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明細書 :分子性クラスターイオン系正極材料およびその製造方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 公開特許公報(A)
公開番号 特開2016-004773 (P2016-004773A)
公開日 平成28年1月12日(2016.1.12)
発明の名称または考案の名称 分子性クラスターイオン系正極材料およびその製造方法
国際特許分類 H01M   4/58        (2010.01)
H01M   4/36        (2006.01)
FI H01M 4/58
H01M 4/36 C
請求項の数または発明の数 5
出願形態 OL
全頁数 8
出願番号 特願2014-126756 (P2014-126756)
出願日 平成26年6月20日(2014.6.20)
新規性喪失の例外の表示 申請有り
発明者または考案者 【氏名】園山 範之
出願人 【識別番号】304021277
【氏名又は名称】国立大学法人 名古屋工業大学
審査請求 未請求
テーマコード 5H050
Fターム 5H050AA02
5H050AA07
5H050BA16
5H050BA17
5H050CA01
5H050CB12
5H050DA09
5H050EA23
5H050FA18
5H050GA11
5H050HA02
要約
【課題】高エネルギー密度、かつ優れたサイクル特性を有する二次電池用正極材料を提供する。
【解決手段】化学式がXYZ1338(X:周期律表第1族の第2~4周期の元素、Y:周期律表第7族~第10族第4周期の元素、Z:周期律表第5族第4~6周期)、またはXYZ1442(X:周期律表第1族の第2~4周期の元素、周期律表第6族~第16族第3~5周期の元素、Z:周期律表第5族第4~6周期)からなり、粒子径がナノメートルサイズのポリオキソメタレート粒子を含む正極材料であって、当該ポリオキソメタレート粒子の表面に導電性高分子がコーティングされた正極材料。
【選択図】図4
特許請求の範囲 【請求項1】
二次電池用正極材料であって、化学式がXYZ1338(X:周期律表第1族の第2~第4周期の元素、Y:周期律表第7族~第10族第4周期の元素、Z:周期律表第5族第4~第6周期)、またはXYZ1442(X:周期律表第1族の第2~第4周期の元素、Y:周期律表第6族~第16族第3~第5周期の元素、Z:周期律表第5族の第4~第6周期)からなり、粒子径がナノメートルサイズのポリオキソメタレート粒子を含む正極材料であって、当該ポリオキソメタレート粒子の表面に導電性高分子がコーティングされた正極材料。
【請求項2】
前記化学式において、XがKであり、YがMn、Ni、あるいはPのいずれかであり、ZがV、Mo、あるいはWのいずれかである、請求項1に記載の正極材料。
【請求項3】
前記ポリオキソメタレートが再結晶化したポリオキソメタレートである請求項1または2に記載の正極材料。
【請求項4】
前記高分子がポリピロール、ポリアセチレン 、ポリフェニレンビニレン、ポリチオフェン、ポリアニリン、ポリフェニレンサルファイドのいずれかである、請求項1~3のいずれかに記載の正極材料。
【請求項5】
請求項1に記載の正極材料の製造方法であって、ナノメートルサイズのポリオキソメタレート粒子を含む正極材料を有機溶媒に分散させ、さらに、酸化剤として塩化第二鉄を加え、この溶液中にポリマー単量体を加え、ポリオキソメタレートナノ粒子上に導電性高分子を重合させてコーティングを行う、正極材料の製造方法。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、二次電池等に利用され得る正極材料に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、携帯電話、ノートパソコン、デジタルカメラ等のポータブル機器用電源として二次電池が広く使用されている。なかでも、コバルト酸リチウム、ニッケル酸リチウム、あるいはマンガン酸リチウム等のリチウム遷移金属酸化物を正極材料、黒鉛等の炭素材料を負極材料、そしてリチウム化合物を液体有機化合物に溶解した電解質を用いたリチウム二次電池が急速に普及している。
【0003】
前記リチウムイオン二次電池は、充電時には正極活物質であるリチウム遷移金属酸化物中のリチウムがリチウムイオンとなり負極の炭素層間に入り込み、放電時にはリチウムイオンが炭素層間から離脱して正極に移動して元のリチウム遷移金属酸化物になることにより充放電反応が進行する。このリチウムイオン二次電池は高出力電圧、高エネルギー密度、さらにはメモリー効果がない等、従来のニッケルカドミウム等の二次電池が有していない優れた特徴を有している。
【0004】
特許文献1~3には、コバルトあるいはニッケル等の遷移金属を含むリチウム金属酸化物を含む正極材料が開示されているが、これら正極材料を用いたリチウムイオン二次電池は、充放電を繰り返すことが可能な回数、すなわち、サイクル寿命については十分なものではなかった。
【0005】
一方、本発明者らは、第5族ないし第6族の遷移金属M(M:V,Mo,Nb等)を含むポリオキソメタレート(POM)を用いた正極材料の特性を報告してきた(特許文献4、非特許文献1~3参照)。POMは再結晶により容易にナノメートルサイズにでき、容量を200~400mAh/gに改善することができたが、全体的に出力が低く、サイクル特性が大きく低下する傾向が見られた。
【先行技術文献】
【0006】

