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明細書 :シリコンウェーハ表層中の原子空孔評価方法及び装置

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 公開特許公報(A)
公開番号 特開2014-168042 (P2014-168042A)
公開日 平成26年9月11日(2014.9.11)
発明の名称または考案の名称 シリコンウェーハ表層中の原子空孔評価方法及び装置
国際特許分類 H01L  21/66        (2006.01)
G01N  29/00        (2006.01)
FI H01L 21/66 N
G01N 29/18
請求項の数または発明の数 14
出願形態 OL
全頁数 21
出願番号 特願2013-232352 (P2013-232352)
出願日 平成25年11月8日(2013.11.8)
優先権出願番号 2013017810
優先日 平成25年1月31日(2013.1.31)
優先権主張国 日本国(JP)
発明者または考案者 【氏名】後藤 輝孝
【氏名】根本 祐一
【氏名】金田 寛
【氏名】赤津 光洋
【氏名】三本 啓輔
出願人 【識別番号】304027279
【氏名又は名称】国立大学法人 新潟大学
個別代理人の代理人 【識別番号】100080089、【弁理士】、【氏名又は名称】牛木 護
【識別番号】100161665、【弁理士】、【氏名又は名称】高橋 知之
審査請求 未請求
テーマコード 2G047
4M106
Fターム 2G047AA09
2G047AB04
2G047AC10
2G047AD01
2G047BA01
2G047BC02
2G047BC08
2G047BC14
2G047CA01
2G047CB03
2G047GB17
2G047GG29
4M106AA01
4M106AA02
4M106BA20
4M106CB19
4M106DH20
4M106DH45
4M106DJ02
要約 【課題】シリコンウェーハ表層中の原子空孔を評価するための新たな方法と装置を提供する。
【解決手段】シリコン試料6の同一面に圧電薄膜29,30を介して一対の櫛状の櫛状電極31,32を形成する素子形成工程と、シリコン試料6を冷却して外部磁場を印加しながら櫛状電極の一方31から超音波パルスを発振するとともにシリコン試料6の表面を伝播した超音波パルスを櫛状電極の他方32により受信し、櫛状電極の一方31から発振された超音波パルスと櫛状電極の他方32により受信された超音波パルスとの位相差を検出する検出工程と、位相差に基づきシリコン試料6の表層の弾性定数を求め、温度に対する弾性定数の変化又は磁場強度に対する弾性定数の変化に基づいてシリコン試料6の表層中の原子空孔を評価する評価工程とを備えた。
【選択図】図3
特許請求の範囲 【請求項1】
シリコン試料の同一表面上に対向した一対の表面超音波素子を形成する素子形成工程と、前記シリコン試料を冷却して外部磁場を印加しながら前記表面超音波素子の一方から超音波パルスを発振するとともに前記シリコン試料の表面を伝播した超音波パルスを前記表面超音波素子の他方により受信し、前記表面超音波素子の一方から発振された超音波パルスと前記表面超音波素子の他方により受信された超音波パルスとの位相差を検出する検出工程と、前記位相差に基づき前記シリコン試料の表層の弾性定数Cを求め、温度に対する弾性定数Cの変化又は磁場強度に対する弾性定数Cの変化に基づいて前記シリコン試料の表層中の原子空孔濃度Nを評価する評価工程とを備えたことを特徴とするシリコンウェーハ表層中の原子空孔評価方法。
【請求項2】
前記検出工程は、10mK~20Kの温度で行われることを特徴とする請求項1記載のシリコンウェーハ表層中の原子空孔評価方法。
【請求項3】
前記検出工程は、0~10Tの磁場強度で行われることを特徴とする請求項1又は2記載のシリコンウェーハ表層中の原子空孔評価方法。
【請求項4】
前記表面超音波素子は、前記シリコン試料上に形成された圧電薄膜と、この圧電薄膜上に形成された櫛状電極とから形成されたことを特徴とする請求項1~3のいずれかに記載のシリコンウェーハ表層中の原子空孔評価方法。
【請求項5】
前記圧電薄膜は酸化亜鉛、窒化アルミニューム又はポリフッ化ビニリデンからなり、前記櫛状電極はAl又はCuからなることを特徴とする請求項4記載のシリコンウェーハ表層中の原子空孔評価方法。
【請求項6】
前記シリコン試料は銀板上又は銀フィルム上に貼付されたことを特徴とする請求項1~5のいずれかに記載のシリコンウェーハ表層中の原子空孔評価方法。
【請求項7】
前記評価工程において、前記シリコン試料の表層の弾性定数Cの低温ソフト化量ΔC/Cを求め、低温ソフト化量ΔC/C=1×10-4に対して原子空孔濃度N=(1.6±0.2)×1012cm-3が相当することに基いて原子空孔濃度Nを決定することを特徴とする請求項1~6のいずれかに記載のシリコンウェーハ表層中の原子空孔評価方法。
【請求項8】
前記評価工程において、前記シリコン試料の表層の弾性定数Cの10~50mKの範囲内における極低温での一定温度で0~10テスラの磁場を印加したときの磁場強度の変化に依存した変化量ΔC/Cを求め、変化量ΔC/C=1×10-4に対して原子空孔濃度N=(1.6±0.2)×1012cm-3が相当することに基いて原子空孔濃度Nを決定することを特徴とする請求項1~6のいずれかに記載のシリコンウェーハ表層中の原子空孔評価方法。
