TOP > 国内特許検索 > π電子化合物及び硬化反応可視化剤 > 明細書

明細書 :π電子化合物及び硬化反応可視化剤

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 公開特許公報(A)
公開番号 特開2015-113312 (P2015-113312A)
公開日 平成27年6月22日(2015.6.22)
発明の名称または考案の名称 π電子化合物及び硬化反応可視化剤
国際特許分類 C07D 487/04        (2006.01)
C09K  11/06        (2006.01)
C09K   3/00        (2006.01)
C09K   5/00        (2006.01)
C09J  11/06        (2006.01)
C09D   7/12        (2006.01)
FI C07D 487/04 137
C07D 487/04 CSP
C09K 11/06
C09K 3/00 Y
C09K 5/00 101
C09J 11/06
C09D 7/12
請求項の数または発明の数 5
出願形態 OL
全頁数 11
出願番号 特願2013-257581 (P2013-257581)
出願日 平成25年12月13日(2013.12.13)
発明者または考案者 【氏名】齊藤 尚平
【氏名】山口 茂弘
出願人 【識別番号】504139662
【氏名又は名称】国立大学法人名古屋大学
個別代理人の代理人 【識別番号】110000017、【氏名又は名称】特許業務法人アイテック国際特許事務所
審査請求 未請求
テーマコード 4C050
4J038
4J040
Fターム 4C050AA01
4C050AA08
4C050BB04
4C050CC04
4C050EE02
4C050FF01
4C050GG03
4C050HH01
4J038JA02
4J038JA03
4J038JA18
4J038JA33
4J038JA55
4J038KA06
4J038KA12
4J038MA09
4J038NA19
4J040HB02
4J040HB03
4J040HB08
4J040HB18
4J040HB30
4J040KA35
4J040KA43
4J040LA11
要約 【課題】接着剤などのように液状物から固形物へ変化する化学品が硬化する過程を肉眼で観察するのに適した新規なπ電子化合物を提供する。
【解決手段】本発明のπ電子化合物は、下記式(1)で表される。式(1)中、Rは、分岐を有するアルキル基か、少なくとも2位と6位に同じか互いに異なるアルキル基を備えたフェニル基である。このπ電子化合物は、溶剤としてケトン類、酢酸エステル類、アルコール類及びシクロアルカン類の1種又は2種以上を含む液状物が硬化する過程を肉眼で観察するための硬化反応可視化剤の主成分として利用可能である。
【化1】
JP2015113312A_000013t.gif
【選択図】なし
特許請求の範囲 【請求項1】
下記式(1)で表される新規なπ電子化合物。
【化1】
JP2015113312A_000012t.gif
(式(1)中、Rは、分岐を有するアルキル基か、少なくとも2位と6位に同じか互いに異なるアルキル基を備えたフェニル基である)
【請求項2】
前記アルキル基は、R1CH2(R2CH2)CHCH2-(但し、R1は水素原子又はアルキル基であり、R2はアルキル基である)で表されるアルキル基である、請求項1に記載のπ電子化合物。
【請求項3】
前記フェニル基は、2,4,6-トリアルキルフェニル基又は2,6-ジアルキルフェニル基である、
請求項1に記載のπ電子化合物。
【請求項4】
溶剤としてケトン類、酢酸エステル類、アルコール類及びシクロアルカン類の1種又は2種以上を含む液状物が硬化する過程を肉眼で観察するための硬化反応可視化剤であって、
請求項1~3のいずれか1項に記載のπ電子化合物を主成分とする硬化反応可視化剤。
【請求項5】
前記液状物は、接着剤、塗料又は保冷剤である、請求項4に記載の硬化反応可視化剤。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、π電子化合物及びこれを含む硬化反応可視化剤に関する。
【背景技術】
【0002】
本発明者らは、既に、非特許文献1で、フレキシブルで非平面のπジョイントと2つの剛直で平面状のウイングとで構成されたπ共役系化合物を報告した。具体的には、πジョイントとしてシクロオクタテトラエン、ウイングとして発光性アントラセンイミドを持ち、両者を縮環させた構造のπ共役系化合物A(R=n-Bu)を合成し、その性質を調べた。そうしたところ、化合物Aは、ポリマーマトリクス中では青色、溶液中では緑色、結晶では赤色の発色を示すことを見いだした。化合物Aは、ポリマーマトリクス中ではπジョイントを挟んで両ウイングがV字をなすV字型構造になり、溶液中ではπジョイントと両ウイングとが同一平面に並んだ平面型構造になり、結晶中ではV字型構造が積み重なったスタッキング構造になると考えられる。また、化合物Aは、MTHF溶液(MTHFは2-メチルテトラヒドロフラン)では温度に依存して発光色が変化した。すなわち、温度163KでMTHF溶液が液体の場合には緑色に発光したのに対して、温度77KでMTHF溶液がガラス化した場合には青色に発光した。
【0003】
【化1】
JP2015113312A_000002t.gif

