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明細書 :超伝導膜の使用方法および超伝導膜

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 公開特許公報(A)
公開番号 特開2015-198057 (P2015-198057A)
公開日 平成27年11月9日(2015.11.9)
発明の名称または考案の名称 超伝導膜の使用方法および超伝導膜
国際特許分類 H01B  12/06        (2006.01)
H01L  39/24        (2006.01)
C01G   1/00        (2006.01)
C01G   3/00        (2006.01)
FI H01B 12/06
H01L 39/24 B
C01G 1/00 S
C01G 3/00
請求項の数または発明の数 6
出願形態 OL
全頁数 10
出願番号 特願2014-076562 (P2014-076562)
出願日 平成26年4月2日(2014.4.2)
発明者または考案者 【氏名】吉田 隆
【氏名】一野 祐亮
【氏名】鶴田 彰宏
【氏名】渡邊 俊哉
出願人 【識別番号】504139662
【氏名又は名称】国立大学法人名古屋大学
個別代理人の代理人 【識別番号】100085361、【弁理士】、【氏名又は名称】池田 治幸
【識別番号】100147669、【弁理士】、【氏名又は名称】池田 光治郎
審査請求 未請求
テーマコード 4G047
4M113
5G321
Fターム 4G047JA05
4G047JC02
4G047KE02
4G047KG01
4G047LB01
4M113AD35
4M113AD36
4M113AD37
4M113BA04
4M113CA34
5G321AA04
5G321BA01
5G321BA03
5G321CA13
5G321CA24
5G321DB37
要約 【課題】磁束密度Bの増加に伴ってその磁場中における超伝導膜の臨界電流密度Jの低下を抑制できる使用方法を提供する。
【解決手段】本実施例の超伝導膜10の使用方法によれば、超伝導体層14に電流を流すに際して、その超伝導体層14のc軸に直交する面内において磁束Φの方向(磁界の方向)と電流Iの方向とを平行とすることにより、磁束密度Bの増加開始とともに臨界電流密度Jが一旦増加した後で緩やかに低下する特性が得られる。このため、実用に際して磁束密度Bが増加しても、超伝導体層の電流許容値が急激に低下せず、一旦は増加してその後に緩やかに低下するので、臨界電流密度Jの低下が抑制される。これにより、従来よりも相対的に高い臨界電流密度が得られ、その実用範囲が拡大される。
【選択図】図1
特許請求の範囲 【請求項1】
基板から該基板の一面に垂直なc軸方向へエピタキシャル成長させられた超伝導体層の中に人工ピンを有する超伝導膜の使用方法であって、
前記超伝導体層に電流を流すに際して、該超伝導体層の前記c軸に直交する面内において磁束の方向と電流の方向とを互いに平行とすることを特徴とする超伝導膜の使用方法。
【請求項2】
前記基板の上にエピタキシャル成長させられた超伝導体層は、該基板の面に平行な面で直交するa軸およびb軸を有し、
前記互いに平行な前記磁束の方向と電流の方向とは、該a軸またはb軸と平行であることを特徴とする請求項1の超伝導膜の使用方法。
【請求項3】
前記超伝導膜は、リボン形状であって、超伝導ケーブル内に配置され、
前記c軸に直交する面内における電流方向は該超伝導ケーブルの送電方向であり、その電流方向に平行な磁束の方向とは、該磁束のうちの電流方向に平行な方向成分であることを特徴とする請求項1又は2の超伝導膜の使用方法。
【請求項4】
基板から該基板の一面に垂直なc軸方向へエピタキシャル成長させられた超伝導体層の中に人工ピンを有する超伝導膜であって、
前記超伝導体層は、該超伝導体層の前記c軸に直交する面内において磁束の方向と電流の方向とを互いに平行とされた状態で電流が流されることを特徴とする超伝導膜。
【請求項5】
前記基板の上にエピタキシャル成長させられた超伝導体層は、該基板の面に平行な面で直交するa軸およびb軸を有し、
前記互いに平行な前記磁束の方向と電流の方向とは、該a軸またはb軸と平行であることを特徴とする請求項4の超伝導膜。
【請求項6】
前記超伝導膜は、リボン形状であって、超伝導ケーブル内に配置され、
