TOP > 国内特許検索 > 立体ディスプレイ > 明細書

明細書 :立体ディスプレイ

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第5045917号 (P5045917)
公開番号 特開2009-063879 (P2009-063879A)
登録日 平成24年7月27日(2012.7.27)
発行日 平成24年10月10日(2012.10.10)
公開日 平成21年3月26日(2009.3.26)
発明の名称または考案の名称 立体ディスプレイ
国際特許分類 G02B  27/22        (2006.01)
FI G02B 27/22
請求項の数または発明の数 6
全頁数 17
出願番号 特願2007-232647 (P2007-232647)
出願日 平成19年9月7日(2007.9.7)
審査請求日 平成22年8月27日(2010.8.27)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】301022471
【氏名又は名称】独立行政法人情報通信研究機構
発明者または考案者 【氏名】吉田 俊介
【氏名】ロペス・グリベール ロベルト
【氏名】井ノ上 直己
個別代理人の代理人 【識別番号】100098305、【弁理士】、【氏名又は名称】福島 祥人
審査官 【審査官】吉田 英一
参考文献・文献 特開2006-098775(JP,A)
特開2004-258210(JP,A)
特開2004-148235(JP,A)
特開2004-012385(JP,A)
調査した分野 G02B 27/00-27/64
特許請求の範囲 【請求項1】
立体的な外面を形成する複数の要素表示面と、
前記複数の要素表示面の表示を制御する制御手段とを備え、
前記複数の要素表示面は、
光を発生する複数の画素により構成される空間光変調器と、
複数の光線制御子からなり、前記空間光変調器の各画素から発生される光の方向を制御する光線制御子アレイとを含み、
前記制御手段は、前記複数の要素表示面により囲まれる空間の仮想球内に立体画像が提示されるように前記空間光変調器を制御し、
観察者の視点が前記仮想球と同心で前記複数の要素表示面よりも外側に形成される球面の内側にあるとし、rを前記仮想球の半径とし、Dを前記仮想球の中心から各光線制御子の中心へのベクトルとし、θを各光線制御子の中心から前記仮想球に引いた接線とベクトルDとのなす角度とし、pを前記空間光変調器の画素の大きさとし、zを要素表示面の中心から前記球面までの距離とし、eを観察者の両眼の間の距離とし、fを各光線制御子の焦点距離および各光線制御子から前記空間光変調器までの距離とし、αを要素表示面に垂直な方向とベクトルDとのなす角度とし、Nを各光線制御子に割り当てられる画素の数とした場合に、各光線制御子から前記空間光変調器までの距離f、要素表示面での各光線制御子の位置および各光線制御子に割り当てられる画素の数Nは、
θ=sin-1(r/|D|) …(1)
f≧pz/e …(2)
pN≧f・tan(α+θ)-f・tan(α-θ) …(3)
を満足するように設定されることを特徴とする立体ディスプレイ。
【請求項2】
前記複数の要素表示面の各々は平面状の四角形状を有し、前記複数の要素表示面は直方体を形成することを特徴とする請求項1記載の立体ディスプレイ。
【請求項3】
前記複数の要素表示面の各々は平面状の正方形状を有し、前記複数の要素表示面は立方体を形成することを特徴とする請求項1または2記載の立体ディスプレイ。
【請求項4】
前記空間光変調器は、平面型マトリクス表示素子を含むことを特徴とする請求項1~3のいずれかに記載の立体ディスプレイ。
【請求項5】
前記要素表示面に沿って設けられる触覚センサをさらに備え、
前記制御手段は、前記触覚センサの出力信号に応答して前記仮想球内に提示される立体画像が変化するように前記空間光変調器を制御することを特徴とする請求項1~4のいずれかに記載の立体ディスプレイ。
【請求項6】
前記複数の光線制御子は複数のレンズであり、前記光線制御子アレイはレンズアレイであることを特徴とする請求項1~5のいずれかに記載の立体ディスプレイ。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、立体画像を提示する立体ディスプレイに関する。
【背景技術】
【0002】
立体画像を提示する立体ディスプレイは、ボリュームディスプレイと立体視ディスプレイとに大別される。
【0003】
ボリュームディスプレイは、空間中に何らかの方法で画像を投影する方式である。例えば、高速に回転する板に画像を投影する方法がある。ボリュームディスプレイは、複数人での同時観察が可能であるが、比較的大掛かりな投影系および機械的構造を要するものが多い。
【0004】
一方、立体視ディスプレイは、視体積(視点を頂点として画像提示面を断面に持つ錐体)に含まれる物体を画像提示面に射影し、その画像提示面を通じて見えるであろう画像を両眼に提示することにより画像を立体視させる。
