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明細書 :手術パス自動探索プログラム及びその装置

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第3453603号 (P3453603)
公開番号 特開2003-030624 (P2003-030624A)
登録日 平成15年7月25日(2003.7.25)
発行日 平成15年10月6日(2003.10.6)
公開日 平成15年1月31日(2003.1.31)
発明の名称または考案の名称 手術パス自動探索プログラム及びその装置
国際特許分類 G06T  1/00      
A61B  5/055     
A61B  6/03      
A61B 19/00      
G06T  5/30      
G06T 17/40      
FI G06T 1/00 290Z
A61B 6/03
A61B 19/00
G06T 5/30
G06T 17/40
A61B 5/05
請求項の数または発明の数 8
全頁数 10
出願番号 特願2001-217128 (P2001-217128)
出願日 平成13年7月17日(2001.7.17)
新規性喪失の例外の表示 特許法第30条第1項適用申請有り 朝倉博紀,藤井哲也,江本浩,周郷延雄,御任明利,柴田家門,脳神経外科手術支援における手術パス自動探索アルゴリズムの改良の提案,電子情報通信学会技術研究報告,電子情報通信学会,2001年1月18日,Vol.100,No.596,p.133-138(MI2000-73)
審査請求日 平成13年7月17日(2001.7.17)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】301022471
【氏名又は名称】独立行政法人通信総合研究所
発明者または考案者 【氏名】江本 浩
【氏名】藤井 哲也
【氏名】朝倉 博紀
【氏名】周郷 延雄
【氏名】御任 明利
【氏名】柴田 家門
個別代理人の代理人 【識別番号】100090893、【弁理士】、【氏名又は名称】渡邊 敏
審査官 【審査官】脇岡 剛
参考文献・文献 特開2000-113086(JP,A)
特開 平11-155881(JP,A)
特開 平3-162849(JP,A)
朝倉博紀ほか,脳神経外科手術支援のための手術パス自動抽出アルゴリズムの提案,第10回コンピュータ支援画像診断学会大会 第9回日本コンピュータ外科学会大会 合同論文集,日本,CAS/CADM2000合同学会事務局,2000年10月30日,145-146
調査した分野 G06T 1/00 290
A61B 5/055
A61B 6/03 377
A61B 19/00 502
G06T 5/30
G06T 17/40
特許請求の範囲 【請求項1】
外科手術を行う部位及びその周辺部位の一定の大きさの画素の集合からなる3次元画像データを用い、該手術における最適な手術パスを自動探索するプログラムであって、
該プログラムが、
該3次元画像データに、接触又は切除の少なくともいずれかによる危険性を数値化して割り当てた3次元コスト画像を作成するステップと、
該3次元コスト画像に対し、手術対象である患部からの距離に係る侵襲度情報を加え、3次元侵襲度画像を作成するステップと、
該3次元画像データにおける人体表面上の任意の探索開始点から、最も侵襲の少ない最低侵襲パスを自動検索するステップと、
該検索結果から2次元又は3次元の少なくともいずれかの手術パス画像を作成し表示するステップとを含む構成において、
該最低侵襲パスを自動検索するステップが、
該3次元侵襲度画像上で、該探索開始点から該患部に向けて該侵襲度情報の値が最小である画素を順に選択しながら、最低侵襲パスの候補パスを決定し、
該候補パスにおいて所定の画素数より多い画素列によって構成される塊状領域を所定の画素数に減縮して、所定の画素数の幅を有する線状候補パスに画像処理し、
該候補パスにおいて少なくとも該塊状領域の始点又は終点であって、該線状候補パス中に存在する点、又は、線状候補パスにおいて、構成する線分が所定角度以上の角度で折れ曲がる点のいずれかである特徴点を抽出し、
該探索開始点と該患部とをそれぞれ固定点とし、該特徴点の少なくともいずれかを制御点とした動的輪郭モデルによって最低侵襲パスを検索する過程であることを特徴とする手術パス自動探索プログラム。

【請求項2】
前記所定の画素数が、1画素であって、
前記塊状領域の始点又は終点を決定する手順が、
候補パスを構成する全ての画素について、
該画素に空間的に隣接する26個の隣接画素の内、候補パスに含まれる隣接候補画素数を探索開始点又は患部のいずれかの点から順次算出し、
該隣接候補画素数が所定のしきい値において変化した直後の点を、
前記塊状領域の始点又は終点とする請求項1に記載の手術パス自動探索プログラム。

