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明細書 :物体配置図作成方法およびそのプログラムと記憶媒体、ならびに物体配置図作成システム

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第3735675号 (P3735675)
公開番号 特開2005-037365 (P2005-037365A)
登録日 平成17年11月4日(2005.11.4)
発行日 平成18年1月18日(2006.1.18)
公開日 平成17年2月10日(2005.2.10)
発明の名称または考案の名称 物体配置図作成方法およびそのプログラムと記憶媒体、ならびに物体配置図作成システム
国際特許分類 G01S  13/74        (2006.01)
G01S  13/88        (2006.01)
G06K  17/00        (2006.01)
G06T  11/60        (2006.01)
FI G01S 13/74
G01S 13/88 Z
G06K 17/00 L
G06T 11/60 100A
請求項の数または発明の数 16
全頁数 33
出願番号 特願2004-107373 (P2004-107373)
出願日 平成16年3月31日(2004.3.31)
優先権出願番号 2003178687
優先日 平成15年6月23日(2003.6.23)
優先権主張国 日本国(JP)
審査請求日 平成16年3月31日(2004.3.31)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】301022471
【氏名又は名称】独立行政法人情報通信研究機構
発明者または考案者 【氏名】矢入 郁子
【氏名】矢入 健久
【氏名】西塚 要
個別代理人の代理人 【識別番号】100093230、【弁理士】、【氏名又は名称】西澤 利夫
審査官 【審査官】宮川 哲伸
参考文献・文献 特開2003-233715(JP,A)
特開2002-117489(JP,A)
特開2003-23385(JP,A)
特開2001-188880(JP,A)
特開平10-83454(JP,A)
調査した分野 G01S 7/00 ~ 7/42
G01S 13/00 ~ 13/95
G06K 17/00
G06T 11/60
特許請求の範囲 【請求項1】
物体の配置図を作成する方法であって、
処理部が、物体に予め取り付けられているIDタグと受信機との交信履歴データを記憶部に記憶させるステップ、
処理部が、前記記憶部から読み出した前記交信履歴データに基づいて2物体間の空間的距離推定値を算出するステップ、および
処理部が、算出した前記空間的距離推定値を用いて配置図を作成するステップ
を含むことを特徴とする物体配置図作成方法。
【請求項2】
前記処理部が、受信機が受信したタグデータとその受信時刻とを前記交信履歴データとして前記記憶部に記憶させ、または受信機が受信したタグデータをその受信時系列順に前記交信履歴データとして前記記憶部に記憶させ、
前記処理部が、前記記憶部から読み出した前記交信履歴データを用いて2物体間の時間的近接度を算出し、この時間的近接度を用いて2物体間の前記空間的距離推定値を算出する
ことを特徴とする請求項1記載の物体配置図作成方法。
【請求項3】
前記処理部が、前記交信履歴データの中で任意の2つのIDタグi,jが同時に何回出現したかnijをカウントし、且つ当該IDタグi,jがそれぞれ何回出現したかni,njをカウントし、これらのカウント値nij,ni,njを用いた相関係数によって当該IDタグi,jに対応する2物体間の前記時間的近接度を算出する
ことを特徴とする請求項2記載の物体配置図作成方法。
【請求項4】
前記処理部が、所定時間内の前記交信履歴データを1つにまとめ、その中で任意の2つのIDタグi,jが同時に何回出現したかnijをカウントし、且つ当該IDタグi,jがそれぞれ何回出現したかni,njをカウントし、これらのカウント値nij,ni,njを用いた相関係数によって当該IDタグi,jに対応する2物体間の前記時間的近接度を算出する
ことを特徴とする請求項2記載の物体配置図作成方法。
【請求項5】
前記処理部が、所定連続数の前記交信履歴データを1つにまとめ、その中で任意の2つのIDタグi,jが同時に何回出現したかnijをカウントし、且つ当該IDタグi,jがそれぞれ何回出現したかni,njをカウントし、これらのカウント値nij,ni,njを用いた相関係数によって当該IDタグi,jに対応する2物体間の前記時間的近接度を算出する
ことを特徴とする請求項2記載の物体配置図作成方法。
【請求項6】
前記処理部が、前記交信履歴データの中でIDタグiが出現した後に別のIDタグjが最初に出現するまでの平均時間または平均データ間隔Tijを算出し、この平均時間または平均データ間隔Tijを用いた相関係数によって当該IDタグi,jに対応する2物体間の前記時間的近接度を算出する
ことを特徴とする請求項2記載の物体配置図作成方法。
【請求項7】
前記処理部が、前記時間的近接度を用いて非負単調減少関数により2物体間の前記空間的距離推定値を算出する
ことを特徴とする請求項2ないし6のいずれかに記載の物体配置図作成方法。
【請求項8】
前記処理部が、前記交信履歴データとして、受信機の2物体間の移動距離を前記記憶部に記憶させ、
前記処理部が、前記記憶部から読み出した前記交信履歴データとしての前記移動距離を用いて2物体間の前記空間的距離推定値としての平均移動距離を算出し、この平均移動距離を用いて前記配置図を作成する
ことを特徴とする請求項1記載の物体配置図作成方法。
【請求項9】
前記処理部が、前記空間的距離推定値のマトリクスを用いて多次元尺度構成法により物体の座標値を算出し、この座標値を用いて前記配置図を作成する
ことを特徴とする請求項1ないし8のいずれかに記載の物体配置図作成方法。
【請求項10】