【0005】
特に、インテグラル・フォトグラフィ(IP)は、裸眼で立体画像を観察可能にする技術の一つである。インテグラル・フォトグラフィでは、光線制御子として複数の凸レンズからなるレンズアレイを画像提示面上に配置し、各凸レンズ下の焦点位置に立体画像を再現するための要素画像を提示する。各要素画像の各画素から発する光は、凸レンズの効果により特定の方向にのみ向かうように放射される。画像提示面上に配置されたレンズアレイは有機的に作用して離散的な光線の空間を作るため、任意視点からの視体積に応じた光線状態が再現される。
【0006】
このような立体視ディスプレイは、画像提示面にLCD(液晶ディスプレイ)等を用いることにより小型化が可能であるが、画像提示面の枠で表示が制限されるために周囲から覗き込むような観察はできず、立体的な物体の存在感を得ることが困難である。
【0007】
特許文献1には、複数枚の三次元画像表示装置を組み合わせた三次元画像表示システムが記載されている。各三次元画像表示装置は、表示面内に画素がマトリクス状に配置された表示ユニットと、その表示ユニットの画素からの光線を制限して観察領域に光線を向ける複数の光線制御部を有する光学ユニットとを備える。この三次元画像表示システムによれば、三次元画像を複数人で観察することができる。また、三次元画像を回り込んで観察することもできる。

【特許文献1】特開2006-98775号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上記のように、特許文献1に記載された三次元画像表示システムでは、複数人による観察が可能であるとともに、三次元画像を回り込んで観察することができる。
【0009】
しかしながら、特許文献1の三次元画像表示システムでは、各表示面の外周部において表示が制限される。具体的には、2枚以上の表示面を斜めの方向から同時に観察した場合、立体画像が見えない部分が生じる。そのため、立体的な物体の存在感を十分に得ることができない。
【0010】
本発明の目的は、特殊な眼鏡を用いることなく任意の方向から複数人により観察可能でありかつ立体的な物体の存在感を十分に得ることが可能な立体画像を提示する立体ディスプレイを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明に係る立体ディスプレイは、立体的な外面を形成する複数の要素表示面と、複数の要素表示面の表示を制御する制御手段とを備え、複数の要素表示面は、光を発生する複数の画素により構成される空間光変調器と、複数の光線制御子からなり、空間光変調器の各画素から発生される光の方向を制御する光線制御子アレイとを含み、制御手段は、複数の要素表示面により囲まれる空間の仮想球内に立体画像が提示されるように空間光変調器を制御し、観察者の視点が仮想球と同心で複数の要素表示面よりも外側に形成される球面の内側にあるとし、rを仮想球の半径とし、Dを仮想球の中心から各光線制御子の中心へのベクトルとし、θを各光線制御子の中心から仮想球に引いた接線とベクトルDとのなす角度とし、pを空間光変調器の画素の大きさとし、zを要素表示面の中心から球面までの距離とし、eを観察者の両眼の間の距離とし、fを各光線制御子の焦点距離および各光線制御子から空間光変調器までの距離とし、αを要素表示面に垂直な方向とベクトルDとのなす角度とし、Nを各光線制御子に割り当てられる画素の数とした場合に、各光線制御子から空間光変調器までの距離f、要素表示面での各光線制御子の位置および各光線制御子に割り当てられる画素の数Nは、
θ=sin-1(r/|D|) …(1)
f≧pz/e …(2)
pN≧f・tan(α+θ)-f・tan(α-θ) …(3)
を満足するように設定されるものである。
【0012】
本発明に係る立体ディスプレイにおいては、複数の要素表示面により立体的な外面が形成されている。各要素表示面は、空間光変調器および光線制御子アレイからなる。複数の要素表示面により囲まれる空間内の仮想球に立体画像が提示されるように制御手段により空間光変調器が制御される。
【0013】
この場合、各光線制御子から空間光変調器までの距離f、要素表示面での各光線制御子の位置および各光線制御子に割り当てられる画素の数Nは、上式(1)~(3)を満足するように設定される。
【0014】
上式(1)より、各光線制御子の中心から仮想球に引いた接線とベクトルDとのなす角度θが求められる。また、上式(2)より、各光線制御子から空間光変調器までの距離fが求められる。さらに、上式(3)より、各光線制御子に割り当てられる画素の数が求められる。
【0015】
それにより、特殊な眼鏡を用いることなく任意の方向から複数人で立体画像を観察することが可能となる。また、観察者は、複数の要素表示面により囲まれる空間の仮想球内に提示される立体画像を裸眼で立体視することができる。したがって、立体的な物体の存在感が十分に得られる。
