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明細書 :立体映像撮影装置および立体映像撮影方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第5137025号 (P5137025)
公開番号 特開2010-008517 (P2010-008517A)
登録日 平成24年11月22日(2012.11.22)
発行日 平成25年2月6日(2013.2.6)
公開日 平成22年1月14日(2010.1.14)
発明の名称または考案の名称 立体映像撮影装置および立体映像撮影方法
国際特許分類 G03B  35/00        (2006.01)
H04N  13/02        (2006.01)
FI G03B 35/00 A
H04N 13/02
請求項の数または発明の数 3
全頁数 15
出願番号 特願2008-165131 (P2008-165131)
出願日 平成20年6月24日(2008.6.24)
審査請求日 平成23年6月3日(2011.6.3)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】301022471
【氏名又は名称】独立行政法人情報通信研究機構
発明者または考案者 【氏名】三科 智之
【氏名】山本 健詞
【氏名】大井 隆太朗
【氏名】奥井 誠人
【氏名】妹尾 孝憲
個別代理人の代理人 【識別番号】100064414、【弁理士】、【氏名又は名称】磯野 道造
【識別番号】100111545、【弁理士】、【氏名又は名称】多田 悦夫
審査官 【審査官】齋藤 卓司
参考文献・文献 特開2003-307800(JP,A)
特開2007-121883(JP,A)
特許第3836550(JP,B2)
特開平09-055960(JP,A)
特開平10-150675(JP,A)
特開2001-215444(JP,A)
調査した分野 G03B 35/00
H04N 13/02
特許請求の範囲 【請求項1】
被写体の要素画像となる光を生成する要素レンズを2次元平面上に配置した要素レンズ群と、この要素レンズ群の要素レンズの焦点距離となる焦平面に、当該レンズ群と同等以上の口径で配置され、前記要素レンズ群からの光を集光するフィールドレンズと、このフィールドレンズの焦点距離の位置に配置されるとともに開口部を備える遮蔽板と、この遮蔽板の開口部から通過する光を受光して撮影する撮影手段とを備え、
前記遮蔽板の開口部は、前記要素レンズの直径をDとし、前記要素レンズの焦点距離をfとし、前記フィールドレンズの焦点距離をfとしたときに、前記フィールドレンズの光軸を中央として、縦長さ2fD/f~fD/fで横長さ2fD/f~fD/fとなる正方形に形成されたことを特徴とする立体映像撮影装置。
【請求項2】
前記遮蔽板の開口部は、fD/fの縦横長さである正方形であることを特徴とする請求項1に記載の立体映像撮影装置。
【請求項3】
被写体からの物体光を受けて要素レンズを2次元平面上に配置した要素レンズ群により要素画像となる光を生成する第1工程と、
この第1工程により生成した要素画像を、前記要素レンズ群の要素レンズの焦点距離となる焦平面に配置したフィールドレンズにより集光する第2工程と、
この第2工程により集光した光を、前記フィールドレンズの焦点距離の位置に配置され開口部を備える遮蔽板を介して、当該遮蔽板の開口部を通過した光を受光して撮影手段により撮影する第3工程とからなり、
前記第3工程において、前記要素レンズの直径をDとし、前記要素レンズの焦点距離をfとし、前記フィールドレンズの焦点距離をfとしたときに、前記フィールドレンズの光軸を中央として、縦長さ2fD/f~fD/fで横長さ2fD/f~fD/fとなる正方形に形成された前記開口部を通過した光を撮影することを特徴とする立体映像撮影方法。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、被写体を立体的な静止画あるいは動画としての映像を撮影する立体映像撮影装置および立体映像撮影方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、自然でリアルな表現が可能な立体映像を放送やコミュニケーションなどの情報伝達手段に適用させる検討が進められている。立体映像の立体表示を行う場合には多数の方式があるが、その一方式であるホログラフィは、実際に物体が存在する場合と同じ光波場を再現することで空間に像を再生する方式であり、人間の視覚機能に負担を掛けない立体表示方式と言われている。
