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明細書 :バナジウム酸化物を含有する可逆性感湿材料、及びその製造方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第5099444号 (P5099444)
公開番号 特開2010-025650 (P2010-025650A)
登録日 平成24年10月5日(2012.10.5)
発行日 平成24年12月19日(2012.12.19)
公開日 平成22年2月4日(2010.2.4)
発明の名称または考案の名称 バナジウム酸化物を含有する可逆性感湿材料、及びその製造方法
国際特許分類 G01N  31/22        (2006.01)
G01N  31/00        (2006.01)
FI G01N 31/22 122
G01N 31/00 B
請求項の数または発明の数 3
全頁数 8
出願番号 特願2008-185490 (P2008-185490)
出願日 平成20年7月17日(2008.7.17)
審査請求日 平成23年7月5日(2011.7.5)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】397022885
【氏名又は名称】財団法人若狭湾エネルギー研究センター
発明者または考案者 【氏名】西尾 繁
個別代理人の代理人 【識別番号】100076484、【弁理士】、【氏名又は名称】戸川 公二
審査官 【審査官】吉田 将志
参考文献・文献 特表2006-520895(JP,A)
特表2004-522950(JP,A)
特表2002-543383(JP,A)
特開2002-339188(JP,A)
特開2004-130175(JP,A)
特表2003-506681(JP,A)
特開平05-293379(JP,A)
調査した分野 G01N 31/22
G01N 31/00
CA(STN)
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamII)
特許請求の範囲 【請求項1】
バナジウム酸化物を多孔質担体に担持して成る可逆性感湿材料において、前記多孔質担体として非晶質シリカを使用すると共に、非晶質シリカの平均細孔径を6nm以下としたことを特徴とするバナジウム酸化物を含有する可逆性感湿材料。
【請求項2】
平均細孔径が6nm以下の非晶質シリカをバナジウムシュウ酸錯体水溶液に含浸し、これを200℃以上に加熱して作製することを特徴とするバナジウム酸化物を含有する可逆性感湿材料の製造方法。
【請求項3】
非晶質シリカに対するバナジウムの表面密度が0.5atom/nm2以下となるようにバナジウムシュウ酸錯体水溶液の濃度を調節することを特徴とする請求項2記載のバナジウム酸化物を含有する可逆性感湿材料の製造方法。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、可逆性感湿材料の改良、詳しくは、明瞭な変色による湿度指示機能に優れ、使用時における発色成分の揮散も防止でき、しかも、繰り返し使用しても劣化が生じ難いバナジウム酸化物を含有する可逆性感湿材料及びその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
周知のとおり、従来市販の乾燥剤には、湿度に応じて可逆的に色彩が変化する発色体を湿度インジケータ物質として多孔質体に含有させた感湿材料を混入してあることが多い。
【0003】
これは、シリカゲルやゼオライトなどの吸着型乾燥剤には自ら吸湿容量に上限があり、その上限量に達してしまうと必要な吸湿能力が得られないため、使用しようとする乾燥剤の乾燥能力の有無を視認可能にしておくことが求められるためである。
【0004】
そして、このような湿度インジケータ物質としては、従来、シリカゲル等に乾燥状態で青、吸湿状態で赤紫を呈する発色体の塩化コバルトや、乾燥状態でオレンジ、吸湿状態で乳白色を呈する発色体の鉄みょうばんが提供されており、また近年では、発色体として有機色素を用いた感湿材料も販売されている(例えば、特許文献1)。
【0005】
しかしながら、上記従来の感湿材料は、湿度インジケータ物質である金属ハロゲン化物や有機物が熱で分解され易く、また、担体とも強く化学結合していなかったため、使用中に発色体の成分が揮散してしまう不都合があった。
【0006】
そして、このような発色体成分の揮散は、塩化コバルト担持シリカゲルが食品用乾燥剤に長年使われていることからも分かるように、一般の食料品や日用品では毒性が問題とならないレベルにまで実用上抑えられてはいるが、それでも半導体産業といった原子レベルの電子部品や化学製品を扱う超精密産業では、雰囲気に極微量の不純物が混じっただけで製品の品質に致命的な障害をもたらす虞れがあるため、到底見過ごすことはできない。
【0007】
ところで、従来においては、1970年代に特異な感湿性が発見されたバナジウム酸化物を湿度インジケータ物質として使用した感湿材料も実現されるようになり、このような陰性元素を含まない物質を使用すれば上記発色体成分の揮散の問題については解消される(例えば、特許文献2)。
