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明細書 :複素環化合物、金属錯体及び蛍光プローブ

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第5512764号 (P5512764)
公開番号 特開2014-043417 (P2014-043417A)
登録日 平成26年4月4日(2014.4.4)
発行日 平成26年6月4日(2014.6.4)
公開日 平成26年3月13日(2014.3.13)
発明の名称または考案の名称 複素環化合物、金属錯体及び蛍光プローブ
国際特許分類 C07D 413/12        (2006.01)
G01N  33/533       (2006.01)
G01N  33/53        (2006.01)
G01N  21/64        (2006.01)
G01N  21/78        (2006.01)
C07D 413/14        (2006.01)
FI C07D 413/12 CSP
G01N 33/533
G01N 33/53 D
G01N 21/64 F
G01N 21/78 C
C07D 413/14
請求項の数または発明の数 15
全頁数 16
出願番号 特願2012-186647 (P2012-186647)
出願日 平成24年8月27日(2012.8.27)
審査請求日 平成25年12月26日(2013.12.26)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】503027931
【氏名又は名称】学校法人同志社
発明者または考案者 【氏名】人見 穣
【氏名】武安 俊幸
早期審査対象出願または早期審理対象出願 早期審査対象出願
個別代理人の代理人 【識別番号】100076406、【弁理士】、【氏名又は名称】杉本 勝徳
審査官 【審査官】水島 英一郎
参考文献・文献 国際公開第2012/023487(WO,A1)
武安俊幸、人見穣、船引卓三、小寺政人,金属反応点を有する活性酸素種蛍光プローブの開発,日本化学会第91春季年会 2011年 講演予稿集II,日本,社団法人 日本化学会,2011年 3月11日,284頁,4 A6-10
武安俊幸、人見穣、小寺政人,金属錯体を基板とした過酸化水素蛍光プローブ,日本化学会第92春季年会 2012年 講演予稿集III,日本,公益社団法人 日本化学会,2012年 3月 9日,719頁,1 D2-55
武安俊幸、人見穣、小寺政人,金属錯体を用いる活性酸素種蛍光プローブ,第5回バイオ関連化学シンポジウム 講演予稿集,日本,鍋島達弥,2011年 9月12日,42頁,2B-04
人見穣、杉本貴志、伊東孝真、田中庸裕,キノリン骨格とアミド配位を有する単核鉄錯体の酸化反応と蛍光特性,第22回 生体機能関連化学シンポジウム 講演要旨集,日本,社団法人 日本化学会 生体機能関連化学部会,2007年 9月10日,14-15頁,1A-07
武安俊幸、人見穣、船引卓三、小寺政人,金属錯体反応サイトを有するROS蛍光プローブ,第43回酸化反応討論会講演要旨集,日本,第43回酸化反応討論会実行委員会事務局,2010年11月12日,116-118頁,P-08
調査した分野 C07D 413/12
C07D 413/14
G01N 21/64
G01N 21/78
G01N 33/53
G01N 33/533
CAplus(STN)
REGISTRY(STN)
JSTPlus(JDreamIII)
JST7580(JDreamIII)
特許請求の範囲 【請求項1】
下記一般式(I)で表される複素環化合物。
【化1】
JP0005512764B2_000014t.gif
(式中、Xanはキサンテン系色素であり、nは0~6であり、R1は水素原子、メチル基であり、R2、R3及びR6は水素原子であり、R4は水素原子、メチル基、塩素原子、メトキシ基、ニトロ基であり、R5は水素原子、メトキシ基、エトキシカルボニルメチルエーテル基(OCH2CO2CH2CH3)であり、R7 及びR9はそれぞれ独立して水素原子、メチル基、メトキシ基であり、R8は水素原子、メチル基、塩素原子、メトキシ基、ニトロ基であり、R10は水素原子、メチル基、塩素原子、フッ素原子である。)
【請求項2】
下記一般式(II)で表される請求項1に記載の複素環化合物。
【化2】
JP0005512764B2_000015t.gif
(RXはそれぞれ独立して水素原子、塩素原子、フッ素原子であり、nは0~6である。)
【請求項3】
Rxが水素原子であり、n=1である請求項2に記載の複素環化合物。
【請求項4】
下記一般式(III)で表される金属錯体。
【化3】
JP0005512764B2_000016t.gif
(式中、Xanはキサンテン系色素であり、nは0~6であり、R1は水素原子、メチル基であり、R2、R3及びR6は水素原子であり、R4は水素原子、メチル基、塩素原子、メトキシ基、ニトロ基であり、R5は水素原子、メトキシ基、エトキシカルボニルメチルエーテル基(OCH2CO2CH2CH3)であり、R7 及びR9はそれぞれ独立して水素原子、メチル基、メトキシ基であり、R8は水素原子、メチル基、塩素原子、メトキシ基、ニトロ基であり、R10は水素原子、メチル基、塩素原子、フッ素原子であり、Mは鉄、マンガン、コバルト、ニッケル、銅、ルテニウムであり、Lは塩素イオン、臭素イオン、硝酸イオン、トリフルオロメタンスルホン酸イオンである。)