前記処理部が、1つまたは複数の物体のタグデータおよび座標値をアンカーデータとして予め記憶部に記憶させておくステップ、および
前記処理部が、前記記憶部から読み出した前記アンカーデータを用いて前記配置図を修正するステップ
をさらに含むことを特徴とする請求項1ないし9のいずれかに記載の物体配置図作成方法。
【請求項11】
請求項1ないし10のいずれかに記載の物体配置図作成方法をコンピュータに実行させるための物体配置図作成プログラム。
【請求項12】
請求項11記載の物体配置図作成プログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体。
【請求項13】
物体の配置図を作成するシステムであって、
物体に取り付けられるIDタグ、IDタグと交信してタグデータを受信する受信機、およびIDタグと受信機との交信履歴データに基づいて配置図を作成する配置図作成装置を備えており、
配置図作成装置は、交信履歴データを用いて2物体間の空間的距離推定値を算出する手段、および算出した空間的距離推定値を用いて配置図を作成する手段
を有していることを特徴とする物体配置図作成システム。
【請求項14】
前記配置図作成装置は、前記交信履歴データとしての受信機が受信したタグデータとその受信時刻、または前記交信履歴データとしての受信機が受信した受信時系列順のタグデータを用いて2物体間の時間的近接度を算出し、この記時間的近接度を用いて2物体間の前記空間的距離推定値を算出する
ことを特徴とする請求項13記載の物体配置図作成システム。
【請求項15】
前記配置図作成装置は、交信履歴データとしての受信機の2物体間の移動距離を用いて2物体間の前記空間的距離推定値としての平均移動距離を算出する
ことを特徴とする請求項13記載の物体配置図作成システム。
【請求項16】
前記配置図作成装置は、1つまたは複数の物体のタグデータおよび座標値でなるアンカーデータを用いて前記配置図を修正する手段
をさらに有していることを特徴とする請求項13ないし15のいずれかに記載の物体配置図作成システム。


発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
この出願の発明は、屋内や屋外に散在する物の大まかな配置関係を把握するのに有用な、物体配置図作成方法、物体配置図作成プログラムおよび物体配置図作成プログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記憶媒体、ならびに物体配置図作成システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
人は物をどこに置いたか、しまったかを度忘れしてしまうことがしばしばあり、たとえば鋏や判子などといった普段頻繁に使わない物はもちろんのこと、眼鏡や鍵などといった頻繁に使う物であってもなかなか思い出せないことがある。特に年齢が高くなるにつれて物忘れは顕著になり、物の位置を常に把握しておくことは一苦労である。

【特許文献1】特開2003-23385号公報
【特許文献2】特開平10-83454号公報
【特許文献3】特開2001-188880号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
このように物忘れした場合に記憶を呼び起こして置き場所やしまい場所を思い出させるには、それぞれの物の位置が分かる配置図を示してあげることが効果的であると考えられるが、配置図を自動的に作成できる技術は何ら実現されていないのが現状である。
【0004】
たとえば上記特許文献1~3では、物体にタグを取り付けてその位置を取得する技術が開示されているものの、配置図を作成するという技術思想は何等提案されていない。
【0005】
上記特許文献1は、物体に通信タグを取り付けておき、携帯無線機によって探したい物体の識別番号に対応する信号電波を発信させ、その電波を感知した通信タグの中で認識番号と一致したものが音や光を発するというシステムを開示しており、人がその音や光によって物を発見できるとしている。しかしながら、物を探す度に携帯無線機から電波を発信させねばならず、また一度に別々の物を探すことができないため一回一回設定し直して発信させねばならない。
【0006】
これに対し、配置図は、物がそこに示された位置から大きく動かされない限り有効なものとして使用し続けることができ、仮に動かされたとしてもまた作成すればよく、しかも一度に複数の物の位置関係を知ることができるため、上記特許文献1に記載のような音や光を用いた場合に比べて、配置図を提示する方が格段に役に立つと言える。
【0007】
また、このように有効な配置図についても、記憶を呼び起こして物を見つけるのを手助けすることを目的とするのであれば、厳密な位置を示す必要はなく、大まかな位置関係を教えることができればよいと考えられる。
【0008】
上記特許文献2は、配置図を作成することを明示してはいないが、物体に取り付けられた赤外線タグをカメラ画像から正確に位置付けるシステムを開示しており、その位置付けのための空間的局所化処理をコンピュータが行うとしているので、コンピュータを用いて何らかの図を作成できると推測できる。しかしながら、記憶を呼び起こして物探しの手助けをするという目的の実現のために大まかな位置関係を示した配置図を作成するという技術思想は全く開示していない。
【0009】
一方上記特許文献3は、タグ付き物体の位置を決定するシステムを開示しており、それにおいてコンピュータを用いて低精度の空間的位置の突止めを行うことも明示している。しかしながら、やはり上記特許文献2と同様に、物探しの手助けに効果的な大雑把な配置図を作成するという技術思想は全くない。
【0010】
そこで、この出願の発明は、以上のとおりの事情に鑑み、物の大雑把な配置図を作成して、一度に複数の物のおおまかな位置関係を教え、置いた場所やしまった場所を思い出すことを手助けすることのできる、物体配置図作成方法、物体配置図作成プログラムおよび物体配置図作成プログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記憶媒体、ならびに物体配置図作成システムを提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0011】
