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明細書 :ビームプロファイルのモニタリング方法及びそのモニタ

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第6037379号 (P6037379)
公開番号 特開2014-081320 (P2014-081320A)
登録日 平成28年11月11日(2016.11.11)
発行日 平成28年12月7日(2016.12.7)
公開日 平成26年5月8日(2014.5.8)
発明の名称または考案の名称 ビームプロファイルのモニタリング方法及びそのモニタ
国際特許分類 G01T   1/29        (2006.01)
FI G01T 1/29 A
請求項の数または発明の数 10
全頁数 17
出願番号 特願2012-230665 (P2012-230665)
出願日 平成24年10月18日(2012.10.18)
新規性喪失の例外の表示 特許法第30条第2項適用 J.Vac.Soc.Jpn.第55巻第4号(平成24年4月20日)一般社団法人日本真空学会発行第152-155ページに発表
審査請求日 平成27年9月30日(2015.9.30)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】505374783
【氏名又は名称】国立研究開発法人日本原子力研究開発機構
発明者または考案者 【氏名】荻原 徳男
個別代理人の代理人 【識別番号】100176164、【弁理士】、【氏名又は名称】江口 州志
審査官 【審査官】後藤 孝平
参考文献・文献 B.Vosicki,外1名,「The SODIUM CURTAIN BEAM PROFILE MONITOR OF THE ISR」,IEEE Transaction on Nuclear Science,1975年,No. 3,p.1475-1478
調査した分野 G01T 1/29
H05H 13/04
G21B 1/11
JSTPlus/JST7580(JDreamIII)
特許請求の範囲 【請求項1】
希薄気体からなるシート状のガスビームをターゲットにして加速器中又は核融合炉中のビームを衝突させることによって発生する発光又は電離イオンから前記加速器中又は核融合炉中のビームプロファイルを計測する方法であって、
前記シート状のガスビームは、前記希薄気体を、寸法bの隙間と前記希薄気体の流動方向にL1の長さ及び前記希薄気体の流動方向と前記隙間が形成される方向に対して直角方向にaの長さ有する平板の少なくとも2枚とからなり、前記bとL1との比(L1/b)が50以上で、前記bとaとの比(a/b)が1を超えるスリットの前記隙間、又は長さxの長辺及び長さyの短辺からなる断面とL2の長手方向の長さとを有し、前記yとL2との比(L2/y)が50以上である楕円形キャピラリを通過させることによって、10mm以下のシート厚さで形成されることを特徴とするビームプロファイルのモニタニング方法。
【請求項2】
前記2枚の平板からなり、寸法bで隙間が形成されたスリットは、中心部分が空いたドーナッツ型の円板形状を有し、該ドーナッツ型の円板形状を有するスリットの中心部分に加速器中又は核融合炉中のビームの設計軌道が配置され、前記希薄気体を前記スリットの前記隙間を通過させることによって前記スリットの中心部分に向けてシート状のガスビームを形成し、該シート状のガスビームをターゲットにして前記加速器中又は核融合炉中のビームを衝突させたときに発生する発光又は電離イオンから前記加速器中又は核融合炉中のビームプロファイルを計測することを特徴とする請求項1に記載のビームプロファイルのモニタニング方法。
【請求項3】
前記2枚の平板からなり、寸法bで隙間が形成されたスリットは、円板形状を有し、加速器中又は核融合炉中のビームの設計軌道の外側に配置され、前記加速器中又は核融合炉中のビームの設計軌道の外側から前記希薄気体を前記スリットの前記隙間を通過させることによってシート状のガスビームを形成し、該シート状のガスビームをターゲットにして前記加速器中又は核融合炉中のビームを衝突させたときに発生する発光又は電離イオンから前記加速器中又は核融合炉中のビームプロファイルを計測することを特徴とする請求項1に記載のビームプロファイルのモニタニング方法。
【請求項4】
前記円板形状を有するスリットは、該スリットを構成する2枚の平板の両者又はどちらか一方を回転させることを特徴とする請求項3に記載のビームプロファイルのモニタニング方法。
【請求項5】
前記2枚の平板からなるスリットを加速器中又は核融合炉中のビームの設計軌道の外側に複数設け、前記希薄気体を前記複数のスリットのそれぞれの隙間を通過させることによって、前記シート状のガスビームが前記加速器中又は核融合炉中のビームの設計軌道を横断するように形成されることを特徴とする請求項1~4の何れかに記載のビームプロファイルのモニタニング方法。
【請求項6】
希薄気体からなるシート状のガスビームをターゲットにして加速器中又は核融合炉中のビームを衝突させることによって発生する発光又は電離イオンから前記加速器中又は核融合炉中のビームプロファイルを計測するためのモニタであって、
少なくとも、
真空チャンバー内を通過する前記加速器中又は核融合炉中のビーム通路と、
前記希薄気体を供給するためのガス供給装置と、