【0003】
これまでホログラフィの被写体は、静物やコンピュータグラフィックスが中心であったが、動いている物体を対象とするホログラムを取得するため、インテグラルフォトグラフィ(以下、「IP」という)で撮影された画像からホログラムを生成する手法が提案されている。
【0004】
前記したIPは、多数の微小なレンズ(ここでは「要素レンズ」という)から構成されるレンズ板を用いて立体像を記録、再生する技術である。このIPでは、レンズ板を通して撮影された要素画像が倒立して記録されることに起因する再生像の奥行きが逆転した「偽像」になる現象や、要素レンズを通過した光が隣接する要素画像に重複記録され多重像となる現象などが生じることが分かっている。
【0005】
なお、要素画像に重複記録される状態をここで図面を参照して簡単に説明する。図8は、要素レンズと要素画像の記録状態を示す模式図である。図8に示すように、要素レンズを使用した立体撮影装置100では、被写体Bからの光が要素レンズ102により、要素画像1内に対応する記憶媒体の記録面に結像する状態(図中○印)となってしまう。この重複記録成分は、再生時に要素レンズ101に対応する微小レンズでも再生されることにより本来の被写体と異なる場所に像を結ぶために妨害像となる。このため、IPにおいて記録媒体に重複記録成分が生じないように記録することが重要となる。
【0006】
そのため、従来、偽像、重複記録の問題を同時に改善する手法として、要素レンズに屈折率分布型(GRIN)レンズの使用が提案されている(例えば、特許文献1~3参照)。このGRINレンズは、IP画像を直接撮像する方式において、レンズ作用を有する光ファイバを立体的に積み重ねて、2次元のレンズ群を構成することにより、各レンズが作る光学像が互いに重なることを回避し、またファイバ長の設定により凹凸が逆転する偽像を正しい立体像に変換することができるものである。

【特許文献1】特許第3898263号公報
【特許文献2】特許第3869116号公報
【特許文献3】特許第3836550号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、従来の屈折率分布型(GRIN)レンズを使用したIPによる立体映像撮像装置では以下に示す問題点が存在した。
すなわち、従来の立体撮影装置では、インテグラルフォトグラフィの記録時に生じる要素画像の重複記録を改善するため、要素レンズに変えてGRINレンズを用いる構成としているが、GRINレンズの製作には高度な技術が要求され、また、GRINレンズ群として使用するときも、要素レンズを2次元状態に整列させて使用する構成に比較して製造が容易ではなかった。
【0008】
本発明は、前記した問題点に鑑み創案されたものであり、GRINレンズを使用することなく、単レンズなどの要素レンズにより要素画像の重複記録を最小限に抑制することができる立体映像撮影装置および立体映像撮影方法を提供することを課題とする。
【0009】
なお、前記した偽像については、要素画像を倒立像から正立像に変換することで回避できることが知られており、IPで撮影された画像からホログラムを生成するときには要素画像毎に計算処理するために倒立像から正立像への変換が容易であることが知られているため、本発明では、要素画像の重複記録を改善することに着目した。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明に係る立体映像撮影装置は、前記課題を達成するため、以下に示すような構成とした。