【請求項5】
下記一般式(IV)で表される請求項4に記載の金属錯体。
【化4】
JP0005512764B2_000017t.gif
(式中、RXはそれぞれ独立して水素原子、塩素原子、フッ素原子であり、nは0~6であり、Mは鉄、マンガン、コバルト、ニッケル、銅、ルテニウムであり、Lは塩素イオン、臭素イオン、硝酸イオン、トリフルオロメタンスルホン酸イオンである。)
【請求項6】
Rxが水素原子、Lが塩素イオン、n=1である請求項5に記載の金属錯体。
【請求項7】
請求項4~6の何れかに記載の金属錯体を含む蛍光プローブ。
【請求項8】
過酸化水素の検出に使用する請求項7に記載の蛍光プローブ。
【請求項9】
請求項7に記載の蛍光プローブを含むバイオアッセイ用キット。
【請求項10】
請求項7に記載の蛍光プローブを含むバイオイメージング用キット。
【請求項11】
請求項7に記載の蛍光プローブを含む臨床分析用キット。
【請求項12】
請求項7に記載の蛍光プローブで標識した標識抗体。
【請求項13】
請求項12に記載の標識抗体を含むバイオアッセイ用キット。
【請求項14】
請求項12に記載の標識抗体を含むバイオイメージング用キット。
【請求項15】
請求項12に記載の標識抗体を含む臨床分析用キット。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
この発明は、複素環化合物、これを配位子として含む金属錯体、及びこの金属錯体を使用して過酸化水素を検出する蛍光プローブなどに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、生体内での過酸化水素などの活性酸素種の発生による細胞の酸化ストレスが、癌やパーキンソン病などの神経疾患と関連していることが明らかになってきている。また、活性酸素種が情報伝達物質として働く、具体的には、循環器系などで血圧を制御する、など多様な生理作用を発揮していることが知られている。これら疾患の病因、病態や作用機序を解明するため、生体内における過酸化水素の発生をダイナミックに解析することが求められている。
【0003】
このような活性酸素種をダイナミックに解析するためには、蛍光プローブを使用するバイオイメージング法が主に利用されている。そして、過酸化水素に対する蛍光プローブとしては、従来から「炭素-ホウ素の酸化的開裂によって蛍光強度が増大する分子」などが使用されてきている(特許文献1~2、非特許文献1~10を参照。)。
【0004】
しかし、前記分子を過酸化水素検出用の蛍光プローブに使用すると、反応開始から蛍光強度が最大強度に達するまでに約100分かかり、最大値の半分の強度に達するまでに約22分かかってしまう。そのため、前記分子を蛍光プローブとして使用しても、過酸化水素の発生や消滅をタイミングよく、ダイナミックに検出することはできなかった。
【0005】
一方、酸化還元酵素が基質を酸化する際に過酸化水素が生じる反応、例えば、グルコースオキシダーゼがβ-D-グルコースをグルコノラクトンに酸化する反応、が既に知られている。そして、この知見とレゾルフィン系複素環式化合物からなる過酸化水素検出用蛍光プローブとを組み合わせて、サンプル中の生体分子の濃度を測定する方法が開発されている。なお、この方法に使用する測定キット、例えば、Amplex Red(登録商標)Assay Kit(Invitrogen製)も既に販売されている(非特許文献11を参照。)。
【0006】
この測定方法では、サンプル中の生体分子から酸化還元酵素によって過酸化水素を発生させたのち、発生した過酸化水素と蛍光プローブとをペルオキシダーゼの存在下で反応させ、その蛍光量を測定することによって、間接的に測定している。また、この蛍光プローブは、過酸化水素だけでは蛍光せず、ペルオキシダーゼと過酸化水素によって生じる強酸化物によって蛍光する。
【0007】
そのため、この測定方法には、酸化還元酵素の基質特異性、ペルオキシダーセの基質特性に大きく依存し、過酸化水素濃度を直接測定できないため、サンプル中の阻害剤により影響を受け易いとの問題点があった。
【0008】
発明者らは、これら従来技術の問題点を解決するため、非特許文献11に記載の複素環式化合物と、遷移金属からなる中心金属に含窒素配位子が三座配位してなる金属錯体とがアミド結合してなる化合物を既に合成している。ただ、この化合物は耐水性が低く、水中で利用できないため、過酸化水素の検出には利用できないとの問題点があった(非特許文献12及び非特許文献13を参照。)。
【0009】
そこで、発明者らは、これらの問題を解決するため研究をさらに進め、金属錯体に蛍光色素がアミド結合した金属錯体(以下、MBFh1と省略する。)を合成するとともに、このMBFh1を含む過酸化水素蛍光プローブが水中の過酸化水素を検出できること、その水中における反応速度が従来からある「炭素-ホウ素の酸化的開裂によって蛍光強度が増大する分子」よりも速いこと、を確認した(特許文献3及び非特許文献14を参照。)。
【0010】
しかし、MBFh1は、アミド部位を含む蛍光団部位を含んでいるため、それ自体が弱い蛍光を放ち、水中での安定性も不十分であった。そのため、MBFh1には、多様な活性酸素種を含む生体試料、例えば細胞や組織の測定には使用できないとの問題点があった。
【先行技術文献】
【0011】