【請求項9】
超音波発振部と超音波受信部とを形成したシリコン試料と、前記シリコン試料に対し外部磁場を印加する磁力発生手段と、前記シリコン試料を冷却する冷却手段と、前記超音波発振部から発振された超音波パルスと、前記シリコン試料を伝播して前記超音波受信部により受信された超音波パルスとの位相差を検出する検出手段と備え、前記超音波発振部と前記超音波受信部は、前記シリコン試料の表面に形成された圧電薄膜上に形成された櫛状電極であって、前記シリコン試料の同一面に形成されたことを特徴とするシリコンウェーハ表層中の原子空孔評価装置。
【請求項10】
前記圧電薄膜は酸化亜鉛、窒化アルミニューム又はポリフッ化ビニリデンからなり、前記櫛状電極はAl又はCuからなることを特徴とする請求項9記載のシリコンウェーハ表層中の原子空孔評価装置。
【請求項11】
前記シリコン試料は銀板上又は銀フィルム上に貼付されたことを特徴とする請求項9又は10記載のシリコンウェーハ表層中の原子空孔評価装置。
【請求項12】
請求項1~8のいずれかに記載の原子空孔評価方法により評価された表層中の原子空孔濃度が表示されるとともに、表層中の原子空孔濃度がバルク中の原子空孔濃度とは区別して表示されたことを特徴とするシリコンウェーハ。
【請求項13】
シリコン試料の同一表面上に対向した一対の表面超音波素子を形成する素子形成工程と、前記シリコン試料を冷却して外部磁場を印加しながら前記表面超音波素子の一方から超音波パルスを発振するとともに前記シリコン試料の表面を伝播した超音波パルスを前記表面超音波素子の他方により受信し、前記表面超音波素子の一方から発振された超音波パルスと前記表面超音波素子の他方により受信された超音波パルスとの位相差を検出する検出工程と、前記位相差に基づき前記シリコン試料の表層の弾性定数Cを求め、温度に対する弾性定数Cの変化又は磁場強度に対する弾性定数Cの変化に基づいて前記シリコン試料の表層中の原子空孔濃度Nを評価する評価工程とを備えたことを特徴とするシリコンウェーハの製造方法。
【請求項14】
請求項13記載のシリコンウェーハの製造方法により製造されたことを特徴とするシリコンウェーハ。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、シリコンウェーハ表層中の原子空孔評価方法及び装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、DRAMやフラッシュメモリに代表される半導体素子(LSI:Large Scale Integration)は、通信機器等の高度化に伴い、多機能化、高品質化が進むとともに、携帯電話、携帯音楽プレイヤー、スマートフォンなどの普及によって、需要が急速に増加している。これに対応して、半導体素子の材料であるシリコンウェーハの需要も急速に増加しており、今後も増加すると予想される需要に対応するべく、高品質のシリコンウェーハを効率的に生産することができる技術が求められている。
【0003】
因みに、半導体産業において、シリコンウェーハは、一般的にチョクラルスキー法(CZ法)やフロートゾーン(FZ法)で製造される。これらの方法で形成されたシリコンウェーハには、一定の割合で格子欠陥が含まれる。この格子欠陥は、主に格子中のシリコン原子1個が抜けた原子空孔と格子の不規則な位置にシリコン原子が入った格子間原子からなる点欠陥である。とくに点欠陥である原子空孔が集合し二次欠陥であるボイドを形成すると、シリコンウェーハを用いて製造するデバイスの電気特性や歩留まりに悪影響を及ぼすことになる。従って、上記したような通信機器等に用いられるいわゆるハイエンド・デバイスの製造には、加工を施したアニールウェーハ、エピタキシャルウェーハ、及び、二次欠陥であるボイドの成長を抑制した完全結晶シリコンウェーハが使われている。
【0004】
ところが、アニールウェーハは、表面層のボイド欠陥を除去するために、基板ウェーハにアニール処理を施すものである。また、エピタキシャルウェーハは、ウェーハ上に不純物濃度と厚みを精密に制御したエピタキシャル層を形成するものである。すなわち、アニールウェーハ、及び、エピタキシャルウェーハでは、いずれもシリコンインゴットから切り出したシリコンウェーハに対し二次加工をする必要があるので、生産工数が増加することとなり、効率的にシリコンウェーハを生産することは困難である。また、アニールウェーハ、及び、エピタキシャルウェーハでは、大口径のウェーハ上(現在の300mmウェーハや開発が進んでいる450mmウェーハ)へ、上記した二次加工を施すことが困難であるという問題もある。
【0005】
このような理由から、近年では、2次欠陥であるボイドの成長を抑制し、点欠陥である原子空孔と格子間原子のみとした完全結晶シリコンウェーハが実用化されている。但し、この完全結晶シリコンウェーハにおいても、デバイスの電気特性や歩留りを向上するためには、結晶インゴット内における原子空孔リッチの部分の領域と、格子間原子リッチの部分の領域を判定する必要がある。さらに、一つの原子空孔リッチの部分の領域の中においても、原子空孔濃度の分布をデバイス製造に先だって事前に評価することが必要である。
【0006】