【請求項3】
前記しきい値が5画素である請求項2に記載の手術パス自動探索プログラム。

【請求項4】
前記所定角度以上の角度で折れ曲がる特徴点の決定において、
線状候補パス上の着目画素において、その前後の画素とを結ぶ2つの線分のなす挟角が、0度ないし110度である時、
該着目画素を特徴点とする請求項1ないし3のいずれかに記載の手術パス自動探索プログラム。

【請求項5】
外科手術における最適な手術パス自動探索装置であって、
該装置が、
一定の大きさの画素の集合からなる2次元又は3次元の画像データを記憶する画像記憶手段と、
外科手術を行う部位及びその周辺部位の3次元画像データに、接触又は切除の少なくともいずれかによる危険性を数値化して割り当てた3次元コスト画像を作成するコスト画像作成手段と、
該3次元コスト画像に対し、手術対象である患部からの距離に係る侵襲度情報を加え、3次元侵襲度画像を作成する侵襲度画像作成手段と、
該3次元画像データにおける人体表面上の任意の探索開始点から、最も侵襲の少ない最低侵襲パスを自動検索する最低侵襲パス検索手段と、
該検索結果から2次元又は3次元の少なくともいずれかの手術パス画像を作成する手術パス画像作成手段と、
少なくとも該手術パス画像を表示可能な画像表示手段とを含む構成において、
該最低侵襲パス検索手段が、
該3次元侵襲度画像上で、該探索開始点から該患部に向けて該侵襲度情報の値が最小である画素を順に選択しながら、最低侵襲パスの候補パスを決定し、
該候補パスにおいて所定の画素数より多い画素列によって構成される塊状領域を所定の画素数に減縮して、所定の画素数の幅を有する線状候補パスに画像処理し、
該候補パスにおいて少なくとも該塊状領域の始点又は終点であって、該線状候補パス中に存在する点、又は、線状候補パスにおいて、構成する線分が所定角度以上の角度で折れ曲がる点のいずれかである特徴点を抽出し、
該探索開始点と該患部とをそれぞれ固定点とし、該特徴点の少なくともいずれかを制御点とした動的輪郭モデルによって最低侵襲パスを検索することを特徴とする手術パス自動探索装置。

【請求項6】
前記所定の画素数が、1画素であって、
前記塊状領域の始点又は終点を決定する手順が、
候補パスを構成する全ての画素について、
該画素に空間的に隣接する26個の隣接画素の内、候補パスに含まれる隣接候補画素数を探索開始点又は患部のいずれかの点から順次算出し、
該隣接候補画素数が所定のしきい値において変化した直後の点を、
前記塊状領域の始点又は終点とする請求項5に記載の手術パス自動探索装置。

【請求項7】
前記しきい値が5画素である請求項6に記載の手術パス自動探索装置。

【請求項8】
前記所定角度以上の角度で折れ曲がる特徴点の決定において、
線状候補パス上の着目画素において、その前後の画素とを結ぶ2つの線分のなす挟角が、0度ないし110度である時、
該着目画素を特徴点とする請求項5ないし7のいずれかに記載の手術パス自動探索装置。
発明の詳細な説明 【発明の詳細な説明】

【0001】

【発明の属する技術分野】本発明は3次元画像を用いた外科手術の手術パス自動探索プログラムと、その装置に関する。特に、侵襲度情報から候補となるパスを定めた上で、実際の手術が容易である最適な手術パスを決定する手法に関わるものである。

【0002】

【従来の技術】近年、高精度な断層像が撮影可能なX線CTやMRIなどの医療画像撮像機器と、こうした機器から出力される膨大な画像を高速処理できる画像処理ワークステーションの出現により、3次元画像データを用い、患部の位置や形状を高精度に確認することが可能になった。これにより、医師の診断における負担の軽減、術前計画の立案支援、及び、患者への明瞭なインフォームドコンセントへの利用が期待されている。例えば、頭部における軟部組織は、人体の様々な器官をコントロールする中枢であり、人体の中でも最も複雑な組織の一つである。そのため、その手術に際しては最小限の侵襲を求められ、医師には豊富な知識・経験と精密な手技が求められる。こうした従来の手術手法では、医師の解剖学的知識、手術経験、及び、患者の個人情報を基に、正常組織と異常組織の3次元像を担当医の頭の中で構築しつつ、手術経路や手術手順を決定し、これを術前計画としていた。特に、最近では、計算機を用いた手術支援のためのシミュレーションシステムの研究開発が盛んに行われている。

