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明細書 :アミロイドβタンパク質凝集体の測定法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 公開特許公報(A)
公開番号 特開2015-141149 (P2015-141149A)
公開日 平成27年8月3日(2015.8.3)
発明の名称または考案の名称 アミロイドβタンパク質凝集体の測定法
国際特許分類 G01N  33/53        (2006.01)
FI G01N 33/53 D
請求項の数または発明の数 8
出願形態 OL
全頁数 11
出願番号 特願2014-015208 (P2014-015208)
出願日 平成26年1月30日(2014.1.30)
発明者または考案者 【氏名】吉宗 一晃
【氏名】神野 英毅
【氏名】小森谷 友絵
出願人 【識別番号】899000057
【氏名又は名称】学校法人日本大学
個別代理人の代理人 【識別番号】110000084、【氏名又は名称】特許業務法人アルガ特許事務所
【識別番号】100077562、【弁理士】、【氏名又は名称】高野 登志雄
【識別番号】100096736、【弁理士】、【氏名又は名称】中嶋 俊夫
【識別番号】100117156、【弁理士】、【氏名又は名称】村田 正樹
【識別番号】100111028、【弁理士】、【氏名又は名称】山本 博人
審査請求 未請求
要約 【課題】アルツハイマー病の診断が可能なマーカーの測定法を提供する。
【解決手段】赤血球含有試料に抗アミロイドβタンパク質凝集体抗体を反応させることを特徴とする赤血球中のアミロイドβタンパク質凝集体の免疫学的測定法。抗アミロイドβタンパク質凝集体抗体を含有する赤血球中のアミロイドβタンパク質凝集体の免疫学的測定試薬。抗アミロイドβタンパク質凝集体抗体が、粒子径50nm以上の非晶質のアミロイドβタンパク質凝集体に特異的に結合する抗体である。
【選択図】なし
特許請求の範囲 【請求項1】
赤血球含有試料に抗アミロイドβタンパク質凝集体抗体を反応させることを特徴とする赤血球中のアミロイドβタンパク質凝集体の免疫学的測定法。
【請求項2】
抗アミロイドβタンパク質凝集体抗体が、粒子径50nm以上の非晶質のアミロイドβタンパク質凝集体に特異的に結合する抗体である請求項1記載の免疫学的測定法。
【請求項3】
赤血球が、ヒト赤血球である請求項1又は2記載の免疫学的測定法。
【請求項4】
アルツハイマー病診断の目的で測定するものである請求項1~3のいずれかに記載の免疫学的測定法。
【請求項5】
抗アミロイドβタンパク質凝集体抗体を含有する赤血球中のアミロイドβタンパク質凝集体の免疫学的測定試薬。
【請求項6】
抗アミロイドβタンパク質凝集体抗体が、粒子径50nm以上の非晶質のアミロイドβタンパク質凝集体に特異的に結合する抗体である請求項5記載の免疫学的測定試薬。
【請求項7】
赤血球が、ヒト赤血球である請求項5又は6記載の免疫学的測定試薬。
【請求項8】
アルツハイマー病診断薬である請求項5~7のいずれかに記載の免疫学的測定試薬。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、赤血球含有試料中のアミロイドβタンパク質凝集体の免疫学的測定法及び免疫測定試薬に関する。
【背景技術】
【0002】
アルツハイマー病の発症機構は未だ不明であり、根本的治療法も確立されていない。アルツハイマー病は、初期には認知機能障害や神経症状以外の局所神経症状を認めることは稀である。病気がかなり進行した後にCTやMRI等の画像検査で診断が可能であるものの、アルツハイマー病の根本的治療法がないため、進行を抑制する薬剤による治療しかない。
【0003】
このため、アルツハイマー病を早期かつ簡易に発見する方法の開発が強く求められている。アルツハイマー病の主要な病理変化である老人斑の主要構成成分がアミロイドβタンパク(Aβ)であることから、当該Aβは、アルツハイマー病の発症と進展に深く関与していることから注目され広く研究されている。例えば、髄液中のAβ42の低下やタウタンパク質の増加を測定する手段が提案されている。しかし、髄液採取は負担が大きく、感染リスクを伴うため、健康診断で利用できる手段ではない。また、CT等による画像診断は簡便ではあるが、病気がある程度進行してからでないと確認できない。
【0004】
最近、赤血球中にAβが存在すること、及び赤血球中のAβ1-42、Aβ1-40が測定できることが報告された(非特許文献1)。
【先行技術文献】
【0005】