【特許文献1】特開2006-172753号公報
【特許文献2】特開2007-335331号公報
【特許文献3】特開2011-028999号公報
【特許文献4】特開2014-060108号公報
【0007】

【非特許文献1】N. Sonoyama, Y. Suganuma, T. Kume and Z. Quan, “Lithium intercalation reaction into the Keggin type polyoxomolybdates” Journal of Power Sources, 196, 6822 (2011).
【非特許文献2】S. Uematsu, Z. Quan, Y. Suganuma, N. Sonoyama “Reversible lithium charge-discharge property of bi-capped Keggin-type polyoxovanadates” Journal of Power Sources, 217, 13 (2012)
【非特許文献3】E. Ni et al, Journal of Nanoparticle Research, 15; 1732(2013)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の課題は、ポリオキソメタレート(POM)を用いた正極材料からなる二次電池のサイクル特性と出力特性を改善することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは鋭意検討を重ねた結果、低出力はPOMの低電子導電性に起因し、サイクル特性の劣化はPOMからなる分子性クラスタ-イオンの高表面反応性、すなわちPOM表面で起こる副反応に起因すると推定し、POMを導電性高分子で被覆することを創案した。すなわち、本発明によれば以下の正極材料およびその製造が提供される。
【0010】
[1]二次電池用正極材料であって、化学式がXYZ1338(X:周期律表第1族の第2~第4周期の元素、Y:周期律表第7族~第10族の第4周期の元素、Z:周期律表第5族の第4~第6周期)、またはXYZ1442(X:周期律表第1族の第2~第4周期の元素、Y:周期律表第6族~第16族第3~第5周期の元素、Z:周期律表第5族の第4~第6周期)からなり、粒子径がナノメートルサイズのポリオキソメタレート粒子を含む正極材料であって、当該ポリオキソメタレート粒子の表面に導電性高分子がコーティングされた正極材料。
【0011】
[2]前記化学式において、XがKであり、YがMn、Ni、あるいはPのいずれかであり、ZがV、Mo、あるいはWのいずれかである、前記[1]に記載の正極材料。
【0012】
[3]前記ポリオキソメタレートが再結晶によりナノメートルサイズ化した化したポリオキソメタレートである前記[1]または[2]に記載の正極材料。
【0013】
[4]前記高分子がポリピロール、ポリアセチレン 、ポリフェニレンビニレン、ポリチオフェン、ポリアニリン、ポリフェニレンサルファイドのいずれかである、前記[1]~[3]のいずれかに記載の正極材料。
【0014】
[5]前記[1]の正極材料の製造方法であって、ナノメートルサイズのポリオキソメタレート粒子を含む正極材料を有機溶媒に分散させ、さらに、酸化剤を加え、この溶液中にポリマー単量体を加え、ポリオキソメタレートナノ粒子上に導電性高分子を重合させてコーティングを行う、正極材料の製造方法。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】粒径がマイクロメートルサイズとナノメートルサイズのKMVからなる正極材料の充放電特性を示す図である。
【図2】粒径がマイクロメートルサイズとナノメートルサイズのKMVからなる正極材料のサイクル特性を示す図である。
【図3】KPV上にポリマーをコートした状態を示す図である。
【図4】KPVを用いてポリマーコートの有無による充放電特性、および放電容量のサイクル特性を示す図である。
【図5】KMVを用いてポリマーコートの有無による充放電特性、および放電容量のサイクル特性を示す図である。
【図6】KPVに対してポリマーコートの有無による、出力に対する容量変化の関係を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図面を参照しつつ本発明の実施の形態について説明する。本発明は、以下の実施形態に限定されるものではなく、発明の範囲を逸脱しない限りにおいて、変更、修正、改良を加え得るものである。

