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明細書 :ポリプロピレンおよびポリエーテルスルホンを含む樹脂組成物

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第6094992号 (P6094992)
公開番号 特開2014-101467 (P2014-101467A)
登録日 平成29年2月24日(2017.2.24)
発行日 平成29年3月15日(2017.3.15)
公開日 平成26年6月5日(2014.6.5)
発明の名称または考案の名称 ポリプロピレンおよびポリエーテルスルホンを含む樹脂組成物
国際特許分類 C08L  23/12        (2006.01)
C08L  81/06        (2006.01)
C08L  23/26        (2006.01)
C08J   3/20        (2006.01)
FI C08L 23/12
C08L 81/06
C08L 23/26
C08J 3/20 CESZ
C08J 3/20 CFJ
請求項の数または発明の数 11
全頁数 14
出願番号 特願2012-255451 (P2012-255451)
出願日 平成24年11月21日(2012.11.21)
審査請求日 平成27年10月23日(2015.10.23)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】300071579
【氏名又は名称】学校法人立教学院
発明者または考案者 【氏名】大山 秀子
【氏名】古田 元信
【氏名】中山 梨菜
個別代理人の代理人 【識別番号】100140109、【弁理士】、【氏名又は名称】小野 新次郎
【識別番号】100075270、【弁理士】、【氏名又は名称】小林 泰
【識別番号】100101373、【弁理士】、【氏名又は名称】竹内 茂雄
【識別番号】100118902、【弁理士】、【氏名又は名称】山本 修
【識別番号】100129311、【弁理士】、【氏名又は名称】新井 規之
審査官 【審査官】今井 督
参考文献・文献 特開昭63-280765(JP,A)
国際公開第03/084677(WO,A1)
特開平11-147978(JP,A)
特開2004-075946(JP,A)
調査した分野 C08L 1/00-101/14
C08J 3/20
特許請求の範囲 【請求項1】
(A)ポリプロピレン、
(B)ポリエーテルスルホン、および
(C)ポリプロピレンに、グリシジルメタクリレートおよび/またはグリシジルアクリレートがグラフトしており、かつ式(C1)で示されるスチレン化合物に由来する構造:
【化1】
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(式中、Rは水素原子、水酸基、メチル基、またはアリル基である)
をさらに含む、変性ポリプロピレン、
を含む樹脂組成物。
【請求項2】
重量比(A):(C)が、99:1~70:30であり、
重量比(A)と(C)の合計:(B)が、99:1~1:99
である、請求項1に記載の樹脂組成物。
【請求項3】
前記(C)変性ポリプロピレンが、
ポリプロピレン、
グリシジルメタクリレートおよび/またはグリシジルアクリレート、
前記式(C1)で表されるスチレン化合物、ならびに
ラジカル開始剤を、
溶融混練して得られた変性ポリプロピレンである、請求項1または2に記載の樹脂組成物。
【請求項4】
前記(A)~(C)を溶融混練する工程を含む、請求項1~に記載の樹脂組成物の製造方法。
【請求項5】
(1)前記(C)変性ポリプロピレンと、(A)ポリプロピレンとを溶融混練する工程、ならびに
(2)工程(1)で得た混練物と、(B)ポリエーテルスルホンとを溶融混練する工程、
を含む、請求項に記載の製造方法。
【請求項6】
前記工程(1)が、
ポリプロピレン、ポリエーテルスルホンと反応しうる官能基を含むモノマー、およびラジカル開始剤を溶融混練して、(C)変性ポリプロピレンを準備する工程を含む、請求項に記載の製造方法。
【請求項7】
前記工程(1)が、
ポリプロピレン、グリシジルメタクリレートおよび/またはグリシジルアクリレート、前記式(C1)で示されるスチレン化合物、およびラジカル開始剤を溶融混練して、(C)変性ポリプロピレンを準備する工程を含む、請求項に記載の製造方法。
【請求項8】
前記溶融混練を、不活性ガス雰囲気下で実施することを含む、請求項またはに記載の製造方法。
【請求項9】
前記溶融混練を、二軸押出機または四軸押出機によって実施する、請求項のいずれかに記載の製造方法。
【請求項10】
請求項1~のいずれかに記載の樹脂組成物を含む、射出成形体、押出し成形体、プレス成形体、フィルム、または繊維。
【請求項11】
請求項1~のいずれかに記載の樹脂組成物を含む、電気部品、電子部品、光学部品、または自動車部品。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリプロピレンおよびポリエーテルスルホンを含む樹脂組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリプロピレンは優れた性能を有し、産業界で幅広く用いられているが、耐熱性や難燃性が不十分という問題点がある。この欠点を改良するために、無機添加剤や難燃剤をPPに配合する検討が多く行われてきた。しかし物性の向上が不十分である、あるいは燃焼して廃棄処理する場合に、無機物のアッシュが多量に生成し、かつ難燃剤中のハロゲンが空気中に放出される等の問題があった。
【0003】
ポリプロピレンの性能向上のために、ポリプロピレンに官能基を導入することが提案されている。例えば特許文献1(特開昭55-50008号公報)には、ポリプロピレン系樹脂に対して、固形ゴム、不飽和カルボン酸またはその誘導体などを配合して溶融混練する、改質ポリプロピレンの製造方法が開示されている。特許文献2(特開平08-3379号公報)にはアミンで官能化したポリプロピレンが、特許文献3(特開平06-172422号公報)および特許文献4(特開平6-184377号公報)には、エポキシ化合物で官能化したポリプロピレンが開示されている。さらに、特許文献5(国際公開91/14717号)にはエポシキ基含有アクリルアミドモノマーを、ラジカル発生剤の存在下でポリプロピレンと反応させて得た変性ポリオレフィン組成物が開示されている。
【0004】
一方、ポリエーテルスルホンは機械的性質、化学的性質、熱的性質、電気的性質などに優れた性能を有しており、機械部品、航空部品、電気・電子部品などに幅広く利用されている。しかし、ポリエーテルスルホンは溶融時の粘性が高いため成形加工性に問題があった。また、ポリエーテルスルホンは、汎用エンジニアリングプラスチックに比べ非常に高価であるため、用途が限定されていた。ポリエーテルスルホンを改質するために、特許文献6(特開平7-11134号公報)にはポリエーテルスルホンにポリカーボネートを配することが開示されている。
【先行技術文献】
【0005】

