TOP > 国内特許検索 > ビーム量測定機能に優れたイオンビーム分析装置 > 明細書

明細書 :ビーム量測定機能に優れたイオンビーム分析装置

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第5489032号 (P5489032)
公開番号 特開2010-203805 (P2010-203805A)
登録日 平成26年3月7日(2014.3.7)
発行日 平成26年5月14日(2014.5.14)
公開日 平成22年9月16日(2010.9.16)
発明の名称または考案の名称 ビーム量測定機能に優れたイオンビーム分析装置
国際特許分類 G01N  23/225       (2006.01)
FI G01N 23/225
請求項の数または発明の数 5
全頁数 14
出願番号 特願2009-047165 (P2009-047165)
出願日 平成21年2月27日(2009.2.27)
審査請求日 平成24年1月11日(2012.1.11)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】397022885
【氏名又は名称】公益財団法人若狭湾エネルギー研究センター
発明者または考案者 【氏名】安田 啓介
個別代理人の代理人 【識別番号】100076484、【弁理士】、【氏名又は名称】戸川 公二
審査官 【審査官】越柴 洋哉
参考文献・文献 特開平08-043330(JP,A)
特開平08-075684(JP,A)
特開2001-221754(JP,A)
特開2001-208857(JP,A)
特開2005-300454(JP,A)
特開2008-249627(JP,A)
調査した分野 G01N 23/00-23/227
H01J 37/00-37/295
G21K 1/00- 7/00
特許請求の範囲 【請求項1】
イオンビーム(B)を出射可能なビーム出射装置(1)と;前記出射されたイオンビーム(B)を真空雰囲気下で試料(S)直近まで導入するビーム導入部(2)と;ビーム透過性およびX線透過性を有する薄膜(31)とそれを取り囲むX線遮断性を有する枠部(32)とから成り、前記ビーム導入部(2)の終端部に配設されて前記薄膜(31)を通してイオンビーム(B)を大気雰囲気下に取り出せるビーム取出窓(3)と;大気雰囲気側に設けられて、前記ビーム取出窓(3)から取り出したイオンビーム(B)の照射位置に試料(S)を固定するための試料固定部(4)と;前記ビーム導入部(2)の終端部に設けられたX線測定室(22)内に検知部(51)が配置され、イオンビーム(B)が照射されたときに試料(S)から放出されるX線を検出するX線検出器(5)と;同じく前記ビーム導入部(2)のX線測定室(22)内に検知部(71)が配置され、イオンビーム(B)がビーム取出窓(3)を通過するときに薄膜(31)から放出されるX線を検出してその強度を測定できるX線強度測定器(7)とを含んで構成され、
前記ビーム出射装置(1)とビーム取出窓(3)とを、イオンビーム(B)が薄膜(31)の枠近傍位置を通過するように配設すると共に、前記X線強度測定器(7)の検知部(71)を、前記薄膜(31)のビーム通過点近傍の枠部(32)外側に配置することによって、イオンビーム(B)の照射により試料(S)から放出されるX線を前記枠部(32)で遮断しつつ薄膜(31)からのX線だけを検出して、そのX線強度からビーム量を測定可能としたことを特徴とするビーム量測定機能に優れたイオンビーム分析装置。
【請求項2】