【先行技術文献】
【0004】

【非特許文献1】J. Am. Chem. Soc., 2013, vol.135, p8842-8845
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
こうした結果を踏まえて、本発明者らは、化合物Aを用いれば、接着剤の硬化の過程をリアルタイムで可視化できるのではないかと考えた。即ち、接着剤の硬化前では液状のため緑色に発色し、接着剤の硬化後では固形のため青色に発色し、その色の変化を肉眼で観察して硬化の過程を把握できると考えた。接着剤は、硬化が完了したか否かの判断が難しい。接着剤の硬化が完了していないにもかかわらず硬化が完了したと判断してしまうと、次の工程において接着剤で接着されていた2つの部材が接着力不足により剥がれてしまうおそれがある。接着剤の硬化の過程をリアルタイムで可視化することは、こうしたおそれの発生を防止することができる。
【0006】
しかしながら、上述した化合物Aを接着剤に添加しただけでは、接着剤の硬化の過程に応じて発色が変わる様子が見られなかった。
【0007】
本発明は、このような課題を解決するためになされたものであり、接着剤などのように液状物から固形物へ変化する化学品が硬化する過程を肉眼で観察するのに適した新規なπ電子化合物を提供することを主目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、化合物Aを接着剤に添加しただけでは接着剤の硬化の過程に応じて発色が変わる様子が見られなかった原因を追究した。そうしたところ、化合物Aと接着剤との相溶性に問題があることに気づいた。化合物Aは0.1質量%程度を添加するに過ぎないため、当初は相溶性に問題があるとは考えていなかった。しかし、詳しく調べたところ、化合物Aと接着剤との相溶性が問題になって発色しなかったのに気づいた。そこで、化合物Aの窒素上の置換基Rを種々検討したところ、接着剤の硬化の過程を肉眼で観察可能な新規なπ電子化合物を見いだし、本発明を完成するに至った。
【0009】
即ち、本発明の新規なπ電子化合物は、下記式(1)で表されるものである。式(1)中、Rは、分岐を有するアルキル基か、少なくとも2位と6位に同じか互いに異なるアルキル基を備えたフェニル基である。
【0010】
【化2】
JP2015113312A_000003t.gif

【0011】
また、本発明の硬化反応可視化剤は、溶剤としてケトン類、酢酸エステル類、アルコール類及びシクロアルカン類の1種又は2種以上を含む液状物が硬化する過程を肉眼で観察するための硬化反応可視化剤であって、上記式(1)で表されるπ電子化合物を主成分とするものである。
【発明の効果】
【0012】
本発明のπ電子化合物は、溶剤としてケトン類、酢酸エステル類、アルコール類及びシクロアルカン類の1種又は2種以上を含む液状物が硬化する過程を肉眼で観察するための硬化反応可視化剤の成分として用いるのに適している。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の新規なπ電子化合物は、上記式(1)で表されるものである。式(1)中、Rは、分岐を有するアルキル基か、少なくとも2位と6位に同じか互いに異なるアルキル基を備えたフェニル基である。