【0017】
代表的なポリオキソメタレートとしては、Keggin型ポリオキソメタレートが従来から知られているが、クラスタ‐イオンユニットの構造安定性が低く、例えばKeggin型ポリオキソモリブデイトであるKPMo1240を正極材料とするリチウム二次電池正極特性では急速に容量劣化を生じる。

【0018】
本発明のポリオキソメタレートは分子性クラスターイオンである。そして本発明のポリオキメタレートは溶液中で分子単体として安定に存在するため、分子単位でリチウム等が脱挿入する機能を有すると考えられ、二次電池電極材料として期待される。また、分子性を利用して再結晶により容易にナノメートルサイズの粒子を作製することが出来、このナノメートル粒子化により出力・サイクル特性を大幅に改善することが期待される。

【0019】
本発明で用いたポリオキソメタレートはクラスタ‐イオンユニット構造がKeggin型よりも密な構造を有するイソポリオキソバナデートに近く、共有結合性が高く、構造安定性が高い。本発明のポリオキソメタレートの化学式はXYV1338で表され、Xとして周期律表第1族の第2~第4周期の元素、例えばカリウム(K)が好ましく、Yとして周期律表第7族~第10族の第4周期の元素、例えばマンガン(Mn)が好ましく、Zとして周期律表第5族の第4~第6周期の元素、例えばバナジウム(V)またはモリブデン(Mo)、あるいはタングステン(W)であることが好ましい。さらに、本発明のポリオキソメタレートの化学式はXYZ1442において、Xとして周期律表第1族の第2~第4周期の元素、Yとして周期律表第6族~第16族の第3~第5周期の元素、例えばリン(P)が好ましく、Zとして周期律表第5族の第4~第6周期の元素であることが好ましい。

【0020】
ポリオキソメタレートは高い放電容量と高いレート特性を得るために、その平均粒子径が、50~500nmであることが好ましく、また粒子径分布の標準偏差が平均粒子径の10%以下であることが好ましい。また、このナノメートルサイズの粒子は再結晶法により容易に得られる。