イオンビーム(B)を出射可能なビーム出射装置(1)と;前記出射されたイオンビーム(B)を真空雰囲気下で試料(S)直近まで導入するビーム導入部(2)と;ビーム透過性及びX線透過性を有する薄膜(31)とそれを取り囲むX線遮断性を有する枠部(32)とから成り、前記ビーム導入部(2)の終端部に配設されて前記薄膜(31)を通してイオンビーム(B)を大気雰囲気下に取り出せるビーム取出窓(3)と;大気雰囲気側に設けられて、前記ビーム取出窓(3)から取り出したイオンビーム(B)の照射位置に試料(S)を固定するための試料固定部(4)と;同じく大気雰囲気側に検知部(61)が配置され、イオンビーム(B)が照射されたときに試料(S)から放出されるγ線を検出するγ線検出器(6)と;前記ビーム導入部(2)の終端部に設けられたX線測定室(22)内に検知部(71)が配置され、イオンビーム(B)がビーム取出窓(3)を通過するときに薄膜(31)から放出されるX線を検出してその強度を測定できるX線強度測定器(7)とを含んで構成され、
前記ビーム出射装置(1)とビーム取出窓(3)とを、イオンビーム(B)が薄膜(31)の枠近傍位置を通過するように配設すると共に、前記X線強度測定器(7)の検知部(71)を、前記薄膜(31)のビーム通過点近傍の枠部(32)外側に配置することによって、イオンビーム(B)の照射により試料(S)から放出されるX線を前記枠部(32)で遮断しつつ薄膜(31)からのX線だけを検出して、そのX線強度からビーム量を測定可能としたことを特徴とするビーム量測定機能に優れたイオンビーム分析装置。
【請求項3】
イオンビーム(B)を出射可能なビーム出射装置(1)と;前記出射されたイオンビーム(B)を真空雰囲気下で試料(S)直近まで導入するビーム導入部(2)と;ビーム透過性およびX線透過性を有する薄膜(31)とそれを取り囲むX線遮断性を有する枠部(32)とから成り、前記ビーム導入部(2)の終端部に配設されて前記薄膜(31)を通してイオンビーム(B)を大気雰囲気下に取り出せるビーム取出窓(3)と;大気雰囲気側に設けられて、前記ビーム取出窓(3)から取り出したイオンビーム(B)の照射位置に試料(S)を固定するための試料固定部(4)と;前記ビーム導入部(2)の終端部に設けられたX線測定室(22)内に検知部(51)が配置され、イオンビーム(B)が照射されたときに試料(S)から放出されるX線を検出するX線検出器(5)と;大気雰囲気側に検知部(61)が配置され、イオンビーム(B)が照射されたときに試料(S)から放出されるγ線を検出するγ線検出器(6)と;前記ビーム導入部(2)のX線測定室(22)内に検知部(71)が配置され、イオンビーム(B)がビーム取出窓(3)を通過するときに薄膜(31)から放出されるX線を検出してその強度を測定できるX線強度測定器(7)とを含んで構成され、
前記ビーム出射装置(1)とビーム取出窓(3)とを、イオンビーム(B)が薄膜(31)の枠近傍位置を通過するように配設すると共に、前記X線強度測定器(7)の検知部(71)を、前記薄膜(31)のビーム通過点近傍の枠部(32)外側に配置することによって、イオンビーム(B)の照射により試料(S)から放出されるX線を前記枠部(32)で遮断しつつ薄膜(31)からのX線だけを検出して、そのX線強度からビーム量を測定可能としたことを特徴とするビーム量測定機能に優れたイオンビーム分析装置。
【請求項4】
X線強度測定器(7)において出力モニタ(72)をオンライン接続することにより分析中のビーム量の変動を即時的に把握できるようにしたことを特徴とする請求項1~3の何れか一つに記載のビーム量調整機能に優れたイオンビーム分析装置。
【請求項5】
試料固定部(4)が、スライド機構(41a)を備えた基台(41)と、この基台(41)に取着されて前記スライド機構(41a)により上下左右に移動可能なブラケット(42)と、このブラケット(42)に装着される複数の試料(S)(S)…を取付け可能な試料ホルダ(43)とから構成され、前記ブラケット(42)をスライド機構(41a)により所定位置に移動させることにより、前記試料ホルダ(43)に取り付けた複数の試料(S)(S)…の中、選択される一の試料(S)をイオンビーム(B)の照射位置に配置可能としたことを特徴とする請求項1~4の何れか一つに記載のビーム量調整機能に優れたイオンビーム分析装置。