【0016】
複数の要素表示面の各々は平面状の四角形状を有し、複数の要素表示面は直方体を形成してもよい。
【0017】
この場合、各要素表示面を容易に作製することができるとともに、複数の要素表示面により立体的な外面を容易に作製することができる。また、各光線制御子から空間光変調器までの距離f、要素表示面での各光線制御子の位置および各光線制御子に割り当てられる画素の数Nが上式(1)~(3)を満足することにより、仮想球内に提示された立体画像を任意の方向から観察することが可能となる。
【0018】
複数の要素表示面の各々は平面状の正方形状を有し、複数の要素表示面は立方体を形成してもよい。この場合、各光線制御子の設計および製造が容易になる。
【0019】
空間光変調器は、平面型マトリクス表示素子を含んでもよい。この場合、各要素表示面を容易に作製することができる。
【0020】
立体ディスプレイは、要素表示面に沿って設けられる触覚センサをさらに備え、制御手段は、触覚センサの出力信号に応答して仮想球内に提示される立体画像が変化するように空間光変調器を制御してもよい。
【0021】
この場合、観察者は、立体画像を取り囲む要素表示面に触れることまたは手に持つことが可能であるので、立体画像の立体形状を擬似的に触覚することが可能であるとともに、立体画像の観察方向を手で操作することができる。また、操作者が任意の方向から要素表示面の任意の部分に触れることにより仮想球内に提示される立体画像の対応する部分が変化する。それにより、観察者は、要素表示面に触れる行為に応答する立体画像の変化を通して立体画像により表される物体に直接触れている感覚を得ることができる。これらの結果、触覚的な物体の存在感を得ることができる。
【0022】
複数の光線制御子は複数のレンズであり、光線制御子アレイはレンズアレイであってもよい。この場合、明るい立体画像が提示される。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、観察者は、複数の要素表示面により囲まれる空間の仮想球内に提示される立体画像を任意の方向から裸眼で立体視することができる。したがって、立体的な物体の存在感が十分に得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
(1)立体ディスプレイの構成
図1は本発明の一実施の形態に係る立体ディスプレイを示す模式的外観図である。
【0025】
図1に示すように、立体ディスプレイ1は、複数の四角形の要素表示面2を結合することにより箱形に構成される。本実施の形態では、立体ディスプレイ1は、正方形の6枚の要素表示面2により立方体に構成される。要素表示面2で囲まれる仮想空間の球状領域(以下、仮想球と呼ぶ)に立体画像3が提示される。
【0026】
図2は立体ディスプレイ1を構成する要素表示面2を示す模式的平面図である。図3は立体ディスプレイ1を構成する要素表示面2を示す模式的平面図である。
【0027】
図2および図3に示すように、要素表示面2は、平面状の空間光変調器21、平面状のレンズアレイ22および平面状の触覚センサ23の積層構造により構成される。
【0028】
空間光変調器21は、マトリクス状に色を提示することができるマトリクス表示素子からなる。この空間光変調器21は、マトリクス状に配列された複数の画素を有する。空間光変調器21として、例えば液晶ディスプレイ(LCD)、または有機エレクトロルミネッセンス(EL)ディスプレイ等を用いることができる。あるいは、空間光変調器21として、プロジェクタとスクリーンとを組み合わせて用いてもよい。
【0029】
レンズアレイ22は、光線の方向を制御することができる複数の凸レンズ220からなり、空間光変調器21から様々な方向へ向かう光の状態を再現させる機能を有する。レンズアレイ22の複数のレンズ220は、マトリクス状に配置される。
【0030】
レンズアレイ22の各凸レンズ220により空間光変調器21の複数の画素からの光線の方向が制御される。各凸レンズ220には、それぞれ画素群が割り当てられる。各凸レンズ220は、割り当てられた画素群のみからの光線の方向を制御することができるように配置される。
【0031】
レンズアレイ22により制御可能な光線の数および光線の方向は、各凸レンズ220に割り当てられた画素の数、凸レンズ220と画素との距離、および凸レンズ220の焦点距離等の凸レンズ220の光学的な設計等により決まる。凸レンズ220の配置および特性の設計については後述する。
【0032】
図3に示すように、レンズアレイ22の凸レンズ220は、空間光変調器21の画素Pa,Pb,Pc,Pdから種々の方向へ向かう光をそれぞれ点線で示す方向に制御する。
【0033】
本実施の形態では、レンズアレイ22上にシート状の透明の触覚センサ23が設けられる。例えば、触覚センサ22として、光ファイバへの通光状態の変化を検出するシート状光検出素子、接触部位の静電容量の変化を検出するシート状可変容量素子、または電極間の通電状態により接触を検出する導電シート等を用いることができる。