【0003】
しかし、従来から知られているこのような手術支援システムでは、患部や周辺軟部組織の形状や大きさなどを情報として提供しているものが多く、手術の時に、開頭位置の頭表から患部までどのようにしてたどり着けば良いかという情報は提供していなかった。そこで、これらの情報を提供すべく、本件発明者らは、例えば脳神経外科手術支援のための術前計画情報の一つとして、頭表から患部までを結ぶ手術経路(手術パス)を計算機を用いて自動的に求めるアルゴリズムを提案した。(朝倉博紀,藤井哲也,江 浩,周郷延雄, 御任明利, 柴田家門,"脳神経外科手術支援のための手術パス自動抽出アルゴリズムの提案," 第10回コンピュータ支援画像診断学会, 00(II)-7, pp.145-146, October 2000.)

【0004】
ここで提案した従来のアルゴリズムで求められる手術パスとは、頭表等に設定した探索開始点から患部領域まで最も侵襲の低い画素を辿ったもので、接触時の危険の度合いが高い部位を避けたものである。また求められた手術パスは、最も低い侵襲の度合いを持った画素を順に辿った画素であるため、場合によっては、手術パスが鋭角に折れ曲がりジグザグ状の複雑な形状をしたり、重要度の高い部位に挟まれた重要度の低い領域を辿ったりすることがある。こうした手術パスは、低侵襲という意味では正しい情報であるが、実際の手術では実施が困難なパスとして有効なものであるとは言えないものであった。

【0005】

【発明が解決しようとする課題】本発明は、上記従来技術の有する問題点に鑑みて創出されたものであり、その目的は、簡便な構成で実際の手術においても実施可能であって、かつ医療技術の高度化にも寄与する手術パスを自動探索可能なプログラム及びその装置を提供することである。

【0006】

【課題を解決するための手段】本発明は、上記の課題を解決するために、次のような手術パス自動探索プログラムを提供する。すなわち、本発明は、外科手術を行う部位及びその周辺部位の一定の大きさの画素の集合からなる3次元画像データを用い、該手術における最適な手術パスを自動探索するプログラムを提供する。そこで、該プログラムが次の各ステップを含む。
(1) 該3次元画像データに、接触又は切除の少なくともいずれかによる危険性を数値化して割り当てた3次元コスト画像を作成するステップ。
(2) 該3次元コスト画像に対し、手術対象である患部からの距離に係る侵襲度情報を加え、3次元侵襲度画像を作成するステップ。
(3) 該3次元画像データにおける人体表面上の任意の探索開始点から、最も侵襲の少ない最低侵襲パスを自動検索するステップ。
(4) 該検索結果から2次元又は3次元の少なくともいずれかの手術パス画像を作成し表示するステップ。

【0007】
このような構成において、該最低侵襲パスを自動検索するステップが、該3次元侵襲度画像上で、該探索開始点から該患部に向けて該侵襲度情報の値が最小である画素を順に選択しながら、最低侵襲パスの候補パスを決定し、該候補パスにおいて所定の画素数より多い画素列によって構成される塊状領域を所定の画素数に減縮して、所定の画素数の幅を有する線状候補パスに画像処理する。さらに、該候補パスにおいて少なくとも該塊状領域の始点又は終点であって、該線状候補パス中に存在する点、又は、線状候補パスにおいて、構成する線分が所定角度以上の角度で折れ曲がる点のいずれかである特徴点を抽出する。このような各点を用いて、該探索開始点と該患部とをそれぞれ固定点とし、該特徴点の少なくともいずれかを制御点とした動的輪郭モデルによって最低侵襲パスを検索する過程にした手術パス自動探索プログラムを提供する。

【0008】
また、上記所定の画素数が、1画素であってもよい。前記塊状領域の始点又は終点を決定する手順が、候補パスを構成する全ての画素について、該画素に空間的に隣接する26個の隣接画素の内、候補パスに含まれる隣接候補画素数を探索開始点又は患部のいずれかの点から順次算出し、該隣接候補画素数が所定のしきい値において変化した直後の点を、前記塊状領域の始点又は終点としてもよい。前記しきい値が5画素であってもよい。