したがって、点欠陥を制御した高品質CZシリコン結晶インゴットの成長技術の開発には超音波計測による原子空孔濃度の定量評価が必要となっている。上記CZシリコン結晶インゴットをスライスして製造される完全結晶シリコンウェーハ中の原子空孔の存在濃度を超音波計測によって予め評価することで、完全結晶シリコンウェーハを用いたデバイスの製造における特性制御が可能であり、歩留り向上に大きな寄与があると期待されている。
【0007】
本発明者らのうちの1人は、これまでに超音波計測を用いた原子空孔分析装置を提案している(特許文献1)。この原子空孔分析装置では、シリコン試料に外部磁場を印加し、冷却しながら結晶試料に超音波を通過させて、シリコン試料での超音波音速変化とシリコン試料の冷却温度との関係を示す曲線の急峻な落ち込み量に基づいて、原子空孔濃度を求めるものである。
【0008】
ところで、デバイス製造ではシリコンウェーハ表層の1~3μmだけを用いているので、半導体産業では、デバイス動作領域を含むウェーハ表層の原子空孔を計測したいとの強い要請がある。しかし、シリコンウェーハ内部の原子空孔濃度とは区分して、シリコンウェーハ表層中の原子空孔を計測する技術は今まで知られていなかった。
【先行技術文献】
【0009】

【特許文献1】特開平7一174742号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
そこで本発明は、上記した問題点に鑑み、シリコンウェーハ表層中の原子空孔を評価するための新たな方法と装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明のシリコンウェーハ表層中の原子空孔評価方法は、シリコン試料の同一表面上に対向した一対の表面超音波素子を形成する素子形成工程と、前記シリコン試料を冷却して外部磁場を印加しながら前記表面超音波素子の一方から超音波パルスを発振するとともに前記シリコン試料の表面を伝播した超音波パルスを前記表面超音波素子の他方により受信し、前記表面超音波素子の一方から発振された超音波パルスと前記表面超音波素子の他方により受信された超音波パルスとの位相差を検出する検出工程と、前記位相差に基づき前記シリコン試料の表層の弾性定数Cを求め、温度に対する弾性定数Cの変化又は磁場強度に対する弾性定数Cの変化に基づいて前記シリコン試料の表層中の原子空孔濃度Nを評価する評価工程とを備えたことを特徴とする。
【0012】
また、前記検出工程は、20mK~20Kの温度で行われることを特徴とする。
【0013】
また、前記検出工程は、0~9Tの磁場強度で行われることを特徴とする。
【0014】
また、前記表面超音波素子は、前記シリコン試料上に形成された圧電薄膜と、この圧電薄膜上に形成された櫛状電極とから形成されたことを特徴とする。
【0015】
また、前記圧電薄膜は酸化亜鉛、窒化アルミニューム又はポリフッ化ビニリデンからなり、前記櫛状電極はAl又はCuからなることを特徴とする。
【0016】
また、前記シリコン試料は銀板上又は銀フィルム上に貼付されたことを特徴とする。
【0017】
また、前記評価工程において、前記シリコン試料の表層の弾性定数Cの低温ソフト化量ΔC/Cを求め、低温ソフト化量ΔC/C=1×10-4に対して原子空孔濃度N=(1.6±0.2)×1012cm-3が相当することに基いて原子空孔濃度Nを決定することを特徴とする。
【0018】
また、前記評価工程において、前記シリコン試料の表層の弾性定数Cの10~50mKの範囲内における極低温での一定温度で0~10テスラの磁場を印加したときの磁場強度の変化に依存した変化量ΔC/Cを求め、変化量ΔC/C=1×10-4に対して原子空孔濃度N=(1.6±0.2)×1012cm-3が相当することに基いて原子空孔濃度Nを決定することを特徴とする。
【0019】
本発明のシリコンウェーハ表層中の原子空孔評価装置は、超音波発振部と超音波受信部とを形成したシリコン試料と、前記シリコン試料に対し外部磁場を印加する磁力発生手段と、前記シリコン試料を冷却する冷却手段と、前記超音波発振部から発振された超音波パルスと、前記シリコン試料を伝播して前記超音波受信部により受信された超音波パルスとの位相差を検出する検出手段とを備え、前記超音波発振部と前記超音波受信部は、前記シリコン試料の表面に形成された圧電薄膜上に形成された櫛状電極であって、前記シリコン試料の同一面に形成されたことを特徴とする。
【0020】
また、上記において、前記圧電薄膜は酸化亜鉛、窒化アルミニューム又はポリフッ化ビニリデンからなり、前記櫛状電極はAl又はCuからなることを特徴とする。
【0021】
また、上記において、前記シリコン試料は銀板上又は銀フィルム上に貼付されたことを特徴とする。
【0022】
本発明のシリコンウェーハは、上記のいずれかに記載の原子空孔評価方法により評価された表層中の原子空孔濃度が表示されるとともに、表層中の原子空孔濃度とバルク中の原子空孔濃度が区別して表示されたことを特徴とする。
【0023】
本発明のシリコンウェーハの製造方法は、シリコン試料の同一表面上に対向した一対の表面超音波素子を形成する素子形成工程と、前記シリコン試料を冷却して外部磁場を印加しながら前記表面超音波素子の一方から超音波パルスを発振するとともに前記シリコン試料の表面を伝播した超音波パルスを前記表面超音波素子の他方により受信し、前記表面超音波素子の一方から発振された超音波パルスと前記表面超音波素子の他方により受信された超音波パルスとの位相差を検出する検出工程と、前記位相差に基づき前記シリコン試料の表層の弾性定数Cを求め、温度に対する弾性定数Cの変化又は磁場強度に対する弾性定数Cの変化に基づいて前記シリコン試料の表層中の原子空孔濃度Nを評価する評価工程とを備えたことを特徴とする。