前記加速器中又は核融合炉中のビーム通路に隣接して、前記希薄気体を、寸法bの隙間と前記希薄気体の流動方向にL1の長さ及び前記希薄気体の流動方向と前記隙間が形成される方向に対して直角方向にaの長さ有する平板の少なくとも2枚とからなり、前記bとL1との比(L1/b)が50以上で、前記bとaとの比(a/b)が1を超えるスリットの前記隙間、又は長さxの長辺及び長さyの短辺からなる断面とL2の長手方向の長さとを有し、前記yとL2との比(L2/y)が50以上である楕円形キャピラリを通過させることによって、前記希薄気体からなるシート状のガスビームを10mm以下のシート厚さで形成するシート状のガスターゲット形成装置と、
前記シート状のガスビームをターゲットにして前記加速器中又は核融合炉中のビームを衝突させたときに発生する発光又は電離イオンを計測する前記加速器中又は核融合炉中のビームのプロファイル検出部と、
前記発光又は前記電離イオンの計測値に基づいて前記加速器中又は核融合炉中のビームのプロファイルを2次元実像及び/又はビーム像として映像化するための解析手段とを有するビームプロファイルのモニタ。
【請求項7】
前記2枚の平板からなり、寸法bで隙間が形成されたスリットは、中心部分が空いたドーナッツ型の円板形状を有し、該ドーナッツ型の円板形状を有するスリットの中心部分に加速器中又は核融合炉中のビームの通路が配置され、前記希薄気体を前記スリットの前記隙間を通過させることによって該スリットの中心部分に向けてシート状のガスビームを形成し、該シート状のガスビームをターゲットにして前記加速器中又は核融合炉中のビームを衝突させる手段を有することを特徴とする請求項6に記載のビームプロファイルのモニタ。
【請求項8】
前記2枚の平板からなり、寸法bで隙間が形成されたスリットは、円板形状を有し、加速器ビームの設計軌道の外側に配置され、加速器中又は核融合炉中のビームの設計軌道の外側から前記希薄気体を前記スリットの前記隙間を通過させることによってシート状のガスビームを形成し、該シート状のガスビームをターゲットにして前記加速器中又は核融合炉中のビームを衝突させる手段を有することを特徴とする請求項6に記載のビームプロファイルのモニタ。
【請求項9】
前記円板形状を有するスリットは、該スリットを構成する2枚の平板の両者又はどちらか一方を回転させる手段を有することを特徴とする請求項8に記載のビームプロファイルのモニタ。
【請求項10】
前記2枚の平板からなるスリットを加速器中又は核融合炉中のビームの設計軌道の外側に複数設け、前記希薄気体を前記複数のスリットのそれぞれの隙間を通過させることによって、前記加速器中又は核融合炉中のビームの設計軌道を横断するようにシート状のガスビームを形成し、該シート状のガスビームをターゲットにして前記加速器中又は核融合炉中のビームを衝突させる手段を有することを特徴とする請求項6~9の何れかに記載のビームプロファイルのモニタ。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、粒子加速器又は核融合炉において真空チャンバー内を通過する荷電粒子ビーム等のビームプロファイルを計測するためのモニタリング方法及びそのモニタに関し、前記ビームに影響をほとんど及ぼさずに、非破壊で、高速かつ簡便に計測ができるようにしたものである。
【背景技術】
【0002】
近年、加速器はビームの大出力化が進められており、例えば、大強度陽子加速器J-PARC3GeVシンクロトロン(RCS)においてはビーム出力1MWの実現のためにビームロスの徹底的な低減が要求される。また、核融合炉においてエネルギードライバーとして使用される各種レーザーや軽又は重イオンビーム等のビームについても、高性能で高効率の運用を行うために同様の要求がある。
【0003】
これらの要求は、ビームダイナミクスの詳細な研究によって達成されると期待されているが、そのためにはビーム診断方法とそのツールの開発が不可欠である。ビームプロファイルモニタは、このような診断の一つとして重要なものであるが、一般的な陽子やイオンの加速器を周回するビームのプロファイル(形状及び大きさ等)を非破壊的に、かつ高速で高精度に計測することは困難である。そのため、ビームに影響をほとんど及ぼさずに、ビームプロファイルを非破壊かつ高速で計測するモニタリング方法の確立及びそのモニタの構築が従来から大きな課題であった。
【0004】
加速器ビームのプロファイルモニタとしては、これまで様々な方法が提案されている(例えば、特許文献1及び2を参照)。前記の特許文献1には、加速器ビームに、これより運動エネルギーが小さい荷電粒子ビームを照射して作用させ、その影響を観測する方法及びそのモニタが開示されている。また、前記の特許文献2には、加速器内のビーム設計軌道上にビーム径より小さな孔を有する発光部材を配置し、該発光部材へ前記ビームを照射するときに生じる発光を観測することによってモニタリングする方法及びそのモニタが開示されている。しかしながら、これらの方法は加速器ビームへの影響を無視することができず、ビームプロファイルを高精度に計測することが非常に困難であった。
【0005】
そこで、この問題を解決する方法として、非特許文献1には、ノズルビームとスピンを利用した収束装置を組み合わせて、幅85mm、奥行74mm、厚み1.3mmの平面状の酸素分子からなるシート状のジェットビームをターゲットにし、加速器のビームを衝突させ、その電離イオン(又は発光)を計測し、高速にビーム形状を診断する方法が提案されている。このガスターゲットは、分子密度が10-4Paと低く、加速器のビームへの影響はほとんどないことから、癌治療用装置等に導入されてビーム診断用として適用されている。
【先行技術文献】
【0006】