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、イオンビーム分析装置の改良、詳しくは、大気雰囲気下における試料分析において高精度な定量分析を行うことができ、かつ、分析作業を効率化することも可能で、しかも、構造も非常に簡単で製造面でも有利なビーム量測定機能に優れたイオンビーム分析装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般的に、大気雰囲気下で実施されるマイクロビームによるイオンビーム分析法としては、粒子励起X線放出(PIXE)法や核反応分析(NRA)法が知られているが、これらのイオンビーム分析において元素濃度の定量的な測定を精度良く行うためには、入射ビームのビーム量を正確に知る必要がある。
【0003】
そこで、従来においては、試料台に電流計を接続してビーム電流を測定する方法が広く用いられているが、大気雰囲気下で試料の分析を行う場合には、ビーム電流が大気中原子とビームとの相互作用によって発生する二次電子の影響を受けるため、精度の良い測定が困難である(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
一方、イオンビーム分析においてビーム量を測定する方法としては、イオンビームが導入される真空雰囲気側と試料が配置された大気雰囲気側とを隔てているビーム取出窓を利用して、このビーム取出窓の薄膜をイオンビームが通過した際に発生する特性X線を検出し、そのX線強度からビーム量を求める方法も知られている。
【0005】
しかしながら、図5に示すように単にX線強度測定器をビーム取出窓の手前に配置するだけでは、ビーム取出窓からのX線と一緒に試料からのX線も同時に入射することになるため、試料にビーム取出窓の薄膜と同じ元素、或いはビーム取出窓の薄膜と特性X線のエネルギーが近い元素が含まれている場合に、薄膜からのX線の強度のみを上手く測定することが困難で精確なビーム量を把握できないという問題が生じる。
【0006】
具体的な例として、ビーム取出窓に窒化シリコン薄膜を用いて、フロルアパタイトの試料分析を行ったときのX線のエネルギースペクトルを図6に示すと、図中のグラフでは、特性X線のチャンネル(エネルギーの指標)がSi(薄膜組成元素)に比較的近いP(試料組成元素)のカウント数(X線強度の指標)のピークの裾が、Siのチャンネルに被ってしまっているため、純粋なSiのカウント数を求めることが難しい状態となっている。
【0007】
また、上記Siのカウント数を求めるためには、フィッティングによるデータ処理を伴ったスペクトル解析を行う必要があるが、そのデータ処理の精度がビーム量の見積もりに大きな影響を与えるため、信頼性の点で不安が残る。
【0008】
他方また、X線強度の測定を行ってビーム量を求める方法としては、ビーム取出窓の薄膜と特性X線のエネルギーが大きく異なるビーム量測定用の試料を使用することも考えられるが、高精度の分析を行うには少なくとも一分に一回ビーム量を測定する必要があり、それを実現するためにはビームの走査範囲内に前記試料を配置して交互にビーム照射を行う必要があるものの、その方法では装置のビーム走査系やデータ収集系が複雑化してしまうため製造面で都合が悪い。
【0009】
しかも、上記ビーム走査範囲は通常一辺がmm単位の極めて狭い領域であるため、この走査範囲に収まる大きさに試料を砕いて、その微小試料を二つ並べて試料ホルダに取り付ける作業は非常に面倒で時間もかかり、特に複数の試料を分析する際には分析作業が非効率化する大きな要因となる。
【0010】
また、上記のビーム量測定方法では、分析中におけるビーム量の変化を一部しか測定していないため、もし分析中にビーム量が変化していた場合には精度の高い分析結果を得られないという欠点もある。
【先行技術文献】
【0011】