この出願の発明は、上記の課題を解決するものとして、第1には、物体の配置図を作成する方法であって、処理部が、物体に予め取り付けられているIDタグと受信機との交信履歴データを記憶部に記憶させるステップ、処理部が、前記記憶部から読み出した前記交信履歴データを用いて2物体間の空間的距離推定値を算出するステップ、および処理部が、算出した前記空間的距離推定値を用いて配置図を作成するステップを含むことを特徴とする物体配置図作成方法を提供する。
【0012】
第2には、前記処理部が、受信機が受信したタグデータとその受信時刻とを前記交信履歴データとして前記記憶部に記憶させ、または受信機が受信したタグデータをその受信時系列順に前記交信履歴データとして前記記憶部に記憶させ、前記処理部が、前記記憶部から読み出した前記交信履歴データを用いて2物体間の時間的近接度を算出し、この時間的近接度を用いて2物体間の前記空間的距離推定値を算出することを特徴とする前記物体配置図作成方法を提供する。
【0013】
第3には、前記処理部が、前記交信履歴データの中で任意の2つのIDタグi,jが同時に何回出現したかnijをカウントし、且つ当該IDタグi,jがそれぞれ何回出現したかni,njをカウントし、これらのカウント値nij,ni,njを用いた相関係数によって当該IDタグi,jに対応する2物体間の前記時間的近接度を算出することを特徴とする前記物体配置図作成方法を提供する。
【0014】
第4には、前記処理部が、所定時間内の前記交信履歴データを1つにまとめ、その中で任意の2つのIDタグi,jが同時に何回出現したかnijをカウントし、且つ当該IDタグi,jがそれぞれ何回出現したかni,njをカウントし、これらのカウント値nij,ni,njを用いた相関係数によって当該IDタグi,jに対応する2物体間の前記時間的近接度を算出することを特徴とする前記物体配置図作成方法を提供する。
【0015】
第5には、前記処理部が、所定連続数の前記交信履歴データを1つにまとめ、その中で任意の2つのIDタグi,jが同時に何回出現したかnijをカウントし、且つ当該IDタグi,jがそれぞれ何回出現したかni,njをカウントし、これらのカウント値nij,ni,njを用いた相関係数によって当該IDタグi,jに対応する2物体間の前記時間的近接度を算出することを特徴とする前記物体配置図作成方法を提供する。
【0016】
第6には、前記処理部が、前記交信履歴データの中でIDタグiが出現した後に別のIDタグjが最初に出現するまでの平均時間または平均データ間隔Tijを算出し、この平均時間または平均データ間隔Tijを用いた相関係数によって当該IDタグi,jに対応する2物体間の前記時間的近接度を算出することを特徴とする前記物体配置図作成方法を提供する。
【0017】
第7には、前記処理部が、前記時間的近接度を用いて非負単調減少関数により2物体間の前記空間的距離推定値を算出することを特徴とする前記物体配置図作成方法を提供する。
【0018】
第8には、前記処理部が、前記交信履歴データとして、受信機の2物体間の移動距離を前記記憶部に記憶させ、前記処理部が、前記記憶部から読み出した前記交信履歴データとしての前記移動距離を用いて2物体間の前記空間的距離推定値としての平均移動距離を算出し、この平均移動距離を用いて前記配置図を作成することを特徴とする前記物体配置図作成方法を提供する。
【0019】
第9には、前記処理部が、前記空間的距離推定値のマトリクスを用いて多次元尺度構成法により物体の座標値を算出し、この座標値を用いて前記配置図を作成することを特徴とする前記物体配置図作成方法を提供する。
【0020】
第10には、前記処理部が、1つまたは複数の物体のタグデータおよび座標値をアンカーデータとして予め記憶部に記憶させておくステップ、および前記処理部が、前記記憶部から読み出した前記アンカーデータを用いて前記配置図を修正するステップをさらに含むことを特徴とする前記物体配置図作成方法を提供する。
【0021】
また、この出願の発明は、第11には、請求項1ないし10のいずれかに記載の物体配置図作成方法をコンピュータに実行させるための物体配置図作成プログラムを提供する。
【0022】
さらに、この出願の発明は、第12には、前記物体配置図作成プログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体を提供する。
【0023】
またさらに、この出願の発明は、第13には、物体の配置図を作成するシステムであって、物体に取り付けられるIDタグ、IDタグと交信してタグデータを受信する受信機、およびIDタグと受信機との交信履歴データに基づいて配置図を作成する配置図作成装置を備えており、 配置図作成装置は、交信履歴データを用いて2物体間の空間的距離推定値を算出する手段、および算出した空間的距離推定値を用いて配置図を作成する手段を有していることを特徴とする物体配置図作成システムを提供する。
【0024】
第14には、前記配置図作成装置は、前記交信履歴データとしての受信機が受信したタグデータとその受信時刻、または前記交信履歴データとしての受信機が受信した受信時系列順のタグデータを用いて2物体間の時間的近接度を算出し、この記時間的近接度を用いて2物体間の前記空間的距離推定値を算出することを特徴とする前記物体配置図作成システムを提供する。
【0025】
第15には、前記配置図作成装置は、交信履歴データとしての受信機の2物体間の移動距離を用いて2物体間の前記空間的距離推定値としての平均移動距離を算出することを特徴とする前記物体配置図作成システムを提供する。
【0026】
第16には、前記配置図作成装置は、1つまたは複数の物体のタグデータおよび座標値でなるアンカーデータを用いて前記配置図を修正する手段をさらに有していることを特徴とする前記物体配置図作成システムを提供する。