【特許文献1】特開平5-297147号公報
【特許文献2】特開平6-204000号公報
【0007】

【非特許文献1】Y.Hashimoto、外8名、「Oxygen gas-sheet beam profile monitor for the synchrotron and storage ring」、Nucl.Instrum.Methods Phys.Res.A、2004年、第527巻、p.289
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、非特許文献1に記載の方法を用いて、例えば、3GeVRCSのビームプロファイルのモニタを行おうとすると、モニタが大変大掛かりのものとなり現実的でない。非特許文献1に記載のモニタは、ノズルビームとスピンを利用する収束装置において、高圧ガスジェット発生装置及び周期的な磁極構成をもつ磁石等を備えており、幅85mm、奥行74mmのシート状のガスシートを形成する時点で、すでに大型の設備となっている。これを3GeVRCSのビームプロファイルモニタを行う場合には、プロトンビームの周回する真空容器の直径が300mmにもなる可能性があり、幅及び奥行として300mm以上のシート状のガスターゲットを形成するために設備の一層の大型化が避けられない。
【0009】
また、ビームの電荷密度分布を数%程度の位置精度で高精度に得ようとすると、3GeVRCSのビーム径が100mmのときは、シート状ガスターゲットの厚さとしては2~3mm以下が求められる。その場合のシート状ガスターゲットは、上記で述べたように、直径を300mm程度にすることが必要となるが、非特許文献1に記載の方法では、厚さが2~3mm以下の均一なシート状ガスターゲットをそのような大口径で造り出すための適当な手段がなく、技術的に大きな隘路事項となっている。
【0010】
このように、従来技術では、今後の大出力加速器において必須の技術課題、すなわち、ビームプロファイルを高速かつ簡便に、高精度で計測するという要求に対して十分に応えることができない。また、今後、高性能化及び高効率化を行う核融合炉の開発においても、従来技術よりも簡便に、かつ従来技術と同様以上の高精度で計測を行うことできるビームプロファイルのモニタリング方法が強く求められている。
【0011】
本発明は、上記した従来の問題点に鑑みてなされたものであって、加速器中又は核融合炉中のビームのプロファイルを計測する際に、大口径又は大面積で、かつ均一なシート厚みを有する希薄気体からなるシート状のガスビームを形成して、該ガスビームをターゲットにして前記加速器中又は核融合炉中のビームを衝突させることによって、該ビームにほとんど影響を与えずに、非破壊で、高速かつ簡便にビームプロファイルの計測ができるモニタリング方法及びそのモニタを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、加速器中又は核融合炉中のビームプロファイルのモニタリング方法及びそのモニタにおいて、従来のノズルビームとスピンを利用した収束装置に代えて、分子密度の小さな希薄気体からなるシート状のガスビームの形成をより簡単な系で実現するために、希薄気体をスリットの細間隙又はキャピラリの細径を通過させたときに得られる気体分子の指向性、すなわち気体分子のビーム効果を利用することによって上記の課題を解決できることを見出して本発明に到った。
【0013】
すなわち、本発明の構成は以下の通りである。
[1]本発明は、希薄気体からなるシート状のガスビームをターゲットにして加速器中又は核融合炉中のビームを衝突させることによって発生する発光又は電離イオンから前記加速器中又は核融合炉中のビームプロファイルを計測する方法であって、前記シート状のガスビームは、前記希薄気体を、寸法bの隙間と前記希薄気体の流動方向にL1の長さ及び前記希薄気体の流動方向と前記隙間が形成される方向に対して直角方向にaの長さ有する平板の少なくとも2枚とからなり、前記bとL1との比(L1/b)が50以上で、前記bとaとの比(a/b)が1を超えるスリットの前記隙間、又は長さxの長辺及び長さyの短辺からなる断面とL2の長手方向の長さとを有し、前記yとL2との比(L2/y)が50以上である楕円形キャピラリを通過させることによって、10mm以下のシート厚さで形成されることを特徴とするビームプロファイルのモニタニング方法を提供する。
[2]本発明は、前記2枚の平板からなり、寸法bで隙間が形成されたスリットが、中心部分が空いたドーナッツ型の円板形状を有し、該ドーナッツ型の円板形状を有するスリットの中心部分に加速器中又は核融合炉中のビームの設計軌道が配置され、前記希薄気体を前記スリットの前記隙間を通過させることによって前記スリットの中心部分に向けてシート状のガスビームを形成し、該シート状のガスビームをターゲットにして前記加速器中又は核融合炉中のビームを衝突させたときに発生する発光又は電離イオンから前記加速器中又は核融合炉中のビームプロファイルを計測することを特徴とする前記[1]に記載のビームプロファイルのモニタニング方法を提供する。
[3]本発明は、前記2枚の平板からなり、寸法bで隙間が形成されたスリットが、円板形状を有し、加速器中又は核融合炉中のビームの設計軌道の外側に配置され、前記加速器中又は核融合炉中のビームの設計軌道の外側から前記希薄気体を前記スリットの前記隙間を通過させることによってシート状のガスビームを形成し、該シート状のガスビームをターゲットにして前記加速器中又は核融合炉中のビームを衝突させたときに発生する発光又は電離イオンから前記加速器中又は核融合炉中のビームプロファイルを計測することを特徴とする前記[1]に記載のビームプロファイルのモニタニング方法。
[4]本発明は、前記円板形状を有するスリットにおいて、該スリットを構成する2枚の平板の両者又はどちらか一方を回転させることを特徴とする前記[3]に記載のビームプロファイルのモニタニング方法を提供する。
[5]本発明は、前記2枚の平板からなるスリットを加速器中又は核融合炉中のビームの設計軌道の外側に複数設け、前記希薄気体を前記複数のスリットのそれぞれの隙間を通過させることによって、前記シート状のガスビームが前記加速器中又は核融合炉中のビームの設計軌道を横断するように形成されることを特徴とする前記[1]~[4]の何れかに記載のビームプロファイルのモニタニング方法を提供する。
[6]本発明は、希薄気体からなるシート状のガスビームをターゲットにして加速器中又は核融合炉中のビームを衝突させることによって発生する発光又は電離イオンから前記加速器中又は核融合炉中のビームプロファイルを計測するためのモニタであって、少なくとも、真空チャンバー内を通過する前記加速器中又は核融合炉中のビーム通路と、前記希薄気体を供給するためのガス供給装置と、前記加速器中又は核融合炉中のビーム通路に隣接して、前記希薄気体を、寸法bの隙間と前記希薄気体の流動方向にL1の長さ及び前記希薄気体の流動方向と前記隙間が形成される方向に対して直角方向にaの長さ有する平板の少なくとも2枚とからなり、前記bとL1との比(L1/b)が50以上で、前記bとaとの比(a/b)が1を超えるスリットの前記隙間、又は長さxの長辺及び長さyの短辺からなる断面とL2の長手方向の長さとを有し、前記yとL2との比(L2/y)が50以上である楕円形キャピラリを通過させることによって、前記希薄気体からなるシート状のガスビームを10mm以下のシート厚さで形成するシート状のガスターゲット形成装置と、前記シート状のガスビームをターゲットにして前記加速器中又は核融合炉中のビームを衝突させたときに発生する発光又は電離イオンを計測する前記加速器中又は核融合炉中のビームのプロファイル検出部と、前記発光又は前記電離イオンの計測値に基づいて前記加速器中又は核融合炉中のビームプロファイルを2次元実像及び/又はビーム像として映像化するための解析手段とを有するビームプロファイルのモニタを提供する。