【特許文献1】国際公開第WO07/050810号パンフレット
【特許文献2】国際公開第WO09/152102号パンフレット
【特許文献3】国際公開第WO12/023487号パンフレット
【0012】

【非特許文献1】Dickinson, B. C.; Srikun, D.; Chang, C. J. "Mitochondrial-Targeted Fluorescent Probes for Reactive Oxygen Species", Curr. Opin. Chem. Biol. 2010, 14, 50-56.
【非特許文献2】Bao, L.; Avshalumov, M. V.; Miller, E. W.; Chang, C. J.; Rice, M. E. J. "Mitochondria are the Source of Hydrogen Peroxide for Dynamic Brain-Cell Signaling", J. Neurosci. 2009, 29, 9002-9010.
【非特許文献3】Albers, A. E.; Dickinson, B. C.; Miller, E. W.; Chang, C. J."A Red-Emitting Naphthofluorescein-Based Fluorescent Probe for Selective Detection of Hydrogen Peroxide in Living Cells", Bioorg. Med. Chem. Lett. 2008, 18, 5948-5950 (Special Issue in Honor of Benjamin F. Cravatt).
【非特許文献4】Dickinson, B. C.; Chang, C. J."A Targetable Fluorescent Probe for Imaging Hydrogen Peroxide in the Mitochondria of Living Cells", J. Am. Chem. Soc. 2008, 130, 9638-9639.
【非特許文献5】Miller, E. W.; He, Q.; Chang, C. J. "Preparation and Use of Leadfluor-1, a Synthetic Fluorophore for Live-Cell Lead Imaging", Nature Protocols 2008, 3, 777-783.
【非特許文献6】Srikun, D.; Miller, E. W.; Domaille, D. W.; Chang, C. J."An ICT-Based Approach to Ratiometric Fluorescence Imaging of Hydrogen Peroxide Produced in Living Cells", J. Am. Chem. Soc. 2008, 130, 4596-4597.
【非特許文献7】Miller, E. W.; Tulyathan, O.; Isacoff, E. Y.; Chang, C. J. "Molecular imaging of hydrogen peroxide produced for cell signaling", Nat. Chem. Biol. 2007, 3, 263-267.
【非特許文献8】Albers, A. E.; Okreglak, V. S.; Chang, C. J. "A FRET-Based Approach to Ratiometric Fluorescence Detection of Hydrogen Peroxide", J. Am. Chem. Soc. 2006, 128, 9640-9641.
【非特許文献9】Miller, E. W.; Albers, A. E.; Pralle, A.; Isacoff, E. Y.; Chang, C. J. "Boronate-Based Fluorescent Probes for Imaging Cellular Hydrogen Peroxide", J. Am. Chem. Soc. 2005, 127, 16652-16659.
【非特許文献10】Chang, M. C. Y.; Pralle, A.; Isacoff, E. Y.; Chang, C. J. "A Selective, Cell-Permeable Optical Probe for Hydrogen Peroxide in Living Cells", J. Am. Chem. Soc. 2004, 126, 15392-15393.
【非特許文献11】「Amplex Red酵素アッセイ」、[online]、Invitrogen、[平成24年7月27日検索]、インターネット<URL: http://ja.invitrogen.com/site/jp/ja/home/brands/Molecular-Probes/Key-Molecular-Probes-Products/Amplex-Red-Enzyme-Assays.html>
【非特許文献12】武安俊幸, 船引卓三, 小寺政人, 人見穣,金属錯体を基盤とする過酸化水素蛍光プロ-ブの開発, 錯体化学討論会講演要旨集,Vol.59th,Page.361,(2009.09.04)
【非特許文献13】武安俊幸, 久保達也, 人見穣, 船引卓三, 小寺政人,金属イオン反応点を有する過酸化水素プロ-ブの開発,日本化学会講演予稿集,Vol.90th,No.2,Page.213,(2010.03.12).
【非特許文献14】Y. Hitomi et al. Anal. Chem., 2011, 83(24), pp9213-9216
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