【0024】
本発明のシリコンウェーハは、上記のシリコンウェーハの製造方法により製造されたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0025】
本発明のシリコンウェーハ表層中の原子空孔評価方法及び装置によれば、シリコンウェーハ内部の原子空孔濃度とは区分して、シリコンウェーハ表層中の原子空孔濃度を計測することができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明のシリコンウェーハ表層中の原子空孔評価装置の実施形態において、シリコン試料を冷却する部分を示す概略図である。
【図2】同上シリコン試料をセッティングした試料ホルダー部の写真である。
【図3】同上シリコン試料の構成を模式的に示す斜視図である。
【図4】同上シリコン試料を示す写真である。
【図5】同上検出手段の構成を示すブロック図である。
【図6】ボロン添加CZウェーハ表層を伝播する表面超音波(SAW)の弾性定数Cの温度依存性を示すグラフである。
【図7】ボロン添加CZウェーハ表層を伝播する表面超音波(SAW)の弾性定数Cの磁場中温度依存性を示すグラフである。
【図8】ボロン添加CZウェーハ表層を伝播する表面超音波(SAW)の低温における弾性定数Cの磁場依存性を示すグラフである。
【図9】図7に示したボロン添加CZウェーハ表層を伝播する表面超音波(SAW)の弾性定数Cの磁場中温度依存性の理論解析を示すグラフである。
【図10】図8に示したボロン添加CZウェーハ表層を伝播する表面超音波(SAW)の弾性定数Cの磁場依存性の理論解析を示すグラフである。
【図11】(001)面を持つシリコン表面上を[100]方向に伝搬する表面弾性波の振動の様子を示すチャートである。
【図12a】表面超音波(SAW)が励起する変位ベクトルu、uに含まれる対称歪み成分ε、ε、ε、εzxの振動の様子を示すグラフであって、εとεzx及び、εとεは相互に逆位相で振動しながらx方向に伝搬している様子を示す。
【図12b】表面超音波(SAW)が励起する変位ベクトルu、uに含まれる対称歪み成分ε、ε、ε、εzxの振動の様子を示すグラフであって、εとεzx及び、εとεはz方向、すなわちシリコンウェーハ面内において、相互に逆位相で振動しながら減衰する様子を示す。
【図13a】表面超音波(SAW)が励起する変位ベクトルu、uに含まれる対称歪み成分ε、ε、ε、εzxの振動エネルギーの様子を示すグラフであって、x軸方向に進行するSAWのエネルギーを示す。x軸方向に進行するSAWのエネルギーは、時間に依存して振動ながら伝搬する部分Utotalと、時間に依存しない部分とから構成されている。
【図13b】表面超音波(SAW)が励起する変位ベクトルu、uに含まれる対称歪み成分ε、ε、ε、εzxの振動エネルギーの様子を示すグラフであって、時間に依存して振動するUtotalのシリコンウェーハ内部への侵入の様子を示す。
【図14】表面超音波の温度変化(図6)とその磁場依存性(図7、図8)から原子空孔濃度を決定するために用いる理論解析(図9、図10)の基礎となる原子空軌道の量子状態の様子を示す説明図である。
【図15】理論解析(図9、図10)に用いた、四極子感受率の温度依存性と磁場依存性を示すグラフである。
【図16】表面超音波が誘起する対称化された弾性歪みと原子空孔軌道がもつ電気四極子を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本発明のシリコンウェーハ表層中の原子空孔評価方法及び装置について、実施例に基づいて詳細に説明する。
【実施例1】
【0028】
[シリコンウェーハ表層中の原子空孔評価装置]
本実施例のシリコンウェーハ表層中の原子空孔評価装置の構成について説明する。
【実施例1】
【0029】
本実施例のシリコンウェーハ表層中の原子空孔評価装置を示す図1において、装置1は、試料ホルダー部2、冷却手段としての希釈冷凍機3、磁力発生手段4、及び検出手段たる検出同軸ライン5を備える。この装置1は、全体として、試料ホルダー部2に設置したシリコン試料6に外部磁場を印加した状態で、該シリコン試料6を所定温度に冷却し、シリコン試料6の表層中を伝播した超音波パルスの音速を検出可能に構成されている。
【実施例1】
【0030】
磁力発生手段4は、シリコン試料6に対し外部磁場を印加するため、シリコン試料6がセッティングされた位置を取り囲んで配置されている。磁力発生手段4としては、例えば、超伝導磁石を用いることができる。また、シリコン試料6に対し外部磁場を必要に応じて印加した状態で、シリコン試料6の表層中を伝播した超音波パルスの音速を検出するため、磁力発生手段4は、少なくとも0~10テスラの範囲で制御可能に構成されている。
【実施例1】
【0031】
希釈冷凍機3は、試料ホルダー部2に設置したシリコン試料6を冷却し、少なくとも20mK~20Kの範囲で制御可能に構成されている。本実施例において、希釈冷凍機3は、He-He混合ガス系10と、He系11の2系統からなり、デューワ12内を所定温度に冷却可能に構成されている。デューワ12は、内層12aと外層12bの二重構造を有し、この内層12aと外層12bとの間に真空の空間12cが形成されている。このデューワ12内には、液体のHeが貯留されている。
