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明細書 :単層カーボンナノチューブ、それを含む電極シート、それの製造方法、および、それの分散体の製造方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 公開特許公報(A)
公開番号 特開2015-131734 (P2015-131734A)
公開日 平成27年7月23日(2015.7.23)
発明の名称または考案の名称 単層カーボンナノチューブ、それを含む電極シート、それの製造方法、および、それの分散体の製造方法
国際特許分類 C01B  31/02        (2006.01)
H01M   4/62        (2006.01)
B82Y  30/00        (2011.01)
B82Y  40/00        (2011.01)
FI C01B 31/02 101F
H01M 4/62 Z
B82Y 30/00
B82Y 40/00
請求項の数または発明の数 14
出願形態 OL
全頁数 19
出願番号 特願2014-002667 (P2014-002667)
出願日 平成26年1月9日(2014.1.9)
新規性喪失の例外の表示 特許法第30条第2項適用申請有り The Annual World Conference on Carbon 2013,Program and Abstracts(発行所:Brazilian Carbon Association 発行日:平成25年7月14日) [刊行物等] 第40回 炭素材料学会年会 要旨集(発行所:炭素材料学会 発行日:平成25年12月3日)
発明者または考案者 【氏名】金子 克美
【氏名】藤森 利彦
【氏名】南 太規
【氏名】フィトリ コエルニサ
【氏名】アーロン モレロスゴメス
出願人 【識別番号】504180239
【氏名又は名称】国立大学法人信州大学
個別代理人の代理人 【識別番号】100099759、【弁理士】、【氏名又は名称】青木 篤
【識別番号】100077517、【弁理士】、【氏名又は名称】石田 敬
【識別番号】100087413、【弁理士】、【氏名又は名称】古賀 哲次
【識別番号】100128495、【弁理士】、【氏名又は名称】出野 知
【識別番号】100102990、【弁理士】、【氏名又は名称】小林 良博
【識別番号】100144417、【弁理士】、【氏名又は名称】堂垣 泰雄
審査請求 未請求
テーマコード 4G146
5H050
Fターム 4G146AA12
4G146AB07
4G146AC03A
4G146AC03B
4G146AC04B
4G146AC07A
4G146AC07B
4G146AC16A
4G146AC16B
4G146AC17A
4G146AC17B
4G146AC20B
4G146AC27A
4G146AC27B
4G146AD15
4G146AD23
4G146CB10
4G146CB17
4G146CB20
4G146CB23
4G146CB35
5H050AA12
5H050AA19
5H050DA10
5H050EA08
5H050EA22
5H050FA16
5H050FA18
5H050FA20
5H050GA02
5H050GA10
5H050GA11
5H050GA12
5H050GA13
5H050HA00
5H050HA07
5H050HA13
5H050HA14
5H050HA17
要約 【課題】SWCNTの特性の改善、および改善されたSWCNTを用いたフレキシブルな電極材料の提供。
【解決手段】ナフタレン誘導体が表面に被覆されている単層カーボンナノチューブ(SWCNT)、それを含んでなる電極シート、それの製造方法、およびそれの分散体の製造方法の提供。
【選択図】図13
特許請求の範囲 【請求項1】
ナフタレン誘導体が表面に被覆されていることを特徴とする、単層カーボンナノチューブ(SWCNT)。
【請求項2】
ナフタレン誘導体が、ジニトロナフタレン、ジメチルナフタレン、ジアミノナフタレン、ジヒドロキシナフタレンからなる群から選択された少なくとも一つを含むことを特徴とする、請求項1に記載の単層カーボンナノチューブ。
【請求項3】
ナフタレン誘導体による表面被覆率が0.3±0.02%であることを特徴とする、請求項1または2に記載の単層カーボンナノチューブ。
【請求項4】
広角X線回折法によって散乱ベクトルqをした測定した際に、4nm-1にかかるピークに関して、ナフタレン誘導体で被覆されていない単層カーボンナノチューブのピークを基準として、ピーク高さが1/3以下であり、且つピーク頂部が小角側へシフトしていることを特徴とする、請求項1~3のいずれか1項に記載の単層カーボンナノチューブ。
【請求項5】
バンドル内の隣接する単層カーボンナノチューブとの面間隔が1.560nm以上であることを特徴とする請求項1~4のいずれか1項に記載の単層カーボンナノチューブ。
【請求項6】
光吸収スペクトルを測定した際に、704nm、1004nm、および1788nmにかかるピークに関して、ナフタレン誘導体で被覆されていない単層カーボンナノチューブのピークを基準として、ピーク頂部が長波長側へシフトしていることを特徴とする、請求項1~5のいずれか1項に記載の単層カーボンナノチューブ。
【請求項7】
ラマンスペクトルを測定した際に、ラジアルブリージングモード(RBM)のピークに関して、ナフタレン誘導体で被覆されていない単層カーボンナノチューブのピークを基準として、ピーク頂部が高周波数側へシフトしていることを特徴とする、請求項1~6のいずれか1項に記載の単層カーボンナノチューブ。
【請求項8】
電気伝導度が、ナフタレン誘導体で被覆されていない単層カーボンナノチューブの約50倍であることを特徴とする、請求項1~7のいずれか1項に記載の単層カーボンナノチューブ。
【請求項9】
電気伝導度が、200Kから300Kの範囲で、極大値を示すことを特徴とする、請求項1~8のいずれか1項に記載の単層カーボンナノチューブ。
【請求項10】
SPE法によって測定した総表面積が、ナフタレン誘導体で被覆されていない単層カーボンナノチューブの0.7倍以下であることを特徴とする、請求項1~9のいずれか1項に記載の単層カーボンナノチューブ。
【請求項11】
100KPaでのCO吸着量が、ナフタレン誘導体で被覆されていない単層カーボンナノチューブの2倍以上であることを特徴とする、請求項1~10のいずれか1項に記載の単層カーボンナノチューブ。
【請求項12】
請求項1~11のいずれか1項に記載された単層カーボンナノチューブを含んでなる、電極シート。
【請求項13】
請求項1~11のいずれか1項に記載された単層カーボンナノチューブを製造する方法であって、以下の順序の工程:
a)ナフタレン誘導体を有機溶剤に溶解する、
b)ナフタレン誘導体溶液に単層カーボンナノチューブ原料を加える、
c)ナフタレン誘導体溶液に超音波照射する、
d)ナフタレン誘導体溶液から、単層カーボンナノチューブを濾過する、
e)単層カーボンナノチューブを洗浄・乾燥すること、
を含んでなる、方法。
【請求項14】
請求項1~11のいずれか1項に記載された単層カーボンナノチューブの分散体を製造する方法であって、以下の順序の工程:
a)ナフタレン誘導体を有機溶剤に溶解する、
b)ナフタレン誘導体溶液に単層カーボンナノチューブ原料を加える、
c)ナフタレン誘導体溶液に超音波照射して、単層カーボンナノチューブのバンドルを少なくとも部分的に解離し、単層カーボンナノチューブを分散させる、
d)ナフタレン誘導体溶液から、単層カーボンナノチューブの分散体を濾過する、
e)単層カーボンナノチューブを洗浄・乾燥すること、
を含んでなる、方法。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、単層カーボンナノチューブ(SWCNT: single wall carbon nanotube)、SWCNTを含んでなる電極シート、SWCNTの製造方法、およびSWCNTの分散体の製造方法に関するものである。特に、本発明は、ナフタレン誘導体(ND: Naphthalene derivatives)が表面に被覆されていることを特徴とする、単層カーボンナノチューブ(SWCNT)に関するものである。
【背景技術】
【0002】
カーボンナノチューブは、炭素のシート状の物体すなわちグラフェンが円筒状に巻かれた炭素の配列構造を有している。特に、単層カーボンナノチューブ(SWCNT)は炭素のシートが一層のみ巻かれた構造のカーボンナノチューブの総称である。
【0003】
SWCNTは、共役π電子を有する多環式芳香族炭化水素(PAH: Poly Aromatic Hydrocarbons)と強く相互反応することがよく知られている(非特許文献1、2)。Gotovacや本願発明者らは、PAHを用いたSWCNTの分子タイリング(タイル貼り)方式を導入し、液相吸着法によりSWCNTにナフタレンを被覆することに成功した(非特許文献3、4)。
【先行技術文献】
【0004】