前記c軸に直交する面内における電流方向は該超伝導ケーブルの送電方向であり、その電流方向に平行な磁束の方向とは、該磁束のうちの電流方向に平行な方向成分であることを特徴とする請求項4又は5の超伝導膜。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、超伝導膜の使用方法およびその方法で用いられる超伝導膜に関し、特に、超伝導膜の磁束密度B[T]に対する臨界電流密度の特性を向上させる技術に関するものである。
【背景技術】
【0002】
液体窒素温度(77K)よりも高い臨界温度TCを示す高温超伝導部材、たとえば酸化物系超伝導材料或いは鉄系超伝送材料から成る超伝導体層が、基板の上にエピタキシャル成長させられた超伝導膜が知られている。このような超伝導膜は、たとえばテープ状に構成されて、超伝導ケーブルや超伝導コイルなどへの応用が期待されている。
【0003】
そして、上記超伝導膜においては、格子欠陥、転移、空孔、界面、析出物などの不均質部分が、量子化磁束の移動を制限するピン止めセンターとして機能するので、そのピンを制御することで、磁場中においてその臨界電流密度J[×106A/cm2]の特性を改善できることが知られている。たとえば、特許文献1および特許文献2に記載されたものがそれである。特許文献1では、酸化物系超伝導膜(たとえばLnBa2Cu3x)では、基板面に垂直にすなわち酸化物系超伝導膜のc軸に平行な方向に結晶欠陥が入っているときに、磁場が膜面に垂直な方向に形成されたときの臨界電流密度Jが向上することが記載されている。
【先行技術文献】
【0004】

【特許文献1】特開2005-027562号公報
【特許文献2】特開2005-116408号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記従来の超伝導膜は、人工的にピンを設けることで、磁場中においてその臨界電流密度Jの値が改善されるものの、その臨界電流密度Jは、必ず、磁束密度Bの増加開始に伴って急低下した後、一定値に到達する特性を有するものであった。このため、磁束密度Bが増加すると、超伝導膜の電流許容値が大幅に小さくなって、その実用範囲が制限される可能性があった。
【0006】
本発明は以上の事情を背景として為されたものであり、その目的とするところは、磁束密度Bの増加に伴ってその磁場中における超伝導膜の臨界電流密度Jの低下を抑制できる使用方法および超伝導膜を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者等は、以上の事情を背景として種々検討を重ね、種々の条件で試作された超伝導膜の臨界電流密度を測定するうち、同じ測定試料であってもある測定条件下では、磁束密度Bの増加に伴って、その磁場中における超伝導膜の臨界電流密度Jが増加するという、これまでに発明者が経験していない意外な事実を見出した。本発明はかかる知見に基づいて為されたものである。
【0008】
すなわち、第1発明の要旨とするところは、基板の一面からc軸方向にエピタキシャル成長させられた超伝導体層の中に人工ピンを有する超伝導膜の使用方法であって、前記超伝導体層に電流を流すに際して、該超伝導体層の前記c軸に直交する面内において磁束の方向と電流の方向とを互いに平行とすることを特徴とすることにある。
【0009】
また、第2発明の要旨とするところは、基板から該基板の一面に垂直なc軸方向へエピタキシャル成長させられた超伝導体層の中に人工ピンを有する超伝導膜であって、前記超伝導体層は、該超伝導体層の前記c軸に直交する面内において磁束の方向と電流の方向とを互いに平行とされた状態で電流が流されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
第1発明および第2発明によれば、前記超伝導体層に電流を流すに際して、該超伝導体層の前記c軸に直交する面内において磁束の方向と電流の方向とを平行とされ、前記超伝導体層は、該超伝導体層の前記c軸に直交する面内において磁束の方向と電流の方向とを互いに平行とされた状態で電流が流されることにより、磁束密度Bの増加開始とともに臨界電流密度Jが一旦増加した後で緩やかに低下する特性が得られる。このため、実用に際して磁束密度Bが増加しても、超伝導体層の電流許容値が急激に低下せず、一旦は増加してその後に緩やかに低下するので、臨界電流密度Jの低下が抑制される。これにより、従来よりも相対的に超伝導膜の臨界電流密度が高くされて、その実用範囲が拡大される。
【0011】