【非特許文献1】Kiko et al, PLOSone, 7, Nov. 2012, e49620
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、赤血球中のAβ量は10ng/mL程度と報告されており、従来のサンドイッチELISAの検出下限値は100ng/mL程度であり、簡便な免疫学的測定法では赤血球中のAβは測定できない。
従って、より簡便な手段によりアルツハイマー病の診断が可能なマーカーの測定法の開発が望まれていた。
【課題を解決するための手段】
【0007】
そこで本発明者は、Aβではなく、Aβ凝集体に特異的な抗体を用いて体液試料中の量を測定してきたところ、赤血球中に高濃度のAβ凝集体が存在することを初めて見出した。さらに検討を続けたところ、赤血球中のAβ凝集体濃度はアルツハイマー病と相関することから、これを測定すれば簡易かつ早期にアルツハイマー病の診断が可能となることを見出し、本発明を完成した。
【0008】
すなわち、本発明は次の〔1〕~〔8〕を提供するものである。
【0009】
〔1〕赤血球含有試料に抗Aβ凝集体抗体を反応させることを特徴とする赤血球中のAβ凝集体の免疫学的測定法。
〔2〕抗Aβ凝集体抗体が、粒子径50nm以上の非晶質のAβ凝集体に特異的に結合する抗体である〔1〕記載の免疫学的測定法。
〔3〕赤血球が、ヒト赤血球である〔1〕又は〔2〕記載の免疫学的測定法。
〔4〕アルツハイマー病診断の目的で測定するものである〔1〕~〔3〕のいずれかに記載の免疫学的測定法。
〔5〕抗Aβ凝集体抗体を含有する赤血球中のAβ凝集体の免疫学的測定試薬。
〔6〕抗Aβ凝集体抗体が、粒子径50nm以上の非晶質のAβ凝集体に特異的に結合する抗体である〔5〕記載の免疫学的測定試薬。
〔7〕赤血球が、ヒト赤血球である〔5〕又は〔6〕記載の免疫学的測定試薬。
〔8〕アルツハイマー病診断薬である〔5〕~〔7〕のいずれかに記載の免疫学的測定試薬。
【発明の効果】
【0010】
本発明の免疫学的測定法によれば、簡便な手段により、赤血球含有試料中のAβが測定でき、早期にアルツハイマー病の診断が可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】凝集体およびモノマーのAFM画像を示す図である。(A)ナノ凝集体;直径50nm程度の楕円形のナノ凝集体に混ざって直径200nm以上の大きな凝集体が見られる。(B)マイクロ凝集体(LOA)(C)繊維状Aβ1-42(D)モノマー
【図2】各凝集体に対する各モノクローナル抗体の反応性を示す図である。
【図3】サイズ分画したナノ凝集体画分に対する各モノクローナル抗体の反応性を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の赤血球中のAβ凝集体の免疫学的測定法は、赤血球含有試料に抗Aβ凝集体抗体を反応させることを特徴とする。

【0013】
被測定検体は、赤血球含有試料であり、特にヒト赤血球含有試料が好ましい。赤血球含有試料としては、全血液、血液中の赤血球画分のいずれでもよいが、測定精度の点から赤血球画分がより好ましい。

