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明細書 :単結晶の結晶塑性特性評価が可能な試験片

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 公開特許公報(A)
公開番号 特開2015-230217 (P2015-230217A)
公開日 平成27年12月21日(2015.12.21)
発明の名称または考案の名称 単結晶の結晶塑性特性評価が可能な試験片
国際特許分類 G01N   3/20        (2006.01)
FI G01N 3/20
請求項の数または発明の数 4
出願形態 OL
全頁数 7
出願番号 特願2014-115933 (P2014-115933)
出願日 平成26年6月4日(2014.6.4)
発明者または考案者 【氏名】神谷 庄司
【氏名】小岩 康三
出願人 【識別番号】304021277
【氏名又は名称】国立大学法人 名古屋工業大学
審査請求 未請求
テーマコード 2G061
Fターム 2G061AA07
2G061AB01
2G061BA18
2G061CB06
2G061DA01
2G061DA11
2G061DA12
2G061EA01
2G061EA02
2G061EC02
要約 【課題】結晶構造を持つ材料を含んだ機械的な構造設計における設計パラメータとして機能する結晶塑性特性の情報を取得可能な試験方法においては、局所的なすべり変形が急激に発生する転位バースト現象を起こすためにシミュレーションとの整合性に欠けること、さらに触針と試験片の接触に対する感度が大きく、試験が非常に難しいという課題がある。
【解決手段】単結晶の金属材料を、一方の片端を固定した半円弧形状の試験片に加工し、他方の自由端に触針によって面外方向に一軸負荷を与える試験を行う。本試験片の形状により、曲げモーメントが0になり、純粋なねじりトルクがかかる。本試験片による試験とシミュレーションの併用により機械的な構造設計における設計パラメータを得ることができる。
【選択図】 図1
特許請求の範囲 【請求項1】
一方の端部を固定端し、他方の端部は自由端とし、
前記固定端から、前記自由端に向けて一つの平面内の半円弧形状を持ち、
前記自由端において、
前記平面に対して垂直方向に荷重をかける試験片。
【請求項2】
幅と高さがほぼ等しい多角形または円形の断面形状を持つことを特徴とする請求項1に記載の試験片。
【請求項3】
単結晶の金属材料であることを特徴とする請求項1乃至請求項2の何れか1項に記載の試験片。
【請求項4】
前記半円弧の曲率半径が100nm~3μm、
前記断面形状の幅と高さが100nm~1μmであることを特徴とする請求項1乃至請求項3の何れか1項に記載の試験片。




発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、ねじり試験による単結晶の金属材料の結晶塑性特性の評価技術に関するものである。
【背景技術】
【0002】
半導体デバイスやMEMS(Micro Electro Mechanical System)デバイスといった微小構造をもつ構造体において、ウィークポイントとして知られている異種材界面の局所強度情報はデバイスの信頼性を確保するのに必要である。しかし、それらを評価するためには特許文献1のように、実験およびシミュレーションによる解析が不可欠であり、その前提として内部配線の銅の機械特性を得る必要がある。
【0003】
従来、デバイス内部の銅の特性として用いられているものは、多結晶で均質として扱われるバルク材料のものである。しかし、マイクロ・ナノスケールの微細構造を持つデバイス等の内部においては、その破壊の起点が非常に微細で局所的であるため、その応力場の大きさに対して破壊起点近傍の銅の結晶粒径や結晶方位の影響を無視できなくなる。そのため、内部配線に用いる銅の特性に関しては、破壊起点付近の銅配線の結晶異方性、さらには結晶塑性特性を考慮する必要がある。
【0004】
従来の配線に用いる銅の結晶塑性特性の評価方法として、単結晶で作製された試験片に対する圧縮試験を行う非特許文献1の方法がある。単結晶であるので結晶異方性を考慮する必要がない。この手法では、実験における荷重-変位曲線とシミュレーションにおける荷重-変位曲線が合うようにパラメータを決定することで銅の特性を同定する。しかし、この手法では、試験片が非常に小さくなった場合、局所的なすべり変形が急激に発生する転位バースト現象を起こすためにシミュレーションとの整合性に欠けること、さらに触針と試験片の接触に対する感度が大きく、試験が非常に難しいという問題がある。
【先行技術文献】
【0005】

【特許文献1】特願2012-165496号公報
【0006】

【非特許文献1】D. Kupka et al, Journal of Mechanics and Physics of Solids 64 (2014) 455-467
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の課題は上記のような従来の評価方法の問題を解決し、単結晶の金属材料の結晶塑性を考慮した機械的特性のパラメータを取得可能な新規の評価方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは特殊な形状をした試験片を作製することにより、上記課題が解決しうることを見出した。すなわち、本発明によれば、以下に示す試験片を用いた試験による結晶塑性特性の評価法が提供される。
【0009】
上記課題を解決するための請求項1に記載の発明は、一方の端部を固定端し、他方の端部は自由端とし、前記固定端から、前記自由端に向けて一つの平面内の半円弧形状を持ち、前記自由端において、前記平面に対して垂直方向に荷重をかける試験片である。
請求項2に記載の発明は、幅と高さがほぼ等しい多角形または円形の断面形状を持つことを特徴とする請求項1に記載の試験片である。
請求項3に記載の発明は、単結晶の金属材料であることを特徴とする請求項1乃至請求項2の何れか1項に記載の試験片である。
請求項4に記載の発明は、前記半円弧の曲率半径が100nm~3μm、前記断面形状の幅と高さが100nm~1μmであることを特徴とする請求項1乃至請求項3の何れか1項に記載の試験片である。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の試験片形状が、ほぼ純粋なねじり試験となっていることを示す材料力学的な曲げ・ねじりを示した図である。
【図2】本発明の試験片の形状を示す図である。
【図3】本発明の試験片の形状を改良し、より理想的なねじり試験が行えるようにした試験片の形状を示す図である。
【図4】本発明の試験片を、実際に作成した試験片のSEM画像である。
【図5】本発明の試験片を用いて、実際に試験を行った際の荷重-変位曲線である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照しつつ本発明の実施の形態について説明する。本発明は、以下の実施形態に限定されるものではなく、発明の範囲を逸脱しない限りにおいて、変更、修正、改良を加え得るものである。

