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明細書 :立体ディスプレイ

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第5099554号 (P5099554)
公開番号 特開2010-032952 (P2010-032952A)
登録日 平成24年10月5日(2012.10.5)
発行日 平成24年12月19日(2012.12.19)
公開日 平成22年2月12日(2010.2.12)
発明の名称または考案の名称 立体ディスプレイ
国際特許分類 G02B  27/22        (2006.01)
H04N  13/04        (2006.01)
FI G02B 27/22
H04N 13/04
請求項の数または発明の数 6
全頁数 15
出願番号 特願2008-197423 (P2008-197423)
出願日 平成20年7月31日(2008.7.31)
審査請求日 平成23年8月1日(2011.8.1)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】301022471
【氏名又は名称】独立行政法人情報通信研究機構
発明者または考案者 【氏名】吉田 俊介
【氏名】矢野 澄男
【氏名】井ノ上 直己
個別代理人の代理人 【識別番号】100098305、【弁理士】、【氏名又は名称】福島 祥人
審査官 【審査官】福島 浩司
参考文献・文献 国際公開第2006/027855(WO,A1)
特表2008-525854(JP,A)
特開2008-003596(JP,A)
特開2000-092521(JP,A)
特開平09-186932(JP,A)
特開2007-271751(JP,A)
特開2007-047627(JP,A)
特開平11-109287(JP,A)
特開2007-164004(JP,A)
特開昭60-020692(JP,A)
調査した分野 G02B 27/22
H04N 13/04
特許請求の範囲 【請求項1】
立体形状データに基づいて立体画像をその少なくとも一部が所定の基準面上の空間に位置するように提示するための立体ディスプレイであって、
前記基準面上に開口を有するとともに前記基準面の下方に周壁を有するように配置される光線制御子と、
前記基準面の下方でかつ前記光線制御子の外側から複数の光線からなる光線群を前記光線制御子の前記周壁の外周面にそれぞれ照射するように前記光線制御子の周囲に配置された複数の光線発生器と、
前記立体形状データに基づいて、前記複数の光線発生器により発生される光線群により立体画像が提示されるように前記複数の光発生器を制御する制御手段とを備え、
前記光線制御子の前記周壁の前記外周面は、錐体形状の錐面または柱体形状の柱面からなり、前記光線制御子の前記開口は、前記錐体形状または柱体形状の底面の位置に形成され、
前記光線制御子は、各光線発生器により照射された各光線を周方向において拡散させずに透過させるとともに稜線方向において拡散させて透過させるように形成され
前記制御手段は、立体画像の少なくとも一部が前記光線制御子の前記開口よりも上方に提示されるように前記複数の光発生器を制御することを特徴とする立体ディスプレイ。
【請求項2】
前記基準面は、テーブルの天板の上面であり、前記天板は開口部を有し、前記光線制御子は、前記天板の前記開口部に嵌め込まれたことを特徴とする請求項1記載の立体ディスプレイ。
【請求項3】
前記複数の光線発生器の各々はプロジェクタを含むことを特徴とする請求項1または2記載の立体ディスプレイ。
【請求項4】
前記光線制御子は、前記周方向に延びるとともに前記稜線方向に並ぶように形成された突条部を前記錐体形状の外周面または内周面に有することを特徴とする請求項1~3のいずれかに記載の立体ディスプレイ。
【請求項5】
前記光線制御子は、光線を第1の方向において拡散させずに透過させるとともに前記第1の方向に直交する第2の方向において拡散させて透過させるシート材により形成されることを特徴とする請求項1~3のいずれかに記載の立体ディスプレイ。
【請求項6】
前記制御手段は、前記複数の光線発生器の各々により前記光線制御子に照射される光線の色を出射方向ごとに設定することを特徴とする請求項1~5のいずれかに記載の立体ディスプレイ。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、立体画像を提示する立体ディスプレイに関する。
【背景技術】
【0002】