【0008】
しかし、従来のバナジウム酸化物を利用した感湿材料は、図3に示すように吸湿状態で担体中に存在するV23・nH2Oを加熱脱水させたときに、可逆的な反応が十分に行われ難い構造であったことに加え、通常の可逆的反応とは別に結晶V25への不可逆的な構造変化が同時に起こっていたため、吸湿と加熱脱水を3、4回繰り返しただけで簡単に劣化してしまい、乾燥剤に混ぜると性能を損なってしまう欠点があった。

【特許文献1】特開2007-192614号公報(第2-5頁)
【特許文献2】特表2002-543383号公報(第5頁、段落番号[0007])
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、上記の如き問題に鑑みて為されたものであり、その目的とするところは、明瞭な変色による視覚的な湿度指示機能に優れ、かつ、使用時において発色成分の揮散もなく、更には、吸湿と加熱脱水を繰り返しても再生不良が起こり難いバナジウム酸化物を含有する可逆性感湿材料およびその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者が上記課題を解決するために採用した手段を添付図面を参照して説明すれば次のとおりである。
【0011】
即ち、本発明は、バナジウム酸化物を多孔質担体に担持させて成る可逆性感湿材料において、前記多孔質担体として非晶質シリカを使用すると共に、非晶質シリカの平均細孔径を6nm以下とした点に特徴がある。
【0012】
また、本発明においては、上記可逆性感湿材料を、平均細孔径が6nm以下の非晶質シリカをバナジウムシュウ酸錯体水溶液に含浸し、これを200℃以上に加熱分解して作製するという技術的手段を採用することができる。
【0013】
また、本発明においては、上記課題を解決するために、必要に応じて上記手段に加え、非晶質シリカに対するバナジウムの表面密度が0.5atom/nm2以下となるようにバナジウムシュウ酸錯体水溶液の濃度を調節するという技術的手段を採用することができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明においては、発色体であるバナジウム酸化物の担体として、平均細孔径が6nm以下の非晶質シリカを使用したことにより、平均細孔径が6nmより大きい非晶質シリカを使用した場合と比較して感湿材料の劣化速度が格段に改善された。
【0015】
これは、感湿材料の加熱脱水時に起こるバナジウム酸化物の可逆的な反応が微細孔により促進されると共に、微細孔による立体障害効果が働いて結晶V25の発生が抑制されるためである。
【0016】
この原理を図4に基いて更に詳細に説明すると、まず乾燥状態ではバナジウム酸化物は無色のバナジン酸(monovanadate)としてシリカと化学的に結合しており、これに水分を作用させるとバナジン酸は一旦シリカから離れ、バナジウム同士が結びついた有色のV23・nH2Oなる高分子を生成する。
【0017】
そして、この生成されたV23・nH2Oの大部分は加熱脱水時にバナジン酸に戻ってシリカと再結合する一方で、一部の結晶V25への不可逆的な変化は、分子構造の3次元的な構造変化に伴う分子の動きが細孔径6nm以下の微細孔により制限されること(立体障害効果)で極度に抑制される。
【0018】
しかも、上記微細孔内では加熱脱水時にV23・nH2Oから直接変化したバナジン酸(polyvanadate)とこれを囲む周壁との距離が全体として接近することになるので、前記V23・nH2Oは分散状態(monovanadate)となってシリカのOH基と再結合し易くなり、バナジウム酸化物の可逆的反応が促進する効果も得られる。
【0019】
また本発明で用いたバナジウム酸化物は、湿度指示機能の点でも、乾燥状態の無色から淡黄色、橙色、赤色、そして吸水飽和状態の濃赤色へと吸水量に合わせて色が明瞭に変化するため、乾燥剤の残りの吸湿能力を段階的に把握する機能が求められる湿度インジケータ物質として大変都合が良い。
【0020】
更にまた、本発明の感湿材料は、発色体であるバナジウム酸化物が酸素以外の塩素や硫黄などの陰性元素を含んでいないことに加え、そもそも揮発成分自体を全く含んでいないため、使用中に汚染ガスが発生することはなく雰囲気に影響され易い電子化学部品等に対しても品質の問題を気にすることなく使用することができる。
【0021】
したがって、本発明により、湿度指示機能に優れることは勿論、超精密産業の分野での使用にも適し、乾燥剤の寿命を縮めることなく加熱脱水により繰り返し使用できる可逆性感湿材料を提供できることから、本発明の実用的利用価値は頗る高い。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
本発明を実施するための最良の形態を具体的に図示した図面に基づいて更に詳細に説明すると、次のとおりである。
【0023】
『実施例1』