【非特許文献1】Hattori,Y., Kaneko, K., Ohba, T..: Comprehensive Inorganic Chemistry II. V0l 5. Oxford:Elsevier, pp.25-44 (2013)
【非特許文献2】Debnath, S., Cheng, Q., Hedderman, T.G, Byme, H.J.: Comparative study of the interaction of different polycyclic aromatic hydrocarbons on different types of single-walled carbon nanotubes. J. Phys. Chem. C 114, 8l67-8l75 (2010)
【非特許文献3】Gotovac S, Honda H, Hattori Y, Takahashi K, Kanoh H, Kaneko K. Effect of nanoscale curvature of single wall carbon nanotubes on adsorption of polycyclic aromatic hydrocarbons, Nano Lett. 2007; 7: 583-7.
【非特許文献4】Khoerunnisa F, Fujimori T, Itoh T, Urita K, Hayashi T, Kanoh H, Ohba T, Hong SY, Choi YC, Santosa SJ, Endo M, Kaneko K. Enhanced CO2 adsorptivity of partially charged single walled carbon nanotubes by methylene blue encapsulation. J. Phys. Chem. C 2012; 116: 11216-22.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明者は、以前の研究において、PAHとしてナフタレンを用いたSWCNTの分子タイリング(タイル貼り)方式を導入し、液相吸着法によりSWCNTにナフタレンを被覆することに成功した。さらなる、SWCNTの特性の改善が求められている。
【0006】
一方で、単層カーボンナノチューブは、優れた電気伝導性および可撓性に優れており、フレキシブルな電極材料として広く応用できると期待されている。
しかし、カーボンナノチューブは、水あるいは有機溶媒に分散するのが困難なために、界面活性剤によってナノチューブを分散させている。そして、分散・コート処理後にナノチューブから界面活性剤分子を除去するのが困難であるために、ナノチューブの良好な電気伝導性を効果的に利用することができず、応用に至っていない。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、単層カーボンナノチューブのバンドル構造の隙間にナフタレン誘導体を安定にドープさせることにより、ナフタレン誘導体分子とナノチューブ間に電荷移動が誘起されること、およびナフタレン誘導体の種類に応じて単層カーボンナノチューブが異なる性質を示すことを見出した。この現象により、ナノチューブのバンドルを解離し易くしてナノチューブの分散性を高めることができ、同時に、ナノチューブの電気伝導性を50倍増大できることを見出した。
この知見に基づいて、本発明は完成され、その要旨とするところは以下のとおりである。
【0008】
(1)
ナフタレン誘導体が表面に被覆されていることを特徴とする、単層カーボンナノチューブ(SWCNT)。
(2)
ナフタレン誘導体が、ジニトロナフタレン、ジメチルナフタレン、ジアミノナフタレン、ジヒドロキシナフタレンからなる群から選択された少なくとも一つを含むことを特徴とする、(1)に記載の単層カーボンナノチューブ。
(3)
ナフタレン誘導体による表面被覆率が0.3±0.02%であることを特徴とする、(1)または(2)に記載の単層カーボンナノチューブ。
(4)
広角X線回折法によって散乱ベクトルqをした測定した際に、4nm-1にかかるピークに関して、ナフタレン誘導体で被覆されていない単層カーボンナノチューブのピークを基準として、ピーク高さが1/3以下であり、且つピーク頂部が小角側へシフトしていることを特徴とする、(1)~(3)のいずれか1項に記載の単層カーボンナノチューブ。
(5)
バンドル内の隣接する単層カーボンナノチューブとの面間隔が1.560nm以上であることを特徴とする(1)~(4)のいずれか1項に記載の単層カーボンナノチューブ。
(6)
光吸収スペクトルを測定した際に、704nm、1004nm、および1788nmにかかるピークに関して、ナフタレン誘導体で被覆されていない単層カーボンナノチューブのピークを基準として、ピーク頂部が長波長側へシフトしていることを特徴とする、(1)~(5)のいずれか1項に記載の単層カーボンナノチューブ。
(7)
ラマンスペクトルを測定した際に、ラジアルブリージングモード(RBM)のピークに関して、ナフタレン誘導体で被覆されていない単層カーボンナノチューブのピークを基準として、ピーク頂部が高周波数側へシフトしていることを特徴とする、(1)~(6)のいずれか1項に記載の単層カーボンナノチューブ。
(8)
電気伝導度が、ナフタレン誘導体で被覆されていない単層カーボンナノチューブの約50倍であることを特徴とする、(1)~(7)のいずれか1項に記載の単層カーボンナノチューブ。
(9)
電気伝導度が、200Kから300Kの範囲で、極大値を示すことを特徴とする、(1)~(8)のいずれか1項に記載の単層カーボンナノチューブ。