【特許文献1】特開昭55-50008号公報
【特許文献2】特開平08-3379号公報
【特許文献3】特開平06-172422号公報
【特許文献4】特開平6-184377号公報
【特許文献5】国際公開1991/14717号
【特許文献6】特開平7-11134号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ポリプロピレンとポリエーテルスルホンをブレンドすることにより、両者の特徴を組み合わせた樹脂組成物が得られることが期待できる。しかし、これまでにポリプロピレンにポリエーテルスルホンのようなスーパーエンジニアリングプラスチックをブレンドした樹脂組成物は報告されていない。発明者らは、その主たる理由として、ポリエーテルスルホンの高温の成形温度ではポリプロピレンが熱分解すること、ポリプロピレンは無極性であるために、ポリエーテルスルホンとポリプロピレンとの相溶性が極めて乏しいためと考えている。
【0007】
上記事情を鑑み、本発明は、耐熱性、熱安定性、強度、および成形加工性に優れた樹脂組成物を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
発明者らは、ポリエーテルスルホンと反応しうる官能基を含有する変性ポリプロピレンを用いることで、上記課題が解決できることを見出した。すなわち上記課題は、以下の本発明により解決される。
[1](A)ポリプロピレン、
(B)ポリエーテルスルホン、および
(C)ポリエーテルスルホンと反応しうる官能基を含有する変性ポリプロピレン、
を含む樹脂組成物。
[2]前記(A)~(C)を溶融混練する工程を含む、[1]に記載の樹脂組成物の製造方法。
[3]前記[1]に記載の樹脂組成物を含む、射出成形体、押出し成形体、プレス成形体、フィルム、または繊維。
[4]前記[1]に記載の樹脂組成物を含む、電気部品、電子部品、光学部品、または自動車部品。
【発明の効果】
【0009】
本発明により、耐熱性、熱安定性、強度、および成形加工性に優れた樹脂組成物を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】実施例1および比較例1で得た樹脂組成物のSEM像
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の樹脂組成物は、(A)ポリプロピレン、(B)ポリエーテルスルホン、および(C)ポリエーテルスルホンと反応しうる官能基を含有する変性ポリプロピレン、を含む。以下、各成分について説明する。本発明において「~」は両端の数値を含む。