すなわち、立体映像撮影装置は、被写体の要素画像となる光を生成する要素レンズを2次元平面上に配置した要素レンズ群と、この要素レンズ群の要素レンズの焦点距離となる焦平面に、当該レンズ群と同等以上の口径で配置され、前記要素レンズ群からの光を集光するフィールドレンズと、このフィールドレンズの焦点距離の位置に配置されるとともに開口部を備える遮蔽板と、この遮蔽板の開口部から通過する光を受光して撮影する撮影手段とを備え、前記遮蔽板の開口部は、前記要素レンズの直径をDとし、前記要素レンズの焦点距離をfとし、前記フィールドレンズの焦点距離をfとしたときに、前記フィールドレンズの光軸を中央として、縦長さ2fD/f~fD/fで横長さ2fD/f~fD/fとなる正方形に形成された構成とした。
【0011】
このように構成したので、立体映像撮影装置は、被写体からの物体光が要素レンズ群に入射することで、要素レンズ群の要素レンズがそれぞれ要素画像を生成し、要素レンズの焦点距離となる焦平面に設置したフィールドレンズに要素画像となる光を入射させる。そして、立体映像撮影装置は、フィールドレンズの焦点距離に設置した遮蔽板の開口部を通過した光を撮影手段により撮影している。そして、立体映像装置は、遮蔽板の開口部を所定の大きさにしているので、要素レンズへの入射角(要素レンズの光軸に対する角度)θの絶対値として、要素レンズの焦点距離fと口径(直径)Dから決まる角度φを超える光の場合に、遮蔽板により遮蔽され、また、要素レンズへの前記角度φを超えない光の場合に、遮蔽板の縦長さ2fD/f~fD/fで横長さ2fD/f~fD/fとなる正方形の開口部を通過して撮影手段により撮影されることになる。
【0012】
なお、立体映像撮影装置において、前記遮蔽板の開口部は、fD/fの縦横長さである正方形である構成としてもよい。
このように構成した立体映像撮影装置は、要素レンズへの入射角が前記角度φを超えない、被写体の要素レンズの中心(主点)を通る光線(主光線)については、開口部を通過させることができる。
【0013】
また、本発明に係る立体映像撮影方法は、前記課題を達成するため、以下に示すような手順とした。すなわち、立体映像撮影方法は、被写体からの物体光を受けて要素レンズを2次元平面上に配置した要素レンズ群により要素画像となる光を生成する第1工程と、この第1工程により生成した要素画像を、前記要素レンズ群の要素レンズの焦点距離となる焦平面に配置したフィールドレンズにより集光する第2工程と、この第2工程により集光した光を、前記フィールドレンズの焦点距離の位置に配置され開口部を備える遮蔽板を介して、当該遮蔽板の開口部を通過した光を受光して撮影手段により撮影する第3工程とからなり、前記第3工程において、前記要素レンズの直径をDとし、前記要素レンズの焦点距離をfとし、前記フィールドレンズの焦点距離をfとしたときに、前記フィールドレンズの光軸を中央として、縦長さ2fD/f~fD/fで横長さ2fD/f~fD/fとなる正方形に形成された前記開口部を通過した光を撮影することとした。
【0014】
このような手順により、立体映像撮影方法では、被写体から要素レンズを配列した要素レンズ群により要素画像を生成して、フィールドレンズで集光して撮影手段により撮影するときに、フィールドレンズの焦点距離の位置に設置した遮蔽板により余計な光となる重複記録成分を除去して、遮蔽板の開口部を通過した光のみを撮影手段により撮影するようにしている。
【発明の効果】
【0015】
本発明に係る立体映像撮影装置および立体映像撮影方法は、以下に示すような優れた効果を奏するものである。
立体映像撮影装置は、要素レンズ群からの要素画像の光をフィールドレンズで集光して撮影手段に撮影するときに、遮蔽板の予め設定した大きさの開口部を通過した光を撮影するようにしている。そのため、立体映像撮影装置は、重複記録成分が小さくなるように抑制されるので、GRINレンズを使用することなく、構造および製造が簡単な要素レンズを使用して多重像を防止した映像を取得することができる。
【0016】
立体映像撮影装置は、既存の要素レンズ群を使用する光学系を用いて、所定位置にフィールドレンズおよび所定の開口部を有する遮蔽板を設置することで全体を構成することができるため、GRINレンズを使用することなく汎用性にすぐれている。