【0012】
本発明の試験片形状は、金属単結晶に対してねじり試験を可能とするものであって、微小試験片における引張、曲げ、圧縮試験などで発生する、試験片内部を貫通する急激なすべり変形、転位バースト現象がほぼ起きない観点より、結晶塑性特性を得るための手法として好ましい。

【0013】
図1は、本発明の試験片形状が、ほぼ純粋なねじり試験となっていることを示す材料力学的な曲げ・ねじりを示した図である。
試験片は、一方の端部を固定端のB点とし、他方の端部は自由端のA点とし、B点から、A点に向けて一つの平面X-Y内のある半円弧の形状である。試験片の断面形状は、幅と高さを同じとする。均一なトルクを発生させるためである。

【0014】
ここで、半円弧の曲率半径をaとすると、一端B点で固定され、A点で平面X-Yに垂直な集中荷重P(1軸負荷)をうける円弧はりの、任意点Cでの荷重Pによる曲げモーメントMとトルクTは、数1となる。
【数1】
JP2015230217A_000003t.gif

【0015】
固定端のB点(荷重負荷のかかる点)における曲げモーメントおよびトルクは、 j0 = 180°、j =0° で求められ、数2となる。
【数2】
JP2015230217A_000004t.gif

よって、理論的には曲げモーメントが0になり、本発明の試験片を用いたねじり試験により、荷重負荷のかかる点において純粋なトルクがかかることが示されている。

【0016】
図2は、本発明の試験片の形状を示す図である。

【0017】
試験片は金属材料から切削加工等により作成する。固定端は、金属材料と一体となって形成しており、固定端Bの荷重負荷のかかる点は応力集中を防ぐためコーナR(0.5)をつけている。曲率半径をaは、3μmである。試験片の断面形状は、幅と高さを同じとし、断面の幅と高さは1μmである。これらの寸法は、単結晶の金属材料を対象とした場合、最大の大きさである。
また、断面の形状は、均一なトルクを発生させ、シミュレーションを容易にするため、円形が理想である。よって、多角形または正多角形でも良いが、加工性の点から図2で示すように正方形でも良い。

【0018】
荷重Pは、例えば触針によってZ軸方向に1軸荷重で行う。Z軸の上向きまたは下向きである。荷重点は、確実に負荷を与えるため、曲率半径の中心より10°オフセットしている。

【0019】
前記試験片形状は、大きさに左右されず純粋なねじり試験を実行できる観点から、金属単結晶の大きさにもよるが、単結晶中に試験片を作製するため、結晶粒径が小さい場合はより小さい試験片を作製することにも適用できることが好ましい。

【0020】
半円弧形状の片持ち梁を試験片に用いることで、一軸負荷によってのみ前記のねじり試験を発生させることができ、複雑な機構を持たない試験機でも試験が可能であるという点が好ましい。

【0021】
図3は、本発明の試験片形状に改良を加え、より純粋なねじり試験が行えるようにした試験片の形状の図である。

【0022】
試験片の自由端を曲率半径の中心より10°伸ばす。荷重点と荷重負荷のかかる点のなす角は180°となり、理想的な負荷を与えることができる。

【0023】
本発明の試験片の寸法である、更に微細な配線を用いる場合、実用上、曲率半径の最小値は100nm、断面の幅と高さの最小値は100nmである。従って、曲率半径が100nm~3μm、断面の幅と高さが100nm~1μmを用いれば、全領域をカバーできる。

【0024】
図4は、本発明の試験片を、実際に作成した試験片のSEM画像である。
この試験片は、単結晶の金属材料をSEM中のFocus Ion Beam (FIB)によって加工することにより作製した。試験片の固定端は、金属材料と一体で作製している。

【0025】
図5は、本発明の試験片を用いて、実際に試験を行った際の荷重-変位曲線である。塑性変形が開始してからも不安定な挙動を示さず、連続した荷重-変位曲線が得られている。そのため、結晶塑性を組み込んだシミュレーションとの連携により、結晶塑性特性を同定することが可能である。

【0026】
単結晶の試験片による試験とシミュレーションとの連携により、実際の配線で用いられる多結晶の金属材料の設計パラメータを得ることができる。
【産業上の利用可能性】
【0027】
本発明は、金属材料の結晶塑性特性の同定に利用することができる。
即ち、結晶構造を持つ材料を含んだ機械的な構造設計における設計パラメータとして機能する結晶塑性特性の情報を取得可能な試験方法においては、局所的なすべり変形が急激に発生する転位バースト現象を起こすためにシミュレーションとの整合性に欠けること、さらに触針と試験片の接触に対する感度が大きく、試験が非常に難しいという課題がある。
本発明は、単結晶の金属材料を、一方の片端を固定した半円弧形状の試験片に加工し、他方の自由端に触針によって面外方向に一軸負荷を与える試験を行う。本試験片の形状により、曲げモーメントが0になり、純粋なねじりトルクがかかる。本試験片による試験とシミュレーションの併用により機械的な構造設計における設計パラメータを得ることができる。
【符号の説明】
【0028】
100 試験片(半円弧部)
120 荷重点
140 荷重負荷のかかる点


図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4