【0014】
分岐を有するアルキル基としては、イソプロピル基やイソブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、イソペンチル基などでもよいが、イソブチル基の2つのメチル基の一方又は両方にアルキル基が結合した置換基すなわちR1CH2(R2CH2)CHCH2-(但し、R1は水素原子又はアルキル基であり、R2はアルキル基である)が好ましい。R1CH2(R2CH2)CHCH2-としては、2-メチルブチル基、2-エチルブチル基、2-n-プロピルブチル基、2-イソプロピルブチル基、2-メチルペンチル基、2-エチルペンチル基、2-n-プロピルペンチル基、2-イソプロピルペンチル基、2-メチルヘキシル基、2-エチルヘキシル基、2-n-プロピルヘキシル基、2-イソプロピルヘキシル基、2-メチルヘプチル基、2-エチルヘプチル基、2-n-プロピルヘプチル基、2-イソプロピルヘプチル基などが挙げられる。

【0015】
少なくとも2位と6位に同じか互いに異なるアルキル基を備えたフェニル基としては、2,4,6-トリアルキルフェニル基や2,6-ジアルキルフェニル基などが挙げられる。2,4,6-トリアルキルフェニル基としては、2,4,6-トリメチルフェニル基(メシチル基)、2,4,6-トリエチルフェニル基、2,4,6-トリ-n-プロピルフェニル基、2,4,6-トリイソプロピルフェニル基などが挙げられる。なお、「トリアルキル」は3つのアルキルがすべて同じでもよいし、2つのアルキルが同じで1つのアルキルが異なっていてもよいし、3つのアルキルがすべて異なっていてもよい。2,6-ジアルキルフェニル基としては、2,6-ジメチルフェニル基、2,6-ジエチルフェニル基、2,6-ジ-n-プロピルフェニル基、2,6-ジイソプロピルフェニル基などが挙げられる。なお、「ジアルキル」は2つのアルキルが同じでもよいし異なっていてもよい。

【0016】
本発明のπ電子化合物は、溶剤としてケトン類、酢酸エステル類、アルコール類及びシクロアルカン類の1種又は2種以上を含む液状物が硬化する過程を肉眼で観察するための硬化反応可視化剤の主成分に使用することが適している。こうした液状物としては、例えば接着剤や塗料、保冷剤などが挙げられる。ケトン類としては、例えば、アセトン、メチルエチルケトン、メチルビニルケトンなどが挙げられる。酢酸エステル類としては、例えば、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸n-プロピル、酢酸イソプロピル、酢酸n-ブチルなどが挙げられる。アルコール類としては、メタノール、エタノール、イソプロパノール、n-プロパノールなどが挙げられる。シクロアルカンとしては、シクロプロパン、シクロペンタンなどが挙げられる。溶剤として、ケトン類や酢酸エステル類を含むことが好ましい。

【0017】
本発明のπ電子化合物は、こうした液状物(溶液)中ではV字構造をとっているが、光を当てると励起状態になり、その励起状態で安定な平面構造へと構造変化を起こす。この平面構造から光を放出すると、発色は緑色になる。一方、液状物が硬化した後は、光を当てて励起状態になっても構造変化を起こすことができず、V字形の構造のままである。このV字構造から光を放出すると、発色は青色になる。したがって、本発明のπ電子化合物を液状物に添加し、硬化していない状態で光を当てると緑色に発色し、硬化した状態で光を当てると青色に発色する。また、一部硬化した状態で光を当てると、硬化していない部分は緑色、硬化した部分は青色に発色する。このように肉眼で液状物が硬化する過程を観察することができる。