(10)
SPE法によって測定した総表面積が、ナフタレン誘導体で被覆されていない単層カーボンナノチューブの0.7倍以下であることを特徴とする、(1)~(9)のいずれか1項に記載の単層カーボンナノチューブ。
(11)
100KPaでのCO吸着量が、ナフタレン誘導体で被覆されていない単層カーボンナノチューブの2倍以上であることを特徴とする、(1)~(10)のいずれか1項に記載の単層カーボンナノチューブ。
(12)
(1)~(11)のいずれか1項に記載された単層カーボンナノチューブを含んでなる、電極シート。
(13)
(1)~(11)のいずれか1項に記載された単層カーボンナノチューブを製造する方法であって、以下の順序の工程:
a)ナフタレン誘導体を有機溶剤に溶解する、
b)ナフタレン誘導体溶液に単層カーボンナノチューブ原料を加える、
c)ナフタレン誘導体溶液に超音波照射する、
d)ナフタレン誘導体溶液から、単層カーボンナノチューブを濾過する、
e)単層カーボンナノチューブを洗浄・乾燥すること、
を含んでなる、方法。
(14)
(1)~(11)のいずれか1項に記載された単層カーボンナノチューブの分散体を製造する方法であって、以下の順序の工程:
a)ナフタレン誘導体を有機溶剤に溶解する、
b)ナフタレン誘導体溶液に単層カーボンナノチューブ原料を加える、
c)ナフタレン誘導体溶液に超音波照射して、単層カーボンナノチューブのバンドルを少なくとも部分的に解離し、単層カーボンナノチューブを分散させる、
d)ナフタレン誘導体溶液から、単層カーボンナノチューブの分散体を濾過する、
e)単層カーボンナノチューブを洗浄・乾燥すること、
を含んでなる、方法。
【発明の効果】
【0009】
本発明による単層カーボンナノチューブは、ナノチューブのバンドルを解離し易くして単層カーボンナノチューブの分散性を高めることができ、同時に、単層カーボンナノチューブの電気伝導性を50倍増大できる。また、この単層カーボンナノチューブを含む電極シートは、電気伝導性および可撓性に優れており、さらに良好な光透過性も兼ね備え得る電極シートを提供する。加えて、この単層カーボンナノチューブを製造する方法、および単層カーボンナノチューブの分散体を製造する方法も提供される。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】図1は、単層カーボンナノチューブ(SWCNT)のバンドル構造を示す写真である。
【図2】図2は、ナフタレン誘導体の単層カーボンナノチューブへの整合的な被覆について説明する概念図である。
【図3】図3は、ナフタレン誘導体の単層カーボンナノチューブへの安定的配置について説明する概念図である。
【図4】図4は、ナフタレン誘導体の分子モデルの概念図である。
【図5】図5は、広角X線回折法によって測定した、ナフタレン誘導体で被覆された単層カーボンナノチューブの散乱ベクトルqのチャートである。
【図6】図6は、ナフタレン誘導体の被覆による、バンドル構造の変化を模式的に表した概念図である。
【図7】図7は、ナフタレン誘導体で被覆された単層カーボンナノチューブの光吸収スペクトルのチャートである。
【図8】図8は、ナフタレン誘導体で被覆された単層カーボンナノチューブの、ラマンスペクトルのラジアルブリージングモードRBMのチャートである。
【図9】図9は、ナフタレン誘導体で被覆された単層カーボンナノチューブの、電気伝導度の温度依存性を表したチャートである。
【図10】図10は、ナフタレン誘導体で被覆された単層カーボンナノチューブの、電気伝導度の温度依存性(Tが200Kから300Kの範囲)を表したチャートである。
【図11】図11は、ナフタレン誘導体で被覆された単層カーボンナノチューブの293KでのCOの等温吸着を表したチャートである。
【図12】図12は、ナフタレン誘導体で被覆された単層カーボンナノチューブを含んでなる、電極シート膜の光透過性を表したチャートである。
【図13】図13は、ナフタレン誘導体で被覆された単層カーボンナノチューブのSEM像である。
【図14】図14は、ジニトロナフタレン(DNN)で被覆された単層カーボンナノチューブを含む電極シートの写真である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明により、ナフタレン誘導体が表面に被覆されていることを特徴とする、単層カーボンナノチューブ(SWCNT)が提供される。
カーボンナノチューブは、炭素のシート状の物体すなわちグラフェンが円筒状に巻かれた炭素の配列構造を有している。特に、単層カーボンナノチューブ(SWCNT)は炭素のシートが一層のみ巻かれた構造のカーボンナノチューブである。そして、単層カーボンナノチューブ(SWCNT)は、図1に示すようにバンドルを構成する。
本発明の一態様によれば、単層カーボンナノチューブの表面には、ナフタレン誘導体が被覆されている、言い換えれば、バンドル内の単層カーボンナノチューブ同士の間にナフタレン誘導体が挿入(intercalation)またはドープされている。ナフタレン誘導体の基本構造はベンゼン環を2つ繋げたものであり、単層カーボンナノチューブの基本構造もベンゼン環を繋ぎ合わせたグラフェンから構成されている。したがって、ナフタレン誘導体のベンゼン環は、単層カーボンナノチューブのベンゼン環と整合的に重ねる(被覆する)ことができる(図2参照)。被覆する場合、ナフタレン誘導体の分子軸(長手方向)がカーボンナノチューブの軸方向と一致している配置が好ましい、なぜなら、図3に示すように、単層カーボンナノチューブは軸方向に伸びており、周方向には曲面を形成するため、軸方向が一致している方が安定的な配置となるからである(図3参照)。