【特許文献1】特開平6-52818号公報(第2-7頁、第1図)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明は、上記の如き問題に鑑みて為されたものであり、その目的とするところは、大気雰囲気下における試料分析において試料の含有元素に左右されず精確な定量分析を行うことができ、かつ、対象試料が複数ある場合でも迅速な分析作業が可能で、しかも、構造も簡単で製造面でも有利なビーム量測定機能に優れたイオンビーム分析装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明者が上記課題を解決するために採用した手段を添付図面を参照して説明すれば次のとおりである。
【0014】
即ち、本発明は、イオンビームBを出射可能なビーム出射装置1と;前記出射されたイオンビームBを真空雰囲気下で試料S直近まで導入するビーム導入部2と;ビーム透過性及びX線透過性を有する薄膜31とそれを取り囲むX線遮断性を有する枠部32とから成り、前記ビーム導入部2の終端部に配設されて前記薄膜31を通してイオンビームBを大気雰囲気下に取り出せるビーム取出窓3と;大気雰囲気側に設けられて、前記ビーム取出窓3から取り出したイオンビームBの照射位置に試料Sを固定するための試料固定部4と;前記ビーム導入部2の終端部に設けられたX線測定室22内に検知部51が配置され、イオンビームBが照射されたときに試料Sから放出されるX線を検出するX線検出器5と;大気雰囲気側に検知部61が配置され、イオンビームBが照射されたときに試料Sから放出されるγ線を検出するγ線検出器6と;前記ビーム導入部2のX線測定室22内に検知部71が配置され、イオンビームBがビーム取出窓3を通過するときに薄膜31から放出されるX線を検出してその強度を測定できるX線強度測定器7とを含んで構成し、
前記ビーム出射装置1とビーム取出窓3とを、イオンビームBが薄膜31の枠近傍位置を通過するように配設すると共に、前記X線強度測定器7の検知部71を、前記薄膜31のビーム通過点近傍の枠部32外側に配置することによって、イオンビームBの照射により試料Sから放出されるX線を前記枠部32で遮断しつつ薄膜31からのX線だけを検出して、そのX線強度からビーム量を測定可能とした点に特徴がある。
【0015】
また本発明においては、上記X線検出器5とγ線検出器の内、一方のみを使用する装置構成を採用することもできる。
【0016】
更に本発明では、X線強度測定器7において出力モニタ72をオンライン接続することにより分析中のビーム量の変動を即時的に把握できるようにするという技術的手段を採用することもできる。
【0017】
また本発明では、試料固定部4を、スライド機構41aを備えた基台41と、この基台41に取着されて前記スライド機構41aにより上下左右に移動可能なブラケット42と、このブラケット42に装着される複数の試料S・S…を取付け可能な試料ホルダ43とから構成し、前記ブラケット42をスライド機構41aで所定位置に移動させることにより、前記試料ホルダ43に取り付けた複数の試料S・S…の中、選択される一の試料SをイオンビームBの照射位置に配置可能とするという技術的手段を採用することもできる。
【発明の効果】
【0018】
本発明では、イオンビーム分析装置におけるビーム導入部にX線強度測定器の検知部を備えると共に、ビーム取出窓のビーム通過点を枠部側に寄せ、更にX線強度測定器の検知部を前記ビーム通過点近傍の枠部外側に配置したことにより、イオンビームを試料に照射した際、試料の枠部近傍の照射位置から放出されたX線を前記ビーム取出窓の枠部で遮って薄膜からのX線のみを検出することが可能となるため、薄膜元素に対応したチャンネルを選択すればX線強度を簡単に測定でき、試料の含有元素に左右されることなくビーム量を高精度に求めることができる。
【0019】
しかも、上記X線強度測定器による測定は、X線(γ線)検出器による試料分析と同時平行して行えることから、分析中のビーム強度が変化した場合でもビーム量を正確に測定することができ、その得られたビーム量の測定値を指標として高精度の分析結果を得ることができる。
【0020】
また、上記X線強度測定では、分析対象の試料のみを準備すればよく、試料を細かく砕く必要も特にないため、試料ホルダに対する取付け作業も簡単に行うことができ、複数の試料を分析する場合でも迅速に分析を行える。
【0021】
そしてまた、装置構造的にも複雑なビーム走査系やデータ収集系が不要であり、簡単な構造で設計することができることから、製造や修理の容易化も図れる。
【0022】
したがって、本発明により、定量分析における分析機能を向上できるだけでなく、作業効率面及び製造面でも非常に好都合なイオンビーム分析装置を提供できることから、本発明の実用的利用価値は頗る高い。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明の実施例1におけるイオンビーム分析装置を表わした全体概略図である。
【図2】本発明の実施例1におけるイオンビーム照射部の構造を表わす拡大説明図である。
【図3】本発明の実施例1における試料の位置移動機構を表す状態説明図である。
【図4】本発明の実施例1の実験例でX線強度測定器により測定されたエネルギースペクトルを表わすグラフである。
【図5】従来のイオンビーム分析装置の構造および使用状態を表わす状態説明図である。
【図6】従来のイオンビーム分析装置においてX線強度測定器により測定されたエネルギースペクトルを表わすグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0024】
『実施例1』
本発明の実施例1は、図1から図4に示される。同図において、符号1で指示するものは、ビーム出射装置であり、符号2で指示するものは、ビーム導入部である。符号3で指示するものは、ビーム取出窓であり、符号4で指示するものは、試料固定部である。符号5で指示するものは、X線検出器であり、符号6で指示するものは、γ線検出器である。符号7で指示するものは、X線強度測定器である。