テーブルの周囲に複数の人が集い、共同作業をする場面が多々見られる。テーブルを共同作業するためのツールとみなし、このツールを用いた共同作業をコンピュータを使用して支援する種々の研究が行われている。例えば、CSCW(Computer Supported Cooperative Work:コンピュータ支援協調作業)およびグループウェアの研究が挙げられる。
【0003】
テーブル上の作業をデジタル化することの利点としては、作業の過程を電子的に記録できたり、遠隔地間での情報の共有ができる等が挙げられる。従来の研究で表示される画像はテーブルにプロジェクタで投影されるか、またはテーブル自体がLCD(液晶表示装置)等のディスプレイからなる。いずれの場合も二次元の平面画像が表示される。
【0004】
このような平面画像では、書類のような情報しか提示できず、立体的な三次元形状の情報は提示できない。また、単一の平面画像を表示した場合、テーブルを取り囲む人の位置によっては情報が逆になるため、非常に見にくい。
【0005】
前者の課題を解決するために、人に特殊な眼鏡を装着させて平面画像を立体視をさせる方法が提案されている。しかしながら、この方法では、人の位置を追跡しつつ平面画像を表示する必要があるので、参加人数が制限されたり、眼鏡の装着の違和感があるため、自然な立体画像の観察にはほど遠い。
【0006】
後者の課題を解決するために、テーブルの上面を特殊なスクリーンで構成することにより、四角いテーブルの4方向の観察者にそれぞれ異なる画像を提供するシステムが提案されている。この場合、4方向に平面画像が提示されるので、画像の立体視のためには、別途特殊な眼鏡が必要になる。
【0007】
また、複数のCRT(陰極線管)映像表示装置、複数の光路折り返しミラーおよび複数の凸レンズを円環状に並べることにより、複数の方向から画像を見ることが可能な複数方向実像表示装置が提案されている(特許文献1参照)。しかしながら、この複数方向実像表示装置においても、複数のCRT映像表示措置により複数の平面画像を表示しているに過ぎない。
【0008】
一方、ディスプレイに映された像を、レンズによるリレー光学系で空中に結像させたり、ハーフミラーで背景と混在させるシステムも提案されている。このようなシステムによると、像が空中に浮かんで見えるので、擬似的な立体感を得ることができる。しかしながら、提示されるのは二次元の平面画像であるため、十分な立体感が得られない。また、画像を観察することができる位置は特定の視点位置に限定される。したがって、気軽に複数人が画像を観察できない。
【0009】
また、回転する円盤または前後方向に移動する板からなるスクリーンに画像を投影することにより、擬似的な空間像を再現する方式も提案されている。この方式では、裸眼で複数人が擬似的な立体画像を共有することができる。しかしながら、立体画像をテーブル上に提示するためには、上記のようなスクリーンをテーブル上に配置する必要がある。その場合、テーブル上の作業空間が制限される。

【特許文献1】特開2003-15081号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
上記のように、テーブル上での共同作業を支援するための立体ディスプレイにおいては、複数の人が制限なく気軽に共同作業に参加できるように眼鏡または視線追跡システム等の特別な装置を装着することなく、自然な裸眼で立体画像を観察可能であることが望まれる。また、360度の周囲の位置からテーブル上を見た場合に適切な空間位置に立体画像が提示されることが望まれる。さらに、観察位置が特定の視点位置に制限されないことが望まれる。また、テーブル等の作業面上に作業を阻害する装置が不要であることが望まれる。
【0011】
本発明の目的は、観察者が特別な装置を装着することなく、かつ作業空間を阻害する装置を必要とせずに、任意の数の観察者が周囲の任意の位置から観察することができる立体画像を提示する立体ディスプレイを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