【0009】
前記所定角度以上の角度で折れ曲がる特徴点の決定において、線状候補パス上の着目画素において、その前後の画素とを結ぶ2つの線分のなす挟角が、0度ないし110度である時、該着目画素を特徴点としてもよい。

【0010】
さらに、本発明は、外科手術における最適な手術パス自動探索装置を提供することもできる。該装置は、次の各手段を備える。
(1) 一定の大きさの画素の集合からなる2次元又は3次元の画像データを記憶する画像記憶手段。
(2) 外科手術を行う部位及びその周辺部位の3次元画像データに、接触又は切除の少なくともいずれかによる危険性を数値化して割り当てた3次元コスト画像を作成するコスト画像作成手段と、該3次元コスト画像に対し、手術対象である患部からの距離に係る侵襲度情報を加え、3次元侵襲度画像を作成する侵襲度画像作成手段。
(3) 該3次元画像データにおける人体表面上の任意の探索開始点から、最も侵襲の少ない最低侵襲パスを自動検索する最低侵襲パス検索手段。
(4) 該検索結果から2次元又は3次元の少なくともいずれかの手術パス画像を作成する手術パス画像作成手段。
(5) 少なくとも該手術パス画像を表示可能な画像表示手段。

【0011】
本構成において、上記最低侵襲パス検索手段が、該3次元侵襲度画像上で、該探索開始点から該患部に向けて該侵襲度情報の値が最小である画素を順に選択しながら、最低侵襲パスの候補パスを決定し、該候補パスにおいて所定の画素数より多い画素列によって構成される塊状領域を所定の画素数に減縮して、所定の画素数の幅を有する線状候補パスに画像処理する。さらに、該候補パスにおいて少なくとも該塊状領域の始点又は終点であって、該線状候補パス中に存在する点、又は、線状候補パスにおいて、構成する線分が所定角度以上の角度で折れ曲がる点のいずれかである特徴点を抽出し、該探索開始点と該患部とをそれぞれ固定点とし、該特徴点の少なくともいずれかを制御点とした動的輪郭モデルによって最低侵襲パスを検索する。

【0012】
ここで、前記所定の画素数が、1画素であって、前記塊状領域の始点又は終点を決定する手順が、候補パスを構成する全ての画素について、該画素に空間的に隣接する26個の隣接画素の内、候補パスに含まれる隣接候補画素数を探索開始点又は患部のいずれかの点から順次算出し、該隣接候補画素数が所定のしきい値において変化した直後の点を、前記塊状領域の始点又は終点とする構成でもよい。前記しきい値が5画素であってもよい。

【0013】
前記所定角度以上の角度で折れ曲がる特徴点の決定において、線状候補パス上の着目画素において、その前後の画素とを結ぶ2つの線分のなす挟角が、0度ないし110度である時、該着目画素を特徴点とする手術パス自動探索装置を提供してもよい。

【0014】

【発明の実施の形態】以下、本発明の実施方法を実施例に基づいて説明する。なお、本発明の実施形態は以下に限定されず、その趣旨から逸脱しない範囲内で任意に変更可能である。特に、本発明の実施形態として、脳神経外科手術における手術パスの自動探索につき説述するが、本発明の手術パス自動探索ソフトウェア及びその装置は、手術部位に関わるものではなく、いかなる手術の手術パス自動探索にも用いることができる。

【0015】
本発明における手術パス自動探索ソフトウェア及びその装置において、中核をなすアルゴリズムにつき、説述する。まず、最初に本発明を適用する前提となる候補パスの決定過程を示す。該候補パスの決定過程は、本件発明者が従来において提案した手術パスの出力過程とほぼ同様の形態であり、本発明では、従来の手術パスをさらに適切に補正し、実際の手術においても十分適用可能な、手術パスを出力できる。

【0016】
候補パスの決定過程を示す説明図を図1に示す。該候補パスは、頭表から患部領域までを最も侵襲の低い経路を通った場合に通過する画素群である。以下、該候補パスの決定過程について説述する。本過程が入力に用いている重要度画像(10)とは、例えば、頭皮・頭蓋・大脳(右脳と左脳)・小脳・脳幹・脳室などの解剖学的部位に分けられた3次元画像に対し、重要度を設定したものである。ここで、重要度とは、部位毎に医師の解剖学的知識と経験にもとづき設定された手術における接触と切除の危険の度合いをものであり、本実施例では4段階で設定している。これら重要度の決定については、必ずしも上記医師の解剖学的知識や経験に基づくものに限られず、患者に応じた予測される危険の度合いを示すもの等、任意の基準によって決めることができる。また、その表示についても4段階に限られず、任意の段階で表示してもよい。3次元画像はコンピュータで画像処理可能な画像データであって、周知のように所定の大きさを有する画素の集合から成り立っている。