【発明の効果】
【0027】
上記第1の物体配置図作成方法によれば、各物体にIDタグを付しておき、そのタグと受信機との交信履歴データを蓄積して、それに基づき2物体間の空間的距離推定値を算出し、その空間的距離推定値を用いて配置図を作成するようにしている。これは、互いに近い物体ほど同時観測の頻度が高いというこの出願の発明の発明者等による経験則を利用したものであり、これを基にした各処理を実行することで、家屋やその部屋等の屋内に散在している各物体の大雑把な位置を示した配置図を簡単に作成でき、これを提示することによって一度に複数の物の位置関係を教え、置き場所やしまい場所を思い出させて物探しの手助けを簡単に且つ効果的に行えるようになる。
【0028】
またもちろん、室内の物体配置だけではなく、屋外に存在する物体のおおよその配置図の作成にも適用できることは言うまでもない。すなわち、物体にIDタグが取り付けられ、それと交信可能な受信機があり、その交信履歴データを取得できる環境であれば、屋内外を問わず上記と同様な効果を実現できるのである。
【0029】
上記第2の物体配置図作成方法によれば、上記第1の方法と同様な効果が得られ、また、交信履歴データとしてタグデータと受信時刻や受信時系列順のタグデータを蓄積し、これに基づき2物体間の時間的近接度を算出してから、この時間的近接度を用いて空間的距離推定値を算出するようにしている。これは、上記経験側に加えて、一連の交信履歴データのなかで2つの物体が出現する平均的な時間的な近さを表す時間的近接度というこの出願の発明の発明者等が見出した新たな概念を利用したものであり、これを用いることで上記経験則に沿った空間的距離推定値をより正確に算出することができ、より一層有用な配置図を作成できる。
【0030】
上記第3~5の物体配置図作成方法によれば、上記第2の作成方法と同様な効果が得られ、また、上記の通りのカウント値を用いた相関係数によって時間的近接度を算出することで、上記経験則に沿った空間的距離推定値の算出をより精度良く実行できる。
【0031】
上記第6の物体配置図作成方法によれば、上記第2の作成方法と同様な効果が得られ、また、上記の通りの平均時間または平均データ間隔を用いた相関係数によって時間的近接度を算出することで、上記経験則に沿った空間的距離推定値の算出をより精度良く実行できる。
【0032】
上記第7の物体配置図作成方法によれば、上記第2~第6の作成方法と同様な効果が得られ、また、上記の通りに算出された空間的距離推定値および非負単調現象関数を用いることで、上記経験則に沿った空間的距離推定値を的確に算出することができる。
【0033】
上記第8の物体配置図作成方法によれば、上記第1の作成方法と同様な効果が得られ、また、交信履歴データとして受信機の2物体間の移動距離を取得して蓄積し、これに基づいて空間的距離推定値を直接算出するようにしている。これによれば、たとえば受信機によるタグデータの受信時刻を取得できない場合などにおいて、受信時刻の代わりに受信機の移動距離を用いることで、上記経験則に沿った空間的距離推定値を時間的近接度算出を行うことなく正確に算出することができる。もちろんこの移動距離に基づいた空間的距離推定と上記受信時刻に基づいた空間的距離推定とを組み合わせて配置図を作成してもよいことは言うまでもない。
【0034】
上記第9の物体配置図作成方法によれば、上記第1~第8の作成方法と同様な効果が得られ、また、上記の通りに算出された空間的距離推定値のマトリクスおよび多次元尺度構成法を用いることで、各物体のおおよその座標値を正確に得て、それから大雑把な配置図を精度良く作成することができる。
【0035】
上記第10の物体配置図作成方法によれば、上記第1~第9の作成方法と同様な効果が得られ、また、室内において持ち歩いたり移動させたりすることが稀な物体をアンカー物体、そのIDタグをアンカータグと考え、そのタグデータおよび座標値をアンカーデータとして予め設定しておくことで、そのアンカーデータを基準に各物体の上記座標値を修正するなどして配置図を修正する。これにより、大雑把な配置図をより精度良く完成させることができる。
【0036】
上記第11の物体配置図作成プログラムおよび上記第12のそのプログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体によれば、上記第1~第10の物体配置図作成方法と同様な効果が得られるコンピュータプログラムおよびそれを記録したフレキシブルディスクやCD、DVDなどの記録媒体が実現される。
【0037】
上記第13~第16の物体配置図作成システムによれば、上記第1~第10の物体配置図作成方法と同様な効果が得られるシステムが実現される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0038】
[第1の実施形態]
以下、この出願の発明の一実施形態について、図1および図2を適宜参照しながら各処理毎に詳細に説明する。図1は物体配置図作成処理のフローチャートであり、図2はシステム構成図である。
【0039】
図2に示したシステム構成は、表示部(1)、入力部(2)、処理部(CPU)(3)、主記憶部(4)、交信履歴データベース(5)およびバス(6)を備えた配置図作成装置(10)と、受信機(7)と、IDタグ(8)とからなる。
【0040】
配置図作成装置(10)において、主記憶部(4)には、物体配置図作成プログラム、初期設定、パラメータ等の各種データが記憶されている。交信履歴データベース(5)には、交信履歴データが蓄積される。これら主記憶部(4)および交信履歴データベース(5)とバス(6)により接続されている処理部(3)は、物体配置図作成プログラムの指令を受けて、物体配置図作成処理を実行する。また処理部(3)は、配置図等を表示するディスプレイ装置などの表示部(1)およびキーボードやマウスなどの入力部(2)ともバス(6)により接続されて、各種データの入出力処理をも実行する。入力部(2)は、物体のIDタグ(8)と交信する受信機(7)からのタグデータや受信時刻データ等を入力する装置としてもよく、それら入力データは処理部(3)によって主記憶部(4)や交信履歴データベース(5)に記憶される。