【0012】
1.ポリプロピレン(A)
本発明においてポリプロピレンとは、プロピレンの単独重合体、プロピレンとエチレンやブテン-1などの他のα-オレフィンとのブロック共重合体、またはランダム共重合体である。当該α-オレフィンの含有量は30重量%以下であり、10重量%以下が好ましい。当該α-オレフィンとしてはエチレンが好ましい。
本発明で用いるポリプロピレンは、0.1~1000g/10分のメルトフローレート(MFR:230℃、2.16kg荷重)を有することが好ましい。MFRは0.5~200g/10分がより好ましく、1~150g/分がさらに好ましい。

【0013】
2.変性ポリプロピレン(C)
本発明においては、ポリエーテルスルホンと反応しうる官能基を含有する変性ポリプロピレン(以下、単に「変性ポリプロピレン」ともいう)を用いる。変性ポリプロピレンにおけるポリプロピレンは、既に述べたとおりである。ポリエーテルスルホンと反応しうる官能基としては、エポキシ基またはカルボキシル基が好ましく、エポキシ基が特に好ましい。

【0014】
これらの官能基はポリプロピレン中の任意の位置に存在してよいが、当該官能基を含むモノマーをポリプロピレンと反応させて共重合体とし、当該官能基に由来する鎖中に存在することが好ましい。このようにして得られる共重合体は、グラフト共重合体であることが特に好ましい。前記モノマーとしては、不飽和グリシジルエステルや不飽和グリシジルエーテルが好ましい。これらのモノマーは、それぞれ下記一般式(C2)および(C3)で表される。

【0015】
【化1】
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【0016】
一般式(C2)において、Rは、一つのエチレン結合を有する炭素数2~13の炭化水素基である。Rの炭素数は、好ましくは2~10である。一般式(C3)で表されるエチレン系不飽和カルボン酸グリシジルエステル単位としては、例えばアクリル酸グリシジル、メタクリル酸グリシジル、イタコン酸ジグリシジル等のα,β-不飽和カルボン酸グリシジルが挙げられる。

【0017】
【化2】
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【0018】
一般式(C3)において、Rは、一つのエチレン結合を有する炭素数2~13の炭化水素基である。また、Xは、-CH-O-または下記化学式(C3-1)で表される基である。Rの炭素数は、好ましくは2~10である。

【0019】
【化3】
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【0020】
一般式(C2)または(C3)で表されるモノマーの具体例としては、グリシジルアクリレート、グリシジルメタクリレート(GMA)、アリルグリシジルエーテル、2-メチルアリルグリシジルエーテル、スチレン-p-グリシジルエーテル等が挙げられ、中でもグリシジルメタクリレート(GMA)が好ましい。これらのモノマーは、通常単独で使用されるが、2種以上併用することもできる。これらのモノマーの配合量は、ポリプロピレン100重量部に対して、1~60重量部が好ましく、2~53重量部がより好ましい。配合量が当該範囲外であると、変性ポリプロピレンの分子量が著しく低下したり、残留モノマーが多くなる場合があり、好ましくない。

【0021】
本発明で用いる変性ポリプロピレンは、ポリプロピレンと前記モノマーとを、ラジカル開始剤存在下で溶融混練して得ることが好ましい。この際に使用できるラジカル開始剤としては、通常、重合において使用されているものを使用できる。その具体例としては、ベンゾイルパーオキサイド、過酸化ラウロイル、過酸化ジ-t-ブチル、過酸化アセチル、t-ブチルペルオキシ安息香酸、ジクミルパーオキサイド、ペルオキシ安息香酸、ペルオキシ酢酸、t-ペルオキシピバレート、2,5-ジメチル-2,5-ジ-t-ブチルペルオキシヘキシン等の過酸化物類や、アゾビスイソブチロニトリル等のジアゾ化合物類等が挙げられる。中でも、ラジカル開始剤の温度と半減期のバランスからジクミルパーオキサイドが好ましい。ラジカル開始剤の配合量は、ポリプロピレン100重量部に対して、0.1~8重量部が好ましく、0.5~5重量部がより好ましい。配合量が当該範囲外であると、変性ポリプロピレンの分子量が著しく低下したり、残留モノマーが多くなる場合があり、好ましくない。