【0017】
コスト画像(11)とは、重要度画像(10)に対し、重要度を手術時に接触することにより各組織へ与えられるダメージの度合いと考え、数値化したものであり、手術を行う患部及びその周辺部位(以下、患部領域と呼ぶ。)の患部領域画像(12)と合成して作成される。このように、コスト画像(11)はその重要度画像(10)における重要度からコストを求めて作成した3次元画像データであるから、本発明の実施においては、必ずしも本実施例のように重要度画像・患部領域画像を作成する過程を用いなくてもよい。

【0018】
候補パス探索処理は2つのアルゴリズム(13)(14)を用いている。コスト画像(11)を基に患部領域からの距離を考慮した侵襲の度合い(侵襲度)を求めているのが侵襲度計算アルゴリズム(13)であり、求められた侵襲度が詰った侵襲度画像(15)と手術パスの探索を開始する点(探索開始点)(16)の座標を基に探索開始点から患部領域に最初に到達した点(患部領域到達点)までの候補パス(17)を求めるのがパス探索アルゴリズム(14)である。

【0019】
ここで、上記の候補パス探索処理により求められた候補パス(17)は、指定された探索開始点(16)から順に最も侵襲度の低い画素を患部領域に到達するまで辿ったものである。図2に候補パス(17)の探索処理例を示す。こうして辿った画素には辿った順番を示すパス番号(20・・・)を付与し、これらの画素を候補パス画像(21)としている。この探索により得られた候補パス画像(21)は、最も侵襲の低い経路が必ずしも1画素ではないため、図に示すように面又は塊状の領域(23)(23)を持つ。また、求められた候補パスには、次のパス番号を持ったパス画素が近傍になく、先へ進めない不要な画素(22)が含まれている。

【0020】
従来の手術パスの決定においては、これらの処理を行うのみであり、手術における人体への侵襲を最小限に抑えることのみを考慮して計算されているため、手術パスの形状については考慮されていない。そのため図3で示すように、探索開始点(16)から患部領域到達点(24)に至る従来の手術パス(32)は、鋭角に折れ曲がった複雑な形状(30)をしたり、手術時に侵入困難な狭い領域(31)を通過することがある。よって、この従来の手術パス(32)は、最も低侵襲という意味では有用な情報であるが、実際の手術では脳内に手術操作を補足する器具を配置する場所がなかったり、隙間が狭く器具や指そのものを挿入することができないなど、実施が困難な場合があり、必ずしも術前情報として有効なものであるとは言えない問題があった。

【0021】
そこで本発明における手術パス自動探索ソフトウェア及び装置に用いるアルゴリズムでは、次の条件を満たすものを手術パスとし、これらを満たす手術パスを出力する新たな手術パス自動探索アルゴリズムを用いている。すなわち、
(a) 探索開始点から患部領域まで、なるべく侵襲の少ないパスで結ぶこと。
(b) なるべく滑らかなパスであること。
(c) なるべく距離が短いパスであること。
(d) パスは指定した太さをもつものであること。
の諸条件である。

【0022】
上記条件の中で最も重要であるのは(a)であり、実際の手術において不可欠な要件と言える。これを容易に満たすためには、従来の手法で得られた手術パスを、変形することが最も簡易で有効な手段である。そこで従来の手法で求められた手術パスを本発明においては、候補パス(17)とし、これをなるべく滑らかで距離が短い手術パスに変形して出力することで、低侵襲かつ手術の実施が容易なパスになる。

【0023】
このように予め指定されたモデルを幾つかの条件が満たされるまで変形させる手法として、動的輪郭モデルと呼ばれる手法がある。本発明では、該手法を手術パスの決定に用いることに大きな特徴がある。動的輪郭モデルは、多くの場合、予め指定した輪郭モデルを動的に伸縮させ、目的とする特徴領域の輪郭を求めるために利用されている。そこで本発明では、上記候補パスを動的輪郭モデルにおける初期モデルとして与え、動的輪郭モデルアルゴリズムを用いて変形させることにより(a)~(c)の条件を満たすものを求める。これにより動的輪郭モデルのエネルギー関数のパラメータを設定することにより、求められる手術パス形状を柔軟に変更できる。