【0025】
次に、実施例1の構成を以下から説明する。まず実施例1では、イオンビームBを出射可能なビーム出射装置1である粒子加速器に対して管状部材21の一端を連結すると共に、この管状部材21の他端を、チェンバーCの外側部分に設けた隔室に接続して内部を気密状態とし、更にこれら連通状態となった管状部材21と隔室の内部を真空状態とすることにより、当該内部をイオンビームBが進行して試料S直近までイオンビームBを導入できるビーム導入部2を設けている(図1参照)。

【0026】
なお、本発明に係るイオンビーム分析装置は、マイクロビームを利用した元素分析に使用するため、イオンビームBを最小ビーム径、数μm(本実施例では、3~4μm)程度にまで収束できる粒子加速器を採用する必要がある。

【0027】
また、上記チェンバーCは、試料Sを配置する部屋を有する筐体であって、ビーム導入部2の管状部材21を接続した端部の反対側の端部を開口させているため、隔室以外の筐体内部は大気雰囲気の状態となっている。

【0028】
そして、上記チェンバーCの隔室内においてイオンビームBの進路とぶつかる隔壁部には、窒化シリコン薄膜31とそれを取り囲むシリカ(SiO2)製の枠部32とから成るビーム取出窓3を設けており、この窒化シリコン薄膜31からイオンビームBを大気雰囲気側に取り出せるようにしている。

【0029】
ちなみに、上記ビーム取出窓3において、マイクロビームを大気雰囲気側に取り出すために使用される薄膜31の材料については、ビーム透過性及びX線透過性を有していることに加え、1)厚さが200nm以下の自立膜であること、2)イオンビーム照射による損傷が小さいこと、3)イオンビーム照射時に1~2keV程度のX線を発生すること等の条件が要求されるが、出願時点においてこれら全ての要件を満たすものは窒化シリコン薄膜しか知られていない。

【0030】
また、ビーム取出窓3の枠部32の材料に関しては、X線遮断性を有しており、かつ、イオンビームが照射された際に高エネルギーのX線を発生させず、陽子との核反応でγ線を放出することもない材料が好ましく、具体的には、上記シリカ以外にもシリコンやマグネシウムなどが使用できる。

【0031】
そして更に、上記チェンバーC内には、ビーム取出窓3から大気雰囲気側に取り出したイオンビームBを照射する所定位置に試料Sを固定できる試料固定部4を設けると共に、チェンバーCの隔室内にX線検出器5の検知部51を配置して、当該検知部51から前記試料固定部4の試料SにイオンビームBが照射された際に放出されるX線を検出可能としている。