そこで、この発明は、水中でも安定しているため、生体試料の測定にも使用可能であり、かつ、従来からあるものよりも反応速度が速い過酸化水素検出用蛍光プローブ、プローブの構成要素である金属錯体、金属錯体の配位子である複素環化合物を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
発明者らは、鋭意検討の結果、アミド部位を含まない蛍光団部位を有する特定の複素環化合物を配位子とする金属錯体が水中で安定しているとともに、この金属錯体と過酸化水素との反応速度が、従来からある過酸化水素蛍光プローブと過酸化水素との反応速度と比べて速いことを見出し、この発明を完成させた。
【0015】
すなわち、この出願の請求項1に記載の発明は、下記一般式(I)で表される複素環化合物である。
【化1】
JP0005512764B2_000002t.gif
(式中、Xanはキサンテン系色素であり、nは0~6であり、R1は水素原子、メチル基であり、R2、R3及びR6は水素原子であり、R4は水素原子、メチル基、塩素原子、メトキシ基、ニトロ基であり、R5は水素原子、メトキシ基、エトキシカルボニルメチルエーテル基(OCH2CO2CH2CH3)であり、R7 及びR9はそれぞれ独立して水素原子、メチル基、メトキシ基であり、R8は水素原子、メチル基、塩素原子、メトキシ基、ニトロ基であり、R10は水素原子、メチル基、塩素原子、フッ素原子である。)
【0016】
また、請求項2に記載の発明は、下記一般式(II)で表される請求項1に記載の複素環化合物である。
【化2】
JP0005512764B2_000003t.gif
(RXはそれぞれ独立して水素原子、塩素原子、フッ素原子であり、nは0~6である。)
【0017】
また、請求項3に記載の発明は、Rxが水素原子であり、n=1である請求項2に記載の複素環化合物である。
【0018】
また、請求項4に記載の発明は、下記一般式(III)で表される金属錯体である。
【化3】
JP0005512764B2_000004t.gif
(式中、Xanはキサンテン系色素であり、nは0~6であり、R1は水素原子、メチル基であり、R2、R3及びR6は水素原子であり、R4は水素原子、メチル基、塩素原子、メトキシ基、ニトロ基であり、R5は水素原子、メトキシ基、エトキシカルボニルメチルエーテル基(OCH2CO2CH2CH3)であり、R7 及びR9はそれぞれ独立して水素原子、メチル基、メトキシ基であり、R8は水素原子、メチル基、塩素原子、メトキシ基、ニトロ基であり、R10は水素原子、メチル基、塩素原子、フッ素原子であり、Mは鉄、マンガン、コバルト、ニッケル、銅、ルテニウムであり、Lは塩素イオン、臭素イオン、硝酸イオン、トリフルオロメタンスルホン酸イオンである。)
【0019】
また、請求項5に記載の発明は、下記一般式(IV)で表される請求項4に記載の金属錯体である。
【化4】
JP0005512764B2_000005t.gif
(式中、RXはそれぞれ独立して水素原子、塩素原子、フッ素原子であり、nは0~6であり、Mは鉄、マンガン、コバルト、ニッケル、銅、ルテニウムであり、Lは塩素イオン、臭素イオン、硝酸イオン、トリフルオロメタンスルホン酸イオンである。)
【0020】
請求項6に記載の発明は、Rxが水素原子、Lが塩素イオン、n=1である請求項5に記載の金属錯体である。
【0021】
請求項7に記載の発明は請求項4~6の何れかに記載の金属錯体を含む蛍光プローブであり、請求項8に記載の発明は過酸化水素の検出に使用する請求項7に記載の蛍光プローブである。
【0022】
さらに、請求項9に記載の発明は請求項7に記載の蛍光プローブを含むバイオアッセイ用キットであり、請求項10に記載の発明は請求項7に記載の蛍光プローブを含むバイオイメージング用キットであり、請求項11に記載の発明は請求項7に記載の蛍光プローブを含む臨床分析用キットである。
【0023】
加えて、請求項12に記載の発明は請求項7に記載の蛍光プローブで標識した標識抗体であり、請求項13に記載の発明は請求項12に記載の標識抗体を含むバイオアッセイ用キットであり、請求項14に記載の発明は請求項12に記載の標識抗体を含むバイオイメージング用キットであり、請求項15に記載の発明は請求項12に記載の標識抗体を含む臨床分析用キットである。
【発明の効果】
【0024】
この発明の金属錯体を蛍光プローブに使用することによって、細胞や組織などの生体試料においても、過酸化水素の発生メカニズムや発生のタイミングをより正確に捕捉して、生体内における過酸化水素の役割をより詳細に解明できる。また、この蛍光プローブをバイオアッセイやバイオイメージングに使用すれば、検体の処理時間が短縮でき、検査効率を向上できる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】この発明の金属錯体の合成経路の一例を示す図である。
【図2】この発明の金属錯体と過酸化水素の反応による蛍光スペクトルの経時変化を示すグラフである。
【図3】この発明の金属錯体と過酸化水素の反応による蛍光強度の経時変化を、過酸化水素の濃度を変えて測定した結果を示すグラフである。
【図4】この発明の金属錯体又は従来の金属錯体と、過酸化水素との反応による蛍光スペクトルの経時変化を示すグラフである。
【図5】この発明の金属錯体又は従来の金属錯体と過酸化水素との反応速度を、過酸化水素濃度に対してプロットしたグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、この発明の実施の形態について説明する。

【0027】
1.複素環化合物
この発明の複素環化合物は、下記一般式(I)で表される。
【化5】
JP0005512764B2_000006t.gif

【0028】
ここで、Xanは、酸化的分解によって金属錯体部分から切り離されると蛍光を生じるキサンテン(xanthene)系色素であって、ローダミン、テトラメチルローダミン及びテキサスレッド、エオシン、フルオレセイン、及びこれらの還元体などが例示できる。中でも、酸化耐性の高さの理由から、化学式(II)に示すレゾルフィンの置換体がより好ましい。nは0~6であり、反応性の高いという理由から、中でも1が好ましい。