【実施例1】
【0032】
He-He混合ガス系10は、希釈冷凍機3としての冷却能力を得るように構成されている。このHe-He混合ガス系10は、貯留タンク14、循環ポンプ15、コンデンサ16、混合器17、及び分留器18を備える。循環ポンプ15は、通常のポンプとは異なり、Heが外気へ逃げないような構造がとられている。コンデンサ16は、循環ポンプ15から送り出されたHeガスを冷却してHe濃厚相とHe希薄相とに相分離するようになっている。
【実施例1】
【0033】
混合器17は、希釈冷凍機3において最も温度が低い部分である。この混合器17内には、相分離したHe-He混合液の界面が存在する。混合器17内の上半分は、He濃厚相であり、上記コンデンサ16から絶えず供給されている。また、混合器17内の下半分はHe希薄相(濃度約6%で、残りが超流動He)であり、分留器18へとつながっている。この混合器17において、Heは、エントロピーが大きい濃厚相から、エントロピーが殆どない希薄相に強制的に移動させられ、このときに生ずるエントロピー差によって、希釈冷凍機3の冷却能力が生じるようになっている。
【実施例1】
【0034】
分留器18は、希薄相にあるHeのみを選択的に蒸発させ得るように構成されている。この分留器18は、所定温度(例えば、0.8K以下)に保持されるようになっている。これにより、分留器18は、Heの蒸気圧は0であるのに対し、Heの蒸気圧は有限に保たれる現象を利用して、Heのみを蒸発させるようになっている。
【実施例1】
【0035】
He系11は、Heガスを液化可能に構成されている。このHe系は、排気ポンプを有する1Kポット20を備えている。このHe系11では、1Kポット20内のHeを排気ポンプで排気することにより、冷却能力を得るようになっている。本実施例では、コンデンサ16を介してデューワ12内から直接4.2KのHe液を取り込むことにより、連続的な運転が可能に構成され、コンデンサ16においてHeガスを液化するようになっている。
【実施例1】
【0036】
なお、図1では、シリコン試料6をセッティングした試料ホルダー部2が、混合器17内ではHe濃厚相とHe希薄相とに相分離する構成を示している。本実施例では冷却した混合器17を形成する部材を熱伝導率の高い材質で構成し、混合器17を形成する部材からの熱伝導を利用してシリコン試料6を間接的に冷却するようにしている。このような構成とした場合には、特に冷却する温度域を高温側に広げられる点で有利である。
【実施例1】
【0037】
検出同軸ライン5は、シリコンウェーハの表面に対し超音波パルスを発振し、発振させた超音波パルスをシリコンウェーハ表層中に伝播させた超音波パルスを受信し、シリコンウェーハ表層中を伝播した超音波パルスの音速を検出可能に構成されている。
【実施例1】
【0038】
図2に示すように、シリコン試料6は、純銀からなる銀板21に貼付されて試料ホルダー部2に保持されている。ここで、銀板21は、シリコン試料6に接触してシリコン試料6を冷却して、外部磁場を印加しても温度変動の影響を受けにくくするために設けられている。また、シリコン試料を冷却するための銀線22,23が設けられている。
【実施例1】
【0039】
また、図3に示すように、シリコン試料6は、シリコンウェーハ26と、シリコンウェーハ26の一面に設けられた表面超音波素子(SAW素子)としての超音波発振部27、超音波受信部28とからなる。この超音波発振部27と超音波受信部28は、シリコンウェーハ26の同一面に形成されており、シリコンウェーハ26上に形成された圧電薄膜29,30と、さらにその上に形成されシリコンウェーハ表層中に電場を印加するための櫛状電極31,32を備えている。そして、これら圧電薄膜29,30と櫛状電極31,32により、トランスデューサが構成されている。なお、本実施例において、圧電薄膜29,30は厚さ2μmのZnOからなり、それぞれ接地されている。また、櫛状電極31,32は、Al又はCuからなり、細線を複数回折り曲げて平行に配置したいわゆる櫛状に形成されている。なお、圧電薄膜29,30はスパッター法などにより形成され、櫛状電極31,32はフォトリソグラフィー法などにより形成することができる。櫛状電極31,32の厚さは1μm以下、細線の幅Wは2.5μm、細線の間隔は幅Wと同じ2.5μmとなっている。なお、細線の幅Wは、超音波発振部27から発振される超音波パルスの波長λの4分の1となる。そして、櫛状電極31,32は、図示するように、相互にそれぞれの細線を平行にした状態で、かつ、相互に対向して設けられている。
【実施例1】
【0040】
図4に実際に作成したシリコン試料6を示す。下方の部分拡大図において黒い部分がZnOからなる圧電薄膜29、白い部分がその上に形成されたAlからなる櫛状電極31である。圧電薄膜29はスパッター法により形成され、櫛状電極31はフォトリソグラフィー法により形成されている。シリコン試料6は、縦寸法10mm、横寸法40mm、厚さ0.776mmの短冊状となっている。
【実施例1】
【0041】
