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明細書 :MRA画像における脳血管抽出プログラム及び装置

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第3577512号 (P3577512)
公開番号 特開2003-024300 (P2003-024300A)
登録日 平成16年7月23日(2004.7.23)
発行日 平成16年10月13日(2004.10.13)
公開日 平成15年1月28日(2003.1.28)
発明の名称または考案の名称 MRA画像における脳血管抽出プログラム及び装置
国際特許分類 A61B  5/055     
G01R 33/54      
FI A61B 5/05 380
G01N 24/02 530Y
請求項の数または発明の数 2
全頁数 11
出願番号 特願2001-217183 (P2001-217183)
出願日 平成13年7月17日(2001.7.17)
新規性喪失の例外の表示 特許法第30条第1項適用申請有り 2001年1月18日 社団法人電子情報通信学会発行の「電子情報通信学会技術研究報告 信学技報 Vol.100 No.596」に発表
審査請求日 平成13年7月17日(2001.7.17)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】301022471
【氏名又は名称】独立行政法人情報通信研究機構
発明者または考案者 【氏名】江本 浩
【氏名】藤井 哲也
【氏名】松本 伸子
【氏名】周郷 延雄
【氏名】御任 明利
【氏名】柴田 家門
個別代理人の代理人 【識別番号】100130111、【弁理士】、【氏名又は名称】新保 斎
【識別番号】100090893、【弁理士】、【氏名又は名称】渡邊 敏
審査官 【審査官】神谷 直慈
参考文献・文献 特開平06-054833(JP,A)
特開平11-154236(JP,A)
特開平04-216172(JP,A)
特開2001-175847(JP,A)
調査した分野 A61B 5/055
特許請求の範囲 【請求項1】
頭部MRA画像から、脳血管芯線の3次元構造情報を抽出する脳血管抽出プログラムであって、
該プログラムが、
頚部に近い頭部MRA画像から、身長方向に対し垂直な複数のスライスである頭部断面画像を用いる構成において、
1-1:指定された血管領域検索開始点を含む該頭部断面画像スライスから、該スライスの血管領域の濃度ヒストグラムにおいて、しきい値候補値を漸次下げることで抽出される領域の面積が急激に増加する直前の該しきい値候補値をしきい値とするステップ、
1-2:該しきい値を用いて領域を抽出し、血管領域とするステップ、
1-3:現在の頭部断面画像スライスに隣接する次探索スライスに、前のステップで抽出された血管領域を投影すると共に、該投影された領域内で最大濃度値を持つピクセルを次探索スライスにおける抽出開始位置とするステップ、
1-4:該投影された範囲内で上記しきい値以上の値を持つピクセルを探索するステップ、
1-5:該探索されたピクセルのうち、投影された範囲内に存在し、かつ、すでに抽出された領域に含まれていない場合に、当該ピクセルを分岐点として分岐点テーブルに追加するステップ、
1-6:次探索スライスの替わりに次探索スライスとは反対方向に隣接したスライスについても上記1-3ないし1-5ステップの各処理を行うステップ
の1-1ないし1-6の各ステップから成る頭部MRA画像上での血管領域の自動探索を行う1:血管領域探索ステップと、
該血管領域探索ステップにおいて探索された血管領域を、所定の向きで順次追跡し、各血管領域の重心点及び分岐点の位置に係る血管領域情報を獲得する2:血管領域情報獲得ステップと、
該血管領域情報から血管の芯線を抽出する3:芯線抽出ステップと
の各ステップを含むと共に、
3:芯線抽出ステップによって抽出された複数の芯線のうち、直線上にある点列を1本の芯線に統合する4:芯線統合化ステップと、