【0041】
なおもちろん、この配置図作成装置(10)と受信機(7)とは一体に構成されていてもよく、たとえば受信機(7)に配置図作成装置(10)の機能を具備させた一体型小型装置などを考慮できる。
【0042】
<交信履歴データの取得・蓄積(ステップS1)>
まず、図3は、室内に様々な物体が散在している様子の一例を示したものである。この一例では、室内に、保険証、テレビ、本A、書類、判子、マグカップ、メガネ、本B、はさみ、通帳、本Cが散在しており、これら各物体にはそれぞれを識別するIDタグ(8)が予め取り付けられている。IDタグ(8)としては、RFIDタグや超音波タグ、バーコードなどの非接触型タグを用いることができる。
【0043】
一方、これら物体の所有者等である人は、IDタグ(8)と無線交信してそのデータを受信可能な受信機(7)を身に装着あるいは携帯し、室内を移動する。受信機としては、タグリーダなどの無線受信機やバーコードの場合における光受発光機といった非接触型のものを用いることができる。
【0044】
そして、この受信機(7)を持つ人が室内を移動することで、近傍のIDタグ(8)、より具体的には交信可能範囲に存在するIDタグ(8)と受信機(7)とが自動的に交信を行い、その交信データが交信履歴データベース(5)等に逐次記憶されて、交信履歴データが作成される。
【0045】
したがって、人が受信機(7)を身に着けて日常生活を行うだけで、何等意識することなく、室内の各物体との交信履歴データが自動的に蓄積される。また、ある物を探す際に受信機(7)を持って室内を歩き回るだけで、交信履歴データが自動作成される。ここで重要なことは、その間、移動する受信機(7)あるいは受信機(7)を持っている人の位置を何ら計測する必要が無く、また受信機(7)とIDタグ(8)との相対位置、つまり受信機(7)からIDタグ(8)への距離や方角等の計測も不要な点であり、次述するように「いつタグとの交信が行われたか」や「どういう時間的順番でタグとの交信が行われたか」という簡易情報を使うだけでよいため、システムコストに優れている。
【0046】
なお、人が受信機(7)を持って室内を動き回らなくても、受信機(7)が移動できればよいので、たとえば、受信機(7)自体を室内自走式のものとしてもよく、また受信機(7)を備えたロボットや室内飛行船等の移動装置を用いてもよい。
【0047】
またもちろん、たとえば図4に例示したように、複数の受信機(7)が同一室内を移動し、それぞれがIDタグ(8)と交信しているような状況であっても、各受信機(7)とIDタグ(8)との交信履歴データを蓄積し、それを次述の算出処理に利用できることは言うまでもない。
【0048】
交信履歴データについては、室内の受信機(7)が受信したタグデータとそれを受信した時刻とを記憶したものや、あるいは受信機(7)が受信したタグデータを受信時系列順につまりそれを受信した順に記憶したものを考慮できる。
【0049】
たとえば図5(a)~(d)は、この交信履歴データの一例を示したものである。図5(a)の交信履歴データは、IDタグデータとその受信時刻を記憶する場合のものであり、同一時刻に計測されたタグデータの集合が受信時刻とともに一つの交信履歴データとなってそれが時系列順に蓄積されている。19時20分35秒にタグ2、タグ11、タグ17という3つのデータを受信して認識し、19時20分38秒にタグ11、タグ17、タグ25という3つのデータを受信・認識し、19時21分45秒にタグ11、タグ25という2つのデータを受信・認識したことを表すデータ形式となっている。図5(b)の交信履歴データも、IDタグデータとその受信時刻を記憶する場合のものであるが、こちらは、ある時刻に計測された単一のタグデータが受信時刻とともに一つの交信履歴データとなってそれが時系列順に蓄積されている。19時20分35.217秒にタグ2を受信・認識し、19時20分35.224秒にタグ11を受信・認識し、19時20分35・231秒にタグ17を受信・認識したことを表すデータ形式となっている。図5(a)の例では、1秒単位でデータ認識することで同じ秒でのデータ集合となっているのに対し、図5(b)の例では、百分の1秒まで細かく区別して単一データとしているのである。
【0050】
また、図5(c)の交信履歴データは、厳密な受信時刻は記憶せず、IDタグデータを受信時系列順に記憶する場合のものであり、同時に計測されたタグデータの集合のみが一つの交信履歴データとなってそれが時系列順に蓄積されている。つまり、上記図5(a)の時刻がないデータ形式である。図5(d)の交信履歴データも、同様にIDタグデータを受信時系列順に記憶する場合のものであるが、単一のタグデータのみが一つの交信履歴データとなってそれが時系列順に蓄積されている。つまり、上記図5(b)の時刻がないデータ形式である。
【0051】
これら各種データ形式は、IDタグ(8)や受信機(7)を含めたタグシステムの仕様や性能などに依存して使用可能なものが異なるので、システムに合わせて選択すればよい。
【0052】
なお、IDタグ(8)については、電波交信や光交信のものだけでなく、外部から画像認識可能なものも考慮でき、この場合では、たとえば、物体の外部から見えるところにそれを付けておき、室内に設置した受信機(7)としての撮像機器により撮像して、IDタグ(8)を画像認識する。上記受信時刻は撮像時刻となる。このように、非接触タイプであれば様々なものがIDタグ(8)として使用可能であり、受信機(7)もそれに対応させたものを用いる。
【0053】
<物体間時間的近接度の算出(ステップS2)>
続いて、上記のとおりの交信履歴データを用いて、室内に存在する2つの物体間の時間的近接度を算出する。この時間的近接度は、一連の交信履歴データのなかで2つの物体が出現する平均的な時間的な近さを表し、2物体が近くに存在するほど大きな値となるように算出される。たとえばIDタグiとIDタグjがしばしば同時または非常に短時間の間に認識される場合、時間的近接度は大きいとみなされる。より具体的には、以下の4つの算出手法を考慮できる。