つぎに、図5に基づいて検出同軸ライン5の構成と作用について説明する。検出同軸ライン5は、シリコン試料6に印加される超音波パルスの基本信号を直接測定した参照信号と、シリコン試料6の表層中を伝播した表面超音波パルスの測定信号との位相差を検出するように構成されている。本実施例では、検出同軸ライン5は、標準信号発生器35、周波数カウンタ36、パーソナルコンピュータ37、ダイオードスイッチ38、パルス発生器39、位相移行器40、及び、位相検出器41を備えている。
【実施例1】
【0042】
標準信号発生器35は、基本信号を発生する。この基本信号は、参照信号系5aと測定信号系5bとに分岐される。尚、周波数カウンタ36は、基本信号を計測し、その結果をパーソナルコンピュータ37に出力する。
【実施例1】
【0043】
参照信号系5aは、位相移行器40を介して、位相検出器41に接続されている。一方、測定信号系5bは、パルス発生器39が接続されたダイオードスイッチ38、シリコン試料6が順に配置され、位相検出器41に接続されている。ダイオードスイッチ38は、基本信号を所定の幅に分割する。
【実施例1】
【0044】
位相検出器41は、基本信号に基づく参照信号と、シリコン試料6から出力された測定信号とを比較して、シリコンウェーハ26中の超音波パルスの音速を検出する。
【実施例1】
【0045】
なお、検出同軸ライン5は、温度や磁場で音速が変化することで生じる位相差が一定になるように発振周波数を変化させ零検出を行う手段を有することがより好適である。また、多数個のシリコン試料6及び一のシリコン試料6の複数点について、同時に位相差を測定できるように構成するのが好ましい。
【実施例1】
【0046】
[シリコンウェーハ表層中の原子空孔評価方法]
つぎに、本実施例のシリコンウェーハ表層中の原子空孔評価方法について説明する。
【実施例1】
【0047】
まず、シリコンインゴットから所定の部位を切り出したシリコンウェーハ26の表面に、超音波発振部27と超音波受信部28とをそれぞれ形成したシリコン試料6に対し、外部磁場を必要に応じて印加した状態で、20K以下の温度域まで冷却する。
【実施例1】
【0048】
つぎに、標準信号発生器35により、基本信号を発振する。この基本信号は、参照信号系5aと測定信号系5bとに分岐される。測定信号系5bの基本信号は、ダイオードスイッチ38によって例えば0.5μsの幅に分割される。
【実施例1】
【0049】
ダイオードスイッチ38によって分割された基本信号によって、櫛状電極31,32間に電場としての交流電場が印加される。この交流電場によって、圧電薄膜29が分極して弾性歪みが現れ、これにより超音波発振部27は、基本信号に基づいて超音波パルスを発生する。このようにして、基本信号は、超音波発振部27によって、機械信号、すなわち、超音波パルスに変換される。
【実施例1】
【0050】
超音波パルスは、シリコンウェーハ26の表面から超音波パルスの波長λ~10μm以下における表層中を伝搬する。シリコンウェーハ26の表層中を伝搬する超音波パルスは、超音波受信部28において測定波パルスとして受信され、再び電気信号に変換され測定信号として出力される。
【実施例1】
【0051】
この測定信号と参照信号とを位相検出器41において比較し、超音波パルスと測定波パルスとの位相差φを計測する。この位相差φを用いて、音速vを式1:φ=2πlf/vより算出する。ここで、lは表面超音波の伝搬長であり、fは超音波周波数である。こうして実測した音速は4.967km/秒である。これは、表面弾性波の理論計算か予想されるレイリー波の計算結果4.844km/秒と良く一致している。
【実施例1】
【0052】
このようにして算出された音速vから、弾性定数Cを式2:C=ρvより算出する。ここで、ρ-=2.33g/cmはシリコンの密度である。
【実施例1】
【0053】
上記のようにして、超音波パルスの位相差φより音速vを検出する。そして、音速vから冷却温度の低下に伴う弾性定数Cを算出し、弾性定数Cの減少量からシリコンウェーハ26中に存在する原子空孔の種類と濃度を定量的に評価することができる。或いは、温度を一定として磁場強度の低下に伴う弾性定数Cを算出し、弾性定数Cの減少量からシリコンウェーハ26中に存在する原子空孔の濃度を定量的に評価することができる。弾性定数の減少量と原子空孔濃度とが比例するからである。
【実施例1】
【0054】
ボロン添加CZウェーハを用いてシリコン試料6を作成し、4Kから低温度域に冷却したときの冷却温度に対する弾性定数の変化を測定すると、例えば図6のようなグラフを得ることができる。ここで、超音波パルスの周波数は523MHz、伝搬方向は結晶方位[001]と平行、櫛状電極31,32間の距離dは15mm、磁場強度は0Tである。このグラフは、温度の逆数に比例して弾性定数Cが著しく低下、すなわち、低温ソフト化していることを表している。なお、この例では、1.16K付近において、櫛状電極31,32を構成するAlの超伝導転移による弾性定数Cの観測値の変化が確認されている。
【実施例1】
【0055】
なお、原子空孔の周りの1nm以上に大きく拡がった原子空孔軌道は、巨大な電気四極子をもち、超音波歪みと極めて強く結合している。さらに、基底状態は軌道縮退している絶対零度に近づくと低温ソフト化が顕著になる。また、原子空孔軌道には3個の電子が収納されているので、磁性を帯びる。このような原子空孔軌道の量子状態を利用することにより、原子空孔濃度を評価することができる。
【実施例1】
【0056】
以下、理論数式に基いて、シリコン試料の表層の弾性定数Cの低温ソフト化量ΔC/Cと、原子空孔濃度Nの関係について詳細に説明する。