【0022】
この際、下記一般式(C1)で表されるスチレン系化合物をさらに配合することが好ましい。

【0023】
【化4】
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【0024】
式中、Rは、水素原子、水酸基、メチル基、またはアリル基である。スチレン系化合物は、反応性が高くポリプロピレン鎖に生じたラジカルと速やかに反応するので、他のモノマーをポリプロピレンに導入しやすい。本発明においては、Rが水素原子であるとより反応性が高くなるので好ましい。スチレン系化合物の配合量は、ポリプロピレン100重量部に対して、1~55重量部が好ましく、2~40重量部がより好ましい。配合量が当該範囲外であると、変性ポリプロピレンの分子量が著しく低下したり、残留モノマーが多くなる場合があり、好ましくない。

【0025】
溶融混練は公知の方法で行なうことができる。すなわち、バンバリーミキサー、ブラベンダー、混練ロール等のバッチ式混練機を用いて混練する方法、あるいは一軸押出機、二軸押出機、四軸押出機等の連続混練機を用いて混練する方法等を例示できる。中でも、取扱性が容易なことから、押出機を用いることが好ましい。混練温度は180~250℃が好ましく、190~230℃がより好ましい。混練時間は1~20分程度であればよい。混練条件は限定されないが、後述するように定義される混練機のせん断速度の最小値が600sec-1となるような条件が好ましい。せん断速度が大きすぎると、成分が分解することがあり、また小さすぎるとポリプロピレンと官能基などとの反応が進行しにくい場合があり好ましくない。

【0026】
このようにして得られる変性ポリプロピレンのグラフト率は、IRによって求めることができる。例えば、モノマーとして不飽和グリシジルルエステルを用いる場合は、1730cm-1のC=O伸縮振動のピークを定量することでグラフト率を求めることができる。グラフト率は0.5~15重量%が好ましく、1~9重量%がより好ましい。

【0027】
上記溶融混練は、酸素が存在する雰囲気で実施されてもよいが不活性ガス雰囲気下で実施されることが好ましい。さらに、溶融混練後得られた混練物を、混練機から取り出して室温になるまで放置する間は、常に不活性ガス窒素雰囲気下に置くことが好ましい。不活性ガスとしては、窒素、貴ガス等が挙げられるが、取扱性が容易であるため、窒素が好ましい。不活性ガス雰囲気でないと、変性ポリプロピレンが分解する場合がある。

【0028】
3.ポリエーテルスルホン(B)
本発明で用いるポリエーテルスルホンは、主鎖に芳香族基を有し、当該芳香族基の連結基として、オキシ基およびスルホニル基を有するポリマーである。ポリエーテルスルホンは、通常、有機溶媒中でアルカリ金属化合物の存在下、ジハロジフェニル化合物と二価フェノール化合物とを重縮合させるか、あるいは二価フェノールのアルカリ金属二塩とジハロジフェニル化合物とを重縮合させる方法で得られる。典型的には、ポリエーテルスルホンは下記式(B1)で表される構造を有する。

【0029】
【化5】
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【0030】
式中、Arは下記の群から選ばれる2価の芳香族基である。

【0031】
【化6】
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【0032】
式中、Yは単結合、スルホニル基(-SO-)、2,2-プロピリデン基(-C(CH-)、またはオキシ基(-O-)である。式(B1)においては、芳香環上の水素原子の一部が、ハロゲン原子、炭素数1~3程度の低級アルキル基、炭素数1~3程度の低級アルコキシ基またはフェニル基で置換されていてもよい。