該芯線抽出ステップによって抽出された芯線のうち、長さが所定の長さ以下であり、かつ所定の画像範囲内に端点を含む芯線を除去する5:短小分岐線除去ステップと
を有し、
脳血管芯線の3次元構造情報を出力することを特徴とする脳血管抽出プログラム。
【請求項2】
頭部MRA画像から、脳血管芯線の3次元構造情報を抽出する脳血管抽出装置であって、
該装置が、
頭部MRA画像を装置内に入力する画像入力手段と、
頚部に近い頭部MRA画像上で、血管領域検索開始点を指定する開始点指定手段と、
a:指定された血管領域検索開始点を含む該頭部断面画像スライスから、該スライスの血管領域の濃度ヒストグラムにおいて、しきい値候補値を漸次下げることで抽出される領域の面積が急激に増加する直前の該しきい値候補値をしきい値とする処理、
b:該しきい値を用いて領域を抽出し、血管領域とする処理、
c:現在の頭部断面画像スライスに隣接する次探索スライスに、前の処理で抽出された血管領域を投影すると共に、該投影された領域内で最大濃度値を持つピクセルを次探索スライスにおける抽出開始位置とする処理、
d:該投影された範囲内で上記しきい値以上の値を持つピクセルを探索する処理、
e:該探索されたピクセルのうち、投影された範囲内に存在し、かつ、すでに抽出された領域に含まれていない場合に、当該ピクセルを分岐点として分岐点テーブルに追加する処理、
f:次探索スライスの替わりに次探索スライスとは反対方向に隣接したスライスについても上記cないしeの各処理を行う処理
のa~fの各処理を行う血管領域探索手段と、
該血管領域探索手段において探索された血管領域を、所定の向きで順次追跡し、各血管領域の重心点及び分岐点の位置に係る血管領域情報を獲得する血管領域情報獲得手段と、
該血管領域情報から血管の芯線を抽出する芯線抽出手段と
を含む構成であると共に、
該芯線抽出手段によって抽出された複数の芯線のうち、直線上にある点列を1本の芯線に統合する芯線統合化手段と
該芯線抽出手段によって抽出された芯線のうち、長さが所定の長さ以下であり、かつ所定の画像範囲内に端点を含む芯線を除去する短小分岐線除去手段と
上記各手段によって形成された脳血管芯線の3次元構造情報を出力する情報出力手段と
を備えることを特徴とする脳血管抽出装置。
発明の詳細な説明
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は頭部MRA画像に画像処理を施し、正確な脳血管芯線の3次元構造情報が抽出可能な脳血管抽出プログラム及びその装置に関するものである。特に、脳血管抽出時におけるノイズの影響を最小限に抑える技術に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、コンピュータの性能向上により脳外科手術支援のためのシミュレーションシステムの研究が盛んに行われ、またその有用性が報告されている。しかし、現在報告されているものの多くは、患部または脳組織の形状や大きさを3次元表示しており、患部周辺の組織、血管を選択的に表示可能なシステムを提供していない。
しかし、脳外科手術の術前計画における最適な手術経路の決定等には、頭表から患部の間に存在する軟部組織及び血管の名称情報、患部から注目する組織までの距離の情報、及び脳血管の3次元構造情報が必要である。
【0003】
そこで、MRI(核磁気共鳴画像)装置を用いて作成したMRA画像を用い、脳血管の3次元構造情報を抽出する手法が試みられている。
この手法では、画像処理を行うアルゴリズムがいくつか提案されてきたが、従来の手法では、ノイズを多く含むMRA画像においてひげのように枝分かれしてしまう短小分岐線や、本来1本の直線であるものが複数の芯線として抽出されてしまうことが多く、十分にその効果を発揮できない状況であった。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上記従来技術の有する問題点に鑑みて創出されたものであり、その目的は、抗ノイズ性が高く、正確な脳血管芯線の3次元構造情報を抽出することのできる脳血管抽出プログラム及びその装置を提供することである。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明は、上記の課題を解決するために、次のような脳血管抽出プログラムを提供する。