【0024】
ここで、初期モデルの作成方法について以下に示す。動的輪郭モデルで利用する初期モデルの制御点は、候補パスの画像から図4で示す処理手順を経て求める。まず候補パス(17)の画像から不要な画素を取り除き(41)、線状化(42)する。次に線状化された手術パスを辿った時、急な角度で折れ曲がる箇所や塊状領域の始点・終点を選出し、これを初期モデルの制御点とする。(43)これらの具体的な処理内容について以下に順次述べる。

【0025】
候補パス画像(17)の中には、前述のように、パスの開始点から患部領域まで辿った時に決して通過しない画素が含まれている。これらの画素を患部領域点から順に以下の手順により削除するのが不要画素の削除(41)である。すなわち、まず、患部領域到達点(24)を最初の注目画素とする。そして、注目画素(パス番号P)に対し、その3次元的に隣接する26の画素に存在する全てのP-1の値を持つ画素を次の注目画素とする。この際、これ以外のP-1のパス番号を持つ画素を全て削除する。本手順によって、例えば図12における不要画素(22)等が有効に削除される。

【0026】
次に候補パス画像の線状化(42)について説明する。この処理は先に図2、図3で示した塊状(23)(23)のパス画素の塊の中心の画素のみを抽出することにより、1画素の太さを持つ線状の画素列を作成する処理である。この処理は、探索開始点(16)から患部領域到達点(24)まで候補パス画素(32)を順に辿る。この時、順次辿っていく画素を注目画素とする。まず探索開始点(16)を最初の注目画素とし、注目画素の近傍中に注目画素のパス番号+1の値を持つ画素領域の中心画素を求め、この画素を線状化した候補パス画素とし、画素領域全ての画素を次の注目画素とする。こうした処理を患部領域到達点(24)まで繰り返し行う。

【0027】
さらに、動的輪郭モデルにおける初期制御点を決定する。本発明においては、該初期制御点として、候補パス画像の中で、以下の特徴を持つ点を選ぶ。すなわち、
(a) パス画像の塊状領域の始点・終点
(b) 画素を順に辿った時に急な角度で折れ曲がる箇所
である。

【0028】
まず、上記(a)の選出処理につき、例として図3におけるaの個所の拡大図を図5に示しながら示す。まず線状化された候補パス(51)と線状化される前の候補パス(52)を入力する。そして線状化された手術パス(51)の探索開始点から患部画素到達点まで順に以下の処理を行う。線状化される前の候補パス(52)の中で、注目画素の3次元的に隣接する26画素中(53)(53)に注目画素のパス番号+1の値を有す画素を数え上げる。

【0029】
そして、この数が5以上、5未満に変化する箇所の画素を選出する、すなわちしきい値を5画素として上記パス画像の塊状領域の始点(54)(54)・終点(55)(55)の特徴点を選出した。なお、上記しきい値は、5画素であるがこれに限定されることなく、任意に変更可能である。また、線状化した結果が1画素の幅でない場合は、特に隣接画素数等も変更されることは言うまでもない。

【0030】
さらに、上記(b)の特徴点は線状化されたパス画像を探索開始点から患部画素到達点まで順に辿った時、注目画素と隣接する3画素がなす角度が所定の角度よりも急に折れ曲がる時の画素を選出する。本実施例では、この角度が110度よりも小さい時、該画素を選手移している。本構成において、特徴点の選出には上記110度程度以下とするのが適当であるが、該角度については、適宜変更することもできる。

【0031】
手術パス画像に動的輪郭モデルを適用する方法として、図6で示すようなモデルを設定した。まず、探索開始点(60)、患部領域到達点(61)を固定点とし、途中幾つかの制御点(62・・・)を設けた。これらの制御点(62・・・)間を結ぶ線分(63・・・)には伸縮に比例して復元力を持つバネ(64・・・)を、隣接する2本の線分(63)(63)には挾角(65)に応じて直線(180°)に戻ろうとするバネ(66・・・)を設けた。