【0033】
ジハロジフェニル化合物としては、スルホニル基を有するジハロジフェニル化合物が挙げられる。具体的には、ジハロジフェニルスルホン、ビス(ハロゲノフェニルスルホニル)ベンゼン、ビス(ハロゲノフェニルスルホニル)ビフェニルが挙げられる。これらの好ましい具体例としては、4,4’-ジクロロジフェニルスルホン、4,4’-ジフルオロジフェニルスルホン;1,4-ビス(4-クロルフェニルスルホニル)ベンゼン、1,4-ビス(4-フルオロフェニルスルホニル)ベンゼン;4,4’-ビス(4-クロルフェニルスルホニル)ビフェニル、4,4’-ビス(4-フルオロフェニルスルホニル)ビフェニルが挙げられる。これらは二種類以上併用できる。中でも、入手が容易であることから、4,4’-ジクロロジフェニルスルホンまたは4,4’-ジフルオロジフェニルスルホンがより好ましく、式(B2)で表される4,4’-ジクロロジフェニルスルホンが特に好ましい。

【0034】
【化7】
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【0035】
前記二価フェノール化合物としては、ハイドロキノン、カテコール、レゾルシン、4,4’-ビフェノール、ビス(4-ヒドロキシフェニル)アルカン、ジヒドロキシジフェニルスルホン、ジヒドロキシジフェニルエーテルが挙げられる。これらの化合物は、ベンゼン環上の水素原子の一部が、メチル基、エチル基、プロピル基などの低級アルキル基、メトキシ基、エトキシ基、プロピルオキシ基などの低級アルコキシ基、あるいは塩素原子、臭素原子、フッ素原子などのハロゲン原子で置換されていてもよい。二価フェノール化合物は、二種以上を併用できる。

【0036】
ビス(4-ヒドロキシフェニル)アルカンの具体例としては、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)メタン、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)エタンが挙げられる。ジヒドロキシジフェニルスルホンの具体例としては、4,4’-ジヒドロキシジフェニルスルホンが挙げられる。ジヒドロキシジフェニルエーテルの具体例としては、4,4’-ジヒドロキシジフェニルエーテルが挙げられる。
中でも入手が容易であることから、ハイドロキノン、4,4’-ビフェノール、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニルプロパン)、4,4’-ジヒドロキシジフェニルエーテル、または4,4’-ジヒドロキシジフェニルスルホンがより好ましく、式(B3)で表される化合物がよりさらに好ましく、4,4’-ジヒドロキシジフェニルスルホンが特に好ましい。

【0037】
【化8】
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【0038】
式中、Yは前述のとおり定義される。

【0039】
本発明で用いるポリエーテルスルホンは、二価フェノール化合物とジハロジフェニルスルホン化合物とが、ほぼ等モル量となるように使用して、重縮合されたものが好ましい。また、分子量を調整するために、二価フェノール化合物の使用量を、ジハロジフェニルスルホン化合物の使用量に対する等モル量から僅かに過剰あるいは過小になるようにして、重縮合されたものでもよい。また同様に分子量を調整するために、少量のモノハロ化合物または一価フェノール化合物を重合系中に添加してもよい。モノハロ化合物とは分子内に一つのハロゲン原子を有する化合物であり、例えば(4-クロロフェニル)フェニルスルホンなどが挙げられる。一価フェノール化合物とは分子内に一つのフェノール性水酸基を有する化合物であり、例えば、フェノールなどが挙げられる。

【0040】
特に好ましいポリエーテルスルホンは、式(B4)で表される繰返し単位(以下、「B4単位」ともいう)を、全繰返し単位の合計に対して80モル%以上含む。このようなポリエーテルスルホンは、耐熱性により優れるという利点がある。この観点から、B4単位が90モル%以上であるポリエーテルスルホンがより好ましく、実質的にB4単位からなるポリエーテルスルホンが特に好ましい。

【0041】
【化9】
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【0042】
ポリエーテルスルホンの末端は、例えば、塩素原子(-Cl)、水酸基(-OH)、金属アルコキシド基(-OM(Mはアルカリ金属等の金属原子))、アルコキシ基(-OR”(R”は炭素数1~3程度のアルキル基))等が挙げられる。末端基の種類、比率については、製造条件等によって適宜調整できる。