【0029】
また、R1は水素原子、メチル基であり、合成が簡便であるため、水素原子が好ましい。また、R2、R3及びR6は水素原子である。また、R4は水素原子、メチル基、塩素原子、メトキシ基、ニトロ基であり、合成が簡便であるため、水素原子が好ましい。また、R5は水素原子、メトキシ基、エトキシカルボニルメチルエーテル基(OCH2CO2CH2CH3)であり、合成が簡便であるため、水素原子が好ましい。また、R7 、R9は それぞれ独立して水素原子、メチル基、メトキシ基であり、合成が簡便であるため、水素原子が好ましい。さらに、R8は水素原子、メチル基、塩素原子、メトキシ基、ニトロ基であり、合成が簡便であるため、水素原子が好ましい。加えて、R10は水素原子、メチル基、塩素原子、フッ素原子であり、合成が簡便であるため、水素原子が好ましい。

【0030】
なお、複素環化合物が、下記一般式(II)で表される場合、RXはそれぞれ独立して水素原子、及び塩素原子、フッ素原子であり、合成が簡便である理由から、水素原子及び塩素原子が好ましい。
【化6】
JP0005512764B2_000007t.gif

【0031】
この発明の複素環化合物は、例えば、以下に示す(A)~(D)の化学反応を組み合わせて合成できる。なお、以下の合成法の説明においては蛍光物質としてレゾルフィンを使用するが、この発明の複素環化合物はこれに限定しない。また、この発明の複素環化合物は、以下の合成法により製造されたものに限定しない。

【0032】
(A)エーテル合成
下記の化学式(V)に示すように、レゾルフィン(1)と両端がハロゲン化したハロゲン化アルキル(2)とを、Williamsonエーテル合成法により反応させて、レゾルフィンとハロゲン化アルキルとのエーテル(3)を合成する。なお、X1及びX2は同一又は異なるハロゲン原子であり、好ましくは両方とも臭素原子である。
【化7】
JP0005512764B2_000008t.gif

【0033】
(B)複素環の付加(その1)
下記の化学式(VI)に示すようにエーテル(3)のハロゲン原子X1によって、2-ニトロベンゼンスルホニル基によって保護された第二級アミン(4)をN-アルキル化し、第三級アミン(5)を合成する。
【化8】
JP0005512764B2_000009t.gif

【0034】
(C)脱保護基反応
下記化学式(VII)に示すように、炭酸カリウムやトリエチルアミンなどの弱塩基存在下で、第三級アミン(5)をチオフェノールなどのチオールを使用して脱保護し、第二級アミン(6)を得る。
【化9】
JP0005512764B2_000010t.gif

【0035】
(D)複素環の付加(その2)
下記化学式(VIII)に示すように、脱保護ざれた第二級アミン(6)を、複素環を有するハロゲン化アルキル(7)によって、N-アルキル化することにより、この発明の複素環化合物(8)が得られる。なお、X3はハロゲン原子であり、好ましくは臭素原子である。
【化10】
JP0005512764B2_000011t.gif

【0036】
2.金属錯体
この発明の金属錯体は、下記一般式(III)で表される。
【化11】
JP0005512764B2_000012t.gif

【0037】
ここで、Mは金属錯体の中心金属であって、鉄、マンガン、コバルト、ニッケル、銅、ルテニウムの何れかである。中でも、反応性が高いため、鉄が好ましい。また、Lは配位子であって、塩素イオン、臭素イオン、硝酸イオン、トリフルオロメタンスルホン酸イオンが例示できる。中でも、合成が簡便であるため、塩素イオン、臭素イオン、硝酸イオンが好ましい。なお、R1からR10及びXanは、この発明の複素環化合物と同じであるので記載を省略する。また、この発明の金属錯体が下記一般式(IV)で表される場合、RXはこの発明の複素環化合物と同じであるので記載を省略する。
【化12】
JP0005512764B2_000013t.gif

【0038】
この発明の金属錯体触媒は、この発明の複素環化合物を配位子として金属に配位させる公知の方法を使用して製造できる。具体的には、中心金属となる金属イオンを含む塩をメタノール(以下、MeOHと省略する。)、アセトニトリル(以下、MeCNと省略する。)などの極性有機溶剤に溶かした金属イオン溶液と、この発明の複素環化合物を極性有機溶剤に溶かした複素環化合物溶液とを調製し、金属イオン溶液と複素環化合物溶液とを混合攪拌すれば、錯体の結晶を析出させることができる。なお、この結晶を極性有機溶媒によって洗浄すればより純度の高い結晶が得られる。