【0012】
ナフタレン誘導体は、ナフタレンに官能基および/または異原子を付加または置換したものであり、その官能基等によって電子吸引性や電子供与性が異なる。単層カーボンナノチューブ表面に被覆されたナフタレン誘導体は、その異なる電子吸引性や電子供与性に応じて、異なる電荷移動相互作用を単層カーボンナノチューブ表面に及ぼし、単層カーボンナノチューブの電子状態を効率よく制御することを可能にする。

【0013】
ナフタレン誘導体は、ジニトロナフタレン(DNN:dinitronaphthalen)、ジメチルナフタレン(DMN:dimethyl naphthalene)、ジアミノナフタレン(DAN: diamino naphthalene)、ジヒドロキシナフタレン(DHN:dihydroxyl naphthalene)からなる群から選択された少なくとも一つを含んでもよい。相対的に、ジニトロナフタレン(DNN)は電子吸引性が高く、ジメチルナフタレン(DMN)、ジアミノナフタレン(DAN)およびジヒドロキシナフタレン(DHN)は電子供与性が高い。(図4参照)

【0014】
ナフタレン誘導体による表面被覆率は0.3±0.02%であってもよい。
単層カーボンナノチューブ(SWCNT)の直径は、ラマンスペクトルのラジアルブリージングモード(RBM)分析によって求められ、1.33~1.60nmである。また、単層カーボンナノチューブの長さは、電子顕微鏡観察等により求められる。これらの直径および長さから、単層カーボンナノチューブの表面積を求めることができる。ナフタレン誘導体の分子面積は、密度汎関数法によって分子の電子空間分布を決定することにより算出される。今回用いたプログラムは、Gaussian09W(製作会社:GAUSSIAN, INC.)である。ジニトロナフタレン(DNN)は0.19nm、ジメチルナフタレン(DMN)は0.22nm、ジアミノナフタレン(DAN)は0.18nm、およびジヒドロキシナフタレン(DHN)は0.17nmである。これらの数値をもとに、表面被覆率が0.3±0.02%となるように、単層カーボンナノチューブおよびナフタレン誘導体の量が調節される。