(1) 本発明に係る立体ディスプレイは、立体形状データに基づいて立体画像をその少なくとも一部が所定の基準面上の空間に位置するように提示するための立体ディスプレイであって、基準面上に開口を有するとともに、基準面の下方に周壁を有するように配置される光線制御子と、基準面の下方でかつ光線制御子の外側から複数の光線からなる光線群を光線制御子の周壁の外周面にそれぞれ照射するように光線制御子の周囲に配置された複数の光線発生器と、立体形状データに基づいて、複数の光線発生器により発生される光線群により立体画像が提示されるように複数の光発生器を制御する制御手段とを備え、光線制御子の周壁の外周面は、錐体形状の錐面または柱体形状の柱面からなり、光線制御子の開口は、錐体形状または柱体形状の底面の位置に形成され、光線制御子は、各光線発生器により照射された各光線を周方向において拡散させずに透過させるとともに稜線方向において拡散させて透過させるように形成され、制御手段は、立体画像の少なくとも一部が光線制御子の開口よりも上方に提示されるように複数の光発生器を制御するものである。
【0013】
本発明に係る立体ディスプレイにおいては、光線制御子が周壁および開口を有する。光線制御子の周壁の外周面は、錐体形状の錐面または柱体形状の柱面からなり、光線制御子の開口は、錐体形状または柱体形状の底面の位置に形成される。この光線制御子は、基準面上に開口を有しかつ基準面の下方に周壁を有するように配置される。また、複数の光線発生器が、基準面の下方でかつ光線制御子の外側から複数の光線からなる光線群を光線制御子の周壁の外周面にそれぞれ照射するように光線制御子の周囲に配置される。立体形状データに基づいて、複数の光線発生器により発生される光線群により立体画像が提示されるように複数の光発生器が制御手段により制御される。
【0014】
なお、錐体形状は、円錐、楕円錐または多角錐に限定されず、円錐台、楕円錐台または角錐台を含む。また、柱体形状は、円柱、楕円柱および角柱を含む。
【0015】
この場合、光線制御子は、各光線発生器により照射された各光線を周方向において拡散させずに透過させる。それにより、複数の光線発生器からの光線の各交点が点光源となる。観察者は、点光源の集合を実体物の立体形状として仮想的に知覚する。このとき、同じ点光源に交差する左眼の視線方向と右眼の視線方向とが異なるので、両眼視差が生じる。その結果、複数の点光源の集合により立体画像が提示される。
【0016】
ここで、観察者が基準面の上方から光線制御子の内周面を観察した場合、光線制御子の周囲の同じ高さのどの位置からでも各点光源を同じ位置に見ることができる。そのため、観察者は、少なくとも一部が基準面上の空間に提示される立体画像を360度の周囲の任意の位置から見ることができる。したがって、複数の人が特別な装置を用いることなく任意の位置から裸眼で立体画像を観察することができる。また、観察者の人数も制限されない。
【0017】
また、光線制御子は、各光線発生器により照射された各光線を稜線方向において拡散させて透過させる。それにより、観察者の視点の高さが上下した場合には、立体画像の位置も上下して見える。したがって、観察者の視点位置が制限されない。
【0018】
さらに、基準面の上方の空間に作業を阻害する装置を配置する必要がない。したがって、提示される立体画像を用いた作業を行うための作業空間を基準面上に確保することができる。
【0019】
(2) 基準面は、テーブルの天板の上面であり、天板は開口部を有し、光線制御子は、天板の開口部に嵌め込まれてもよい。
【0020】
この場合、テーブルの天板上の空間に立体画像が提示される。それにより、テーブルを囲んで複数人により同じ立体画像を用いた作業を気軽に行うことができる。なお、開口部に透明材料からなる蓋が嵌めこまれてもよい。
【0021】
(3) 複数の光線発生器の各々は、プロジェクタを含んでもよい。
【0022】
この場合、各プロジェクタにより複数の光線からなる光線群を容易に光線制御子の外周面に照射することができる。
【0023】
(4) 光線制御子は、周方向に延びるとともに稜線方向に並ぶように形成された突条部を錐体形状の外周面または内周面に有してもよい。
【0024】
この場合、錐体形状または柱体形状の外周面または内周面の突条部により各光線を周方向において拡散させずに透過させるとともに稜線方向において拡散させて透過させることができる。
【0025】
(5) 光線制御子は、光線を第1の方向において拡散させずに透過させるとともに第1の方向に直交する第2の方向において拡散させて透過させるシート材により形成されてもよい。
【0026】
この場合、指向性を有するシート材により各光線を周方向において拡散させずに透過させるとともに稜線方向において拡散させて透過させることができる。
【0027】
(6) 制御手段は、複数の光線発生器の各々により光線制御子に照射される光線の色を出射方向ごとに設定してもよい。
【0028】
この場合、複数の光線の交点からなる点光源がそれぞれ色を有するので、カラーの立体画像が提示される。
【発明の効果】
【0029】