【0039】
この発明の金属錯体は、ヒドロキシルラジカル、ペルオキシナイトライト、過酸化水素等の活性酸素種と反応すると迅速に、キサンテン系蛍光色素、金属錯体等に分解される。そして、この蛍光性化合物を可視紫外線強度計などによって検出すれば、活性酸素種の発生を検出できる。そのため、この発明の金属錯体は、活性酸素種、中でも過酸化水素を検出する蛍光プローブとして使用できる。また、この蛍光プローブは、公知の方法によって、モノクローナル又はポリクローナル抗体と結合させることができ、この蛍光プローブによって標識された抗体は、蛍光プローブとして使用できる。

【0040】
3.蛍光プローブ、標識抗体など
この発明の蛍光プローブ及びこの蛍光プローブによって標識した抗体は、その用途を特に限定することなく、あらゆる用途に使用できる。例えば、この蛍光プローブ又はこの蛍光プローブによって標識した抗体と公知の試薬等とを組み合わせて、バイオアッセイ用キット、バイオイメージング用キット、臨床検査用キットなどを構築し、バイオアッセイ、バイオイメージング、臨床検査などに使用することが可能である。これらのキットは蛍光プローブが蛍光するまでの反応時間が短く、阻害剤による影響を受け難い。そのため、これらのキットを使用することによって、従来からあるキットと比べて、検査時間を短縮でき、精度の高い検査結果が得られる。

【0041】
バイオアッセイ用キットとしては、例えば、グルコースオキシダーゼ標識抗体を使用するELISA法用キット、グルコースオキシダーゼ、ホスホリパーゼ、コレステロールオキシダーゼ、スフィンゴメリナーゼ、グルタミン酸オキシダーゼ、アセチルコリンオキシダーゼ、モノアミン酸化酵素、ガラクトースオキシダーゼ、キサンチン酸化酵素等の過酸化水素を発生する酵素の定量用キット等が挙げられる。

【0042】
バイオイメージング用キットとしては、例えば、上記の過酸化水素を発生する酵素の細胞内での蛍光イメージング剤としての利用等が挙げられる。

【0043】
臨床検査用キットとしては、例えば、過酸化水素の発生を検出する臨床検査用キット、例えば、ヒトや動物の体液中のカタラーゼ定量用キット、食品中のカタラーゼ定量用キット、コレステロールオキシダーゼと併用するコレステロールの定量定量用キット、アセチルコリンエステラーゼ、アセチルコリンオキシダーゼと併用するアセチルコリンの定量用キット等が挙げられる。

【0044】
また、この発明の蛍光プローブは酸化還元酵素によって基質から生じる酸化力の弱い過酸化水素によっても蛍光を生じる。そのため、この発明の蛍光プローブと酸化還元酵素等とを組み合わせれば、グルコース、ガラクトース、コレステロール、尿酸、無機リン酸、無機ピロリン酸等の測定に使用することができる。中でも、阻害剤の影響を受け難いことから、薬物治療中の糖尿病患者の血中グルコース濃度定量用キットに適している。

【0045】
なお、これらのキットに使用する試薬、キットによる試料の処理手順等については、この発明の蛍光プローブを使用する以外は特に限定することなく、公知の試薬、処理手順等を適宜組み合わせて使用すればよい。