【0015】
ナフタレン誘導体で被覆された単層カーボンナノチューブは、広角X線回折法によって散乱ベクトルqをした測定した際に、4nm-1にかかるピークに関して、ナフタレン誘導体で被覆されていない単層カーボンナノチューブのピークを基準として、ピーク高さが1/3以下であり、且つピーク頂部が小角側へシフトしているものであってもよい(図5参照)。
図5の拡大部分において、最も高いピークを示しているのは、単層カーボンナノチューブ(ナフタレン誘導体で被覆する前)である。これは、ナフタレン誘導体で被覆されていないので、単層カーボンナノチューブどうしでしっかりとバンドルを構成しており、結晶的な構造であることが示唆される。対照的に、ナフタレン誘導体を被覆した単層カーボンナノチューブは、ピーク高さが1/3以下になり、且つピーク頂部が小角側へシフトしている。このように、ピークの高さが低下し、ブロードな形状となったことは、バンドルの結晶性が低下したためと考えられる。つまり、ナフタレン誘導体が単層カーボンナノチューブを被覆し、言い換えると、ナフタレン誘導体が単層カーボンナノチューブどうしの間に(格子間隔に)挿入され、結晶性が低下したと考えられる。また、ピーク頂部の小角側へシフトは、単層カーボンナノチューブどうしの面間隔(格子間隔)の増大を意味する。したがって、概念的に表現すれば、ナフタレン誘導体が被覆された単層カーボンナノチューブは、バンドル内での単層カーボンナノチューブどうしの面間隔が拡がって、ほぐれたた状態となっている(図6参照)。さらに別の言い方をすると、この被覆された単層カーボンナノチューブは、ナノチューブのバンドルを解離し易くしてナノチューブの分散性を高めている。
X線回折パターンは、X線回折機(Rigaku社製 RINT-2300SF)を用いて、MoKαを50kV、300mAとして、室温で測定される。

【0016】
バンドル内の隣接する単層カーボンナノチューブとの面間隔が1.560nm以上のものでもよい。
上記のX線回折ピークに基づいて求められた、バンドル内の隣接する単層カーボンナノチューブとの面間隔を、表1に示す。

【0017】
【表1】
JP2015131734A_000003t.gif

【0018】
ナフタレン誘導体で被覆された単層カーボンナノチューブは、光吸収スペクトルを測定した際に、704nm、1004nm、および1788nmにかかるピークに関して、ナフタレン誘導体で被覆されていない単層カーボンナノチューブのピークを基準として、ピーク頂部が長波長側へシフトしているものでもよい(図7参照)。
図7で、最も低いピークを示しているのは、単層カーボンナノチューブ(ナフタレン誘導体で被覆する前)である。ナフタレン誘導体を被覆した単層カーボンナノチューブでは、光吸収強度が著しく増加している。このことは、ナフタレン誘導体と単層カーボンナノチューブとの間に電子的相互作用があることを示唆する。また、704nm、1004nm、および1788nmにかかるピークが、ナフタレン誘導体を被覆することにより、長波長側へシフトしており、このことも誘導体と単層カーボンナノチューブとの間の電子的相互作用を示唆する。表2に、各ピーク(頂点)の位置を示す。
光吸収スペクトルは、紫外可視赤外分光器(日本分光株式会社製 V-670)を用いて測定される。

【0019】
【表2】
JP2015131734A_000004t.gif

【0020】
ナフタレン誘導体で被覆された単層カーボンナノチューブは、ラマンスペクトルを測定した際に、ラジアルブリージングモード(RBM)のピークに関して、ナフタレン誘導体で被覆されていない単層カーボンナノチューブのピークを基準として、ピーク頂部が高周波数側へシフトしているものでもよい(図8参照)。図8では、RBMのピークが電子供与性のナフタレン誘導体(例えば-CH、-NH、-OHの官能基を有するナフタレン誘導体)では高エネルギー側へシフトし、一方電子求引性のナフタレン誘導体(例えば-NOの官能基を有するナフタレン誘導体、DNN)ではシフトが見られない。このシフトは、ナフタレン誘導体と単層カーボンナノチューブとの間の電子的相互作用に起因するものであり、単層カーボンナノチューブの芳香族環のラジアル自由度を乱している。電子供与性分子はバンドルの隙間(格子間隔)に上手に入れず振動を抑えている可能性がある。
ラマンスペクトルは、ダイオードレーザー(出力0.3mW、波長785nm)を備えたラマンスペクトル測定器(レニショー社製 inVia ラマンマイクロスコープ)を用いて、環境条件で測定される。