【0032】
本発明では、動的輪郭モデルを適用するにつき、上記のようなモデルを設定する。これは、低侵襲を維持しつつ、滑らかな手術パスに変形することを目的としている。該動的輪郭モデルのエネルギー関数について説明する。

【0033】
まず、この初期モデルは順序付けされた制御点の集合
【式1】C = [Vi=(xi,yi,zi] (1≦i≦n)
とする。

【0034】
これに対し式2で定義されるエネルギー関数を最小にすることにより目的の形状を得る。
【式2】
JP0003453603B2_000002t.gif【0035】ここでEelasticはパス線分の弾性エネルギーを表しており式3で表される。
【式3】
Eelastic(vi)=W1(|180°-Ai|)+W2(|L0i-Li|)
式3のAiは図6(b)で示すように線分vi-1,vi(63)とvi,vi+1(63)がなす角(65)を表している。Liは線分vi-1,vi(63)の長さ(67)を表しており、L0iは初期モデルにおけるLiである。

【0036】
式2でのEcostは線分上の各画素が持つコストの総和(式4)で表される。
【式4】Ecost(vi) =W3×(前線分譲の全ての画素が持つコストの総和)
ここでのW1,W2,W3は重み付けパラメータである。

【0037】
以上のように本発明では動的輪郭モデルにおけるエネルギー関数を設定し、重み付けパラメータW1,W2,W3を適宜変更して実施した。次に、実際に本発明による処理の具体例を示す。実験データには209x208x226画素の重要度画像を用い、脳室前方付近に半径5mmの球状の腫瘍を想定した患部領域を設定し、コスト画像を作成した。

【0038】
探索開始点を頭部前方の左付近に設定し、候補パスを求めた(図7)。この候補パスをもとに図4で示す処理を行ない、本発明による手術パスを得る。この手術パスについて次の3つの評価値により、パス形状の評価を行った。該評価の結果を示す表が図8である。図8において、コスト(80)は、探索開始点から患部領域到達点までのパス画素が持つコストの総和であり、挟角(81)は、探索開始点と患部領域到達点を除く全ての制御点が持つ挟角を180°で引いた値の和であり、距離(82)は、ユークリッド距離によるパス画像の全長である。

【0039】
コスト、挟角、距離それぞれのエネルギー要素のみにより変形させたパス画像を、それぞれ図9の(a)(b)(c)に示す。単独のエネルギー要素のみを用いた場合、特に、コスト及び距離のエネルギー要素では複雑なパスが十分に改善されず、これら単独では本発明における十分な効果が得られない。これは、候補パスがそもそもコストと距離によって決定されていた事情によると考えられる。

【0040】
しかし、挟角エネルギーのみによって処理を行った場合、特にパスをなめらかにする効果が強く発揮されるため、好適な手術パスを得られ、本発明による動的輪郭モデルを適切な重み付けパラメータによって適用すると、従来の手法で出力されたものと異なり、実際の手術によってもそのまま利用可能な手術パスが出力されることが裏付けられた。

【0041】
さらに、上記3つのエネルギー要素を正規化し、均等に重み付けをした場合に得られたパス画像を図10に示す。各エネルギー要素への重み付けは、予め各エネルギー要素の値の範囲を調べ、変動範囲が一定となるよう正規化した。具体的にはコスト:2.6、挟角:1.0、距離:36.0として正規化を行った。図8における表中の配分比率は、この正規化を行った後に配分したものである。

【0042】
本構成においては、各エネルギー値の変動範囲を正規化したものが、コスト、挟角、距離の評価値全てにおいて均等に低い値を出し、初期モデル(100)よりも良い結果が得られている。図10では、一部にあまり滑らかにならなかった制御点(101)があるものの、多くの初期モデルにおける制御点(102)が、動的輪郭モデルによって移動し、滑らかな手術パスを形成する制御点(103)を実現することに成功している。特に、従来の手法による手術パスで、実際には適用不可能であった複雑なパス(104)が直線的で滑らかなパス(105)になり、十分に実際の手術で用いることのできる手術パスを出力できる。

【0043】
このように、本発明では、従来不可能であった滑らかで実際的な手術パスを、従来の手法で出力されたパスを候補パスとし、それを動的輪郭モデルの初期モデルとして処理することで、簡易に、かつ効果的な手術パスの出力を可能としている。上記の処理は、手術パス自動探索プログラムとして、該プログラムの各ステップに適用し、すぐに実施することが可能である。