【0032】
なお、試料固定部4は、試料Sとビーム取出窓3とが近接状態(本実施例では、0.8mm)となるように設ける必要があり、例えばその距離が1mm離れるだけでビーム径はおよそ4μmから10μmに広がってしまうため注意を要する。

【0033】
また実施例1では、上記X線検出器5に加え、チェンバーC内の大気雰囲気側にγ線検出器6を取り付けて、試料S近傍に検知部61も配置しているため、イオンビームBが照射されたときに試料Sから放出されるγ線の検出も可能である。

【0034】
ちなみに、X線検出器5はNaよりも重い元素の分析に適するのに対し、γ線検出器はNaよりも軽い元素の分析に適しているため、両方を使用することにより分析できる元素の種類は格段に増えるが、試料中に含まれる特定の元素についてのみ調べる場合には、一方の検出器のみを用いた構成であっても問題ない。

【0035】
また実施例1では、ビーム導入部2の終端部に位置するチェンバーCの隔室をX線測定室22として利用しているが、このX線測定室22の要件としては、イオンビームBの進路を妨害せずX線検出部5の検知部51を配置できるスペースを有していればよく、例えば、ビーム導入部2の管状部材21の径を終端部で広げて測定室22を形成することも可能である。

【0036】
また、上記試料固定部4の具体的な構成についても説明すると、チェンバーCの底部にスライド機構41aを備えた基台41を固定すると共に、この基台41のスライド機構41aにはブラケット42を取着して当該ブラケットを上下左右及び前後方向に移動できる状態とし、更に前記ブラケット42の端部に試料Sを取り付ける試料ホルダ43を装着して構成している。

【0037】
なお、上記試料固定部4のブラケット42に試料ホルダ43を装着する際には、着脱自在に取り付けたγ線検出器6を一旦チェンバーC内から取り外して試料ホルダ43を装着し、スライド機構41aによりブラケット42の位置調整を行った後、再度γ線検出器6をチェンバーC内に戻してセットアップを行う。

【0038】
一方、上記チェンバーCのX線測定室22内には、X線強度測定器7の検知部71も一緒に配置し、イオンビームBがビーム取出窓3の薄膜31を通過する際に放出されるX線を検出してその強度を測定できるようにしている。

【0039】
また実施例1では、上記ビーム出射装置1とビーム取出窓3について、薄膜31の枠近傍位置をイオンビームBが通過するように配設しており、X線強度測定器の検知部71に関しては、薄膜31の前記ビーム通過点近傍の枠部32外側に配置して構成している。


【0040】
そして、上記の構成により、図2に示すようにイオンビームBの照射により試料Sから放出されるX線を遮断しながら薄膜31からのX線だけをX線強度測定器7で検出することが可能となり、薄膜元素に対応した適当なチャンネルを選択すれば薄膜からのX線強度を簡単に測れるため、試料Sの含有元素の影響を受けずビーム量を高精度に求めることができる。

【0041】
しかも、分析中のビーム量の変化を把握できるためその測定値を指標として高精度な分析結果を得ることができ、特に実施例1では、X線強度測定器7に対して出力モニタ72をオンライン接続しているため、分析中のビーム量の変動を即時的に把握して粒子加速器の状態を判断し、分析結果に反映することも可能となる。

【0042】
なお、ビーム出射装置1のビーム量に関しては、試料分析前に粒子加速器の加速電圧を微調整することにより出射されるビーム量が最大で、かつ、変動が最小となるように予め調節しておくのが望ましい。

【0043】
また、分析用のX線検出器5に関しては、上記イオンビームBを寄せた方向の反対側に配置しておけば、試料SからのX線がビーム取付窓3の枠部32で遮断される心配がないため、問題なく検出することができる。

【0044】
他方また、本装置を使用した分析作業においては、試料固定部4に試料Sの固定する作業は試料ホルダ43に試料Sを取り付けてブラケット42に装着するだけで分析を開始することができるため、分析作業を効率的に進めることができる。