[7]本発明は、前記2枚の平板からなり、寸法bで隙間が形成されたスリットが、中心部分が空いたドーナッツ型の円板形状を有し、該ドーナッツ型の円板形状を有するスリットの中心部分に加速器中又は核融合炉中のビームの通路が配置され、前記希薄気体を前記スリットの前記隙間を通過させることによって該スリットの中心部分に向けてシート状のガスビームを形成し、該シート状のガスビームをターゲットにして前記加速器中又は核融合炉中のビームを衝突させる手段を有することを特徴とする前記[6]に記載のビームプロファイルのモニタを提供する。
[8]本発明は、前記2枚の平板からなり、寸法bで隙間が形成されたスリットが、円板形状を有し、加速器ビームの設計軌道の外側に配置され、加速器中又は核融合炉中のビームの設計軌道の外側から前記希薄気体を前記スリットの前記隙間を通過させることによってシート状のガスビームを形成し、該シート状のガスビームをターゲットにして前記加速器中又は核融合炉中のビームを衝突させる手段を有することを特徴とする前記[6]に記載のビームプロファイルのモニタを提供する。
[9]本発明は、前記円板形状を有するスリットにおいて、該スリットを構成する2枚の平板の両者又はどちらか一方を回転させる手段を有することを特徴とする前記[8]に記載のビームプロファイルのモニタを提供する。
[10]本発明は、前記2枚の平板からなるスリットを加速器中又は核融合炉中のビームの設計軌道の外側に複数設け、前記希薄気体を前記複数のスリットのそれぞれの隙間を通過させることによって、前記加速器中又は核融合炉中のビームの設計軌道を横断するようにシート状のガスビームを形成し、該シート状のガスビームをターゲットにして前記加速器中又は核融合炉中のビームを衝突させる手段を有することを特徴とする前記[6]~[9]の何れかに記載のビームプロファイルのモニタを提供する。
[発明の効果]
【発明の効果】
【0014】
本発明のモニタリング方法によれば、希薄気体をスリットの細間隙又は楕円形キャピラリの細径を通過させるだけで、分子密度が10-3~10-5Paの圧力範囲で制御され、10mm以下のほぼ均一な厚さを有するシート状のガスビームを、従来よりも大口径又は大面積で簡便に形成できる。このシート状のガスビームを加速器中又は核融合炉中のビームのターゲットとして利用することによって、加速器中又は核融合炉中のビームにほとんど影響を与えずに、非破壊で、高速かつ簡便なビームプロファイルの計測が可能となる。また、このガスビームはシート厚さの均一性が高いため、加速器中又は核融合炉中のビームプロファイルを高精度にモニタリングできるという効果が得られる。
【0015】
本発明のモニタによれば、大面積で均一なシート厚さを有するシート状のガスビームを形成するときに、高圧ガスジェット発生装置及び磁石等を有する大掛かりなビーム収束装置を備える必要がなく、希薄気体を供給するためのガス発生装置と希薄気体を通過させるための細間隙を有するスリット又は細径を有する楕円形キャピラリとを備えるだけでよいので、モニタ装置のコンパクト化とともに、モニタの機能の単純化及び操作の簡略化を図ることができる。その結果、モニタの製造及びそのメンテナンスのための費用を低減させることができる。
【0016】
さらに、シート状のガスビームを形成するために使用する前記スリットについて形状、構造及び配置を最適化することによって、希薄気体は前記スリットを通過した後に指向性が強くなり集束性が高まることから、気体分子のビーム効果が大幅に向上し、大口径又は大面積のシート状のガスビームをさらに薄く形成できるようになる。それによって、測定分解能の向上が図れるだけでなく、シート状のガスビームの厚さ調整を広範囲に行うことができる。例えば、薄いシート状のガスビームを多段に積層する方法等によってシート厚さを高精度に最適化することが可能となる。したがって、このようにして形成されるガスビームを加速器中又は核融合炉中のビームのターゲットとして利用することによってビームプロファイルのモニタリング方法の高精度化及びそのモニタの高性能化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明のモニタリング法において検討したスリット又はキャピラリの形状と構造を示す図である。
【図2】円形キャピラリから放出される気体分子の放出角度に対する分子数分布を示す図である。
【図3】円形キャピラリから放出される気体分子の放出角度0(rad)から各θまでに放出される相対的な合計分子数分布を示す図である。
【図4】本発明で用いるスリットから放出される気体分子の放出角度0(rad)から各λまでに放出される相対的な合計分子数分布を示す図である。
【図5】本発明のモニタリング方法を実施するためのモニタの装置構成を示す断面図である。
【図6】中心部分が空いたドーナッツ型の円板形状を有するスリットを用いて行う本発明によるシート状のガスビームの形成法を示す図である。
【図7】円板形状を有するスリットを加速器中又は核融合炉中のビームの外側に配置して行う本発明によるシート状のガスビームの形成法を示す図である。
【図8】円板形状を有するスリットを回転して行う本発明によるシート状のガスビームの形成法を示す図である。
【図9】複数のスリットを用いて行う本発明によるシート状のガスビームの形成法を示す図である。
【図10】本発明の第1の実施形態で使用するスリット1及びSniffing管の形状を示す断面図である。
【図11】本発明の第1の実施形態において、スリット1から放出されるアルゴンのイオン電流の実測値とX軸座標との関係を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明のモニタリング方法は、希薄気体を、スリットの細間隙又は楕円キャピラリの細径を通過させることによって得られる気体分子の指向性を利用したビーム効果によって、従来より大口径又は大面積で、シート厚さの均一性の高いシート状の薄膜ガスビームを形成し、そのガスビームを加速器中又は核融合炉中のビームプロファイルを計測するためのガス状ターゲットとして使用する。このようにして形成されるガスビームは、高圧ガスをノズルから出射したビームを多段スリットによってカットを行った後、周期的な磁極構成を有する磁石により集束して得られるジェットビームとは異なる性質を有する。そのため、前記の非特許文献1に記載の高圧ガスジェット発生装置のような大掛かりの装置を使用しないでも、加速器中又は核融合炉中のビームプロファイルを計測するために最適なガス状ターゲットを前記の希薄気体からなるガスビームにより形成できる。さらに、気体分子の指向性は、希薄気体の放出手段として使用するスリット又はキャピラリの形状と構造によってほぼ決まるため、本発明は、それらの因子を最適化した点に大きな特徴を有する。