【0034】
また、触覚センサ23として、例えば触覚センサアレイを用いてもよい。触覚センサアレイは、マトリクス状に配列された複数の触覚センサ素子からなる。触覚センサ素子としては、人または物が触れたことを検出することができる種々の接触センサを用いることができる。
【0035】
さらに、レンズアレイ220の凸レンズ220間に埋め込まれた複数の触覚センサ素子により構成される触覚センサを用いてもよい。例えば、触覚センサ素子として、圧電効果による電圧変化を検出する圧電素子(ピエゾ素子)、歪を検出する歪ゲージ、静電容量の変化を検出する可変容量素子を用いることができる。また、指により遮光される光を検出するフォトダイオード等の光検出素子、温度変化を検出する熱検出素子等を用いることもできる。
【0036】
本実施の形態では、触覚センサ23は、観察者が触れたときの荷重の大きさ、荷重の方向および荷重が加わった位置を示す検出信号を出力する。
【0037】
また、観察者は、立体ディスプレイ1の表面に触れることができる。特に、本実施の形態では、観察者が手で持つことができるサイズおよび重さを有するように立体ディスプレイ1が形成される。
【0038】
(2)画像データの作成方法
次に、立体ディスプレイ1に立体画像3を提示するための画像データの作成方法について説明する。図4は立体画像3を提示するための画像データの作成方法を説明するための図である。
【0039】
要素表示面2の内側の仮想球内に視覚されるべき立体形状30を定義する。この立体形状30は立体形状データにより表される。立体形状30の表面の任意の点において、任意の方向へ向かう光線を考える。要素表示面2と立体形状30との間の位置関係はデータの定義により一意に求まる。
【0040】
各光線が要素表示面2と交差する際の交点の位置(座標)、光線と要素表示面2との角度、および色を求める。また、各光線がどの要素表示面2のどの位置で交差するかを求める。最終的に、レンズアレイ22により上記の角度の方向へ向かう光線を再現するように、空間光変調器21の各画素に交点の色を表示するための画像データを作成する。
【0041】
理想的には、立体形状30の全表面から全方向に向かう光線について上記の交点の位置、角度および色を求め、各要素表示面2に表示すべき画像を表す画像データを作成する。実際には、要素表示面1で囲まれる空間の仮想球を複数のボクセルに離散化するとともに、各ボクセルから発せられる光線の方向を離散化する。本実施の形態では、各ボクセルから発せられる光線の方向は、レンズアレイ22により離散化された方向に制御される。
【0042】
要素表示面2の内側の仮想球の1つのボクセルが立体形状30の一部であれば、そのボクセルから離散化された方向に向かう光線を求める。このようにして、立体形状30の表面上の複数のボクセルの各々から離散化された複数の方向に向かう光線と要素表示面2との交点を求めるとともに、光線と要素表示面2との角度、およびボクセルの色を求め、それらの交点、角度および色に基づいて画像データを作成する。
【0043】
例えば、図4に示すように、立体形状30の表面上の1つのボクセルb1から発せられる光線は、レンズアレイ22の凸レンズ220により点線の矢印の方向に向かうように制御される。これらの光線と要素表示面2との交点の画素にボクセルb1の色を表示させるように画像データを作成する。
【0044】
また、立体形状30の表面上の他のボクセルb2から発せられる光線は、レンズアレイ22の凸レンズ220により実線の矢印の方向に向かうように制御される。これらの光線と要素表示面2との交点の画素にボクセルb2の色を表示させるように画像データを作成する。
【0045】
上記の説明は、理解を容易にするために行ったが、実際には、レンズアレイ22の各凸レンズ220と空間光変調器21の画素数との関係により再現可能な光線が制限されるため、上記の説明とは逆のアルゴリズムが用いられる。すなわち、レンズアレイ22の各凸レンズ220により再現可能な光線を空間光変調器21の画素を経由して逆に辿り、提示すべき立体形状30との交点のボクセルの色を求め、その色を画素に表示させる色と決定する。
【0046】
レンズアレイ22の凸レンズ220により再現可能な一本の光線が立体形状30の複数のボクセルと交差する場合には、より要素表示面2に近いボクセルの色が画素に表示すべき色と決定される。観察者から見て奥に位置する点は手前に位置する点により隠されるからである。例えば、図4に示すように、レンズアレイ22の凸レンズ220により再現可能な一本の光線が立体形状30の複数のボクセルb2,b3と交差する場合には、より要素表示面2に近いボクセルb3の色を画素に表示すべき色と決定する。
【0047】
このようにして、立体形状30の表面上の各ボクセルの色を要素表示面1の複数の画素に表示させるための画像データが作成される。画像データに基づいて空間光変調器21の複数の画素に画像を表示させることにより、結果的に立体形状30からの光線が再現される。