【0046】
以下、この発明について実施例に基づいてより詳細に説明する。ただし、以下の実施例によって、この発明の特許請求の範囲は如何なる意味においても制限されない。
【実施例1】
【0047】
1.金属錯体の調製
この発明に係る金属錯体を調製した。具体的には、図1の反応経路に沿って配位子を合成したのち、鉄錯体を調製した。なお、理解しやすくするため、以下の説明では、同じ化合物については図1と同じ記号を使用した。
【実施例1】
【0048】
(1)試薬
N-(2-Nitrobenzenesulfonyl)-2-(aminomethyl)pyridine(以下、化合物cと省略する。)は既報(D. Schols et al., J. Med. Chem., 2010, 53, 1250-1260.)に従って合成したもの、8-Aminoquinolyl-2-bromoacetoamide(以下、化合物fと省略する。)は他の既報(Y. Hitomi et al., Angew. Chem. Int. Ed., 2012, 51(14), 3448-3452.)に従って合成したものを使用した。これ以外の試薬については市販のものを使用した。
【実施例1】
【0049】
(2)3-bromopropoxyresorufin(以下、化合物bと省略する。)の合成
窒素雰囲気下、resorufin (以下、化合物aと省略する。250 mg, 1.2 mmol)及びK2CO3 (243 mg, 1.8 mmol)のDMF溶液(5 mL)に1,3-dibromopropane (711 mg, 3.5 mmol)を加え、60℃で一晩撹拌した。反応終了後、溶液を濃縮及び真空乾燥して赤色の油状物質を得えた。油状物質をカラムクロマトグラフィー(SiO2, AcOEt:hexane = 1:3-2:1)によって精製して、橙色の固体を得た(119 mg, 収率30%)。なお、この化合物は核磁気共鳴分光法(1H NMR)の測定結果から同定した。その結果を以下に示す。
【実施例1】
【0050】
1H NMR (CDCl3, 500 MHz): δ (ppm) = 2.39 (2 H, -CH2CH3CH2-, q), 3.63 (2 H, -CH2CH3CH2-, t), 4.23 (2 H, -CH2CH3CH2-, t), 6.33 (1 H, Ar, d), 6.82-6.85 (2 H, Ar, m), 6.95 (1 H, Ar, dd), 7.07 (1 H, Ar, s), 7.42 (1 H, Ar, d), 7.71 (1 H, Ar, d).
【実施例1】
【0051】
(3)6-(2-(N-2-nitrosulfonyl-N-2-pyridylmethyl)aminopropoxy)resorufin(以下、化合物dと省略する。)の合成
窒素雰囲気下,化合物b (100 mg, 0.3 mmol)、化合物c(106 mg, 0.36 mmol)及びK2CO3 (54 mg, 0.4 mmol)のMeCN溶液(15 mL)を一晩加熱還流した。反応終了後、反応溶液をCelite(Celite Corporation)を使用してろ過して、ろ液を濃縮・真空乾燥し、赤褐色の油状物質を得た。油状物質をカラムクロマトグラフィー(Al2O3, AcOEt:hexane = 1:2-1:0)によって精製し、橙色の固体を得た(100 mg, 収率92%)。なお、この化合物は核磁気共鳴分光法(1H NMR)の測定結果から同定した。その結果を以下に示す。
【実施例1】
【0052】
1H NMR (CDCl3, 500 MHz): δ (ppm) = 2.04 (2 H, -CH2CH3CH2-, q), 3.59 (2 H, -CH2CH3CH2-, t), 3.98 (2 H, -CH2CH3CH2-, t), 4.70 (2 H, -CH2Py, s), 6.33 (1 H, Ar, d), 6.65 (1 H, Ar, d), 6.79-6.85 (2 H, Ar, m), 7.20 (1H, Py, dd), 7.41-7.46 (2 H, Ar and Py, m), 7.61-7.67 (5 H, Ar, m), 8.02 (1 H, Py, dd), 8.49 (1 H, Py, d).
【実施例1】
【0053】
(4)6-(2-(N-2-pyridylmethyl)aminopropoxy)resorufin(以下、化合物eと省略する。)の合成
窒素雰囲気下,化合物d (100 mg, 0.18 mmol)、thiopehnol (22.2 mg, 0.2 mmol)及びK2CO3(38 mg, 0.28 mmol)のDMF溶液(4 mL)を常温で一晩撹拌した。反応終了後、溶液を濃縮して赤褐色の油状物質を得た。油状物質をカラムクロマトグラフィー(SiO2,CHCl3:MeOH = 100:1-50:1)によって精製し、橙色の固体を得た(24 mg, 収率37%)。なお、この化合物は核磁気共鳴分光法(1H NMR)の測定結果から同定した。その結果を以下に示す。
【実施例1】
【0054】
1H NMR (CDCl3, 500 MHz): δ (ppm) = 2.06 (2 H, -CH2CH3CH2-, q), 2.88 (2 H, -CH2CH3CH2-, t), 3.93 (2 H, -CH2Py, s), 4.18 (2 H, -CH2CH3CH2-, t), 6.32 (1 H, Ar, d), 6.82 (2 H, Ar, m), 6.95 (1 H, Ar, dd), 7.18 (1 H, Py, dd), 7.30 (1 H, Py, d), 7.42 (1 H, Ar, d), 7.50 (1 H, Py, d), 7.69 (1 H, Ar, d), 8.55 (1 H, Py, d).
【実施例1】
【0055】
(5)配位子(以下、化合物L1と省略する。)の合成