本発明によれば、観察者が特別な装置を装着することなく、かつ作業空間を阻害する装置を必要とせずに、任意の数の観察者が任意の位置から観察することができる立体画像が提示される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0030】
(1)立体ディスプレイの構成
図1は本発明の一実施の形態に係る立体ディスプレイの模式的断面図である。図2は図1の立体ディスプレイの模式的平面図である。図3は図1および図2の立体ディスプレイに用いられる光線制御子の斜視図である。
【0031】
図1に示すように、立体ディスプレイは、円錐台形状の光線制御子1、複数の走査型プロジェクタ2、制御装置3および記憶装置4により構成される。
【0032】
図1および図2の立体ディスプレイは、テーブル5に設けられる。テーブル5は、天板51および複数の脚52からなる。天板51は円形孔部を有する。
【0033】
図3に示されるように、光線制御子1は、軸Zを中心として回転対称な円錐台形状を有する。光線制御子1の大径の底部および小径の底部は開口している。光線制御子1は、入射した光線が稜線方向Tにおいては拡散して透過しかつ軸Zを中心とする円周方向Rにおいては拡散せずに直進して透過するように形成されている。光線制御子1の構成の詳細については、後述する。
【0034】
図1に示すように、光線制御子1は、大径の底部開口が上方を向くように天板51の円形孔部に嵌め込まれる。テーブル5の周囲にいる観察者10は、テーブル5の天板51の斜め上方から光線制御子1の内周面を観察することができる。
【0035】
テーブル5の下方には、複数の走査型プロジェクタ2が光線制御子1の軸Zを中心とする円周上に配置されている。複数の走査型プロジェクタ2は、光線制御子1の斜め下方から光線制御子1の外周面に光線を照射するように設けられる。
【0036】
なお、テーブル51の円形孔部に透明の円形板が嵌め込まれてもよい。
【0037】
各走査型プロジェクタ2は、光線を出射するとともにその光線を水平面内および垂直面内で偏向させることができる。それにより、各走査型プロジェクタ2は、光線で光線制御子1の外周面を走査することができる。ここで、光線とは、拡散しない直線で表される光をいう。
【0038】
記憶装置4は、例えばハードディスク、メモリカード等からなる。記憶装置4には、立体画像100を提示するための立体形状データが記憶される。制御装置3は、例えばパーソナルコンピュータからなる。制御装置3は、記憶装置4に記憶される立体形状データに基づいて複数の走査型プロジェクタ2を制御する。それにより、光線制御子1の上方に立体画像300が提示される。
【0039】
(2)光線制御子1の構成および製造方法
図4は光線制御子1の一例の一部の拡大断面図である。
【0040】
図4の光線制御子1は、透明の円錐台形状の光線制御子本体11を有する。光線制御子本体11の外周面上に複数の環状レンズ12が稜線方向Tに密に並ぶように設けられている。各環状レンズ12は、かまぼこ形の垂直断面を有する。なお、環状レンズ12が半円形の断面を有してもよい。光線制御子1の寸法は任意である。例えば、光線制御子本体11の大径の底部の直径は200mmであり、小径の底部の直径は20mmであり、高さは110mmである。
【0041】
図4の光線制御子1は、アクリル、ポリカーボネート等のある屈折率を有する透明な樹脂からなる透明素材を回転させつつ切削刃を当てることにより作製することができる。また、光線制御子1に対応する形状を有する金型を作製し、金型にアクリル、ポリカーボネート等の透明な樹脂を充填することにより光線制御子1を作製することができる。さらに、紫外線硬化樹脂を用いて立体造形法により光線制御子1を作製することもできる。また、円錐台形状を有する透明素材の表面をエッチングすることにより光線制御子1を作製することができる。また、円錐台形状を有する透明素材の表面をレーザ加工または放電加工することにより光線制御子1を作製することができる。また、円錐台形状を有する透明素材の表面に紫外線硬化樹脂を塗布し、円周方向に延びる一定幅の環状領域ごとに紫外線を照射することにより光線制御子1を作製することができる。
【0042】
図4の例では、複数の環状レンズ12が光線制御子本体11の外周面に形成されているが、複数の環状レンズ12が光線制御子本体11の内周面に形成されてもよい。
【0043】
図4の光線制御子1によれば、環状レンズ12が円周方向において一定の厚みを有し、稜線方向Tにおいて光線を拡散させる機能を有する。それにより、図4の光線制御子1の外周面に光線を照射すると、その光線は稜線方向Tにおいて拡散しつつ透過し、円周方向においては拡散せずに直線状に透過する。