【0048】
図5は画像データに基づいて立体ディスプレイの空間光変調器21に表示される画像を説明するための図である。
【0049】
例えば、観察点V1から立体形状を見た場合の画像が空間光変調器21の画素“A”に表示される。また、観察点V2から立体形状を見た場合の画像が空間光変調器21の画素“B”に表示される。それにより、観察者は眼を観察点V1から観察点V2に移動させた場合に、立体形状を異なる角度から見ることができる。
【0050】
このように、本実施の形態に係る立体ディスプレイは、多眼式立体視ディスプレイでありながら、結果的にボリュームディスプレイと同等の立体画像3を提示することができる。
【0051】
(3)凸レンズ220の構成
図6~図9は任意の方向から観察可能な立体画像3を表示するために必要な光線制御の条件を説明するための図である。図6~図9において、要素表示面2に垂直な方向をZ軸とする。
【0052】
図6に示すように、立体画像3を表示する領域として中心がOで半径がrの仮想球Sを考える。
【0053】
まず、凸レンズ220の中心をLとする。また、仮想球Sの中心Oと凸レンズ220の中心Lとを結ぶベクトルをDとする。凸レンズ220が担当すべき光線の再現範囲は、凸レンズ220の中心Lを頂点としてベクトルDを中心軸とする頂角2θの円錐となる。角度θは次式で表される。
【0054】
θ=sin-1(r/|D|) …(1)
次に、凸レンズ220の焦点距離をfとする。図7において、要素表示面2の中心部に位置する凸レンズ220を凸レンズ220aとし、要素表示面2の外周部近傍に位置する凸レンズ220を220bとする。レンズアレイ22は平面Bに配置され、空間光変調器21はレンズアレイ22から内側に距離f離れた平面C上に配置される。平面Cは平面Bと平行である。また、平面Bから外側に距離z離れた平面Pを考える。平面Pは平面Bに平行である。
【0055】
一般の平面立体視ディスプレイでは、観察者はレンズアレイ22と平行な平面P上にあると定義される。空間光変調器21の画素の大きさ(直径または幅)をpとする。画素の像は、凸レンズ220a,220bにより平面P上でz/f倍に拡大される。平面P上での画素の像の大きさ(直径または幅)iは、次式のようになる。
【0056】
i=(z/f)・p …(2a)
次に、両眼立体視の条件を検討する。両眼立体視を可能にするためには、両眼に異なる像が写る必要がある。人の両眼の間の距離eは約62mm~64mm程度である。両眼に異なる像が写ることは、距離e離れた右目および左目の視点位置に凸レンズ220から異なる光線が到達することに等しい。すなわち、凸レンズ220により平面P上で距離e離れた位置に異なる光線が到達する必要がある。そのためには、平面P上の像の大きさiが距離e以下でなければならない。
【0057】
本実施の形態に係る立体ディスプレイ1は、任意の方向から観察されることを想定しているので、中心がOの球面Eを定義し、視点位置が球面E上にあると仮定する。要素表示面2(平面B)の中心点と球面Eとの間の距離はzである。
【0058】
ここで、以下の条件を満足することにより、観察者の視点が球面E内にある場合には、仮想球S内に提示される立体画像を立体視することが可能となる。観察者の視点が球面Eの外側にある場合には、観察者は仮想球S内に提示される立体画像を平面画像として認識する。例えば、観察者がよく観察する位置を仮想球Sの中心Oから35cm程度離れた位置であると見積もれば、球面Eの半径を大きめに40cmに設定すればよい。
【0059】
なお、観察者が観察対象から離れるほど、両眼立体視による立体知覚は薄れる。したがって、立体画像の立体視の範囲を球面E内に制限することに合理性はあり、問題はない。
【0060】
凸レンズ220により球面E上に投影される画素の像の大きさをi’とする。画素の像の大きさi’は凸レンズ220の位置に応じて変化する。例えば、球面E上で凸レンズ220bにより投影される像の大きさi’は、凸レンズ220aにより投影される像の大きさi’よりも小さい。画素は平面Bに平行な平面C上に等間隔に配列されるので、像の大きさi’は球面Eと平面Pとが接する点Q付近で最大となる。
【0061】
任意の方向からの両眼立体視を可能にするためには、凸レンズ220により球面E上で距離e離れた位置に異なる光線が到達する必要がある。そのためには、球面E上の像の大きさi’が距離e以下でなければならない。そこで、球面E上の像の大きさi’が最も大きくなる場合(i’=i’の場合)を基準として考えると、次式を満足する必要がある。
【0062】
e≧i’ …(2b)
また、i’≒iであるから、上式(2a)から次式が成り立つ。
【0063】
’=pz/f …(2c)
上式(2b),(2c)から次式が導かれる。
【0064】
e≧pz/f …(2d)
上式(2d)から、凸レンズ220の焦点距離fは次式のように定まる。
【0065】