すなわち、本発明に係る脳血管抽出プログラムは、頚部に近い頭部MRA画像から、身長方向に対し垂直な複数のスライスである頭部断面画像を用いる構成において、次の各ステップを含むものである。
(1) 頚部に近い頭部MRA画像上で、指定された血管領域検索開始点から領域拡張法を用い、頭部MRA画像上での血管領域の自動探索を行う血管領域探索ステップ。
特に、該ステップでは、
(1-1) 指定された血管領域検索開始点を含む該頭部断面画像スライスから、該スライスの血管領域の濃度ヒストグラムにおいて、しきい値候補値を漸次下げることで抽出される領域の面積が急激に増加する直前の該しきい値候補値をしきい値とするステップ、
(1-2) 該しきい値を用いて領域を抽出し、血管領域とするステップ、
(1-3) 現在の頭部断面画像スライスに隣接する次探索スライスに、前のステップで抽出された血管領域を投影すると共に、該投影された領域内で最大濃度値を持つピクセルを次探索スライスにおける抽出開始位置とするステップ、
(1-4) 該投影された範囲内で上記しきい値以上の値を持つピクセルを探索するステップ、
(1-5) 該探索されたピクセルのうち、投影された範囲内に存在し、かつ、すでに抽出された領域に含まれていない場合に、当該ピクセルを分岐点として分岐点テーブルに追加するステップ、
(1-6) 次探索スライスの替わりに次探索スライスとは反対方向に隣接したスライスについても上記1-3ないし1-5ステップの各処理を行うステップ
の各ステップから成る。
さらに、
(2) 該血管領域探索ステップにおいて探索された血管領域を、所定の向きで順次追跡し、各血管領域の重心点及び分岐点の位置に係る血管領域情報を獲得する血管領域情報獲得ステップ。
(3) 該血管領域情報から血管の芯線を抽出する芯線抽出ステップ。
【0006】
これら各ステップによって基本的な脳血管抽出を行った上で、本発明はさらに次の2つのステップを有する。
(4) 該芯線抽出ステップによって抽出された複数の芯線のうち、直線上にある点列を1本の芯線に統合する芯線統合化ステップ。
(5) 該芯線抽出ステップによって抽出された芯線のうち、長さが所定の長さ以下であり、かつ所定の画像範囲内に端点を含む芯線を除去する分岐線除去ステップ。
以上の各ステップを少なくとも含み、脳血管芯線の3次元構造情報を出力することを特徴とする脳血管抽出プログラムを提供する。
【0007】
本発明は、さらに頭部MRA画像から、脳血管芯線の3次元構造情報を抽出する脳血管抽出装置として提供することもできる。
該装置は次の各手段を備えることを特徴とする。
(1) 頭部MRA画像を装置内に入力する画像入力手段。
(2) 頚部に近い頭部MRA画像上で、血管領域検索開始点を指定する開始点指定手段。
(3) 該血管領域検索開始点から領域拡張法を用い、頭部スライス画像上での血管領域の自動探索を行う血管領域探索手段。
該(3)血管領域探索手段では、次のa~fの各処理を行う。
(a) 指定された血管領域検索開始点を含む該頭部断面画像スライスから、該スライスの血管領域の濃度ヒストグラムにおいて、しきい値候補値を漸次下げることで抽出される領域の面積が急激に増加する直前の該しきい値候補値をしきい値とする処理、
(b) 該しきい値を用いて領域を抽出し、血管領域とする処理、
(c) 現在の頭部断面画像スライスに隣接する次探索スライスに、前の処理で抽出された血管領域を投影すると共に、該投影された領域内で最大濃度値を持つピクセルを次探索スライスにおける抽出開始位置とする処理、
(d) 該投影された範囲内で上記しきい値以上の値を持つピクセルを探索する処理、
(e) 該探索されたピクセルのうち、投影された範囲内に存在し、かつ、すでに抽出された領域に含まれていない場合に、当該ピクセルを分岐点として分岐点テーブルに追加する処理、