【0014】
測定に用いる抗Aβ凝集体抗体としては、Aβモノマーや繊維状Aβと反応せず、Aβ凝集体に特異的に結合する抗体が好ましく、さらに粒子径50nm以上の非晶質のAβ凝集体に特異的に結合する抗体がより好ましい。このようなAβ凝集体特異的な抗Aβ凝集体抗体としては、本発明者らが先に報告した抗体(J. Biosci. Bioeng. 115, 216-220(2013)、Adv. Biosci. Biotechnol., 4, 63-66(2013)、特開2013-159596(粒子径220nm以上のAβ凝集体に対する抗体)、及び粒子径50nm以上220nm未満の非晶質のAβ凝集体(ナノ凝集体ともいう)に対する反応性が高く、粒子径220nm以上のAβ凝集体に対する反応性が相対的に低い抗体等が挙げられる。ここで、反応性が相対的に低いとは、ELISAによる吸光度で1/2以下、好ましくは1/3以下であることをいう。

【0015】
本発明に用いる抗Aβ凝集体抗体は、前記の特性を有している限り、モノクローナル抗体でもポリクローナル抗体でもよいが、特異性の高いものが得られやすい点でモノクローナル抗体が好ましい。

【0016】
本発明に用いる抗Aβ凝集体ポリクローナル抗体は、粒子径50nm以上のAβ凝集体を抗原として哺乳動物を免疫し、その抗血清を採取し、特異性を確認すればよい。

【0017】
本発明に用いる抗Aβ凝集体モノクローナル抗体は、通常の細胞融合により得られるハイブリドーマを培養して作製することができる。ここでハイブリドーマは、粒子径50nm以上の非晶質のAβ凝集体で免疫した哺乳動物の免疫細胞と、ミエローマ細胞とを融合させ、得られた融合細胞から、50nm以上の非晶質のAβ凝集体と結合し、単量体Aβ及び繊維状Aβ凝集体と結合しないモノクローナル抗体を産生するハイブリドーマを選択することにより得られる。

【0018】
ハイブリドーマを作製するための抗原としては、アミロイドβタンパクの凝集体の一つで水に溶解しやすい非晶質のAβ凝集体、すなわち、粒子径50nm以上の非晶質のAβ凝集体を用いる。

【0019】
ハイブリドーマの作製に使用する動物としては、マウス、ウサギ等が挙げられるが、ハイブリドーマの作製のために最も広く使用されているマウスを用いるのが好ましい。マウスの免疫感作は、前記の50nm以上の非晶質のAβ凝集体を、必要に応じてFreundのアジュバントと共にマウスに注射することにより行う。次に免疫されたマウスから脾細胞を採取し、マウスミエローマセルライン例えば、P3U1との細胞融合を常法に従って行う。

【0020】
HAT培地に増殖したハイブリドーマの培養上清を常用のサンドイッチ法により50nm以上の非晶質のAβ凝集体と結合するモノクローナル抗体の存在について試験する。この検定においては、抗原として用いた50nm以上の非晶質のAβ凝集体、Aβ1-42、Aβ1-40、Aβ16-20、Aβ繊維状凝集体をサンドイッチ法の抗原として使用して、特異性を確認できる。

【0021】
この中に、50nm以上220nm未満の非晶質のAβ凝集体と結合し、単量体Aβ及び繊維状Aβ凝集体と結合せず、マイクロ凝集体との反応性が相互的に低い、モノクローナル抗体を産生する9個のクローンが見出された。このうち、1クローンをAnti-LFI 79-3と命名し、NITE P-1489として独立行政法人製品評価技術基盤機構 特許微生物受託センターに寄託した。

【0022】
本発明に用いるモノクローナル抗体を製造するには、例えば上記のハイブリドーマのいずれかを常用の培地中で培養し、培養上清から目的とするモノクローナル抗体を採取すればよい。あるいは、前記ハイブリドーマのいずれかをマウスの腹腔内に接種し、該マウスから腹水を採取し、そして該腹水から目的とするモノクローナル抗体を採取すればよい。培養上清又は腹水からのモノクローナル抗体の採取、すなわち単離・精製は、常法に従って行うことができる。例えば、硫酸アンモニウムにより塩析、50nm以上のAβ凝集体を固定した支持体を用いるアフィニティークロマトグラフィー等を組合せて用いることができる。

【0023】
本発明に用いる抗体は、その目的に応じてキメラ抗体、ヒト化抗体とすることができる。さらに、蛍光、発光、放射性同位元素、金属コロイド等の標識体とすることもできる。