【0017】
立体映像撮影方法では、要素レンズ群により要素画像を生成してフィールドレンズにより集光した後で、撮影手段により撮影する前の段階で、重複記録成分を除去しているため、GRINレンズを使用することなく単レンズを2次元状態に配列した要素レンズ群を使用して多重像を防止した映像を取得することができる
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、図面を参照して本発明に係る立体映像撮影装置および立体映像撮影方法を説明する。
図1は、立体映像撮影装置の全体を模式的に示す斜視図、図2は、立体映像撮影装置の各構成における位置関係を一部切欠いて模式的に示す側面図である。
【0019】
図1に示すように、立体映像撮影装置1は、被写体の物体光を受光する要素レンズ群3と、この要素レンズ群3の焦平面fに設定されたフィールドレンズ4と、このフィールドレンズ4の焦点fの位置に設置され開口部5を形成した遮蔽板6と、この遮蔽板6の開口部5を通過する光を撮影する撮影手段としての撮影カメラ7とを備えている。
【0020】
要素レンズ群3は、要素レンズ2を2次元平面上に配列して形成されている。この要素レンズ群3は、被写体Wの物体光を入射して要素レンズ2のそれぞれに要素画像となる光を生成し、その生成した光をフィールドレンズ4に向けて出射している。この要素レンズ群3で使用される要素レンズ2のそれぞれは、例えば、単レンズである凸レンズから構成されている。
【0021】
要素レンズ群3は、要素レンズ2が、一例として、2次元平面上に配列した状態の型を作製して、その作製した型に素材となるプラスチック(例えば、ポリメチルアクリルレート、ポリメチルメタアクリルレート等)を充填して簡単に一体に製造することができる。なお、要素レンズ2は、ガラス素材により作製される場合には、一つ一つ作製してさらに2次元平面上に配列して接合するようにしている。要素レンズ群3は、プラスチックで形成する場合、あるいは、ガラス素材で形成する場合であっても、GRINレンズを使用することに比較すれば、簡単に製造することができるものである。
【0022】
また、要素レンズ群3に使用される要素レンズ2の直径は1mm前後の大きさとして多数の要素レンズ2を配列することが可能である。したがって、仮に1mmの直径の要素レンズであれば、縦30cm×横40cmの要素レンズ群3を一例にとると、要素レンズ2を12万個有する構成となる。
【0023】
フィールドレンズ4は、要素レンズ2の焦点距離である要素レンズ群3の焦平面fに設置される。このフィールドレンズ4は、要素レンズ群3からの光を入射して出射できる口径を備える大径の凸レンズで構成されている。フィールドレンズ4の大きさは、要素レンズ群3の大きさにより設定される。なお、要素レンズ群3を長方形になるように形成すれば、その長方形の要素レンズ群3の対角線の長さと同等あるいはそれ以上の大きさの直径を備える大きさのフィールドレンズ4が使用される。
【0024】
遮蔽板6は、所定位置に開口部5を形成して、フィールドレンズ4の焦点距離fに設置される。遮蔽板6の配置は、IP撮影において、奥行き方向に広い範囲で解像度の良好な空間像が記録できる設定で、一般的に使用される配置である。この遮蔽板6は、フィールドレンズ4からの光を開口部5以外では通過させない素材あるいは色により形成されている。この遮蔽板6の素材は、金属、ガラスあるいはプラスチック等、特に限定されるものではない。そして、遮蔽板6の開口部5は、フィールドレンズ4の光軸を中央として、四角形である所定範囲の正方形に形成されている。開口部5の縦横長さは、以下のようにして設定されている。以下、図2を参照して、要素レンズ2の主光線に基づいて説明する。
【0025】
図2に示すように、要素レンズ2から送られてくる光の内、重複記録成分は、光の要素レンズ2への入射角(要素レンズ2の光軸に対する角度)θの絶対値が、要素レンズ2の焦点距離fと口径Dから決まる角度φを超える場合に生じることがわかっている。したがって、重複記録成分が生じないためには、遮蔽板6により遮蔽する光と開口部5により通過させる光について、次の式(1)の条件を満たす必要がある。