【0021】
ナフタレン誘導体で被覆された単層カーボンナノチューブは、電気伝導度が、ナフタレン誘導体で被覆されていない単層カーボンナノチューブの約50倍 のものであってもよい(図9参照)。
電子求引性のNO2を二つ持つナフタレン誘導体(DNN)で被覆すると、他のナフタレン誘導体と比べて、電気伝導度が著しく増大する。直流電気伝導度は、単層カーボンナノチューブ(被覆前)の約50倍を示す。電気伝導度は、単層カーボンナノチューブをバッキーペパーとして、これに4端子法を適用して測定される。測定温度範囲は、2Kから300Kである。

【0022】
ナフタレン誘導体で被覆された単層カーボンナノチューブは、電気伝導度が、200Kから300Kの範囲で、極大値を示すものであってもよい(図10参照)。
図10は、Tが200Kから300Kの範囲(1000/Tが約3から5)の電気伝導度を示している。被覆をしていない単層カーボンナノチューブ(SWCNT)ではほぼ単調に温度上昇につれて伝導度が増加しており、半導体的挙動を示す。対照的に、DNN-SWCNTでは、温度上昇につれて伝導度が増加するが250K付近で極大値を示し、さらに温度が上がると低下する。このことは、温度上昇につれて、半導体から金属、さらに半導体への転移が起こっている可能性を示唆する。なお、このDNN-SWCNTの電気伝導度の温度依存性は可逆的である。
この温度に応じて半導体的性質と金属的性質が現れる現象を説明する機構として、特定の理論に縛られることを望むものではないが、以下が考えられる。ナフタレンに付加されているニトロ基が、温度上昇につれて分子運動が激しくなり、250K付近までは伝導度が単調に増加する。しかし、250K付近から、カーボンナノチューブのバンドル構造の規則性が失われるために、電荷移動相互作用による電気伝導度増加も、抑えられてしまうと考えられる。
また、図10に示すとおり、ナフタレン誘導体が、DAN(-NH)、DHN(-OH)の場合でも、Tが200Kから300Kの範囲で電気伝導度が極大値を示しており、温度に応じて半導体的性質と金属的性質を有することが示唆される。

【0023】
ナフタレン誘導体で被覆された単層カーボンナノチューブは、SPE法によって測定した総表面積が、ナフタレン誘導体で被覆されていない単層カーボンナノチューブの0.7倍以下のものであってもよい。
SPE(Subtracting pore effect)法とは、細孔がなく表面組成が研究対象に似ている物質について77KでのN吸着を測定して、相対圧力P/Pとαの対照表を作成し、この対照表に基づいて未知試料のN吸着等温線を吸着量n vs αの関係に変換するものである。ここで、α値は、P/P=0.4の吸着量n0.4に対する任意の相対圧における吸着量nとの比、n/n0.4(=α)として得られる。なお、ミクロ孔の解析用に、分子シミュレーションと実験に基づいて、αプロットを高分解能にしたものを用いる。
表3に示すとおり、ナフタレン誘導体で被覆された単層カーボンナノチューブの総表面積は、単層カーボンナノチューブ(被覆なし)の0.7倍以下である。ナフタレン誘導体で被覆することにより、総表面積だけでなく、ミクロ孔容積も著しく減少する。このことは、ナフタレン誘導体が格子間の気孔を塞いだことによる、格子間の気孔空間における相互作用を示唆するものである。
窒素吸着は、試料を423K、10-4Paで2時間予熱した後、ガス吸着量測定器(カンタクローム社製 Autosorb-iQ)を用いて、77Kで測定される。

【0024】
【表3】
JP2015131734A_000005t.gif

【0025】
ナフタレン誘導体で被覆された単層カーボンナノチューブは、100KPaでのCO吸着量が、ナフタレン誘導体で被覆されていない単層カーボンナノチューブの2倍以上 のものであってもよい(図11参照)。
図11は、ナフタレン誘導体で被覆された単層カーボンナノチューブに対して、293KでのCOの等温吸着を示す。ここでのCO吸着量は、窒素吸着から求めた気孔容積で規格化したものである。図11が示すように、ナフタレン誘導体を単層カーボンナノチューブに被覆(挿入)することにより、CO吸着が促進される。特に、電子供与性の強いナフタレン誘導体(例えば、OH基やNH基を有するもの)で、CO吸着が大幅に促進されるが、電子吸引性の強い誘導体(例えば、NO基を有するもの)でも、CO吸着が単層カーボンナノチューブ(被覆なし)の2倍以上である。
CO吸着は、試料を423K、10-4Paで2時間予熱した後、ガス吸着量測定器(日本ベル社製 Belsorp-max)を用いて、293Kで測定される。

【0026】
本発明の別の態様では、上記のナフタレン誘導体で被覆された単層カーボンナノチューブを含んでなる、電極シートが提供される。
上記のナフタレン誘導体で被覆された単層カーボンナノチューブを、適当な溶媒(トルエン等の有機溶媒や水等)と混合し、この混合液を膜材料(PET、PP、PE等)にスプレー噴霧または塗布し、乾燥させることにより、電極シートを得ることができる。
ナフタレン誘導体で被覆された単層カーボンナノチューブは、良好な導電性を有し、且つ分散性が高いため、得られた電極シートについても良好な導電性を示す。得られた電極シートは、光透過性も高い。実施例として作製したDNN-SWCNTを含む電極シートでは、シート抵抗が100オーム以下、600nmでは光透過率も約90%であった。