【0019】
図1に、本発明のモニタリング法を確立するために検討したスリット又はキャピラリの形状と構造を示す。図1の(a)は、本発明で使用するスリット1であり、気体分子の入射開口面2と出射開口面3を有し、断面長手方向の寸法がa、短辺の寸法がb、及びスリット1の奥行(行程)の長さがL1である。本発明においてはスリット1の奥行(行程)を希薄気体の流動方向に規定するため、前記L1をスリットの流動方向の長さとして定義する。図1の(b)は、本発明で使用する楕円形キャピラリ4であり、気体分子の入射開口面2と出射開口面3とともに、長さxの長辺及び長さyの短辺からなる断面とL2の長さとを有する。また、図1の(c)は、長さ及び直径がそれぞれL3とdの円形キャピラリ5であり、参考例として示す。

【0020】
図1に示すスリット及びキャピラリを用いて、出口から放出される気体分子の指向性についてモンテカルロシミュレーションにより調べることによって、スリット又はキャピラリの最適形状と構造について行った検討結果を説明する。

【0021】
気体分子の指向性を実現できる希薄気体の放出手段として最初に考えられる形状は、図1の(c)に示す円形キャピラリ5である。そこで、円形キャピラリ5を有限要素で表し、この体系にモンテカルロ法を適用する。すなわち、入射開口面2から気体分子を入射させ、出射開口面3から放出されるまで気体分子の軌跡を追跡して、出射開口面3から放出されるすべての気体分子に対して、出射開口面3を横切るときの位置情報を用いて集計処理を行い、放出角度に関する気体分子の分子数分布及び放出される相対的な合計分子数分布を求める。計算に通過分子の総数を約50000以上とし、また、分子の速度は一定とし、入射及び壁からの脱離に対しては余弦側を適用する。

【0022】
モンテカルロシミュレーションによる検討結果を図2及び図3に示す。図2は、円形キャピラリから放出される気体分子の放出角度に対する分子数分布を示す図である。また、図3は、円形キャピラリから放出される気体分子の放出角度0(rad)から各θまでに放出される相対的な合計分子数分布を示す図である。図2及び図3の横軸に示すθは、図1の(c)において気体分子が通り抜ける方向をZ軸としたときに、十分遠方から出射開口面3の中央を見たときの法線Z軸とのなす角度である。

【0023】
図2において、縦軸のn(θ)は、次のように下記の(1)式及び(2)式で求まる。上記のθにおいて、0~π/2をN分割し、θ=0、θ=π/2として、θ-Δθ≦θ≦θ+Δθ(Δθ≡(θi+1-θi-1)/2、Δθ=0.01(rad))の間に入る放出気体分子の数をN、総放出分子数をNとしたとき、
n(θ)Δθ≡ N/N (1)
となるようにn(θ)を定義する。n(θ)は、立体角(dω=sinθdψdθ)に放出される確率をP(θ)/πdωで表すと、
n(θ)=2sinθP(θ) (2)
の関係がある。

【0024】
図2には、L3/dをパラメータとして、n(θ)をθの関数で示している。ここで、θはθと略記されている。図2において、(a)はπ/2(rad)までのn(θ)のθ依存性、また、(b)は0(rad)付近のn(θ)のθ依存性をそれぞれ示したものである。ここで、L3/d=0はオリフィスに対するものであり、余弦則を与える。

【0025】
図2の(a)から、L3/dが大きくなるにつれて、ピーク位置はθ=0の方向に移行しており、L3/d≧10において、放出される気体分子の角度分布の変化はほとんど見られなくなる。また、図2の(b)に示すように、θ<0.1(rad)以下では指向性のより高いビーム成分が増加する。

【0026】
本発明において、ターゲットとして適用するガスビームをシート形状に保つためには、進行方向(Z軸)に直交する方向(X軸)において、θ=0からのシフト量が十分に小さいことが必要である。例えば、本発明の目的とする直径300mm、厚さが10mm以下のシート状のガスビームを形成するためには、0.015(rad)以内に放出される成分のみがターゲットとして有効となる。そのため、本発明では、それよりも厳しい条件である0.01(rad)以内にすることが好ましい。そこで、n(θ)について、θ=0からθまでの総和S(θ)を求めた。図3は、相対的な合計分子数であるS(θ)の分布を示す図である。図3においても、θはθと略記している。

【0027】
図3から分かるように、L3/d=100としても、θ≦0.01(rad)を満たす成分は、総放出気体分子の0.005(0.5%)以下に過ぎない。なお、平面上に広がる気体成分はターゲットとなるシート状のガスビームの作成に有効であるので、図1の(c)に示す座標系においてYZ平面からの傾き角λについてその分布を調べると、λ≦0.01(rad)を満たす成分は、L3/d=100でも総放出気体分子の3%程度である。

【0028】
以上のように、円形キャピラリから放出される気体分子からなるシート状ガスビームをガスターゲットとして用いるのは効率の点から適当でない。本発明の目的を達成するためには、放出角度としてλ≦0.01(rad)を満たして放出できる気体分子数が3%を超えることが必要である。特に、直径300mm、厚さが10mm以下のシート状のガスビームを形成するためには、放出気体分子数が10%以上にすることが好ましい。

【0029】
気体分子を放出する際に、できるだけシート状の放出分布を得るためには、キャピラリのように2軸方向の運動を制限しなくても、一方向のみ運動を制限できればよい。そのため、図1の(a)及び(b)にそれぞれ示すスリット及び楕円形キャピラリであれば、2軸方向の制限に対して、有効な立体角を大きくとれるので、シート状のガスビームからなるガスターゲット作成に有効に働く。そのひとつの例として図1の(a)に示すスリット1を取りあげて、希薄気体の流動方向の長さL1を長くし、少なくとも2枚の板によって形成される隙間の寸法b及び出射開口面3の断面長手方向の寸法aからなる開口断面からの気体分子の放出についてモンテカルロシミュレーションによる検討を行った。

【0030】
図4は、図1の(a)に示すスリット形状について、スリット1から放出される気体分子の放出角度0(rad)から各λまでに放出される相対的な合計分子数分布を示す図である。図4には、スリットにおいて長さL1と出射開口面3の断面長手方向の寸法aとの比を固定して(L1/a=2)、スリットの隙間寸法bをパラメーターとして変えたときのミュレーション計算結果(グループA)、及び前記のL1と隙間寸法bとの比を固定して(L1/b=100)、出射開口面3の断面長手方向の寸法aをパラメーターとして変えたときのシミュレーション計算結果(グループB)を示す。

【0031】
図4のグループAに示すように、前記のbが小さくなるに伴い、放出気体分子の平面指向性が増している。L1:a:b=100:50:1の場合は、放出傾き角(λ)がλ≦0.01(rad)を満たす気体成分は、全体の0.10(10%)を超える。さらに、L1:a:b=100:50:0.1の場合には、その気体成分は0.25(25%)を超えており、優れた平面指向性が得られる。

