TOP > 国内特許検索 > SiO2とポリマーとを原料としたSiO系材料の製造方法、およびSiO系材料と炭素材料との複合材料 > 明細書

明細書 :SiO2とポリマーとを原料としたSiO系材料の製造方法、およびSiO系材料と炭素材料との複合材料

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 公開特許公報(A)
公開番号 特開2015-229605 (P2015-229605A)
公開日 平成27年12月21日(2015.12.21)
発明の名称または考案の名称 SiO2とポリマーとを原料としたSiO系材料の製造方法、およびSiO系材料と炭素材料との複合材料
国際特許分類 C01B  33/113       (2006.01)
FI C01B 33/113 A
請求項の数または発明の数 3
出願形態 OL
全頁数 12
出願番号 特願2014-115330 (P2014-115330)
出願日 平成26年6月4日(2014.6.4)
発明者または考案者 【氏名】藤 正督
【氏名】白井 孝
【氏名】長谷川 博紀
【氏名】仙名 保
出願人 【識別番号】304021277
【氏名又は名称】国立大学法人 名古屋工業大学
審査請求 未請求
テーマコード 4G072
Fターム 4G072AA24
4G072GG02
4G072GG03
4G072HH17
4G072JJ47
4G072MM26
4G072RR04
4G072RR13
4G072RR30
4G072UU30
要約 【課題】常温・常圧で、簡易な方法により、固相のままSiO系材料、及びSiO系材料と炭素材料料との複合材料を得る方法の提供。
【解決手段】粒子径20nm~100μmのアモルファスシリカ、結晶シリカ、石英、砂、珪砂、珪石粉、岩石粉末(シラス、抗火石等)、長石、珪灰石等、ケイ酸、ケイ酸塩等のSiO含有微粉体と粒子径100nm~50μmのポリオレフィン系、セルロース系、アクリル系、熱可塑性ポリエステル系等のポリマーとを混合し、粉砕するSiO系材料、及びSiO系材料と炭素材料との複合材料の製造方法。
【選択図】図10
特許請求の範囲 【請求項1】
SiO微粉体とポリマーとを混合し,粉砕することによるSiO系材料の製造方法。
【請求項2】
前記ポリマーがポリオレフィン系である、請求項1に記載のSiO系材料の製造方法。
【請求項3】
請求項1または2の製造方法で得られたSiO系材料と炭素材料との複合材料。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、SiOを含むナノコンポジット製造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、二次電池負極材料の候補として,従来の黒鉛等炭素系材料の代替として、資源的に潤沢であり、廉価で、かつ環境負荷の小さい二酸化珪素(SiO)を原材料としたSiOが大容量化の観点より注目されている。
【0003】
SiO製造方法の典型的な従来法は、減圧下において加熱してSiO気体を発生させ、SiO気体をSiO粉体として析出させる方法である(特許文献1参照)。また、同様な方法に関しては,雰囲気制御の方法などの改良例もある(特許文献2参照)。また,リチウムイオン電池への応用に特化した真空蒸着若しくはスパッタリングによる薄膜製造などの先行技術もある(特許文献3および特許文献4参照)。特許文献1に関連して、SiOをSi、C、あるいはSiCなどと混合して加熱する方法が報告されている(非特許文献1および非特許文献2)。SiO薄膜に関しては,SiH4とCO2とHeなどの混合気体からの化学気相蒸着法が報告されている(非特許文献3)。
【0004】
これらの先行技術は,いずれも還元雰囲気でSiOを含む混合物を高温加熱し、化学的に不安定なSiOの気相から凝縮してSiOを生成するので、生成物の一部に必然的にSiとSiOが混入しやすく、生成物の組成の予測や制御が容易ではない。また、高コストで量産性に乏しい。また、SiOを炭素などと複合化するためには,この従来法で得られたSiOと炭素源をさらに機械的に攪拌、混合する必要があった。
【先行技術文献】
【0005】

【特許文献1】再公特許WO2006/025194号公報
【特許文献2】再公表特許WO2006/046353号公報
【特許文献3】特開2009-78949号公報
【特許文献4】特開2007-53084号公報
【0006】