【0027】
本発明の別の態様では、上記のナフタレン誘導体で被覆された単層カーボンナノチューブを製造する方法が提供される。
該方法は、以下の順序の工程:
a)ナフタレン誘導体を有機溶剤に溶解する、
b)ナフタレン誘導体溶液に単層カーボンナノチューブ原料を加える、
c)ナフタレン誘導体溶液に超音波照射する、
d)ナフタレン誘導体溶液から、単層カーボンナノチューブを濾過する、
e)単層カーボンナノチューブを洗浄・乾燥すること、
を含んでなる。
ナフタレン誘導体は、市販のものを、特別な精製等をすることなく用いることができる。有機溶剤は、ナフタレン誘導体を溶解するものであれば特に限定されないが、入手性、取扱性等の観点から、トルエン、ベンゼン等を用いることができる。
単層カーボンナノチューブ原料としては、市販のものを利用することができるが、不純物(触媒金属やアモルファス炭素)が含まれることがあるので、これらを除去するために、酸洗や不活性雰囲気での加熱を行ってもよい。
こうして得られた単層カーボンナノチューブ原料をナフタレン誘導体溶液に加え、該溶液に超音波照射して、単層カーボンナノチューブへのナフタレン誘導体の挿入、被覆を促進する。
該溶液から単層カーボンナノチューブを濾過し、回収する。濾過は、メンブレンフィルター、シリンジフィルター等を用いてもよい。フィルター孔径は、適当なサイズのものを選択でき、例えば0.45μmのものを用いてもよい。
回収された単層カーボンナノチューブには、被覆されていないナフタレン誘導体が含まれている可能性があり、これを除去するために、洗浄する。洗浄は、前記の工程で用いた有機溶剤と同じ有機溶剤を使用することができる。洗浄後に、乾燥して、ナフタレン誘導体で被覆された単層カーボンナノチューブを得ることができる。