【0026】
【数1】
JP0005137025B2_000002t.gif

【0027】
ただし、要素レンズ2において、f>>D(近軸条件)を仮定すると、つぎの式(2)となる。
【0028】
【数2】
JP0005137025B2_000003t.gif

【0029】
そして、式(2)を式(1)に代入することにより次の式(3)の関係が得られる。
【0030】
【数3】
JP0005137025B2_000004t.gif

【0031】
以上のようにして、要素レンズ2からの出射した光の角度の内、要素レンズ2の焦点距離fと口径Dから決まる角度φとして、所定の範囲において遮蔽板6の開口部5を光が通過するようにしている。そして、フィールドレンズ4を要素レンズ群3および遮蔽板6の間に介在させている構成のため、フィールドレンズ4の焦点距離fを併せた構成においては、遮蔽板6の開口部5は、光軸を中心に縦幅fD/f(=2fφ)、横幅fD/f(=2fφ)の正方形となるように形成することで、重複記録成分を大きく削減できるようにしている。つまり、遮蔽板6の開口部5をフィールドレンズ4の光軸を中心として所定の大きさの正方形に形成することで、全要素レンズ2における重複記録成分を大きく削除することができる。
【0032】
なお、前記した遮蔽板6の開口部5の大きさを決定するには、要素レンズの主光線のみを仮定して決定したが、実際の光学系では、各レンズを通過する光は、光線群であり回折の影響を受けることになる。そのため、以下に、光線群である場合について、さらに検討する。
【0033】
はじめに、図2の光学系において、要素レンズを通過する光がフィールドレンズの後側焦平面につくる光波場を検討する。ここではx軸方向のみについて検討するが、y軸方向も同様の検討結果を適用できるため省略する。要素レンズの入射面および射出面における光波場をそれぞれg(x),g(x)、フィールドレンズの入射面および射出面における光波場をh(x),h(x)、フィールドレンズの後側焦平面における光波場をo(x)とする。要素レンズ2の焦点距離をf、要素レンズ2の中心位置をa、要素レンズ2の大きさをDとし、要素レンズ2に入射する光を、輝度を(定数)、傾きw/fの平面波と仮定すると、要素レンズ2の入射面および射出面での光波場は次の式(4)、式(5)で表される。
【0034】
【数4】
JP0005137025B2_000005t.gif

【0035】
【数5】
JP0005137025B2_000006t.gif

【0036】
ただし、式中Πは、レクタングル関数を表し、以下の式(6)となる。
【0037】
【数6】
JP0005137025B2_000007t.gif

【0038】
また,式中、k=2π/λ、λは光の波長、式(5)のexp部分は要素レンズ2を通過することにより光波に生じる位相遅延を表す。
フィールドレンズの入射面の光波場h(x)は、要素レンズ2の射出面の光波場g(x)を距離fだけ伝搬させることで得られる。伝搬計算にはフレネルキルヒホッフの回折式のフレネル領域における近似式(以後,フレネル回折式と呼ぶ)を用いる。式(4)~式(6)より、h(x)およびフィールドレンズ4の射出面の光波場h(x)は、次の式(7)~式(9)で表される。ただし,ここでは定数成分は省略している。
【0039】
【数7】
JP0005137025B2_000008t.gif

【0040】
【数8】
JP0005137025B2_000009t.gif

【0041】
【数9】
JP0005137025B2_000010t.gif

【0042】
ここで、Saはシンク関数を表す。したがって、フィールドレンズ4の後側焦平面における光波場o(x)はフレネル回折式および式(8)、式(9)により,次の式(10)、式(11)で表される。
【0043】
【数10】
JP0005137025B2_000011t.gif

【0044】
【数11】