【0018】
上記式(1)のRが直鎖状のアルキル基(例えばn-ブチル基)であるπ電子化合物の場合には、こうした液状物との相溶性が悪く、溶け残ってしまう。そのため、硬化の前後で発色の変化は見られない。Rが直鎖状のアルキル基の場合には、Rが嵩高くないため、π電子化合物が積み重なりやすくなり、相溶性が悪くなったと考えられる。一方、Rが分岐を有するアルキル基や2位と6位にアルキル基を備えたフェニル基の場合には、Rが嵩高いため、π電子化合物が積み重なりにくくなり、相溶性が良好になったと考えられる。そのため、硬化の前後で発色の変化が見られたと考えられる。

【0019】
次に、本発明のπ電子化合物の合成方法について説明する。本発明のπ電子化合物は、下記スキームに示すように、エステル基を持つジベンゾバレレン骨格から光異性化によってジベンゾ縮環シクロオクタテトラエン骨格へと導いた後、アセン類の伸長反応を利用してπ共役系を拡張し、最後に末端をイミド部位へ変換することにより合成することができる。また、中央のπジョイントであるシクロオクタテトラエンでV字型に折れ曲がった分子構造をとることは、X線結晶構造解析から確認することができる。

【0020】
【化3】
JP2015113312A_000004t.gif
【実施例】
【0021】
[実験例1~5]
・合成手順
下記表1に示す実験例1~5のπ電子化合物を合成した。実験例1~4のπ電子化合物の合成手順を以下に説明する。実験例1~4のπ電子化合物を化合物1a~1dと称するものとする。実験例5のπ電子化合物は、非特許文献1に記載された既知化合物である。なお、実験例1~4が本発明の実施例に相当し、実験例5が比較例に相当する。
【実施例】
【0022】
【表1】
JP2015113312A_000005t.gif
【実施例】
【0023】
[実験例1]
下記式に示すように、化合物1aは、N-(2,6-ジイソプロピルフェニル)マレイミドとトリブチルホスフィンを反応させた後に、つづけて塩基存在下で化合物2を反応させることで合成した。化合物2は、非特許文献1に記載された方法により合成した。まず、N-(2,6-ジイソプロピルフェニル)マレイミド(1.2mmol,308mg)の塩化メチレン溶液を、窒素雰囲気下0℃に冷やしたトリブチルホスフィン(1.3mmol,0.32mL)に滴下し、室温で30分間撹拌した。その後、反応溶液を窒素雰囲気下0℃に冷やした化合物2(0.500mmol,208mg)の塩化メチレン懸濁液(100mL)に滴下し、塩基であるジアザビシクロウンデセン(DBU,0.05mmol,7.5μL)を滴下した。室温で72時間撹拌した後、反応溶液に水を加えて反応をクエンチし、塩化メチレンで3回抽出した。抽出後の有機層を無水硫酸ナトリウムで脱水した後、溶媒を留去した。黄色の残留物をヘキサン-塩化メチレン混合溶媒(混合比1:3,R=0.38)を用いてシリカゲルカラムクロマトグラフィーにより分離精製することで,黄色固体として化合物1a(0.15mmol,125mg,29%)を得た。化合物1aのスペクトルデータは以下のとおり。mp:220.3℃(decomposed);1H NMR(400 MHz, CDCl3):δ 8.56 (s, 4H), 8.55 (s, 4H), 7.95 (s, 4H), 7.47 (t, J = 7.6 Hz, 2H), 7.30 (d, J = 7.6 Hz, 4H), 7.24 (s, 4H), 2.722.79 (m, 4H), 1.17 (d, J = 6.8 Hz, 24H); 13C NMR (100 MHz, CDCl3):δ 167.79, 147.13, 136.71, 133.43, 132.46, 132.29, 130.36, 129.91, 128.55, 127.45, 126.75, 126.66, 124.14, 29.53, 24.13; HR-MS (APCI, positive): [(M+H)+] calcd for C60H51N2O4, 863.3843; found 863.3847.