ここで、好適には、第1発明および第2発明において、前記基板の上にエピタキシャル成長させられた超伝導体層は、該基板の面に平行な面で直交するa軸およびb軸を有し、前記互いに平行な前記磁束の方向と電流の方向とは、該a軸またはb軸と平行である。このようにしても、磁束密度Bの増加開始とともに臨界電流密度Jが一旦増加した後で緩やかに低下する特性が好適に得られる。
【0012】
また、好適には、第1発明および第2発明において、前記超伝導膜は、リボン形状であって超伝導ケーブル内に配置され、前記c軸に直交する面内における電流方向は該超伝導ケーブルの送電方向であり、その電流方向に平行な磁束の方向とは、該磁束のうちの電流方向に平行な方向成分である。このようにすれば、超伝導ケーブルの送電に際して、臨界電流密度Jが一旦増加した後で緩やかに低下する特性が得られるため、実用に際して磁束密度Bが増加しても、超伝導体層の電流許容値が急激に低下せず、一旦は増加してその後に緩やかに低下するので、臨界電流密度Jの低下が抑制される。これにより、従来よりも超伝導膜の臨界電流密度が相対的に高くされて、その実用範囲が拡大される。
【0013】
また、好適には、前記基板は、前記超伝導材料に近い格子定数を有してその超伝導材料をエピタキシャル成長させ、且つその超伝導材料のc軸をその基板面に垂直に配向させることができる材料を少なくとも表面に有するものであればよい。この基板には、MgO、NiOなどの岩塩型結晶、LAO(LaAlO3)などのペロブスカイト型結晶、MAO(MgAl24)などのスピネル型結晶、CeO2などの蛍石型結晶などが好適に用いられるが、酸化物基板、窒化物基板、半導体基板、純Ni、Ni-Cr、Ni-WなどのNi基合金基板、純Cu、Cu-NiなどのCu基合金基板、Fe-Si、ステンレスなどのFe基合金基板などの表面上に、MgOなどのバッファ層を形成した基板であってもよい。
【0014】
また、好適には、前記超伝導体層は、液体窒素温度(77K)よりも高い臨界温度TCを示す高温超伝導部材であって、REBa2Cu37(但し、REはLa、Nd、Sm、Eu、Gd、Y、またはYb)などで示される希土類元素REを含む酸化物系超伝導材料から構成される。
【0015】
また、好適には、前記超伝導体層には、非超伝導材料からなる人工ピンが含まれる。この非超伝導材料は、前記超伝導材料の結晶構造に含まれるが不均質部分を構成するものであり、たとえば、BaMO3(但し、MはHf、Zr、Sn、Ce)、CeO2、YSZ、MgO、SrTiO3、LaAlO3などから好適に構成される。
【0016】
また、好適には、前記基板の上にエピタキシャル成長させられる超伝導材料は、レーザ蒸着法またはスパッタ蒸着法のような物理気相成長法、有機化学蒸着法のような化学気相成長法を用いて基板の上に成長させられるが、好適には、たとえばAr-FエキシマレーザまたはKr-Fエキシマレーザを照射することでターゲットの組成を飛散させて基板に蒸着するパルスレーザ蒸着法(PLD)、有機金属化学蒸着法(MOCVD)が用いられる。パルスレーザ蒸着法は、ターゲットの組成比が蒸着される薄膜の組成比に反映されるので、希土類元素REとBaとの平均組成(置換量x)を制御する点で望ましい。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明が一例が適用されるリボン状の超伝導膜10の一部を示す斜視図である。
【図2】図1のリボン状の超伝導膜の断面の一部を拡大して示す透過型電子顕微鏡(TEM)写真である
【図3】図1の超伝導体層を基板上に成長させるために用いられるパルスレーザ蒸着装置の構成を説明する模式的な斜視図である。
【図4】図3のパルスレーザ蒸着装置により、高温超伝導材料および人工ピンの材料を交互に積層した状態を説明するイメージ図である。
【図5】図3のパルスレーザ蒸着装置により、高温超伝導材料および人工ピンの材料を交互に積層するとき、人工ピンの材料の積層厚みが極めて薄く且つ少量であるので、人工ピンの材料が島状に分離される減少を説明する図である。
【図6】図5のように積層されることにより構成された超伝導体層の構成を模式的に説明する断面図である。
【図7】図1に示される超伝導膜の臨界電流密度を、3種類の測定条件下で測定したときの測定結果を説明するグラフである。
【図8】超伝導膜の他の構成例を説明する模式図である。
【図9】超伝導膜の他の構成例を説明する模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下に、本発明の一実施例を図面に基づいて詳細に説明する。
【実施例】
【0019】