【0024】
赤血球含有試料中のAβ凝集体の測定は、抗Aβ凝集体抗体を用いる免疫学的測定手段によって行なわれる。より具体的には、ELISA、EIA、免疫比濁法、免疫沈降法、EMIT法、イムノクロマト法等が挙げられる。このうち、ELISAについて説明すると、抗Aβ凝集体抗体を、マイクロタイタープレート、ビーズ、ニトロセルロース膜、ナイロン膜等の担体に結合させ、これを検体と接触させることにより、検体中のAβ凝集体を担体上の抗Aβ凝集体に結合させる。結合していない分画を洗浄した後、放射性同位元素、酵素、蛍光物質、ビオチン等で標識した抗Aβ凝集体抗体と接触させた後、標識を測定することにより、Aβ凝集体を測定することができる。

【0025】
抗Aβ凝集体抗体を用いた免疫学的測定法によれば、正常ヒト赤血球50%液中のAβ凝集体濃度は5.0μg/mLであり、十分に検出可能濃度であることが判明した。

【0026】
また、アルツハイマーモデルマウス(tg2576)の血液中のAβ凝集体濃度は、正常動物の血液中のAβ凝集体濃度よりも有意に低いことが判明し、血液中のAβ凝集体濃度を測定すれば、早期にアルツハイマー病の診断が可能である。すなわち、被検赤血球含有試料中の赤血球含有試料中のAβ凝集体濃度が、健常者由来の赤血球含有試料中のAβ凝集体濃度に比べて低い場合には、その被検試料は、アルツハイマー病由来であると判定できる。