【非特許文献1】H. Sepehri-Amin, T. Ohkubo, M. Kodzuka, H. Yamamura, T. Saito, H. Iba and K. Hono, Scripta Materialia 69 (2013) 92-95
【非特許文献2】B. G. Gribov, K. V. Zinov’ev, O. N. Kalashnika N. N. Gerasimenko,D. I. Smirnov, V. N. Sukhanov,Semiconductors, 46 (2012) 1576-1579
【非特許文献3】Arup Samanta, Debajyoti Das, Solar Energy Mater. Solar Cells, 93 (2009) 588-596
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の課題は、かかる従来技術の不具合を解決すべくなされたものであって、常温・常圧で、簡易な方法により、固相のままSiO系材料、およびSiO系材料と炭素材料料との複合材料を得る方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、SiOを高分子等有機物と混合粉砕するだけの簡易な方法により、上記課題を解決しうることを見出した。すなわち、本発明によれば、以下のSiO系材料の製造方法、およびSiO系材料と炭素材料とのナノ複合体が提供される。
【0009】
[1]SiO微粉体とポリマーとを混合し,粉砕することによるSiO系材料の製造方法。
【0010】
[2]前記ポリマーがポリオレフィン系である、前記[1]に記載のSiO系材料の製造方法。
【0011】
[3]前記[1]または[2]の製造方法で得られたSiO系材料と炭素材料との複合材料。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】SiO(原料粉体)、SiO(リファレンス試料)、およびPVDFとSiOとの混合粉体のメカノケミカル処理後の粉体のXPS(Si2p)測定結果を示す図である。
【図2】SiO(原料粉体)、SiO(リファレンス試料)、およびPVDFとSiOとの混合粉体のメカノケミカル処理後の粉体のXPS(O1s)測定結果を示す図である。
【図3】SiO(原料粉体)、SiO(リファレンス試料)、およびPVDFとSiOとの混合粉体のメカノケミカル処理後の粉体のFT-IRスペクトル(1100cm-1付近)を示す図である。
【図4】PVDFとSiOとの混合粉体のメカノケミカル処理3時間後の粉体のラマンスペクトルによる炭素成分の評価結果を示す図である。
【図5】PVDF、PVDFのメカノケミカル処理3時間後、及びPVDFとSiOとの混合粉体のメカノケミカル処理3時間後の粉体のNMR(13C)による構造状態を示す図である。
【図6】PVDF等4種のポリマーとSiOとの混合粉体のメカノケミカル処理3時間後、SiO(リファレンス)、SiO(原料粉体)のXPS(Si2p)のスペクトルを示す図である。
【図7】PVDF等4種ポリマーとSiOとの混合粉体のメカノケミカル処理3時間後、SiO(リファレンス)、SiO(原料粉体)のXPS(O1s)のスペクトルを示す図である。
【図8】PVDF等4種ポリマーとSiO2との混合粉体のメカノケミカル処理3時間後のXPS(C1s)のスペクトルを示す図である。
【図9】PVDF等4種ポリマーとSiOとの混合粉体のメカノケミカル処理3時間後、SiO(リファレンス)、SiO(原料粉体)のIRスペクトル(1100cm-1付近)を示す図である。
【図10】本技術における推定される反応メカニズムを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を参照しつつ本発明の実施の形態について説明する。本発明は、以下の実施形態に限定されるものではなく、発明の範囲を逸脱しない限りにおいて、変更、修正、改良を加え得るものである。

【0014】
本発明における出発物質は,SiOの微粉末と高分子(ポリマー)の粉末の混合物から成る。SiOの微粉末としては、アモルファスシリカ、結晶シリカ、石英、砂、珪砂、珪石粉、岩石粉末(シラス、抗火石等)、長石、珪灰石等、ケイ酸及び/又はケイ酸塩が含まれる材料全般が利用できる。粉末粒子径は20nm~100μmが好ましい。ポリマーとしては、ポリオレフィン系、セルロース系、アクリル系、熱可塑性ポリエステル系が好ましく、ポリオレフィンが特に好ましい。ポリオレフィン系粉末は,ポリエチレン(PE),ポリプロピレン(PP),ポリテトラフッ化エチレン(PTFE),ポリフッ化ビニリデン(PVDF)などを含む。ポリオレフィン系粉末の粒子径は100nm~50μmが好ましい。SiOの微粉末とポリオレフィン系粉末の混合比は質量比で99.9:0.1~50:50の範囲が好ましく、95:5~85~15が特に好ましい。

【0015】
SiOとポリオレフィン等ポリマーとは,各種ボールミルによって混合されることが好ましい。反応を促進させるには、衝撃、摩擦、圧縮、せん断等の各種力を複合的に作用させることが効果的である。そのための装置としては、ボールミル、振動ミル、遊星ミル、媒体攪拌型ミル等の混合装置、ボール媒体ミル、ローラーミル、乳鉢などがあげられるが、これらに限定されるものではない。