図1は、リボン状の超伝導膜10の一部を示す斜視図であり、図2はその断面の一部を拡大して示す拡大断面図である。超伝導膜10は、基板12と、その基板12の一面からエピタキシャル成長させられた超伝導体層14とから構成されている。
【実施例】
【0020】
上記基板12は、超伝導体層14を構成する超伝導材料を結晶成長させることができるようにその超伝導材料に近い格子定数を有する材料を少なくとも表面に有する材料、たとえばMgO(100)基板やLAO(100)基板などから構成される。
【実施例】
【0021】
図2のTEM写真は上記超伝導体層14のc軸方向の縦断面を示している。図2に示すように、上記超伝導体層14は、液体窒素温度(77K)よりも高い臨界温度Tcを示す高温超伝導材料16から成り、基板12からc軸方向にエピタキシャル成長させられている。この高温超伝導材料16は、たとえばREBa2Cu37(但し、REはLa、Nd、Sm、Eu、Gd、Y、またはYb)などで示される希土類元素REを含む酸化物系超伝導材料から成る。そして、この高温超伝導材料16内には、臨界電流密度J[×106A/cm2]の特性を改善するための多数の人工ピンPが混在させられている。人工ピンPの材料18は、高温超伝導材料16の成長を阻害しないようにその高温超伝導材料16に近似した格子定数を有する非超伝導材料であって、反応が進まない高融点材料(複合化合物)、たとえばBaMO3(但し、MはHf、Zr、Sn、Ce)、から構成されている。
【実施例】
【0022】
図3は、上記超伝導体層14を基板12上に成長させるために用いられるパルスレーザ蒸着装置20の構成を説明する模式的な斜視図である。このパルスレーザ蒸着装置20は、酸素分圧が0.4Torr程度に維持されるチャンバー22と、チャンバー22内に配置されて基板12を800~900℃に加熱するヒータ24と、チャンバー22内に配置されたターゲット26に2J/cm2程度の出力且つ10ヘルツ程度のパルス周波数のパルスレーザ光(λ=248nm)Lを照射するAr-Fエキシマレーザ28とを備え、そのレーザ光の照射によりターゲット26の組成を飛散させたプラズマ状のプルーム30を形成し、活性化した組成を基板12の一面(図3では下面)に蒸着する。ターゲット26には、セラミックス状に固型化されたものであり、たとえば高温超伝導材料16から成るターゲット26Aと、高温超伝導材料16および人工ピンPの材料18の混合体、或いは人工ピンPの材料から成るターゲット26Bとが用意され、レーザ光Lがそれらターゲット26Aとターゲット26Bとに交互に照射され、たとえば13nm程度の厚みの高温超伝導材料16と0.4nm程度の厚みの人工ピンPの材料18とが、所定の厚みおよび所定の積層数で、で交互に積層されるようになっている。図4は、その積層状態を説明するイメージ図である。
【実施例】
【0023】
超伝導体層14は、実際には図4に示す積層状態とならず、人工ピンPの材料18の厚みが極めて薄く且つ超伝導体層14全体の2vol%程度と少ない割合であるため、図5に示すように、人工ピンPの材料18は島状の散在させられる。この結果、積層状態では、図5に示すように、人工ピンPが高温超伝導材料16内で混在させられる。この図5は図2のTEM写真に対応するものである。
【実施例】
【0024】
以下に、超伝導膜10の3種類の使用方法に関して臨界電流密度Jを測定した実験例を説明する。測定試料は、MgO(100)基板12の上に、SmBaCO(Sm1.04Ba1.96Cu3y)から成る13nm程度の厚みの高温超伝導材料16と、BHO(BaHfO3)から成る0.4nm程度の厚みの人工ピンPの材料18とが、パルスレーザ蒸着装置20を用いて合計400nm程度となるように積層されたもので、図1に示す超伝導膜10と同様に構成されている。
【実施例】
【0025】
臨界電流密度Jの測定には、よく知られた4端子法を用いられ、図1に示される電流Iの方向に電流を流したときに、種々の磁界の強さBにおいて、電圧が発生したときの電流値を超伝導体層14の断面積で除算することで臨界電流密度Jを得る方法が用いられる。この測定には、磁界Bの方向が相違する3種類の測定条件1、測定条件2、測定条件3が用いられた。測定条件1は、磁束Φの方向がa-b面(c軸に直交する面)内であって、電流Iの方向と平行にした場合である。測定条件2は、磁束Φの方向がa-b面(c軸に直交する面)内であって、電流Iの方向と直交する方向とした場合である。測定条件3は、磁束Φの方向がa-b面に直交する面(c軸に平行な面)内であって、電流Iの方向と直交する方向とした場合である。
【実施例】
【0026】