【実施例1】
【0057】
本実施例においては、シリコン表面(001)を[100]方向に伝搬する表面超音波弾性波を例にとって説明しているが、図11に示すように縦波成分uと横波成分uが楕円軌道を描きながら運動する。表面超音波の弾性定数Cの低温ソフト化は、表面超音波が誘起する歪みと原子空孔軌道の電気四極子との相互作用によって起きる。
【実施例1】
【0058】
図12aと図12bに示した表面超音波(SAW)が励起する変位ベクトルu、uに含まれる対称歪みε、ε、ε、εzxの振動は
【実施例1】
【0059】
【数1】
JP2014168042A_000003t.gif
【実施例1】
【0060】
と書ける。ここに、表面超音波のz軸方向への減衰と振動をあらわすパラメーターは
【実施例1】
【0061】
【数2】
JP2014168042A_000004t.gif
【実施例1】
【0062】
であり、対称歪みの振幅Aと位相θのパラメーターは
【実施例1】
【0063】
【数3】
JP2014168042A_000005t.gif
【実施例1】
【0064】
である。
【実施例1】
【0065】
表面超音波が誘起する対称歪みと電気四極子との相互作用は
【実施例1】
【0066】
【数4】
JP2014168042A_000006t.gif
【実施例1】
【0067】
と書ける。ここに、x軸方向に振動しながら伝搬し、z軸方向に減衰する様子を表す関数を
【実施例1】
【0068】
【数5】
JP2014168042A_000007t.gif
【実施例1】
【0069】
を用いてある。さらに、
【実施例1】
【0070】
【数6】
JP2014168042A_000008t.gif
【実施例1】
【0071】
は入力する表面超音波の振幅Uに比例するパラメーターである。kは表面超音波の波数である。
【実施例1】
【0072】
摂動ハミルトニアン(式(4))を用いて、シリコン格子と原子空孔軌道との結合系の自由エルギーを外部摂動δ の2次過程まで計算する。さらに、自由エルギーの外部摂動aについての2回微分を計算することで、弾性定数Cの低温ソフト化(図5)、その磁場中温度依存性(図6)、低温での磁場依存性(図7)を理論的に解析することができる。
【実施例1】
【0073】
つぎに、
【実施例1】
【0074】
【数7】
JP2014168042A_000009t.gif
【実施例1】
【0075】
を用いて解析を行う。表面超音波の弾性定数Cの温度依存性と磁場依存性は、図15に示した四極子感受率χ(O)、χ(O)及びχ(Ozx)の温度磁場依存性を用いる。その際、別途本願発明者らが求めた四極子-歪み結合定数(Strong Quadrupole-Strain Interaction of Vacancy Orbital in Boron-Doped Czochralski Silicon: Kazuki Okabe, Mitsuhiro Akatsu, Shotaro Baba, Keisuke Mitsumoto, Yuichi Nnemoto, Hiroshi Yamada-Kaneta, Terutaka Goto, Hiroyuki Saito, Kazuhiko Kashima, and Yoshihiko Saito, Journal of Physical Society of Japan, Vol. 82, No. 12, Article ID 124604、掲載予定日:2013年11月13日)
【実施例1】
【0076】
【数8】
JP2014168042A_000010t.gif
【実施例1】
【0077】
【数9】
JP2014168042A_000011t.gif
【実施例1】
【0078】
を用いる。
【実施例1】
【0079】
さらに、式(1)に現れるバックグランドC
【実施例1】
【0080】
【数10】
JP2014168042A_000012t.gif
【実施例1】
【0081】
で記述されるようなゆるやかな温度変化を示し、
【実施例1】
【0082】
【数11】
JP2014168042A_000013t.gif
【実施例1】
【0083】
となる。
【実施例1】
【0084】
図9と図10は、式(7)を用いた理論計算の結果であり、図7と図8の実験結果を再現している。こうして、実施例で用いたシリコンウェーハの表層(侵入長λ=3μmの程度)に存在する原子空孔濃度Nは、低温ソフト化の大きさΔC/C=1.9×10-4に比例し、N=3.1×1012cm-3と評価できた。これは、表面超音波の弾性定数Cのソフト化がΔC/C=10-4を単位として、原子空孔濃度N=(1.6±0.2)×1012cm-3に相当することを示している。ここでは、結合定数に含まれる誤差を考慮している。これにより、表層の原子空孔濃度を決定する方法が確立された。
【実施例1】
【0085】
なお、表面超音波の低温ソフト化は外部から印加する磁場によって消失するが、磁場の印加方向によって消失する振る舞いが異なる。磁場を表面超音波の進行方向に平行に印加する場合、磁場を表面超音波の進行方向に垂直でウェーハ表面に平行に印加する場合、磁場をウェーハ表面に垂直に印加する場合について異なる振る舞いをする。表面超音波の低温ソフト化の印加磁場依存性により表層の原子空孔濃度を評価できる。
【実施例1】
【0086】