JP0005137025B2_000012t.gif

【0045】
式(11)式は,原点を中心とした幅fD/fの開口を通過する、進行方向-w/fの平面波が、距離-f/fだけ伝搬したときのフレネル回折式を表している。また、要素レンズ2の位置aに依存しないことも表している。フレネル領域において、開口を通過した平面波は伝搬する距離とともに回折パターンが変化するが、大部分が開口の幅の範囲内で伝搬する。図3(a)に示す開口の近くのフレネル回折パターンの振幅分布の一例を図3(b)に示す。図3(b)に示すように、要素レンズ2を通過する傾きw/fの平面波は、フィールドレンズ4の後側焦平面において中心位置f/f、幅fD/fの範囲内を大部分が通過すると考えられる。なお、図3では、模式的に示す平面波の周囲を囲む矩形の範囲は、エネルギのレベルを模式的に示している。また、図3(b)の矢印で示す範囲としてfD/fおよび2fD/fが、図4の右側に中カッコで表す通過領域の範囲を示すfD/fおよび2fD/fと同等の範囲を示している。
【0046】
つぎに、wと通過領域の関係を図4を参照して示し、開口部5の設定についての説明をする。図4は、縦軸をフィールドレンズの焦平面での通過領域を示し、横軸をフィールドレンズに入射する光の傾きを示したグラフ図である。なお、図4において、斜線S1、S2は、要素レンズ2の口径Dと、要素レンズ2の焦点距離fと、フィールドレンズ4の焦点距離fとにより決まる直線である。また、wは、光の要素レンズへの入射角θ(要素レンズの光軸に対する角度)のtanθにおいて、要素レンズの焦点距離fを横方向としたときの縦方向の値を示す(tanθ=w/f、θ≒tanθ(近軸条件により)したがってθ≒w/f:θ=w/f)。
【0047】
式(4)~式(11)で示したように、要素レンズ2を通過する傾きθが、|θ|≦D/2f、すなわち、|w|≦D/2の平面波のフィールドレンズ4の焦平面の通過領域幅は、図4に示すように、2fD/fとなる。これは主光線だけを仮定した図2の開口部の幅fD/fの倍である。この領域幅を開口部5とすることで傾きが|θ|≦D/2fを満たす平面波の大部分を通過させることができる。
【0048】
しかし、同時に傾きがD/2f<|θ|≦3D/2f、の光の一部(図5斜線部分)が開口部5を通過し、重複記録成分となってしまう。また、開口部5の幅を狭めてfD/fとした場合は、重複記録成分は傾きD/2f<|θ|≦D/f、の光となるため低減されるが、所望の傾き0<|θ|≦D/2f(D/2)の光も一部遮断されてしまう。
【0049】
このように、フィールドレンズ4の後側焦平面に配置した開口部5で完全に重複記録成分を除去することはできないことが分かる。実際には、図2で示したように、少なくとも主光線が通過する領域幅fD/fを最小通過領域の目安として、重複記録成分の画質への影響と、所望の光が遮光されることによる画質への影響を勘案しながら開口部5幅を決める必要があり、ここでは、その範囲としてfD/f~2fD/fとしている。
【0050】
遮蔽板6の開口部5をfD/f~2fD/fとしている理由は、前記したように、各要素レンズ2に入射する、入射角が前記角度φを超えない主光線を全て開口部5から通過させるための下限値として最小範囲となるfD/fを設定している。また、遮蔽板6の開口部5の上限値である最大範囲として2fD/fとしているのは、必要な光がそれ以上広げても増えないので2fD/fとしている。つまり、2fD/fより大きくしても開口部5を通過するのは、重複記録成分の光が増えるだけだからである。このように、立体映像撮影装置1では、遮蔽板6の開口部5の大きさを設定することで、重複記録成分を抑制した光のみを通過させるようにすることができる。
【0051】
撮影カメラ7は、遮蔽板6の開口部5を通過した光を受光して撮影することができるように、遮蔽板6の開口部5に対面して配置されている。この撮影カメラ7は、被写体Wの静止画を撮影する場合あるいは被写体Wの動画を撮影する場合に対応して撮影できるものであれば、アナログ写真カメラ、デジタルカメラ(デジタルムービーカメラ)等、特に限定されるものではない。
【0052】