【0016】
以下、本発明を実施例に基づいてさらに説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【実施例】
【0017】
(実施例1)
SiOは日本アエロジル社製(型番:Aerojil200、アモルファスシリカ、一次平均粒子径12nm)を用いた。PVDFはAldrich社製(型番:182702、粒子径5μm)を用いた。またリファレンス試料としてSiO系粉末は大阪チタニウム製(粒子径5μm)を用いた。
【実施例】
【0018】
SiO微粉末とPVDFを、重量比90:10として、遊星型ボールミル(Fritsch製、PULVERISETTE5classicline P-5)を用いてメカノケミカル処理を行った。メカノケミカル処理時間は30min、1h、3h、5h、10hとした。
【実施例】
【0019】
SiOの微粉末の酸化状態、結合状態の評価のため、XPS(ULVAC-PHI社製 PHI5000VersaProve)を使用して測定を行った。Si(2p)、O(1s)の分析をした。X線(単色化したAlKα線、1486.6eV、25W)を直径100μmで試料に照射した。
【実施例】
【0020】
図1にメカノケミカル処理をしていないSiO(原料粉体)とSiO(リファレンス試料)、さらにPVDFとSiOとを混合して3時間のメカノケミカル処理後(以後、「PVDF+SiO2-3h」という)のXPS (Si2p)のスペクトルを示す。 SiOの低エネルギー側のピークはSiO中に含まれるSiのピークであり、高エネルギー側にピークはSiOxのピークである。SiO2とPVDF とをメカノケミカル処理することにより、ピークがSiO2と比べて、結合エネルギーの低い方にシフトする。PVDF+SiO2-3h、SiO2、SiO、以上3種類の試料のピーク位置の比較から、SiOは還元されたと考えられる。
【実施例】
【0021】
図2にSiO(原料粉体)、SiO(リファレンス試料)、PVDF+SiO2-3h のXPS(O1s)スペクトルを示す。 SiO2とPVDF と混合粉体をメカノケミカル処理することによりピークが結合エネルギーの低い方にシフトする。XPS(Si2p)スペクトルと同様にSiO2、SiOとの比較から、メカノケミカル処理によりSiOは還元されたと考えられる。
【実施例】
【0022】
結合状態の評価のため、フーリエ変換赤外分光光度計(FT/IR-6200、Jasco製)を使用して分析を行った.窒素雰囲気下でKBr希釈法により測定した.分解能4.0 cm-1,積算回数128回,バックグラウンド測定にはKBrを用いた.
【実施例】
【0023】
図3にPVDFとSiOの混合粉末の30min、1h、3h、5h、10hでメカノケミカル処理したもの、SiO、SiOのIRスペクトルを示す。PVDFとSiOの混合粉末をメカノケミカル処理したもののピーク位置は、SiOより低波数側へシフトした。SiOに比べて、SiOのXの数が少なくなるほど、Si-O伸縮振動のピークは低波数側にシフトするため、SiOが還元された可能性が示唆された。
【実施例】
【0024】
合成物に含まれる炭素成分の評価のためレーザーラマン分光光度計(日本分光株式会社製、NRS-3100)を用いてラマンスペクトルを測定した。対物レンズには倍率100倍のレンズ、励起レーザーには波長532.0nmの緑色レーザー光を用い、露光時間5秒、レーザー出力4-6 W、積算回数8回の測定条件で行った。
【実施例】
【0025】
図4にPVDF+SiO2-3hのラマンスペクトルを示す。1600cm-1付近に炭素の環状構造に起因するピークがみられる。このことより、PVDF+SiO2-3hは、カーボンでみられるような環状構造になっている部分があると考えられる。
【実施例】
【0026】
構造状態の分析のためにNMR(超伝導固体核磁気共鳴装置、VARIAN INOVA-400plus)にて測定を行った。13Cの分析をした。リファレンスには、PDMS(ポリジメチルシラン)-34.44ppmを使用した。サンプル回転数 を3,000 Hz、積算回数 1,024 回で測定をした。
【実施例】
【0027】
図5にPVDF、PVDFのみで3時間メカノケミカル処理したもの、SiO2+PVDF-3hのNMR(13C)のスペクトルを示す。PVDFの原料の40ppm付近のピークはCH2に起因するピークである。120付近のピークはCF2に起因するピークである。PVDF-3hでは、ピークの位置に変化はなかったが、SiO2+PVDF 3hでは、ピークが非常にブロードになった。二重結合をもつsp2 炭素では200ppmほどの幅を持ったブロードなピークが見られることが知られており、SiO2+PVDF-3h は部分的に、sp2結合をもつ炭素のような構造を有しているのではないかと考えられる。