図7にボロン添加CZウェーハ表層中の弾性定数の磁場依存性、図8にボロン添加CZウェーハ表層中の弾性定数の磁場中温度依存性を示す。ここで、超音波パルスの周波数は523MHz、伝搬方向は結晶方位[001]と平行、磁場の印加方向は結晶方位[001]と平行、櫛状電極31,32間の距離dは7.5mmであり、図8は温度をそれぞれ4K、1.5K、700mK、300mK、23mKに一定にした場合、図7は磁場強度をそれぞれ0T、0.4T、1T、2Tに一定にした場合を示している。この低温ソフト化の磁場依存性の観測により、磁場による低温ソフト化の回復量と一定磁場中の低温ソフト化量が一致することが確認されている。
【実施例1】
【0087】
以上のように、本実施例のシリコンウェーハ表層中の原子空孔評価方法は、シリコン試料6の同一面に圧電薄膜である圧電薄膜29,30を介して櫛状の櫛状電極31,32を形成して対向した一対の表面超音波素子を形成する素子形成工程と、前記シリコン試料6を冷却して外部磁場を印加しながら前記表面超音波素子の一方31から超音波パルスを発振するとともに前記シリコン試料6の表面を伝播した超音波パルスを前記表面超音波素子の他方32により受信し、前記表面超音波素子の一方31から発振された超音波パルスと前記櫛状電極の他方32により受信された超音波パルスとの位相差を検出する検出工程と、前記位相差に基づき前記シリコン試料6の表層の弾性定数を求め、温度に対する弾性定数の変化又は磁場強度に対する弾性定数の変化に基づいて前記シリコン試料6の表層中の原子空孔を評価する評価工程とを備えたものである。
【実施例1】
【0088】
また、上記において、好ましくは、前記検出工程は、20mK~20Kの温度で行われる。
【実施例1】
【0089】
また、上記において、好ましくは、前記圧電薄膜29,30はZnOからなり、前記櫛状電極31,32はAl又はCuからなる。
【実施例1】
【0090】
また、上記において、好ましくは、前記シリコン試料6は銀板21上に貼付されている。
【実施例1】
【0091】
また、本実施例のシリコンウェーハ表層中の原子空孔評価装置1は、超音波発振部27と超音波受信部28とを形成したシリコン試料6と、前記シリコン試料6に対し外部磁場を印加する磁力発生手段4と、前記シリコン試料6を冷却する冷却手段3と、前記超音波発振部27から発振された超音波パルスと、前記シリコン試料6を伝播して前記超音波受信部28により受信された超音波パルスとの位相差を検出する検出同軸ライン5と備え、前記超音波発振部27と前記超音波受信部28は、前記シリコン試料6の表面に形成された圧電薄膜29,30上に形成された櫛状の櫛状電極31,32であって、前記シリコン試料6の同一面に形成されたものである。
【実施例1】
【0092】
本実施例のシリコンウェーハ表層中の原子空孔評価方法及び装置によれば、シリコンウェーハの表層中を伝播する高周波の超音波を測定することにより、シリコンウェーハ内部の原子空孔濃度とは区分して、10μmより薄いシリコンウェーハ表層中の原子空孔濃度を計測することができる。
【実施例1】
【0093】
そして、本発明によれば、性能評価のためのテストウエーハを作り測定する半導体開発作業に大きな技術的進化が望める。半導体産業で用いられているニュートラルウェーハ、アニールウェーハ、エピタキシャルウェーハでは、従来からボロン添加濃度を示す抵抗率、酸素濃度、ボイドを意味するCOP濃度などを表示して販売されていたが、さらに、超音波で計測した原子空孔濃度の数量を表示したシリコンウェーハの半導体産業での実用化が可能となる。シリコンウェーハ中の原子空孔は、半導体製造プロセスにおける酸化物の微少欠陥(BMD)析出を支配する要因になっている。このため、ウェーハに原子空孔濃度を表示することが実用化されると、ますます微細化が進行するメモリー、演算素子(CPU)、イメージセンサーなどの最先端デバイスの製造の歩留まりが飛躍的に向上する。クリーンエネルギーの制御で今注目を集めているパワー半導体の高性能化などに大きく寄与できる。
【実施例1】
【0094】
なお、本実施例では、シリコン試料6は銀板21上に貼付されたが、銀フィルム上に貼付されてもよい。
【実施例1】
【0095】
このほか、本発明は上記実施例に限らず、種々の変形実施が可能である。例えば、検出工程は、0~10Tの範囲内の任意の磁場強度で行うことができる。また、圧電薄膜29,30は、酸化亜鉛(ZnO)のほか、窒化アルミニューム(AlN)又はポリフッ化ビニリデン(PVDF)から構成してもよい。
【実施例1】
【0096】
また、表面超音波素子の共鳴周波数を0.5~10GHzの範囲として、シリコン表層の3.5~0.18mmに存在する原子空孔濃度を選択的に評価するようにしてもよい。また、超音波発振部と超音波受信部は、パルス幅が0.1~1μ秒である超音波パルスを用いるように構成されてもよい。
【符号の説明】
【0097】
1 原子空孔評価装置
3 希釈冷凍機(冷却手段)
4 磁力発生手段
5 検出同軸ライン(検出手段)
6 シリコン試料
21 銀板
27 超音波発振部
28 超音波受信部
29,30 圧電薄膜
31,32 櫛状電極
図面
【図5】
0
【図7】
1
【図8】
2
【図9】
3
【図10】
4
【図11】
5
【図12a】
6
【図12b】
7
【図13a】
8
【図13b】
9
【図1】
10
【図2】
11
【図3】
12
【図4】
13
【図6】
14
【図14】
15
【図15】
16
【図16】
17