【0044】
図5は光線制御子1の他の例の一部の拡大断面図である。
【0045】
図5の光線制御子1においては、光線制御子本体11の外周面上に多角形の断面を有する複数の環状プリズム13が稜線方向Tに密に並ぶように設けられている。環状プリズム13の断面形状は、三角形以外の多角形であってもよい。
【0046】
図5の光線制御子1によれば、環状プリズム13が円周方向において一定の厚みを有し、稜線方向Tにおいて光線を拡散させる機能を有する。それにより、図5の光線制御子1の外周面に光線を照射すると、その光線は稜線方向Tにおいて拡散しつつ透過し、円周方向においては拡散せずに直線状に透過する。
【0047】
図6は光線制御子1のさらに他の例の一部の拡大断面図である。
【0048】
図6の光線制御子1は、透明の円錐台形状の光線制御子本体11の外周面上に糸状のある屈折率を有する透明素材14が円周方向に巻き付けられることにより作製される。透明素材14は、稜線方向Tにおいて密に並んでいる。透明素材14の断面形状は、真円でもよく、楕円でもよい。透明素材14としては、例えばナイロン糸を用いることができる。
【0049】
また、透明の円錐台形状の光線制御子本体11の外周面上に速乾性の接着剤を用いて複数の糸状の透明素材を順に貼り付けることにより光線制御子1を作製することもできる。接着剤としては、例えば紫外線硬化樹脂を用いることができる。
【0050】
図6の光線制御子1によれば、透明素材14が円周方向において一定の厚みを有し、稜線方向Tにおいてボールレンズの機能を有する。それにより、光線制御子1の外周面に光線を照射すると、その光線は稜線方向Tにおいて拡散しつつ透過し、円周方向においては拡散せずに直線状に透過する。
【0051】
図7は光線制御子1の他の構成を説明するための模式図である。図7(a)は方向Xにおいて光線をほとんど拡散させずに透過させ、方向Xと直交する方向Yにおいて光線を拡散させて透過させるホロスクリーン15を示す。図7(b)は図7(a)のホロスクリーン15を切り取ることにより形成された三角シート16を示す。ここで、ホロスクリーンとは、写真乾板の技術により作製され、入射した光線の飛行方向を制御可能な光学素子である。
【0052】
図7(a)の三角シート16を透明の円錐台形状の光線制御子本体11の表面に貼り付けることにより光線制御子1を形成することができる。あるいは、複数の三角シート16をつなぎ合わせてN錐体台を形成することにより、擬似的な円錐台形状を有する光線制御子1を作製することができる。ここで、Nは3以上の整数である。
【0053】
図8は光線制御子1のさらに他の構成を説明するための模式図である。図8(a)は入射した光線を放射方向に拡散させる機能を有するホロスクリーンまたはフレネルレンズからなる光学シート17を示す。フレネルレンズは、円周方向に溝を有するシート状レンズである。
【0054】
図8(b)に示すように、上記の光学シート17を扇形シート18に切り取る。そして、図8(c)に示すように、扇形シート18の辺Aおよび辺Bをつなぎ合わせることにより円錐台形状の光線制御子1が作製される。
【0055】
本実施の形態の形態では、光線制御子1が円錐台形状を有するが、これに限定されず、光線制御子1が円錐形状を有してもよく、あるいは多角錐台形状または多角錐形状を有してもよい。これらの形状を錐体形状と呼ぶ。
【0056】
(3)走査型プロジェクタ2の動作
図9は走査型プロジェクタ2の動作を説明するための模式的平面図である。図9には1つの走査型プロジェクタ2のみが示される。
【0057】
走査型プロジェクタ2は、レーザ光からなる光線を出射するとともにその光線を水平面内および垂直面内で偏向させることができる。
【0058】
走査型プロジェクタ2が光線を水平面内で偏向させることにより、光線制御子1の外周面を水平方向に走査することができる。また、走査型プロジェクタ2が光線を垂直面内で偏向させることにより、光線制御子1の外周面を垂直方向に走査することができる。それにより、走査型プロジェクタ2は、光線で光線制御子1の対向する面を走査することができる。
【0059】
また、走査型プロジェクタ2は、光線の方向ごとに光線の色を設定することができる。それにより、走査型プロジェクタ2は、擬似的に複数の光線からなる光線群を出射する。
【0060】