【0045】
しかも実施例1では、上記試料固定部4の試料ホルダ43に複数の試料S・S…を取り付けできるようにし、その中から選択した一の試料Sを、駆動モータにより図3(a)に示すような上下方向又は図3(b)に示すような左右方向にブラケット42を動かしてビーム照射位置に配置可能としているため、試料ホルダ43を取り外さずに複数の試料S・S…を順次分析していくことが可能となり、これによって分析試料の数が非常に多い場合であっても迅速に分析を行うことができる。

【0046】
[実験例]
次に上記装置を用いたイオンビーム分析の実験例を以下に説明する。まず、ビーム出射装置1から出射するイオンビームBとして2.5MeVの陽子マイクロビームを採用し、試料Sにはハイドロキシアパタイト(Ca4(PO4)3(OH))2を使用して分析を行った。なお、ビームの大きさはおよそ10μmで、ビーム走査範囲は1mm×1mmとした。

【0047】
そして、上記分析の結果を図4に示すとX線強度測定器7で測定されたのは殆どがSiの特性X線であり、試料SからのX線(P、Ca)は検出されないことが確認された。

【0048】
ちなみに、図中の750ch付近には若干のカウント数が確認でき、これは空気中のArが放出された特性X線の影響であると考えられるが、SiとArの特性X線のエネルギーは1keV以上の違いがあるためエネルギースペクトルで分離して測定することが可能である。つまり、Si固有のチャンネルを選択すればSiのX線のカウント数のみを求めることができる。

【0049】
また、ArのX線のカウント数はSiの数パーセントしかないため、測定されたすべてのX線のカウント数をビーム量の指標として用いても実用上においては問題が生じないことも確できた。

【0050】
本発明は、概ね上記のように構成されるが、本発明は図示の実施形態に限定されるものでは決してなく、「特許請求の範囲」の記載内において種々の変更が可能であって、例えば、本装置において必ずしもチェンバーCを使用する必要はなく、試料固定部4やγ線検出器6を固定する台板に、ビーム取付窓3を設けた箱体を載置し、その箱体内部を測定室22として利用する構造であってもよい。

【0051】
また、試料固定部4についても、複数の試料S・S…の中から選択した試料Sをビーム取付窓3の位置まで移動できる可動機構ならば、特にスライド機構41aに限定する必要はなく、上記何れのものも本発明の技術的範囲に属する。
【産業上の利用可能性】
【0052】
近年では、医学(歯質内のフッ素分布の分析による、フッ素の虫歯予防機構の解明や、細胞内の元素分布の分析による、抗ガン剤等の薬物取り機構の解明など)及びバイオテクノロジー(植物組織内の元素分布の分析による、その分布と花の色との相関関係の解明など)の分野において、イオンビーム分析の役割は大きくなっており、特に大気雰囲気下におけるマイクロビームを用いた試料分析は、試料をわざわざ真空雰囲気下に設置する必要がないため分析を簡単に行える実用的な手法としてその期待は大きい。
【0053】
そのような中で、本発明のビーム量測定機能に優れたイオンビーム分析装置は、上記大気雰囲気下における試料分析で難しかった分析中のビーム量測定による分析精度の向上を図ることができ、更に簡単で効率の良い分析作業を実現できる有用な技術であるため、市場における需要は大きく、その産業上の利用価値は非常に高い。
【符号の説明】
【0054】
1 ビーム出射装置
2 ビーム導入部
21 管状部材
22 X線測定室
3 ビーム取出窓
31 薄膜
32 枠部
4 試料固定部
41 基台
41a スライド機構
42 ブラケット
43 試料ホルダ
5 X線検出器
51 検知部
6 γ線検出器
51 検知部
7 X線強度測定器
71 検知部
72 出力モニタ
C チェンバー
B イオンビーム
S 試料
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
5