【0027】
本発明の免疫学的測定法を実施するには、抗Aβ凝集体抗体を含有する赤血球中のAβ免疫学的測定試薬として用いるのが好ましい。当該免疫学的測定試薬には、抗Aβ凝集体抗体、抗Aβ凝集体抗体標識体、緩衝液、標準試薬、プロトコール(使用説明書)等が含まれる。
【実施例】
【0028】
次に実施例を挙げて、本発明を詳細に説明する。
【実施例】
【0029】
参考例1
[モノクローナル抗体の作成方法]
(1)抗原の作製
【実施例】
【0030】
(ナノ凝集体)
Aβ1-42(AnyGen Co.Ltd, Korea)を0.22mMとなるように1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロ-2-プロパノールに溶解し、4℃で16時間静置、37℃で3時間静置したのち、減圧乾燥させた。この溶解と減圧乾燥の操作を2回繰り返し、水に溶解しやすい非晶質のナノ凝集体を作製した。この画分には様々な大きさの凝集体が含まれているため、0.22μm、300kDa(約50nm)および、100kDaのフィルターでろ過することによりサイズ分画を行った。
【実施例】
【0031】
(マイクロ凝集体)
リン酸緩衝生理食塩水(Dulbecco's PBS)中に0.22mM Aβ1-42(AnyGen Co.Ltd, Korea)と繊維状凝集体の形成を抑制する2.2mM Aβ16-20(KLVFF)を加え37℃、3rpmで16時間攪拌した。この溶液を0.22μmのフィルターでろ過した残渣をマイクロ凝集体(LOA)とした。
【実施例】
【0032】
(繊維状Aβ凝集体)
マイクロ凝集体の作成においてAβ16-20を加えずに調整した後37℃16時間静置して繊維状Aβ凝集体を作製した。
【実施例】
【0033】
(モノマー)
Aβ1-42を50μMになるように1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロ-2-プロパノールに加え、超音波処理で懸濁後、30℃で16時間放置し完全に溶解させた。減圧乾燥により溶媒を除いたものをモノマーとして用いた。
【実施例】
【0034】
上記により作製したナノ凝集体、マイクロ凝集体(LOA)、繊維状Aβ凝集体及び、モノマーの形状を原子間力顕微鏡(AFM、JSPM-5200,JEOEL)を用いて観察した。Aβ1-42の各凝集体もしくはモノマーを1μg/mLに調整し、10μlを雲母片上に滴下し減圧乾燥させた。測定はACモードで、共振周波数190kHzで行った。図1に、AFMの画像を示す。
【実施例】
【0035】
(2)抗体の作製
上記により作製したナノ凝集体(0.1mg)を完全もしくは非完全フロイントアジュバントと混合し、マウス(BALB/C、8週目、雌)に免疫した。免疫は、2週おきに3回行った。免疫したマウスの脾臓を摘出し、その細胞数の2割のマウスミエローマ細胞(P3U1)を混合後、この混合細胞にPEG(ロシュ・ダイアグノスティックス株式会社)1mLを1分間かけて攪拌しながらゆっくり加えた。1分間攪拌後、無血清培地FCS3mLを3分間かけて攪拌しながらゆっくり加えた。続けて無血清培地10mLを3分間かけて攪拌しながらゆっくりと加えた。その後、5分間インキュベート(37℃、5%CO2)を行い、遠心分離(1000rpm、5min)により上清を捨てた。HAT培地で希釈することで細胞を解して培養した。
【実施例】
【0036】
この培養上清を用いてELISA法によりナノ凝集体に反応する抗体を生産する細胞のスクリーニングを行った。陽性が得られた細胞を限界希釈しハイブリドーマの単一化を行った。
【実施例】
【0037】
ELISA法はNuncイムノプレートマキシソープ(Thermo scientific Inc.)を用いて4℃、16時間インキュベートして各抗原を非共有結合で固定した。Dulbecco's PBSに0.05% Tween20を加えた溶液(PBS-T)により洗浄を行った後、ブロッキングバッファー(イムノブロック、DSファーマバイオメディカル株式会社)添加し、37℃、2時間インキュベートした。PBS-Tで洗浄後、2次抗体としてHRPを標識した抗マウスIgGヤギ由来(Sigma-Aldrich)を加え、37℃、2時間インキュベートした。PBS-Tで洗浄後、SIGMAFAST OPD(Sigma-Aldrich)の説明に従って発色させ、492nmで測定した。
【実施例】
【0038】
各濃度のナノ凝集体、繊維状Aβ1-42、モノマーAβ1-42及び、マイクロ凝集体を抗原として本発明抗体を用いてELISAを行った。
図2及び図3に、ELISAの結果を示す。
【実施例】
【0039】
図2に示す様に本発明のモノクローナル抗体はナノ凝集体画分に高い反応性を示した。弱いながらLOAにも反応性が見られ、繊維状及びモノマーAβ1-42とはほとんど反応せずナノ凝集体にのみ高い反応性を示した。一方、LOAに対する抗体31-2(特許文献3)はナノ凝集体画分及びLOAに同等の反応性が見られた。
得られたハイブリドーマ9個のうち、相対的にナノ凝集体画分に反応性が高く、繊維状およびモノマーに対する反応性が低い1個をAnti-LFI 79-3と命名した。
【実施例】
【0040】