【0032】
また、図4のグループBに示すように、L1/b=100に固定して前記のaを変化させたときに、前記のa/bの比が大きくなると、λの小さい領域でS(λ)が増加が起こる。全放出気体分子のうちλ<0.01(rad)の放出気体成分の比率は、a/b=1では0.03(3%)であるのに対して、a/b=50では0.14(14%)程度になっている。ここで、a/b=1は、図1の(c)で示す円形キャピラリ5を模擬したものであり、L3/d=100の場合の結果とほぼ同一の値を与える。このように、少なくとも2枚の板によって形成される隙間の寸法bを有し、出射開口面3の断面長手方向の寸法aとの比(a/b)が1を超えるスリットは、λ≦0.01(rad)を満たす気体成分が3%を超え、希薄気体の平面指向性を円形キャピラリ(a=bの場合)よりも高くすることができる。さらに、前記のa/bの比を大きくして10以上とすれば、放出角度λの小さい領域に限定できる出射気体分子の割合が大きくなり、希薄気体の平面指向性を高める効果が大きくなる。

【0033】
以上のように、矩形状の断面を有し、この断面の長手方向の寸法aと隙間の寸法bとの比(a/b)が1を超える形状を有するスリットを用いて、該スリットの希薄空気の流動方向の長さL1と前記隙間の寸法との比(L1/b)が100以上であれば、λ≦0.01(rad)を満たす気体成分は10%を超え、優れた平面指向性を実現できる。それによって、直径300mm、厚さが10mm以下のシート状のガスビームを形成することができると考えられる。図4には図示されていないが、前記のa/bが1を超えるスリット形状の場合は、L1/bが50以上において、λ≦0.01(rad)を満たす気体成分は3%を超え、円形キャピラリよりも良好な平面指向性を得ることができる。したがって、本発明においては、L1/bが50以上であることが必要であり、さらに100以上にすることが好ましい。

【0034】
上記のa/b>1の条件は、図1の(b)に示す楕円形キャピラリ4において、長さxの長辺及び長さyの短辺からなる断面(x/y>1)でも得られるため、本発明において気体分子の高い平面指向性を実現できる放出手段としては、スリット1だけでなく、楕円形キャピラリ4を用いることができる。本発明で用いる楕円形キャピラリ4は、長さxの長辺及び長さyの短辺からなる断面とL2の長さとを有する形状において、前記yとL2との比(L2/y)が、スリットの場合と同じように、50以上にすることが必要である。さらに、希薄気体の平面指向性を高めるために、L2/yは100以上に設定することが好ましい。それによって、直径が300mmに近い大口径で、厚さが100mm以下のシート状のガスビームをより均一な状態で形成することができるようになる。

【0035】
本発明において、図1の(a)に示すスリット1又は(b)に示す楕円形キャピラリ4によって形成するシート状のガスビームのシート厚さは10mm以下である。シート厚さが10mmを超えると、加速器中又は核融合炉中のビーム進行を遮るような影響を及ぼすため、ビームプロファイルの高精度の計測が難しくなる。そのため、本発明では、10mm以下で形成するのがよい。本発明によるシート状のガスビームは、希薄気体をスリットの細間隙又は楕円形キャピラリの細径を通過させるだけで形成できるので、薄いシート状のガスビームだけでなく、前記の非特許文献1に記載の方法では困難であった10mm程度の厚いシート状のガスターゲットが容易に得られるという特徴を有する。本発明で使用するスリットの隙間b又は楕円形キャピラリの短辺yの寸法は、シート状のガスビームの厚さを10mm以下に調整できるように最適化して決めることができる。

【0036】
本発明のガスビームを形成する希薄気体の分子密度は、ターゲットとして加速器中又は核融合炉中のビームに影響を与えないために、10-4Paの圧力を基準にして、圧力10-5~10-3Paの範囲に調整する必要がある。圧力が10-5Pa未満であると、気体の分子密度は小さすぎるため、ビーム計測感度の低下が顕著にある。また、圧力が10-3Paを超えると、加速器中又は核融合炉中のビームへの影響が大きくなって、高精度のプロファイルモニタリングを行うことが困難になる。

【0037】
本発明において使用する希薄気体としては、酸素に限らず、ネオン、キセノン、アルゴン、二酸化炭素、窒素等を使用することができる。加速器中又は核融合炉中のビームプロファイルのモニタリングにおいて、例えば窒素を使用する場合は、発光現象を利用して計測を行うことができる。また、キセノンを使用する場合は、蛍光による発光現象を利用する。それ以外の気体は、酸素も含めて、電離イオンの発生を利用して、その検出によって計測を行う。なお、ヘリウム等の軽元素の気体は、検出感度が劣る傾向にあるため、使用する際にはモニタリング条件の最適化に十分な注意を要する。

【0038】
次に、本発明のモニタリング方法を実施するためのモニタについて、図5を用いてその装置構成を説明する。図5はモニタの装置構成を示す断面図であり、(a)は加速器又は核融合炉の真空チャンバー6内を通過するビーム7の進行方向に対して、ガスターゲットとしてシート状のガスビーム8が垂直方向に形成されるモニタを示し、(b)はシート状のガスビーム8が斜め方向に形成されるモニタを示す。

【0039】
図5の(a)及び(b)において、シート状のガスビーム8は、ガス供給装置9から供給する希薄気体10を、ガスターゲット形成装置内に設けたスリット1で形成される隙間を通過させることによって形成される。このとき、上記に示すように、スリット1の形状は、シート状ガスビーム8の厚さを10mm以下で形成するように隙間の寸法bを決めるとともに、希薄気体の流動方法の長さL1との比(L1/b)が50以上となるようにL1を設定する。また、スリット1の断面長手方向の寸法aについても、a/b>1の範囲で、a/bができるだけ大きくなるように調整する。スリット1は、寸法bの隙間とサイズがL1×aである平板の少なくとも2枚とで構成されるが、希薄気体がL1×a×bの隙間だけを流動するように、前記の2枚の平板とそれらの両脇に寸法bで設けた側壁とからなる四角柱状のスリットとしてもよい。シート状のガスビーム8中の分子密度は、ガス供給装置9から供給する希薄気体10の圧力によって調整して、スリット1を通過後の圧力が10-5~10-3Paの範囲になるように最適化する。本発明のモニタにおいては、スリットに代えて、図1の(b)に示す楕円形キャピラリを使用してもよい。楕円形キャピラリの場合も、長さxの長辺及び長さyの短辺からなる断面とL2の長さとを有し、前記yとL2との比(L2/y)が50以上になるように、長辺の寸法x及び短辺の寸法yとキャピラリの長さL2とを最適化して設定する。なお、本発明においては、前記のL1/b又はL2/yの比が大きくなるほど、シート状のガスビーム8の指向性及び集束性は高くなるが、スリット1を製造する上での技術的な制約やコスト等の点から、L1/b又はL2/yは10000が限度であり、3000以下に設定することによって、現実的に利用可能なモニタを構築することが可能になる。