【0021】
本発明においては、ポリオキソメタレートの粒子の表面に導電性高分子(ポリマー)をコートすることが好ましく、導電性高分子としてポリピロール、ポリアセチレン 、ポリフェニレンビニレン、ポリチオフェン、ポリアニリン、ポリフェニレンサルファイド等のいずれかであることが好ましく、当該高分子の厚みは、ポリオキソメタレート表面での副反応を抑制し、一方、Liの出入しやすいように5~20nmであることが好ましい。
【実施例】
【0022】
(K1338(KMV)の合成)
本発明のKMVの粉末合成は以下の様に行った。熱湯中にK V 0 3、1Mの硝酸、硫酸マンガン(II)ペルオキシ二硫酸カリウムを加え80℃において反応させた。5-7時間後得られた溶液をろ過し、酢酸カリウムを加える。一昼夜後ろ過した。得られた結晶を0.5Mの酢酸カリウム、0.5 Mの酢酸で洗った後、0.5Mの酢酸カリウム‐0.5 Mの酢酸から再結晶した。次に再結晶法によるナノメートル化は以下の様に行った。得られた結晶を水溶液中に溶解させた後、水-アセトンの混合溶液を加えて再結晶させることにより、粒径50~200nmの結晶を得た。一方、再結晶化させない結晶の粒径は3~10μmであった。
【実施例】
【0023】
次にポリマーコートしたKMVの粉末試料を導電材料であるアセチレングラック(AB)またはケッチェンブラック(KB)と重量比1:2の割合で混合して得られた外径10mm、厚み1mmの正極材料を用い、負極に外径8mm、厚み0.5 mmの金属リチウムから成る負極材料、電解液として1M LiPFを含むエチレンカーボネート(EC)とジエチルカーボネート(DEC)との混合溶媒(EC:DEC=3:7体積比)を用いてコイン型(CR‐2032)電池を作成し、充放電測定を行った。17mAg-1の定電流にて充電あるいは放電させた。粒径が3~10μmと50~200nmの2種類のKMVにて充放電測定およびサイクル特性を評価した。その評価結果を図1および図2に示す。図1に示すように、粒径をナノメートル化することにより容量は200 mAh/gから320 mAh/gに増加したが、充電時の不可逆容量がナノメートル化により増加した。 図2に示すように、ナノメートルサイズの試料はマイクロメートルサイズのものより、容量低下が大きく、低いサイクル安定性を示した。交流インピーダンス解析より、試料表面に被膜が連続的に成長していることが示唆され、またTEM測定により被膜の生成が確認された。すなわち、KMV表面で副反応が生じていることが示唆された。
【実施例】
【0024】
(KPV1442(KPV)の合成)
KPVの粉末合成は以下のように行った。4.575 gのメタバナジン酸ナトリウム(純度98.0 %)と1.33 gの燐酸水素二ナトリウム(純度99.0 %)を30 mlの熱水に溶解させた後、溶液を50℃に保つ。その溶液に97 %濃硫酸(キシダ化学、特級)を加え、pHを2.7に調整し、塩化カリウム(純度99.0 %)を加えることで沈殿物を得た。得られた沈殿物を吸引ろ過し、蒸留水とアセトンで3回ずつ洗浄することで試料を得た。次に再結晶法によるナノメートル化は以下の様に行った。得られた結晶を水溶液中に溶解させた後、水-アセトンの混合溶液を加えて再結晶させることにより、粒径50~200nmの結晶を得た。一方、再結晶化させない結晶の粒径は3~10μmであった。
【実施例】
【0025】
次に、ナノメートルサイズのKPVの表面にポリマーを以下のように形成した。KPV等のポリオキソメタレートをエタノール、アセトン等の有機溶媒に分散させ、酸化剤として塩化第二鉄を加える。この溶液中にポリマー単量体を加え、ポリオキソメタレートナノ粒子上に導電性高分子を重合させてコーティングを行う。ポリマー単量体として、例えば、ピロール、アセチレン 、フェニレンビニレン、チオフェン、アニリン、フェニレンサルファイドを用いるが、本実施例ではピロールを用いた。
【実施例】
【0026】
ポリマーコートしたKPV表面の状態を図3に示す。KPVを用いてポリマーコート有無による充放電測定およびサイクル特性を評価した。その結果を図4に示す。ポリマーコートのないKPVは約400 mAh/g程度の容量を示すが、サイクルと共にその容量は劣化し、50サイクル後には約300m Ah/g程度となり、容量維持率は72%程度であった。このKPVに5~10nmの厚さの導電性高分子コーティングを施し、導電助剤と混合した複合材料(PPy- KPV)の最大容量は400 mAh/g以上であり、50サイクル後も390 mAh/gの容量を維持し、93%の容量維持率を示した。このように、ポリマーコーティングをしたナノメートルサイズのポリオキソメタレートのサイクル安定性を大きく改善できることが明らかとなった。一方、ナノメートルサイズのKMVの表面にもポリマーを形成し、ポリマーコート有無による充放電測定およびサイクル特性を評価した。その結果を図5に示す。KMVについても、ポリマーコーティングにより高い容量維持率を確認した。
【実施例】
【0027】
本発明により、POM正極の出力特性も改善することが可能である。電子導電性に劣るPOM正極は出力を上げると容量が大きく低下する傾向が見られた。例として、図6にKPVとポリマーコートしたKPVの出力に対する容量変化を示す。コート前は、出力の上昇と共に容量は減少し、1000 mAg-1では80 mAh/g程度まで容量の減少が見られたが、導電性ポリマーでコートしたKPVでは、500 mAg-1までほとんど低下が見られず、1000 mAg-1においても300 mAh/g程度の容量を維持し、高速での充放電が可能となった。
【産業上の利用可能性】
【0028】
本発明のポリオキソメタレートは二次電池正極材料に利用することができる。
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
5