つぎに、立体映像撮影装置1の作用を、図2を主に参照して説明する。なお、ここでは、図2において、要素レンズ2の主光線について、紙面の上端の要素レンズ2と、中央側の要素レンズ2との二つを中心に、開口部5を通過するか、あるいは開口部5を通過せずに遮蔽板6で遮蔽されるかについて説明する。そして、要素レンズ(上端の要素レンズおよび中央側の要素レンズ)2に所定角度θ1~θ6で入射(出射)する主光線L1~L6を、例にして説明する。
【0053】
立体映像撮影装置1を用いた撮影方法では、はじめに、被写体Wからの物体光を受けて要素レンズ2を2次元平面上に配置した要素レンズ群3により要素画像となる光を生成する(第1工程)。そして、生成した要素画像を、要素レンズ群3の要素レンズ2の焦平面fに配置したフィールドレンズ4により集光する(第2工程)。そして、集光した光について、フィールドレンズ4の焦点距離fの位置に配置された遮蔽板6の開口部5を通過した光を撮影カメラ7により撮影している(第3工程)。そして、立体映像撮影装置1では、フィールドレンズ4の光軸を中央として、縦長さ2fD/f~fD/fで横長さ2fD/f~fD/fとなる正方形に形成された開口部5を通過した光を撮影している。
【0054】
つづいて、要素レンズ2の入射光の入射角度と、要素レンズ2の出射光の出射角度と、開口部5の通過する光の関係について、図2を参照して説明する。はじめに、図2の紙面上端となる要素レンズ2について説明する。
図2に示すように、要素レンズ2にθ1の角度で入射する主光線L1は、要素レンズ2を出射したときの光軸に対する所定角度θ1が式(2)で示されたφ=D/2fより小さいときには、図2のようにフィールドレンズ4により屈折して遮蔽板6の開口部5を通過する。また、同様に、要素レンズ2にθ2の角度で入射する主光線L2は、要素レンズ2を出射したときの光軸に対する所定角度θ2がφ=D/2fより小さいときには、図2のようにフィールドレンズ4により屈折して遮蔽板6の開口部5を通過する。つまり、要素レンズ2に所定の角度θ1~θ2の範囲で入射して出射するときの角度θ1、θ2がD/2fより小さいときには、遮蔽板6の開口部5を通過することになる。
【0055】
つぎに、図2の主光線L3について説明する。要素レンズ2にθ3の角度で入射する主光線L3は、要素レンズ2を出射するときの角度がD/2fより大きい場合を示している。このように、主光線L3の場合には、遮蔽板6の開口部5を通過しない位置にフィールドレンズ4により屈折することになる。したがって、この主光線L3のように、要素レンズ2を出射したときの角度がD/2fより大きな場合には、フィールドレンズ4の屈折により常に遮蔽板6の開口部5を通過することがないようになる。
【0056】
同様に、中央側の要素レンズ2でも、θ4~θ6の入射角度で入射した主光線L4~L6でもいえる。つまり、θ4、θ5のような角度がD/2fより小さい主光線L4、L5は、フィールドレンズ4により屈折して遮蔽板6の開口部5を通過する。そして、θ6のような角度がD/2fより大きくなる主光線L6は、フィールドレンズ4の屈折により常に遮蔽板6の開口部5を通過することがないようになる。
【0057】
このように、要素レンズ2から出射したときの角度が光軸に対してプラスおよびマイナス側においてD/2fより小さくなるような光については、要素レンズ群3のどの位置の要素レンズ2であっても遮蔽板6の開口部5を通過し、D/2fより大きくなるような光については、要素レンズ群3のどの位置の要素レンズ2であっても、開口部5を通過することができない。
【0058】
したがって、立体映像撮影装置1の光学系において、遮蔽板6の開口部5を通過した光を撮影カメラ7により撮影することで重複記録成分が少なくなった光を撮影することができるため、撮影した映像が多重像となることを抑制することができる。
【0059】
以上説明した立体映像撮影装置1の光学系の検討内容を検証するため、つぎのような光学実験を行った。実験装置の構成を図5に示し、その仕様を表1に示す。また、図5の実験装置により撮影した結果を図6(a)、(b)、図7(a)、(b)に示す。