【0028】
本発明の別の態様では、上記のナフタレン誘導体で被覆された単層カーボンナノチューブの分散体を製造する方法が提供される。
該方法は、以下の順序の工程:
a)ナフタレン誘導体を有機溶剤に溶解する、
b)ナフタレン誘導体溶液に単層カーボンナノチューブ原料を加える、
c)ナフタレン誘導体溶液に超音波照射して、単層カーボンナノチューブのバンドルを少なくとも部分的に解離し、単層カーボンナノチューブを分散させる、
d)ナフタレン誘導体溶液から、単層カーボンナノチューブの分散体を濾過する、
e)単層カーボンナノチューブを洗浄・乾燥すること、
を含んでなる。
本態様で用いる、物品(ナフタレン誘導体、有機溶剤、単層カーボンナノチューブ原料等)や工程要素(溶解、濾過、洗浄等)について、前記の単層カーボンナノチューブを製造する方法と共通するものを使用することができる。
超音波照射する工程において、単層カーボンナノチューブへのナフタレン誘導体の挿入、被覆が促進され、バンドル内での単層カーボンナノチューブどうしの面間隔が拡がってほぐれたた状態となり、単層カーボンナノチューブの分散体が形成される。
【実施例】
【0029】
以下に実施例を用いて、本発明の態様を説明する。ただし、本発明は、この実施例に限定されるものではない。
【実施例】
【0030】
(ナフタレン誘導体で被覆された単層カーボンナノチューブ、またはその分散体の調製)
単層カーボンナノチューブは、Hanwha Nanotech Co製のものを利用した。市販の単層カーボンナノチューブには、不純物(触媒金属やアモルファス炭素)が含まれることがあるので、以下の精製処理を行った。単層カーボンナノチューブを、室温の1M HClで20時間処理して金属不純物を除去し、その後373Kで乾燥・洗浄した。その後Ar中で1473Kで30分加熱して無定形炭素を除去した。精製後の不純物量は3wt%以下であった。また、精製した単層カーボンナノチューブの直径は、ラマンRBM分析(レーザー励起 532nm)による測定で、1.33~1.60nmであった。バンドルの直径は、20~30nmであった。
ナフタレン誘導体(1,5-ジニトロナフタレン(DNN)、1,5-ジメチルナフタレン(DMN)、1,5-ジアミノナフタレン(DAN)、1,5-ジヒドロキシナフタレン(DHN))は市販品(東京化成工業社製 純度98%)を用いた。参考例として、ナフタレン(東京化成工業社製 純度99.8%)も用いた。これらは、特に精製を行わなかった。
ナフタレン誘導体の単層カーボンナノチューブへの被覆は、298Kの液相吸着を用いて行った。所定量のナフタレン誘導体を50mLのトルエン(和光純薬製 純度99.8%)と混合した。この混合液に5mgの単層カーボンナノチューブを加えて、298Kで48時間超音波照射を行った。ナフタレン誘導体を被覆した単層カーボンナノチューブを、Millipore社製多孔質フィルタ(0.45μm)で濾過し、100mLのトルエン(和光純薬製 純度99.8%)を用いて真空下298Kで1時間洗浄して、被覆されなかったナフタレン誘導体を除去した。ナフタレン誘導体を被覆した単層カーボンナノチューブを、真空下(1Pa)で24時間乾燥させた。ナフタレン誘導体の被覆量は、UV-Vis—NIRスペクトルメーター(日本分光株式会社製 V-670)を用いて被覆処理前後の混合液中のナフタレン誘導体の濃度変化を測定することにより、求めた。ナフタレン誘導体の単層カーボンナノチューブへの被覆率は、前記被覆量を単層カーボンナノチューブの面積(ラマンRBM分析に基づく)で割って求め、0.3±0.02%であった。
参考例として、ナフタレン誘導体の代わりに、ナフタレンを用いた場合にも、同様の処理を行った。
【実施例】
【0031】
図13に、ナフタレン誘導体を被覆した単層カーボンナノチューブのSEM像(JEOL社製 電界放出走査型電子顕微鏡 JSM-6330F)を示す。図13(a)は、単層カーボンナノチューブ(被覆前)であり、バンドルがランダムに絡まっていた。ナフタレン誘導体を被覆した単層カーボンナノチューブでは、部分的にバンドル構造がほぐれて、分散性が高まっていた。これは、ナフタレン誘導体と単層カーボンナノチューブとの間の相互作用によるものと考えられる。
【実施例】
【0032】
ナフタレン誘導体を被覆した単層カーボンナノチューブについて、種々の分析を行った。
広角X線回折法によって測定した、ナフタレン誘導体で被覆された単層カーボンナノチューブの散乱ベクトルqのチャートを図4に示す。X線回折パターンは、X線回折機(Rigaku社製 RINT-2300SF)を用いて、MoKαを50kV、300mAとして、室温で測定した。
ナフタレン誘導体で被覆された単層カーボンナノチューブの光吸収スペクトルのチャート光吸収スペクトルを図7に示す。光吸収スペクトルは、紫外可視赤外分光器(日本分光株式会社製 V-670)を用いて測定した。
ナフタレン誘導体で被覆された単層カーボンナノチューブの、ラマンスペクトルのラジアルブリージングモードRBMのチャートを図8に示す。ラマンスペクトルは、ダイオードレーザー(出力0.3mW、波長785nm)を備えたラマンスペクトル測定器(レニショー社製 inVia ラマンマイクロスコープ)を用いて、環境条件で測定した。
ナフタレン誘導体で被覆された単層カーボンナノチューブの、電気伝導度の温度依存性を表したチャートを図9、10に示す。電気伝導度は、単層カーボンナノチューブをバッキーペパーとして、これに4端子法を適用して測定した。測定温度範囲は、2Kから300Kとした。
SPE法により測定した、ナフタレン誘導体で被覆された単層カーボンナノチューブの総表面積や総容積等を表3に示す。SPE法で用いる窒素吸着は、試料を423K、10-4Paで2時間予熱した後、ガス吸着量測定器(カンタクローム社製 Autosorb-iQ)を用いて、77Kで測定した。
ナフタレン誘導体で被覆された単層カーボンナノチューブの293KでのCOの等温吸着を表したチャートを図11に示す。CO吸着は、試料を423K、10-4Paで2時間予熱した後、ガス吸着量測定器(日本ベル社製 Belsorp-max)を用いて、293Kで測定した。
【実施例】
【0033】
(ナフタレン誘導体で被覆された単層カーボンナノチューブを含む電極シートの作製)
上記の単層カーボンナノチューブ(被覆前)あるいはナフタレン誘導体で被覆された単層カーボンナノチューブ0.5mgを、トルエン50ml(和光純薬製 純度99.8%)と混合し、この混合液を3cm×3cmの80℃にしたPET膜(OHP用 厚さ100μm)にスプレーガンで噴きつけた。スプレーコートは 10 mL/分の速度のアルゴンガス気流下で行った。その後PET膜を乾燥させることにより、電極シートを得た。
【実施例】
【0034】
電極シートの抵抗を測定した。抵抗は、株式会社三菱化学アナリテック製のロレスタGP MCP-T610を用いて、4端子法で測定した。
結果を表4に示す。被覆された単層カーボンナノチューブを含む電極シートは、単層カーボンナノチューブ(被覆前)を含む電極シートに比べて、大幅に抵抗が下がっており、良好な導電性を示した。
【表4】
JP2015131734A_000006t.gif
【実施例】
【0035】
得られた電極シートの光透過率を測定した。光透過率は、紫外可視赤外分光器(日本分光株式会社製 V-670)を用いて測定した。光透過率の測定結果を、図12に示す。ジニトロナフタレン(DNN)を被覆した単層カーボンナノチューブを含む電極シートでは、600nmで光透過率が約90%であった。写真14に示すとおり、この電極シートでは背後の文字を明確に読み取ることができ、良好な光透過率であることが示された。
図面
【図2】
0
【図3】
1
【図4】
2
【図5】
3
【図6】
4
【図7】
5
【図8】
6
【図9】
7
【図10】
8
【図11】
9
【図12】
10
【図1】
11
【図13】
12
【図14】
13