態)
一般式(3)の化合物を含む膜タンパク質可溶化剤を用いてThermosynecoccus vulcanusのチラコイド膜からクロロフィル色素を含む膜タンパク質などを抽出可溶化させる方法の一例を示す。シアノバクテリアThermosynecoccus vulcanusから得られたチラコイド膜(1mgChla/ml)懸濁液(20mM HEPES-NaOH(pH 7.2)、20mM MgCl、25%(w/v)グリセロール)100μLに、洗浄用バッファー(20mM HEPES-NaOH(pH 7.2)、10mM MgCl)を添加し、室温で30秒ほど震盪した。その後、遠心分離により、チラコイド膜を沈殿化させて上清の溶液を取り除くことにより、チラコイド膜の膜外ドメインに結合しているフォコビリソーム由来の表在性タンパク質の除去を行った。この表在性タンパク質成分の除去作業は、さらに繰り返し2回行った。その後、洗浄後のチラコイド膜に対して、1%(w/v) の一般式(3)の化合物を含むバッファー溶液(20mM HEPES-NaOH(pH 7.2)、20mM MgCl、25%(w/v)グリセロール)に加え、氷上で35分間穏やかに撹拌する事により、チラコイド膜中に存在する膜タンパク質の抽出を行った。抽出成分と残渣成分の分離は、4℃で45分遠心分離することにより行った。抽出されるクロロフィル色素を結合した膜タンパク質の総量を、もともとチラコイド膜に存在したクロロフィル色素を結合した膜タンパク質の量と比較し、抽出効率を算出したところ、35%程度であった。前項で記述した酸素電極を用いたPSI三量体の活性評価により、一般式(3)の化合物を含むバッファー溶液(20mM HEPES-NaOH(pH 7.2)、20mM MgCl、25%(w/v)グリセロール)で抽出されたPSI三量体の活性評価を行ったところ、全く変性による活性の低下は見られなかった。

【0039】
以上本発明の実施例について説明したが、本発明は前記実施例に何等限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々なる態様で実施し得ることはもちろんである。