【0060】
【表1】
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【0061】
実験装置10の構成は、図5に示すように、要素レンズ12を2次元平面上に配列した要素レンズ群13としてのレンズ板11を設置している。このレンズ板11は、焦点距離26.3mm,口径1.6mm角の要素レンズ(凸レンズ)12で構成されている。そして、焦点距離300mmのフィールドレンズ(凸レンズ)14をレンズ板11の後側焦平面近傍に配置した。(2)式よりφ=0.03(rad.)となるため、フィールドレンズ14の後側焦平面に、そのフィールドレンズ14の光軸を中心とした18mm角(=2×300mm×0.03rad.)の開口部15を形成した遮蔽板16を配置した。
【0062】
この開口部15の大きさは図2で仮定した開口部5の開口幅fD/fに相当する。撮影用の撮影カメラとしてデジタルカメラ17を開口部15の直後に配置し、そのデジタルカメラ17の焦点位置をレンズ板11の後側焦平面とした。デジタルカメラ17は開口部15のサイズより大きな口径(51mm)を持つレンズを有し、開口部15を通過する光をすべて記録した。被写体はレンズ板11から430mm離れた場所に設置した平面状の文字とした。実験装置10で撮影された要素画像群から、IPの再生光学系をシミュレートすることにより、被写体位置の像を計算で求め、多重像の発生状況を検証した。
【0063】
図6に実験結果を示す。図6(a)は開口部を有する遮蔽板の設置がなくフィールドレンズから直接撮影した場合の要素画像群を示し、(b)は開口部を有する遮蔽板を設置して開口部を通過した光を撮影した場合の要素画像群を示す。開口部の15ない場合は要素画像の重複記録が目立つが、開口部15を通過した光を撮影した場合は重複記録を低減できていることがわかる。図7(a)、(b)はそれぞれ図6(a)、(b)から計算で得た被写体の像である。図6(a)の「遮蔽板なし開口部なし」の像は図7(a)に示すように、多重像となっており、被写体の識別が困難である。一方、図6(b)の「遮蔽板あり開口部あり」では、図7(b)に示すように、多重像が完全に除去されてはいないが、低減できており、被写体がはっきりと確認できた。
【図面の簡単な説明】
【0064】
【図1】本発明に係る立体映像撮影装置を模式的に示す斜視図である。
【図2】本発明に係る立体映像撮影装置の各構成における位置関係を一部切欠いて模式的に示す側面図である。
【図3】(a)、(b)は、本発明に係る立体映像撮影装置の遮蔽板に形成した開口部を通過するフレネル回折パターンの振幅分布の一例を示す模式図である。
【図4】本発明に係る立体映像撮影装置において、縦軸をフィールドレンズの焦平面での通過領域を示し、横軸をフィールドレンズに入射する光の傾きを示したグラフ図である。
【図5】本発明に係る立体映像撮影装置の実験装置を模式的に示す模式図である。
【図6】本発明に係る立体映像撮像装置の実験装置においける撮像結果を示し、(a)は開口部を有する遮蔽板の設置がなくフィールドレンズから直接撮影した場合の要素画像群を示し、(b)は開口部を有する遮蔽板を設置して開口部を通過した光を撮影した場合の要素画像群を示す。
【図7】本発明に係る立体映像撮像装置の実験装置においける撮像結果を示し、(a)は、図6(a)の要素画像群から計算で得た被写体の像を示す模式図、(b)は、図6(b)の要素画像群から計算で得た被写体の像を示す模式図である。
【図8】従来の立体映像撮影装置において重複記録成分が発生する状態を模式的に示す模式図である。
【符号の説明】
【0065】
1 立体映像撮影装置
2 要素レンズ
3 要素レンズ群
4 フィールドレンズ
5 開口部
6 遮蔽板
7 撮影カメラ(撮影手段)
θ 要素レンズへの光の入射角度
D 要素レンズ径(口径:直径)
要素レンズの焦点距離(焦平面の位置)
フィールドレンズの焦点距離
W 被写体
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図8】
5
【図6】
6
【図7】
7