図9において、走査型プロジェクタ2は、複数の光線L1~L11を光線制御子1に照射する。光線L1~L11は、それぞれ任意の色に設定される。それにより、光線制御子1の複数の位置P1~P11をそれぞれ設定された色の光線L1~L11が透過する。
【0061】
光線制御子1は、円周方向において光線L1~L11を拡散させずに直線状に透過させるので、観察者は、ある位置で一本の光線のみを視認することができる。また、光線制御子1は、光線L1~L11を垂直方向において拡散させて透過させるので、観察者は、一本の光線を上下方向の任意の位置から視認することができる。
【0062】
なお、本実施の形態では、光線発生器として、走査型プロジェクタ2を用いているが、これに限定されない。光線発生器としては、DMD(デジタルミラーデバイス)、LCOS(Liquid Crystal on Silicon)またはLCD(液晶ディスプレイ)等の空間光変調器および複数のレンズからなるレンズアレイ等の投影系を備えた一般的なプロジェクタを用いることもできる。この場合、投影系のアパーチャ(開口)が十分に小さい場合には、走査型プロジェクタ2と同様に光線群を形成することができる。
【0063】
(4)立体画像300の提示方法
図10は立体画像300の提示方法を説明するための模式的平面図である。図10においては、3つの走査型プロジェクタ2A,2B,2Cが示される。
【0064】
例えば、光線制御子1の上方の位置PRに赤色の画素を提示する場合には、走査型プロジェクタ2Aから位置PRを通る方向に赤色の光線LA0を出射し、走査型プロジェクタ2Bから位置PRを通る方向に赤色の光線LB0を出射し、走査型プロジェクタ2Cから位置PRを通る方向に赤色の光線LC0を出射する。それにより、赤色の光線LA0,LB0,LC0の交点に点光源となる赤色の画素が提示される。この場合、観察者の眼が位置IA0にある場合、位置IB0にある場合および位置IC0にある場合に、位置PRに赤色の画素が見える。
【0065】
同様にして、光線制御子1の上方の位置PGに緑色の画素を提示する場合には、走査型プロジェクタ2Aから位置PGを通る方向に緑色の光線LA1を出射し、走査型プロジェクタ2Bから位置PGを通る方向に緑色の光線LB1を出射し、走査型プロジェクタ2Cから位置PGを通る方向に緑色の光線LC1を出射する。
【0066】
それにより、緑色の光線LA1,LB1,LC1の交点に点光源となる緑色の画素が提示される。この場合、観察者の眼が位置IA1にある場合、位置IB1にある場合および位置IC1にある場合に、位置PGに緑色の画素が見える。
【0067】
このようにして、複数の走査型プロジェクタ2A,2B,2Cの各々から立体画像300の各位置を通る方向に提示すべき色の光線が出射される。
【0068】
走査型プロジェクタ2A,2B,2Cを含む複数の走査型プロジェクタが円周上に密に並べられており、それらの複数の走査型プロジェクタから照射される光線群によって光線制御子1の内部の空間が十分に密に交点群で満たされていれば、円周上のいずれの方向から光線制御子1の内部を観察しても位置PR,PGを通過する適切な光線が目に入射することになり、人の目はそこに点光源があるように認識する。実物体の表面にて反射または拡散した照明光を人は物体として認識するので、物体の表面は点光源の集合とみなすことができる。すなわち、物体の表面としたいある位置PR,PGの色を複数のプロジェクタ2A,2B,2Cより飛来する光線によって適切に再現することにより、立体画像300を提示することができる。
【0069】
このようにして、立体画像300を光線制御子1の内部および上方の空間に提示することができる。この場合、観察者は、円周方向における異なる位置で同一の立体画像300をそれぞれ異なる方向から視認することができる。
【0070】
図11は立体画像300の提示方法を説明するための模式的断面図である。図11においては、1つの走査型プロジェクタ2が示される。
【0071】
図11に示すように、走査型プロジェクタ2から出射された光線は、光線制御子1で拡散角αで垂直方向において拡散される。それにより、観察者は、拡散角αの範囲内において垂直方向の異なる位置で走査型プロジェクタ2から出射される同じ色の光線を見ることができる。例えば、観察者が視線を基準の位置Eから上方の位置E’に移動させた場合でも、立体画像300の同じ部分を見ることができる。この場合、垂直方向における観察者の眼の位置により観察者が視認する立体画像300の位置が移動する。このように、走査型プロジェクタ2から出射された光線が光線制御子1で垂直方向において拡散されるため、観察者が視線を上下に移動させても立体画像300を観察することができる。