(f) 次探索スライスの替わりに次探索スライスとは反対方向に隣接したスライスについても上記cないしeの各処理を行う処理。
(4) 該血管領域探索手段において探索された血管領域を、所定の向きで順次追跡し、各血管領域の重心点及び分岐点の位置に係る血管領域情報を獲得する血管領域情報獲得手段。
(5) 該血管領域情報から血管の芯線を抽出する芯線抽出手段。
【0008】
これら各手段によって基本的な脳血管抽出を行った上で、さらに次の各手段による処理を行う。
(6) 該芯線抽出手段によって抽出された複数の芯線のうち、直線上にある点列を1本の芯線に統合する芯線統合化手段。
(7) 該芯線抽出手段によって抽出された芯線のうち、長さが所定の長さ以下であり、かつ所定の画像範囲内に端点を含む芯線を除去する分岐線除去手段。
(8) 上記各手段によって形成された脳血管芯線の3次元構造情報を出力する情報出力手段。
本発明による脳血管抽出装置は上記(8)の情報出力手段によって、脳血管芯線の3次元構造情報を出力する。
【0009】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施方法を実施例に基づいて説明する。なお、本発明の実施形態は以下に限定されず、その趣旨から逸脱しない範囲内で任意に変更可能である。
本発明における脳血管抽出プログラムで用いる血管芯線抽出アルゴリズムにつき、まず説述する。図1にその概略図を示す。
【0010】
脳血管抽出を行う画像として、MRI装置による身長方向に対し垂直な頭部断面画像(以下、スライスと呼ぶ。)を用いる。該画像は、MRIにおいて一般的に用いられる画像であり、その取得は容易である。しかし、該画像には多くの雑音(ノイズ)が含まれ、従来の手法では正確な脳血管の抽出は困難であった。
そこで、本発明は以下に示す手順によって抽出を行う。
【0011】
まず頚部に近いスライス上で、血管領域検索開始点を手動で指定する。ここで手動で行うのは、後段の処理で再帰的な領域探索を行うためであり、プログラムや装置によっては、自動で行う構成でもよい。
指定の方法としては、頚部に近いスライスから、頭頂方向にスライスを探索していき、最初に動脈が現れたスライス上に、血管領域検索開始点を指定する。
【0012】
このように指定された血管領域検索開始点から領域拡張法を用い、スライス上での血管領域の探索、ステップ1(10)を行う。
この方法は本発明において以下のように実施される。
上記で血管領域検索開始点を有する探索開始スライスの血管領域の濃度ヒストグラムを参考にし、しきい値候補値を漸次下げていく。そして、抽出される領域の面積が急激に増えた値の1つ前の値を、該血管領域のしきい値とする。該しきい値で抽出された領域を血管領域とする。
【0013】
次に、現在の探索スライスに隣接する、例えば頭頂方向に1つ進んだスライスの血管領域を次に探索する。現探索スライスの血管領域を、隣接する次探索スライスに投影し、その領域内で現探索スライスの血管領域のしきい値以上のピクセルの内、最大濃度値を持つピクセルを、次探索スライスの血管領域の抽出開始位置とする。
このような方法を採るのは、頭部MRA画像において、血管は漸次その径が細くなっていく特徴を有するからである。
【0014】
次いで、現探索スライスの血管領域を隣接する次探索スライス上に投影し、その投影範囲内にあり、濃度値がしきい値以上の値を持つピクセルを探索する。該当ピクセルが範囲内に存在し、かつ、すでに抽出された領域に含まれていない場合に、分岐点として分岐テーブルに追加する。また、反対方向(探索方向と逆方向)の隣接する前探索スライス上でも同様の処理を行う。
【0015】
上記探索開始スライスから血管領域を追跡していき、血管領域がなくなるまで上記処理を繰り返す。
1つの血管領域探索が終了したら、上記分岐テーブルに記憶されている分岐点から血管領域追跡を行う。該処理は分岐テーブルに分岐点がなくなるまで血管領域探索を行う。
以上の処理によって、頭部MRA画像から血管領域の抽出が完了する。
【0016】