【0043】
本発明においては、市販品のポリエーテルスルホンを使用してもよい。市販品としては、例えば、住友化学株式会社製のスミカエクセル(商品名)PES3600P、4100P、4800P、5200P、5003P、7600P、AMOCO社の商品名UDELP-1700等が挙げられる。これら市販品のなかでも、前記のスミカエクセルは、いずれも実質的に前記B4単位からなるので優れた耐熱性を有することから特に好ましい。

【0044】
本発明で用いるポリエーテルスルホンの重量減少開始温度は、500℃以上が好ましいく、520℃以上がさらに好ましい。このようなポリエーテルスルホンを含む本発明の樹脂組成物は、高耐熱性が求められる用途に適用可能だからである。ポリエーテルスルホン中の低分子成分が多いと重量減少開始温度は低下する傾向にある。よって、ポリエーテルスルホンの分子量は重量減少が少なくなるように決定される。本発明においては、ポリエーテルスルホンをジメチルホルムアミド(DMF)に、濃度1(W/V)%となるように溶解させたとき、得られた溶液の還元粘度(RV)が0.3~0.8になる程度の分子量が好ましい。

【0045】
4.樹脂組成物
本発明の樹脂組成物における重量比ポリプロピレン(A):変性ポリプロピレン(C)は、99:1~70:30が好ましく、97:3~80:20がさらに好ましい。また、重量比(A)と(C)の合計:ポリエーテルスルホン(B)は99:1~1:99が好ましい。これらの比が前記範囲外であると樹脂組成物の物性が低下する場合がある。

【0046】
本発明の樹脂組成物は耐熱性や強度、熱安定性などに優れる。物性が優れる機構は必ずしも限定されないが、変性ポリプロピレン(C)が、(A)と(B)の相溶化剤として作用するためであると考えられる。より具体的には、変性ポリプロピレン(C)がポリエーテルスルホン(B)と反応して生成したポリプロピレンとポリエーテルスルホンの共重合体が、(A)と(B)の相溶化剤として機能すると考えられる。このため、(A)と(B)との界面の密着性が良好であり、単に(A)と(B)をブレンドして得られる樹脂組成物に比べて極めて優れた物性を有する。

【0047】
本発明の樹脂組成物は、ポリプロピレン(A)がリッチである場合には、安価であるにも拘わらず、優れた耐熱性を有する樹脂組成物となる。一方、ポリエーテルスルホン(B)がリッチである場合には、安価なポリプロピレン(A)によって、優れた特性を保持しつつも大幅なコストダウンが可能となる。さらに、ポリエーテルスルホン単独に比べて流動性に優れた樹脂組成物ともなる。

【0048】
本発明における樹脂組成物には本発明の効果を損なわない範囲で、上記成分以外の成分、例えば酸化防止剤や耐熱安定剤、耐候剤、離型剤、滑剤、顔料、染料、可塑剤、帯電防止剤、難燃剤などを添加できる。このような成分の含有量は、樹脂組成物の全重量に対して、好ましくは15重量%以下、さらに好ましくは5重量%以下である。

【0049】
5.樹脂組成物の製造方法
本発明の樹脂組成物は、前記の各成分を溶融混練して得ることができる。溶融混練には、一軸押出機、二軸押出機、四軸押出機などを用いることができるが、中でも強混練が可能な二軸押出機または四軸押出機が好ましい。溶融混練温度は、260~330℃が好ましく、280~320℃がさらに好ましい。

【0050】
溶融混練においては、各成分を上記の温度で十分な時間をかけて溶融混練する必要がある。溶融混練に要する時間は押出機の構造にもよるが、溶融混練の際のスクリューのトルク値、または系内の溶融粘度が、初期値に比べて上昇し、平衡になるまでの時間が好ましい。溶融混練は、前述のとおり不活性ガス雰囲気下で行なうことが好ましい。

【0051】
溶融混練は、混練機を用い、かつ以下のように定義される混練機のせん断速度の最大値が800sec-1以上となるように実施されることが好ましい。

【0052】
混練機のせん断速度Sは、以下の式(i)で定義される。
S=π・Dm・N/h (i)
Sはせん断速度、Nはスクリュー毎秒回転数、hはクリアランスである。混練機が一軸または二軸の押出し機である場合は、Dmはスクリュー溝の平均径である。スクリュー溝の平均径とは、スクリューの各溝部分(凹部)におけるスクリュー径の平均値である。