図3に示す様に本発明のモノクローナル抗体はナノ凝集体画分の中で、220nmのフィルターを通過するが300kDaのフィルターを通過しない凝集体と最も良く反応する。この凝集体よりも大きな220nmのフィルターを通過しない凝集体とは若干反応するが、300kDa以下の凝集体とはほとんど反応しない。
【実施例】
【0041】
実施例1
A.実験方法
(1)Aβ1-42凝集体の作成
市販のAβ1-42(AnyGen,純度:95.6%(HPLC,MASS))100μgを1.5mLチューブに加え1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロ-2-プロパノール200μlにより溶解し、0.5mg/mLのAβ1-42凝集体溶液を作製した。この溶液を4℃、16時間インキュベートし、さらに37℃、3時間インキュベートした。その後、凍結乾燥を行い上記の操作を繰り返した。この溶液を超純水により1mg/mLに調整し、可溶性のAβ1-42凝集体とした(Shimizu T. et al., J. Biosci. Bioeng., 115, 216-220(2013))。抗原濃度は280nmの波長で吸光度を測定し、吸光度1を1mg/mLとして計算した。
【実施例】
【0042】
(2)サンドイッチELISAによるAβ1-42凝集体の検量線作成
線維状Aβ1-42及びAβ1-42モノマーと反応せずAβ1-42凝集体のみを認識する9種類のモノクローナル抗体(Shimizu T. et al., J. Biosci. Bioeng., 115, 216-220(2013)及び、Shimizu T. et al., Adv. Biosci. Biotechnol., 4, 63-66 (2013))の中から異なる2つの抗体を捕獲抗体およびHRP標識検出抗体として使用してサンドイッチELISAによりAβ1-42凝集体の検出を行い、検出感度が最も高くなる組み合わせを選択した。抗Aβ1-42凝集体モノクローナル抗体2μg/mLを96ウェルプレート(Nuncイムノプレート マキシソープ、Thermo Fisher Scientific Inc)の各ウェルに一次抗体として100μl加え、37℃で1時間放置した。その後、溶液を除去しダルベッコPBS(和光純薬)にTween20を0.05v/v%加えたPBS-Tで洗浄後、Blocking bufferとしてイムノブロックを200μl添加し、37℃で1時間放置した。溶液除去後PBS-Tで洗浄し、抗原としてAβ1-42凝集体を100μl加え、37℃で1時間放置後、溶液を除去しPBS-Tにより洗浄した。検出抗体としてHRPを標識した抗体を100μl加え、37℃で1時間放置し、溶液除去後PBS-Tで洗浄した。発色はo-フェニレンジアミンジヒドロクロリド(SIGMA)で行い、マイクロプレートリーダーを用いて波長492nmの吸光度を測定した。
【実施例】
【0043】
(3)赤血球中Aβ1-42凝集体の検出
ヒト赤血球(Lee BioSolutions, Inc)に等量の蒸留水を添加し振盪混和して溶血させた。この試料中のタンパク質濃度をBCAタンパク質測定キット(Pierce)により測定し、Aβ1-42凝集体濃度をサンドイッチELISAにより測定した。
アルツハイマー病モデルマウスとしてTg2576と呼ばれる遺伝子改変マウスが広く用いられている。Tg2576はAβ1-42の前駆体タンパク質遺伝子に変異を導入しAβ1-42を大量に生産するようにした組換えモデルマウスで、12ヶ月の飼育でその脳に老人斑が形成される。Tg2576及び野生型の17月齢オスマウスそれぞれ3匹ずつの尾から採血し、等量の蒸留水を加え振盪混和した試料に含まれるAβ1-42凝集体濃度を測定した。
【実施例】
【0044】
B.結果
抗原であるAβ1-42凝集体1μg/mLを測定した時、最も高い吸光度となった抗体の組み合わせは77-3および37-11をそれぞれ捕獲抗体および検出抗体とした時であった。以降はこの抗体の組み合わせによりサンドイッチELISAを行った。この時、抗原を添加しない陰性対照の吸光度の標準偏差の3.3倍を検出下限値とした時、検出下限値は0.01μm/mLであった。
ヒト赤血球を等量の蒸留水で処理した試料中のAβ1-42凝集体濃度は1.7μg/mLであり、検出下限値を考慮すると測定可能な値であった。この試料中のタンパク質濃度は23mg/mLであり、赤血球中にはタンパク質1mgあたり226ng(50pmol)のAβ1-42凝集体が含まれることが分かった。
Tg2576及び野生型マウスの血液に含まれるタンパク質1mgあたりのAβ1-42凝集体量は表1の様になった。それぞれ8匹ずつのマウス血液試料を調べたところ、Tg2576マウスのAβ1-42量の平均は8.1ngである一方、野生型マウスのものは10.1ngであり、モデルマウスが低い値となった。この結果はアルツハイマー病患者の髄液中のAβ1-42濃度が健常人のものと比較して5割程度低いという結果と矛盾しない(東海林幹夫、Cognition and Dimentia, 8, 2790-275 (2009))。本方法による赤血球中のAβ1-42凝集体濃度の測定はより簡便に測定できる方法である。
【実施例】
【0045】
【表1】
JP2015141149A_000002t.gif
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2