【0044】
このとき、上記エネルギー要素における重み付けを変更することで、上記実施例で完全に滑らかにならなかった制御点についても、改善することが可能である。また、手術の危険度によってコストエネルギーの重みを重視するなど、プログラム上で重み付けを任意に変更できる構成としてもよい。また、勘案するエネルギー要素については、上記コスト、挟角、距離に限定されることなく、任意に追加することができる。

【0045】
さらに、本発明ではこれらプログラムを実装した手術パス自動探索装置を提供することもできる。これによれば、手術の術前計画などにおいて、便利に利用することのできる手術パスの自動探索装置を実現する。たとえば、コンピュータに手術部位の3次元画像を取り込む機能を備え、それに医師が知識や経験に基づいて重要度を決定し、探索開始点と患部を入力することで、即座に手術パスを表示装置で表示する装置を提供する。

【0046】
重要度の設定に、特に専門的で高度な学識を有する医師が関与することで、専門外の医師では十分に行えない緻密な重要度設定を行うことができ、これによって、さらに高度な手術パスを出力し、医療技術の向上に寄与する。

【0047】
なお、本発明は、脳神経外科手術に限らず、任意の手術に用いることができる。すなわち、手術において、部位による重要度、危険度に違いがあることは同様であるから、他の部位における手術であっても、全く同様に上記構成をとることができる。また、その出力も3次元画像でなく、各方向からみた平面画像(2次元画像)であってもよく、それらを表示する構成でもよい。

【0048】

【発明の効果】本発明は、以上の構成を備えるので、次の効果を奏する。請求項1に記載の手術パス自動探索プログラムによると、従来の手法によって得られたパスを候補パスとし、それに動的輪郭モデルを適用するので、簡易な構成で有効な手術パスを自動探索するプログラムを実現できる。とくに、本発明は動的輪郭モデルにおける制御点の決定方法にその特徴を有し、これらを塊状領域の始点又は終点や、線状候補パスにおける所定角度以上の角度で折り曲がる点とすることで効果的に手術パスを求めることができる。

【0049】
請求項2に記載の手術パス自動探索プログラムによると、線状化によって1画素とするので、精密な出力を行えると同時に、計算量が少なく、高速に手術パスを探索することが可能となる。また、しきい値を用いて塊状領域の始点又は終点を導出するので、確実に塊状領域を把握し、手術パス自動探索の高精度化に寄与する。

【0050】
請求項3に記載の手術パス自動探索プログラムによると、該しきい値を5画素と固定することで、高速な探索が可能となると同時に、高精度に塊状領域を把握することができる。

【0051】
請求項4に記載の手術パス自動探索プログラムによると、上記折れ曲がる特徴点を110度以下の角度とすることで、実際の手術において実施可能な折り曲がり角度を加味した手術パスを出力することが可能になる。

【0052】
さらに、本発明による手術パス自動探索装置は次の効果を奏する。請求項5に記載の手術パス自動探索装置によると、従来の手法によって得られたパスを候補パスとし、それに動的輪郭モデルを適用するので、簡易な構成で有効な手術パスを自動探索する装置を提供することができる。とくに、本発明は動的輪郭モデルにおける制御点の決定方法にその特徴を有し、これらを塊状領域の始点又は終点や、線状候補パスにおける所定角度以上の角度で折り曲がる点とすることで効果的に手術パスを求めることができる。そして、該装置によって、高度な専門的知識・経験を簡便に利用し、術前計画等において高度な医療に寄与する。

【0053】
請求項6に記載の手術パス自動探索装置によると、線状化によって1画素とするので、精密な出力を行えると同時に、計算量が少なく、高速に手術パスを探索する自動探索装置を提供する。また、しきい値を用いて塊状領域の始点又は終点を導出するので、確実に塊状領域を把握し、手術パス自動探索の高精度化に寄与する。

【0054】
請求項7に記載の手術パス自動探索装置によると、該しきい値を5画素と固定することで、高速な探索が可能となると同時に、高精度に塊状領域を把握することができる。

【0055】
請求項8に記載の手術パス自動探索装置によると、上記折れ曲がる特徴点を110度以下の角度とすることで、実際の手術において実施可能な折り曲がり角度を加味した手術パスを出力する自動探索装置に寄与する。
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図6】
4
【図5】
5
【図7】
6
【図8】
7
【図10】
8
【図9】
9