【0054】
まず第1には、たとえば図6(a)(b)に例示したように、上記交信履歴データの中で任意の2つのIDタグi,jが同時に何回出現したかnijをカウントし、またIDタグi,jがそれぞれ何回出現したかni,njをもカウントし、これらのカウント値nij,ni,njを用いた相関係数によってIDタグi,jに対応する2物体間の時間的近接度を算出する。
【0055】
図6(a)の例では、タグ11とタグ25とが19時20分38秒および19時21分45秒に同時出現しているのでそれらの同時出現回数はn11,25=2であり、またタグ25の出現回数はn25=2であるが、タグ11はさらに19時20分35秒にも出現しているのでn11=3となる。同様にしてその後の出現回数もカウントし続けられ、n2,11などの他のペアについてもカウントされる。
【0056】
これらのカウント値nij,ni,njを用いた相関係数は、平均的な時間的な近さである時間的近接度pijを2物体が近くに存在するほど大きな値となるように定義するもので、たとえば、Jaccard係数と等価なpij=nij/(ni+nj-nij)や、Braun,Blanque係数nij/max{ni,nj}、Kulczynski係数nij/(ni+nj-2nij)など様々なものを考慮でき、それら各種相関係数を用いて定義し算出する。
【0057】
この第1の手法は、図6(a)に例示したように上記図5(a)のデータ形式の場合に有用である。また図6(b)に例示したように上記図5(c)のデータ形式にも適用できる。厳密な時刻が分からなくても同時計測されたデータ集合であればカウント可能なためである。すなわち、本手法は、同時に複数のタグデータを取得できる場合に有用な算出手法なのである。
【0058】
第2には、たとえば図7に例示したように、所定時間内の上記交信履歴データを1つにまとめ、その中で任意の2つのIDタグi,jが同時に何回出現したかnijをカウントし、またIDタグi,jがそれぞれ何回出現したかni,njをもカウントし、これらのカウント値nij,ni,njを用いた相関係数によってIDタグi,jに対応する2物体間の時間的近接度を算出する。
【0059】
図7の例では、所定時間を5秒に設定しており、19時20分35秒のタグ2、19時20分37秒のタグ11、19時20分37秒のタグ17が一つのデータに統合され、次の5秒間に入る19時20分42秒のタグ15、19時20分43秒のタグ4、19時20分の44秒のタグ8が次の一つのデータとなり、その後のデータについても同様に統合が続けられる。データ統合後は、第1の手法と同様にしてnij,ni,njのカウントおよびpijの算出が行われる。
【0060】
この第2の手法は、上記図5(b)のデータ形式の場合に有用であり、そのデータ形式を図5(a)のデータ形式に擬似的に変換する前処理をしているのである。
【0061】
第3には、たとえば図8に例示したように、所定連続数の交信履歴データを1つにまとめ、その中で任意の2つのIDタグi,jが同時に何回出現したかnijをカウントし、またIDタグi,jがそれぞれ何回出現したかni,njをもカウントし、これらのカウント値nij,ni,njを用いた相関係数によってIDタグi,jに対応する2物体間の時間的近接度を算出する。
【0062】
図8の例では、連続する2つのデータを1つに統合する場合のものであり、タグ2およびタグ11が統合され、次いでタグ11およびタグ17が統合され、その後のデータについても同様に統合が行われる。もちろん、連続数は2つに限られず、連続する3つのあるいはそれ以上のデータを統合して利用することも可能である。データ統合後は、第1の手法と同様にしてnij,ni,njのカウントおよびpijの算出が行われる。
【0063】
この第3の手法は、上記図5(d)のデータ形式の場合に有用であり、そのデータ形式を図5(c)のデータ形式に擬似的に変換する前処理をしている。正確な時刻が不要であり、データ処理負担が軽いという利点がある。
【0064】
そして第4には、たとえば図9に例示したように、交信履歴データの中でIDタグiが出現した後に別のIDタグjが最初に出現するまでの平均時間または平均データ間隔Tijを算出し、この平均時間または平均データ間隔Tijを用いた相関係数によってIDタグi,jに対応する2物体間の時間的近接度を算出する。
【0065】
相関係数は、上記第1~第4の手法と同様に、平均的な時間的な近さである時間的近接度pijを2物体が近くに存在するほど大きな値となるように定義するもので、一例としてたとえばpij=1/(Tij+Tji)を考慮できる。もちろん他の相関係数も適用可能であることは言うまでもない。
【0066】
この第4の手法は、上記図5(a)~(d)のいずれの形式にも適用できる。
【0067】
<物体間空間的距離推定値の算出(ステップS3)>
続いて、上記のとおりに算出された時間的近接度から2物体間の空間的距離推定値を算出する。この空間的距離推定値は、互いに近い物体ほど同時観測の頻度が高いという経験則に基づいたもので、時間的近接度pijが大きい2物体ほど小さい値となるように算出される。たとえばIDタグiとIDタグjの時間的近接度pijが大きいほど空間的距離推定値は小さいとみなされる。
【0068】
より具体的には、非負単調減少関数を用いて空間的距離推定値dij(ハット付)を算出することができる。この非負単調減少関数とは、たとえば図10に例示したように、時間的近接度pijの定義域において非負である、つまりマイナスにならない単調減少関数のことをいい、非負且つ単調減少の特徴を持つ様々な関数を考慮できる。
【0069】
図11(a)~(c)は各々その一例を示したものであり、図11(a)はy=a・e-bx,(a>0,b>0)、図10(b)はy=a・(1-x)b,(a>0,b>0)、図11(c)は階段状関数となっている。これら各種の非負単調減少関数については、事前知識に基づいて適当な組み合わせを選択する、またはパラメータの自動決定を行う(後述参照)などの処理も考慮できる。