【0053】
また、混練機がラボプラストミルのようなディスクを使用したバッチ式の混練機の場合には、Dmは、シリンダー内径とディスク長軸直径の差で定義される。

【0054】
クリアランスとは、スクリューまたはディスクと混練機壁面との間の距離であり、チップクリアランスともいう。スクリューは、一部にニーディング部分を含む場合等があり、そのクリアランスはスクリューの長手方向で異なる場合がある。このような場合、本発明においては、クリアランスはスクリュー全体の平均値とするか、またはニーディング部分以外のクリアランスの平均値として計算することもできる。

【0055】
せん断速度の最大値とは、溶融混練工程において発生する最大のせん断速度である。通常の溶融混練工程においては、Dmとhは変更されないため、Nの回転数によって、せん断速度Sは調整される。混練機のせん断速度が大きくなるほど、混練の度合いを強めることができる。よって、本発明においては、混練機のせん断速度の最大値は800sec-1以上が好ましく、900sec-1以上がより好ましい。

【0056】
溶融混練する順序は特に限定されないが、
方法1 ポリプロピレン(A)、ポリエーテルスルホン(B)、および変性ポリプロピレン(C)を一括して溶融混練する方法、
方法2 ポリプロピレン(A)および変性ポリプロピレン(C)を予め溶融混練し、次いでポリエーテルスルホン(B)を加えて溶融混練する方法、が挙げられる。
方法1および2における変性ポリプロピレン(C)は、前述のとおり溶融混練によって製造できる。従って、方法2を、
ポリプロピレン(A)、ポリエーテルスルホンと反応し得る官能基を有するモノマー、ラジカル開始剤、および必要に応じてスチレン系化合物を、押出機の上流側から押出機に供給して、上流側で変性ポリプロピレン(C)を製造しつつ、(A)と(C)の溶融混練物を製造し、ポリエーテルスルホン(B)を押出機の下流側から押出機に供給して(A)と(C)の溶融混練物とともに混練する方法としてもよい。

【0057】
6.用途
本発明の樹脂組成物は、通常の熱可塑性樹脂成形品に用いられている加工方法、例えば射出成形、押出成形、フィルム・シート成形、チューブ成形、繊維成形、真空成形、ブロー成形、プレス成形、カレンダー成形、発泡成形等により、容易に成形品に加工される。本発明の樹脂組成物は、射出成形、押出成形加工に特に適している。例えば、本発明の樹脂組成物を、シート状、チューブ状に加工できる。