窒素雰囲気下、化合物e (24 mg, 66 μmol)、K2CO3 (17 mg, 120 μmol)のMeCN溶液(15 mL)に、氷浴下で化合物f(26 mg, 100 μmol)を加え、そのまま一晩撹拌した。反応終了後、反応溶液をCeliteを使用してろ過したのち、ろ液を濃縮して赤褐色の油状物質を得た。油状物質をカラムクロマトグラフィー(Al2O3, AcOEt:hexane = 1:1-1:0)によって精製し、赤色の固体を得た(17 mg, 収率47%)。なお、この化合物は核磁気共鳴分光法(1H NMR)の測定結果から同定した。その結果を以下に示す。
【実施例1】
【0056】
1H NMR (CDCl3, 500 MHz): δ (ppm) = 2.12 (2 H, -CH2CH3CH2-, q), 2.92 (2 H, -CH2CH3CH2-, t), 3.47 (2 H, -CH2CO-, s), 4.00 (2 H, -CH2Py, s), 4.25 (2 H, -CH2CH3CH2-, t), 6.26 (1 H, Ar, d), 6.45 (1 H, Ar, s), 6.67 (1 H, Ar, dd), 6.74 (1 H, Ar, dd), 7.14 (1 H, Py, dd), 7.42-7.44 (4 H, Ar and Qu, m), 7.48 (1 H, Qu, m), 7.57 (1 H, Py, dd), 7.96 (1 H, Py, d), 8.03 (1 H, Qu, m), 8.53 (1 H, Py, d), 8.73 (1 H, Qu, d), 8.75 (1 H, Qu, d), 11.4 (1 H, NH, s).
【実施例1】
【0057】
(6)鉄錯体の合成(以下、MBFh2と省略する。)の合成
FeCl3・6H2O (4.2 mg, 15.4 μmol)のMeOH溶液(250μL)に、L1 (7 mg, 12.8 μmol)及びNEt3 (2.3 μL, 16.6 μmol)のMeCN/MeOH混合溶液(v/v = 1/1, 1mL)をゆっくり加え、常温で一晩撹拌した。反応終了後、析出した緑色の固体をメンブランフィルターでろ過したのち、真空乾燥して黄土色の固体を得た(8 mg, 収率93%)。なお、この化合物は、高分解能質量分析計(HRMS)の測定結果から同定した。その結果、HRMS(ESI,pos) m/z = 635.0(M2+)であり、その計算値 calcd for C32H26ClFeN5O4 = 635.1と同じであった。
【実施例2】
【0058】
2.反応速度の測定
MBFh2 (5μM)の50 mM HEPES緩衝液(pH = 7.2)を4面セルにて調製した。これに、過酸化水素溶液を終濃度が50μMとなるように添加し、日立分光蛍光光度計 F-7000(励起波長 570 nm)を使用して、25℃で180秒ごとに蛍光スペクトルの経時変化を測定した。その結果を図2に示す。
【実施例2】
【0059】
図2から、時間経過とともに蛍光強度が強くなり、その蛍光ピークが590 nmであることが分かった。そこで、過酸化水素濃度の違いが、反応速度に与える影響(反応速度の過酸化水素濃度依存性)を同じ反応系を使用して調べた。
【実施例2】
【0060】
具体的には、MBFh2(5μM)の50 mM HEPES緩衝液(pH = 7.2)を調製し、8つの4面セルに収納した。各4面セルに濃度の異なる過酸化水素溶液(終濃度0 μM、0.5 μM、1.0 μM、5.0μM、10 μM、50μM、100μM、500μM)添加し、590 nmにおける蛍光強度の時間変化を測定した。その結果を図3に示す。なお、MBFh2が、水中で安定していることを確認するため、過酸化水素溶液は、反応系を調製してから、30秒後に添加した。
【実施例2】
【0061】
図3から、過酸化水素の濃度が高くなるにつれて、蛍光強度の時間変化、すなわち鉄錯体の分解速度が速くなることが分かった。また、過酸化水素を加えるまで、蛍光強度は変化せず、過酸化水素濃度が0μMの場合には蛍光強度は測定時間の間ほとんど変化しないことが分かった。すなわち、MBFh2は水中で安定していることが確認できた。
【実施例3】
【0062】
3.MBFh1とMBFh2との比較
従来からある金属錯体であるMBFh1と、この発明の金属錯体であるMBFh2の水中での安定性及び反応速度を比較した。具体的には、つぎのようにして比較した。なお、MBFh1は特許文献3に従って合成したものを使用した。
【実施例3】
【0063】
MBFh1(5μM)又はMBFh2 (5μM)の50 mM HEPES緩衝液(pH = 7.2)を4面セルにてそれぞれ調製した。これらに、過酸化水素溶液を終濃度が500μMとなるように添加し、日立分光蛍光光度計 F-7000(励起波長 570 nm)を使用して、590 nmにおける蛍光強度の時間変化を測定した。その結果を図4に示す。なお、図4はMBFh2と過剰量の過酸化水素とを反応させた際の蛍光強度(実験対照)を1.0とする相対値で記載している。
【実施例3】
【0064】
図4から、過酸化水素を添加しなくても、時間経過とともにMBFh1の蛍光強度が強くなっていることが分かった。これに対して、MBFh2は過酸化水素を添加するまで蛍光強度が強くならず一定であり、過酸化水素を加えるとMBFh1よりも蛍光強度の激しく変化することとが分かった。すなわち、MBFh2はMBFh1よりも水中で安定しており、過酸化水素との反応速度も速いことが確認できた。
【実施例3】
【0065】
そこで、MBFh2とMBFh1の蛍光プローブとしての性能を調べるため、過酸化水素濃度の違いが、反応速度に与える影響(反応速度の過酸化水素濃度依存性)を同じ反応系を使用して調べた。具体的には、各4面セルに濃度の異なる過酸化水素溶液(終濃度0 μM、0.5 μM、1.0 μM、5.0μM、10 μM又は25 μM、50μM)添加し、590 nmにおける蛍光強度の時間変化から、各濃度における反応速度を求めた。その結果を図5に示す。
【実施例3】
【0066】
図5から、MBFh2とMBFh1の何れも過酸化水素濃度と反応速度とが比例しており、その傾きは、MBFh2のほうが大きいことが分かった。すなわち、MBFh2とMBFh1の何れも蛍光プローブとして使用できるが、MBFh2のほうが蛍光強度変化が強いので蛍光プローブとしてより優れていることが確認できた。
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4