【実施例】
【0024】
【化4】
JP2015113312A_000006t.gif
【実施例】
【0025】
[実験例2]
下記式に示すように、マレイミドとしてN-(メシチル)マレイミドを用いた以外は、実験例1と同様にして化合物1bを合成した。化合物1bのスペクトルデータは以下のとおり。mp:223.2℃(decomposed);1H NMR (400 MHz, CDCl3):δ 8.54 (s, 8H), 7.93 (s, 4H), 7.24 (s, 4H), 7.01 (s, 4H), 2.33 (s, 6H), 2.14 (s, 12H); 13C NMR (100 MHz, CDCl3): δ 166.96, 139.54, 136.72, 136.35, 133.44, 132.43, 132.29, 129.90, 129.47, 128.50, 127.61, 126.78, 126.58, 21.30, 18.16; HR-MS (APCI, positive): [(M)+] calcd for C54H38N2O4,; 778.2826; found 778.2799.
【実施例】
【0026】
【化5】
JP2015113312A_000007t.gif
【実施例】
【0027】
[実験例3]
下記式に示すように、マレイミドとしてN-2-エチルヘキシルマレイミドを用いたこと、及び、DBU滴下後の反応時間を12時間にしたこと以外は、実験例1と同様にして化合物1cを合成した。化合物1cのスペクトルデータは以下のとおり。mp:215.0℃(decomposed);1H NMR (400 MHz, CDCl3):δ 8.47 (s, 4H), 8.39 (s, 4H), 7.88 (s, 4H), 7.20 (s, 4H), 3.64 (d, J = 7.2 Hz, 4H), 1.88 (m, 2H), 1.291.34 (m, 16H), 0.850.93 (m, 12H); 13C NMR (100 MHz, CDCl3): δ 168.20, 136.55, 133.38, 132.34, 132.14, 129.70, 128.38, 126.94, 125.72, 42.46, 38.44, 30.78, 28.69, 24.11, 23.14, 14.17, 10.60; HR-MS (APCI, positive): [(M+H)+] calcd for C52H51N2O4, 767.3843; found 767.3848.
【実施例】
【0028】
【化6】
JP2015113312A_000008t.gif
【実施例】
【0029】
[実験例4]
下記式に示すように、マレイミドとしてN-イソブチルマレイミドを用いたこと、DBU滴下後の反応時間を12時間にしたこと、及び、分離精製時の溶出液を塩化メチレン-酢酸エチル混合溶媒(混合比10:1)を用いたこと以外は、実験例1と同様にして化合物1dを合成した。化合物1dのスペクトルデータは以下のとおり。mp:224.8℃(decomposed);1H NMR (400 MHz, o-dichlorobenzene-d4, 170 ℃): δ 8.22 (s, 4H), 8.19 (s, 4H), 7.73 (s, 4H), 7.11 (s, 4H), 3.55 (d, J = 6.8 Hz, 4H), 2.162.23 (m, 2H), 0.92 (d, J = 6.8 Hz, 12H);13C NMRスペクトルは、有機溶媒への溶解性が低いため測定できなかった; HR-MS (APCI, positive): [M+] calcd for C44H34N2O4, 654.2513; found 654.2536.
【実施例】
【0030】
【化7】
JP2015113312A_000009t.gif
【実施例】
【0031】
・評価