【0040】
図5の(a)に示すモニタにおいては、加速器中又は核融合炉中のビーム7がシート状のガスビーム8とターゲットとして衝突する時に発生する発光又は電子イオンが斜め方向から観測される。希薄気体として、例えば、窒素ガス等を使用するときは、ビーム7とガスビーム8との衝突によって発光が発生するが、その発光は石英ガラス等からなる透明窓11及び集光レンズ12を通して、ビームプロファイル検出部13によって観測され、ビームプロファイルが検出される。ここで、ビームプロファイル検出部13は、例えば、バンドルファイバ131、イメージインテンシファイヤー132及び光電子増倍管やCCDカメラ等のビームプロファイル検出器133等から構成される。ビームプロファイル検出部13によって検出されるビームプロファイルに関する計測データは、コンピューター等による解析手段14によって、ビームプロファイルの2次元実像及び/又はビーム像として映像化する。

【0041】
本発明のモニタを用いて、希薄気体として、例えば、酸素ガスやアルゴンガス等を使用するときは、ビーム7とガスビーム8との衝突によって電離イオンが発生する場合がある。電子イオンの観測及び計測は、例えば、図5の(a)に示すように、イオン増幅用のマルチチャンネルプレート(MCP)15、及び必要に応じてルミネッセンススクリーン減衰器16を用いる。その後、透明窓11及び集光レンズ12を通して、ビームプロファイル検出部13によってビームプロファイルの検出を行う。ビームプロファイルに関する計測データは、ビームプロファイル検出部13と接続されたコンピューター等による解析手段14によって、ビームプロファイルの2次元実像及び/又はビーム像として映像化する。なお、本発明のモニタにおいては、ビームプロファイル計測を行う前に、試験用の紫外線光を導入するために、透明窓11と相対する位置に、別の透明窓17を備える構成としてもよい。

【0042】
図5の(b)に示す本発明によるモニタは、スリット1及びビームプロファイル検出部13が、加速器中又は核融合炉中の真空チャンバー6内を通過するビーム7の進行方向に対して、それぞれ斜め方向及び垂直方向に位置されている点で異なるだけで、装置の基本構成は、図5の(a)に示すモニタとほぼ同じである。スリット1の斜め方向は、一般的に45°の角度に設定される。本発明のモニタは、使用する希薄気体の種類、モニタリングの計測感度、及びモニタの設置場所と製造コスト等に応じて、図5の(a)及び(b)に示す構成のどちらかを採用する。

【0043】
図5に示すモニタにおいて、希薄気体はスリット又は楕円形キャピラリを通過させるが、シート状のガスビームを形成するときに気体分子の指向性を高めるための形状及び構造を幅広く選択できるという点で、本発明においてはスリットが好適である。図1の(a)に示すスリット1は、L1/bの比が50以上であるものを1個だけでなく、具体的に以下のような形状と構造を有するものを用いることができる。

【0044】
例えば、図6に示すように、中心部分が空いたドーナッツ型の円板形状を有し、該ドーナッツ型の円板形状を有するスリット18を用いて、スリット18の中心部分に加速器又は核融合炉の真空チャンバー6内で進行するビーム7を配置する方法及びモニタである。希薄気体10は、注入管19からスリット18の内部に供給された後、スリット18の中心方向を向く開口面から出射される。スリット18は、中心方向を向く開口面に形成される隙間bと内円周長aとの比(a/b)が1を超えるものを使用する。ここで、希薄気体10のスリット内への供給法としては、例えば、図6の(a)に示すように、希薄気体の流動管20がスリット18の中間位置に配置され、注入管19から流動管20を通して希薄気体10が注入される方法を採用することができる。また、図6の(b)に示すように、希薄気体の流動管20をスリット18の外側に配置することによって、注入管19から注入した希薄気体は、スリット18の外方向周辺断面に存在する入射開口面から供給してもよい。スリット18の前記出射開口面から出射した希薄気体はスリットを通過後、ビーム7の設計軌道の進行方向に対して垂直のシート状のガスビームが形成される。

【0045】
また、図7に示すように、円板形状を有するスリットを加速器中又は核融合炉中のビームの外側に配置してシート状のガスビームを形成する方法及びモニタを採用してもよい。図7の(a)及び(b)は、それぞれ円板形状を有するスリットを用いる方法を示す斜視図及び上面図である。この方法では、円板形状を有するスリット21を、加速器中又は核融合炉中の真空チャンバー6内で進行するビーム7の設計軌道の外側に配置して、ビーム7の設計軌道の外側から希薄気体10を注入管19によって供給した後、スリット21の隙間を通過させてシート状のガスビーム8を形成する。スリット21は、外周開口面に形成される隙間bと外円周長aとの比(a/b)が1を超えるものを使用する。その際、前記の円板形状を有するスリット21は、図8の(a)斜視図及び(b)上面図に示すように、スリット21を構成する2枚の平板の両者又はどちらか一方を回転させてもよい。図8に示す方法は、シート状のガスビームの指向性を強くすることによって集束性を高めたいときに、図7に示す方法より大きな効果を得ることができる。