【0058】
本発明の樹脂組成物を加工して得られた成形品は、電気部品、電子部品、光学部品、通信機器部品、自動車部品、家電部品、OA機器部品などに適していおり、具体的には、ケーブル、チューブ、繊維、ブロー成形品、フィルム、シートなどに幅広く利用できる。
【実施例】
【0059】
1.ポリプロピレン(A)
プライムポリマー株式会社製ホモポリプロピレン J105Gを用いた。MFR 230℃(JIS K7210)は9.0g/10分であった。
2.ポリエーテルスルホン(B)
住友化学株式会社製、スミカエクセル 4100Pを用いた。Tgは220℃であった。
【実施例】
【0060】
3.変性ポリプロピレン(C)
以下のようにして製造したものを用いた。
(1)以下の成分を、井元製作所株式会社製、二軸コニカルスクリュー混練装置を使用して、窒素雰囲気下(窒素流速約30cc/分)、設定温度200℃、スクリュー回転数100rpmで10分間溶融混練を行った。
ポリプロピレン(J105G) 100重量部
グリシジルメタクリレート(和光純薬工業株式会社製) 50重量部
スチレン(和光純薬工業株式会社製) 35重量部
ジクミルパーオキシド(日本油脂株式会社製) 3重量部
【実施例】
【0061】
(2)合計で4バッチ分を溶融混練し混練物を得た。当該混練物をキシレン中に入れた後、キシレン溶液を30分間加熱沸騰して、未反応モノマーを抽出除去した。次いでキシレン溶液を攪拌したアセトン中に滴下して再沈殿させ、変性ポリプロピレンを得た。
(3)再沈殿後に得られた変性ポリプロピレンについて、下記方法によりグリシジルメタクリレートのグラフト率を求めた。グラフト率は約6.7%であった。
【実施例】
【0062】
<変性ポリプロピレンのグラフト率測定>
未反応モノマーを除去した試料について、200℃、20MPaで3分間加圧した後、冷却してフィルムを作製し、FT-IR測定を行なった。その際、1730cm-1のC=O伸縮振動のピークに関して、検量線を作成し、グリシジルメタクリレートのグラフト率を求めた。
【実施例】
【0063】
[実施例1]樹脂組成物の製造
表1に示す配合で、各成分をドライブレンドした後、混練機として、株式会社東洋精機製作所製ラボプラストミル4M150型を使用し、混練温度300℃、スクリュー回転数100rpm、混練時間10分として、窒素雰囲気下にて溶融混練を行なった。溶融混練後、窒素雰囲気下で試料を溶融混練装置から取り出し、室温まで冷却した。
混練機の混練部は、内容積が約70mL、シリンダー内径が47.7mm、ディスク長軸外径が46.9mm、ディスク単軸外径が29.3mm、ディスクと混練機壁面のクリアランスが0.4mm、軸間距離が38.5mm、噛み合い比(ディスク長径/ディスク短径)が1.6であった。前述の式(i)におけるDmは0.8mmであり、hは0.4mmである。よって、せん断速度Sは、1.2×10(sec-1)と算出された。
得られた混練品は、次に、温度310℃で予熱3分、圧力20MPaでプレス5分、その後20℃に急冷してプレス成型を行い、厚さ約0.5mmのシートを得て、各物性試験に供した。
【実施例】
【0064】
<熱重量分析>
テキサスインスツルメント社製、熱重量分析形Q-50型を使用し、空気中で昇温速度5℃/minで測定を行った。
【実施例】
【0065】
<動的粘弾性>
レオバイブロン株式会社製、動的粘弾性装置DDV-01FP-W型を使用し、荷重:2gf、振幅:8μm、振動数:1Hz、昇温速度:2℃/minで測定を行った。
【実施例】
【0066】
<電子顕微鏡観察>
溶融混練品の破断面に金蒸着を施し試料とした。日本電子株式会社製JSM-5200型を使用し加速電圧:15kVで当該試料のSEM観察を行った。
【実施例】
【0067】
[比較例1]
変性ポリプロピレンを用いずに、ポリプロピレン(A)の配合量を80重量部とした以外は、実施例1と同様にして樹脂組成物を製造し、評価した。
【実施例】
【0068】
[比較例2]
ポリプロピレン(A)のみを用いて、実施例1と同様にして混練物を製造し、評価した。
【実施例】
【0069】
図1に、比較例1と実施例1の試料破断面のSEM像を示す。変性ポリプロピレンを含有しない比較例1では、ポリプロピレン連続相中に30~50μm径のポリエーテルスルホン粒子が分散している構造であることが分かった。一方、変性ポリプロピレンを含有する実施例1では、ポリプロピレン連続相中に、1~3μm径のポリエーテルスルホン粒子が分散している構造であることが分かった。粒子と連続相との界面の結合が強いため界面が明確ではないことも分かった。これらは、変性ポリプロピレンがポリエーテルスルホンとポリプロピレンとの相溶化剤的な役割を果たしているためと考えられる。
【実施例】
【0070】
表1に重量損失の結果を示す。実施例1の樹脂組成物は熱安定性に優れることが分かる。表2に各温度での貯蔵弾性率の値を示す。表中、PPはポリプロピレン、PESはポリエーテルスルホンを示す。実施例1の樹脂組成物は、比較例に比べてE’が高く、耐熱性および強度に優れることが分かる。
【実施例】
【0071】
【表1】
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【実施例】
【0072】
【表2】
JP0006094992B2_000012t.gif
図面
【図1】
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