f≧pz/e …(2)
次に、図8に示すように、Z軸とベクトルDとのなす角度をαとする。ベクトルDを中心軸とする角度2θの範囲内に光を出射するために必要な画素の数Nは、次のように求められる。角度2θをなす円錐の光線群の中で最も外側の光線と平面Cとの交点をs1およびs2とし、凸レンズ220の中心Lを通るZ軸方向の直線と平面Cとの交点をs0とする。2点s0,s1間の距離はf・tan(α+θ)となり、2点s0,s2間の距離はf・tan(α-θ)となる。したがって、2点s1,s2間の距離は、f・tan(α+θ)-f・tan(α-θ)となる。この場合、pNが2点s1,s2間の距離以上となる必要がある。したがって、次式が成り立つ。
【0066】
pN≧f・tan(α+θ)-f・tan(α-θ) …(3)
以上の考察から、立体ディスプレイ1の仮想球S内に立体画像3を表示する場合には、次の式(1)~(3)の条件を満足するように要素表示面2の各凸レンズ220を設計する必要がある。この場合、観察者の視点は球面Eの内側にあるものとする。
【0067】
θ=sin-1(r/|D|) …(1)
f≧pz/e …(2)
pN≧f・tan(α+θ)-f・tan(α-θ) …(3)
上式(1)において、rは仮想球Sの半径であり、Dは仮想球Sの中心Oから凸レンズ220の中心Lへのベクトルであり、θは凸レンズ220の中心Lから仮想球Sに引いた接線とベクトルDとのなす角度である。上式(1)から角度θが求められる。
【0068】
上式(2)において、pは空間光変調器21の画素の大きさであり、zは要素表示面2の中心から球面Eまでの距離であり、eは観察者の両眼の間の距離であり、fは凸レンズ220の焦点距離である。上式(2)から凸レンズ220の焦点距離fが求められる。
【0069】
なお、平面Bと平面Cとが平行であるので、全ての凸レンズ220の焦点距離fは等しくなる。
【0070】
上式(3)において、αは要素表示面2に垂直な方向とベクトルDとのなす角度であり、Nは凸レンズ220に割り当てられる画素の数である。上式(3)から凸レンズ220に割り当てられる画素の個数Nが求められる。Nは自然数である。
【0071】
立体ディスプレイ1の設計時および製造時には、まず、要素表示面2の寸法を決定する。次に、要素表示面2の寸法から仮想球Sの半径rを決定する。それにより、上式(1)により角度θが定まる。また、球面Eの半径を決定する。
【0072】
その後、要素表示面2の中心部から外側に順に、上式(2)により各凸レンズ220の焦点距離fを決定するとともに、上式(3)によりその凸レンズ220に割り当てられる画素の数Nおよび凸レンズ220の位置を決定する。この場合、各凸レンズ220に割り当てられる画素が重複しないように、各凸レンズ220の位置を決定する。
【0073】
(4)立体ディスプレイの制御系の構成および動作
図9は本実施の形態に係る立体ディスプレイの制御系の構成を示すブロック図である。
【0074】
図9に示すように、立体ディスプレイの制御系は、制御部10、形状データ記憶部11、空間光変調器21および触覚センサ23により構成される。
【0075】
制御部10は、CPU(中央演算処理装置)、および半導体メモリ等の記憶装置を含む。記憶装置には、表示制御プログラムが記憶される。形状データ記憶部11は、ハードディスクまたはメモリカード等のデータ記憶媒体からなり、仮想球内に提示すべき立体画像の形状を表す立体形状データを記憶する。
【0076】
制御部10のCPUは、記憶装置に記憶された表示制御プログラムを実行することにより形状データ記憶部11に記憶された立体形状データに基づいて画像データを作成し、画像データに基づいて表示のための制御信号を空間光変調器21に与えるとともに、触覚センサ23の検出信号に基づいて立体形状データを修正する。
【0077】
制御部10および形状データ記憶部11は、要素表示面1で囲まれた空間の内部に設けられてもよい。あるいは、制御部10および形状データ記憶部11が要素表示面1で囲まれた空間の外部に設けられてもよい。その場合には、制御部10から空間光変調器21に有線または無線の通信により制御信号が与えられ、触覚センサ23から制御部10に有線または無線の通信により検出信号が与えられる。また、制御部10および形状データ記憶部11の一方が要素表示面1で囲まれた空間の内部に設けられ、他方が要素表示面1で囲まれた空間の外部に設けられてもよい。
【0078】
次に、本実施の形態に係る立体ディスプレイ1の動作について説明する。図10は本実施の形態に係る立体ディスプレイの制御部10の動作を示すフローチャートである。
【0079】
制御部10は、記憶装置に記憶された表示制御プログラムにしたがって図10のフローチャートの動作を実行する。
【0080】
なお、形状データ記憶部11には、立体画像3の形状を表す立体形状データが記憶されている。
【0081】