【0046】
さらに、本発明では、図9に示すように、前記2枚の平板からなるスリットを加速器中又は核融合炉中のビームの設計軌道の外側に複数設け、希薄気体を前記複数のスリットのそれぞれの隙間を通過させることによって、加速器中又は核融合炉中のビームの設計軌道を横断するようにシート状のガスビームを形成することもできる。図9の(a)は、矩形上のスリットの複数個を、ビーム7の設計軌道の外側において正多角形状の各頂点位置に対象に配置したときの上面図である。図9(a)には、例として8個のスリット1を用いた場合を示しているが、スリット1の数は2個の場合でも、それらを対象に配置することによって本発明の効果を奏することができる。スリット1の数は上限を特に設ける必要はないが、シート状のガスビームの形成能、並びにスリット1の製造及びその配置のときの手間、時間及びコスト等を考慮して決められる。また、図9の(b)は、図6に示す中心部分が空いたドーナッツ型の円板形状を有するスリット18を複数に等分割して得られる分割スリット22を用いて行うシート状のガスビームの形成方法を示す斜視図である。分割数は、2個以上であれば、本発明の目的を達成することが可能である。また、分割数は上限を特に設ける必要はなく、図9の(a)の場合とおなじように、シート状のガスビームの形成能、並びにスリット22の製造及びその配置のときの手間、時間及びコスト等を考慮して決められる。

【0047】
図9の(a)に示す方法は、図1の(a)に示すスリット1を1個だけ使用した場合と比べて、気体分子の指向性を高めることができるだけでなく、シート状のガスビームの厚さをより均一に保つことができる。また、図9の(b)に示す方法は、図6に示す円形形状の大きなスリットを一括で作製する必要がなく、分割したスリット22の組み合わせによって、より簡便に円形形状のスリットを構築できるという効果を有する。

【0048】
本発明のモニタリング方法の有効性を確認するために、上記で説明したモンテカルロシミュレーション計算の妥当性について検証した結果を、以下の実施形態によって説明する。

【0049】
〈第1の実施形態〉
図10に、本実施形態で使用するスリット1、及び希薄気体をスリット1に供給した後、スリット1の出射開口面3から出射されるガスビーム中に含まれる気体分子の流量を測定するために用いるSniffing管の形状断面図を示す。図10において、スリット1はL1/b=500である。また、Sniffing管の吸口23には、長さが40mmで、幅が2.0mmの開口部を設ける。この開口部の40mmの長さ方向は、気体分子がスリット1からYZ平面へ並行に出ていることを確認するために、スリット1の希薄気体の流動方向である長さL1の方向に並行となるように配置する。それによって、測定のシグナル-ノイズ比を上げることができる。希薄気体としては、アルゴン(Ar)ガスを使用した。スリット1の出射開口面3から出射するアルゴンガスは、前記Sniffing管で捕集され、前記Sniffing管の吸口23とは反対側の出口に設ける質量分析計によってオン電流として検出される。こうして、Sniffing管を真空中でX軸にそって移動させながらアルゴンイオン電流を測定すれば、スリット1を通過したアルゴンの指向性を調べることが可能となる。

【0050】
吸口23のZ座標を150mmに保ち、Sniffing管をX軸にそって移動させたときの測定結果を図11に示す。測定結果とともに示す計算値は、まず、L:a:b=100:50:0.2のパラメーターをもつスリット1の角度分布をモンテカルロシミュレーションし、さらに、その角度分布を用いてSniffing管の吸口23がZ=150mmにあるときに捕集されるアルゴンガスの相対分子数を予測したものである。図11に示すように、実測値はX=0において鋭いピークを有している。また、実測値は、点線で表される計算結果と比べて良い一致を示す。半値幅は3mmと十分に狭く、本発明で使用するスリット形状を用いるとアルゴンの指向性が高くなることが分かる。このように、モンテカルロシミュレーションによる計算結果は実測値と十分に対応がとれており、モンテカルロシミュレーション計算に基づいてスリット形状の最適化を行うことは技術的意味を十分に有することが確認できる。

【0051】
以上のように、本発明によれば、希薄気体をスリットの細間隙又は楕円形キャピラリの細径を通過させるだけで、10mm以下のほぼ均一な厚さを有するシート状のガスビームを、従来よりも大口径又は大面積で簡便に形成できる。このシート状のガスビームを加速器中又は核融合炉中のビームのターゲットとして利用することによって、加速器中又は核融合炉中のビームにほとんど影響を与えずに、非破壊で、高速かつ簡便なビームプロファイルの計測を高精度で行うことができる。

【0052】
また、本発明のモニタによれば、大面積で均一なシート厚さを有するシート状のガスビームを形成するときに、高圧ガスジェット発生装置及び磁石等を有する大掛かりなビーム収束装置を備える必要がないため、モニタ装置のコンパクト化とメンテナンスの簡略化を図れ、モニタの製造及びそのメンテナンスのための費用を低減させることができる。

【0053】
さらに、シート状のガスビームを形成するために使用する前記スリットについて形状、構造及び配置を最適化することによって、気体分子のビーム効果が大幅に向上するため、大口径又は大面積のシート状のガスビームをさらに薄く形成できるようになる。それによって、測定分解能の向上が図れるだけでなく、シート状のガスビームの厚さ調整を広範囲に行うことができ、ビームプロファイルのモニタリング方法の高精度化及びそのモニタの高性能化が図れる。本発明のモニタリング方法及びそのモニタは、加速器中又は核融合炉中のビームだけでなく、通常のレーザ光やX線のビームプロファイルの計測にも適用できるため、その有用性は極めて高い。
【符号の説明】
【0054】
1・・・スリット、2・・・気体分子の入射開口面、3・・・気体分子の出射開口面、4・・・楕円形キャピラリ、5・・・円形キャピラリ、6・・・真空チャンバー、7・・・加速器中又は核融合炉中のビーム、8・・・シート状のガスビーム、9・・・ガス供給装置、10・・・希薄気体、11・・・透明窓、12・・・集光レンズ、13・・・ビームプロファイル検出部、131・・・バンドルファイバ、132・・・イメージインテンシファイヤー、133・・・ビームプロファイル検出部、14・・・解析手段、15・・・マルチチャンネルプレート、16・・・ルミネセンススクリーン減衰器、17・・・透明窓、18・・・ドーナッツ型の円板形状を有するスリット、19・・・注入管、20・・・希薄気体の流動管、21・・・円板形状を有するスリット、22・・・分割スリット、23・・・Sniffing管の吸口。
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
5
【図7】
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【図8】
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【図9】
8
【図10】
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【図11】
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