次に、抽出された血管領域を追跡し、各血管領域の重心点と分岐点の位置に係る血管領域情報を探索、ステップ2(11)を行う。
本発明において、MRA画像はピクセルの集合からなるデータであり、上記血管領域も当然ピクセルの集合として抽出される。
従って、重心点を算出するのは非常に容易であって、高速な演算にも寄与する。そして、本発明の特徴として、該重心点の集合を芯線とすることによって、従来最大の濃度値を持つ座標値から芯線を抽出としていた手法よりも、位置ずれ・ノイズ等に対しても有効な芯線抽出が行えるようになった。
【0017】
順次各スライスにつき、重心点を算出し、その点の集合を血管の芯線とする。さらに、分岐点についても上記分岐テーブルに記憶された血管領域すべてにつき、重心点を算出した上で、分岐する血管の芯線を抽出する。
【0018】
抽出した芯線は、スライス毎の重心点の集合であるため、直線上にある点列も、複数の芯線として生成している。この冗長性を省くために、直線とみなされる芯線は1本の芯線に統合(ステップ3(12))する。
芯線の統合化過程においては、隣接する芯線の方向が近いものを統合し、1つの芯線とする。該方法につき、図2に示す。
【0019】
上記で求められた1番目の重心点と2番目の重心点を結ぶ線分を最初の芯線とする。次にn(nは2以上の整数)番目の重心点(20)とn+1番目の重心点(21)とを結ぶ線分(22)と、芯線(23)とのなす角度θ(24)が、45度以下であれば新たな芯線(25)に統合して形成する。
nを順次1ずつ増やしていき、統合処理すべき点がなくなるまで繰り返す。
これによって芯線の統合化が実現する。
【0020】
さらに、本発明では、長さ2mm以下、かつ端点を持つ余分な短小分岐線を除去する。該短小分岐線は、芯線抽出の精度に影響を与える。短小分岐線の発生の原因は画像中のノイズ(雑音等)や、画像撮影中の脳血管の移動によるところが大きいと考えられる。
この除去手法は、まず長さをピクセル数に換算した上で、該ピクセル数以下であり、かつスライスを順次辿っていったときに、いずれの芯線とも合流せず、端点を形成している芯線を除去するものである。
そのような短小分岐線は分岐点の次のピクセルから上記端点までの全てを除去する。
本発明では、このように短小分岐線の除去を行うため、従来の手法と異なり、ノイズの影響によって発生した短小分岐線を効果的に除去し、正確な脳血管芯線が抽出可能となる。
【0021】
本発明は以上の手法を実現するプログラムとして提供される。該プログラムは、一般的なコンピュータに実装し、脳血管抽出装置として提供することもできる。また、該装置は、例えばMRIの装置内に配設し、一体的に脳血管を抽出可能な装置として提供してもよい。
該装置は、医師などが手動で血管領域を指定する開始点指定手段を備える。それらは例えばキーボードやマウス、タッチパネルが簡便である。同時に、上記処理を行う各手段、さらに、形成された脳血管芯線の3次元構造情報を出力するモニタ等の情報出力手段を有する。
【0022】
【実験例】
ここで、本発明による脳血管抽出プログラムが採用したアルゴリズム(以下、血管芯線抽出アルゴリズムと呼ぶ。)と、従来の手法による3次元濃淡画像細線化アルゴリズムとの抽出結果を比較する比較実験を示す。
【0023】
3次元濃淡画像細線化アルゴリズムの概要に触れておく。該アルゴリズムは、画像処理方法として一般的な2値画像細線化の手法に、濃度値の情報を加えたものである。すなわち、画像の境界画素を抽出し、消去可能な境界画素中の濃度値の低いものから消去していく方法である。尚、濃度値が同じものは、図3に示す6方向(T,B,W,E,N,S)から等しい割合で削っていく。
【0024】
本実験における比較項目は、以下の通りである。
(1) 分岐点の位置
血管芯線抽出アルゴリズムは、急激に曲がった個所や分岐を追跡する手法であるため、分岐点位置抽出精度の確認が必要である。このときは、スライスを追跡方向に血管領域を追跡するため、分岐の角度と血管の太さにより、定常的なずれの発生が予想される。一方、濃淡画像細線化による分岐点は、濃度値分布の尾根線(濃度値の最大値が作る線分)上にあると考えられ、分岐点の位置のずれは少ない。