まず、制御部10は、形状データ記憶部11から立体形状データをロードする(ステップS1)。そして、制御部10は、立体形状データに基づいて画像データを作成する(ステップS2)。さらに、制御部10は、画像データに基づいて空間光変調器21に画像を表示させる(ステップS3)。それにより、図1に示すように、立体ディスプレイの仮想球に立体画像3が提示される。この場合、操作者および他の観察者は、仮想球内に立体画像3を視覚することができる。
【0082】
操作者は、立体ディスプレイの要素表示面1に触れることができる。制御部10は、触覚センサ23から検出信号が出力されたか否かを判別する(ステップS4)。
【0083】
触覚センサ23から検出信号が出力された場合には、制御部10は、検出信号に基づいて立体形状データを修正する(ステップS5)。この場合、制御部10は、検出信号から操作者が触覚センサ23に触れたときの荷重の大きさ、荷重の方向および荷重の位置を判別し、それらの荷重の大きさ、荷重の方向および荷重の位置に基づいて、要素表示面1への接触に伴って立体画像3が変化するように立体形状データを修正する。
【0084】
そして、制御部10は、ステップS2に戻り、修正後の立体形状データに基づいて画像データを作成する。さらに、制御部10は、画像データに基づいて空間光変調器21に画像を表示させる(ステップS3)。それにより、操作者および他の観察者が視覚する立体画像30が変化する。
【0085】
例えば、操作者が要素表示面2の一部を指で押した場合には、その部分に近い立体画像3の部分が変形する。要素表示面2の一部に接触した場合の立体画像3の変化の態様は、上記の例に限らなず、要素表示面2の何らかの変化であれば他の変化の態様であってもよい。
【0086】
なお、ステップS4において、触覚センサ23から検出信号が出力されない場合には制御部10はステップS3に戻る。
【0087】
(5)本実施の形態の効果
本実施の形態に係る立体ディスプレイ1においては、上記の式(1),(2),(3)の条件を満足するように要素表示面2の各凸レンズ220が設計されているので、仮想球S内に提示された立体画像3を任意の方向から観察することができる。また、仮想球S内に提示される立体画像3を複数の観察者が裸眼立体視可能な疑似ボリュームディスプレイが実現される。したがって、立体的な物体の存在感が十分に得られる。
【0088】
さらに、内部に立体画像3を提示する立体ディスプレイ1を手に持つことができるので、立体画像3の立体形状を擬似的に触覚することが可能であるとともに、立体画像3を観察する方向を手で操作することができる。また、操作者が任意の方向から要素表示面2の任意の部分に触れることにより立体画像3の対応する部分の形状が変化する。それにより、操作者は、要素表示面2に触れる行為に応答する立体画像3の変形を通して立体画像3により表される物体に直接触れている感覚を得ることができる。これらの結果、触覚的な物体の存在感を得ることができる。
【0089】
(6)立体ディスプレイ1のシミュレーション
実施例の立体ディスプレイにおける立体画像および比較例の立体ディスプレイにおける立体画像の見え方をシミュレーションにより評価した。
【0090】
実施例の立体ディスプレイは上記実施の形態における凸レンズ220を有し、比較例の立体ディスプレイは一般的なインテグラル・フォトグラフィ(IP)で用いられるハエの目レンズを有する。本シミュレーションでは、仮想球Sの半径rを30mmとし、要素表示面2の一辺の長さを70mmとし、距離zを350mmとした。
【0091】
図11は比較例のシミュレーション結果を示す図、図12は実施例のシミュレーション結果を示す図である。
【0092】
図11および図12の(a)は立体ディスプレイを正面に対して垂直な方向から観察した場合の見え方、(b)は立体ディスプレイを正面に対してやや斜め方向から観察した場合の見え方、(c)は立体ディスプレイを正面および側面に対して45度の方向から観察した場合の見え方、(d)は立体ディスプレイを正面、側面および上面に対して45度の方向から観察した場合の見え方を示す。
【0093】
図11および図12において、白い部分は、正しい像が見えているレンズを示し、黒い部分は、画素からの光線の再現範囲から外れて像が見えないかまたは別の視点のための像が見えているレンズを示す。
【0094】
図11に示すように、比較例の立体ディスプレイでは、正面より観察した場合に立体画像を見ることができるが、2つまたは3つの面を同時に観察した場合には立体画像の一部または全てを見ることができない。このように、比較例の立体ディスプレイでは、観察する方向によっては立体画像を提示できないレンズが存在する。
【0095】
これに対して、図12に示すように、実施例の立体ディスプレイでは、どの方向から観察した場合にも、立体画像を見ることができる。実施例の立体ディスプレイでは、任意の方向から観察した場合でも各レンズが仮想球S内に立体画像を提示することができる。
【0096】