【0070】
<物体配置図の作成(ステップS4)>
そして、上記のとおりに算出された空間的距離推定値から物体配置図を作成する。
【0071】
より具体的には、たとえば図12に例示したように、空間的距離推定値のマトリクスから多次元尺度構成法により物体の2次元ないし3次元の座標値を算出し、この座標値から配置図を作成する。
【0072】
図12の例では、物体のIDタグが1から順に縦横に設定され、各2物体間の空間的距離推定値が対応付けされた距離推定値マトリックスとなっている。たとえばタグ1とタグ2との空間的距離推定値は0.5、タグ1とタグ3との空間的距離推定値は2.2であり、以降全ての2物体の空間的距離推定値がマトリックス状に対応している。
【0073】
座標値は、このマトリクスから多次元尺度構成法により算出する。多次元尺度構成法(Multi-Dimensional Scaling:MDS)には、古典尺度法やSMACOF(Scaling by MAjorizing a COnvex Function)法などの様々な手法があるが、そのいずれも利用可能である。
【0074】
このように算出された座標値に基づいた配置図は、室内における各物体の厳密な位置を指し示すものではなく、全体の大まかな配置を表すのみで、これを見た人が配置関係を十分に把握できるというものであり、このことがこの出願の発明で最も重要な点である。すなわち、この出願の発明によれば、物の数値的に精密な位置ではなく室内全体における大雑把な位置を提示して、人の記憶を呼び起こし、置いた場所やしまった場所を思い出すことを手助けすることができるのである。
【0075】
<非負単調減少関数のパラメータの自動決定>
ここで、上述した空間的距離推定値を算出するための非負単調減少関数のパラメータ自動決定処理について説明する。
【0076】
この処理では、たとえば図13に例示したように、多次元尺度構成法と最小二乗法等の関数近似手法とを繰り返し的に利用することで(図1におけるループ点線の流れに対応)、非負単調減少関数中のパラメータ値を最適推定する。
【0077】
より具体的には、まずパラメータの初期値を用いた非負単調減少関数により空間的距離推定値を算出してマトリックスを作成し、多次元尺度構成法による座標値を算出する。得られた座標値に対する最小二乗法による関数近似によってパラメータ値を更新し、その更新値を用いて再び空間的距離推定値を算出し、座標値を算出する。これを誤差が許容範囲となるまで繰り返すことでパラメータ値の最適化を行うことができる。
【0078】
<物体配置図の修正(ステップS5)>
以上のとおりに作成された配置図は、次のように修正することも可能である。
【0079】
まず室内に散在する物体の中で1つまたは複数の物体のIDタグをアンカータグとして設定し、そのタグデータおよび座標値をアンカーデータとして用いて各物体の位置修正を行う。
【0080】
室内には、読みかけの本や頻繁に使うメガネなどとは異なり、柱や壁等の決して動くことの無い物体(固定物体と呼べる)や、テレビや家具等の持ち歩くことが稀でほぼ固定設置されたままの物体(準固定物体と呼べる)がしばしば存在する。そこで、これら固定物体あるいは準固定物体を配置関係のアンカーとなる物体として用い、そのIDタグおよび正確な座標値を予めアンカーデータとして主記憶部(4)や交信履歴データベース(5)(図3参照)等の記憶部に記憶させておく。そして、たとえば図14に例示したように、配置図作成後に、アンカータグと同一のIDタグを有する物体の配置図上の座標値(図中の実線丸)を、記憶してある正確なアンカー座標値(図中の点線丸)と比較して、それらが完全一致するあるいは平均座標誤差が最小になるようなアフィン変換等の一次変換を行うことにより、各タグ位置を修正する。
【0081】
図14の例では、タグ1,6,7をアンカータグとしているので、上記多次元尺度構成法により得られたタグ1,6,7の座標値(実線丸)をアンカー座標値(点線丸)に置き換え、さらにそれらタグ1,6,7からの上記空間的距離推定値に従って他のタグ2,3,4,5の座標値を移動修正することで、大雑把ではあるがより正確な配置図、言い換えるとより正確な大雑把な配置図が得られるようになる。
【0082】
[第2の実施形態]
ところで、上述した第1の実施形態では、IDタグとの交信履歴データとして受信機(7)によるタグ受信時刻(タグ認識時刻とも呼べる)を用い、これに基づいて物体間の時間的近接度、空間的距離推定値を順に算出するという処理となっているが、この出願の発明では、上記時刻の代わりに、物体間の受信機(7)の移動距離を用いて、これから空間的距離推定値を直接算出するようにしてもよい。より具体的には以下のとおりであり、図15はその処理フロー図、図16はその一具体例を示している。
【0083】
<移動距離に基づく空間的距離推定>
ある物体に付されたIDタグAとそれとは別の物体に付されたIDタグBとの空間的距離推定について考える。
【0084】
まず、それら2つの物体間の受信機(7)の移動距離を取得する(ステップS11)。より具体的には、受信機(7)がIDタグAのタグデータを受信してそれを認識し、続いてIDタグBのタグデータを受信してそれを認識した場合、IDタグAを認識してからIDタグBを認識するまでに受信機(7)が移動した距離を取得する(ステップS11)。図16の例では、たとえばメガネ・タグ2から判子・タグ11までの移動距離M211である。
【0085】
この移動距離については、たとえば、受信機(7)が人が装着あるいは携帯したものである場合では、別途加速度計や万歩計(登録商標)等の計測装置(図示なし)を用意し、受信機(7)によるIDタグ認識と同期させて計測を実行させるなどして計測データを取得し、その計測データに基づいて移動距離を算出する。計測装置は、受信機(7)とは別体として人に装着あるいは携帯させるようにしても、受信機(7)に組み込んだ一体型のものとしてもよい。また、受信機(7)がロボット等の移動装置に具備されたものである場合には、エンコーダ等の計測装置を移動装置に組み込んだ形態を考慮でき、計測データから移動距離を取得する。