【0025】
(2) 短小分岐線
理想芯線以外に検出された短小分岐線は、芯線抽出の精度に影響を与える。短小分岐線の発生の原因は画像中の雑音及び回転によるところが大きいと考えられる。
【0026】
(3) 図形の回転の影響
脳血管はその走行方向が急激に変化しているため、回転角度がどのように抽出精度に影響を与えているかを知る必要がある。
【0027】
血管以外の領域に雑音を含むMRA画像からの血管芯線抽出を目的としているため、実験画像には、強度を変えた雑音を加えた。雑音は、ひげの発生、理想芯線からのずれの原因になると考えられる。雑音1から順に雑音が大きくなり、雑音3までの3段階である。
【0028】
本実験では血管の形状に模した円柱を組み合わせて作成した人工血管モデルを用いる。図4に実験で用いた円柱形のモデルとY字型の人工血管モデルを示す。
円柱の断面の濃度値は、中心で最大値200、中心軸から1画素離れる毎に60減少するものとした。この値はMRA画像中の血管領域の濃度分布を測定し、実際の濃度勾配に合わせて決定した。血管以外の画素には濃度値0をセットする。
【0029】
人工血管モデルの理想芯線は、各円柱の中心軸を通る線分である。尚、血管モデルの太さは、実際の脳血管の一番太いもの、中間の太さのものを想定し、直径4mmと2mmのものを作成した。
【0030】
円柱形のモデルは、理想芯線からのずれを評価するために、長さ40mm(画素数40)、直径4mm、2mm、の2種類の円柱を作成した。円柱を0度から45度まで5度刻みに回転させ、10種類の図形を作成する。それぞれの図形に3種類の雑音を付加したものを用意した。
【0031】
Y字型モデルの場合は、分岐位置で3本の円柱の理想芯線が交わるように作成し、理想芯線上に最大濃度値の画素がくるように人工血管モデルを作成した。直径4mmの円柱の組み合わせで作成し、5度刻みに0度から45度回転した図形を10種類作成した。その後、それぞれの図形に3種類の雑音を付加したモデルを作成した。
【0032】
上記で雑音を付加した人工血管モデルの1例を図5に示す。これにより、実際のMRA画像に近い形での実験が可能となる。
そして、これらの雑音を付加した画像にしきい値処理(濃度値80以下を除去)と、しきい値処理後さらに平滑化処理を行ったものを実験画像として使用する。
【0033】
以上の実験画像について、順次実験の結果について説述する。
(1)分岐点の位置
理想芯線の分岐点からのずれを算出する。各アルゴリズムの実行結果の分岐点と理想芯線の分岐点のユークリッド距離を計算した。尚、理想芯線の分岐点は、各円柱の中心軸の交点とする。
血管芯線抽出はスライス毎に血管領域を追跡し芯線を求めているため、血管の太さと角度に依存した定常的なずれ(図6)が生じる。このずれLは次式で表わされる。
L = Rsinθ
ここで、L(60)は理想芯線(61)上の分岐点(61’)とのずれ、Rは血管の半径、θは血管の角度(62)である。
【0034】
一方、濃淡画像細線化は濃度値の低い画素から削っていくため、分岐点のずれはないと考えられる。実験の結果、血管芯線抽出アルゴリズムは、雑音強度、回転角度の違いにより5から8画素のずれが生じた。一方、濃淡画像細線化アルゴリズムは雑音強度、回転角度の違いにより1から3画素の範囲の分岐点のずれが生じた。
【0035】
従って、血管芯線抽出アルゴリズムでは常に一定量の、分岐点の位置ずれを含む。この量は、分岐角度と血管の太さから予測ため、補正することが容易であり、正確な血管抽出に及ぼす影響は非常に小さい。太い血管の分岐点の位置ずれを防ぐため、この点を考慮し、抽出された値を補正する必要がある。
【0036】
(2) 短小分岐線
本実験例では、以下の2つを短小分岐線(以下、ひげと呼ぶ。)として定義する。
すなわち、連結する画素(空間的に隣接する26画素)を検索し、連結数が1のもの(Y字型の端点3個は除く)と、理想芯線の方向と別方向に伸びている画素群でかつ端点を持つものとの2つである。
【0037】