【実施例】
【0028】
(実施例2)
実施例1との比較実験として、PVDFの代わりのポリマーとして、PTFE、PP、PEを用いて、SiOに対する還元効果をPVDFと比較する。
【実施例】
【0029】
実施例1と同じアモルファスシリカ(Aerojil200日本アエロジル社製 一次粒子径12nm)を用い、ポリマーとしてPTFE(関東化学社製、素材研究用、5μm)、PP(セイシン企業社製、PPW-5、5μm)、PE(セイシン企業社製、SK-PE-20L、5μm)を用いた。なお、実施例1と同じ遊星型ボールミル(Fritsch製、PULVERISETTE5classicline P-5)を用いてメカノケミカル処理を行った。メカノケミカル処理時間は30min、1h、3h、5h、10hとした。
【実施例】
【0030】
図6に各ポリマーとSiOとの混合粉体のメカノケミカル処理3時間後のピークとSiO(リファレンス)、SiO(原料粉体)のXPS(Si2p)のスペクトルを示す。ピーク位置を結合エネルギーの順に並べると、PTFE+SiO2-3hとPVDF+SiO2-3hがほぼ同位置にあり、PE+SiO2-3h、PP+SiO2-3hの順に小さくなっていることがわかる。
【実施例】
【0031】
図7に各ポリマーとSiO2のメカノケミカル処理3時間後のピークとSiO(リファレンス)、SiO2(原料粉体)のXPS(O1s)のスペクトルを示す。ピーク位置を結合エネルギー順に並べると、酸化状態はSi2pの時と同じ傾向がみられ、ポリマーごとにPTFE+SiO2-3hとPVDF+SiO2-3hがほぼ同位置にあり、PE+SiO2-3h、PP+SiO2-3hの順になっている。PP+SiO2-3hはSiOのピークとほぼ同位置にまでシフトしている。図6の結果と合わせて考えると、PPが最も還元効果が大きく、PP+SiO2-3h、PE+SiO2-3h、PTFE+SiO2-3h、PVDF+SiO2-3hの順であった。
【実施例】
【0032】
図8に各ポリマーとSiO2のメカノケミカル処理3時間後のピークとSiO(リファレンス)、SiO2(原料粉体)のXPS(C1s)のスペクトルを示す。PP+SiO2-3h、PE+SiO2-3hのピークがPP、PEに比べて高エネルギー側にシフトしている。PE、PP、sp2結合のグラファイト等のピークは同位置にみられることが分かっているが、アモルファスカーボンや水素の付加したアモルファスカーボンではsp3結合の割合が増えるとsp2結合のグラファイトより高エネルギー側にシフトすることが知られている。このことより、高エネルギー側へのシフトはPP+SiO2-3h、PE+SiO2-3hのC同士のsp3結合に起因をしているのではないかと考えられる。
【実施例】
【0033】
図9に下から各ポリマーとSiO2の後のメカノケミカル処理3時間後、SiO2、SiOのFT-IRスペクトルを示す。PVDF+SiO2-3h、PTFE+SiO2-3h、PE+SiO2-3h、PP+SiO2-3hの順に低波数側にシフトしていることがわかる。PP+SiO2 3hは、SiOのピークとほぼ同位置までシフトしている。SiO2に比べて、SiOxのXの数が少なくなるほど、Si-O伸縮振動のピークは低波数側になるという結果も報告されているため、PPが最も還元効果が大きく、PP+SiO2-3h、PE+SiO2-3h、PTFE+SiO2-3h、PVDF+SiO2-3h の順にSiO2が還元されたと考えられる。
【実施例】
【0034】
以上の結果より、SiO微粉末をポリオレフィン系ポリマーと混合してメカノケミカル処理という簡易な処理をすることにより、SiOが還元処理されることが分かった。図10に本発明の技術における反応メカニズムを示す。すなわち、機械的エネルギーを加えることによって、ポリオレフィン系ポリマーの構造は変化し、C-F結合、C-H結合が切断され、ラジカルが生成したと考えられる。その際、ポリマーの分解反応も起こり、ポリオレフィン系ポリマーの酸化分解反応に必要な酸素の一部をSiOから奪うことで、SiOの還元が起こったと考えられる。その結果、SiOが還元されたSiO系材料のみならず、SiO系材料と炭素材料との複合材料も生成されたと考えられる。
【実施例】
【0035】
本発明の還元処理されたSiO系材料、あるいはSiO系材料と炭素系材料と混合した材料を負極に用いることにより、大容量かつ充放電サイクル特性の優れた二次電池を作製することができる。
【産業上の利用可能性】
【0036】
本発明は,リチウムイオン二次電池等の負極材料、あるいはキャパシターの電極に利用することができる。
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
5
【図7】
6
【図8】
7
【図9】
8
【図10】
9