上記の結果から、実施例の立体ディスプレイでは、仮想球S内に提示される立体画像を任意の方向から複数人で観察することができることがわかる。
【0097】
(7)他の実施の形態
上記実施の形態では、光線制御子として凸レンズアレイ220を用いているが、光線制御子として複数のピンホールを有するピンホールアレイまたは複数の回折格子を有する回折格子アレイを用いてもよい。この場合、ピンホールアレイのピンホールまたは回折格子アレイの回折格子と空間光変調器21との間の距離が上記実施の形態における焦点距離fに相当する。
【0098】
また、上記実施の形態では、複数の凸レンズ220がマトリクス状に配置されているが、図13に示すように、複数の凸レンズ220がハエの目状に隙間なく配置されてもよい。
【0099】
(8)応用例
本発明に係る立体ディスプレイは、以下のように、手にとって任意の角度から確認するとともに、複数人が同時に観察する要求がある物体の表示に利用することができる。
【0100】
(a)製品の検査時に、製品の画像をスキャナでデータとして読み込み、そのデータに基づいて製品の立体画像を立体ディスプレイにより提示する。それにより、立体画像を用いて製品の表面の傷等の欠陥の有無を非破壊検査することができる。
【0101】
(b)空港で手荷検査の際に、手荷物の立体画像を立体ディスプレイで提示することができる。
【0102】
(c)立体ディスプレイを手で実際に回したり位置を変更したりすることができるので、明示的に機能がわかるインタフェースとして用いることができる。
【0103】
(d)医療分野において、インフォームドコンセントまたは技術向上教育のために、立体ディスプレイにより臓器模型の立体画像を提示することができる。また、超音波スキャナまたはCT(コンピュータ断層撮影)のデータ等を立体画像として提示し、病状検査に用いることができる。
【0104】
(e)日常生活では、立体テレビ電話の立体画像の提示に用いることができる。また、立体写真を提示する立体写真立てとして利用することもできる。
【0105】
(f)娯楽の分野では、立体ディスプレイをチェス等の駒の動画立体表示、ルービックキューブの立体画像の提示等に用いることができる。
【0106】
(g)広告の分野では、手に取って見ることができ、他人に指さしながら説明することができる立体画像を用いた広告を提示することができる。
【0107】
(h)遠隔会議の場面において、ネットワークで試作製品の形状データを送信し、立体ディスプレイにより形状データを立体画像として提示することができる。この場合、立体画像を複数人で指し示しながら手に持ち、製品の検討を行うことも可能である。
【産業上の利用可能性】
【0108】
本発明は、種々の立体形状を提示する立体ディスプレイとして利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0109】
【図1】本発明の一実施の形態に係る立体ディスプレイを示す模式的外観図である。
【図2】要素表示面を示す模式的平面図である。
【図3】要素表示面を示す模式的断面図である。
【図4】立体画像を提示するための画像データの作成方法を説明するための図である。
【図5】画像データに基づいて立体ディスプレイの空間光変調器に表示される画像を説明するための図である。
【図6】任意の方向から観察可能な立体画像を表示するために必要な光線制御の条件を説明するための図である。
【図7】任意の方向から観察可能な立体画像を表示するために必要な光線制御の条件を説明するための図である。
【図8】任意の方向から観察可能な立体画像を表示するために必要な光線制御の条件を説明するための図である。
【図9】本実施の形態に係る立体ディスプレイの制御系の構成を示すブロック図である。
【図10】本実施の形態に係る立体ディスプレイの制御部の動作を示すフローチャートである。
【図11】比較例のシミュレーション結果を示す図である。
【図12】実施例のシミュレーション結果を示す図である。
【図13】レンズアレイの凸レンズの配置の他の例を示す模式図である。
【符号の説明】
【0110】
1 立体ディスプレイ
2 要素表示面
3 立体画像
10 制御部
11 形状データ記憶部
21 空間光変調器
22 レンズアレイ
23 触覚センサ
30 立体形状
220 凸レンズ
r 仮想球の半径
D 仮想球の中心から各レンズの中心へのベクトル
θ 各レンズの中心から仮想球に引いた接線とベクトルDとのなす角度
p 空間光変調器の画素の大きさ
z 要素表示面の中心から球面までの距離
e 観察者の両眼の間の距離
f 各レンズの焦点距離
α 要素表示面に垂直な方向とベクトルDとのなす角度
N 各レンズに割り当てられる画素の数
V1 観察点
V2 観察点
Pa,Pb,Pc,Pd 画素
b1,b2,b3 ボクセル
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
5
【図7】
6
【図8】
7
【図9】
8
【図10】
9
【図11】
10
【図12】
11
【図13】
12