血管芯線抽出アルゴリズムは、血管領域を抽出し、血管領域の重心を追跡して芯線を抽出することと、芯線抽出時に短小分岐線の除去を行うため、ひげを生成しない。濃淡画像細線化アルゴリズムは雑音、回転角度によりひげを生じる。血管芯線抽出アルゴリズムではひげが発生していない(発生数0)のため、濃淡画像細線化のひげの発生数のみを図7に示す。
【0038】
図7に示した表から明らかなように、ひげの発生数は雑音の強度に依存し、雑音が増えるにつれて増加している。従来の手法では雑音(ノイズ)の影響を非常に強く受けるので、正確な血管抽出を行うことが難しい。
逆に、本発明における血管芯線抽出アルゴリズムは、大きな雑音(ノイズ)下であっても正確な血管抽出を行うことが可能であり、その有用性が裏付けられた。
【0039】
(3) 図形の回転の影響
各アルゴリズムにおける回転と雑音の影響を調べるため、円柱モデルを用いて実験を行った。血管芯線抽出は、各芯線の始点と終点のみしか出力しないため、あらためて、始点、終点間にある画素を算出し、これを比較実験に使用した。
【0040】
各アルゴリズムにおける結果を、しきい値処理のみのもの、しきい値処理後さらに平滑処理を行ったものについて、一致度の比較を行った。一致度は、実験結果画像中の理想芯線上にある画素数と、理想芯線上の画素数との百分比で求められる。
【0041】
その結果、濃淡画像細線化アルゴリズムは、直径2mmのモデルにしきい値処理のみの画像を用いた場合、雑音1を付加したモデルは、回転角度が大きくなると一致度が下がる。雑音2、3を付加したモデルは理想芯線との一致度は雑音1と比較して下がるが回転角度による違いにはばらつきがある。
雑音1の場合、一致度は94%で好適な結果を示したが、雑音3では69%であり、大きく下がることが分かった。
【0042】
一方、血管芯線抽出アルゴリズムの場合は、回転角度が大きくになるにつれて理想芯線との一致度が下がるが、雑音強度による違いはみられず、ほぼ同じ結果を示した。いずれの結果においても一致度は88%から91%の範囲内であった。
このように、図形の回転の影響評価においても、血管芯線抽出アルゴリズムは雑音(ノイズ)に影響されることがなく、抗ノイズ性の高さを示した。
【0043】
以上、様々な評価を加えたが、本発明における血管芯線抽出アルゴリズムはノイズが多く含まれるMRA画像において有効に血管抽出を行うことができることが証明された。
【0044】
【発明の効果】
本発明は、以上の構成を備えるので、次の効果を奏する。
請求項1に記載の脳血管抽出プログラムによると、血管領域の重心点及び分岐点の位置に係る血管領域情報を獲得し、該情報によって芯線を抽出すると同時に、芯線統合化ステップと短小分岐線除去ステップを有するので、短小分岐線の発生等が効果的に抑止され、正確な血管の芯線の抽出に寄与する。
これにより、脳血管芯線の3次元構造情報を確実に出力可能な脳血管抽出プログラムを実現し、ひいては医療の高度化、精密化を図ることができる。
【0045】
請求項2に記載の脳血管抽出装置によると、血管領域の重心点及び分岐点の位置に係る血管領域情報を獲得し、該情報によって芯線を抽出すると同時に、芯線統合化手段と短小分岐線除去手段を有するので、短小分岐線の発生等が効果的に抑止され、正確な血管の芯線の抽出に寄与する。
これにより、脳血管芯線の3次元構造情報を確実に出力可能な脳血管抽出装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】脳血管芯線の抽出手順を示す図
【図2】芯線の統合方法を示す説明図
【図3】3次元画像の座標軸と方向を示す図
【図4】人工血管モデルの断面画像
【図5】雑音3を付加後の人工血管モデルの断面画像
【図6】理想芯線の分岐位置からのずれに関する説明図
【図7】濃淡画像細線化アルゴリズムにおけるひげの発生数を示す表
【符号の説明】
10 ステップ1
11 ステップ2
12 ステップ3
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
5
【図7】
6