【0086】
このようにして取得した移動距離は主記憶部(4)(図4参照)等の内部記憶部や交信履歴データベース(5)(図4参照)に記憶させ、A→B間のいくつかの移動距離が蓄積された後、その交信履歴データから平均移動距離を算出する(ステップS12)。この平均移動距離が物体間の空間的距離推定値となる。
【0087】
もちろん、B→Aの順でタグ認識した場合でもAB間の移動距離は同じであるため、B→Aも含めた交信履歴データから平均移動距離を算出してよいことは言うまでもない。図16の例ではたとえば移動距離M211と移動距離M112であり、これらからたとえば図17に例示したような平均移動距離が算出される。図17の例ではタグ2-タグ11間が1.2m、タグ11-タグ8間が0.7mとなっている。
【0088】
また、平均移動距離算出には、外れ値除去などの統計的検定法を組み合わせて、その算出精度を高めることが好ましい。
【0089】
後は、この空間的距離推定値としての平均移動距離から、前記第1の実施形態と同様に多次元尺度構成法を用いて物体配置図を作成し(ステップS13)、また必要に応じて配置図を修正すればよい(ステップS14)。
【0090】
[第3の実施形態]
もちろん、図18および図19に例示したように、第1の実施形態および第2の実施形態を組み合わせて配置図作成を実行することも可能である。
【0091】
より具体的には、受信時刻と移動距離の両方を交信履歴データとして得ることができる場合、受信時刻に基づく空間的距離推定(ステップS21→ステップS22→ステップS23)および移動距離に基づく空間的距離推定(ステップS21→ステップS23)を実行し、得られた空間的距離推定値を組み合わせて配置図を作成する(ステップS24,ステップS25)。これにより、一方の情報のみを用いた場合よりも、地図精度を向上させる、つまりより一層正確な大雑把な配置図を得ることができるようになる。
【0092】
空間的距離推定値の組み合わせについては、様々な手法を考慮でき、たとえば一例として下記数式によるものが挙げられる。
【0093】
【数1】
JP0003735675B2_000002t.gif

【0094】
重みパラメータwについては、それぞれの情報がどの程度信頼できるかによって決める。後は得られたDABの値から多次元尺度構成法等によって座標値を算出し、配置図を作成する。
【0095】
本実施形態は、一つの受信機(7)で時刻と距離の両方を取得できる場合だけでなく、複数の受信機(7)を用いた環境において一方は時刻のみ、他方は距離のみを取得できるといった場合にも適用できる。
【0096】
この出願の発明は以上の実施形態に限定されるものではなく、細部については様々な態様が可能であることは言うまでもない。たとえば、上記実施形態については主に室内空間を対象とした説明となっているが、同様にして屋外空間に存在する物体の配置図も作成でき、物体に取り付けられたIDタグ(8)と受信機(7)とが交信してその交信履歴データを取得できれば、後は受信時刻や移動距離に基づく空間的距離推定を行えばよい。
【産業上の利用可能性】
【0097】
以上詳しく説明したとおり、この出願の発明によって、屋内外に存在する物の大雑把な配置図を作成しておおまかな位置関係を教え、置いた場所やしまった場所を思い出すことを簡単に且つ効果的に手助けすることのできる、物体配置図作成方法、物体配置図作成プログラムおよび物体配置図作成プログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記憶媒体、ならびに物体配置図作成システムが提供される。
【図面の簡単な説明】
【0098】
【図1】この出願の発明の処理フロー図である。
【図2】この出願の発明のシステム構成図である。
【図3】室内に物体が散在した様子について説明するための図である。
【図4】この出願の発明の別のシステム構成図である。
【図5】(a)~(d)は、各々、交信履歴データ形式の一例について説明するための図である。
【図6】(a)(b)は、各々、時間的近接度の一算出手法について説明するための図である。
【図7】時間的近接度の別の一算出手法について説明するための図である。
【図8】時間的近接度のさらに別の一算出手法について説明するための図である。
【図9】時間的近接度のまたさらに別の一算出手法について説明するための図である。
【図10】空間的距離推定値の算出に用いられる非負単調減少関数について説明するための図である。
【図11】(a)~(c)は、各々、非負単調減少関数の一例について説明するための図である。
【図12】配置図作成処理の一例について説明するための図である。
【図13】非負単調減少関数のパラメータ更新処理の一例について説明するための図である。
【図14】配置図修正処理の一例について説明するための図である。
【図15】この出願の発明の別の処理フロー図である。
【図16】受信機が移動する様子について説明するための図である。
【図17】交信履歴データとしての移動距離の一例について説明するための図である。
【図18】この出願の発明のさらに別の処理フロー図である。
【図19】交信履歴データとしての受信時刻および移動距離の一例について説明するための図である。
【符号の説明】
【0099】
1 表示部
2 入力部
3 処理部(CPU)
4 主記憶部
5 交信履歴データベース
6 バス
7 受信機
8 IDタグ
10 物体配置図作成装置
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
5
【図7】
6
【図8】
7
【図9】
8
【図10】
9
【図11】
10
【図12】
11
【図13】
12
【図14】
13
【図15】
14
【図16】
15
【図17】
16
【図18】
17
【図19】
18