この実施例1においては、平均細孔径が2.5nmの非晶質シリカを担体として使用すると共に、この非晶質シリカを、バナジウムシュウ酸錯体(H22614)を含む水溶液に含浸し、これを200℃まで加熱して水分(H2O)及びシュウ酸(C242)の成分を熱で分解して蒸発させることにより、非晶質シリカにバナジン酸(monovanadate)を担持させて感湿材料を作製した。
【0024】
なお上記の際、バナジウムシュウ酸錯体水溶液の濃度については、作製される感湿材料のバナジウム表面密度が大きくなる高濃度に設定して吸湿時の発色を明瞭とすることが好ましいが、バナジウム表面密度を0.5atom/nm2よりも大きくし過ぎると加熱分解後にシリカの細孔外側にもバナジウム酸化物が析出してしまうため、バナジウム表面密度が約0.5atom/nm2となる640g/Lに調節した。
【0025】
ちなみに、上記「バナジウム表面密度」は、バナジウム酸化物を担持させた非晶質シリカにおけるバナジウムおよびシリカの原子数比或いは重量比(誘導結合プラズマ発光分光法で実測)と、実際に使用した非晶質シリカの比表面積(カタログ値)とを元に、シリカ担体を完全な平面としてこの上にバナジウムが単原子層として担持されている仮定で間接的に求めている。
【0026】
そして、この作製した感湿材料について室温での吸湿と300℃での加熱脱水を100回繰り返す実験を行ったところ、処理を100回繰り返した後でも感湿材料の含水率による変色反応は殆ど変わらず感湿性能の劣化が抑制されていることを確認できた。
【0027】
更に上記実験に際して、実験を行う前と吸湿と加熱脱水処理を100サイクル行った後の状態の感湿材料の拡散反射スペクトルを測定して両者を比較したところ、図1に示すように吸収端に殆ど変化は見られなかったことから、結晶V25の生成が抑制されていたことが分かった。
【0028】
『比較例1』
続いて、上記実施例1と同じく平均細孔径2.5nmの非晶質シリカを使用して作製した感湿材料(サンプル1)と、平均細孔径6nm及び平均細孔径10nmの非晶質シリカを使用して作製した感湿材料(サンプル2及びサンプル3)について室温での吸湿と400℃での加熱脱水を3回繰り返して、吸湿と加熱脱水処理の前後の拡散反射スペクトルを測定してデータを比較した。
【0029】
その結果、図2に示すように平均細孔径2.5nm、6nmの非晶質シリカを使用した感湿材料(サンプル1及びサンプル2)は、3サイクルの吸湿と加熱脱水を通して吸収端に殆ど変化が見られなかったが、平均細孔径10nmの非晶質シリカを使用した感湿材料(サンプル3)は明らかに乾燥状態の吸収端が長波長側にシフトしており、これは劣化の原因となる結晶V25が生成されていることを示している。
【0030】
このように上記の比較実験によって、本発明品が、細孔径が大きい多孔質担体を使用した従来の感湿材料に比べて明らかに劣化速度が改善されていること、及び本発明の効果を得るためには平均細孔径が6nm以下の非晶質シリカを使用する必要があることが確認された。
【0031】
なお上記実験においては、平均細孔径6nm及び平均細孔径10nmの非晶質シリカを使用して作製した感湿材料(サンプル2及びサンプル3)についても、バナジウム表面密度が約0.5atom/nm2となるようにそれぞれバナジウムシュウ酸錯体水溶液の濃度を250g/Lと64g/Lに調整している。
【0032】
本発明は、概ね上記のように構成されるが、本発明は図示の実施形態に限定されるものでは決してなく、「特許請求の範囲」の記載内において種々の変更が可能であって、例えば、本発明の感湿材料は、バナジウムシュウ酸錯体の水溶液を用いる製造方法によらなくとも、先行技術文献(特表2002-543383号)に記載されているような他のバナジウム化合物(例えば、VOCl3や有機金属)を用いて製造されたものであってもよく、何れのものも本発明の技術的範囲に属する。
【産業上の利用可能性】
【0033】
近年では、従来において湿度インジケータの材料として主流だった塩化コバルトが、健康に悪影響を及ぼす有害物質として指定されたことにより、塩化コバルトを用いない新たな湿度インジケータ物質の利用が活発化しており、その中でも超精密産業においては、乾燥技術が電子部品の品質に大きく影響することから使用する湿度インジケータ物質の化学的性質に特に気を配る必要がある。
【0034】
そのような中で、本発明のバナジウム酸化物を含有する可逆性感湿材料は、塩化コバルトのように人体や電子部品に致命的な悪影響を及ぼすことがなく、感湿機能の劣化も抑制されて乾燥剤に実用上問題なく使用することができる有用な技術であるため、市場における需要は大きく、その産業上の利用価値は非常に高い。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】本発明の実施例1における拡散反射スペクトルの測定結果を表わす実験データである。
【図2】本発明の比較例1における拡散反射スペクトルの測定結果を表わす実験データである。
【図3】従来技術における感湿材料の反応状態を表わす状態説明図である。
【図4】本発明における感湿材料の反応状態を表わす状態説明図である。
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3