【0072】
図1の複数の走査型プロジェクタ2により出射される光線群の各光線の色は、記憶装置4に記憶される立体形状データに基づいて制御装置3により算出される。具体的には、制御装置3は、立体形状データとして予め定義される三次元の立体形状の面と各光線との交点を求め、光線に与えるべき適切な色を算出する。
【0073】
制御装置3は、算出した光線群の各光線の色に基づいて複数の走査型プロジェクタ2を制御する。それにより、光線制御子1の上方に立体画像300が提示されるように、各走査型プロジェクタ2から設定された色をそれぞれ有する光線群が出射される。
【0074】
上記のようにして、本実施の形態に係る立体ディスプレイによれば、立体画像300の指向性表示が可能となる。
【0075】
(5)両眼視差の発生原理
ここで、本実施の形態に係る立体ディスプレイにおける両眼視差の発生原理について説明する。
【0076】
図12は本実施の形態に係る立体ディスプレイにおける両眼視差の発生原理を説明するための模式的平面図である。図12には、4つの走査型プロジェクタ2a,2b,2c,2dが示される。
【0077】
図12において、観察者が光線制御子1の点P31を見た場合には、右眼100Rに走査型プロジェクタ2aから出射された光線Laが入射し、左眼100Lに走査型プロジェクタ2bから出射された光線Lbが入射する。また、観察者が光線制御子1の点P32を見た場合には、右眼100Rに走査型プロジェクタ2cから出射された光線Lcが入射し、左眼100Lに走査型プロジェクタ2dから出射された光線Ldが入射する。
【0078】
ここで、光線Laの色と光線Ldの色とは同じであり、光線Lbの色は光線Laの色と異なり、光線Lcの色は光線Ldの色とは異なるとする。この場合、光線制御子1上の点P31の色は見る方向により異なる。また、光線制御子1上の点P32の色も見る方向により異なる。
【0079】
光線Laにより立体画像300の点Paが作られ、光線Lbにより立体画像300の点Pbが作られ、光線Lcにより立体画像300の点Pcが作られ、光線Ldにより立体画像300の点Pdが作られる。
【0080】
図12の例では、立体画像300の点Paと点Pcとが同じ位置にある。すなわち、光線Laと光線Ldとの交点に立体画像300の点Pa,Pdが作られる。点Pa,Pdは、仮想的な点光源となすことができる。この場合、右眼100Rで点Pa,Pdを見る方向と左眼100Lで点Pa,Pdを見る方向とが異なる。すなわち、右眼100Rの視線方向と左眼100Lの視線方向との間に輻輳角がある。これにより、光線群により形成される画像の立体視が可能となる。
【0081】
(6)実施の形態の効果
本実施の形態に係る立体ディスプレイにおいては、光線制御子1は、各走査型プロジェクタ2により照射された各光線を円周方向において拡散させずに透過させる。それにより、複数の走査型プロジェクタ2からの光線の各交点が点光源となる。観察者は、点光源の集合を実体物の立体形状として仮想的に知覚する。このとき、上記のように、同じ点光源に交差する左眼の視線方向と右眼の視線方向とが異なるので、両眼視差が生じる。その結果、複数の点光源の集合により光線制御子1の内部および上方の空間に立体画像300が提示される。
【0082】
ここで、観察者がテーブル5の上方から光線制御子1の内周面を観察した場合、テーブル5の周囲の同じ高さのどの位置からでも各点光源を同じ位置に見ることができる。そのため、観察者は、光線制御子1の上方に提示される立体画像300を360度の周囲の任意の位置から見ることができる。したがって、複数の人が特別な装置を用いることなく任意の位置から裸眼で立体画像300を観察することができる。また、観察者の人数も制限されない。
【0083】
また、光線制御子1は、各走査型プロジェクタ2により照射された各光線を稜線方向において拡散させて透過させる。それにより、観察者の視点の高さが上下しても、観察者が立体画像300を見ることが可能となる。したがって、観察者の視点位置が制限されない。
【0084】
さらに、テーブル5の上方の空間に作業を阻害する装置を配置する必要がない。したがって、光線制御子1の上方に提示される立体画像300を用いた作業を行うための作業空間をテーブル5上に確保することができる。
【0085】
(7)他の実施の形態