接着剤として、一成分溶剤形であり、セルロース20質量%、酢酸ビニル樹脂5質量%、有機溶剤75質量%を含むもの(接着剤Aという)を使用した。有機溶剤の内訳は、アセトン、エタノール、イソプロパノール、酢酸ブチルであった。この接着剤Aに、実験例1のπ電子化合物を濃度が約0.1質量%となるように添加した。また、実験例2~5のπ電子化合物についても、同様にして接着剤Aに添加した。添加後、π電子化合物の接着剤Aに対する相溶性を肉眼で観察した。その結果を表1に示した。相溶性の評価は、極めて良好、良好、やや良好、やや不良、不良の5段階とした。また、各π電子化合物を添加した接着剤Aにつき、硬化する前に365nmの光を照射したときの発光と、硬化した後に同じ波長の光を照射したときの発光とを肉眼で観察した。その結果を表1に示した。
【実施例】
【0032】
表1に示すように、Rがn-ブチル基の場合(実験例5)、π電子化合物と接着剤Aとの相溶性が不良だったため、硬化前後の発光を評価できなかった。これに対して、Rがイソブチル基の場合(実験例4)、接着剤Aに何とか溶けたため、硬化前後で発光色の変化が認められたものの、発光が弱く、色の変化はやや明確性に欠けた。一方、Rがn-エチルヘキシル基の場合(実験例3)、相溶性が良好であり、硬化前後で発光色の変化が認められた。また、発光が強かったため、色の変化も明確に把握できた。更に、Rが2,6-ジイソプロピルフェニル基やメシチル基の場合(実験例1,2)、相溶性はきわめて良好で、硬化前後で発光色の変化が認められた。また、発光が非常に強かったため、色の変化も一層明確に把握できた。
【実施例】
【0033】
以上のことから、Rが分岐を有するアルキル基であれば、接着剤Aの硬化前後で発光色の変化が認められることがわかった。但し、Rがイソブチル基の場合には、発光色の変化の明確性に問題があったが、Rが2-エチルヘキシル基(イソブチル基の2つのメチル基の一方にn-プロピル基、もう一方にメチル基が結合した置換基)の場合には、発光色の変化は明確であった。こうしたことから、Rとして、イソブチル基の2つのメチル基の少なくとも一方にアルキル基が結合した置換基を用いれば、発光色の変化は明確になるものと予測される。また、Rがメシチル基や2,6-ジイソプロピルフェニル基のように少なくとも2,6位にアルキル基を有するフェニル基の場合には、発光色の変化は極めて明確であった。
【実施例】
【0034】
[実験例6~8]
実験例3のπ電子化合物(Rは2-エチルヘキシル基)について、接着剤B~Dとの相溶性および硬化前後の発光色の変化を観察した。接着剤B~Dの種類及び成分を表2に示した。表2には、接着剤Aの種類及び成分も併せて示した。また、観察結果を表3に示した。表3には、実験例3の結果も併せて示した。なお、実験例6が本発明の実施例に相当し、実験例7,8が比較例に相当する。
【実施例】
【0035】
【表2】
JP2015113312A_000010t.gif
【実施例】
【0036】
【表3】
JP2015113312A_000011t.gif
【実施例】
【0037】
表3に示すように、接着剤A,Bのように有機溶剤としてケトン類や酢酸エステル類、アルコール類、シクロアルカン類を含む接着剤の場合、π電子化合物(Rは2-エチルヘキシル基)と接着剤との相溶性が良好であり、硬化前後で発光色の変化が認められ、発光が強かったためその色の変化も明確に把握できた。これに対して、接着剤C,Dのように上述した有機溶剤を含まない接着剤の場合、π電子化合物(Rは2-エチルヘキシル基)と接着剤との相溶性がやや不良あるいは不良であったため、硬化前後の発光を評価できなかった。以上のことから、硬化前後の発光色の変化を観察可能な接着剤としては、有機溶剤としてケトン類やアルコール類、酢酸エステル類、シクロアルカン類を含む接着剤、特に、ケトン類や酢酸エステル類を含む接着剤が適しているといえる。ただし、接着剤自体が発光を示さないことを前提とする。
【実施例】
【0038】
なお、実施例としては、本発明のπ電子化合物を接着剤に添加した場合を例示したが、接着剤の代わりに塗料や保冷剤に添加しても同様の効果が得られると予測される。