図7は、上記測定条件1、測定条件2、測定条件3における磁界の強さB[T]と臨界電流密度Jとの間の関係(特性)を、○印、□印、△印を用いてそれぞれ示している。図7によれば、測定条件2および測定条件3の場合は、□印および△印で示されるように、磁束密度(磁界の強さ)Bが零から増加するに伴って臨界電流密度Jが急速に低下して所定の値で変化が緩やかな傾斜となる。これに対して、測定条件1の場合は、○印で示されるように、磁束密度(磁界の強さ)Bが零から増加するに伴って臨界電流密度Jがしばらく上昇し、その後に低下して所定の値で変化が緩やかな傾斜となるが、測定条件2および測定条件3に比較して、臨界電流密度Jが2倍以上となって大幅に高い。このことから、図1に示すように、電流Iの方向と磁束Φの方向とが平行となる測定条件1と同じ条件での使用方法であれば、超伝導膜10の実用に際して磁束密度Bが増加しても、超伝導体層14の電流許容値が急激に低下せず、一旦は増加してその後に緩やかに低下するので、臨界電流密度Jの低下が抑制される。これにより、従来よりも相対的に高い臨界電流密度Jが得られ、超伝導膜10の実用範囲が拡大される。
【実施例】
【0027】
上述のように、本実施例の超伝導膜10の使用方法によれば、超伝導体層14は、該超伝導体層14のc軸に直交する面内において磁束Φの方向と電流Iの方向とを互いに平行とされた状態で電流が流され、超伝導体層14に電流を流すに際して、その超伝導体層14のc軸に直交する面内において磁束Φの方向(磁界の方向)と電流Iの方向とを平行とすることにより、磁束密度Bの増加開始とともに臨界電流密度Jが一旦増加した後で緩やかに低下する特性が得られる。このため、実用に際して磁束密度Bが増加しても、超伝導体層14の電流許容値が急激に低下せず、一旦は増加してその後に緩やかに低下するので、臨界電流密度Jの低下が抑制される。これにより、従来よりも相対的に高い臨界電流密度Jが得られ、超伝導膜10の実用範囲が拡大される。
【実施例】
【0028】
また、本実施例の超伝導膜10においては、基板12の上にエピタキシャル成長させられた超伝導体層14は、その基板12の一面に平行な面内で直交するa軸およびb軸を有し、互いに平行な磁束Φの方向と電流Iの方向とは、それらa軸またはb軸と平行である。このようにしても、磁束密度Bの増加開始とともに臨界電流密度Jが一旦増加した後で緩やかに低下する特性が好適に得られる。
【実施例】
【0029】
以上、本発明の一実施例を図面に基づいて説明したが、本発明はその他の態様においても適用される。
【実施例】
【0030】
たとえば、前述の実施例の超伝導膜10においては、超伝導膜10は、リボン形状であって超伝導ケーブル内に配置され、c軸に直交する面内における電流Iの方向はその超伝導ケーブルの送電方向であり、その電流Iの方向に平行な磁束Φの方向とは、磁束Φのうちの電流Iの方向に平行な方向成分である。このようにすれば、超伝導ケーブルの送電に際して、臨界電流密度Jが一旦増加した後で緩やかに低下する特性が得られるため、実用に際して磁束密度Bが増加しても、超伝導体層14の電流許容値が急激に低下せず、一旦は増加してその後に緩やかに低下するので、臨界電流密度Jの低下が抑制される。これにより、従来よりも相対的に高い臨界電流密度Jが得られ、超伝導膜10の実用範囲が拡大され,超伝導ケーブルの性能が高められる。
【実施例】
【0031】
また、前述の実施例の超伝導膜10においては、たとえば図6に示すように構成されていたが、パルスレーザ蒸着装置20において高温超伝導材料16および人工ピンPの材料18の厚みや積層数が変更されることにより、たとえば、図8および図9の模式図に示すような人工ピンPのサイズ、形状、密度の異なる超伝導膜10を得ることができる。図8および図9の超伝導膜10では、厚み方向において人工ピンPの間にその人工ピンPと同様の材料18から成る非超伝導体層が形成されている。また、図8の超伝導膜10は、図9の超伝導膜10に比較して、密度が高く、短く、且つ太い人工ピンPが超伝導膜10内に混在させられている。
【実施例】
【0032】
その他、一々例示はしないが、本発明はその趣旨を逸脱しない範囲で種々変更を加え得るものである。
【符号の説明】
【0033】
10:超伝導膜
12:基板
14:超伝導体層
16:高温超伝導材料
18:人工ピンの材料
B:磁束密度(磁場(=磁界)の強さ)
P:人工ピン
Φ:磁束
図面
【図1】
0
【図3】
1
【図4】
2
【図5】
3
【図6】
4
【図7】
5
【図8】
6
【図9】
7
【図2】
8