上記実施の形態では、光線制御子1がテーブル5の天板51に固定されているが、モータ等の回転駆動装置を用いることにより光線制御子1を軸Zの周りで回転させてもよい。例えば、光線制御子1がN錐体(Nは3以上の整数)からなる場合または複数のシートを貼り合わせることにより作製される場合には、光線制御子1のつなぎ目での光学性能の乱れが生じる。そのような場合、光線制御子1を軸Zの周りで回転させることにより、つなぎ目での光学性能の乱れが平均化される。その結果、提示される立体画像300の画質にむらが生じることが防止される。
【0086】
光線制御子1は、円柱、楕円柱またはN角柱(Nは3以上の整数)を含む柱体形状であってもよい。この場合にも、光線制御子1が光線を垂直方向において拡散させつつ透過させる。それにより、立体画像をその少なくとも一部がテーブル5の天板51の上面等の基準面上の空間に位置するように提示することができる。
【0087】
(8)請求項の各構成要素と実施の形態の各要素との対応
以下、請求項の各構成要素と実施の形態の各要素との対応の例について説明するが、本発明は下記の例に限定されない。
【0088】
上記実施の形態では、光線制御子1が光線制御子の例であり、走査型プロジェクタ2が光線発生器の例であり、制御装置3が制御手段の例であり、テーブル5の天板51の上面が基準面の例である。また、環状レンズ12,環状プリズム13または透明素材14が突条部の例であり、三角シート16または扇形シート18がシート材の例である。
【0089】
請求項の各構成要素として、請求項に記載されている構成または機能を有する他の種々の要素を用いることもできる。
【産業上の利用可能性】
【0090】
本発明は、立体画像を用いた共同作業に利用することができる。また、都市設計の場面のように複数の人が1つの立体画像を共有しながら進める検討作業に利用することができる。さらに、遠隔地間のビデオ会議等の際にテーブルに広げた書類のような情報に加えて立体形状の情報を共有する場合に利用することができる。
【0091】
また、教育の場面等において、教師が立体画像の一部を指差しながら解説する場合に利用することができる。また、光線制御子がテーブル等の作業面より下方にありかつ立体画像が作業面上の空間に提示されるため、ガラスケースの外側から立体画像を指さすような感覚ではなく、直接立体画像を指す感覚を得る場合に利用することができる。
【0092】
テーブル型の立体画像を用いたゲーム等に利用することができる。また、眼鏡等を必要としないため、観客が自由に参加したり離れたりすることができる場に利用することができる。アリーナ状の大型装置を用いることにより、周囲から鑑賞可能な劇場空間を作る場合に利用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0093】
【図1】図1は本発明の一実施の形態に係る立体ディスプレイの模式的断面図である。
【図2】図1の立体ディスプレイの模式的平面図である。
【図3】図1および図2の立体ディスプレイに用いられる光線制御子の斜視図である。
【図4】光線制御子の一例の一部の拡大断面図である。
【図5】光線制御子の他の例の一部の拡大断面図である。
【図6】光線制御子さらに他の例の一部の拡大断面図である。
【図7】光線制御子の他の構成を説明するための模式図である。
【図8】光線制御子さらに他の構成を説明するための模式図である。
【図9】走査型プロジェクタの動作を説明するための模式的平面図である。
【図10】立体画像の提示方法を説明するための模式的平面図である。
【図11】立体画像の提示方法を説明するための模式的断面図である。
【図12】本実施の形態に係る立体ディスプレイにおける両眼視差の発生原理を説明するための模式的平面図である。
【符号の説明】
【0094】
1 光線制御子
2,2A,2B,2C,2a,2b,2c,2d 走査型プロジェクタ
3 制御装置
4 記憶装置
5 テーブル
10 観察者
11 光線制御子本体
12 環状レンズ
13 環状プリズム
14 透明素材
15 ホロスクリーン
16 三角シート
17 光学シート
18 扇形シート
51 天板
52 脚
100,300 立体画像
100R 右眼
100L 左眼
IA0,IB0,IC0,PR,PG,E,E’ 位置
L1~L11,La,Lb,Lc,Ld,LA0,LB0,LC0,LA1,LB1,LC1 光線
P31,P32,Pa,Pb,Pc,Pd 点
図面
【図1】
0
【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
4
【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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